特許第6832753号(P6832753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832753
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】セルロース複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20210215BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20210215BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20210215BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20210215BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20210215BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALN20210215BHJP
   C08L 3/02 20060101ALN20210215BHJP
   C08L 1/00 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61K47/04
   A61K9/20
   A61K31/167
   A61P29/00
   !C08K5/5415
   !C08L3/02
   !C08L1/00
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-45315(P2017-45315)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-150242(P2018-150242A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】大生 和博
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰彦
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 31/167
C08K
C08L
Aplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸とを含有し、セルロースとデンプンの質量比が90:10〜40:60であり、軽質無水ケイ酸の含量が0.1〜2質量%であり、嵩密度が0.10〜0.50g/cmであり、安息角が35〜54°であり、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が50質量%以下であることを特徴とする、セルロース複合体。
【請求項2】
前記複合体30質量%とアセトアミノフェン70質量%の混合物0.5gを7kNで圧縮した成形体の硬度が40〜120Nである、請求項1に記載のセルロース複合体。
【請求項3】
前記複合体30質量%とアセトアミノフェン70質量%の混合物0.5gを7kNで圧縮した成形体の、崩壊試験器(富山産業社製、NT−40HS型、ディスクなし)で、37℃、純水中における崩壊時間が100秒以下である、請求項1又は2に記載のセルロース複合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース複合体と、1種以上の活性成分とを含有することを特徴とする、成形体。
【請求項5】
天然セルロース質物質を加水分解し、平均重合度が150〜450、レーザー回折粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布における数平均粒子径が50μm以上であるセルロースを含有するセルロース水分散液を得る工程と、
前記セルロース水分散液と、デンプンと、軽質無水ケイ酸とを含有する水分散液を調製する工程と、
前記水分散液を流体ノズル方式で噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、
を有し、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース複合体を製造する、セルロース複合体の製造方法。
【請求項6】
天然セルロース質物質を加水分解し、平均重合度が150〜450、レーザー回折粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布における数平均粒子径が10μm以上50μm未満、平均幅が2〜30μm、及び平均厚みが0.5〜5μmであるセルロースを含有するセルロース水分散液を得る工程と、
前記セルロース水分散液と、デンプンと、軽質無水ケイ酸を含む水分散液を調製する工程と、
前記水分散液を流体ノズル方式で噴霧乾燥する工程と、
を有し、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース複合体を製造する、セルロース複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸とを含有するセルロース複合体、及び当該セルロース複合体と1種以上の活性成分とを含有する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品はその投与経路等により様々な剤型に製造される。特に近年では、水なしで服用できる口腔内崩壊錠の開発が盛んである。口腔内の唾液により崩壊する口腔内崩壊錠は、小児や高齢者など、嚥下機能の弱い患者でも服用が容易であり、また、水のない場所でも速やかに服用できるという利点がある。口腔内崩壊錠の製造においては、特別な製法を用いずに、実用的な錠剤硬度及び摩損度の付与と同時に、口腔内崩壊時間をいかに素早くできるかが課題となっている。実用的な硬度を付与すべく打圧を増すと、口腔内崩壊時間が遅くなるため、高い打圧下においても、素早い崩壊性を有する賦形剤が望まれている。
【0003】
一方で、従来、医薬品、健康食品、食品、その他化学工業分野において、セルロース粉末を賦形剤として用いることにより、活性成分を含有する成形体、例えば、錠剤などに調製することは広く知られている。例えば特許文献1には、平均レベルオフ重合度が15〜375、見かけ比容積が1.84〜8.92cm/g(見かけ密度7〜34lb/ft)、粒度が300μm以下のセルロース結晶子凝集物を錠剤の賦形剤として用いることが記載されている。また、特許文献2には、平均重合度が150〜450、75μm以下の粒子の平均L/D([長径の長さ]/[短径の長さ]の平均値)が2.0〜4.5、平均粒子径が20〜250μm、見かけ比容積が4.0〜7.0cm/g、見かけタッピング比容積が2.4〜4.5cm/g、安息角が55°以下であるセルロース粉末が、特許文献3には、平均重合度150〜450、平均粒子径30〜250μm、及び見掛け比容積7cm/g超、分子量400のポリエチレングリコール保持率190%以上のセルロース粉末が、それぞれ圧縮成形性が良好であり、高打圧下で高硬度の錠剤を成形できることが記載されている。特許文献4には、セルロース一次粒子が凝集してなる二次凝集構造を有し、粒子内細孔容積が0.265cm/g〜2.625cm/gであり、I型結晶を含有し、平均粒子径が30μmを超え250μm以下、比表面積が0.1m/g以上20m/g未満、安息角が25°以上44°未満、膨潤度が5%以上であり、かつ水中で崩壊する多孔質セルロース凝集体が、活性成分との混合均一性に優れており、これを賦形剤とすることによって打錠障害がなく摩損度の低い錠剤を成形できることが記載されている。特許文献5には、平均重合度が150〜450、平均粒子径が10μm以上100μm未満、一次粒子率が50%以上であるセルロース粉末が、圧縮成形性に優れており、口腔内崩壊錠の賦形剤として使用できることが記載されている。特許文献6には、平均重合度が75〜375、見かけ比容積が1.6〜3.1cc/g、200メッシュ以上の成分が2〜80質量%であるセルロース粉末が、流動性が良好であり、活性成分と混合した場合に成分含有量のばらつきが小さく、賦形剤として好適であることが記載されている。
【0004】
また、セルロースとデンプンを含有する複合体も、賦形剤として利用されている。例えば、特許文献7には、セルロース類と糖類とを含有し、セルロース類と糖類との質量比が100:(0.1〜30.0)、前記セルロースと前記糖類以外の賦形剤成分がデンプン類又は無機化合物のうちの少なくとも1つ以上の複合組成物は、成形性が良好であり、これを賦形剤とすることにより、服用感の良好な口腔内崩壊錠が得られることが記載されている。特許文献8には、平均粒子径が1〜15μm、アミロペクチンとアミロースの配合比が85:15〜100:0であるスターチ類を含み、平均粒子径10〜500μmである粒子状崩壊性組成物であり、スターチ類と無機物の配合比が100:1〜100:20であり、スターチ類と結晶セルロースの配合比が100:1〜100:30である崩壊性組成物を賦形剤とすることによって、打錠障害がなく硬度の硬い錠剤を成形できることが記載されている。また、特許文献9には、合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロースの懸濁液を噴霧乾燥したものを、口腔内崩壊錠の賦形剤として使用したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭40−26274号公報
【特許文献2】国際公開第2002/02643号
【特許文献3】国際公開第2004/106416号
【特許文献4】国際公開第2006/115198号
【特許文献5】国際公開第2016/024493号
【特許文献6】特公昭56−2047号公報
【特許文献7】特開2014−218447号公報
【特許文献8】国際公開第2012/001977号
【特許文献9】特開2011−246428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜5に記載されているセルロース粉末は、いずれも高打圧下での崩壊性が不充分であり、このため、口腔内崩壊錠の賦形剤として使用した場合には、得られた口腔内崩壊錠は、硬度と摩損度が良好であっても、口腔内において満足のいく崩壊性が得られない場合があった。また、特許文献6に記載されているセルロース粉末は、特許文献1〜4に記載されているセルロース粉末と比較して成形性が劣るため、硬度と摩損度が十分付与できないという課題があった。このように、従来のセルロース粉末では、口腔内崩壊錠に対して要求される高い圧縮成形性と素早い崩壊性を同時に付与できるものは知られていなかった。また、セルロースは吸水性が高く食感が悪く多量に配合できないという課題もあった。
【0007】
また、セルロースとデンプンを含有する複合体の場合には、糖類は、保存時に吸湿し、保存安定性が十分でない場合や、活性成分の種類によっては十分な成形性が付与できないといった課題があった。例えば特許文献7のセルロース複合体では、デンプン類として具体的に開示されているのはアルファー化デンプンであるが、水可溶成分が含有されていることで高打圧下での崩壊が遅延したり、保存安定性が十分でないという課題があった。糖を含まず、アルファー化デンプンではない生デンプンを配合したセルロース複合体であって、セルロース粉末に匹敵する高い成形性を有するものはなかった。特許文献8においても、具体的に開示されているスターチ類はワキシーライススターチであり、コーンスターチは好ましくないとされている。また、スターチ類の配合量が多いため、当該文献に記載の複合体には、圧縮成形性に乏しいという課題があった。特許文献9に記載の複合体は、合成ケイ酸アルミニウムを含有しているが、これは薬物との配合性の問題がある。さらに、ヒドロキシプロピルスターチを含有していることにより、当該複合体には高打圧下での崩壊遅延の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のセルロース分散液とデンプンと軽質無水ケイ酸とを流体ノズル方式により噴霧乾燥することにより、高い成形性と同時に、従来のセルロース粉末より素早い崩壊性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0009】
[1] セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸とを含有し、セルロースとデンプンの質量比が90:10〜40:60であり、軽質無水ケイ酸の含量が0.1〜2質量%であり、嵩密度が0.10〜0.50g/cmであり、安息角が35〜54°であり、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が50質量%以下であることを特徴とする、セルロース複合体。
[2] 前記複合体30質量%とアセトアミノフェン70質量%の混合物0.5gを7kNで圧縮した成形体の硬度が40〜120Nである、前記[1]のセルロース複合体。
[3] 前記複合体30質量%とアセトアミノフェン70質量%の混合物0.5gを7kNで圧縮した成形体の、崩壊試験器(富山産業社製、NT−40HS型、ディスクなし)で、37℃、純水中における崩壊時間が100秒以下である、前記[1]又は[2]のセルロース複合体。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかのセルロース複合体と、1種以上の活性成分とを含有することを特徴とする、成形体。
[5] 天然セルロース質物質を加水分解し、平均重合度が150〜450、レーザー回折粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布における数平均粒子径が50μm以上であるセルロースを含有するセルロース水分散液を得る工程と、
前記セルロース水分散液と、デンプンと、軽質無水ケイ酸とを含有する水分散液を調製する工程と、
前記水分散液を流体ノズル方式で噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、
を有し、前記[1]〜[3]のいずれかのセルロース複合体を製造する、セルロース複合体の製造方法。
[6] 天然セルロース質物質を加水分解し、平均重合度が150〜450、レーザー回折粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布における数平均粒子径が10μm以上50μm未満、平均幅が2〜30μm、及び平均厚みが0.5〜5μmであるセルロースを含有するセルロース水分散液を得る工程と、
前記セルロース水分散液と、デンプンと、軽質無水ケイ酸を含む水分散液を調製する工程と、
前記水分散液を流体ノズル方式で噴霧乾燥する工程と、
を有し、前記[1]〜[3]のいずれかのセルロース複合体を製造する、セルロース複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るセルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸を含有する複合体は、セルロース粉末並の高い圧縮成形性を有しながら、特に高打圧下において、セルロース粉末より素早い崩壊性を付与できる。このため、当該複合体は、特に、口腔内崩壊錠などのような成形性と崩壊性のバランスが求められる剤形の医薬品の賦形剤として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、具体的な実施形態と共に詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0012】
<セルロース複合体>
本発明に係るセルロース複合体は、セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸(ケイ素ジオキシド、CAS番号:7631−86−9)とを含有し、セルロースとデンプンの質量比が90:10〜40:60であり、軽質無水ケイ酸の含量が0.1〜2質量%である。セルロースとデンプンの質量比を特定の範囲内とし、さらに少量の軽質無水ケイ酸を含有することにより、当該セルロース複合体を賦形剤として用いた場合に、高い成形性と高打圧下で製造した錠剤でも優れた崩壊性を達成することができる。
【0013】
本発明に係るセルロース複合体のセルロースとデンプンの質量比は、当該セルロース複合体を賦形剤として用いて高打圧下で製造した錠剤の硬度と崩壊性のバランスの点から、80:20〜50:50の範囲内であることが好ましく、70:30〜50:50の範囲内であることがより好ましく、70:30〜60:40の範囲内であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明に係るセルロース複合体全体に対するセルロースの含有割合は、流動性が良好となるため90質量%未満であることが好ましく、成形性が良好となるため40質量%以上であることが好ましい。また、本発明に係るセルロース複合体全体に対するデンプンの含有割合は、成形性が良好となるため60質量%未満であることが好ましく、当該セルロース複合体を賦形剤として用いて得られた錠剤の崩壊性が良好となるため10質量%超であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るセルロース複合体においては、複合体全体に対する軽質無水ケイ酸の含有量が0.1質量%以上であることにより、流動性が改善される。また、複合体全体に対する軽質無水ケイ酸の含有量が2質量%以下であることにより、当該複合体と活性成分との混合性が良好になり、当該複合体を賦形剤として製造される錠剤の活性成分の含量均一性が良好となる。本発明に係るセルロース複合体全体に対する軽質無水ケイ酸の含有量は、流動性と製造された錠剤の活性成分の含量均一性の両方がより良好になることから0.2〜2質量%の範囲内であることが好ましく、0.3〜2質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0016】
本発明に係るセルロース複合体は、嵩密度が0.10〜0.50g/cmである。本発明に係るセルロース複合体は、嵩密度が0.10g/cm以上であるため、流動性が良好であり、嵩密度が0.50g/cm以下であるため、成形性が良好である。本発明に係るセルロース複合体の嵩密度としては、流動性と成形性のバランスがより良好であることから、0.10〜0.40g/cmの範囲内であることが好ましく、0.10〜0.35g/cmの範囲内であることがより好ましく、0.20〜0.35g/cmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、本発明に係るセルロース複合体の嵩密度は、容器に所定質量のセルロース粒子を充填させた場合の容積を、当該質量で除することによって算出する。
【0017】
本発明に係るセルロース複合体は、安息角が35〜54°である。本発明に係るセルロース複合体は、安息角が35°以上であるため、成形性が良好であり、安息角が54°以下であるため、当該セルロース複合体を賦形剤として用いて得られた錠剤の崩壊性が良好である。本発明に係るセルロース複合体の安息角としては、成形性と崩壊性のバランスがより良好であることから、38〜54°の範囲内であることが好ましく、40〜50°の範囲内であることがより好ましい。本発明に係るセルロース複合体の安息角は、杉原式安息角測定器を用いて常法により測定できる。
【0018】
本発明に係るセルロース複合体は、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が50質量%以下である。セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸を乾燥粉末同士で粉体混合した場合には、デンプンの配合量にもよるが、セルロース同士が凝集した造粒物が存在するため、目開き32μmの篩上に残る粒子が50質量%を超えてしまう。これに対して、本発明に係るセルロース複合体は、セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸を含有する水分散液を調製した後、この水分散液を噴霧乾燥することにより得られる。この水分散液中ではセルロースは一本ずつの繊維で存在しているため、噴霧乾燥時にセルロース同士の凝集が起こり難く、この結果、目開き32μmの篩上に残る粒子が50質量%以下となる。本発明に係るセルロース複合体としては、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が、48質量%以下であるものが好ましく、46質量%以下であるものがより好ましく、42質量%以下であるものがさらに好ましい。
【0019】
本発明に係るセルロース複合体は、賦形剤として活性成分と混合し、得られた混合粉体を高打圧下で打錠することによって、硬度と口腔内における易崩壊性の両方が良好な錠剤を製造することができる。例えば、本発明に係るセルロース複合体30質量%とアセトアミノフェン70質量%とを混合し、当該混合粉体0.5gを臼に入れ、静圧プレス(アイコーエンジニアリング製)で打圧7kNで圧縮した場合には、硬度が40N以上であり、かつ崩壊時間が100秒以下である成形体を製造することができる。当該成形体の硬度としては、硬いほど好ましいが、セルロースの成形性に限界があるため、硬くとも120Nであり、好ましくは50〜120Nである。なお、セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸の各乾燥粉体を単に混合した混合粉体の場合には、同様の条件で製造した成形体の硬度は40N未満である。また、当該成形体の崩壊時間は、速いほど好ましいが、下限値はせいぜい1秒程度である。
【0020】
なお、本発明に係るセルロース複合体を賦形剤として製造した錠剤又は円柱状成型体の崩壊時間は、第16改正日本薬局方((株)廣川書店発行)、一般試験法「崩壊試験法」に準じた方法で測定できる。具体的には、長さ77.5±2.5mm、内径20.7〜23mm、厚さ1.0〜2.8mmであり、上端が開口しており、下端に網目の開き1.8〜2.2mm、線径0.57〜0.66mmの平らなステンレス網が取り付けられている透明な管6本と、これらの管を上下方向からはさみ垂直にたてておくための直径88〜92mm、厚さ5〜8.5mmの2枚のプラスチック板からなる試験器を備える崩壊試験器を用いる。試験器の6本の管に、管1本あたり1個の試料を入れ、37℃、純水中において、試料を入れた試験器を1分間に29〜32往復、振幅53〜57mmで上下に振盪させて、試料が崩壊するまでに要した時間を崩壊時間とする。なお、試料の残留物を試験器内に全く認めないか、又は、試料の残留物が明らかに原形をとどめない軟質の物質であるとき、若しくは不溶性の剤皮の断片であるときに、当該試料は崩壊したものとする。試料6個の崩壊時間の平均値を、当該試料の崩壊時間とする。
【0021】
本発明に係るセルロース複合体は、次式で定義される膨潤度が−2.0〜20%であることが好ましい。セルロース複合体の膨潤度が−2.0%以上であると、崩壊が速くなるため好ましい。膨潤度の値は大きいほど好ましいが、せいぜい20%程度である。
【0022】
膨潤度(%)=(V−V)/V×100
:粉体10gを秤量し、100mL沈降管に入れた時の体積
:100mL沈降管に粉体10gと純水50mLを加え、粉体を十分に湿潤し、8時間静置した後の体積
【0023】
(セルロース複合体の平均粒子径)
本発明に係るセルロース複合体の体積頻度粒度分布は、レーザー回折粒度分布計により測定される。また、以降において、「レーザー回折粒度分布計により得られた体積頻度粒度分布における数平均粒子径」を、「平均粒子径」ということがある。
【0024】
本発明に係るセルロース複合体は、平均粒子径が30μm以上、250μm以下であることが好ましく、30μm以上、150μm以下であることがより好ましく、30μm以上、120μm以下であることがさらに好ましい。本発明に係るセルロース複合体は、平均粒子径が30μm以上である場合に流動性がより良好となり、250μm以下である場合に成形性がより良好となる。
【0025】
(セルロース複合体のL/D)
本発明に係るセルロース複合体は、長径/短径(L/D)の比が2.0〜4.0の範囲内であることが好ましい。L/Dが2.0以上のセルロース複合体は成形性が高くなり好ましく、4.0以下のセルロース複合体は流動性が良好となり好ましい。なお、セルロース複合体のL/Dは、少なくとも400個以上のセルロース複合体の光学顕微鏡像を画像解析処理し((株)インタークエスト製、装置:Hyper700,ソフトウエア:Imagehyper)、各セルロース複合体について、外接する長方形のうち面積が最小となる長方形の長辺と短辺の比(長辺/短辺)を求めた上で、その平均値として算出できる。
【0026】
本発明に係るセルロース複合体が凝集している様子は、電子顕微鏡で観察できる。本発明に係るセルロース複合体としては、凝集物を形成しているセルロース複合体が全体の50%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましい。
【0027】
本発明に係るセルロース複合体は、医薬、食品、その他化学工業分野で用いられ、特に医薬品用錠剤の賦形剤として有用である。また、当該セルロース複合体を用いて調製される粉末、顆粒、及びこれらの粉末又は顆粒を含む錠剤は、成形性と崩壊性に優れており、このため、当該セルロース複合体は特に、口腔内崩壊錠などのような成形性と崩壊性のバランスが求められる剤形の賦形剤として非常に好適である。
【0028】
<セルロース複合体の製造方法>
本発明に係るセルロース複合体は、例えば、以下の方法により製造できる。
本発明に係るセルロース複合体は、天然セルロース質物質を加水分解し、平均重合度が150〜450であるセルロースを含有するセルロース水分散液を得る工程と、得られたセルロース水分散液と、デンプンと、軽質無水ケイ酸とを含有する水分散液を調製する工程と、得られた水分散液を流体ノズル方式で噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、により製造することができる。
【0029】
デンプンは崩壊性に寄与するが弾性体であり、セルロース粉末と単に混合するだけでは、デンプンを混合した分だけセルロース粉末の成形性が損なわれる。これに対して、加水分解により特定の大きさに小さくしたセルロースを水に分散させ、得られた水分散液を流体ノズル方式により噴霧乾燥して得られるセルロース粉末は、同じセルロース水分散液をディスク方式により噴霧乾燥して得られるセルロース粉末よりも、セルロース粉末自体の成形性が1.3〜1.5倍に高められる。このため、特定の大きさのセルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸とを分散させた水分散液を流体ノズル方式により噴霧乾燥することにより、デンプンを配合した後にもかかわらず、セルロース粉末と同等の成形性を有し、素早い崩壊性を付与できるセルロース複合体を製造できる。流体ノズル方式による噴霧乾燥によって成形性と崩壊性の両方が好適なセルロース複合体が得られる理由は明らかではないが、流体ノズル方式では、ディスク方式に比較して、ミスト径が小さいために、セルロースが凝集することなく乾燥されるためと推察される。
【0030】
(天然セルロース質物質)
本発明に係るセルロース複合体の原料となるセルロースは、天然セルロース質物質(セルロースを含有する天然物由来の繊維質物質)の加水分解物である。天然セルロース質物質としては、植物性でも動物性でもよく、微生物由来であってもよい。天然セルロース質物質としては、例えば木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、ホヤ、バガス、ケナフ、ビート、バクテリアセルロース等のセルロースを含有する天然物由来の繊維質物質が挙げられる。一般に入手できる天然セルロース質物質としては、例えばセルロースフロックや結晶セルロース等の粉末形態である天然セルロース質物質(粉末セルロース)が挙げられる。
【0031】
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。本発明に係るセルロース複合体の原料となる天然セルロース質物質としては、構造上の可動性が比較的高く、圧縮時の塑性変形性が充分であり、成形体に十分な硬度を付与しやすいことから、セルロースI型の結晶構造を有していることが好ましい。
【0032】
本発明に係るセルロース複合体の原料としては、1種の天然セルロース質物質を使用してもよく、2種以上の天然セルロース質物質を混合したものを使用することも可能である。また、天然セルロース質物質は精製パルプの形態で使用することが好ましいが、パルプの精製方法には特に制限はなく、溶解パルプ、クラフトパルプ、NBKPパルプ等いずれのパルプを使用してもよい。
【0033】
(セルロースの平均重合度)
本発明に係るセルロース複合体の原料となるセルロースは、平均重合度が150〜450である。セルロースの平均重合度が150以上であることにより、成形性の高いセルロース複合体が得られる。また、平均重合度が450以下であれば、天然セルロース質物質の加水分解が十分であり、得られたセルロース複合体は、セルロースの非晶質部分の含有量が少なく、繊維性が強く現れて弾性回復し易くなることがなく、成形性に優れる傾向にある。
【0034】
セルロースの平均重合度は、第16改正日本薬局方((株)廣川書店発行)の結晶セルロースの確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定することができる。ただし、平均重合度が350を超える場合には、試料量を薬0.25gとして測定する。
【0035】
(セルロースの加水分解)
天然セルロース質物質の加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、アルカリ酸化分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、例えば、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースをセルロース原料とし、これを水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分間以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。なお、加水分解時のセルロース原料の分散液には、水の他、本発明の効果を損なわない範囲において有機溶媒を少量含んでいてもよい。
【0036】
(セルロース水分散液)
本発明に係るセルロース複合体の製造においては、まず、天然セルロース質物質を加水分解し、平均重合度が150〜450であるセルロースを含有するセルロース水分散液を得る。このセルロース水分散液は、平均重合度が150〜450、平均粒子径(レーザー回折粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布における数平均粒子径)が50μm以上であるセルロース水分散液、又は、平均重合度が150〜450、平均粒子径が10μm以上50μm未満、平均幅が2〜30μm、及び平均厚みが0.5〜5μmであるセルロース水分散液である。平均重合度が150〜450、平均粒子径が50μm以上であるセルロース水分散液を用いると、嵩密度が低く、安息角が大きいセルロース複合体が得られる。一方で、平均重合度が150〜450、平均粒子径が10μm以上50μm未満、平均幅が2〜30μm、及び平均厚みが0.5〜5μmであるセルロース水分散液を用いると、嵩密度が高く、安息角が小さいセルロース複合体が得られる。嵩密度と安息角は、セルロースとデンプンと軽質無水ケイ酸の配合比と、噴霧乾燥時の固形分濃度を変えることにより任意に制御できる。
【0037】
(セルロースの平均粒子径)
本発明に係るセルロース複合体の原料となるセルロースの体積頻度粒度分布は、レーザー回折粒度分布計により測定される。
【0038】
平均重合度が150〜450、平均粒子径が50μm以上であるセルロース水分散液を用いる場合、当該水分散液中のセルロースの平均粒子径は、50μm以上120μm以下であることが好ましく、50μm以上100μm以下であることがより好ましく、60μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。一方で、平均粒子径が10μm以上50μm未満、平均幅が2〜30μm、及び平均厚みが0.5〜5μmであるセルロース水分散液を用いる場合、当該水分散液中のセルロースの平均粒子径は、15μm以上50μm未満であることが好ましく、20μm以上45μm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
平均粒子径が10μm以上50μm未満、平均幅が2〜30μm、及び平均厚みが0.5〜5μmであるセルロース水分散液を用いる場合、当該水分散液中のセルロースの平均幅は、5〜30μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。また、当該水分散液中のセルロースの平均厚みは、1.0〜4.0μmであることが好ましく、2.0〜3.0μmであることがより好ましい。
【0040】
(セルロースの平均幅)
本発明及び本願明細書において、セルロースの平均幅(μm)とは、天然セルロース質物質を加水分解して得られた粒子状のセルロース(セルロース一次粒子)の幅(μm)の平均値を意味する。セルロース一次粒子の幅は、セルロース一次粒子が繊維状(直方体状)の場合には短辺の長さに相当し、セルロース一次粒子が楕円状の場合には短軸の長さに相当する。
【0041】
セルロース一次粒子の幅は、セルロース一次粒子の走査顕微鏡画像から測定される。具体的には、天然セルロース質物質からなるセルロース一次粒子を、必要に応じて乾燥し、カーボンテープを貼った試料台に載せ、白金パラジウムを真空蒸着(この際の蒸着膜の膜厚は20nm以下)したものを走査電子顕微鏡で観察し、代表的なセルロース一次粒子3個の幅を測定し、これらの平均値を当該セルロース一次粒子の平均幅(μm)とする。例えば、走査電子顕微鏡として日本分光(株)製の「JSM−5510LV(商品名)」を使用し、加速電圧6kV、倍率250倍で観察することで、当該粒子の幅を測定できる。
【0042】
(セルロースの平均厚み)
本発明及び本願明細書において、セルロースの平均厚み(μm)とは、天然セルロース質物質を加水分解して得られた粒子状のセルロース(セルロース一次粒子)の中心付近の厚み(μm)の平均値を意味する。
【0043】
セルロース一次粒子の厚みは、セルロース一次粒子の断面の走査顕微鏡画像から測定される。具体的には、天然セルロース質物質からなるセルロース一次粒子を、必要に応じて乾燥し、カーボンテープを貼った試料台に載せ、金を真空蒸着した後、集束イオンビーム加工装置を使用し、イオンビームにより、セルロース一次粒子の断面を切り出した後、この断面を当該装置の走査電子顕微鏡で観察し、代表的なセルロース一次粒子3個の厚みを測定し、これらの平均値を当該セルロース一次粒子の平均厚み(μm)とする。例えば、集束イオンビーム加工装置として日立製作所(株)製の「FB−2100(商品名)」を使用し、Gaイオンビームによりセルロース一次粒子の断面を切り出した後、この断面を加速電圧6kV、倍率1500倍で観察することで、当該粒子の厚みを測定できる。
【0044】
セルロース水分散液の固形分濃度は、セルロースのそれぞれの粒子の凝集を抑制するために、水分散液全体に対して20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
ついで、得られたセルロース水分散液に、デンプンと軽質無水ケイ酸を添加し、必要に応じてさらに水を添加することによって、セルロース、デンプン、及び軽質無水ケイ酸の3者を含有する水分散液を調製する。セルロース分散液にデンプンと軽質無水ケイ酸を加えた後の水分散液の固形分濃度は、セルロース水分散液の固形分濃度よりも高くなり、15〜25質量%が好ましい。3者を含有する水分散液(スラリー)の粘度は、100〜600mPa・s程度である。3者を含有する水分散液の固形分濃度が低い場合には、噴霧乾燥により成形性がより高いセルロース複合体が得られ、3者を含有する水分散液の固形分濃度が高い場合には、流動性がより良好なセルロース複合体が得られる。
【0046】
(デンプン)
本発明に係るセルロース複合体の原料となるデンプンは、生デンプンが好ましく、コーンスターチがより好ましい。生デンプンは、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン等の加工デンプンやヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ誘導体よりも、水可溶分の含有量が抑えられているため、高打圧下での崩壊遅延を起こし難いためである。
【0047】
(噴霧乾燥)
得られた水分散液を流体ノズル方式で噴霧乾燥することにより、本発明のセルロース複合体が得られる。噴霧乾燥の方法は、流体ノズル方式であれば特に限定されるものではなく、1流体の流体ノズル方式であってもよく、2流体の流体ノズル方式であってもよい。本発明のセルロース複合体の製造においては、加圧方式の1流体ノズル又は加圧方式の2流体ノズルで噴霧乾燥することが好ましい。加圧流体ノズル方式で噴霧乾燥することにより、より成形性が良好なセルロース複合体が得られる。
【0048】
流体ノズル方式の噴霧乾燥は、一般的にスプレードライヤーと呼ばれる噴霧乾燥機を用いて行うことができる。このような噴霧乾燥機は、セルロース分散液を瞬時に乾燥させて粒子にする乾燥装置であり、例えば、大川原化工機製、マツボー、GEAプロセスエンジニアリング、パウダリングジャパン、日本化学機械、藤崎電機などの装置が使用できる。
【0049】
<成形体>
本発明に係る成形体は、本発明に係るセルロース複合体と、1種以上の活性成分とを含有する。より具体的には、本発明に係る成形体は、本発明に係るセルロース複合体と1種以上の活性成分に、必要に応じてその他の原料を添加して、混合、攪拌、造粒、打錠、整粒、乾燥等の公知の方法を適宜選択して加工した成形物をいう。成形体の例としては、医薬品に用いる場合、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、エキス剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、パップ剤の固形製剤等が挙げられる。医薬品に限らず、菓子、健康食品、食感改良剤、食物繊維強化剤等の食品、固形ファンデーション、浴用剤、動物薬、診断薬、農薬、肥料、セラミックス触媒等に利用されるものも本発明に含まれる。本発明の成形体は、常法により製造できる。
【0050】
(活性成分)
本発明に係る成形体に含有される活性成分は、特に限定されるものではなく、医薬品薬効成分、健康食品成分、食品成分、農薬成分、肥料成分、飼料成分、化粧品成分、触媒成分等が挙げられる。成形体中の活性成分の形状も特に限定されるものではなく、粉体状、結晶状、油状、液状、半固形状などいずれの形状でもよい。また、溶出制御、苦味低減等の目的でコーティングを施したものであってもよい。また、本発明に係る成形体に含有される活性成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
活性成分のうち医薬品薬効成分としては、例えば、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、精神神経用薬、骨格筋弛緩薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗鬆症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが挙げられる。薬効成分は、それを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。具体的には、例えば、抗癲癇薬(フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム等)、解熱鎮痛消炎薬(アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド等)、鎮暈薬(ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール等)、麻薬(塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール等)、精神神経用薬(塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン等)、骨格筋弛緩薬(クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン等)、自律神経用薬(塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン等)、鎮痙薬(硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスコポラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン等)、抗パーキンソン薬(塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ等)、抗ヒスタミン薬(塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン等)、強心剤(アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン等)、不整脈用薬(塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド等)、利尿薬(塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド等)、血圧降下薬(臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ等)、血管収縮薬(メシル酸ジヒドロエルゴタミン等)、血管拡張薬(塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン等)、動脈硬化用薬(リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート等)、循環器官用薬(塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン等)、呼吸促進薬(塩酸ジメフリン等)、鎮咳去痰薬(リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス等)、利胆薬(オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン等)、整腸薬(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド等)、消化器官用薬(メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン等)、ビタミン剤(酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン等)、抗生物質(ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、セフロキシムアキセチル、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム等)、化学療法薬(スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン等)が挙げられる。
【0052】
その他の活性成分としては、カフェイン、ランソプラゾール、ファモチジン、オメプラゾール、クエン酸モサプリド、ボグリボース、酒石酸ゾルピデム、ロラタジン、イミダプリル塩酸塩、ミゾリビン、塩酸セフカペンピボキシル、レボフロキサシン、リスペリドン、コハク酸スマトリプタン、フマル酸クエチアピン、コハク酸ソリフェナシン、グルコサミン、グルコサミン塩酸塩、N−アセチルグルコサミン、γ−アミノ酪酸(GABA)、コエンザイムQ10、ギムネマ、アガリクス、コラーゲン、サイリウムハスク末、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸塩、ウコン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸亜鉛、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、防風痛聖散、明日葉、アスタキサンチン、アルファーリポ酸、イチョウ葉、エラスチン、L−カルニチン、キトサン、クロレラ、スピルリナ、セラミド、コノギリヤシ、ヒアルロン酸、ビルベリー、β―グルカン、マカ、松樹皮抽出物、ルテイン、アフリカマンゴノキ、柑橘系フルーツ抽出エキス、キノコキトサン、葛の花エキス、グリーンコーヒー豆エキス、グリーンルイボス、黒酢、オルニチン、アミノ酸、オリーブ、クルクミン、アガリクス、霊芝等菌類、リン脂質、オリゴ乳酸、フェルラ酸、青大豆パウダー、ラクトビオン酸、キャッツクロー、ポリフェノール等が挙げられる。
【0053】
その他、油状、液状活性成分としては、例えば、テプレノン、インドメタシン・ファルネシル、ジメチコン、メナテトレノン、フィトナジオン、ビタミンA油、フェニペントール、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、肝油等の高級不飽和脂肪酸類、補酵素Q類、オレンジ油、レモン油、ペパーミント油等の油溶性香味料等の「第16改正 日本薬局方」((株)廣川書店発行)、「局外基」、「USP26」、「NF21」(いずれもUNITED STATES PHARMACOPEIAL CONVENTION,INC発行)、「EP」に記載の医薬品薬効成分等が挙げられる。ビタミンEには種々の同族体、誘導体があるが、常温で液状であれば特に限定されない。例えばdl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
半固形状活性成分としては、例えば地竜、カンゾウ、ケイヒ、シャクヤク、ボタンピ、カノコソウ、サンショウ、ショウキョウ、チンピ、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、 キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、石蒜、セネカ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンヒ、ビャクジュツ、チクセツニンジン、ニンジン、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、紫胡桂枝湯、小紫胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等の漢方又は生薬エキス類、カキ肉エキス、プロポリス及びプロポリス抽出物、補酵素Q類等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明に係る成形体が含有するセルロース複合体の含有量は特に限定されないが、成形体全質量に対して1質量%以上99質量%以下であることが好ましく、3質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上99質量%以下であることがさらに好ましい。当該範囲内であれば、高打圧下で成形した成形体(錠剤)に、摩損や破壊が生じ難い充分な硬度を付与することができる。
【0056】
本発明に係る成形体が含有する活性成分の含有量は特に限定されないが、50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。成形体全体に占める活性成分の割合を充分に高くすることにより、高用量が必要とされる活性成分の成形体の大きさを極めて効率良く小さくすることが可能となる。
【0057】
さらに、本発明に係る成形体は、本発明に係るセルロース複合体と活性成分の他に、必要に応じて崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤、界面活性剤等の他の添加剤を含有することもできる。
【0058】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン等が挙げられる。
【0059】
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖などの糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、コンニャクマンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機類等が挙げられる。
【0060】
流動化剤としては含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0061】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等が挙げられる。矯味剤としてはグルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントールなどが挙げられる。
【0062】
香料としてはオレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等が挙げられる。
【0063】
着色剤としては食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィリンナトリウム、酸化チタン、リボフラビンなどが挙げられる。
【0064】
甘味剤としてはアスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等が挙げられる。
【0065】
界面活性剤としては、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙
げられる。
【0066】
本発明に係るセルロース複合体は、成形性と崩壊性を同時に付与できる賦形剤として有用であるため、本発明に係る成形体としては、成形性と崩壊性のバランスが求められる剤形の医薬品や飲食品であることが好ましく、口腔内崩壊錠であることがより好ましい。
【0067】
本発明に係る成形体が口腔内崩壊錠の場合、その錠剤硬度は50N以上200N未満であることが好ましく、50N以上150N未満がより好ましく、50N以上100N未満がさらに好ましい。錠剤硬度が50N以上であると輸送や保管中に錠剤側面が掛けたり、割れたりしにくいため好ましい。一方、200N未満であると、錠剤の崩壊性が遅くならず、口腔内崩壊錠として満足いく崩壊性が得られる。
【0068】
口腔内崩壊錠は、水なしでも服用できる医薬品及び健康食品製剤等であり、例えば、第16改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に準じて実施した錠剤の崩壊時間は60秒未満が好ましく、30秒以内がより好ましい。また、錠剤を実際に、人の口の中に入れて唾液のみで崩壊させる口腔内崩壊試験では、60秒未満で崩壊することが好ましく、30秒以内がより好ましい。
【実施例】
【0069】
本発明を、下記の実施例により説明する。ただし、これらは、本発明の範囲を制限するものではない。なお、実施例、比較例における各物性の測定方法は以下の通りである。
【0070】
<平均重合度>
セルロースの平均重合度は、第16改正日本薬局方、結晶セルロースの確認試験(3)に記載された銅エチレンジアミン溶液粘度法により測定した値とした。
具体的には、まず、試料約1.3gを精密に量り、125mL容の三角フラスコに入れ、水25mL及び1mol/L銅エチレンジアミン試液25mLをそれぞれ正確に加えた。次いで、直ちに窒素を通じ、密栓した後、振盪機を用いて振り混ぜながら試料を溶解させた。得られた溶液の適量を正確に量り、25±0.1℃で粘度測定法第一法(毛細管粘度計法)により、粘度計の概略の定数(K)が0.03のウベローデ型粘度計を用いて試験を行い、動粘度νを求めた。動粘度νは、一定体積が毛細管を通って流下するのに要する時間(t)と定数(K)の積である。これとは別に、水25mL及び1mol/L銅エチレンジアミン試液25mLをそれぞれ正確に量り、その混液について同様の方法で、概略の定数(K)が0.01のウベローデ型粘度計を用いて試験を行い、動粘度νを求めた。動粘度νは、一定体積が毛細管を通って流下するのに要する時間(t)と定数(K)の積である。
次式により、本試料の相対粘度(ηrel)を求めた。
【0071】
ηrel=ν/ν
【0072】
第16改正日本薬局方、結晶セルロースの確認試験(3)に記載された「相対粘度(ηrel)から極限粘度との濃度の積[η]Cを求める表」に基づき、算出された相対粘度(ηrel)から極限粘度[η](mL/g)と濃度(C)(g/mL)の積([η]C)を求め、次式により平均重合度(P)を計算した。下記式中、Mは、乾燥物に換算した本品試料の秤取量(g)である。
【0073】
P=95[η]C/[M
【0074】
平均重合度(P)が350を超える時は、試料量を約0.25gとする以外は上記と同様に実施し、平均重合度(P)を計算する。
【0075】
<粒子の平均粒子径[μm]>
セルロース又はセルロース複合体の各粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布計(堀場製作所(株)製、LA−910)を用い測定した。平均粒子径は体積頻度の数平均として算出した。
【0076】
<嵩密度[g/cm]>
セルロースやセルロース複合体の粉体の嵩密度は、100mL容のメスシリンダーに粒子30gを疎充填させた粒子層の容積を読み取り、30で除した値を算出して求めた。繰り返し数は3で、その平均値をとった。
【0077】
<安息角[°]>
杉原式安息角測定器(スリットサイズ:奥行10mm×幅50mm×高さ140mm、幅50mmの位置に分度器を設置)を使用し、定量フィーダーを使用し、粉体を3g/分でスリットに投下した際の動的自流動性を測定した。この際の、装置底部とセルロース粉末の形成層との角度が、粉体の安息角である。
【0078】
<目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分[質量%]>
粉体約10gを目開き32μm篩上に置き、エアジェットシーブ(ALPINE製、A200LS型)で10分間篩粉し、篩上に残留する粉体質量を全質量に対する百分率として求めた。
【0079】
<錠剤の硬度>
一般的に使用される錠剤硬度測定器(Tablet Tester 8M/DR.SCHLEUNIGER製)にて、錠剤の硬度を測定した。1錠ずつ錠剤硬度を測定し、20錠分の錠剤硬度の平均値を算出した。
【0080】
<錠剤の摩損度>
錠剤20個の質量(W)を測定し、これを錠剤摩損度試験器(PTFR−A、PHARMA TEST製)に入れ、25rpm、4分間回転した後、錠剤に付着している微粉を取り除き、再度質量を測定し(W)、下式より計算した。
摩損度 = 100×(W−W)/W
【0081】
<錠剤の崩壊試験>
第16改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に従って実施した。試験液は水を用い、崩壊試験器は富山産業社製の「NT−40HS型」(ディスクなし)を用いた。具体的には、試験器の6本の透明管に、管1本あたり1個の試料を入れ、37℃、純水中において、試料を入れた試験器を1分間に29〜32往復、振幅53〜57mmで上下に振盪させて、試料が崩壊するまでに要した時間を測定した。試料6個の崩壊時間の平均値を、当該試料の崩壊時間とした。
【0082】
<錠剤の口腔内崩壊試験>
健康な成人男子3人を被験者として、口腔内の唾液で錠剤が完全に崩壊する時間を測定した。各人2回測定し、3人の平均値を算出した。
【0083】
[実施例1]
市販パルプ(重合度790)を細断したもの2kgと、4Nの塩酸水溶液30Lを低速型攪拌機(池袋琺瑯工業社製、30L容GL反応器)に入れ、40℃、48時間加水分解し、平均重合度が270の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分40%となるよう濾過し、濾過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、90Lのポリバケツに入れ、純水を加えて、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G)で攪拌することにより、固形分濃度10%のセルロース分散液とした。セルロース分散液中のセルロース粒子の平均粒子径は67μmであった。
当該セルロース分散液とデンプンと軽質無水ケイ酸(SiO)をセルロース/デンプン/SiOの質量比が、88.2/9.8/2となるように混合し、固形分濃度9.9質量%の水分散液を調製した。この水分散液を、送り量20kg/h、加圧1流体ノズル方式で噴霧乾燥し、セルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Aを得た。
得られた複合体A30質量%とアセトアミノフェン70質量%とを混合し、当該混合粉体0.5gを臼に入れ、静圧プレス(アイコーエンジニアリング製)で打圧7kNで圧縮して、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を得、硬度と摩損度を測定した。
セルロース、複合体A、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0084】
[実施例2]
広葉樹を公知のパルプ化処理、漂白処理を施すことにより、セルロース一次粒子の繊維平均幅は約19μm、平均厚みは約3μm、レベルオフ重合度140〜220、水分5〜10%、白色度92〜97%、粘度5〜40cps、S105〜15%、S181〜8%、銅価0.5〜1.5、及びジクロロメタン抽出物0.03ppm以下のパルプを得た。当該パルプ2kgと4N塩酸水溶液30Lを、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業社製、50L容GL反応器)に入れて攪拌しながら、40℃、48時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、90L容ポリバケツに導入し、全固形分濃度が15質量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)した。この固形分濃度15質量%のセルロース水分散液中のセルロース一次粒子の繊維平均幅は22μm、平均厚みは2.5μm、平均粒子径は38μmであった。
得られたセルロース水分散液とデンプンとSiOをセルロース/デンプン/SiOの質量比が、69.3/29.7/1となるように混合し、固形分濃度18.3質量%の水分散液を調製した。この水分散液を、送り量30kg/h、加圧1流体ノズル方式で噴霧乾燥しセルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Bを得た。
得られた複合体B30質量%とアセトアミノフェン70質量%とを混合し、当該混合粉体0.5gを臼に入れ、静圧プレス(アイコーエンジニアリング製)で打圧7kNで圧縮して、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を得、硬度と摩損度を測定した。
セルロース、複合体B、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0085】
[実施例3]
セルロース水分散液とデンプンとSiOをセルロース/デンプン/SiOの質量比が59.4/39.6/1となるように混合して固形分濃度19.4質量%の水分散液を調製した以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Cを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体C、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0086】
[実施例4]
セルロース水分散液とデンプンをセルロース/デンプンの質量比が60/40となるように混合して固形分濃度19.3質量%の水分散液を調製し、加圧1流体ノズル方式で送り量90kg/hとした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Dを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体D、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0087】
[実施例5]
セルロース水分散液とデンプンとSiOをセルロース/デンプン/SiOの質量比が、49.75/49.75/0.5となるように混合し、固形分濃度19.3質量%とした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Eを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体E、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0088】
[実施例6]
セルロース水分散液とデンプンとSiOをセルロース/デンプン/SiOの質量比が36.6/59.4/1となるように混合し、固形分濃度18.9質量%とした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Fを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体F、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0089】
[実施例7]
セルロース分散液として実施例1のセルロース水分散液を用いた以外は実施例3と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Gを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体G、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0090】
[比較例1]
市販の結晶セルロース(セオラスKG−1000:旭化成社製)を、気流式粉砕機(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用して粉砕圧力0.4MPa、粉体供給速度10kg/hで粉砕し、セルロース粉末G(特許文献5の実施例4に相当)を得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末G、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0091】
[比較例2]
実施例1のセルロース水分散液を固形分濃度10質量%に調整した上で、送り量6kg/h、ディスク方式で噴霧乾燥し、セルロース粉末H(特許文献3の実施例1に相当)を得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末H、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0092】
[比較例3]
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、20時間とした以外は、実施例1と同じ操作により加水分解し、平均重合度が440の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分70質量%となるよう濾過した。得られた濾過残渣をさらに純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、90L容のポリバケツに入れ、純水を加えて、実施例1と同じ操作で、固形分濃度6質量%のセルロース水分散液とした。当該セルロース水分散液中のセルロース粒子の平均粒子径は41μmであった。得られたセルロース水分散液をディスク方式で噴霧乾燥し、セルロース粉末I(特許文献2の実施例7に相当)を得た。
得られたセルロース粉末Iを用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末I、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0093】
[比較例4]
加水分解条件を0.14N塩酸水溶液、121℃ 、1時間、反応中の攪拌速度を30rpmとした以外は、実施例1と同じ操作により加水分解し、平均重合度が220の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分70質量%となるよう濾過した。得られた濾過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、90L容のポリバケツに入れ、純水を加えて、実施例1と同じ操作で、固形分濃度17質量%のセルロース水分散液とした。当該セルロース水分散液中のセルロース粒子の平均粒子径は29μmであった。得られたセルロース水分散液をディスク方式で噴霧乾燥した後、目開き325メッシュの篩で粗大粒子を取り除き、セルロース粉末J(乾燥減量4.1質量%、特許文献1の実施例1に相当)を得た。
得られたセルロース粉末Jを用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末J、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0094】
[比較例5]
市販KPパルプ(重合度840)を0.7%塩酸水溶液中で、125℃、150分間加水分解した後、加水分解残渣を中和、洗浄、濾過して湿ケークとし、ニーダー中で十分磨砕した後、容積比で1倍のエタノールを加え、圧搾濾過した後風乾した。得られた乾燥粉末はハンマーミルで粉砕した後、40メッシュ篩で粗大粒子を除き、セルロース粉末K(乾燥質量3.0質量%、特許文献6の実施例1に相当)を得た。
得られたセルロース粉末Kを用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末K、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0095】
[比較例6]
セルロース分散液とデンプンとSiOをセルロース/デンプン/SiOの質量比が34.65/64.35/1.0となるように混合し、固形分濃度19.2質量%とした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiOを含有する複合体Lを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体L、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。複合体Lは、セルロース質量、安息角が小さく、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は33Nと低かった。
【0096】
[比較例7]
セルロース分散液とデンプンとSiOをセルロース/デンプン/SiOの質量比が94.1/4.9/1となるように混合し、固形分濃度9.9質量%、送り量6kg/hとした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiOの複合体Mを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体M、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。複合体Mは、セルロース質量及び嵩密度が大きく、安息角が54°を超えていた。アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は119Nと良好であったが、崩壊時間が100秒を超えた。
【0097】
[比較例8]
セルロース/デンプン/SiOの質量比が実施例1と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiOとをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、安息角が54°を超え、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は実施例1より低かった。
【0098】
[比較例9]
セルロース/デンプン/SiOの質量比が実施例2と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiOとをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体のアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0099】
[比較例10]
セルロース/デンプン/SiOの質量比が実施例3と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiOとをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0100】
[比較例11]
セルロース/デンプン/SiOの質量比が実施例5と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiOとをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満、安息角が35°未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0101】
[比較例12]
セルロース/デンプン/SiOの質量比が特許文献8に記載の範囲となるように、結晶セルロースとデンプンとSiOとをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満、安息角が35°未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0102】
[比較例13]
セルロース/デンプン/SiOの質量比が特許文献8に記載の範囲となるように、結晶セルロースとデンプンとSiOとをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満、安息角が35°未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表3中、「篩上残留分[wt%]」の欄は、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分(wt%)の結果であり、「7kNで圧縮した時の硬度[N]」の欄は、アセトアミノフェンと複合体又はセルロース粉末との混合物([アセトアミノフェン]/[複合体又はセルロース粉末]=70/30)を7kNで圧縮して得られた錠剤の硬度[N]の結果であり、「7kNで圧縮した時の崩壊時間[秒]」の欄は、前記アセトアミノフェンと複合体又はセルロース粉末との混合物を7kNで圧縮して得られた錠剤の崩壊時間[秒]の結果である。
【0107】
実施例1〜7で得られた複合体は、弾性体であるデンプンを含有しているにも関わらず、比較例1〜4のセルロース粉末に匹敵する硬度を有し、特に、高成形性であるセルロース粉末の比較例1〜2に対しては、錠剤の崩壊時間が短く、崩壊性に優れていた。より詳細には、実施例1の複合体Aと比較例8の混合粉体、実施例2の複合体Bと比較例9の混合粉体、実施例3の複合体Cと比較例10の混合粉体、実施例5の複合体Eと比較例11の混合粉体は、それぞれ組成は同じであるが、実施例の複合体は加圧1流体ノズルで噴霧乾燥したため、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が50質量%未満となったのに対し、比較例の混合粉体は粉体混合で調製されたため、セルロース粒子の凝集体が存在するゆえに、当該篩上残留分が50質量%を超えた。比較例12及び13の混合粉体は、デンプン含量が多いため、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が50質量%未満となったが、安息角が35°未満となり、高い成形性は得られなかった。
【0108】
実施例1と比較例2の錠剤を比較した場合に、両者は同じセルロース水分散液を使用しており、かつ実施例1の錠剤はデンプンを有しているにもかかわらず、実施例1の錠剤のほうが比較例2の錠剤よりも硬度が高かったことから、噴霧乾燥をディスク方式で行うよりも流体ノズル方式で行ったほうが、成形性が良好になることが示唆された。また、平均重合度が300、平均粒子径が67μmのセルロース分散液を用いて製造された実施例7の複合体Gと、平均重合度が240、平均粒子径が38μmのセルロース分散液を用いて製造された実施例3の複合体Cとを比較すると、両者はセルロース/デンプン/SiOの質量比や複合体の製造工程は同じであるにもかかわらず、実施例7の複合体Gは実施例3の複合体Cよりも嵩密度が低く、安息角が大きく、膨潤度が小さかった。この結果から、セルロースとデンプンとSiOの複合体の嵩密度及び安息角は、原料とするセルロース分散液の影響を受けることが示された。
【0109】
[実施例8]
N−アセチルグルコサミンを50質量%、実施例3で製造した複合体Cを15質量%、エリスリトール34質量%、及びSiO0.5質量%をポリエチレンバッグ中で3分間十分に混合した後、得られた混合粉体に0.5質量%のステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。得られた混合粉体をロータリー打錠機(菊水製作所製、CLEANPRESSCORRECT 12HUK)で直径0.8cm、12Rの杵を用いてターンテーブル回転速度54rpmで打錠し、質量180mgの錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0110】
[実施例9]
複合体Cを実施例4で製造した複合体Dとした以外は、実施例8と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0111】
[比較例14]
複合体Cを比較例3で製造したセルロース粉末Iとした以外は、実施例8と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0112】
[比較例15]
複合体Cを比較例4で製造したセルロース粉末Jとした以外は、実施例8と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0113】
[比較例16]
複合体Cを比較例5で製造したセルロース粉末Kとした以外は、実施例8と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0114】
実施例8、9の錠剤は、硬度が50N以上、摩損度が0.2以下であり、実用的な基準を満たした。また、口腔内崩壊時間が30秒以内となり、崩壊性も優れていた。一方、比較例14の錠剤は硬度、摩損度は良好だが、口腔内崩壊時間が60秒と長く、実施例8、9の錠剤よりも劣っていた。また比較例15の錠剤は、硬度は良好であったが、摩損度と口腔内崩壊時間が実施例8、9の錠剤に劣っていた。比較例16の錠剤は、口腔内崩壊時間は良好なものの、打錠時に錠剤の欠けが発生し、硬度、摩損度で実施例8、9の錠剤に劣っていた。
【0115】
【表4】
【0116】
[実施例10]
GABAを20質量%、実施例3で製造した複合体Cを29質量%、微粉エリスリトール47質量%、アルファー化デンプン(「Swelstar」PD−1)を3質量%、オレンジ香料0.2質量%、及びアスパルテーム0.2質量%をポリエチレンバッグ中で3分間十分に混合した後、得られた混合粉体に0.6質量%のステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。得られた混合粉体0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径1.13cm(底面積が1cm)の平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)を用い、打圧6kNで圧縮した。圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用した(圧縮速度は25cm/分程度)。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0117】
[実施例11]
複合体Cを実施例4で製造した複合体Dとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0118】
[比較例17]
複合体Cを比較例3で製造したセルロース粉末Iとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0119】
[比較例18]
複合体Cを比較例4で製造したセルロース粉末Jとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0120】
[比較例19]
複合体Cを比較例5で製造したセルロース粉末Kとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
表5に示すように、本発明に係るセルロース複合体を用いて製造された錠剤は、従来のセルロース粉末を用いて製造された錠剤より、崩壊性に優れていた。
【0123】
[実施例12]
クルクミンを30質量%、実施例3で製造した複合体Cを30質量%、微粉エリスリトール36質量%、アルファー化デンプン(「Swelstar」PD−1)を3質量%、オレンジ香料0.2質量%、及びアスパルテーム0.2質量%をポリエチレンバッグ中で3分間十分に混合した後、得られた混合粉体に0.6質量%のステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。得られた混合粉体0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径1.13cm(底面積が1cm)の平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)を用い、打圧7kNで圧縮した(圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用した(圧縮速度は25cm/分程度)。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0124】
[実施例13]
複合体Cを実施例5で製造した複合体Eとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0125】
[比較例20]
複合体Cを比較例3で製造したセルロース粉末Iとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0126】
[比較例21]
複合体Cを比較例4で製造したセルロース粉末Jとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0127】
[比較例22]
複合体Cを比較例5で製造したセルロース粉末Kとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
表6に示すように、本発明に係るセルロース複合体を用いて製造された錠剤は、従来のセルロース粉末を用いて製造された錠剤と同程度に硬度が高く、口腔内崩壊時間が短いという利点を有していた。
【0130】
[実施例14]
実施例1で製造した複合体A0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径1.13cm(底面積が1cm)の平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)を用い、打圧2kNで圧縮した。圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用した(圧縮速度は25cm/分程度)。得られた錠剤の錠剤物性を表7に示す。当該錠剤の初期と3ヵ月後の硬度はほとんど変わらなかった。
【0131】
[比較例23]
実施例1で製造した複合体Aを特許文献7の実施例7に記載のセルロース複合体とした以外は実施例14と同様に操作した。得られた錠剤の錠剤物性を表7に示す。当該錠剤の3ヵ月後の錠剤硬度は明らかに低下していた。
【0132】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係るセルロース本発明に係る複合体は、セルロース粉末並の高い圧縮成形性でありながら、高打圧下においても、セルロース粉末より素早い崩壊性を付与できる。このため、本発明に係るセルロース本発明に係る複合体を賦形剤とすることにより、口腔崩壊錠など、成形性と崩壊性のバランスが求められる剤形において満足いくものが製造できる。