【文献】
福原健志(外5名),8K送出システムの開発 −ベースバンド/符号化/多重化装置−,映像情報メディア学会2016年年次大会講演予稿集,日本,一般社団法人映像情報メディア学会,2016年 8月17日,p.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、放送および通信を連携させたハイブリッドなコンテンツ配信サービスを実現する新たな多重化方式として、4K、8K放送のデータ多重化方式として、MMT(MPEG Media Transport)方式が採用されている。MMT方式が採用された送信システムでは、障害が発生した場合においても、機能が維持できるように、2系統以上からなる冗長構成を組むことがある。そして、もしも主系に障害が発生した場合や、メンテナンス等が必要な場合には、切替装置によって主系から冗長系への切替えが行われる。したがって、このような切替装置は、可能な限り主系と冗長系とをシームレスに切替えることが望まれている。非特許文献1には、具体的な運用規定として、「冗長系切り替え時のMMT運用ガイドライン」が記載されている。
【0003】
「冗長系切り替え時のMMT運用ガイドライン」には、送信側ガイドラインと受信側ガイドラインとが記載されており、送信側ガイドラインには、具体的に、以下のような記載がなされている。
【0004】
(ガイドラインT1.1)
冗長系送出システムは本線系送出システムとGOP(Group of Pictures)位相をできるだけ合致させておくこと。また、本線信号よりも2フレーム先行して送出されるポインタスロット情報との整合を考慮して系統切替を行うこと。
MPU(Media Processing Unit)タイムスタンプとMPUの関係の整合性を考慮して切り替えること。
【0005】
(ガイドラインT1.2)
処理内容が変わる場合、冗長切替でバージョン番号が変化しないことを防ぐため、送出側ではバージョン番号変化をさらに行うこと。
【0006】
(ガイドラインT1.3)
系統切替は、なるべく音声がミュートされた状態で行うこと。
【0007】
このような送信側ガイドラインに従って、主系と冗長系とをシームレスに切り替える場合、符号化装置によって主系と冗長系とのGOP位相を揃える処理が実施され、映像データおよび音声データに切替点が作成される。
【0008】
それに応じて、切替点が、切替装置によって識別され、切替点において、主系から冗長系への系統切替が行われる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態の送信方法が適用された送信システムを、図面を参照して説明する。
【0016】
(送信システムの全体構成)
図1は、本発明の実施形態の送信方法が適用された送信システムの一例として、TLVパケットを送信するTLVパケット送信システム10の全体構成例を示すブロック図である。
【0017】
本発明の実施形態のTLVパケット送信システム10は、放送信号の一例であるTLVパケットを送出するために主系と冗長系との2系統を備えている。TLVパケット送信システム10は、コンピュータを構成するFPGA(field-programmable gate array)もしくはCPU(Central Processing Unit)もしくはこれらの組合せおよびプログラムメモリ(例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等の随時書き込みおよび読み出しが可能な不揮発性メモリ)を有し、本実施形態を実施するために必要な制御機能として、主系として、符号化装置20(#1)、MMT多重化装置30(#1)、スクランブラ50(#1)、IP多重化装置60(#1)、TLV多重化装置70(#1)を備え、冗長系として、符号化装置20(#2)、MMT多重化装置30(#2)、スクランブラ50(#2)、IP多重化装置60(#2)、TLV多重化装置70(#2)を備え、主系と冗長系との後段に、主系と冗長系とに共通の冗長切替装置90を備えている。なお、これらの制御機能はいずれも上記プログラムメモリに格納されたプログラムを上記FPGAやCPUに実行させることにより実現される。
【0018】
また、符号化装置20(#1)、20(#2)、TLV多重化装置70(#1)、70(#2)、および冗長切替装置90に対して外部入力がなされるように、TLVパケット送信システム10には、外部入力装置100が接続されている。
【0019】
(符号化装置)
図2は、符号化装置20の構成例を示すブロック図である。
【0020】
符号化装置20(#1)、20(#2)は、例えば図示しない放送マスターシステムから入力された映像信号、音声信号、および字幕信号を、MMTP(MPEG Media Transport Protocol)パケット形式の放送信号に変換する装置であって、切替制御受付部21、GOP位相調整部22、信号符号化部23、切替情報設定部24、およびMMTPパケット化部25を備えている。符号化装置20(#1)、20(#2)は、ともに同様な構成をしているので、以下では、上記各構成要素の説明を、主系と冗長系との区別なく行う。
【0021】
信号符号化部23は、例えば図示しない放送マスターシステムから入力された映像信号、音声信号、および字幕信号を受信し、受信したこれら信号をそれぞれ符号化(圧縮)し、符号化(圧縮)された映像信号、音声信号、および字幕信号を、切替情報設定部24およびMMTPパケット化部25へそれぞれ出力する。
【0022】
切替制御受付部21は、外部入力装置100から、主系と冗長系との切替の要求を受け付ける。そして、切替制御受付部21が切替の要求を受け取った場合に、GOP位相調整部22、切替情報設定部24、およびMMTPパケット化部25は、以下に説明するような、主系と冗長系との切替のための処理を実行する。
【0023】
GOP位相調整部22は、切替制御受付部21による要求の受付後、映像信号、音声信号、および字幕信号のGOP(Group of Pictures)位相を揃えるための調整信号を、切替情報設定部24へ出力する。
【0024】
切替情報設定部24は、調整信号に基づいて決定される主系と冗長系との切替点に対応するMMTPパケットに含まれるMPU(Media Processing Unit)シーケンス番号に、所定の値(例えば、0)を設定するための指示入力を生成する。そして、この指示入力を、MMTPパケット化部25へ出力する。
【0025】
あるいは、切替情報設定部24は、調整信号に基づいて決定される主系と冗長系との切替点に対応するMMTPパケットに含まれるタイムスタンプフィールドの最下位ビットを、所定の値(例えば、0)に設定するための指示入力を生成する。そして、この指示入力を、MMTPパケット化部25へ出力する。
【0026】
図3は、ARIB(一般社団法人電波産業会)の標準規格であるARIB STD−B60で定義されているMMTPパケットの構成を示す図である。さらに、
図4は、
図3のデータ構造の末尾に囲み線で示されているMMTPペイロードの構成(ARIB STD−B60)を示す図である。
図4の囲み線で示されているMPU_sequence_numberが、MPUシーケンス番号である。
【0027】
MMTPパケット化部25は、信号符号化部23によって符号化(圧縮)された映像信号、音声信号、および字幕信号をパケット化して、それぞれのMMTPパケットを生成する。
【0028】
このようにしてMMTPパケット化部25は、映像信号、音声信号、および字幕信号それぞれのMMTPパケットを、切替点が識別可能な状態で、MMT多重化装置30へ出力する。
【0029】
なお、放送マスターシステムから符号化装置20へは、映像信号、音声信号、および字幕信号の3種類の信号が常に入力される訳ではなく、これらのうち、何れか1つまたは2つしか入力されない場合もあり得る。例えば、放送マスターシステムから符号化装置20へ、映像信号しか入力されない場合、符号化装置20は、映像信号のMMTPパケットのみをMMT多重化装置30へ出力する。放送マスターシステムから符号化装置20へ、映像信号と音声信号とが入力された場合、符号化装置20は、映像信号のMMTPパケットと、音声信号のMMTPパケットとをMMT多重化装置30へ出力するという具合である。
【0030】
(MMT多重化装置)
MMT多重化装置30(#1)、30(#2)は、ともに同様な構成をしており、対応する各符号化装置20(#1)、20(#2)によって出力されたMMTPパケット(例えば、映像信号のMMTPパケット、音声信号のMMTPパケット、および字幕のMMTPパケット)や、図示しないEPG(電子番組ガイド)送出装置等から出力されたMMTPパケット形式のデータを多重し、多重化されたMMTPパケットを、同じ系統のスクランブラ50へ出力する。MMT多重化装置30(#1)、30(#2)は、それに加えて、必要に応じて、PAメッセージ等のMMT−SIの内部生成(再構築)をも行う。
【0031】
(スクランブラ)
スクランブラ50(#1)、50(#2)は、ともに同様な構成をしており、対応する各MMT多重化装置30(#1)、30(#2)から出力されたMMTPパケットに対して、著作権保護のための暗号化を施し、暗号化されたMMTPパケットを、同じ系統のIP多重化装置60へ出力する。なお、暗号化は必須ではないので、スクランブラ50を備えていない場合もある。
【0032】
IP多重化装置60(#1)、60(#2)は、ともに同様な構成をしており、対応する各スクランブラ50(#1)、50(#2)から出力された、MMTPパケットを、図示しない他の装置からのIPパケット形式のデータと多重化する。そして、多重化の結果得られたMMTPパケットおよびIPパケットを、同じ系統のTLV多重化装置70へ出力する。
【0033】
(TLV多重化装置)
図5は、TLV多重化装置70の構成例を示すブロック図である。TLV多重化装置70は、同じ系統のIP多重化装置60から出力されたMMTPパケットから、主系と冗長系との切替点に対応するMMTPパケットを検出し、MMTPパケットを、TLVパケットに変換し、検出された切替点に対応するTLVパケットを生成するための装置である。以下、このようなTLV多重化装置70の構成を説明する。
【0034】
TLV多重化装置70(#1)、70(#2)は、ともに同様な構成をしており、同じ系統のIP多重化装置60から出力されたMMTPパケット/IPパケット(例えば、映像信号のMMTPパケット/IPパケット、音声信号のMMTPパケット/IPパケット、および字幕のMMTPパケット/IPパケット等に該当し、これらはスクランブラ50が備えられている場合には暗号化されている)を、単一のTLV伝送フォーマット(TLVパケット)に変換し、変換によって得られたTLVパケットを、冗長切替装置90へ出力する。また、TLV−SIを内部生成する。
【0035】
これを実現するために、TLV多重化装置70は、入力されるMMTPパケット/IPパケットの種類毎に備えらえた受信部71、フィルタ部72、シーケンス番号取得部73、切替点検出部74、およびTLVパケット化部77を備えている。また、切替制御受付部75、多重部76、TLV−SI生成部78、ヌルパケット生成部79、および送信部81をそれぞれ1つずつ備えている。
【0036】
受信部71(#1),・・・,71(#n)は、TLV多重化装置70に入力されるMMTPパケット/IPパケットの種類毎に備えられており、例えば、受信部71(#1)は、IP多重化装置60から出力された映像信号のMMTPパケット/IPパケットを、受信部71(#2)は、符号化装置20から出力された音声信号のMMTPパケット/IPパケットを、受信部71(#n)は、図示しないEPGから出力された電子番組ガイドのMMTPパケット/IPパケットを、それぞれ受信し、対応するフィルタ部72へ出力する。
【0037】
フィルタ部72(#1),・・・,72(#n)は、受信部71(#1),・・・,71(#n)にそれぞれ対応して備えられており、例えば、フィルタ部72(#1)は、受信部71(#1)から出力された映像信号のMMTPパケット/IPパケットに対してフィルタ処理を行い、フィルタ部72(#2)は、受信部71(#2)から出力された音声信号のMMTPパケット/IPパケットに対してフィルタ処理を行い、フィルタ部72(#n)は、受信部71(#n)から出力された電子番組ガイドのMMTPパケット/IPパケットに対してフィルタ処理を行う。そして、フィルタ処理したMMTPパケット/IPパケットを、それぞれ対応するシーケンス番号取得部73へ出力する。
【0038】
シーケンス番号取得部73(#1),・・・,73(#n)は、フィルタ部72(#1),・・・,72(#n)にそれぞれ対応して備えられており、それぞれ、対応するフィルタ部72から出力されたMMTPパケット/IPパケットを、対応する切替点検出部74へ出力するとともに、対応するフィルタ部72から出力されたMMTPパケット/IPパケットのうちのMMTPパケット(
図3参照)に含まれるMTTPペイロード(
図4参照)から、MPUシーケンス番号を取得し、取得したMPUシーケンス番号を、それぞれ対応する切替点検出部74へ出力する。
【0039】
切替制御受付部75は、外部入力装置100から、主系と冗長系との切替の要求を受け付ける。そして、TLV多重化装置70は、切替制御受付部75が、切替の要求を受け取った場合、後述する処理を実行する。
【0040】
切替点検出部74(#1),・・・,74(#n)は、シーケンス番号取得部73(#1),・・・,73(#n)にそれぞれ対応して備えられており、それぞれ、対応するシーケンス番号取得部73から出力されたMMTPパケット/IPパケットを、対応するTLVパケット化部77へ出力するとともに、対応するシーケンス番号取得部73から出力されたシーケンス番号が、所定の値(例えば、0)になったことを検出する。例えば、切替点検出部74(#1)は、シーケンス番号取得部73(#1)から出力されたシーケンス番号が、所定の値(例えば、0)になったことを検出する。同様に、切替点検出部74(#2)は、シーケンス番号取得部73(#2)から出力されたシーケンス番号が、所定の値(例えば、0)になったことを検出し、切替点検出部74(#3)は、シーケンス番号取得部73(#3)から出力されたシーケンス番号が、所定の値(例えば、0)になったことを検出し、切替点検出部74(#n)は、シーケンス番号取得部73(#n)から出力されたシーケンス番号が、所定の値(例えば、0)になったことを検出する。このようにして、各切替点検出部74は、主系と冗長系との切替点に相当するMMTPパケット/IPパケットを検出する。そして、検出結果を、ヌルパケット生成部79へ出力する。
【0041】
TLVパケット化部77(#1),・・・,7
7(#n)は、切替点検出部74(#1),・・・,74(#n)にそれぞれ対応して備えられており、それぞれ、対応する切替点検出部74によって出力されたMMTPパケット/IPパケットを入力してTLVパケットを生成し、生成したTLVパケットを多重部76へ出力する。
【0042】
TLV−SI生成部78は、TLV−SIを生成し、多重部76へ出力する。
【0043】
ヌルパケット生成部79は、切替点検出部74(#1)、(#2)、・・・、(#n)から出力された検出結果に基づいて、切替点に相当するMMTPパケット/IPパケットをヌルパケットとして設定するための要求信号を多重部76へ出力する。要求信号は、切替点に相当するMMTPパケット/IPパケットの識別情報を含んでいる。
【0044】
多重部76は、各TLVパケット化部77から出力されたTLVパケットに対して、ヌルパケット生成部79から出力された要求信号に含まれる識別情報に基づいて、識別情報に対応するMMTPパケット/IPパケットに対応するTLVパケットのパケット種別をヌルパケットとした上で、多重化されたMMTPパケット/IPパケットを送信部81へ出力する。
【0045】
図6は、ARIB STD−B32によって規定されているTLVパケットの構造を示す図である。
【0046】
図6における「パケット種別」は、TLVパケットに格納するパケットの種別を識別するために使用する領域であり、その割り当ては、
図7に示す通りである。また、「データ長」は、これより後に続くデータバイト数を書き込む領域である。
【0047】
図7は、ARIB STD−B32によって規定されているTLVパケットにおける「パケット種別」の割り当てを示す図である。
【0048】
したがって、
図6のような構造をなすTLVパケットにおいて、「パケット種別」を0xFFとすることによって、ヌルパケットとなる。多重部76は、このようにして、識別情報に対応するMMTPパケット/IPパケットに対応するTLVパケットに対して、切替点に対応するパケット種別
0xFFのTLVパケットを挿入する。
【0049】
その後、送信部81は、TLVパケットを、冗長切替装置90へ出力する。したがって、冗長切替装置90へ出力されるTLVパケットのうち、切替点に対応するTLVパケットはヌルパケットとなる。
【0050】
なお、ヌルパケット生成部79は、ヌルパケットとする代わりに、以下のようにしても、切替点に対応するTLVパケットを生成可能にすることができる。すなわち、
図7に示されているように、「パケット種別」の0x04〜0xFDは、現在未定義となっている。したがって、「パケット種別」の0x04〜0xFDのうちの何れかを、切替点を示す「切替点パケット」として新たに割り当てる。例えば、「パケット種別」が0x04の場合を、「切替点パケット」と定義し、多重部76が、TLVパケット化部77から出力されたTLVパケットに対して、ヌルパケット生成部79から出力するパケット種別を0x04のTLVパケットを挿入する。
【0051】
その後、送信部81は、TLVパケットを、冗長切替装置90へ出力する。この場合、冗長切替装置90へ出力されるTLVパケットのうち、切替点に対応するTLVパケットは「切替点パケット」となる。
【0052】
(冗長切替装置)
図8は、冗長切替装置90の構成例を示すブロック図である。
【0053】
冗長切替装置90は、主系と冗長系との切替を実施するための装置であって、切替制御受付部91、パケット検出部92(#1)、92(#2)、パケット識別部94、および系統切替部95を備えている。
【0054】
切替制御受付部91は、外部入力装置100から、主系と冗長系との切替の要求を受け付ける。そして、冗長切替装置90は、切替制御受付部91が切替の要求を受け取った場合、以下に説明するような切替のための処理を実行する。
【0055】
パケット検出部92(#1)は、主系に接続されている。すなわち、TLV多重化装置70(#1)に接続されており、TLV多重化装置70(#1)から出力されたTLVパケットを検出し、検出したTLVパケットを、パケット識別部94および系統切替部95へ出力する。同様に、冗長系に接続されているパケット検出部92(#2)は、TLV多重化装置70(#2)から出力されたTLVパケットを検出し、検出したTLVパケットを、パケット識別部94および系統切替部95へ出力する。
【0056】
パケット識別部94は、パケット検出部92(#1)、92(#2)から出力されたTLVパケットから、所定のTLVパケットを識別する。所定のTLVパケットとは、例えば前述したように、ヌルパケットであるか、あるいは、「切替点パケット」として定義されているパケットである。
【0057】
パケット識別部94は、パケット検出部92(#1)、92(#2)から出力されたTLVパケットから、ヌルパケットであるTLVパケット、あるいは「切替点パケット」として定義されているTLVパケットのように、所定のTLVパケットを識別する。そして、TLVパケットの識別結果を系統切替部95へ出力する。
【0058】
系統切替部95は、パケット検出部92(#1)、92(#2)から出力されたTLVパケットに対して、パケット識別部94から出力されたTLVパケットの識別結果に基づいて、主系と冗長系との切替を実施する。
【0059】
このようにして、冗長切替装置90は、データの解析を行うことなく、主系と冗長系との間のTLVパケットのシームレスな切替を実現する。
【0060】
(送信システムの全体動作)
次に、
図1のような構成の送信システムの動作について
図9〜
図11のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
主系の符号化装置20(#1)には、例えば図示しない放送マスターシステムから映像信号、音声信号、および字幕信号が入力される。同様に、冗長系の符号化装置20(#2)にも、例えば図示しない放送マスターシステムから映像信号、音声信号、および字幕信号が入力される(S1)。
【0062】
これら信号は、信号符号化部23によって受信され、信号符号化部23では、受信したこれら信号に対する符号化(圧縮)がそれぞれなされ、符号化された映像信号、音声信号、および字幕信号が、切替情報設定部24およびMMTPパケット化部25へそれぞれ出力される。
【0063】
このような状態で、切替制御受付部21が、外部入力装置100から、切替の要求を受け取る(S2)と、符号化装置20によって、以下に説明するような切替のための処理が実行される。
【0064】
まず、GOP位相調整部22において、映像信号、音声信号、および字幕信号のGOP位相を揃えるための調整信号が生成され、切替情報設定部24へ出力される(S3)。
【0065】
切替情報設定部24では、調整信号に基づいて決定される主系と冗長系との切替点に対応するMMTPパケット(
図3)に含まれるMPUシーケンス番号(
図4)に、所定の値(例えば、0)を設定するための指示入力が生成される(S4)。この指示入力は、切替情報設定部24からMMTPパケット化部25へ出力される。
【0066】
あるいは、切替情報設定部24では、調整信号に基づいて決定される主系と冗長系との切替点に対応するMMTPパケットに含まれるタイムスタンプフィールド(
図3)の最下位ビットを、所定の値(例えば、0)に設定するための指示入力が生成される。この場合も、生成された指示入力は、MMTPパケット化部25へ出力される。
【0067】
MMTPパケット化部25では、映像信号、音声信号、および字幕信号それぞれのMMTPパケットが、切替点が識別可能な状態で、MMT多重化装置30へ出力される(S6)。
【0068】
MMT多重化装置30(#1)、30(#2)の各々では、対応する各符号化装置20(#1)、20(#2)によって出力されたMMTPパケット(例えば、映像信号のMMTPパケット、音声信号のMMTPパケット、および字幕のMMTPパケット)や、図示しないEPG(電子番組ガイド)送出装置等から出力されたMMTPパケット形式のデータが多重され、多重化されたMMTPパケットが、同じ系統のスクランブラ50へ出力される(S7)。
【0069】
スクランブラ50(#1)、50(#2)では、対応する各MMT多重化装置30(#1)、30(#2)から出力されたMMTPパケットに対して、著作権保護のための暗号化が施され、暗号化されたMMTPパケットが、同じ系統のIP多重化装置60へ出力される(S8)。
【0070】
IP多重化装置60(#1)、60(#2)では、対応する各スクランブラ50(#1)、50(#2)から出力されたMMTPパケットが、図示しない他の装置からのIPパケット形式のデータと多重化される(S9)。そして、多重化の結果得られたMMTPパケット/IPパケットが、同じ系統のTLV多重化装置70へ出力される。
【0071】
TLV多重化装置70(#1)、70(#2)では、同じ系統のIP多重化装置60から出力されたMMTPパケット/IPパケットが、信号の種類毎に備えられた受信部71(#1),・・・,71(#n)によって受信され、それぞれ対応するフィルタ部72(#1),・・・,72(#n)へ出力される。そして、各フィルタ部72(#1),・・・,72(#n)においてフィルタ処理され、フィルタ処理されたMMTPパケット/IPパケットが、それぞれ対応するシーケンス番号取得部73へ出力される(S10)。
【0072】
各シーケンス番号取得部73(#1),・・・,73(#n)ではそれぞれ、対応するフィルタ部72から出力されたMMTPパケット/IPパケットが、対応する切替点検出部74へ出力される。また、対応するフィルタ部72から出力されたMMTPパケット/IPパケットのうちのMMTPパケット(
図3参照)に含まれるMTTPペイロード(
図4参照)から、MPUシーケンス番号が取得され、それぞれ対応する切替点検出部74へ出力される(S11)。
【0073】
切替制御受付部75は、外部入力装置100から、主系と冗長系との切替の要求を受け付ける。そして、切替制御受付部75が切替の要求を受け取った場合(S12)、各切替点検出部74(#1),・・・,74(#n)において、それぞれ対応するシーケンス番号取得部73から出力されたMMTPパケット/IPパケットが、対応するTLVパケット化部77へ出力される。また、対応するシーケンス番号取得部73から出力されたシーケンス番号が、所定の値(例えば、0)になったことが検出され、検出結果が、ヌルパケット生成部79へ出力される(S13)。
【0074】
TLVパケット化部77では、MMTPパケットから、TLVパケットが生成され、生成されたTLVパケットが、多重部76へ出力される(S14)。
【0075】
TLV−SI生成部78では、TLV−SIが生成され、多重部76へ出力される。また、ヌルパケット生成部79では、切替点検出部74(#1),・・・,74(#n)から出力された検出結果に基づいて、切替点に相当するMMTPパケット/IPパケットをヌルパケットとして設定するための要求信号が多重部76へ出力される。要求信号には、切替点に相当するMMTPパケットの識別情報が含まれている。
【0076】
多重部76では、各TLVパケット化部77から出力されたTLVパケットに対して、ヌルパケット生成部79から出力された要求信号に含まれる識別情報に基づいて、識別情報に対応するMMTP/IPパケットに対応するTLVパケットのパケット種別が、ヌルパケットとされた上で、多重されたMMTP/IPパケットが、送信部81へ出力される。このMMTP/IPパケットは、送信部81から冗長切替装置90へ出力される(S15)。これによって、冗長切替装置90へ出力されるTLVパケットのうち、切替点に対応するTLVパケットはヌルパケットとなる。
【0077】
なお、多重部76は、例えば現在未定義となっている「パケット種別」の0x04〜0xFDのうちの何れかを、切替点を示す「切替点パケット」として新たに割り当て、ヌルパケット生成部79から出力された要求信号に含まれる識別情報に基づいて、対応するTLVパケットのパケット種別を0x04とするようにしても良い。これによって、冗長切替装置90へ出力されるTLVパケットのうち、切替点に対応するTLVパケットは「切替点パケット」とされる。
【0078】
冗長切替装置90では、切替制御受付部91において、外部入力装置100から、主系と冗長系との切替の要求を受ける(S16)と、以下のように動作する。
【0079】
すなわち、主系であるTLV多重化装置70(#1)から出力されたTLVパケットが、パケット検出部92(#1)によって検出され、検出されたTLVパケットが、パケット識別部94および系統切替部95へ出力される。また、冗長系であるTLV多重化装置70(#2)から出力されたTLVパケットが、パケット検出部92(#2)によって検出され、検出されたTLVパケットが、パケット識別部94および系統切替部95へ出力される(S17)。
【0080】
パケット識別部94では、パケット検出部92(#1)、92(#2)から出力されたTLVパケットから、所定の多重構成を有するTLVパケットが識別される(S18)。所定の多重構成を有するTLVパケットとは、例えば前述したように、ヌルパケットであるか、あるいは、「切替点パケット」として定義されているパケットである。
【0081】
このように、パケット識別部94では、パケット検出部92(#1)、92(#2)から出力されたTLVパケットから、ヌルパケットであるTLVパケット、あるいは「切替点パケット」として定義されているTLVパケットのように、所定の多重構成を有するTLVパケットが識別される。そして、識別されたTLVパケットが、系統切替部95へ出力される。
【0082】
系統切替部95では、パケット検出部92(#1)、92(#2)から出力されたTLVパケットに対して、パケット識別部94から出力されたTLVパケットにおいて、主系と冗長系との切替が実施される(S19)。
【0083】
このようにして、冗長切替装置90では、データの解析を行うことなく、主系と冗長系との間のTLVパケットのシームレスな切替が実現される。
【0084】
上述したように、本実施形態の送信方法が適用された送信システムによれば、TLV多重化装置70によって、主系と冗長系との間のTLVパケットの切替点の識別が可能となる。これによって、冗長切替装置90では、映像や音声といったデータの解析を行うことなく、主系と冗長系との間のTLVパケットのシームレスな切替を実施することが可能となる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。