(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書に開示される結合メンバー、核酸、ベクター、宿主細胞、組成物、方法および使用についての説明がより容易に理解され得るために、特定の用語をまず定義する。
【0049】
定義
別段の定めがない限り、明細書、図面および特許請求の範囲において用いられる全ての他の科学的および技術的用語は、当業者の一人によって一般に理解されるそれらの通常の意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料を、本明細書に開示される結合メンバー、核酸、ベクター、宿主細胞、組成物、方法および使用の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参照は、それらの全体で参照により援用される。矛盾する場合は、定義を含む本明細書を優先する。材料、方法、および実施例は、例示目的のみであり、限定されることを意図しない。
【0050】
本明細書において用いられる単語「約」は、当業者の一人により決定される、特定の値に関する許容可能な誤差範囲内の値を指し、その値がどのようにして測定または決定されたか、すなわち測定系の制限に一部依存する。例えば、「約」は、当該分野における実施あたり、1または1より多い標準偏差内を意味することができる。また、用語「約」は、問題になっている量または値が、指定された値またはおよそ同じである一部の他の値であり得ることを示すためにも用いられる。その語句は、同様の値が、本発明に係る同等の結果または効果を促進することを伝えることを意図する。この文脈において、「約」は、10%までの上および/または下の範囲を指し得る。単語「約」は、一部の実施態様では、その値の上下5%まで、例えば2%まで、1%まで、または0.5%までである、特定の値の上下の範囲を指す。一実施態様では、「約」は、所定の値の上下0.1%までの範囲を指す。
【0051】
本明細書において用いられる用語「投与」は、化合物などの物、例えば医薬化合物、または抗原などの他の薬剤を、対象へ移行、送達、導入、または輸送する任意のモードを指す。投与モードは、経口投与、局所接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、鼻腔内、または皮下投与を含む(以下参照)。1つまたは複数の治療剤のようなさらなる物「と組み合わせた」投与は、同時(同時的)および任意の順序での連続的な投与を含む。
【0052】
本書類で用いられる単語「アッセイ」は、生物学的検体において生じる物の、触媒活性などの特性、存在、形状または量を分析するために、一般に当該分野で知られている方法を指す。そのような物は、生体内で生じ得て、または、数個の例を挙げれば、タンパク質、核酸、脂質、細胞、ウイルス、糖、多糖、ビタミンまたはイオンのような生体を表わす。単語「アッセイ」は、特定の手順または一連の手順が後に続き、それらはそれぞれのアッセイを表わすと捉えてよいことを強調する。アッセイは、生物学的物質の存在、不存在、量または活性を評価するための、定量化された試薬および確立されたプロトコルを含んでよい。
【0053】
用語「結合アッセイ」は、一般に、物の相互作用を判定する方法を指す。それ故に、結合アッセイの一部の実施態様を用いて、物質のような物が、他の物、例えばタンパク質、核酸または任意の他の物質に結合する能力を、定性的または定量的に判定することができる。結合アッセイの一部の実施態様を用いて、方法/アッセイにおいて用いられる結合パートナーなどの試薬に対する、物の結合に基づいて、物の存在および/または量を分析することができる。例示的な例として、TNFα結合アッセイは、TNFαに特異的に結合する、本明細書に開示される結合メンバーなどの結合パートナーの使用を含んでよい。結合アッセイが、結合パートナーとして免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子の使用に基づく場合、そのような方法/手順は、「免疫測定法」とも呼ばれ得る。この点について、免疫測定法から得られるシグナルは、1つまたは複数の免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子と、結合パートナー(単数または複数)が結合する必須エピトープ(単数または複数)を含む対応する分析物(TNFαなど)との間に形成される、複合体の直接的な結果であることが理解される。そのようなアッセイは分析物全長を検出し得て、アッセイ結果は目的のバイオマーカーの濃度として表され得るが、アッセイからのシグナルは、実際、サンプル中に存在する全てのそのような「免疫反応性」分子の結果である。分析物の量および/または存在は、ドットブロット、ウエスタンブロット、クロマトグラフィー法、質量分析などのタンパク質測定、およびmRNA定量化などの核酸測定を含む、免疫測定法以外の方法によっても判定され得る。
【0054】
本明細書において用いられる用語「保存的改変」および「保存的置換」は、それぞれ、対応する参照に関する特性を、物理的、生物学的、化学的、または機能的に維持する改変および置換を指す。保存的置換を有する配列を含む分子は、例えば、共有結合または水素結合を形成する同等の能力および/または同等の極性を含む同様のサイズ、形状、電荷、化学的特性を有する。そのような保存的改変は、限定されないが、1つまたは複数の核酸塩基およびアミノ酸の置換、付加および欠失を含む。
【0055】
例えば、保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、似た側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものを含む。例えば、抗原への結合に関して非必須であるアミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換することができ、例えば、セリンはトレオニンに関して置換され得る。アミノ酸残基は、通常、共通の似た側鎖特性に基づいて、以下のようなファミリーに分類される:
1.非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン)、
2.無電荷極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、プロリン、システイン、トリプトファン)、
3.塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン)、
4.酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、
5.β−分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および
6.芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)。
【0056】
この分類は、さらに分割することができる。さらなる方向付けとして、以下の8個の群は、それぞれ、互いに関する保存的置換を定義すると典型的に捉えることができるアミノ酸を含む:
1)アラニン(Ala)、グリシン(Gly);
2)アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu);
3)アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln);
4)アルギニン(Arg)、リジン(Lys);
5)イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、バリン(Val);
6)フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp);
7)セリン(Ser)、トレオニン(Thr);および
8)システイン(Cys)、メチオニン(Met)。
【0057】
保存的置換は、上記の6グループの1つの中の最初のアミノ酸の、6グループの同一グループの中のさらなるアミノ酸による置換であると捉えることができる。
【0058】
保存的置換は一般に、突然変異されるアミノ酸に従ってリスト化された以下の置換であり、それぞれ、保存的であると捉えることのできる1つまたは複数の置換(単数または複数)が後に続く:Ala→Gly、Ser、Val;Arg→Lys;Asn→Gln、His;Asp→Glu;Cys→Ser;Gln→Asn;Glu→Asp;Gly→Ala;His→Arg、Asn、Gln;Ile→Leu、Val;Leu→Ile、Val;Lys→Arg、Gln、Glu;Met→Leu、Tyr、Ile;Phe→Met、Leu、Tyr;Ser→Thr;Thr→Ser;Trp→Tyr;Tyr→Trp、Phe;Val→Ile、Leu。他の置換もまた許容され、経験的に、または、他の公知の保存的または非保存的置換により、決定することができる。また、保存的置換は、非天然アミノ酸の使用を伴ってもよい。
【0059】
非保存的置換、すなわち、あるファミリーのメンバーを、別のファミリーのメンバーに対して交換することは、例えば、結合メンバーの電荷、双極子モーメント、サイズ、親水性、疎水性または構造に関して実質的な変化をもたらし得て、それは、特に、標的分子への結合に必須のアミノ酸が影響を受けた場合に、結合活性の有意な下降をもたらし得る。また、非保存的置換は、非天然アミノ酸の使用を伴ってもよい。
【0060】
保存的および非保存的改変は、当該分野で知られている様々な標準的技術、例えば、コンビナトリアルケミストリー、部位特異的DNA突然変異誘発、PCR−仲介および/またはカセット突然変異誘発、ペプチド/タンパク質化学合成、親の結合メンバー内の反応基を特異的に改変する化学反応により、親の結合メンバーへ導入することができる。変異は、それらの化学的、生物学的、生物物理学的および/または生化学的特性に関して、常法により試験することができる。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、親配列の機能的および一般に構造的な特徴も実質的に変更しない。したがって、保存的置換を含む結合メンバーの結合特性は、少なくとも本質的に変更されない。さらに、保存的アミノ酸置換は、一般に、親配列の二次構造を実質的に改変または破壊しない。
【0061】
用語「検出可能な標識」は、本明細書において、直接的または間接的のいずれかの、物理的または化学的手段によるその検出または測定が、サンプルにおける選択された標的の生物学的物質の存在を示す、任意の物質を指すために用いられる。有用な検出可能な標識の代表的な例は、限定されないが、吸光、蛍光、反射、光散乱、リン光、または発光特性に基づいて直接的または間接的に検出可能な分子またはイオン、それらの放射能特性により検出可能な分子またはイオン、または、それらの核磁気共鳴または常磁性特性により検出可能な分子またはイオンを含む。検出可能な標識は、一部の実施態様では、吸光または蛍光に基づいて間接的に検出することのできる分子、例えば、適切な基質を、例えば、非吸光分子から吸光分子に、または非蛍光分子から蛍光分子に変換させる様々な酵素であってよい。
【0062】
本明細書に開示される結合メンバーを含む、化合物のようなものの「有効量」または「治療的有効量」は、−単回投与として、または一連の投与量の一部としてのいずれか−の量であり、用いられた投与計画で、所望の治療的効果を生じ、すなわち、特定の治療ゴールに到達する。治療的有効量は、一般に、関連のある病状の治療または管理において治療的利益を提供するために、または、症状の存在と関連する1つまたは複数の症状を遅延または最小化するために、十分な量である。用量は、患者および臨床因子(例えば、患者の年令、体重、性別、病歴、疾患の重症度および/または治療に対する応答)、治療される疾患の性質、投与される特定の組成物、投与経路、および他の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0063】
「エピトープ」は抗原性であり、したがって、エピトープは、「抗原性構造」または「抗原性決定因子」を定義するとも捉えられ得る。したがって、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子の結合ドメインは、「抗原−相互作用−部位」である。用語「抗原−相互作用−部位」は、本明細書によれば、特異的な抗原または特異的な抗原群、例えば、異なる種のTNFαと、特異的に相互作用することが可能な、ポリペプチドのモチーフを定義する。この結合/相互作用は、「特異的認識」を定義するとも理解される。エピトープは、通常、ポリペプチド鎖または単−または多糖類などの1つまたは複数の化学物質の部分の空間的に接近可能な表面分類からなる。エピトープを定義する表面分類は、例えば、アミノ酸または糖側鎖の分類であってよい。エピトープは、通常、特異的な三次元構造特性、ならびに、特異的な荷電特性を有する。立体構造的および非立体構造的エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者は失われないという点で区別される。
【0064】
また、用語「エピトープ」は、TNFαなどの抗原上の部位を指し、それと、免疫グロブリン、T細胞受容体、または免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子が複合体を形成する。一部の実施態様では、エピトープは、分子上の部位であり、それに対して、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子が産生され、および/または、抗体が結合する。例えば、エピトープは、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子によって認識され得る。エピトープは、「線状エピトープ」であってよく、それは、アミノ酸一次配列が、認識されるエピトープを含むエピトープである。線状エピトープは、典型的に、唯一の配列内に少なくとも3個、通常はそれより多く、少なくとも5個のアミノ酸を含む。線状エピトープは、例えば、唯一の配列内に約8〜約10個のアミノ酸を含み得る。また、エピトープは、「立体構造的エピトープ」であってもよく、それは、線状エピトープとは対照的に、エピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されるエピトープを定義する唯一の構成要素ではないエピトープ(例えば、アミノ酸の一次配列が、エピトープを定義する抗体により必ずしも認識されないエピトープ)である。典型的に、立体構造的エピトープは、線状エピトープよりも多くの数のアミノ酸を含む。立体構造的エピトープの認識に関して、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子は、ペプチドまたはタンパク質、または、ペプチドまたはタンパク質のフラグメントなどの抗原の三次元構造を認識する。例示的な例として、タンパク質分子を折り畳んで三次元構造を形成する場合、特定のアミノ酸、および/または、立体構造的エピトープを形成するポリペプチド主鎖の全部または一部は並置され、抗体がエピトープを認識するのを可能にする。エピトープの構造を決定する方法は、限定されないが、X線結晶解析、二次元核磁気共鳴分光法、部位特異的スピン標識、および電子常磁体共鳴分光分析を含む。
【0065】
ポリペプチド、核酸または細胞に対する言及における用語「濃縮」の使用により、細胞集団を含む特定のアミノ酸/ヌクレオチド配列または細胞が、サンプルが得られた天然源よりも有意に高い画分(2〜5倍)の、目的サンプル中に存在する全アミノ酸配列または核酸配列を構成することを意味する。ポリペプチド、核酸または細胞は、正常または病気の生物よりも、または、正常または病気の細胞、または配列が取得された細胞よりも、有意に高い画分を構成してもよい。このことは、存在する他のアミノ酸/ヌクレオチド配列または細胞の量の選択的低減により、または、特定のアミノ酸/ヌクレオチド配列または目的細胞の量の選択的増大により、または、その2つの組み合わせにより、引き起こされ得る。しかしながら、濃縮は、他のアミノ酸配列、ヌクレオチド配列または細胞が存在しないことを暗示しないことに注意すべきである。その用語は、目的配列の相対量が有意に増大されたことを定義するだけである。ここでの用語「有意」は、増大レベルが、そのような増大を達成する者にとって有用であることを示すために用いられ、一般に、他のアミノ酸または核酸配列と比較して、少なくとも約2倍、例えば少なくとも約5〜10倍、またはそれよりもさらに多い増大を意味する。その用語は、所望のアミノ酸配列、ヌクレオチド配列または細胞の割合を増大するために人が介在した状況のみをカバーすることを意味する。
【0066】
用語「から本質的になる」は、サンプルまたは組成物の特性に影響を及ぼさないサンプルまたは組成物中のさらなる構成要素の存在を許すと理解される。例示的な例として、医薬組成物は、活性成分から本質的になる場合、賦形剤を含んでよい。
【0067】
バイオマーカーに関する用語「発現する(expressing)」および「発現(expression)」は、当該分野において使用される通常の意味において理解されることが意図される。ペプチド/タンパク質は、mRNAへの核酸の転写を介して細胞により発現され、ポリペプチドへの翻訳が続き、それは折り畳まれ、場合によりさらにプロセッシングされる。それ故に、細胞がペプチド/タンパク質を発現しているという記述は、ペプチド/タンパク質が、それぞれの細胞の発現機構によって合成されていることを暗示する。
【0068】
用語「発現カセット」は、場合により1つまたは複数の制御配列と組み合わせた、コード配列およびプロモーターを指す。酵素に関する発現カセットは、例えば、制限されずに、翻訳開始制御配列を含む。
【0069】
用語「制御配列」は、コード配列の転写を調節する遺伝子または発現カセット内の核酸配列を指し、したがって、プロモーター、エンハンサー、転写終結配列、および翻訳開始配列を含む。
【0070】
それぞれの生物学的プロセス自体に関して、用語「発現」、「遺伝子発現」または「発現する」は、遺伝子の核酸配列にコードされる情報をまずメッセンジャーRNA(mRNA)に変換し、それからタンパク質へ変換する、調節経路全体を指す。したがって、遺伝子の発現は、一次hnRNAへのその転写、成熟RNAへのこのhnRNAのプロセッシング、および、タンパク質の対応するアミノ酸配列へのmRNA配列の翻訳を含む。また、この文脈において、用語「遺伝子産物」は、例えば、その遺伝子によりコードされる最終タンパク質(そのスプライス変異を含む)および、適切な場合はそれぞれの前駆体タンパク質を含むタンパク質だけでなく、遺伝子発現の過程中の「最初の遺伝子産物」と見なされ得るそれぞれのmRNAも指すことにも注意すべきである。
【0071】
本開示の範囲内で、用語「抗体」は、免疫グロブリン全長ならびにそのフラグメントを指す。そのような免疫グロブリン全長は、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、ベニア化またはヒト抗体であってよい。本明細書に開示される抗体は、一部の実施態様では、グリコシル化であってよい。一部の実施態様では、本明細書に開示される抗体は、グリコシル化ではないものであってよい。
【0072】
免疫グロブリンまたはタンパク性結合分子などのポリペプチドに対する言及における「フラグメント」は、−所望の標的、例えば抗原(TNFαなど)に特異的に結合する免疫グロブリンの場合、全長配列よりも短い限り、および、タンパク質の目的の機能を行なうことが可能である限り、対応するポリペプチドに存在する任意のアミノ酸配列を意味する。用語「抗体フラグメント」は、特定の標的、典型的には分子に関して特異的な結合親和性を示す、免疫グロブリンの部分、たいていは超可変領域および周りの重鎖および軽鎖の部分を指す。超可変領域は、ポリペプチド標的に物理的に結合する免疫グロブリンの部分である。したがって、抗体フラグメントは、免疫グロブリンの標的特異性を保持する免疫グロブリン全長の1つまたは複数の部分を含む、またはからなる。そのような抗体フラグメントは、例えば、免疫グロブリン全長の定常領域(Fc領域)を少なくとも部分的に欠失してよい。一部の実施態様では、抗体フラグメントは、免疫グロブリン全長の消化により生産される。また、抗体フラグメントは、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン鎖の1つまたは複数の部分を含む合成または組み換え構築物であってもよい(例えばHOLLIGER,P.and Hudson,J.Engineered antibody fragments and the rise of single domains.Nature Biotechnology 2005,vol.23,no.9,p.1126−1136を参照)。抗体フラグメントの例は、限定されないが、scFv、Fab、Fv、Fab’、F(ab’)
2フラグメント、dAb、VHH、ナノボディ、V(NAR)またはいわゆる最小認識単位を含む。
【0073】
「単鎖可変フラグメント」または「単鎖抗体」または「scFv」は、抗体フラグメントのタイプの例である。scFvは、リンカーにより連結された免疫グロブリンのVHおよびVLドメインを含む融合タンパク質である。したがって、それは、免疫グロブリン全長に存在する定常Fc領域を欠く。
【0074】
本明細書において用いられる「結合メンバー」は、免疫グロブリン全長、抗体フラグメント、タンパク性の非−免疫グロブリン足場、および/または、免疫グロブリン様の機能を有する他の結合化合物を指す。典型的に、結合メンバーは、タンパク性の結合分子である。そのような結合メンバーは、一価または多価であってよく、すなわち、1つまたは複数の抗原結合部位を有する。一価結合メンバーの非限定の例は、scFv、Fabフラグメント、dAb、VHH、DARPin、アフィリンおよびナノボディを含む。多価結合メンバーは、2、3、4またはそれより多くの抗原結合部位を有することができ、それにより、1つまたは複数の異なる抗原を認識することができる。免疫グロブリン全長、F(ab’)
2フラグメント、ビス−scFv(またはタンデムscFv)およびダイアボディは、多価結合メンバーの非限定の例であり;例示的な多価結合メンバーでは、2つの結合部位が存在し、すなわち、結合メンバーは二価である。
【0075】
一部の実施態様では、多価結合メンバーは二重特異性であり、すなわち、結合メンバーは、2つの異なる標的または1つの標的分子上の2つの異なる標的部位に対して向けられる。二重特異性抗体は、例えば、MULLER,D.and Kontermann,R.E.Bispecific antibodies.Edited by DUBEL,S.Weinheim:Wiley−VCH,2007.ISBN 3527314539.p.345−378にレビューされている。一部の実施態様では、多価結合メンバーは、2個よりも多い、例えば、3または4個の異なる抗原に関するそれぞれ3または4個の異なる結合部位を含む。そのような結合メンバーは、多価および多重特異性であり、具体的にはそれぞれ、トリ−またはテトラ−特異性である。
【0076】
「非−抗体足場」は、例えば、FIELDER,M.and Skerra,A.Non−antibody scaffolds.Edited by DUBEL,S.Weinheim:Wiley−VCH,2007.ISBN 3527314539.p.467−500;または、GILBRETH,R.N.and Koide,S.Structural insights for engineering binding proteins based on non−antibody scaffolds.Curr Opin Struct Biol 2012,vol.22,p.413−420に記載される抗原−結合ポリペプチドである。非限定の例は、アフィボディ、アフィリン分子、AdNectin、リポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン(Anticalin(登録商標))、DARPin、ノッチン、Kunitz型ドメイン、アビマー、テトラネクチンおよびトランス−ボディを含む。アビマーは、いくつかの細胞表面受容体において一連の多数のドメインとして生じるいわゆるA−ドメインを含む(Silverman,J.,et al.,Nature Biotechnology(2005)23,1556−1561)。テトラネクチンは、それぞれのヒトのホモ三量体タンパク質から得られ、同様に、所望の結合のために改変することのできるC型レクチンドメイン内のループ領域を含む(同文献)。
【0077】
「結合化合物」は、標的に結合する、および、上記で定義した免疫グロブリン全長、抗体フラグメントおよび非−抗体足場のクラスに属さない、化学的または生物学的分子である。結合化合物の例は、制限されずに、マクロライド(GUNDLURU,M.K.et al.Design,synthesis and initial biological evaluation of a novel pladienolide analog scaffold.Medchemcomm.2011,vol.2,p.904−908;Paterson,I.et al.Total synthesis and biological evaluation of a series of macrocyclic hybrids and analogies of the antimitotic natural products dictyostatin,discodermolide and taxol.Chem Asian J.2011,vol.6,p.459−473;Morita,H.et al.Synthesis of unnatural alkaloid scaffolds by exploiting plant polyketide synthase.PNAS 2011,vol.108,p.13504−13509)、分子インプリントポリマー(HOSHINO,Y.et al.Recognition,neutralization and clearance of target peptides in the blood stream of living mice by molecular imprinted polymer nanoparticles:a plastic antibody.J Am Chem Soc,2010,vol.19,p.664−6645)、アプタマー(STREHLITZ,B.,et al.Aptamers for pharmaceuticals and their application in environmental analytics.Bioanal Rev 2012,vol.4,p.1−30;YE,M.et al.Generating Aptamers by Cell−SELEX for Applications in Molecular Medicine.Int J Mol Sci 2012,vol.13,p.3341−3353)、シュピーゲルマー(Spiegelmer)(例えば、MAASCH,C.et al.Polyethylenimine−Polyplexes of Spiegelmer NOX−A50 directed against intracellular high mobility group protein A1(HMGA1)reduce tumor growth in vivo.JBC 2010,vol.285,p.40012−40018を参照)、またはペプチド(cyclic or linear;see,e.g.,GOULD,A.et al.Cyclotides,a novel ultrastable polypeptide scaffold for drug discovery.Curr Pharm Des.2011,vol.17,p.4294−4307)を含む。タンパク質リガンドとして作用することができるペプトイドは、側鎖がα炭素原子ではなくアミド窒素に連結している点でペプチドとは異なる、オリゴ(N−アルキル)グリシンである。ペプトイドは典型的に、プロテアーゼおよび他の修飾酵素に抵抗性であり、ペプチドよりもさらに高い細胞透過性を有し得る(例えば、Kwon,Y.−U.,and Kodadek,T.,J.Am.Chem.Soc.(2007)129,1508−1509を参照)。
【0078】
本明細書に開示される結合メンバーは、必要に応じて、ペグ化または超グリコシル化され得る(以下も参照)。一部の実施態様では、結合メンバーは、上記の例示的なタンパク性結合分子のうちの1つ、および、アルブミン−結合ドメイン、例えば、連鎖球菌プロテインGのアルブミン−結合ドメインの、融合タンパク質である。一部の実施態様では、結合メンバーは、免疫グロブリンフラグメント、例えば、単鎖ダイアボディ、および、免疫グロブリン結合ドメイン、例えば、細菌性免疫グロブリン結合ドメインの、融合タンパク質である。例示的な例として、単鎖ダイアボディは、Unverdorbenら(Protein Engineering,Design&Selection[2012]25,81−88)により記載されるように、ブドウ球菌プロテインAのドメインBに融合され得る。
【0079】
「IC
50」または「半数−最大阻害濃度」は、拮抗薬の効能の測定であり、化合物が生物学的または生化学的機能を阻害する有効性を定量的に説明する。したがって、この値は、どれくらいの結合メンバーなどの特定のものが、特定の生物学的または生化学的プロセスまたは機能を50%阻害するために必要なのかを示す。結合力の直接的な指標ではないが、IC
50およびK
iの値は相関し、Cheng−Prusoff式により決定することができる(CHENG Y.and Prusoff W.H.Relationship between the inhibition constant(Ki)and the concentration of inhibitor which causes 50 per cent inhibition(IC50)of an enzymatic reaction.Biochem Pharmacol 1973,vol.22,p.3099−3108;RAMMES,G.,et al.Identification of a domain which affects kinetics and antagonistic potency of clozapine at 5−HT3 receptors.PLOS one 2009,vol.4,p.1−14;ZHEN,J.,et al.Concentration of receptor and ligand revisited in a modified receptor binding protocol for high−affinity radioligands:[
3H]spiperone binding to D
2 and D
3 dopamine receptors.J Neurosci Methods 2010,vol.188,p.32−38)。
【0080】
用語「フレームワーク」(FR)は、可変軽鎖(VL)または可変重鎖(VH)のいずれかの、それぞれのCDRを埋め込んだ可変免疫グロブリンドメインの足場を指す。VLおよび/またはVHフレームワークは、典型的に、CDR領域の横の、4つのフレームワーク部分、FR1、FR2、FR3およびFR4を含む。したがって、当該分野で知られているように、VLは、一般構造:(FR−L1)−(CDR−L1)−(FR−L2)−(CDR−L2)−(FR−L3)−(CDR−L3)−(FR−L4)を有し、一方で、VHは、一般構造:(FR−H1)−(CDR−H1)−(FR−H2)−(CDR−H2)−(FR−H3)−(CDR−H3)−(FR−H4)を有する。
【0081】
用語「CDR」は、抗体の超可変領域を指し、それは主に抗原結合に寄与する。典型的に、抗原結合部位は、フレームワーク足場に埋め込まれた6個のCDRを含む。ここで、VLのCDRは、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3と呼ばれ、一方で、VHのCDRは、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3と呼ばれる。これらは、KABAT,E.A.,et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th edition.Edited by U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES.NIH Publications,1991.p.91−3242に説明されるように同定することができる。しかしながら、本明細書において用いられるCDR−H1は、27位で始まって36位より前で終わるという点で、Kabat定義とは異なる。(説明に関して
図5を参照)。
【0082】
本明細書において用いられるように、抗体のVHおよびVLにおけるアミノ酸残基の位置を特定するためのナンバリングシステムは、HONEGGER,A.and Pluckthun,A.Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:An automatic modelling and analysis tool.JMB 2001,vol.309,p.657−670により説明される「AHo」−システムに相当する。その刊行物は、AHoおよびKabatシステムの間の変換表をさらに提供する(KABAT,E.A.,et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest. 5
th edition.Edited by U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES.NIH Publications,1991.p.91−3242)。
【0083】
「ヒト化」抗体は、非−ヒト親抗体の6個のCDR領域またはそれらの変異、または合成CDRの1つまたは複数、典型的には全てを含む抗体を指し、そのフレームワークは、例えば、(i)非−ヒト親抗体の1つまたは複数のフレームワーク残基を潜在的に含む、ヒトフレームワーク、または、(ii)天然に生産されるヒトフレームワークに対する類似性が増大するように改変された非−ヒト抗体由来のフレームワークである。抗体をヒト化する方法は当該分野で知られていて、例えばLEGER,O.and Saldanha,J.Antibody Drug Discovery.Edited by WOOD,C.London:Imperial College Press,2011.ISBN 1848166281.p.1−23を参照。
【0084】
用語「免疫化する(immunize)」、「免疫化」、または「免疫化する(immunizing)」は、以下により詳細に説明するように、動物の免疫系を、抗原またはそのエピトープに曝露することを指す。抗原は、所望の投与経路、例えば、注射、吸入または摂取を用いて、動物へ導入され得る。同一抗原への2回目の曝露の際に、適応性の免疫応答、具体的にはT細胞およびB細胞応答が高められる。
【0085】
用語「単離される」は、ペプチドまたは核酸分子のような物が、その正常の生理学的環境、例えば天然源から取り除かれていること、または、ペプチドまたは核酸が合成されることを示す。用語「単離される」の使用は、天然起源の配列が、その正常の細胞(すなわち染色体)環境から取り除かれていることを示す。したがって、その配列は、無細胞溶液中にあり得て、または異なる細胞環境中に置かれ得る。ポリペプチドまたは核酸分子に対する言及での「単離される」は、互いに連結されたアミノ酸(2個以上のアミノ酸)またはヌクレオチドのポリマーを意味し、天然源から単離される、または合成される、ポリペプチドまたは核酸分子を含む。用語「単離される」は、その配列が、存在する唯一のアミノ酸鎖またはヌクレオチド鎖であることを暗示しないが、例えば、天然にそれと関連する非−アミノ酸材料および/または非−核酸材料がそれぞれ本質的にフリーで、例えば約90〜95%の純度またはそれよりも高いことを暗示する。
【0086】
本明細書において用いられる用語「同一性」は、2つのタンパク質または核酸間の配列マッチを指す。比較されるタンパク質または核酸配列は、例えばEMBOSS Needle(対でのアライメント;www.ebi.ac.ukで利用可能)などの生物情報学ツールを用いて、最大の同一性を与えるように並べられる。比較される配列内の同一の位置が、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基により占められる場合は、それぞれの分子は、まさにその位置で同一である。したがって、「同一性の割合」は、マッチする位置の数を、比較される位置の数で割って100%をかけた関数である。例えば、10個の配列位置のうちの6個が同一であるならば、同一性は60%である。2つのタンパク質配列間の同一性の割合は、例えば、EMBOSS Needleに組み込まれたNeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(NEEDLEMAN,S.B.and Wunsch,C.D.A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins.JMB 1970,vol.48,p.443−453)を用いて、BLOSUM62マトリックス、「ギャップ開始ペナルティ(gap open penalty)」10、「ギャップ伸長ペナルティ(gap extend penalty)」0.5、偽性「終了ギャップペナルティ(end gap penalty)」、「終了ギャップ開始ペナルティ(end gap open penalty)」10、および、「終了ギャップ伸長ペナルティ(end gap extend penalty)」0.5を用いて決定することができる。同一の一次アミノ酸または核酸配列を有する2つの分子は、いかなる化学的および/または生物学的修飾にも関係なく、同一である。例えば、同一の一次アミノ酸配列であるが異なるグリコシル化パターンを有する2つの抗体は、この定義によれば同一である。核酸の場合は、例えば、同一の配列だがリン酸の代わりにチオリン酸のような異なる結合成分を有する2つの分子は、この定義によれば同一である。
【0087】
本明細書において用いられる用語「核酸分子」は、任意のあり得る立体配置、例えば一本鎖、二本鎖またはそれらの組み合わせでの、任意の核酸を指す。核酸の例は、例えば、DNA分子、RNA分子、ヌクレオチド類似体または核酸化学を用いて生産されるDNAまたはRNAの類似体、ロックド核酸分子(LNA)、タンパク質核酸分子(PNA)、アルキルホスホネートおよびアルキルホスホトリエステル核酸分子およびtecto−RNA分子を含む(例えば、Liu,B.,et al.,J.Am.Chem.Soc.(2004)126,4076−4077)。LNAは、C4’およびO2’の間にメチレン橋を有する修飾RNA主鎖を有し、それぞれの分子に、より高い二重鎖安定性およびヌクレアーゼ抵抗性を与える。アルキルホスホネートおよびアルキルホスホトリエステル核酸分子は、DNAまたはRNA分子として見ることができ、核酸主鎖内のリン酸基のP−OH基を、アルキル基およびアルコキシ基にそれぞれ交換することにより、核酸主鎖のリン酸基が中和されている。DNAまたはRNAは、ゲノム起源または合成起源であってよく、一本鎖または二本鎖であってよい。そのような核酸は、例えば、mRNA、cRNA、合成RNA、ゲノムDNA、cDNA合成DNA、DNAおよびRNAの共重合体、オリゴヌクレオチドなどであってよい。それぞれの核酸は、非−天然ヌクレオチド類似体をさらに含んでよく、および/または、親和性タグまたは標識に連結されてよい。
【0088】
多くのヌクレオチド類似体が公知であり、本明細書に開示される方法において用いられる核酸において用いることができる。ヌクレオチド類似体は、例えば、塩基、糖、またはリン酸部分に修飾を含むヌクレオチドである。例示的な例として、siRNAの2’−OH残基を、2’F、2’O−Meまたは2’H残基で置換することは、それぞれのRNAのインビボ安定性を改善することが知られている。塩基部分での修飾は、A、C、G、およびT/U、異なるプリンまたはピリミジン塩基の天然または合成の修飾、例えば、ウラシル−5−イル、ヒポキサンチン−9−イル、および2−アミノアデニン−9−イル、ならびに、非−プリンまたは非−ピリミジンヌクレオチド塩基であってよい。他のヌクレオチド類似体は、ユニバーサル塩基としての役割を果たす。ユニバーサル塩基の例は、3−ニトロピロールおよび5−ニトロインドールを含む。ユニバーサル塩基は、任意の他の塩基と塩基対を形成することが可能である。塩基修飾は、しばしば、例えば2’−O−メトキシエチルのような糖修飾などと組み合わせて、増大した二重鎖安定性などの独特の特性を獲得することができる。
【0089】
本書類で用いられる表現「薬学的に許容できる」は、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を伴わずに、人間および動物の組織と接触させた使用に適切であり、合理的な利益/リスク比に見合う、健全な医学的判断の範囲内である活性の化合物、材料、組成物、担体、および/または剤形を指す。
【0090】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指し、特定の最低限の長さの産物に限定されない。両方の用語が同時に使用される場合、この二重の命名は、当該分野において、協調して両方の用語の使用を構成する。
【0091】
医学的/生理学的な文脈における、すなわち生理学的状態の文脈における、用語「予防」は、生物が異常な症状に罹る、または発症する、可能性を低減することを指す。
【0092】
用語「精製される」は、結合メンバーの元の環境と比較した相対的な指標であると理解され、それにより、結合メンバーが、天然の環境内よりも相対的に純粋であることの指標を表わす。したがって、それは、他の、免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子、免疫グロブリンまたは抗体フラグメントからの絶対的な純度の意味での絶対的な値のみを指すものではないが含む。元のレベルと比較して、結合メンバーを精製した後のレベルは、一般に、少なくとも2〜5倍さらに高い(例えば、mg/mlの観点から)。少なくとも1オーダーのマグニチュード、例えば約2または3オーダーの精製(例えば約4または5オーダーのマグニチュードを含む)は、明示的に考慮される。少なくとも本質的に汚染のない、具体的には他のタンパク性の物がない、結合メンバーを、機能的に有意なレベル、例えば約90%、約95%、または99%の純度で得ることが望ましくあり得る。他の物、例えば、核酸分子、ペプチドまたはタンパク質、または細胞に関して上記は準用される。
【0093】
「類似」のタンパク質配列は、並べた場合に、類似のアミノ酸残基を、強制的ではないがほとんどの場合は同一のアミノ酸残基を、比較される配列の同一の位置に共有するものである。類似のアミノ酸残基は、側鎖の化学的特徴により、ファミリーにグループ化される。これらのファミリーは、「保存的アミノ酸置換」に関して以下に説明される。配列間の「類似性の割合」は、比較される配列の同一の配列位置に同一または類似の残基を含む位置の数を、比較される位置の総数で割って100%をかけたものである。例えば、10個の配列位置のうち6個が同一のアミノ酸残基を有し、10個の位置のうち2個が類似の残基を含むならば、その配列は、80%の類似性を有する。2つの配列間の類似性は、例えば、EMBOSS Needleを用いて決定することができる。
【0094】
本書類で用いられる用語「特異的」は、結合メンバーが、TNFαなどの所定の標的に対して向けられる、結合する、または反応することを示すと理解される。したがって、向けられる、結合する、または反応することは、結合メンバーが、TNFαと特異的に結合することを含む。この文脈での用語「特異的」は、結合メンバーが、TNFα、または/およびその部分と反応するが、別のタンパク質とは少なくとも本質的に反応しないことを意味する。用語「別のタンパク質」は、例えば、結合メンバーが向けられるTNFαと近縁または相同のタンパク質を含む、任意のタンパク質を含む。用語「本質的に結合しない」は、結合メンバーが、別のタンパク質に対して特定の親和性を有さないこと、すなわち、TNFαに対する親和性と比較した場合に、約30%未満の交差反応性を示すことを意味する。一部の実施態様では、結合メンバーは、約20%未満、例えば、約10%未満の交差反応性を示す。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに対する親和性と比較した場合に、約9、8、または7%未満の交差反応性を示す。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに対する親和性と比較した場合に、約6%未満、例えば、約5%未満の交差反応性を示す。結合メンバーが本明細書において上記に定義したように特異的に反応するかどうかは、とりわけ、TNFαとのそれぞれの結合メンバーの反応と、他のタンパク質(単数または複数)との結合メンバーの反応とを比較することにより、容易に試験することができる。用語「特異的に認識する」は、用語「向けられる」または「反応する」と相互交換可能に用いることができ、本開示の文脈において、特定の分子、一般には免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、または免疫グロブリン様の機能を有するタンパク性結合分子が、本明細書において定義されるエピトープの少なくとも2個のアミノ酸(少なくとも3個、例えば少なくとも4個またはさらにより多くを含む)と、特異的に相互作用および/または結合することが可能であることを意味する。したがって、一般に、免疫グロブリンまたはタンパク性結合分子は、TNFαなどのそれぞれのエピトープと複合体を形成することができる。そのような結合は、「鍵と鍵穴の原理」の特異性により例示され得る。また、「特異的な結合」は、例えば、ウエスタンブロット、ELISA−、RIA−、ECL−、IRMA−テスト、FACS、IHCおよびペプチドスキャンによって判定することもできる。
【0095】
本明細書において用いられる用語「階層化する(stratifying)」および「階層化」は、本明細書に開示される結合メンバーに対する反応の対応する可能性のような、それぞれのグループにマッチする特徴に従って、特定のグループに個々が割り当てられることを示す。グループは、例えば、結合メンバーを、試験する、処方する、一時中断する、中止するためであり得る。したがって、本発明に係る方法または使用の一部の実施態様では、対象は、治療の臨床試験のサブグループに階層化され得る。
【0096】
また、本明細書において用いられる用語「対象」は、個体としても扱われ、ヒトまたは非−ヒト動物、一般に哺乳類を指す。対象は、哺乳類の種、例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、類人猿またはヒトであってよい。したがって、本書類に記載の方法、使用および組成物は、ヒトおよび獣医学の疾患の両方に適用可能である。以下により詳細に説明されるように、サンプルは、対象から得られている。したがって、サンプルでの発現レベルから引き出される結論およびそれに基づく決定は、サンプルを取得した対象(誰/何)に関係することが理解される。さらに、対象は典型的に生体である一方で、本書類に記載の方法または使用は、死後分析で用いてもよい。対象が、疾患または症状のための医療ケアを受けている、生きているヒトである場合は、「患者」としても扱われる。
【0097】
本明細書において用いられる用語「治療」および「治療する(treating)」は、治療的効果を有する予防的または防止的手段を指し、対象生物における異常な(病理学的を含む)状態を、防止する、減速する(減少させる)、または少なくとも部分的に緩和または解消する。本開示に係る治療は、本明細書に記載の薬学的に有効量の分子、すなわち、とりわけ、本明細書に開示される結合メンバー(抗体など)、核酸、ベクターまたは宿主細胞を、それらを必要とする対象に投与して、TNFα−が介在する疾患の1つまたは複数の症状を、防止する、治す、発症および/または進行を遅らせる、重症度を低下させる、安定化する、調節する、治す、または改善することを含む。典型的に、結合メンバー、核酸、ベクターまたは宿主細胞は、本明細書に記載されるものを含む医薬組成物において提供される。治療を必要とする者は、すでに疾患を有する者、ならびに、疾患を有する傾向がある者、または、疾患が防止(予防)されるべき者を含む。一般に、治療は、疾患または病状の進行および/または存在と関連する症状の進行を、低減させ、安定化し、または阻害する。用語「投与」は、化合物を、対象の細胞、体液または組織へ取り込む方法に関する。用語「治療的効果」は、異常な状態を引き起こす、またはそれに寄与する因子の阻害または活性化を指す。治療的効果は、異常な状態または疾患の1つまたは複数の症状を、ある程度緩和する。用語「異常な状態」は、その生物におけるそれらの正常な機能から外れた、生物の細胞または組織における機能を指す。
【0098】
本明細書において用いられる用語「TNFα特異的な結合」は、結合メンバーが、抗−TNFα結合メンバーが結合するTNFαエピトープを含まない構造的に異なる抗原よりも高い親和性で、TNFαに結合することを指す。特異的な結合は、1マイクロモルよりも低い解離平衡定数(K
D)により示される。この定数は、例えば、Attana機器でのQuartz Crystal Microbalance(QCM)、または、BIACORE機器での表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて、決定することができる。
【0099】
本明細書において用いられる「hTNFα」は、ヒトTNFαを指し、天然のhTNFαおよびrhTNFαを含む。「rTNFα」は、組み換えTNFαを指す。組み換えTNFαは、それが調製される方法に応じて、アミノ末端メチオニン残基を有してよく、または有さなくてよい。「rhTNFα」βは、組み換えヒトTNFαを指す。rhTNFαは、例えば、Peprotech,USA,カタログ番号300−01Aから得てよい。また、TNFαは、ヒトまたは非−ヒト起源の生物学的サンプルからの単離により得てもよい。
【0100】
「変異」は、本明細書に開示される親配列の少なくとも1つの所望の活性を保持しながら、1つまたは複数のアミノ酸残基または核酸塩基の付加(挿入を含む)、欠失および/または置換により親配列とは異なるアミノ酸または核酸配列を指す。抗体の場合、そのような所望の活性は、特異的な抗原結合を含んでよい。同様に、変異の核酸配列は、親配列と比較した場合に、1つまたは複数の核酸塩基の付加、欠失および/または置換により改変されてよいが、コードされる抗体は、上述のように所望の活性を保持する。変異は、自然発生、例えば、対立遺伝子変異またはスプライス変異であってよく、または人為的に構築されてよい。
【0101】
核酸ハイブリダイゼーション反応は、異なるストリンジェンシーの条件下で行なうことができる。「ストリンジェントな条件」は、広く知られていて、当該分野において公表されている。典型的に、ハイブリダイゼーション反応の間、SSCベースのバッファーを用いることができ、SSCは、0.15M NaClおよび15mMシトレートバッファー(pH7.0)である。バッファー濃度の増大および変性剤の存在は、ハイブリダイゼーションステップのストリンジェンシーを増大させる。例えば、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、(i)50%(vol/vol)ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/mL)、0.1% SDS、および10%デキストラン硫酸(42℃)、42℃で0.2×SSCおよび0.1% SDS中で洗浄;(ii)50%(vol/vol)ホルムアミド、含む、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、含む、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム(42℃)、または(iii)10%デキストラン硫酸、2×SSC、および50%ホルムアミド(55℃)の使用を伴うことができ、EDTAを含む0.1×SSCからなる高いストリンジェンシーの洗浄(55℃)を続ける。追加的または代替的に、低イオン強度および高温の洗浄溶液を用いた、1、2またはそれより多くの洗浄ステップを、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(50℃)を用いて、ハイブリダイゼーションプロトコルに含めることができる。
【0102】
用語の任意の使用の範囲および意味は、用語が用いられる特定の文脈から明らかであろう。本書類全体を通じて用いられる選択された用語に関する特定のさらなる定義は、該当する場合は、詳細な説明の適切な文脈において与えられる。
【0103】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「有する(having)」などは、広くまたはオープンエンドに、限定せずに読むべきである。「a」、「an」または「the」のような単数形は、文脈が明らかにそれ以外を示さない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「ベクター(a vector)」との言及は、単一のベクター、ならびに、同一(例えば同一オペロン)または異なるかのいずれかの複数のベクターを含む。同様に、「細胞(a cell)」との言及は、単一の細胞ならびに複数の細胞を含む。別段の指示がない限り、一連の要素の前の用語「少なくとも」は、一連の要素全てを指すと理解される。用語「少なくとも1つ」および「少なくとも1つの」は、例えば、1、2、3、4、または5、またはそれよりも多くの要素を含む。述べられた範囲よりも上および下のわずかな変動を用いて、その範囲内の値と実質的に同一の結果を得ることができることが、さらに理解される。また、別段の指示がない限り、範囲の開示は、最小値と最大値の間の全ての値を含む、連続的な範囲として意図される。
【0104】
用語の任意の使用の範囲および意味は、用語が用いられる特定の文脈から明らかであろう。本書類全体を通じて用いられる選択された用語に関する特定のさらなる定義は、該当する場合は、詳細な説明の適切な文脈において与えられる。
【0105】
本開示の様々な態様を、以下のサブセクションにさらに詳細に記載する。様々な実施態様、選好および範囲は、自由自在に組み合わせてよいことが理解される。さらに、特定の実施態様によっては、選択された定義、実施態様または範囲は適用しなくてよい。
【0106】
結合メンバー/抗体特性化
本明細書において提供される結合メンバーは、一部の実施態様では、TNFαに特異的なタンパク性結合分子である。タンパク性結合分子は、一般に、免疫グロブリン様の機能を有する。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的なタンパク性結合分子から本質的になる。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的なタンパク性結合分子を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的な抗体フラグメントである。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的な抗体フラグメントから本質的になる。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的な抗体フラグメントを含む。結合メンバーは、一部の実施態様では、TNFαに特異的な免疫グロブリン分子の全長である。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的な免疫グロブリン分子の全長から本質的になる。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的な免疫グロブリン分子の全長を含む。結合メンバーは、一部の実施態様では、TNFαに特異的な、非−免疫グロブリン足場である。非−免疫グロブリン足場は、一般に、免疫グロブリン様の機能を有する。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的な非−免疫グロブリン足場から本質的になる。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的な非−免疫グロブリン足場を含む。
【0107】
結合メンバーは、TNFαに対する結合特異性を有し、すなわち、それはTNFαに特異的に結合する。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的に結合するだけで、いかなる追加の標的にも結合しない。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的に結合し、2つの異なるエピトープに結合するという点で、二重特異性である。一部の実施態様では、結合メンバーは、TNFαに特異的に結合し、また加えてさらなる標的にも結合するという点で、二重特異性である。一部の実施態様では、結合メンバーは、多重特異性であり、すなわち、TNFαに特異的に結合し、また加えて1つを超えるさらなる標的にも結合する。結合メンバーは、一部の実施態様では、TNFαに対する一価結合メンバーである。結合メンバーは、免疫グロブリン様の様式でTNFαに結合する。一部の実施態様では、結合メンバーは、免疫グロブリンまたはそのフラグメントである。TNFαに対して特異的に向けられる結合メンバーは、一般に、単一の分子により定義される。そのような分子は、典型的にタンパク性である。結合メンバーは、1、2またはそれより多くの鎖を有してよい。複数の鎖が結合メンバーに含まれる場合、2以上のそのような鎖は、互いに共有結合または非共有結合してよい。
【0108】
一価結合メンバーのような結合メンバーは、可溶型ヒトTNFαの生物学的効果を、50pM未満のIC
50で阻害する。一部の実施態様では、IC
50は、約40pM未満である。IC
50は、一部の実施態様では、約30pM未満の値である。
【0109】
一部の実施態様では、一価結合メンバーは、抗体フラグメントである。それぞれの抗体フラグメントは、一般に、約60kDa未満の分子量を有する。一部の実施態様では、抗体フラグメントは、約55kDa未満の分子量を有する。抗体フラグメントの分子量は、一部の実施態様では、約50kDa未満である。一部の実施態様では、抗体フラグメントは、約45kDa未満の分子量を有する。一部の実施態様では、分子量は、約40kDaまたは約35kDaまたはそれよりも小さい。抗体フラグメントの分子量は、一部の実施態様では、約30kDaまたは25kDaである。一部の実施態様では、抗体フラグメントは、30kDa未満、または25kDa未満の分子量を有する。抗体フラグメントの分子量は、一部の実施態様では、約23kDa未満、または約24kDa未満である。一部の実施態様では、抗体フラグメントは、約25kDa未満、または約26kDa未満の分子量を有する。抗体フラグメントの分子量は、一部の実施態様では、27kDa未満である。
【0110】
一態様では、TNFαに対して向けられる結合メンバーが提供される。結合メンバーの結合特異性は、当該分野でよく知られている技術を用いて検証してよい。複数の従来のディスプレイ技術を、免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメントまたはタンパク性結合分子のような結合メンバーの結合特性を測定するために利用することができる。Liら(Organic&Biomolecular Chemistry(2006),4,3420−3426)は、例えば、選択されたDNAアダプターと複合体を形成することが可能な単鎖Fvフラグメントを、ファージディスプレイを用いてどのように得ることができるのかを説明している。ディスプレイ技術は、例えば、選択された標的分子に関して高い親和性を有するリガンドおよび改変された免疫グロブリンの生産を可能にする。したがって、典型的に遺伝子工学によってわずかにだけ異なる、ペプチドまたはタンパク質のアレイをディスプレイすることも可能である。それにより、相互作用および生物物理学的パラメーターの特性の観点から、タンパク質またはペプチドをスクリーニングし、続いて進化させることが可能である。反復回数の突然変異および選択を、インビトロ基準で適用することができる。
【0111】
ペプチドおよびタンパク質の選択のためのインビトロディスプレイ技術は、ペプチドまたはタンパク質およびそれをコードする核酸の間の物理的結合に依存する。大パネルの技術がこの目的のために確立されていて、最も一般に用いられるものは、ファージ/ウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、細胞−表面ディスプレイ、「プラスミド上のペプチド」、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、および、マイクロビーズディスプレイを含むインビトロ区画化である(レビューには、例えば、Rothe,A.,et al.,FASEBJ.(2006)20,1599−1610;Sergeeva,A.,et al.,Advanced Drug Delivery Reviews (2006)58,1622−1654を参照)。
【0112】
また、タンパク質を含むペプチド、および核酸を、物理的に結合する異なる手段も利用可能である。細胞表面分子を用いた細胞における発現、ウイルス/ファージコートタンパク質との融合ポリペプチドとしての発現、安定化されたRNA分子のインビトロ複合体、ピューロマイシン分子またはマイクロビーズを介してインビトロで共有結合するリボソームおよびそれぞれのポリペプチドは、現在当該分野で用いられている、タンパク質/ペプチドおよび核酸を結合する方法の例である。さらなるディスプレイ技術は、油中水エマルションに依存する。水滴は、区画としての役割を果たし、そのそれぞれにおいて、単一の遺伝子が転写および翻訳される(Tawfik,D.S.,&Griffiths,A.D.,Nature Biotech.(1998)16,652−656,US patent application 2007/0105117)。タンパク質を含むペプチド、および核酸(それをコードする)の間のこの物理的結合は、選択されたペプチド/タンパク質をコードする核酸を回収する可能性を提供する。したがって、免疫沈降のような技術と比較して、ディスプレイ技術では、選択された標的分子の結合パートナーを同定または選択することができるだけでなく、この結合パートナーの核酸も回収することができ、さらなる処理に用いることができる。したがって、このディスプレイ技術は、例えば、標的を発見し、発見を導き、および最適化を導くための手段を提供する。ペプチドまたはタンパク質、例えば抗体の膨大なライブラリーは、潜在的に、大スケールでスクリーニングすることができる。
【0113】
結合メンバーが特異的に結合するTNFαは、サイトカインであり、とりわけ免疫細胞の調節に関与する。TNFαは、自己免疫疾患および免疫が介在する疾患を含む、生物の免疫系に関する疾患に関与する。TNFαは、一部の実施態様ではヒトTNFαであり、可溶型として、および膜型として存在する。膜型は、細胞内ドメイン、膜貫通型ドメインおよび細胞外ドメインを有する。可溶型は、膜型の233アミノ酸のうちのアミノ酸77位〜233位に相当する。ヒトTNFαの膜型は、Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーP01375を有する(2015年3月4日のバージョン202)。
【0114】
他の種由来のTNFαは、可溶型分子および膜貫通タンパク質の形態で同様に存在する。例えば、イヌ科のTNFαは、233アミノ酸の長さを有し、そのうち、細胞外ドメインがアミノ酸57〜233に及ぶ。可溶型は、アミノ酸77位〜233位に及ぶ(Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーP51742、2015年3月4日のバージョン112を参照。一部の実施態様では、結合メンバーが特異的に結合するTNFαは、ミューリンTNFαであり、Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーP06804を有する(2015年3月4日のバージョン167)。一部の実施態様では、結合メンバーが特異的に結合するTNFαは、ネコ科のTNFαであり、Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーP19101を有する(2015年1月7日のバージョン110)。結合メンバーが特異的に結合するTNFαは、一部の実施態様では、ウシ属のTNFαであり、Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーQ06599を有する(2015年3月4日のバージョン129)。一部の実施態様では、TNFαは、モルモットTNFαであり、Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーP51435を有する(2015年3月4日のバージョン106)。TNFαは、一部の実施態様では、イヌTNFαであり、Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーP51742を有する(2015年3月4日のバージョン112)。一部の実施態様では、結合メンバーが特異的に結合するTNFαは、アカゲザルTNFαであり、Uniprot/SwissprotアクセッションナンバーP48094を有する(2015年3月4日のバージョン108)。
【0115】
本明細書に開示される結合メンバーは、少なくとも1つのVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異を含んでよい。一部の実施態様では、結合メンバーは、1つよりも多いVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、全てのVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異を含む。また、結合メンバーは、少なくとも1つのVL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異を含んでもよい。一部の実施態様では、結合メンバーは、1つよりも多いVL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、全てのVL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異を含む。
【0116】
一部の実施態様では、結合メンバーは、少なくとも1つのVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異を含むが、VL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異はどれも含まない。一部の実施態様では、結合メンバーは、少なくとも1つのVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異、および、少なくとも1つのVL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、全てのVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異、および、少なくとも1つのVL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、少なくとも1つのVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異、および、全てのVL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、全てのVH CDR配列(配列番号6、7および8にそれぞれ記載のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3)またはそれらの変異、および、全てのVL CDR配列(配列番号3、4および5にそれぞれ記載のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3)またはそれらの変異を含む。
【0117】
そのような結合メンバーは、50pM未満のIC
50で可溶型ヒトTNFαを中和することが可能である。一部の実施態様では、結合メンバーは、約40pM未満のIC
50で可溶型ヒトTNFαを中和することが可能である。一部の実施態様では、結合メンバーは、約30pM未満、またはそれよりも低いIC
50で可溶型ヒトTNFαを中和することが可能である。
【0118】
IC
50は、例えば、細胞に基づく効能アッセイを用いて決定することができる。一部の実施態様では、上記のIC
50値は、PK−15細胞において、1.4pMのrhTNFαの存在下で、TNFαが誘導する細胞毒性を阻害することにより決定される。典型的な実施態様では、約10’000細胞が用いられ、結合メンバーは、37℃で滴定される。細胞は典型的に、結合メンバーおよび可溶型TNFαの混合物とともに12〜16時間インキュベートされ、一部の実施態様では16時間インキュベートされる。好ましくは、IC
50値は、そのようなアッセイの少なくとも3つの非依存性の反復で得られた平均値である。一実施態様では、そのようなアッセイは、実施例3に記載のPK−15アッセイである。
【0119】
また、結合メンバーは、約100nM未満のIC
50で膜貫通型(tm)ヒトTNFαを中和することも可能であり得る。一部の実施態様では、このIC
50は、約80nMよりも、または約75nMよりも、低くてよい。一部の実施態様では、結合メンバーは、約70nM未満のIC
50でtmヒトTNFαを中和することが可能であり得る。また、結合メンバーは、約65nMよりも、または約60nMよりも低いIC
50でtmヒトTNFαを中和することも可能であり得る。一部の実施態様では、IC
50は、約50nM未満であってよい。一部の実施態様では、結合メンバーは、約10nM未満のIC
50でtmヒトTNFαを中和することが可能であり得る。
【0120】
tmTNFαのIC
50は、例えば、tmTNFα発現CHO細胞により刺激されたHEK−Dual TNFα感受性細胞を用いたアッセイで測定され得る。例えば、そのようなアッセイは、実施例3に詳細に記載される。典型的な例では、結合メンバーとともに事前インキュベートされた10’000 CHO細胞/ウェル、および、20’000 HEK−Dual TNFα感受性細胞/ウェルを用いて、37℃で24時間培養する。
【0121】
したがって、一部の実施態様では、ヒト膜貫通型TNFαよりも良好な程度に可溶型ヒトTNFαを中和することが可能である結合メンバーが提供され、可溶型ヒトTNFαのIC
50値は、ヒト膜貫通型TNFαのIC
50値よりも少なくとも100倍良好である。言い換えれば、可溶型ヒトTNFαのそれぞれの結合メンバーのIC
50値は、ヒト膜貫通型TNFαの同一の結合メンバーのIC
50値と比較した場合に、100倍またはそれよりも低い。それ故に、結合メンバーは、ヒト膜貫通型TNFαの中和よりも、可溶型ヒトTNFαの中和において、さらに効果的である。
【0122】
本明細書に記載の結合メンバーは、例えば、抗体(例えば免疫グロブリン全長)または抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、scFv、Fvフラグメント、ナノボディ、VHHまたは最小認識単位)または非−抗体足場であってよい。
【0123】
典型的な実施態様では、結合メンバーおよび具体的には上述の一価結合メンバーは、scFvである。VHおよびVLドメインは、VL−リンカー−VHまたはVH−リンカー−VLのいずれかの方向で、可動性リンカーにより連結することができる。好ましい実施態様では、方向はVL−リンカー−VHであり、すなわち、重鎖可変領域がポリペプチドのC−末端にあり、軽鎖可変領域がN−末端にある。
【0124】
結合メンバーは、一部の実施態様では、ヒト化結合メンバーである、一部の実施態様では、結合メンバーは、ヒト化抗体またはヒト化抗体フラグメントである。
【0125】
一部の実施態様では、本明細書に開示される抗体および具体的には抗体フラグメントは、サブタイプVH3の可変重鎖領域を含む。一部の実施態様では、本明細書において開示される抗体および具体的には抗体フラグメントは、サブタイプVkappa1の可変軽鎖領域を含む。一部の実施態様では、本明細書において開示される抗体および抗体フラグメントは、サブタイプVH3の可変重鎖領域およびサブタイプVkappa1の可変軽鎖領域の両方を含む。一部の実施態様では、本明細書において開示される抗体および抗体フラグメントは、サブタイプVH3の可変重鎖領域のみを含み、サブタイプVkappa1の可変軽鎖領域を含まない。一部の実施態様では、本明細書において開示される抗体および抗体フラグメントは、サブタイプVkappa1の可変軽鎖領域のみを含み、サブタイプVH3の可変重鎖領域を含まない。
【0126】
また、本明細書において開示される配列の変異も提供される。一部の実施態様では、VH配列は、配列番号2の変異であり、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VH配列は配列番号2の変異であり、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VH配列は配列番号2の変異であり、配列番号2に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VH配列は配列番号2の変異であり、配列番号2に対して少なくとも91%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VH配列は配列番号2の変異であり、配列番号2に対して少なくとも92%または93%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、配列番号2のそれぞれの変異は、配列番号2に対して少なくとも93%または94%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VH配列は配列番号2の変異であり、配列番号2に対して、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VH配列は配列番号2の変異であり、配列番号2に対して100%の配列同一性を有する。
【0127】
追加的または代替的に、本明細書に開示される結合メンバーは、配列番号1のVL配列の変異を含む抗体であり、配列番号1の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、抗体または変異は、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖を含む。一部の実施態様では、抗体または変異は、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列から本質的になる可変軽鎖を含む。一部の実施態様では、抗体または変異は、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなる可変軽鎖を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、配列番号1のVL配列の変異を含む抗体であり、配列番号1に対して91%以上(92%以上を含む)の配列同一性を有する。結合メンバーは、一部の実施態様では、配列番号1の配列に対して93%以上(94%以上を含む)の配列同一性を有する配列を有する配列番号1のVL配列の変異を含む抗体である。一部の実施態様では、結合メンバーは、配列番号1に対して95%以上(96%以上を含む)の配列同一性を有する配列番号1のVL配列の変異を含む抗体である。一部の実施態様では、VL配列は配列番号1の変異であり、配列番号1に対して少なくとも97%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VL配列は配列番号1の変異であり、配列番号1に対して97%以上(98%以上を含む)の配列同一性を有する。結合メンバーは、一部の実施態様では、配列番号1のVL配列の変異を含む抗体であり、配列番号1の配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施態様では、VL配列は配列番号1の変異であり、配列番号1に対して100%の配列同一性を有する。
【0128】
一実施態様では、そのような抗体は、配列番号2に対して85%以上、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれよりも高い、好ましくは100%の配列類似性を有するVH配列を含む。追加的または代替的に、抗体は、配列番号1に対して85%以上、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれよりも高い、好ましくは100%の配列類似性を有するVL配列を含む。
【0129】
好ましい実施態様では、抗体は、配列番号1に記載のVHおよび配列番号2に記載のVLまたはそれらの変異を含む。配列番号1および2のフレームワーク配列は、WO 03/097697 A(ESBATech AG)に記載のヒト免疫グロブリンから得られる。そのVHおよびVLフレームワーク配列は、ウサギ抗体のヒト化および安定化のために改変されている。例えば、WO 2009/155726 A(ESBATech,AN ALCON BIOMEDICAL RESEARCH UNIT LLC);BORRAS,L.,et al.Generic approach for the generation of stable humanized single−chain Fv fragments from rabbit monoclonal antibodies.JBC 2010,vol.285,no.12,p.9054−9066を参照。配列番号1、2、11または12の変異は、scFvの形式で安定のままであるべきであり、すなわち、それらは、長期のインキュベーション後に、高度に単量体のままである。例えば、本明細書において用いられる「長期のインキュベーション後に、高度に単量体のまま」とは、例えば、pH7.2のPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中10mg/mLで、4℃、22℃または37℃で、2週間のインキュベーション後に、少なくとも80%の単量体含有量を指す。
【0130】
結合メンバーは、特にscFvの場合、リンカー配列を含んでよい。そのようなリンカー配列は、典型的に10〜約25アミノ酸を有する。通常、そのようなリンカーペプチドは、グリシンが豊富であり、セリンおよび/またはトレオニンが溶解度を改善するのと同じように、柔軟性を与える。好ましい実施態様では、(GGGGS)
4リンカー(配列番号10)またはそれらの変異を用いる。3〜5回の繰り返しを有するこのモチーフの変型を用いてもよい。さらに適切なリンカーは、例えば、ALFTHAN,K.Properties of a single−chain antibody containing different linker peptides.Prot Eng 1995,vol.8,no.7,p.725−731に記載される。
【0131】
したがって、一部の実施態様では、結合メンバーは、配列番号9を含むアミノ酸配列を有する。一部の実施態様では、結合メンバーは、配列番号9から本質的になるアミノ酸配列を有する。一実施態様では、結合メンバーは、配列番号9からなるアミノ酸配列を有する。
【0132】
特定の実施態様では、本明細書において提供される結合メンバーの変異体が検討される。例えば、抗原結合、抗体依存性−細胞媒介細胞毒性(ADCC)、補体−依存性細胞毒性(CDC)を改善して、タンパク質分解に対する感受性および/または酸化に対する感受性を低減させること、安定性または溶解度を増大させること、免疫原性を低減させること、および/または、結合メンバーの他の生物学的、生化学的または生物物理学的特性を変えることが、望ましくあり得る。一部の実施態様では、変異体は、親結合メンバーに対していかなる改善も示さない。変異体は、一部の実施態様では、そのアミノ酸配列の1、2またはそれよりも多くの位置が、所定の結合メンバーとは異なるタンパク性分子であってよい。典型的に、所定の結合メンバーとの違いは置換である。一部の実施態様では、所定の結合メンバーとの違いは欠失である。変異体は、ムテイン、すなわち、部位特異的突然変異誘発により変更された遺伝子配列の発現から得られたペプチド/タンパク質であってよい。
【0133】
本明細書において提供される結合メンバーの変異体は、結合メンバーをコードする核酸配列に適切な改変を導入するタンパク質および/または化学工学により、または、タンパク質/ペプチド合成により、調製してよい。変異体は、適切な方法を用いてスクリーニングすることのできる所望の特徴を、生産される結合メンバーが保有しているという条件で、フレームワークまたはCDRへの1つまたは複数の欠失、置換、付加および挿入の任意の組み合わせ(単数または複数)により得てよい。一部の実施態様では、結合メンバーの変異体は、1または2個の置換により、本明細書に定義される結合メンバーの特定の配列と異なる。一部の実施態様では、結合メンバーの変異体は、5個までの置換により、本明細書に定義される結合メンバーの特定の配列と異なる。結合メンバーのアミノ酸配列における置換は、上述の保存的置換であってよい。保存的置換の例は以下を含む:
【0134】
1.アラニン(A)をバリン(V)により置換する;
2.アルギニン(R)をリジン(K)により置換する;
3.アスパラギン(N)をグルタミン(Q)により置換する;
4.アスパラギン酸(D)をグルタミン酸(E)により置換する;
5.システイン(C)をセリン(S)により置換する;
6.グルタミン酸(E)をアスパラギン酸(D)により置換する;
7.グリシン(G)をアラニン(A)により置換する;
8.ヒスチジン(H)をアルギニン(R)またはリジン(K)により置換する;
9.イソロイシン(I)をロイシン(L)により置換する;
10.メチオニン(M)をロイシン(L)により置換する;
11.フェニルアラニン(F)をチロシン(Y)により置換する;
12.プロリン(P)をアラニン(A)により置換する;
13.セリン(S)をトレオニン(T)により置換する;
14.トリプトファン(W)をチロシン(Y)により置換する;
15.フェニルアラニン(F)をトリプトファン(W)により置換する;
および/または
16.バリン(V)をロイシン(L)により置換する、
および逆もまた同様である。
【0135】
本明細書に記載の配列は、1つまたは複数の、例えば2または3個のそのような保存的置換を含んでよい。一部の実施態様では、本明細書に開示される結合メンバーは、本明細書に開示される配列と比較して、4個以上の保存的置換を有する配列を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、5個以上の保存的置換を有する配列を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、本明細書に開示される配列と比較して、6個以上、例えば7個以上の保存的置換を含む。一部の実施態様では、結合メンバーは、8、9、10、11、12またはそれより多くのそのような保存的置換を含んでよい。
【0136】
非−保存的置換は、例えば、ポリペプチドの電荷、双極子モーメント、サイズ、親水性、疎水性または構造に関して、より実質的な変化をもたらし得る。一実施態様では、結合メンバーは、1つまたは複数の、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれより多くのそのような非−保存的置換を含む。
【0137】
改変は、CDRまたはフレームワーク配列内に存在してよい。例えば、本明細書で提供されるCDRは、1、2、3、4、5個またはさらにそれよりも多くの改変を含んでよい。例えば、全体として捉えられるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3配列は、本明細書で提供されるCDRと、具体的には(i)配列番号3、4、および5と、75%以上、例えば76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、および、好ましくは99%以上同一である。追加的または代替的に、全体として捉えられるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3配列は、本明細書で提供されるCDRと、具体的には(i)配列番号6、7および8と、少なくとも80%、例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、95%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または、好ましくは99%同一である。
【0138】
一実施態様では、全体として捉えられるCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3は、本明細書で提供されるCDRと、少なくとも85%、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または、好ましくは99%類似である。追加的または代替的に、全体として捉えられるCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3は、本明細書で提供されるCDRと、少なくとも85%、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または、好ましくは99%類似である。
【0139】
追加的または代替的に、変異は、配列番号1〜10のいずれか1つの配列内に、1つまたは2つの置換を含んでよい。一部の実施態様では、変異は、配列番号1〜10のいずれか1つの配列内に、3つの置換を含む。一部の実施態様では、変異は、配列番号1〜10のいずれか1つの配列内に、4つの置換を含む。
【0140】
好ましいタイプの変異は、CDR全体の1つまたは複数が置換されているものである。典型的に、CDR−H3およびCDR−L3は、抗原結合に最も重大に寄与する。例えば、CDR−L1、CDR−L2、CDR−H1および/またはCDR−H2の全体を、天然または人工起源の異なるCDRにより置換してよい。一部の実施態様では、1つまたは複数のCDRは、アラニン−カセットにより置換される。
【0141】
追加的または代替的に、抗体のVHは、溶解度を高める点突然変異を1つまたは複数含んでよい。WO2009/155725(ESBATech,a Novartis Company)は、抗体の全体的な溶解度を増大させることが示されたモチーフを記載する。残基は、抗体の可変ドメインおよび定常ドメインの界面に位置する場所に置かれ、特に、定常ドメインを欠くscFvのような抗体フラグメントを安定化する。具体的には、以下の残基の1または2つが存在する:
【0142】
(i)重鎖アミノ酸12位(AHoナンバリングによる)のセリン(S);
(ii)重鎖アミノ酸103位(AHoナンバリングによる)のセリン(S)またはトレオニン(T);および/または
(iii)重鎖アミノ酸144位(AHoナンバリングによる)のセリン(S)またはトレオニン(T)。
【0143】
一部の実施態様では、これらの残基の3つ全てが存在する。
【0144】
一部の実施態様では、抗体は、VH12位にセリン;VH103位にセリン;およびVH144位にトレオニンを有する(全てAHoナンバリング)。
【0145】
一部の実施態様では、本明細書に開示される結合メンバーの変異体は、結合メンバーと比較した場合、TNFαへの特異的な結合を保持する。変異体は、例えば、ヒトTNFαへの特異的な結合を保持し得る。一部の実施態様では、本明細書に開示される変異体の結合メンバーは、可溶型ヒトTNFαの生物学的効果を約500pM未満阻害する効能(IC
50)を有する。一部の実施態様では、可溶型ヒトTNFαの生物学的効果を阻害する変異体の効能は、約400pM未満である。変異体のIC
50は、結合メンバーと比べた場合、一部の実施態様では、約300pM(約200pM、約100pM、または約50pMを含む)よりも低くてよい。一実施態様では、結合メンバーの変異体は、結合メンバーと比較して、可溶型ヒトTNFαの生物学的効果を阻害する効能(IC
50)が約40pM未満である。
【0146】
結合メンバーの変異体は、一部の実施態様では、膜貫通型TNFαを、約100nMよりも低い、好ましくは約80nM未満の効能(IC
50)で阻害することが可能である。一部の実施態様では、変異体は、約75nM未満の効能(IC
50)で膜貫通型TNFαを阻害することが可能である。一部の実施態様では、変異体は、約70nM未満、例えば約65nM未満の効能(IC
50)で、膜貫通型TNFαを阻害することが可能である。一部の実施態様では、変異体は、約60nM未満の効能(IC
50)で、膜貫通型TNFαを阻害することが可能である。
【0147】
結合メンバーの変異体は、一部の実施態様では、ヒトおよび非−ヒトTNFαと交差反応性である。結合メンバーの変異体は、一部の実施態様では、(親)結合メンバーが、例えば、カニクイザル、イヌ科、ネコ科および/またはアカゲザルTNFαに結合するのと同一のTNFα種に結合することが可能である。一部の実施態様では、結合メンバーの変異体は、本明細書に開示される結合メンバーと、TNFαに対する結合に関して競合する。変異体は、例えば、本明細書に開示される結合メンバーと、ヒトTNFαに対する結合に関して競合してよい。一部の実施態様では、変異体は、結合メンバーが結合することが可能な同一の非−ヒトTNFαに対する結合に関して、本明細書に開示される結合メンバーと競合することが可能である。
【0148】
一部の実施態様では、本明細書に開示される変異体の結合メンバーは、TNFαへの特異的な結合を保持し;可溶型ヒトTNFαの生物学的効果を阻害する効能(IC
50)が約500pM未満、例えば、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM未満、好ましくは40pM未満であり;膜貫通型TNFαを、100nM未満、好ましくは約80nM、75nM、70nM、65nMまたは60nM未満の効能IC
50で阻害し;ヒトおよび非−ヒトTNFαと交差反応性であり、および、親結合メンバーが、例えば、カニクイザル、イヌ科、ネコ科および/またはアカゲザルTNFαに結合するのと同一のTNFα種に結合し;および、ヒトTNFαなどのTNFα、および好ましくは、結合メンバーが結合する同一の非−ヒトTNFαへの結合に関して、本明細書に開示される結合メンバーと競合する。
【0149】
また、変異体は、軽鎖および重鎖の鎖シャフリングによって調製してもよい。単一軽鎖を重鎖のライブラリーと組み合わせて、変異体のライブラリーを生じさせることができる。一実施態様では、単一軽鎖は、上記に挙げたVL配列の群から選択され、および/または、重鎖のライブラリーは、上記に挙げたVH配列の1つまたは複数を含む。同様に、単一重鎖は、軽鎖のライブラリーと組み合わせることができる。一部の実施態様では、単一重鎖は、上記に挙げたVH配列の群から選択され、および/または、軽鎖のライブラリーは、上記に挙げたVL配列の1つまたは複数を含む。
【0150】
結合メンバーは、上述のVLおよび/またはVH配列のいずれかを含むことができる。単一ドメインの形式を有する結合メンバー、例えばナノボディ、またはVHHは、上述のVLまたはVH配列のいずれか1つのみ、好ましくはVH配列を含み、一価である。多価結合メンバー、例えば、F(ab’)
2フラグメント、ビス−scFv(タンデムscFvとしても知られる)またはダイアボディ、具体的には二重特異性結合メンバーは、1つまたは複数の上述のVL配列および/または1つまたは複数の上述のVH配列を含んでよい。多価結合メンバーは、TNFαとは異なる抗原を標的化するVHおよび/またはVL配列を含んでよい。
【0151】
本明細書に開示される結合メンバーは、特に安定である。具体的には、本明細書に開示される一価抗体フラグメントおよび本明細書に開示されるscFvは、特に安定である。本明細書において用いられる用語「安定」は、ポリペプチドが、長期のインキュベーションおよび/または上昇した温度でのインキュベーション後の溶液中で単量体のままである生物物理学的特性を指す。不安定なポリペプチドは、ダイマー化またはオリゴマー化する傾向があり、沈殿さえもして、それにより、保管寿命が低減し、医薬用途により適切でなくなる。
【0152】
本明細書において提供される結合メンバー、具体的には上記の一価抗体フラグメントは、PBS(pH7.2)中、10mg/mLの濃度で、37℃で1週間インキュベートされた後、少なくとも75%まで、好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%まで、および、最も好ましくは97%まで単量体のままである。追加的または代替的に、本明細書において提供される結合メンバーおよび具体的には上記の一価抗体フラグメントは、PBS(pH7.2)中、10mg/mLの濃度で、4℃または22℃で1週間後、90%以上まで単量体のままである。一部の実施態様では、本明細書に開示される結合メンバーは、PBS(pH7.2)中、10mg/mLの濃度で、4℃または22℃で1週間後、92%以上、例えば94%以上まで単量体のままである。一部の実施態様では、結合メンバーは、PBS(pH7.2)中、10mg/mLの濃度で、4℃または22℃で1週間後、95%以上、例えば96%以上、または97%以上まで単量体のままである。一実施態様では、結合メンバーは、PBS(pH7.2)中、10mg/mLの濃度で、4℃または22℃で1週間後、99%以上まで単量体のままである。
【0153】
単量体の画分は、例えば、SE−HPLC(サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー)により判定することができる。そのような試験のための適切な移動相は、例えば、PBS(pH7.2)である。単量体の含有量は、タンパク質クロマトグラフィーの間に測定されるUV280シグナルのピーク積分により定量することができる。適切なシステムは、例えば、後のクロマトグラム分析およびピーク定量化も可能にする、Chromeleon(登録商標)6.5ソフトウェアにより制御されるDionex UltiMate 3000 RS HPLCである。
【0154】
scFvを含む、一価抗体フラグメントのような結合メンバーは、5〜10、好ましくは7〜9の範囲内の理論上の等電点(pI)を有し得る。理論上のpIは、例えば、ExPASyサーバ上のProtParamツールを用いることにより計算することができる(http://web.expasy.org/protparam/で利用可能であり;GASTEIGER E.et al.Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server.(In)The Proteomics Protocols Handbook.Edited by WALKER J.M.Totowa:Humana Press Inc.,2005.ISBN 9781588295934.p.571−607も参照)。
【0155】
結合メンバー、例えばscFvは、PBS(pH7.2)中で、35mg/mlよりも高い、好ましくは40mg/ml、45mg/ml、47mg/ml、48mg/ml、49mg/mlよりも高い、最も好ましくは50mg/mlよりも高い濃度まで濃縮することができる。結合メンバーを高く濃縮できればできるほど、結合メンバーの溶解度は高い。
【0156】
結合メンバーは、非−ヒト種由来のTNFα、例えば、制限されずに、ネコ科のTNFα、アカゲザルTNFα、イヌ科のTNFαと交差反応性であり得る。このことは特に、前臨床試験の目的、例えば、動物試験に有用である。好ましくは、結合メンバーは、ヒトリンホトキシンα2/β1、ヒトリンホトキシンα1/β2、ヒトCD40リガンド/TNFSF5および/またはヒトTNFβ/TNFSF1と、交差反応性でない。
【0157】
本明細書に開示される抗体と競合する結合メンバーも提供され、結合メンバーは、ヒトTNFαへの結合のためのものである。例えば、そのような競合する(または相互阻害する)結合メンバーは、中和し得る。典型的な実施態様では、そのような結合メンバーは、PK−15細胞において、可溶型の1.4pM rhTNFαが誘導する細胞毒性を阻害する場合に、50pM未満の効能IC
50を有する。
【0158】
本明細書において用いられる用語「競合する」は、同一の標的に対する結合に関する結合メンバー間の競合を指す。競合は、共通の抗原(ここでは、hTNFαまたはそのフラグメント)に対する本明細書に開示される結合メンバーの特異的な結合を、目的の結合メンバーが防止する、または阻害する、または低減させる競合結合アッセイにより判定することができる。そのような競合結合アッセイは当該分野で知られており、制限されずに、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)および固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)を含む。典型的に、そのようなアッセイは、固体表面に結合した精製された抗原、試験される結合メンバーおよび本明細書に記載の参照結合メンバーの使用を含む。競合阻害は、(i)試験される結合メンバーの存在下で固体表面に結合した参照結合メンバー、または(ii)参照結合メンバーの存在下で固体表面に結合した試験される結合メンバーの、いずれかの量を決定することにより測定される。競合結合メンバーは、(i)参照結合メンバーと同一のエピトープに対して、(ii)オーバーラップするエピトープに対して、または(iii)その標的に対する参照結合メンバーの結合を立体的に妨げるが同一の標的分子上の異なるエピトープに対して、結合し得る。
【0159】
通常、競合結合メンバーが過剰に存在する場合、本明細書に記載の結合メンバーのTNFαに対する特異的な結合を低減させ、すなわち、結合を40〜45%以上相互阻害する。過剰に存在する場合、競合結合メンバーは、一部の実施態様では、結合メンバーのTNFαに対する特異的な結合を、45〜50%以上、例えば50〜55%以上、または55〜60%以上低減させる。一部の実施態様では、競合結合メンバーの存在下での結合メンバーの結合は、60〜65%以上、65〜70%以上、70〜75%以上、または75%以上低減される。好ましくは、競合結合メンバーの存在下での本明細書に記載の結合メンバーの結合は、80〜85%以上低減される。一部の実施態様では、競合結合メンバーの存在下での結合メンバーの結合は、85〜90%以上(90〜95%以上を含む)低減される。一部の実施態様では、競合結合メンバーの存在下での結合メンバーの結合は、95〜97%以上低減される。一部の実施態様では、競合結合メンバーの存在下での結合メンバーの結合は、97%以上低減される。
【0160】
一部の実施態様では、競合結合メンバーは、約1pM以上の親和力K
DでhTNFαに結合する。一部の実施態様では、競合結合メンバーは、約10pM以上のK
DでhTNFαに結合する。一部の実施態様では、競合結合メンバーは、約100pM以上、例えば500pM以上の結合力K
DでhTNFαに結合する。競合結合メンバーは、一部の実施態様では、約1nM以上のK
DでhTNFαに結合する。一部の実施態様では、競合結合メンバーは、約10nM以上のK
DでhTNFαに結合する。
【0161】
したがって、一態様では、
(i)可溶型および膜貫通型TNFαに結合することができ;
(ii)PK−15細胞において1.4pMのrhTNFαにより誘導される細胞毒性を阻害することにより測定して、約30±6pMのIC
50で可溶型TNFαを中和し、;
(iii)tm発現CHO細胞で刺激されたHEK−Dual TNFα感受性細胞において測定した場合に、約50nMのIC
50でtmTNFαを中和し、;および/または
(iv)可溶型ヒト、アカゲザル、カニクイザル、イヌ科およびネコ科のTNFαと交差反応性である、結合メンバーが提供される。一実施態様では、結合メンバーは、少なくとも1つの、例えば、少なくともCDR−L3およびCDR−H3、好ましくは配列番号3〜8に記載の全てのCDRを含む。一実施態様では、結合メンバーは、配列番号9を含むscFvであり、さらなる1つまたは複数の以下の特徴を有する。
(v)PBS(pH7.2)中、濃度10mg/mLおよび4℃で、6ヶ月間、少なくとも90%まで安定である;
(vi)PBS(pH7.2)中、10mg/mLの濃度および4℃で、2週間、少なくとも95%まで安定である;
(vii)76℃のTmを有する;および/または
(viii)8.27のpIを有する。
【0162】
一実施態様では、本明細書に開示される結合メンバーは、scFvまたはFabフラグメントのように一価である。別の実施態様では、結合メンバーは多価である。そのような多価分子は、二価(例えば、免疫グロブリン全長またはF(ab’)
2フラグメント)であることができ、または、少なくとも3つの標的結合部位を含む。
【0163】
多価結合メンバーは、ダイアボディ、単鎖ダイアボディまたはタンデムscFvのような二重特異性抗体であることができる(例えば、KONTERMANN,R.E.Methods in Molecular Biology.Edited by LO,B.Totowa,N.J.:Humana Press,2004.ISBN 1588290921.p.227−242を参照)。それぞれの二重特異性抗体は、scFvに関して上述したものよりも短いリンカーをおそらく使い得て、すなわち、配列番号14の基本モチーフの1〜3回の繰り返しのみ有する(例えば、HOLLIGER,P.,et al.Diabodies:small bivalent and bispecific antibody fragments.PNAS 1993,vol.90,no.14,p.6444−6448を参照)。別の実施態様では、多価結合メンバーは、トリアボディ(triabody)、ミニボディまたはテトラボディである。
【0164】
また、本明細書に開示される抗体を含むT−ボディも提供される。T−ボディは、抗体の抗原認識を、T−細胞受容体複合体のシグナルおよびエフェクター特性と結び付ける免疫グロブリンT−細胞受容体(cIgTCR)である。そのような構築物では、抗体は、一部の実施態様では、抗体フラグメント、例えば、Fv、Fab、scFvまたはscFv−Fcである。一実施態様では、抗体はscFvである。T−ボディの全般的なデザインおよびそれらの適用のさらなる議論については、例えば、SCHIRRMANN,T.and Pecher,G.Handbook of Therapeutic Antibodies.Edited by DUBEL,S.Weinheim: Wiley−VCH,2009.ISBN 3527314539.p.533−561を参照。
【0165】
本開示に係る結合メンバーは、一部の実施態様では、ストレプトアビジン結合タグなどの捕捉部分、例えば、米国特許出願US2003/0083474、米国特許第5,506,121号または第6,103,493号に記載のSTREP−TAGS(登録商標)を含んでよい。捕捉部分のさらなる例は、限定されないが、マルトース−結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAG−ペプチド(例えば、配列Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys−Gly)、T7エピトープ(Ala−Ser−Met−Thr−Gly−Gly−Gln−Gln−Met−Gly)、マルトース結合タンパク質(MBP)、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質Dの配列Gln−Pro−Glu−Leu−Ala−Pro−Glu−Asp−Pro−Glu−AspのHSVエピトープ、配列Tyr−Thr−Asp−Ile−Glu−Met−Asn−Arg−Leu−Gly−Lysの水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)エピトープ、配列Tyr−Pro−Tyr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Alaのヘマグルニチン(HA)エピトープ、および、配列Glu−Gln−Lys−Leu−Ile−Ser−Glu−Glu−Asp−Leuの転写因子c−mycの「myc」エピトープを含む。
【0166】
捕捉部分のさらなる例は、金属イオンを結合することが可能な金属キレート剤である。それぞれの捕捉部分は、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(ニトリロ三酢酸、NTAとも呼ばれる)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(ジメルカプロール)、ポルフィンまたはヘムであってよい。当該分野で用いられる固定化金属親和性クロマトグラフィーの標準的な方法に即して、例えば、オリゴヒスチジンタグは、例えば、キレート剤ニトリロ三酢酸(NTA)を用いたクロマトグラフィー目的のために提供され得る銅(Cu
2+)、ニッケル(Ni
2+)、コバルト(Co
2+)、または亜鉛(Zn
2+)イオンと、複合体を形成することが可能である。
【0167】
核酸、ベクター、宿主細胞および生産方法
本明細書に記載の結合メンバーは、単一の核酸配列により、または複数の核酸配列により、コードされ得る。複数の核酸配列の場合は、各配列は1つの可変領域をコードしてよい。一部の実施態様では、核酸配列は、2以上の可変領域をコードしてよい。一般に、複数の核酸配列は、結合メンバーの可変領域をコードする。典型的に、各可変領域は、1つの別個の核酸配列によりコードされる。可変領域をコードするそれぞれの核酸配列は、単一の核酸分子内に含まれてよい。一部の実施態様では、可変領域をコードする2以上の核酸配列は、単一の核酸分子内に含まれる。一部の実施態様では、可変領域をコードする各核酸配列は、単一の別個の核酸分子内に含まれる。したがって、複数の核酸分子を、結合メンバーの生産において用いてよく、例えば、それぞれ少なくとも1つの可変領域をコードする。それぞれの核酸分子は、一部の実施態様では、発現カセットを定義してよい。上記に示したように、発現カセットは、適切な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現に向かうことが可能な核酸分子である。
【0168】
発現カセットは、目的のヌクレオチド配列に動作可能に結合しているプロモーターを含み、それは1つまたは複数の終結シグナルに動作可能に結合している。それはまた、ヌクレオチド配列の正しい翻訳に必要な配列も含んでよい。コード領域は、目的のポリペプチドをコードすることができ、また、制限されないが、センスまたはアンチセンスの方向のアンチセンスRNAまたは非翻訳RNAを含む、目的の機能性RNAをコードすることもできる。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであることができ、それの構成要素の少なくとも1つが、それの他の構成要素の少なくとも1つに対して異種であることを意味する。また、発現カセットは、天然起源であるが異種発現に有用な組み換え型で得られたものであることもできる。しかしながら、一部の実施態様では、発現カセットは、宿主に対して異種であり;すなわち、発現カセットの特定の核酸配列は、宿主細胞において天然に生じない(宿主細胞または宿主細胞の祖先に、形質転換イベントにより導入された)。発現カセット内のヌクレオチド配列の発現は、宿主細胞がある特定の外部刺激に曝された場合にのみ転写を開始する構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下であり得る。植物または動物のような多細胞生物の場合、プロモーターは、特定の組織、器官、または発達段階に特異的であってもよい。
【0169】
結合メンバーまたはその部分の配列が分かれば、当該分野でよく知られている方法により、例えば遺伝子合成により、ポリペプチド配列をコードするcDNAを生産することができる。これらのcDNAは、標準的なクローニングおよび突然変異誘発技術により、発現ベクターまたはクローニングベクターなどの適切なベクターにクローン化することができる。場合により、可変軽鎖は、抗体の可変重鎖とは別の核酸によりコードされる。さらに、追加の配列、例えば、タグ(例えば、ヒス−タグ)、Fabまたは免疫グロブリン全長の生産のための定常ドメイン、リンカー、第二の結合特異性のコード配列、または、酵素などの別の機能性ポリペプチド(融合構築物または二重特異性分子を生産する)が、遺伝子構築物に含まれ得る。
【0170】
選択されたクローニング戦略に基づき、遺伝子構築物は、N−末端またはC−末端に1つまたは複数のさらなる残基を有する結合メンバーを産生し得る。例えば、開始コドンに由来するN−末端メチオニンまたはさらなるアラニンは、翻訳後に切り取られていない限り、発現されたポリペプチドに存在し得る。したがって、本明細書に開示される抗体は、開示される配列からなるのではなく、それらを含むことが理解される。したがって、一実施態様では、結合メンバーは、配列番号9または19の配列を有する。
【0171】
標準的なクローニング、突然変異誘発および分子生物学技術の基本的なプロトコルは、例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(GREEN,M.and Sambrook,J.Molecular Cloning:a Laboratory Manual.4th edition.Cold Spring Harbor Laboratory,2012.ISBN 1936113422.)に記載されている。
【0172】
遺伝子構築物の発現のための適切な宿主細胞は、原核生物または真核生物であることができる。適切な原核生物宿主細胞は、グラム陰性またはグラム陽性であり、Escherichia、Erwinina、Enterobacter、Klebsiella、PseudomonasまたはBacillusファミリーの種を含む。一部の実施態様では、宿主細胞は、Escherichia coli、例えば、E.coli株BL21(DE3)(Life Technologies(商標)、カタログ番号C6000−03)およびOrigami(商標)2(DE3)(Novagen、カタログ番号71345)の1つまたは複数である。
【0173】
グリコシル化またはリン酸化のような翻訳後の修飾が所望の場合は、真核生物宿主細胞を用いることが有利であり得る。例えば、一般に用いられるSaccharomyces cerevisiaeまたはPichia pastoris株などの真核生物微生物は、宿主細胞としての役割を果たし得る。また、宿主細胞の適切な例は、植物または動物細胞、具体的には、昆虫または哺乳類の細胞も含む。適切な哺乳類の細胞は、制限されずに、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト胚腎臓細胞(HEK)、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、またはNS0骨髄腫細胞を含む。
【0174】
結合メンバーは、適切な宿主細胞における発現により生産することができる。例えば、上述の発現ベクターは、エレクトロポレーションまたは化学的形質転換などの標準的な技術により、宿主細胞に導入される。形質転換された細胞は、それから、組み換えタンパク質発現に適切な条件下で、典型的には、場合により、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または、目的のコード配列の増幅のために改変された適切な栄養培地において、培養される。結合メンバーは、培養物から回収され、場合により、当該分野において標準的な技術を用いて精製される。組み換えタンパク質の収率は、培地および温度または酸素供給などの培養条件を最適化することにより改善され得る。原核生物では、結合メンバーは、封入体として細胞内でペリプラズムにおいて生産され得て、または、培地中に分泌される。回収の際に、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用、混合モードクロマトグラフィーおよび/またはアフィニティクロマトグラフィーなどの、その分野でよく知られる方法を用いて、タンパク質を精製することができる。
【0175】
一実施態様では、結合メンバーは、無細胞系において生産される。これは、典型的に、本明細書に記載のタンパク質をコードする核酸産物テンプレート、例えば、プラスミドDNAまたはPCR産物テンプレートのインビトロ転写の後にインビトロ翻訳を含む。例えば、増殖細胞由来のクルード溶解物が用いられ、必要な酵素ならびに細胞のタンパク質合成機構を提供する。必要なビルディングブロック、例えばアミノ酸または核酸塩基、ならびに、エネルギー送達分子およびその他は、外因的に供給することができる。無細胞発現系は、例えば、溶解ウサギ網状赤血球(例えば、Rabbit Reticulocyte Lysate System,Promega,カタログ番号L4540)、HeLa細胞(例えば、1−Step Human In Vitro Translation Kit,Thermo Scientific,カタログ番号88881)、昆虫細胞(例えば、EasyXpress Insect Kit II,Qiagen,カタログ番号32561)、小麦胚芽(例えば、Wheat GermExtract,Promega,カタログ番号L4380)、またはE.coli細胞(例えば、PURExpress(登録商標)In Vitro Protein Synthesis Kit,NEB,カタログ番号E6800S)に基づくことができる。また、改善されたジスルフィド結合の生成のための最適化された無細胞抗体発現系を、生産に用いることができる。市販のキットは、昆虫細胞溶解物(例えば、EasyXpress Disulfide Insect Kit,Qiagen,カタログ番号32582)またはE.coli細胞溶解物(例えば、EasyXpress Disulfide E.coli Kit,Qiagen,カタログ番号32572)を含む。無細胞タンパク質合成は、早くて、高い産物収率を達成し、反応条件の簡単な改変を可能にし、副産物の形成の程度が低いか、またはむしろ無い、などの利点を有する。無細胞タンパク質合成は、純粋に生物学的または化学的な生産系では行なうことのできない生物学的および/または化学的ステップを伴い得る。例えば、非天然または化学的に改変されたアミノ酸が、所望の位置でタンパク質内に取り込まれ得る。無細胞系で、ScFv−毒素融合タンパク質の生産が成功している(NICHOLLS,P.J.,et al.Characterization of single−chain antibody(sFv)−toxin fusion proteins produced in vitro in rabbit reticulocyte lysate.JBC 1993,vol.268,pp.5302−5308)。したがって、一実施態様では、本明細書に記載の結合メンバーまたは上記のT−ボディを生産する方法が提供され、それは、(a)無細胞系を提供するステップ、(b)上記の結合メンバーまたは上記のT−ボディをコードする核酸産物テンプレートを提供するステップ、(c)核酸産物テンプレートの転写および翻訳を可能にするステップ;(d)回収するステップ;および場合により(e)結合メンバーまたはT−ボディをそれぞれ精製するステップ、を含む。
追加的または代替的に、本明細書に記載の結合メンバーを生産する方法は、少なくとも1ステップの化学合成を含む。例えば、当該方法は、完全に化学的であってよい。別の実施態様では、細胞に基づく、または上述の無細胞の生産系は、そのような少なくとも1ステップの化学合成を含む。
【0176】
一部の実施態様では、本明細書に記載の結合メンバーは、E.coliでの細胞内発現のための発現ベクターを用いた、細胞に基づく系で生産される。発現の際に、ポリペプチドは、宿主細胞内で封入体として生産され、さらなる細胞粒子から隔離され、その後、塩酸グアニジン(GndHCl)などの変性剤で可溶化され、当業者によく知られた再生手順によりリフォールディングされる。
【0177】
また、所望の結合メンバーは、トランスジェニック動物において生産され得る。適切なトランスジェニック動物は、例えば、(i)例えば、結合メンバーのコード配列ならびに適切なコントロール配列を含むDNA構築物を、卵にマイクロインジェクトすることにより、トランスジェニック胚を作製するステップ;(ii)卵を偽妊娠のレシピエント雌へ移すステップ;(iii)懐胎または妊娠を監視するステップ;および(iv)所望の抗体を発現している子孫を選択するステップ、を含む、標準的な方法により得てよい。
【0178】
上述の核酸、ベクター、宿主細胞および生産方法は、本明細書に記載のT−ボディおよび/または結合メンバー(タンパク質である限りにおいて)にも当てはまることが理解されるべきである。
【0179】
化学的および/または生物学的修飾
一態様では、本明細書に開示される結合メンバーは、化学的および/または生物学的に修飾される。そのような修飾は、制限されないが、グリコシル化、ペグ化、HES化、アルブミン融合技術、PAS化、色素および/または放射性同位体による標識化、酵素および/または毒素によるコンジュゲート、リン酸化、ヒドロキシル化および/または硫酸化を含んでよい。同様に、上述の任意の結合メンバー、核酸配列、ベクターおよび/または宿主細胞をそれに応じて修飾することができる。
【0180】
化学的および/または生物学的修飾は、タンパク質の薬力学または水溶性を最適化するために、または、その副作用を低下させるために、行なわれ得る。例えば、ペグ化、PAS化および/またはHES化を適用して、腎クリアランスを遅くさせ、それにより結合メンバーの血漿半減期の時間を増大させ得る。追加的または代替的に、修飾は、タンパク質に、異なる機能、例えば、癌細胞とより効率的に闘う毒素、または診断目的のための検出分子を加え得る。
【0181】
グリコシル化は、炭水化物をタンパク質に付加するプロセスを指す。生体系では、このプロセスは、同時翻訳および/または翻訳後の修飾の形態として細胞内で酵素的に行われる。タンパク質は、ここでは、抗体のような結合メンバーであり、化学的にグリコシル化することもできる。典型的に、制限されないが、グリコシル化は、(i)アスパラギンまたはアルギニン側鎖の窒素にN結合される;(ii)セリン、トレオニン、チロシン、ヒドロキシリジン、またはヒドロキシプロリン側鎖のヒドロキシ酸素にO結合される;(iii)キシロース、フコース、マンノース、およびN−アセチルグルコサミンの、ホスホ−セリンに対する付着を含む;または(iv)C−マンノシル化の形態であり、ここで、マンノース糖は、特異的な認識配列に見られるトリプトファン残基に付加される。グリコシル化パターンは、例えば、適切な細胞株、培養培地、タンパク質工学製造モデルおよびプロセスストラテジー(HOSSLER,P.Optimal and consistent protein glycosylation in mammalian cell culture. Glycobiology 2009,vol.19,no.9,p.936−949)を選択することにより制御することができる。
【0182】
グリコシル化パターンを制御または変更するためのタンパク質工学は、1つまたは複数のグリコシル化部位の欠失および/または付加を伴ってよい。グリコシル化部位の作製は、対応する酵素的認識配列を結合メンバーのアミノ酸配列へ導入することにより、または、上記に列挙したアミノ酸残基の1つまたは複数を付加または置換することにより、好適に達成することができる。
【0183】
結合メンバーをペグ化することが望ましくあり得る。ペグ化は、タンパク質の薬力学的および薬物動態的特性を変更し得る。適切な分子量のポリエチレングリコール(PEG)は、タンパク質主鎖に共有結合する(例えば、PASUT,G.and Veronese,F.State of the art in PEGylation:the great versatility achieved after forty years of research.J Control Release 2012,vol.161,no.2,p.461−472を参照)。ペグ化は、ペグ化タンパク質を免疫系から守ることにより免疫原性をさらに低減させ得て、および/または、例えば、結合メンバーのインビボ安定性を増大させ、タンパク質分解性の分解から保護し、その半減期の時間を延長させることにより、および、その生体分布を変更させることにより、その薬物動態を変更し得る。
【0184】
同様の効果は、ペグ模倣物、例えば、抗体のHES化またはPAS化により達成され得る。HES化は、ヒドロキシエチルスターチ(「HES」)誘導体を利用し、一方でPAS化の間、抗体は、アミノ酸プロリン、アラニンおよびセリンからなる立体構造的に乱れたポリペプチド配列に結合するようになる。これらのペグ模倣物および関連する化合物は、例えば、BINDER,U.and Skerra,A.Half−Life Extension of Therapeutic Proteins via Genetic Fusion to Recombinant PEG Mimetics, in Therapeutic Proteins: Strategies to Modulate Their Plasma Half−Lives.Edited by KONTERMANN,R.,Weinheim,Germany:Wiley−VCH,2012.ISBN:9783527328499.p.63−81に記載される。
【0185】
結合メンバーは、サルベージ受容体結合エピトープのようなエピトープを含んでよい。そのようなサルベージ受容体結合エピトープは、典型的に、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指し、分子のインビボ半減期を増大する効果を有する。
【0186】
追加的または代替的に、結合メンバーは、標的結合の後の補助的な機能に帰する第二の部分により標識され、またはコンジュゲートされる。第二の部分は、例えば、追加の免疫学的エフェクター機能を有してよく、薬物ターゲッティングに効果的であってよく、または、検出に有用であってよいが、それらに限定されない。第二の部分は、例えば、当該分野で公知の方法を用いて、結合メンバーに対して化学的に結合または遺伝学的に融合することができる。
【0187】
第二の部分としての役割を果たし得る分子は、制限されずに、放射性核種(放射性同位体とも呼ばれる)、アポ酵素、酵素、コファクター、ペプチド部分、例えばヒス−タグ、タンパク質、炭水化物、例えばマンノース−6−リン酸タグ、フルオロフォア、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン、緑/青/赤または他の蛍光タンパク質、アロフィコシアニン(APC)、発色団、ビタミン、例えばビオチン、キレート剤、代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、リポソーム、毒素、例えば細胞毒性剤、または放射性毒素を含む。放射性核種の例示的な例は、
35S、
32P、
14C、
18F、および
125Iである。適切な酵素の例は、限定されないが、アルカリフォスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアンギオジェニンを含む。適切なタンパク質の例示的な例は、レクチンである。適切な細胞毒性剤の例は、限定されないが、タキソール、グラミシジンDおよびコルヒチンを含む。
【0188】
標識化結合メンバーは、インビトロおよびインビボ検出または診断目的に特に有用である。例えば、適切な放射性同位体、酵素、フルオロフォアまたは発色団により標識された結合メンバーは、それぞれ、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、またはフローサイトメトリーに基づく単一細胞分析(例えば、FACS分析)により検出することができる。同様に、本明細書に開示される核酸および/またはベクターを、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイにおいてプローブとしてそれらの標識化フラグメントを用いることにより、検出または診断目的のために用いることができる。標識化プロトコルは、例えば、JOHNSON,I.and Spence,M.T.Z.Molecular Probes Handbook,A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies.Life Technologies,2010.ISBN:0982927916に見られ得る。
【0189】
上記概説はT−ボディにも当てはまることが理解されるべきである。
【0190】
組成物
本明細書に開示される結合メンバー、核酸配列および/またはベクターは、適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む組成物において提供され得る。典型的な実施態様では、それぞれの組成物は、本明細書に記載の抗体を含む。
【0191】
そのような組成物は、例えば、診断、化粧または医薬組成物であることができる。治療または化粧用の目的については、組成物は、医薬用の担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物であり、すなわち、用いられる濃度および用量で毒性でない。
【0192】
適切な「担体」、「賦形剤」または「希釈剤」は、制限されずに:(i)バッファー、例えばリン酸、クエン酸または他の有機酸;(ii)抗酸化、例えばアスコルビン酸およびトコフェロール;(iii)防腐剤、例えば3−ペンタノール、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、アルキルパラベン、カテコール、またはシクロヘキサノール;(iv)アミノ酸、例えばヒスチジン、アルギニン;(v)好ましくは10残基までのペプチド、例えばポリリジン;(vi)タンパク質、例えば、ウシまたはヒト血清アルブミン;(vii)親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;(viii)グルコース、マンノース、スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、アミノデキストランまたはポリアミドアミンを含む、単糖類、二糖類、多糖類および/または他の炭水化物;(ix)キレート剤、例えばEDTA;(x)塩形成イオン、例えばナトリウム;(xi)金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体);および/または(xii)イオン性および非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0193】
例示的な化合物の多くは異なる機能を有し、例えば、担体および希釈剤として作用し得る。また、組成物は、担体、希釈剤または賦形剤のそれぞれを1つよりも多く含み得ることも理解される。
【0194】
結合メンバー、核酸配列またはベクターは、ビーズおよび微粒子のような固体支持体材料上に提供され得る。典型的に、結合メンバー分子は、共有結合(場合によりリンカーを含む)、非共有結合、または両方を介して、そのような担体に連結される。ビーズおよび微粒子は、例えば、スターチ、セルロース、ポリアクリレート、ポリラセテートポリグリコレート、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ラテックス、またはデキストランを含むことができる。
【0195】
一実施態様では、上述の結合メンバー、核酸配列またはベクターを含む医薬組成物が提供される。組成物は、1つまたは複数の追加の治療的に活性の化合物を治療的有効量でさらに含んでよい。追加の治療的に活性の化合物は、一部の実施態様では、TNFが介在する疾患に対して活性の化合物である。
【0196】
治療的適用
本明細書に記載の分子、具体的には、結合メンバー(抗体など)、核酸分子、またはベクターは、薬物として有用である。典型的に、そのような薬物は、治療的有効量の本明細書において提供される分子を含む。したがって、それぞれの分子は、TNFαが関連する疾患の1つまたは複数の治療に有用な薬物の生産のために用いることができる。
【0197】
一態様では、TNFαが関連する疾患を治療する方法が提供される。当該方法は、薬学的に有効量の本明細書に記載の分子(具体的には抗体)を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。一実施態様では、そのような薬学的に有効量の結合メンバー(抗体など)を含む上述の医薬組成物が、対象に投与される。上記に言及の薬物は、対象に投与され得る。
【0198】
治療を必要とする対象は、ヒトまたは非−ヒト動物であることができる。典型的に、対象は、哺乳類、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、イヌ、ネコ、サル、類人猿、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、モルモットまたはブタである。典型的な実施態様では、対象は、TNFαが関連する疾患と診断され、または、そのような疾患を獲得し得る。動物モデルの場合、動物は、TNFαが関連する疾患を発症するように遺伝学的に操作してよい。動物モデルでは、動物は、TNFαが介在する疾患の特徴を示すような方法で遺伝学的に操作してもよい。
【0199】
様々なTNFαが関連する疾患が知られていて、TNFαの拮抗薬が治療的効果を示している。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、増殖性糖尿病性網膜症である(LIMB GA et al.Distribution of TNF alpha and its reactive vascular adhesion molecules in fibrovascular membranes of proliferative diabetic retinopathy.Br J Ophthalmol.1996 Feb;80(2):168−73)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎および慢性痛風性関節炎の少なくとも1つである(TAUSCHE AK et al,Severe gouty arthritis refractory to anti−inflammatory drugs:treatment with anti−tumour necrosis factor alpha as a new therapeutic option.Ann Rheum Dis.2004 Oct;63(10):1351−2)。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では、シュニッツラー症候群である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、全身性若年性特発性関節炎である(KOTANIEMI K et al,Long−term efficacy of adalimumab in the treatment of uveitis associated with juvenile idiopathic arthritis.Clin Ophthalmol.2011;5:1425−9,Epub 2011 Oct 3)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、関節リウマチである(PARAMESWARAN,N.and PAIAL S.Tumor Necrosis Factor−a Signaling in Macrophages.Crit Rev Eukaryot Gene Expr.2010;vol.20(2),pp.87−103)。また、TNFαが関連する疾患は、じんましんであってもよい(SAND FL and THOMSEN SF.TNF−Alpha Inhibitors for Chronic Urticaria:Experience in 20 Patients.J Allergy(Cairo).2013;2013:130905.Epub 2013 Sep 18)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、血管炎である(CHUNG SA and SEO P.Advances in the use of biologic agents for the treatment of systemic vasculitis.Curr Opin Rheumatol.2009 Jan;21(1):3−9)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、1型糖尿病または2型糖尿病である。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では、再発性多巣性骨髄炎である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、再発性多発性軟骨炎である(CARTER JD.Treatment of relapsing polychondritis with a TNF antagonist.J Rheumatol.2005 Jul;32(7):1413)。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、ベーチェット病である(PERRA D et al.Adalimumab for the treatment of Behcet’s disease: experience in 19 patients.Rheumatology(Oxford).2012 Oct;51(10):1825−31.Epub 2012 Jun 20)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、家族性地中海熱である。また、TNFαが関連する疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)であってもよい。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、リウマチ性多発筋痛症である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、NACHT、LRRおよびPYDドメイン含有タンパク質3(NALP3)の1つまたは複数の突然変異に基づく。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、壊疽性膿皮症である(PATEL F et al.Effective Strategies for the Management of Pyoderma Gangrenosum:A Comprehensive Review.Acta Derm Venereol.2014 Nov 12)。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では、慢性特発性じんましんである。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、乾癬である(例えば、CORDORO,KM and FLEDMAN SR.TNF−alpha inhibitors in dermatology.Skin Therapy Letter 2007,vol.12,pp.4−6を参照)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、変形性関節症である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、湿潤性加齢黄斑変性である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、ドライアイ症候群である。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では、滑膜炎−座瘡−膿疱症−骨化過剰症−骨炎症候群である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、マクロファージ活性化症候群である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、周期熱である(Di Gangi M et al.Long−term efficacy of adalimumab in hyperimmunoglobulin D and periodic fever syndrome.Isr Med Assoc J.2014 Oct;16(10):605−7)。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では腺炎である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、咽頭炎、またはアフタ性潰瘍症候群である。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では、成人発症スチル病である。また、TNFαが関連する疾患は、メバロン酸キナーゼ欠損症であってもよい。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、ブドウ膜炎である(KOTANIEMI K et al,Long−term efficacy of adalimumab in the treatment of uveitis associated with juvenile idiopathic arthritis.Clin Ophthalmol.2011;5:1425−9.Epub 2011 Oct 3)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、炎症性腸疾患である(PARAMESWARAN,N.and PAIAL S.Tumor Necrosis Factor−a Signaling in Macrophages.Crit Rev Eukaryot Gene Expr.2010;vol.20(2),pp.87−103)。TNFαが関連する疾患は、一部の実施態様では、アテローム性動脈硬化症である(PARAMESWARAN,N.and PAIAL S.Tumor Necrosis Factor−a Signaling in Macrophages.Crit Rev Eukaryot Gene Expr.2010;vol.20(2),pp.87−103)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS)である。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、強直性脊椎炎である(PARAMESWARAN, N.and PAIAL S.Tumor Necrosis Factor−a Signaling in Macrophages.Crit Rev Eukaryot Gene Expr.2010;vol.20(2),pp.87−103)。また、TNFαが関連する疾患は、汗腺膿瘍であってもよい(Brunasso AM,Massone C.Treatment of hidradenitis suppurativa with tumour necrosis factor−alpha inhibitors:An update on infliximab.Acta Derm Venereol.2011,vol.91(1),pp.70;Sotiriou E.et la,Etanercept for the treatment of hidradenitis suppurativa,Acta Derm Venereol.2009,vol.89(1),pp.82−83)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、乾癬である(PARAMESWARAN,N.and PAIAL S. Tumor Necrosis Factor−a Signaling in Macrophages.Crit Rev Eukaryot Gene Expr.2010;vol.20(2),pp.87−103)。一部の実施態様では、TNFαが関連する疾患は、尋常性座蒼である。
【0200】
用語「CAPS」またはクリオピリン関連周期症候群は、家族性低温自己炎症性症候群(FCAS)、マックル−ウェルズ症候群(MWS)、および、慢性乳児神経皮膚関節炎(CINCA)症候群としても知られる新生児期発症多臓器性炎症性疾患のそれぞれを含むことが理解されるべきである。
【0201】
医薬組成物は、1つまたは複数の様々な適切な投与経路により適用され得る。投与は、例えば、非経口的に行うことができる。一部の実施態様では、投与は、筋肉内に行なわれる。一部の実施態様では、投与は、ボーラスとして、または連続的な注入により、静脈内に行なわれる。投与は、一部の実施態様では、関節内に行なわれる。一部の実施態様では、投与は、関節滑液嚢内にされる。投与は、一部の実施態様では皮下であってよい。一部の実施態様では、投与は、局所的に、例えば、皮膚または眼に行なわれる。投与は、一部の実施態様では直腸に行なわれる。一部の実施態様では、投与は、皮膚、例えば、皮内、皮下または経皮的にされる。投与は、一部の実施態様では、局所的に行うことができる。投与のさらなる適切なモデルは、限定されないが、脳内、脳脊髄内、髄腔内、硬膜外、または腹腔内;経口;泌尿生殖器;硝子体内;全身性;静脈内;眼球内;耳内;鼻腔内;吸入により;舌下;口腔などを含む。局部、直腸、局所、鼻腔内、静脈内および/または皮内の投与経路が好ましい。
【0202】
本明細書に開示される結合メンバー、本明細書に開示される核酸配列、ベクターまたは宿主細胞は、1つまたは複数のさらなる治療的に効果的な化合物と組み合わせることができる。そのような化合物は、一部の実施態様では、TNF−α受容体を介したシグナル伝達を妨害することが可能であり得る。それぞれの化合物は、一部の実施態様では、例えば炎症性反応の他のメディエータ―のような1つまたは複数の追加の標的を阻害することが可能であり得る。そのような化合物(単数または複数)は、同時に、または、連続して投与することができる。
【0203】
治療的適用のために、結合メンバーは、放射標識されてもよく、または毒素に連結されてもよく、または上述の別のエフェクター機能に連結されてもよい。
【0204】
上記に概説されるものは、T−ボディにも当てはまることが理解されるべきである。
【0205】
診断的適用および/または検出目的
本明細書に開示される結合メンバーは、インビボおよび/またはインビトロでの検出または診断目的のために用いてよい。例えば、特定の細胞または組織での発現を検出するための抗体を含む幅広い範囲の免疫測定法が、当業者に公知である。同様に、先行する文章に記載の任意の結合メンバー、核酸配列、ベクターおよび/または宿主細胞を、本セクションに詳述のとおりに用いることができる。
【0206】
そのような適用のために、結合メンバー、例えば、本明細書に開示される抗体、核酸配列、ベクターまたは宿主細胞は、検出可能な標識を含んでよい。一部の実施態様では、本明細書に開示される結合メンバー、核酸配列、ベクターまたは宿主細胞は、検出可能な標識を含まない。例示的な例としては、未標識抗体を用いられ得て、本明細書に記載の結合メンバー(例えば抗体)上のエピトープに特異的に結合する二次抗体により検出され得る。
【0207】
一部の実施態様では、結合メンバー、核酸配列、ベクターおよび/または宿主細胞は、デテクター物質により認識することのできる1つまたは複数の物質に結合される。例としては、結合メンバーは、ストレプトアビジンに対するその結合能により検出することのできるビオチンに共有結合され得る。同様に、本明細書に開示される核酸および/またはベクターは、例えば、ハイブリダイゼーション分析においてプローブとしてその標識フラグメントを用いることにより、検出または診断目的のために用いることができる。
【0208】
特定の実施態様では、本明細書において提供される任意の分子、具体的には抗体は、サンプル(好ましくは生物学的起源のサンプル)中のTNFαの存在を検出するのに有用である。本文脈で用いられる用語「TNFα」は、全長TNFα、そのフラグメントおよび/またはその前駆体、すなわち膜貫通型TNFαおよび可溶型TNFαを含む。用語「検出する」は、定量的および/または定性的検出を包含する。特定の実施態様では、生物学的サンプルは、ヒト患者由来の細胞または組織を含む。生物学的サンプルの非限定の例は、血液、尿、脳脊髄液、バイオプシー、リンパ液および/または非血液組織を含む。
【0209】
特定の実施態様では、当該方法は、生物学的サンプルを、本明細書に記載のTNFαに対する結合メンバー(抗−TNFα抗体など)と、存在する場合はその標的TNFαへの阻害剤の結合および阻害剤−標的複合体の検出を許容する条件下で、接触させるステップを含む。そのような方法は、インビトロまたはインビボ方法であってよい。一実施態様では、そのような結合メンバーは、例えば、TNFαが患者の選択のためのバイオマーカーである場合に、本明細書に記載の結合メンバーを用いた治療に適任の対象を選択するために用いられる。同様に、結合メンバーの代わりに、そのような方法は、本明細書に記載のT−ボディの使用を伴ってよい。
【0210】
別の態様では、結合メンバー、例えば抗体は、化粧適用において、例えば、皮膚の審美的外観を改善するために用いられる。
【0211】
同様に、上述のT−ボディ、核酸配列、ベクターおよび/または宿主細胞は、上記に詳述したとおりに用いることができる。
【0212】
製品
さらなる態様では、製品(すなわち、キット)が提供される。製品は、(i)TNFαが関連する疾患の治療、予防、または(of)、進行遅延;(ii)診断または(of)(iii)化粧目的、に有用な物(材料など)を含む。製品は、使用のための説明書および1つまたは複数の容器を含んでよい。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、カートリッジ、プレートおよび試験管を含み、様々な材料のようなガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から作られてよい。少なくとも1つの容器は、本明細書に開示される結合メンバーを含む組成物を保持する。容器は、滅菌アクセスポートを有してよい。それぞれの容器は、典型的にラベルされる。
【0213】
試薬は、典型的に、所定量の乾燥粉末で提供され、通常は凍結乾燥され、溶解後に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む。他の添加剤、例えば安定剤および/またはバッファーを含んでもよい。結合メンバーが酵素により標識される場合、キットは典型的に、準じた(according)基質および補助因子を含む。
【0214】
使用のための説明書は、組成物が、選択された疾患の治療、予防および/または進行遅延のために用いられる指示;または、検出または診断アッセイを行なうための教示を提供し得る。教示は、ラベルにおよび/または添付文書上に提供され得る。
【0215】
参照配列
本明細書に開示される配列は:
配列番号1−scFv1のVL
EIVMTQSPSTLSASVGDRVIITCQASQSISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYWASTLASGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQSYYYTSNNSDGFWAFGQGTKLTVLG
配列番号2−scFv1のVH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCKASGIDFSNSGITWVRQAPGKGLEWVGYIYPGFGIRNYANSVRGRFTISRDTSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCARDPIYASSSGYADIWGQGTLVTVSS
配列番号3−scFv1のCDR−L1
QASQSISSYLA
配列番号4−scFv1のCDR−L2
WASTLAS
配列番号5−scFv1のCDR−L3
QSYYYTSNNSDGFWA
配列番号6−scFv1のCDR−H1
IDFSNSGIT
配列番号7−scFv1のCDR−H2
YIYPGFGIRNYANSVRG
配列番号8−scFv1のCDR−H3
DPIYASSSGYADI
配列番号9−scFv1
EIVMTQSPSTLSASVGDRVIITCQASQSISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYWASTLASGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQSYYYTSNNSDGFWAFGQGTKLTVLGGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCKASGIDFSNSGITWVRQAPGKGLEWVGYIYPGFGIRNYANSVRGRFTISRDTSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCARDPIYASSSGYADIWGQGTLVTVSS
配列番号10−リンカー
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号11−DLX105
MADIVMTQSPSSLSASVGDRVTLTCTASQSVSNDVVWYQQRPGKAPKLLIYSAFNRYTGVPSRFSGRGYGTDFTLTISSLQPEDVAVYYCQQDYNSPRTFGQGTKLEVKRGGGGSGGGGSGGGGSSGGGSQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCTASGYTFTHYGMNWVRQAPGKGLEWMGWINTYTGEPTYADKFKDRFTFSLETSASTVYMELTSLTSDDTAVYYCARERGDAMDYWGQGTLVTVSS
【0216】
以下は例であり、本明細書に開示される方法および組成物を例示する。上記に提供される概要を考慮に入れれば、様々な他の実施態様が実施され得ることが理解されよう。
【実施例】
【0217】
実施例1−TNFα中和scFvの同定
ウサギの免疫化:ウサギを、組み換えヒト(rh)TNFα(Peprotech,USA、カタログ番号300−01A)で免疫化した。最終ブースト後にリンパ節を抽出し、細胞を凍結保存した。
【0218】
ウサギB細胞のフローサイトメトリーソーティングおよび培養:FACSAria III(BD Biosciences)を用いて、TNFα−特異的なメモリーB細胞を、96ウェルマイクロプレートに単一細胞としてソーティングした。フィーダー細胞および10%ウシ胎仔血清(FCS)含有馴化培地の存在下で、単一B細胞クローンを培養した。
【0219】
合計で、3150個の単一B細胞クローンをソーティングし、培養し、そして、抗−TNFα−特異的なIgGの存在について、細胞培養上清をELISAにより分析した。手短には、rhTNFα(Peprotech,カタログ番号300−01A)を、2mcg/mLの濃度で、4℃で一晩、PBS中、Maxisorp 96ウェルマイクロプレート上にコーティングした。5%脱脂粉乳でブロック後、細胞培養上清を添加した。TNFα−特異的なIgGを、抗−ウサギIgG−HRP(Southern Biotech,カタログ番号4050−05)により検出した。BM Blue POD基質(Roche Applied Science)を用いてELISAを展開した。合わせて566個の、選択されたTNFα−特異的なIgG産生B細胞クローンが同定され、PK−15細胞アッセイにおいて、IgG抗体をそれらの中和能についてさらに分析した。200個の、IgG−産生B細胞クローンが、rhTNFαの細胞毒性活性を中和することが見いだされた。
【0220】
TNFα−中和IgGのシーケンシング:中和抗−TNFα IgG抗体を産生する全てのウサギB細胞クローンを、RNeasy Mini Kit(Qiagen Germany,カタログ番号74106)を用いてmRNA単離に供した。製造元のプロトコル(OneStep RT−PCR kit,Qiagen Germany,カタログ番号210212)に従って、逆転写のテンプレートとしてmRNAを用いた。続いて、ウサギIgG重鎖および軽鎖をコードする配列を特異的に増幅するための、オリゴヌクレオチドを用いたPCR反応を行なった(Biometra Thermocycler T3)。重鎖および軽鎖PCRフラグメントを、独立にシーケンスして(ABI,Sanger 3730xl;Microsynth AG,Balgach,Switzerland)、得られたヌクレオチド配列を、EMBOSS Transeq(http://www.ebi.ac.uk/Tools/st/)を用いてアミノ酸配列に翻訳し、CLUSTAL W2(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/)を用いて並べた。
【0221】
抗−TNFα scFv遺伝子の構築およびscFvタンパク質発現:上記に定義した可変軽鎖および可変重鎖のウサギIgG CDR領域を同定して、ヒト軽鎖および重鎖アクセプターフレームワークへ移植した。一部では、点突然変異が導入された。配列番号10の配列によりC末可変重鎖に連結したN末可変軽鎖を有するscFvタンパク質をコードする細菌性発現ベクターが生産された。ScFvタンパク質は、E.coli BL21(DE3);Novagen,USA、カタログ番号69450−3)内で封入体として発現され、精製され、可溶化され、そして、タンパク質はリフォールディングされた。リフォールディングされたscFvを、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製して、およそ26kDaに相当する単量体ピーク画分を回収した。精製されたscFvを、ELISAによりTNFα結合に関して分析した。ScFvをさらに評価して、PK−15細胞アッセイにおいてTNFα中和能を決定した。この手順により、72個の試験されたscFvのうち、5個のTNFα−特異的scFvが、ヒトTNFαの強力な阻害剤として同定された。
【0222】
実施例2−ヒト可溶型および膜貫通型TNFαの結合
まず、TNFαの特異的認識をELISAにより確認した(
図1)。手短には、rhTNFαを、2mcg/mLの濃度で、PBS中で、Maxisorp 96ウェルマイクロプレート上に4℃で一晩コーティングした。5%脱脂粉乳でブロッキングした後、増加する濃度の全ての5個の事前選択されたscFv(10〜3000ng/mL)を加えて、Protein L−HRP(Sigma−Aldrich,カタログ番号P3226)によりscFvを検出した。BM Blue POD基質(Roche Applied Science)を用いてELISAを展開した。TNFα−特異的scFv DLX105を、ポジティブコントロールとして用いた。しかしながら、CDRは同じである。DLX1084(特異性が無関係のscFv)を、ネガティブコントロールとして用いた。
図1Aは、scFv1が、rhTNFαに特異的に結合することを示す。全てのscFvは、マイクロプレート上に直接固定化した場合、Protein L−HRPにより認識された(
図1B)。このことは、(i)scFvが正しくリフォールディングされたこと、(ii)コントロールscFv DLX1084は、rhTNFαに結合しなかったことを示し、および、(iii)同定されたscFv1は、rhTNFαに特異的であることを証明する。
【0223】
天然に生産されるヒトTNFαの認識を、サンドウィッチELISAにより評価した。ヒトTNFαの天然型は、ヒトTHP−1単球細胞株(DSMZ Germany,カタログ番号ACC 16)から得た。THP−1細胞を6ウェル組織培養プレートで培養し、10ng/mlのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA;Sigma−Aldrich、カタログ番号P1585)を用いて6時間刺激し、続いて、1mcg/mLのLPS(Sigma−Aldrich、カタログ番号L4391)を用いて37℃で16時間刺激した。細胞上清を回収して、ヒトTNFα/TNFSF1A ELISA DuoSet(R&D Systems、カタログ番号DY210)を用いて、分泌されたTNFαを定量した。scFvサンプルを、PBS(pH7.2)中、5mcg/mLで96ウェルマイクロプレート(Maxisorp,Nunc)上に固定化した。ブロッキングおよび洗浄後、ヒトTNFαの天然型または組み換えで発現したヒトTNFα(Peprotech,カタログ番号300−01A)を、5ng/mLの終濃度でアプライした。ビオチン化ポリクローナル抗−TNFα抗体およびストレプトアビジン−HRP(BD Pharmingen,カタログ番号554060)を用いて、結合したTNFαを検出した。全ての5個の選択されたscFvは、rhTNFαおよび天然型ヒトTNFαの両方に等しく良好に結合する。
【0224】
膜貫通型TNFαの認識:膜に結合したままの、ヒトTNFαのΔ1−12変異体を発現するCHO細胞を、5個の選択したscFvまたはコントロールscFvで染色し、フローサイトメトリーにより分析した。細胞を、増加する量のscFvとともにインキュベートし、結合したscFvを、ビオチン化タンパク質Lを用いて、その後にPE−標識ストレプトアビジンで染色して、検出した。scFv1を含む全ての5個のscFvサンプルは、tmTNFαに効率的に結合し、一方で、ネガティブコントロールscFv DLX1084は、tmTNFαに結合しなかった。scFv1およびネガティブコントロールscFv DLX1084に関するフローサイトメトリーヒストグラムを
図4Aに示す。
【0225】
実施例3−可溶型および膜貫通ヒトTNFαの中和
抗体全長およびscFvを、PK−15細胞アッセイにおいて、それらのTNFα中和能について試験した(ブタ腎臓上皮細胞、DSMZ,Germany,カタログ番号ACC640)。ポジティブコントロールscFv DLX105ならびに市販の抗体(インフリキシマブ、ゴリムマブおよびアダリムマブ)を比較に用いた。CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを用いて、TNFα−特異的scFvに関するIC
50値を決定した。このアッセイでは、発光シグナルの発生は、存在するATP量に比例し、それは、培養中に存在する生細胞の数に直接比例する。手短には、rhTNFαの可溶型(1.4pM)を、増加する濃度のscFv(200pg/mL〜3mcg/mL)とともに事前インキュベートし、PK−15細胞に添加した(10.000/ウェル)。CellTiter−Glo(登録商標)試薬(Promega,カタログ番号G7572)を、製造元の指示に従って用いた。発光を、GloMax(登録商標)96 Microplate Luminometer上で測定した。阻害曲線をプロットして、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア、バージョン6.04を用いてIC
50値を計算した。scFv1は、30±6pMのIC
50でrhTNFαの細胞毒性を効率的にブロックし、一方で、一価ポジティブコントロールscFv DLX105(260±34pM)に関するIC
50値は、有意により高かった(
図2、表1)。ScFv2〜5は、25pM〜40pMの範囲のIC
50値でrhTNFαの細胞毒性活性を強く阻害した。全ての5個の一価scFvに関するIC
50値は、市販の二価抗体インフリキシマブ、アダリムマブおよびゴリムマブのものと同程度であった(
図3)。
【0226】
実施例2では、全ての選択されたscFvが、TNFαの膜貫通型に結合することが示されている。scFvがtmTNFαの生物学的活性を中和するかどうかを調べるために、HEK−Dual TNFα−感受性細胞(InvivoGen,カタログ番号hkd−tnfa)に対するtmTNFαの細胞毒性作用を利用した。HEK−Dual TNFα−感受性細胞は、NF−kB活性化を評価することによってTNFαの生物活性をモニターするように設計した。細胞を、2つのNF−kB−誘導性レポーター構築物の安定した共トランスフェクションにより、ヒト胚腎臓293細胞から取得した。結果として、HEK−Dual TNFα−感受性細胞は、TNFαにより誘導されるNF−kB活性化に応答して、ルシフェラーゼおよび胚アルカリフォスファターゼを分泌する。両方のレポーター遺伝子産物は、Quanti−Luc(InvivoGen,カタログ番号rep−qlc1)およびQuanti−Blue(InvivoGen,カタログ番号rep−qb1)を用いて、細胞培養上清において測定される。tmTNFαを発現するCHO細胞を、5%のFCSを含む100μlのRPMI 1640中、96ウェルの平底マイクロプレートに10’000細胞/ウェルでプレーティングした。scFv1、ポジティブコントロールscFv DLX105またはネガティブコントロールscFv DLX1084の段階希釈(10〜300nM)を、37℃で20分間、tmTNFα−発現CHO細胞とともにインキュベートした。それから、HEK−dual細胞を20’000細胞/ウェルで加えて、37℃で24時間、共インキュベートした。生じた細胞培養上清を用いて、ルシフェラーゼおよび分泌された胚アルカリフォスファターゼの活性を測定した。阻害曲線をプロットして、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア、バージョン6.04を用いてIC
50値を計算した。5個の選択されたscFvは、10nM〜50nMの範囲のIC
50値で膜貫通型TNFαの活性を阻害し、scFv5が最も高いIC
50値であった。scFv1およびポジティブコントロールscFv DLX105は、tmTNFαの活性を、それぞれ50nMおよび32nMのIC
50で阻害した(
図4B、表1)。同様の結果が、Quanti−Blueを用いてアルカリフォスファターゼ活性を測定した場合に得られた。したがって、これらの実験的条件下では、400nMのscFv1は、tmTNFα活性の50%を阻害した。
【0227】
【表1】
【0228】
実施例4−scFvの種およびTNFαファミリー交差反応性
人類以外の種のTNFαホモログに対する5個の選択されたscFvの交差反応性プロファイルを、ELISAを用いて評価した。以下の組み換えで発現されたTNFαタンパク質を調べた:アカゲザル(R&D Systems,USA,カタログ番号1070−RM−025/CF)、カニクイザル(Sinobiological,カタログ番号90018 CNAE)、イヌ科(Kingfisher Biotech,USA,カタログ番号RP0261D−025)およびネコ科(R&D Systems,カタログ番号、2586FTCF)、ウサギ(Kingfisher,カタログ番号RP0429U)、ラット(Peprotech,カタログ番号400−14)ミューリン(Peprotech,カタログ番号315−01A)、モルモット(R&D Systems,カタログ番号5035−TG−025/CF)、ブタ(R&D Systems,カタログ番号690−PT−025/CF)。手短には、タンパク質を、PBS(pH7.2)中、Maxisorp 96ウェルマイクロプレート上で、4℃で一晩、2mcg/mLの濃度でコーティングした。5%脱脂粉乳でのブロッキング後、増加する濃度のscFv(0.1、0.3および1.0mcg/mL)をウェルに加えた。全てのタンパク質の成功したコーティングを、TNFα−特異的コントロール抗体を用いて個々に確認した。scFv1はProtein L−HRP(Sigma−Aldrich,USA,カタログ番号P3226)により検出され、一方で、全長IgGコントロール抗体は、ストレプトアビジン−HRP(BD Pharmingen,USA,カタログ番号554060)、または、HRPで標識された他の適任の二次抗体のいずれによって検出された。BM Blue POD基質(Roche Applied Science)を用いてELISAを展開し、吸光度を450nmで測定した。scFv1〜5の交差反応性を、scFv DLX2481と比較した。DLX2481は、WO2009/155723に記載されるEP−34 scFvの変異であり(ESBATech,Alcon Biomedical Research Unit LLC)、いくつかの点突然変異をフレームワーク領域内に含む。scFv1、scFv3およびscFv4は、TNFαの5種のオルソログ、すなわち、ヒト、アカゲザル、カニクイザル、ネコ科およびイヌ科のTNFαタンパク質を特異的に認識した。scFv2は、rhTNFαを特異的に認識したが、他の試験された種のいずれとも相互反応しなかった。scFv DLX2481は、組み換えヒトTNFαのみを認識した。さらに、TNFファミリーメンバーに対するscFv1の交差反応性を、コーティングした組み換えヒトリンホトキシンα2/β1(R&D Systems,USA,カタログ番号679−TX−010/CF)、組み換えヒトリンホトキシンα1/β2(R&D Systems,カタログ番号678−LY−010/CF)、組み換えヒトCD40リガンド/TNFSF5(R&D Systems,カタログ番号6420−CL−025/CF)および組み換えヒトTNFβ/TNFSF1(R&D Systems,カタログ番号211−TB−010/CF)を用いて、直接ELISAにより測定した。scFv1は、40nMの濃度まで、これらのTNFファミリータンパク質と相互作用しなかった。
【0229】
実施例5−scFvの安定性
scFvの安定性に影響し得る2つの異なるプロセスを見ることができる。第一に、scFvは、ダイマー化する傾向があり得て、オリゴマー化およびさらなる凝集および沈殿が続くことが多い。第二に、より小さなフラグメントへ導くscFv分解が経時的に生じ得る。
【0230】
PBS(pH7.2)中に処方された5個の選択されたscFvの、異なる温度条件で保管した際の安定性を調べた。scFvを、1.5mLポリプロピレンチューブ中、4℃、22℃、37℃および−20℃で、10mg/mLの濃度で保管した。所定の時点で、各サンプルを目視検証し、タンパク質濃度を280nmで測定した。scFv3および4は、4℃および37℃で、1週間のインキュベーション後、より低い安定性を示したが、目に見えるタンパク質沈殿および有意なタンパク質損失は、scFv1に関して観察されなかった。サンプルをSE−HPLCにより分析して、合計ピーク面積に関してモノマー、ダイマーおよび高分子量オリゴマーのレベル(%)を決定した:TOSOH TSKgel G2000 SWXLカラム、相ジオール、L×I.D.30cm×7.8mm、5μm粒子サイズ(Sigma,カタログ番号08540)を用いた。5μLのscFv1(1mg/mL)をロードした。移動相としてPBS(pH7.2)を選択した。
【0231】
SE−HPLC分析は、上述の実験条件において、検出可能な低分子量分解産物を示さなかった。4℃、22℃および−20℃で4週間保管した際、scFv1の有意なダイマー化は見られなかった。scFv1は、37℃での1、2、3または4週の保管後に、それぞれ、2.61%、6.09%、8.75%および11.02%までのダイマーを形成し(表2)、37℃で3および4週間保管の際に、高分子量分子はほんの少量のみ見られた。
【0232】
【表2】
【0233】
安定性測定は、scFv1に関して6ヶ月まで延長された。4℃で6ヶ月後、scFv1調製物は91.17%のモノマーを含んでいた。
【0234】
また、scFv1の熱安定性を示差走査型蛍光定量法(DSF)により評価した。PBS(pH7.2)中に処方された0.54mg/mLでのscFv1は、PBS(pH7.2)中、20×SYPRO(登録商標)Orange(Sigma−Aldrich,カタログ番号S5692,5000x)の存在下で、リアルタイムPCRデバイス(Corbett,Rotor−Gene)において、1℃/5秒の走査速度で30℃から95℃に加熱された。グラジエントのランの間、蛍光値を測定した(励起波長470nm;発光波長555nm)。Rotor−Gene 6000 Series Software 1.7.を用いて計算したscFv1の融解温度(Tm)の中間点は、scFv1に関して76.0℃であった。
【0235】
タンパク性の生物製剤は、製造、保管および輸送の間、凍結/解凍ストレスに曝されるようになり得て、それは、凝集および分解を生じさせ得る。凍結/解凍サイクルの間のscFv1の安定性を評価するために、1.5mLポリプロピレンチューブ内に、PBS(pH7.2)中、10mg/mLで処方した。バイアルを液体窒素中に5分間沈めた。解凍のために、それらを室温で10分間、水浴中でインキュベートした。1、3、5、7または10回の凍結/解凍サイクルを行なって、上述のようにSE−HPLCによりサンプルを分析した。実質的に100%のscFv1が、10回の凍結/解凍サイクル後に単量体のままであり、タンパク質損失または沈殿は見られなかった。
【0236】
さらなる特性化のために、scFv1を、その極めて優れた安定性パラメーター、その高い能力およびその幅広い交差反応性スペクトルに起因して、5個の事前選択されたscFvのプールから選択した。
【0237】
実施例6−90%ヒト血清における安定性
5個のscFv(scFv1〜5)を、PBS(pH7.2)中0.1mg/mLに希釈した。scFvのアリコートをヒト血清(Sigma,カタログ番号H4522)に添加して、90%v/vヒト血清中10mcg/mLの終濃度を与えた。並行して、1%のBSAを含むPBS(pH7.2)中にscFvを希釈した。サンプルを、4℃および37℃で、1、4および20時間インキュベートした。サンプルのTNFα結合能を、実施例2に記載の固定化TNFαを用いた直接ELISAにより測定した。血清曝露scFv1を、増加する濃度(20〜500ng/mL)で試験して、Protein L−HRPにより検出した。結果は、37℃でのヒト血清に対する20時間曝露が、scFv1、およびscFv2〜5の、TNFα結合能を有意に変えなかったことを示す。
【0238】
実施例7−scFvの溶解度
5個の選択されたscFv(scFv1〜5)を精製して、PBSバッファー(pH7.2)(リン酸緩衝生理食塩水1×、Gibco,Life TechnologiesTM,カタログ番号20012)中に保管した。scFv1を、Vivaspin 20遠心分離濃縮器(Sartorius Stedim Biotech,カタログ番号VS2001)を用いて室温で50mg/mLまで濃縮し、目視および分析的HPLC(カラムTOSOH TSKgelG2000 SWXL,カタログ番号08540)により分析した。scFv1の生じた溶液は透明であり、いかなる沈殿物もなく、タンパク質の100%が単量体であった。したがって、PBS(pH7.2)中のscFv1の溶解度は≧50mg/mLである。
【0239】
実施例8−アカゲザル、カニクイザルおよびイヌ科TNFαの中和
ScFv1を、上述のPK−15細胞に対する、アカゲザル、カニクイザルおよびイヌ科TNFαタンパク質の細胞毒性活性の阻害に関して評価した。scFv1の段階希釈を、50pg/mLの組み換えアカゲザル、カニクイザルまたはイヌ科のTNFαタンパク質とともに事前インキュベートした。混合物をPK−15細胞に加え、さらにインキュベートして、実施例3に記載のとおりに分析した。ScFv1は、アカゲザル、カニクイザルおよびイヌ科TNFαタンパク質を非常に強く中和した。
【0240】
実施例9−インビボの効能
scFv1がインビボでヒトTNFαの生物学的活性を阻害する能力を、Tg1278TNF−koマウス(隣接領域を有する完全なヒトTNFα遺伝子をコードする導入遺伝子を含むマウス株)を使って示した。これらのマウスは、マウスTNFαの不存在下では正常に調節されたヒトTNFαを発現し、見かけ上の病理がなく正常な発達を示す。
【0241】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖(LPS)に対するマウスの感受性は、LPSの致死効果に対する感受性を100’000倍増加させる肝毒性物質であるD−ガラクトサミン(D−gal)を用いた処置によって増大する。D−galの効果は、もっぱら肝細胞に制限され、そこで、RNAおよびタンパク質の生合成不全をもたらすウラシルヌクレオチドの枯渇を生じさせる。マウスにおけるLPS/D−gal投与は、主にTNF受容体1を介したTNFαシグナル伝達から生じる肝細胞の蔓延したアポトーシス死により特徴付けられる劇症肝損傷に起因して、48時間内に観察される一貫した死亡率を導く。中和抗−TNFα抗体を用いたマウスの処置は、LPS/D−gal肝臓毒性の致死効果からそれらを保護する。
【0242】
ScFv1およびポジティブコントロールscFv DLX105を、10.0mg/kg体重の投与量で、8〜9週齢hTNFαトランスジェニックマウスに、LPS/D−Gal(10ng/投与量のLPS、20mg/投与量のD−gal)を用いたi.p.チャレンジの1時間前および1時間後に、2回腹腔内投与した。LPS/D−galチャレンジの2時間後、血液サンプルを採取し、マウスIL−6の血清レベルを、製造元の指示に従ってMouse IL−6 DuoSet ELISAキット(R&D Systems,カタログ番号DY406)を用いて測定した。ネガティブコントロール群は、特異性が無関係のscFv(ネガティブコントロールscFv)を用いて、10mg/kg投与量で、2回腹腔内に処置した。scFv1およびポジティブコントロールscFv DLX105は、LPS/D−gal−チャレンジマウスを効率的に保護し、一方で、ネガティブコントロールscFvは保護しなかった(表4)。したがって、マウス血清IL−6レベルは、scFv1およびポジティブコントロールscFv DLX105によって有意に阻害され、一方で、ネガティブコントロールscFvは、マウス血清IL−6を阻害しなかった(表4)。
【0243】
表4は、scFv1、ポジティブコントロールscFv DLX105およびネガティブコントロールscFvの保護効果を示す。マウスの生存率(%)、およびマウスIL−6の血清レベルを、平均値(pg/mL)(標準偏差を含む)として示す。
【0244】
【表3】
【0245】
本発明の現在のところ好ましい実施態様が示され説明されているが、本発明は、それに制限されないが、以下の特許請求の範囲内で、他の方法でさまざまに具現化され実施され得ることが理解されるべきである。本発明の非常に多くの改変および代替の実施態様が当業者に容易に明らかであるので、この説明は、例示のみであると解釈されるべきであり、本発明を実施するためのベストモードを当業者に教示する目的のためである。したがって、全ての適切な改変および同等物は、以下の特許請求の範囲内であると考えられ得る。