【文献】
1,5,7−Triazabicyclo[4.4.0]dec−5−ene、CASREACT(STN)[online]、2007年、検索日:2018年6月4日
【文献】
1,5,7−Triazabicyclo〔4.4.0〕dec−5−ene、CASREACT(STN)[online]、2007年、検索日:2019年6月6日
【文献】
REGISTRY(STN)[ONLINE],1984年11月16日(検索日:2019年6月6日)、CAS登録番号5807−14−7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビシナル炭素原子上に少なくとも1個の塩素原子および少なくとも1個の水素原子を含む塩素化炭化水素を脱塩化水素化して、対応する不飽和炭化水素を生成する方法であって、(i)塩素化炭化水素をグアニジニウム塩またはそのグアニジン前駆体と接触させ対応する不飽和炭化水素を生成し、脱塩化水素反応においてHClを生成するステップを含み、グアニジン前駆体は、テトラメチルグアニジンおよび1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デカ−5−エンからなる群から選択される、方法。
【背景技術】
【0003】
不飽和化合物の調製のための塩素化炭化水素の脱塩化水素化は、工業レベルで一般的な合成方法である。
【0004】
例えば、塩化ビニリデンは、水酸化カルシウムまたはナトリウムを使用して1,1,2−トリクロロエタンの脱塩化水素化によって商業的に調製される。この方法は、非常に高い収率(およそ90%)で塩化ビニリデンを生成するが、大量の無機副生成物(例えば、CaCl
2またはNaCl)が生成し、廃棄されるか、または再生利用される必要があるという欠点を有する。したがって、副生成物として塩化水素を生成する触媒プロセスがより有利である。
【0005】
米国特許第2361072号(DU PONT)1944年10月24日は、テトラクロロエタンと窒素塩基との反応によるトリクロロエチレンの製造方法に関する。ジオルト−トリルグアニジンが、1頁、右側欄、32行で言及されており、これは、種々の窒素塩基のリスト中で唯一のグアニジン塩基である。実施例により、トリエチルアミンおよびキノロンの使用が教示されている。
【0006】
塩素化炭化水素の脱塩化水素反応化におけるある種のアミンまたはそれらの塩の使用は、以前に開示されている。
【0007】
米国特許第2879311号(THE DISTILLERS COMPANY LIMITED)1959年3月24日には、3.0〜9.0の範囲のpKを有するアミンの塩酸塩または塩化アンモニウム塩の存在下で行われる1,2,3−トリクロロブタンの脱塩化水素化のための方法が開示されている。この塩の調製に適した例示的なアミンは、好ましくは第三級アミン、例えば、アルファ−およびガンマ−ピコリン、2,4,6−コリジン、5−エチル−2−メチル−ピリジン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N−エチルピリジン、シクロヘキシルアミンである。
【0008】
米国特許第2989570号(ETHYL CORPORATION)1961年6月20日には、アミン、その塩酸塩または第四級塩化アンモニウム塩の存在下における1,1,2−トリクロロエタンの脱塩化水素化による塩化ビニリデンの調製方法が開示されている。アミンは、7未満のpK
b(ここで、K
bは、塩基解離定数を示す)を有するアミンの中から選択される。ジフェニルグアニジンが、この方法で使用されるべき好適なアミンの中で列挙されている。しかしながら、提供された実施例は、触媒プロセスというよりは、むしろ化学量論反応の存在を示している。
【0009】
米国特許第5210344号(THE DOW CHEMICAL COMPANY)1993年5月11日には、11を超えるpK
aを有する環式アミンの存在下における1,1,2−トリクロロエタンの脱塩化水素による塩化ビニリデンの調製方法が開示されている。11を超えるpK
aを有する例示的な環式アミンは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、2,2,4−トリメチルピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデカ−7−エン、および1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−ノナ−5−エンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法のある実施形態において、R
hおよびR
h2は、同時に水素である。
【0017】
前記実施形態の有利な態様において、R
h1およびR
h3は、HおよびClからなる群から選択される。好ましくは、R
h1がHである場合、R
h3はClであり、かつ式(III)の化合物は塩化ビニルである。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、式(II)の化合物は、1,1,2−トリクロロエタン、すなわち、R
h1=R
h3=HおよびR
h=R
h2=Clであり、および式(III)の化合物は塩化ビニリデンである。
【0019】
本発明の方法は、塩素化炭化水素をグアニジン前駆体または好ましくは、グアニジニウム塩と接触させることによって行われる。
【0020】
好適なグアニジニウム塩の非限定的な例には、ヒドロハロゲニド、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、式R
fSO
3−(式中、R
fは、任意選択により酸素原子を含むC
1〜C
12フルオロアルキル、例えば、CF
3SO
3−である)のフルオロアルキル硫酸塩が含まれる。グアニジニウム塩酸塩が好ましい。
【0021】
本発明方法に好適なグアニジン前駆体は、式(I):
(式中、R、R
1、R
2、R
3およびR
4のそれぞれは、H、C
1〜C
12の直鎖または分岐の任意選択により置換されたアルキルからなる群から独立して選択され、かつR、R
1、R
2およびR
3は、任意選択によりヘテロ原子を含む脂肪族または芳香族環構造中に含まれてもよく;かつR
1、R
2、R
3およびR
4は、任意選択により置換されおよび/または任意選択によりヘテロ原子を含む単環式または多環式芳香族基であってもよい)
の化合物からなる群から選択される。
【0022】
第1の実施形態において、式(I)中の基Rは、Hであり、かつR
1、R
2、R
3およびR
4のそれぞれは、H、C
1〜C
12の直鎖または分岐の任意選択により置換されたアルキル、ならびに任意選択により置換されおよび/または任意選択によりヘテロ原子を含む単環式または多環式芳香族基からなる群から独立して選択される。この実施形態に属するグアニジンの注目すべき非限定的な例は、R
1=R
2=R
3=R
4=CH
3であるテトラメチルグアニジン、ならびにR
1=R
2=R
3=Hであり、R
4が、任意選択により置換されおよび/または任意選択によりヘテロ原子を含む単環式または多環式芳香族基からなる群から選択される化合物である。R
4は、例えば、ベンズイミダゾールであってもよい。好ましくは、R
1、R
2、R
3およびR
4は、同時にHであることはない。
【0023】
R、R
1、R
2およびR
3が、任意選択によりヘテロ原子を含む脂肪族または芳香族環構造中に含まれる、式(I)のさらなる好適なグアニジン前駆体の非限定的な例は、以下の式(G−1)および式(G−2):
(式中、式(G−2)中のR
Nは、HまたはC
1〜C
12の直鎖または分岐の任意選択により置換されたアルキルである)
からなる群から選択されてもよい。
【0024】
グアニジン前駆体は、好ましくはテトラメチルグアニジンおよび1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デカ−5−エン(式G−1の化合物)からなる群から選択される。
【0025】
本発明のある実施形態において、グアニジン前駆体またはグアニジニウム塩は、不活性担体上に担持され、それにより、不均一系触媒を与えてもよい。グアニジニウム塩またはそのグアニジン前駆体は、当技術分野で周知の方法によって不活性担体上に物理的に吸着またはその表面に化学的に固定されてもよい。好適な担体の非限定的な例は、例えば、シリカ、TiO
2、Al
2O
3、SiO
2/Al
2O
3、ゼオライト、メソ多孔質シリカ(例えば、MCM−41)である。担持グアニジニウム塩、またはその前駆体の調製のための好適な技術は、CAUVEL,A.,et.al.Monoglyceride synthesis by heterogeneous catalysis using MCM−41 type silicas functionalized with amino groups.J.Org.Chem..1997,vol.62,p.749−751、およびSERCHELI,R,et.al.Encapsulation of N,N’,N”−tricyclohexylguanidine in hydrophobic zeolite Y:Synthesis and catalytic activity.Tetrahedron lett..1997,vol.38,p.1325−1328に記載されたものである。
【0026】
本発明方法における活性触媒種は、グアニジニウム塩であることが見出されてきた。しかしながら、この方法の第1の非触媒的ステップにおいて、グアニジン前駆体は、1当量の塩素化炭化水素との反応により塩酸塩であるグアニジニウム塩に変換され、それにより、インサイチューで触媒種を生成する。
【0027】
本発明方法に好適なグアニジニウム塩は、それらがグアニジン前駆体のpK
bよりも高いpK
bを有するが、なお反応混合物中に存在する塩素化炭化水素からHClを抜き取るために十分に塩基性の特性を有するという事実によって特徴付けられる。
【0028】
好適なグアニジン前駆体は、一般に9未満、典型的には7未満、より典型的には5未満のpK
bによって特徴付けられる。pK
bという用語は、10を底とする、グアニジン前駆体の塩基解離定数(K
b)の負の対数を示す。
【0029】
有利には、グアニジニウム塩の各当量当たり少なくとも1当量の塩素化炭化水素が、対応する不飽和化合物に変換され、少なくとも1当量のHClが生成する。好ましくは、グアニジニウム塩の各当量当たり、1当量を超える塩素化炭化水素が対応する不飽和化合物に変換され、1当量を超えるHClが生成する。
【0030】
例えば、テトラメチルグアニジンが触媒種の前駆体として使用される場合、グアニジニウム塩1モル当たり少なくとも1.6モルのHCl、すなわち、テトラメチルグアニジン前駆体1モル当たり2.6モルのHClが抜き取られる。
【0031】
同様に、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デカ−5−エンがグアニジン前駆体として使用される場合、グアニジニウム塩1モル当たり1.65モルのHCl、すなわち、前駆体1モル当たり2.65モルのHClが抜き取られる。
【0032】
グアニジン前駆体がこの方法で使用される場合にグアニジニウム塩酸塩を形成するために必要なHClの量を超えて、この方法で生成したHClは、一般にグアニジニウム塩に配位する。グアニジニウム塩とHClとの配位生成物は、以下で「グアニジニウム塩:HCl」と称される。塩素化炭化水素から除去されたHClは、典型的には加熱によってグアニジニウム塩との配位から放出される。
【0033】
したがって、グアニジニウム前駆体が脱塩化水素プロセスを開始するために使用される場合、前記方法は、グアニジニウム前駆体が1当量の塩素化炭化水素と反応して、対応する不飽和化合物および1当量のグアニジニウム塩酸塩を形成するステップを含む。その後のステップにおいて、グアニジニウム塩は、塩素化炭化水素とさらに反応して、対応する不飽和化合物および配位生成物グアニジニウム塩:HClを形成する。配位生成物中のグアニジニウム塩によって配位されたHClの量は、グアニジン前駆体の性質に依存する。
【0034】
有利には、この方法は、グアニジニウム塩とHClとの配位生成物、グアニジニウム塩:HClを、HClを放出するために適切な温度に加熱するステップ、およびグアニジニウム塩からHClを分離するステップを含む。回収されるとすぐに、グアニジニウム塩は、本発明方法に再生利用されてもよい。
【0035】
本発明方法の利点は、多くの触媒サイクルが同じ初期量のグアニジニウム塩(またはその前駆体)で行われ、それにより、塩素化炭化水素の脱塩化水素のための高い生産性の方法を提供し得る。
【0036】
典型的には、グアニジニウム塩と塩素化炭化水素とは、1:100〜100:1、好ましくは1:50〜50:1、より好ましくは1:10〜10:1のモル比で接触する。
【0037】
この方法で生成されたガス状HClは、当技術分野で公知の任意の手段で回収される。この方法の利点は、HClが実質的に無水形態で生成されることである。
【0038】
以下で「HCl放出温度」と称される、HClが配位生成物グアニジニウム塩:HClおよび再生されたグアニジニウム塩から放出される温度は、グアニジニウム塩に依存する。
【0039】
典型的には、HCl放出温度は、100℃を超え、一般には120℃を超える。HCl放出温度は、一般には250℃を超えず、さらにそれは、230℃を超えない。
【0040】
配位生成物グアニジニウム塩:HClを加熱するステップおよび生成したHClを分離するステップは、脱塩化水素プロセスとして同時に、または別個の段階で行うことができる。
【0041】
この方法の第1の実施形態において、HClの放出およびグアニジニウム塩の再生は、用いられるグアニジニウム塩のHCl放出温度以上の温度でこの方法を操作することによって脱塩化水素プロセスと同時に行われる。
【0042】
したがって、脱塩化水素プロセスをHCl放出温度以上の温度で操作し、および系からHClを連続的に除去することによって、触媒活性種は、反応混合物中で連続的に再生され、長い反応時間が、結果としての高い生産性とともに、達成され得る。
【0043】
例えば、グアニジニウム塩がテトラメチルグアニジニウム塩である場合、HCl放出温度は、145℃以上である。したがって、第1の実施形態によって脱塩化水素プロセスを行うための温度の有利な範囲は、145℃以上の温度、好ましくは145℃〜180℃の範囲の温度、より好ましくは145℃〜175℃の範囲の温度である。
【0044】
グアニジニウム塩が1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デカ−5−エンの塩酸塩である場合、HCl放出温度は、170℃以上である。結果として、グアニジン前駆体として1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デカ−エンを使用する第1の実施形態による方法は、170℃以上、より好ましくは170℃〜195℃、さらにより好ましくは170℃〜185℃の温度で行われる。
【0045】
この方法を行うための最適温度は、通常の実験を使用して当業者によってグアニジン前駆体またはグアニジニウム塩に基づいて決定され得る。
【0046】
本発明方法の代替の実施形態において、配位生成物グアニジニウム塩:HClからHClを放出するステップおよびグアニジニウム塩を再生するステップは、脱塩化水素プロセスに関して別個の段階で行われる。このような実施形態において、塩素化炭化水素の脱塩化水素プロセスは、グアニジニウム塩のHCl放出温度よりも低い温度で行われる。次いで、配位生成物グアニジニウム塩:HClは、反応混合物から分離され、次いで、HCl放出温度以上の温度に加熱され、それにより、HClを遊離し、グアニジニウム塩を再生する。次いで、グアニジニウム塩は、さらなる脱塩化水素サイクルのためにこの方法に再生利用され得る。
【0047】
この方法は、典型的には大気圧、およびいずれにしても最大で0.5MPaの圧力で行われる。
【0048】
この方法は、典型的には液相中で、一般には溶媒の存在下で行われる。好適な溶媒は、非プロトン性溶媒である。好適な溶媒の注目すべき例は、ケトン、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド、ジメチルスルホンのようなスルホン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンのようなピロリドン、およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)のようなエーテルである。
【0049】
有利な結果は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシドからなる群から選択される溶媒を使用して得られた。特に有利な結果は、溶媒としてジメチルスルホキシドを使用して得られた。
【0050】
本発明方法の好適な溶媒の別のクラスは、いわゆるイオン液体、すなわち、分解することなく溶融し、それにより、所与の温度で液体を形成する塩で代表される。本発明方法における溶媒としての使用のための好ましいイオン液体は、250℃以下の温度、より好ましくは200℃以下の温度で液体であるものである。最も好ましいものは、室温またはさらに低い温度で液体状態であるイオン液体である。さらに、好ましいイオン液体は、非常に低い蒸気圧を有するものである。好適なイオン液体は、好ましくは反応に関与する物質に対して不活性なものの中から選択される。例には、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリドのような化合物が含まれる。
【0051】
この方法は、当技術分野で公知の装置を使用してバッチ式または連続式で行われてもよい。
【0052】
本発明の方法は、典型的には不飽和塩素化炭化水素からなる、脱塩化水素化反応の副生成物が、液相から分離され、任意選択により中間のステップ後に、この方法に再生利用されるステップを追加的に含んでもよい。
【0053】
本発明方法のこのさらなる実施形態の例として、塩化ビニリデンへの1,1,2−トリクロロエタンの脱塩化水素化反応における副生成物として形成される1,2−ジクロロエチレン(シスおよびトランス異性体)の回収および再使用が挙げられてもよい。1,2−ジクロロエチレンは、蒸留、または当技術分野で公知の任意の他の慣用技術によって反応混合物および塩化ビニリデンから分離されてもよい。単離されるとすぐに、1,2−ジクロロエチレンは、適切な触媒、例えば、AlCl
3の存在下で塩化水素化によって1,1,2−トリクロロエタンに再変換されてもよい。次いで、それは、本発明方法に戻して再生利用することができる。
【0054】
本発明は、以下の実施例に関連してこれからより詳細に説明されるが、実施例の目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0056】
塩化ビニリデンへの1,1,2−トリクロロエタンの脱塩化水素化のための一般的な手順
グアニジニウム塩(またはグアニジン前駆体)および溶媒(50mL)を、磁気式撹拌機、凝縮器、温度計、デジタルN
2流量制御装置、ならびにポリプロピレンまたはガラス製シリンジおよびPTFE製供給ラインおよびニードルを備えたシリンジポンプ、を備えた100mLのガラス製四つ口丸底フラスコ反応器に入れた。この装置は、ガス状反応生成物の回収のための、PTFE製供給ラインによって反応器の凝縮器頭部に接続された、乾燥−氷/アセトンスラリー(T=−78℃)が入っているデュワーに浸漬された目盛り付きパイレックス試験管をさらに備えた。
【0057】
反応器をN
2によって20℃で30分間パージし、凝縮器を−10℃に冷却し、N
2流量を0.6N−L/時間の速度に設定した。撹拌速度は、1000rpmに設定した。1,1,2−トリクロロエチレンを不均一反応混合物に、シリンジポンプによって0.2mL/時間(2.154ミリモル/時間)の固定速度で添加した。このガラス製反応器を油浴に浸し、1000rpmの撹拌速度で、グアニジン前駆体について決定したHCl放出温度以上の温度に加熱した。総反応時間を、定期的な中間サンプリングによって記録した。各反応期間の最後に、定量
1H−NMR、GCおよびGC−MS分析によって、反応生成物を分析および同定した。
【0058】
1次触媒反応の速度定数(k
C;グアニジニウム塩により促進された脱塩化水素);1,1,2−トリクロロエタン(C
112TCE)の全転化率;触媒プロセスにおける塩化ビニリデン形成の選択性(S
VDC)を決定するために、結果を分析した。すべての結果を表1にまとめる。
【0059】
実施例1〜3:テトラメチルグアニジニウム塩酸塩(TMGNH
2(+)Cl
(−))による脱塩化水素化
一般的な手順に従って、1,1,2−トリクロロエチレンの脱塩化水素化を、以下の実験条件下で3つの異なる溶媒:テトラグリム、ジメチルスルホキシド(DMSO)および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド中テトラメチルグアニジニウムクロリドの存在下で行った:
実施例1:テトラグリム;TMGNH
2(+)Cl
(−):12.45ミリモル;反応温度:177℃;反応時間:48.5時間。
実施例2:DMSO(120mL);TMGNH
2(+)Cl
(−):36ミリモル;反応温度:150℃;反応時間:7.5L時間。
実施例3:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([C
4mim]Cl)(124mL);TMGNH
2(+)Cl
(−):36ミリモル;反応温度:177℃;反応時間:18時間。
【0060】
1次触媒反応速度定数、塩化ビニリデンの選択性および1,1,2−トリクロロエチレンの転化率を表1に報告する。
【0061】
実施例4:テトラグリム中1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)による脱塩化水素化
一般的な手順に従って、1,1,2−トリクロロエチレンの脱塩化水素化を、溶媒としてテトラグリム中グアニジン前駆体として1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(12.45ミリモル)の存在下で行った。反応温度を170℃に設定し、反応を30時間モニターした。反応速度定数、塩化ビニリデンの選択性および1,1,2−トリクロロエチレンの転化率を表1に報告する。
【0062】
実施例5:テトラグリム中SiO
2上に担持された1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンによる脱塩化水素化
担持された1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンは、CAUVEL,A.et.al.Monoglyceride synthesis by heterogeneous catalysis using MCM−41 type silicas functionalized with amino groups.J.Org.Chem..1997,vol.62,p.749−751に開示された手順の修正によって調製した。
【0063】
脱塩化水素プロセスは、テトラグリム(50mL)中担持グアニジン前駆体(12.45g、12.45ミリモル、1ミリモルTBD/1gシラン化処理担体)を182℃で総反応時間30時間用いて、一般的な手順に従って行った。結果を表1に報告する。
【0064】
比較例1および2:テトラグリム中トリエチルアミン(TEA)または1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)による脱塩化水素化
一般的な手順に従って、グアニジン前駆体をトリエチルアミン(CE1:12.45ミリモル;反応温度130〜135℃;反応時間:30時間)または1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(CE2:12.45ミリモル;反応温度190℃;反応時間:30h)で置き換えることによって、1,1,2−トリクロロエチレンの脱塩化水素化を行った。結果を表1に報告する。
【0065】
【0066】
脱塩化水素プロセスがトリエチルアミンの存在下で行われる場合、1,1,2−トリクロロエタンの塩化ビニリデンへの変換は化学量論的に行われる。すべてのトリエチルアミンが反応してしまうとすぐに、トリエチルアンモニウムクロリドの塩を形成し、このプロセスは停止する。
【0067】
脱塩化水素プロセスは、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンの存在下で触媒的に進行する。しかしながら、比較例2の速度定数データを実施例1または実施例4のものと比較することによりわかるように、脱塩化水素プロセスにおけるグアニジニウム塩の使用は、最終生成物の選択性を失うことなくはるかにより高い転化率を与える。