【実施例】
【0069】
本発明を、下記の実施例により説明する。ただし、これらは、本発明の範囲を制限するものではない。なお、実施例、比較例における各物性の測定方法は以下の通りである。
【0070】
<平均重合度>
セルロースの平均重合度は、第16改正日本薬局方、結晶セルロースの確認試験(3)に記載された銅エチレンジアミン溶液粘度法により測定した値とした。
具体的には、まず、試料約1.3gを精密に量り、125mL容の三角フラスコに入れ、水25mL及び1mol/L銅エチレンジアミン試液25mLをそれぞれ正確に加えた。次いで、直ちに窒素を通じ、密栓した後、振盪機を用いて振り混ぜながら試料を溶解させた。得られた溶液の適量を正確に量り、25±0.1℃で粘度測定法第一法(毛細管粘度計法)により、粘度計の概略の定数(K)が0.03のウベローデ型粘度計を用いて試験を行い、動粘度νを求めた。動粘度νは、一定体積が毛細管を通って流下するのに要する時間(t)と定数(K)の積である。これとは別に、水25mL及び1mol/L銅エチレンジアミン試液25mLをそれぞれ正確に量り、その混液について同様の方法で、概略の定数(K)が0.01のウベローデ型粘度計を用いて試験を行い、動粘度ν
0を求めた。動粘度ν
0は、一定体積が毛細管を通って流下するのに要する時間(t
0)と定数(K)の積である。
次式により、本試料の相対粘度(η
rel)を求めた。
【0071】
η
rel=ν/ν
0
【0072】
第16改正日本薬局方、結晶セルロースの確認試験(3)に記載された「相対粘度(η
rel)から極限粘度との濃度の積[η]Cを求める表」に基づき、算出された相対粘度(η
rel)から極限粘度[η](mL/g)と濃度(C)(g/mL)の積([η]C)を求め、次式により平均重合度(P)を計算した。下記式中、M
Tは、乾燥物に換算した本品試料の秤取量(g)である。
【0073】
P=95[η]C/[M
T]
【0074】
平均重合度(P)が350を超える時は、試料量を約0.25gとする以外は上記と同様に実施し、平均重合度(P)を計算する。
【0075】
<粒子の平均粒子径[μm]>
セルロース又はセルロース複合体の各粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布計(堀場製作所(株)製、LA−910)を用い測定した。平均粒子径は体積頻度の数平均として算出した。
【0076】
<嵩密度[g/cm
3]>
セルロースやセルロース複合体の粉体の嵩密度は、100mL容のメスシリンダーに粒子30gを疎充填させた粒子層の容積を読み取り、30で除した値を算出して求めた。繰り返し数は3で、その平均値をとった。
【0077】
<安息角[°]>
杉原式安息角測定器(スリットサイズ:奥行10mm×幅50mm×高さ140mm、幅50mmの位置に分度器を設置)を使用し、定量フィーダーを使用し、粉体を3g/分でスリットに投下した際の動的自流動性を測定した。この際の、装置底部とセルロース粉末の形成層との角度が、粉体の安息角である。
【0078】
<目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分[質量%]>
粉体約10gを目開き32μm篩上に置き、エアジェットシーブ(ALPINE製、A200LS型)で10分間篩粉し、篩上に残留する粉体質量を全質量に対する百分率として求めた。
【0079】
<錠剤の硬度>
一般的に使用される錠剤硬度測定器(Tablet Tester 8M/DR.SCHLEUNIGER製)にて、錠剤の硬度を測定した。1錠ずつ錠剤硬度を測定し、20錠分の錠剤硬度の平均値を算出した。
【0080】
<錠剤の摩損度>
錠剤20個の質量(W
a)を測定し、これを錠剤摩損度試験器(PTFR−A、PHARMA TEST製)に入れ、25rpm、4分間回転した後、錠剤に付着している微粉を取り除き、再度質量を測定し(W
b)、下式より計算した。
摩損度 = 100×(W
a−W
b)/W
a
【0081】
<錠剤の崩壊試験>
第16改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に従って実施した。試験液は水を用い、崩壊試験器は富山産業社製の「NT−40HS型」(ディスクなし)を用いた。具体的には、試験器の6本の透明管に、管1本あたり1個の試料を入れ、37℃、純水中において、試料を入れた試験器を1分間に29〜32往復、振幅53〜57mmで上下に振盪させて、試料が崩壊するまでに要した時間を測定した。試料6個の崩壊時間の平均値を、当該試料の崩壊時間とした。
【0082】
<錠剤の口腔内崩壊試験>
健康な成人男子3人を被験者として、口腔内の唾液で錠剤が完全に崩壊する時間を測定した。各人2回測定し、3人の平均値を算出した。
【0083】
[実施例1]
市販パルプ(重合度790)を細断したもの2kgと、4Nの塩酸水溶液30Lを低速型攪拌機(池袋琺瑯工業社製、30L容GL反応器)に入れ、40℃、48時間加水分解し、平均重合度が270の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分40%となるよう濾過し、濾過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、90Lのポリバケツに入れ、純水を加えて、スリーワンモーター(HEIDON製、タイプ1200G)で攪拌することにより、固形分濃度10%のセルロース分散液とした。セルロース分散液中のセルロース粒子の平均粒子径は67μmであった。
当該セルロース分散液とデンプンと軽質無水ケイ酸(SiO
2)をセルロース/デンプン/SiO
2の質量比が、88.2/9.8/2となるように混合し、固形分濃度9.9質量%の水分散液を調製した。この水分散液を、送り量20kg/h、加圧1流体ノズル方式で噴霧乾燥し、セルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Aを得た。
得られた複合体A30質量%とアセトアミノフェン70質量%とを混合し、当該混合粉体0.5gを臼に入れ、静圧プレス(アイコーエンジニアリング製)で打圧7kNで圧縮して、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を得、硬度と摩損度を測定した。
セルロース、複合体A、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0084】
[実施例2]
広葉樹を公知のパルプ化処理、漂白処理を施すことにより、セルロース一次粒子の繊維平均幅は約19μm、平均厚みは約3μm、レベルオフ重合度140〜220、水分5〜10%、白色度92〜97%、粘度5〜40cps、S105〜15%、S181〜8%、銅価0.5〜1.5、及びジクロロメタン抽出物0.03ppm以下のパルプを得た。当該パルプ2kgと4N塩酸水溶液30Lを、低速型攪拌機(池袋琺瑯工業社製、50L容GL反応器)に入れて攪拌しながら、40℃、48時間加水分解し、酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、純水で十分に洗浄した後、ろ過し、90L容ポリバケツに導入し、全固形分濃度が15質量%になるように純水を加え、3−1モーターで攪拌しながら、アンモニア水で中和(中和後のpHは7.5〜8.0であった)した。この固形分濃度15質量%のセルロース水分散液中のセルロース一次粒子の繊維平均幅は22μm、平均厚みは2.5μm、平均粒子径は38μmであった。
得られたセルロース水分散液とデンプンとSiO
2をセルロース/デンプン/SiO
2の質量比が、69.3/29.7/1となるように混合し、固形分濃度18.3質量%の水分散液を調製した。この水分散液を、送り量30kg/h、加圧1流体ノズル方式で噴霧乾燥しセルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Bを得た。
得られた複合体B30質量%とアセトアミノフェン70質量%とを混合し、当該混合粉体0.5gを臼に入れ、静圧プレス(アイコーエンジニアリング製)で打圧7kNで圧縮して、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を得、硬度と摩損度を測定した。
セルロース、複合体B、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0085】
[実施例3]
セルロース水分散液とデンプンとSiO
2をセルロース/デンプン/SiO
2の質量比が59.4/39.6/1となるように混合して固形分濃度19.4質量%の水分散液を調製した以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Cを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体C、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0086】
[実施例4]
セルロース水分散液とデンプンをセルロース/デンプンの質量比が60/40となるように混合して固形分濃度19.3質量%の水分散液を調製し、加圧1流体ノズル方式で送り量90kg/hとした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Dを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体D、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0087】
[実施例5]
セルロース水分散液とデンプンとSiO
2をセルロース/デンプン/SiO
2の質量比が、49.75/49.75/0.5となるように混合し、固形分濃度19.3質量%とした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Eを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体E、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0088】
[実施例6]
セルロース水分散液とデンプンとSiO
2をセルロース/デンプン/SiO
2の質量比が36.6/59.4/1となるように混合し、固形分濃度18.9質量%とした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Fを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体F、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0089】
[実施例7]
セルロース分散液として実施例1のセルロース水分散液を用いた以外は実施例3と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Gを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体G、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0090】
[比較例1]
市販の結晶セルロース(セオラスKG−1000:旭化成社製)を、気流式粉砕機(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用して粉砕圧力0.4MPa、粉体供給速度10kg/hで粉砕し、セルロース粉末G(特許文献5の実施例4に相当)を得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末G、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0091】
[比較例2]
実施例1のセルロース水分散液を固形分濃度10質量%に調整した上で、送り量6kg/h、ディスク方式で噴霧乾燥し、セルロース粉末H(特許文献3の実施例1に相当)を得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末H、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0092】
[比較例3]
加水分解条件を3N塩酸水溶液、40℃、20時間とした以外は、実施例1と同じ操作により加水分解し、平均重合度が440の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分70質量%となるよう濾過した。得られた濾過残渣をさらに純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、90L容のポリバケツに入れ、純水を加えて、実施例1と同じ操作で、固形分濃度6質量%のセルロース水分散液とした。当該セルロース水分散液中のセルロース粒子の平均粒子径は41μmであった。得られたセルロース水分散液をディスク方式で噴霧乾燥し、セルロース粉末I(特許文献2の実施例7に相当)を得た。
得られたセルロース粉末Iを用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末I、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0093】
[比較例4]
加水分解条件を0.14N塩酸水溶液、121℃ 、1時間、反応中の攪拌速度を30rpmとした以外は、実施例1と同じ操作により加水分解し、平均重合度が220の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分70質量%となるよう濾過した。得られた濾過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、90L容のポリバケツに入れ、純水を加えて、実施例1と同じ操作で、固形分濃度17質量%のセルロース水分散液とした。当該セルロース水分散液中のセルロース粒子の平均粒子径は29μmであった。得られたセルロース水分散液をディスク方式で噴霧乾燥した後、目開き325メッシュの篩で粗大粒子を取り除き、セルロース粉末J(乾燥減量4.1質量%、特許文献1の実施例1に相当)を得た。
得られたセルロース粉末Jを用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末J、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0094】
[比較例5]
市販KPパルプ(重合度840)を0.7%塩酸水溶液中で、125℃、150分間加水分解した後、加水分解残渣を中和、洗浄、濾過して湿ケークとし、ニーダー中で十分磨砕した後、容積比で1倍のエタノールを加え、圧搾濾過した後風乾した。得られた乾燥粉末はハンマーミルで粉砕した後、40メッシュ篩で粗大粒子を除き、セルロース粉末K(乾燥質量3.0質量%、特許文献6の実施例1に相当)を得た。
得られたセルロース粉末Kを用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、セルロース粉末K、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。
【0095】
[比較例6]
セルロース分散液とデンプンとSiO
2をセルロース/デンプン/SiO
2の質量比が34.65/64.35/1.0となるように混合し、固形分濃度19.2質量%とした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiO
2を含有する複合体Lを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体L、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。複合体Lは、セルロース質量、安息角が小さく、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は33Nと低かった。
【0096】
[比較例7]
セルロース分散液とデンプンとSiO
2をセルロース/デンプン/SiO
2の質量比が94.1/4.9/1となるように混合し、固形分濃度9.9質量%、送り量6kg/hとした以外は実施例2と同様に操作し、セルロースとデンプンとSiO
2の複合体Mを得、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、複合体M、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。複合体Mは、セルロース質量及び嵩密度が大きく、安息角が54°を超えていた。アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は119Nと良好であったが、崩壊時間が100秒を超えた。
【0097】
[比較例8]
セルロース/デンプン/SiO
2の質量比が実施例1と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiO
2とをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、安息角が54°を超え、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は実施例1より低かった。
【0098】
[比較例9]
セルロース/デンプン/SiO
2の質量比が実施例2と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiO
2とをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体のアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0099】
[比較例10]
セルロース/デンプン/SiO
2の質量比が実施例3と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiO
2とをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0100】
[比較例11]
セルロース/デンプン/SiO
2の質量比が実施例5と同組成となるように、結晶セルロースとデンプンとSiO
2とをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満、安息角が35°未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0101】
[比較例12]
セルロース/デンプン/SiO
2の質量比が特許文献8に記載の範囲となるように、結晶セルロースとデンプンとSiO
2とをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満、安息角が35°未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0102】
[比較例13]
セルロース/デンプン/SiO
2の質量比が特許文献8に記載の範囲となるように、結晶セルロースとデンプンとSiO
2とをポリ袋中で混合した。得られた混合粉体を用いて実施例1と同様にしてアセトアミノフェン70質量%含有錠剤を製造し、硬度と摩損度を測定した。セルロース、混合粉体、及びアセトアミノフェン70質量%含有錠剤の粉体物性を表1〜3に示す。この混合粉体は、この混合粉体は、平均粒子径が30μm未満、安息角が35°未満となり、アセトアミノフェン70質量%含有錠剤の硬度は50N未満であった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表3中、「篩上残留分[wt%]」の欄は、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分(wt%)の結果であり、「7kNで圧縮した時の硬度[N]」の欄は、アセトアミノフェンと複合体又はセルロース粉末との混合物([アセトアミノフェン]/[複合体又はセルロース粉末]=70/30)を7kNで圧縮して得られた錠剤の硬度[N]の結果であり、「7kNで圧縮した時の崩壊時間[秒]」の欄は、前記アセトアミノフェンと複合体又はセルロース粉末との混合物を7kNで圧縮して得られた錠剤の崩壊時間[秒]の結果である。
【0107】
実施例1〜7で得られた複合体は、弾性体であるデンプンを含有しているにも関わらず、比較例1〜4のセルロース粉末に匹敵する硬度を有し、特に、高成形性であるセルロース粉末の比較例1〜2に対しては、錠剤の崩壊時間が短く、崩壊性に優れていた。より詳細には、実施例1の複合体Aと比較例8の混合粉体、実施例2の複合体Bと比較例9の混合粉体、実施例3の複合体Cと比較例10の混合粉体、実施例5の複合体Eと比較例11の混合粉体は、それぞれ組成は同じであるが、実施例の複合体は加圧1流体ノズルで噴霧乾燥したため、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が50質量%未満となったのに対し、比較例の混合粉体は粉体混合で調製されたため、セルロース粒子の凝集体が存在するゆえに、当該篩上残留分が50質量%を超えた。比較例12及び13の混合粉体は、デンプン含量が多いため、目開き32μmの篩で篩過した時の篩上残留分が50質量%未満となったが、安息角が35°未満となり、高い成形性は得られなかった。
【0108】
実施例1と比較例2の錠剤を比較した場合に、両者は同じセルロース水分散液を使用しており、かつ実施例1の錠剤はデンプンを有しているにもかかわらず、実施例1の錠剤のほうが比較例2の錠剤よりも硬度が高かったことから、噴霧乾燥をディスク方式で行うよりも流体ノズル方式で行ったほうが、成形性が良好になることが示唆された。また、平均重合度が300、平均粒子径が67μmのセルロース分散液を用いて製造された実施例7の複合体Gと、平均重合度が240、平均粒子径が38μmのセルロース分散液を用いて製造された実施例3の複合体Cとを比較すると、両者はセルロース/デンプン/SiO
2の質量比や複合体の製造工程は同じであるにもかかわらず、実施例7の複合体Gは実施例3の複合体Cよりも嵩密度が低く、安息角が大きく、膨潤度が小さかった。この結果から、セルロースとデンプンとSiO
2の複合体の嵩密度及び安息角は、原料とするセルロース分散液の影響を受けることが示された。
【0109】
[実施例8]
N−アセチルグルコサミンを50質量%、実施例3で製造した複合体Cを15質量%、エリスリトール34質量%、及びSiO
20.5質量%をポリエチレンバッグ中で3分間十分に混合した後、得られた混合粉体に0.5質量%のステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。得られた混合粉体をロータリー打錠機(菊水製作所製、CLEANPRESSCORRECT 12HUK)で直径0.8cm、12Rの杵を用いてターンテーブル回転速度54rpmで打錠し、質量180mgの錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0110】
[実施例9]
複合体Cを実施例4で製造した複合体Dとした以外は、実施例8と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0111】
[比較例14]
複合体Cを比較例3で製造したセルロース粉末Iとした以外は、実施例8と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0112】
[比較例15]
複合体Cを比較例4で製造したセルロース粉末Jとした以外は、実施例8と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0113】
[比較例16]
複合体Cを比較例5で製造したセルロース粉末Kとした以外は、実施例8と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表4に示す。
【0114】
実施例8、9の錠剤は、硬度が50N以上、摩損度が0.2以下であり、実用的な基準を満たした。また、口腔内崩壊時間が30秒以内となり、崩壊性も優れていた。一方、比較例14の錠剤は硬度、摩損度は良好だが、口腔内崩壊時間が60秒と長く、実施例8、9の錠剤よりも劣っていた。また比較例15の錠剤は、硬度は良好であったが、摩損度と口腔内崩壊時間が実施例8、9の錠剤に劣っていた。比較例16の錠剤は、口腔内崩壊時間は良好なものの、打錠時に錠剤の欠けが発生し、硬度、摩損度で実施例8、9の錠剤に劣っていた。
【0115】
【表4】
【0116】
[実施例10]
GABAを20質量%、実施例3で製造した複合体Cを29質量%、微粉エリスリトール47質量%、アルファー化デンプン(「Swelstar」PD−1)を3質量%、オレンジ香料0.2質量%、及びアスパルテーム0.2質量%をポリエチレンバッグ中で3分間十分に混合した後、得られた混合粉体に0.6質量%のステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。得られた混合粉体0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径1.13cm(底面積が1cm
2)の平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)を用い、打圧6kNで圧縮した。圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用した(圧縮速度は25cm/分程度)。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0117】
[実施例11]
複合体Cを実施例4で製造した複合体Dとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0118】
[比較例17]
複合体Cを比較例3で製造したセルロース粉末Iとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0119】
[比較例18]
複合体Cを比較例4で製造したセルロース粉末Jとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0120】
[比較例19]
複合体Cを比較例5で製造したセルロース粉末Kとした以外は、実施例10と同様に操作して錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表5に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
表5に示すように、本発明に係るセルロース複合体を用いて製造された錠剤は、従来のセルロース粉末を用いて製造された錠剤より、崩壊性に優れていた。
【0123】
[実施例12]
クルクミンを30質量%、実施例3で製造した複合体Cを30質量%、微粉エリスリトール36質量%、アルファー化デンプン(「Swelstar」PD−1)を3質量%、オレンジ香料0.2質量%、及びアスパルテーム0.2質量%をポリエチレンバッグ中で3分間十分に混合した後、得られた混合粉体に0.6質量%のステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間さらにゆっくりと混合した。得られた混合粉体0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径1.13cm(底面積が1cm
2)の平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)を用い、打圧7kNで圧縮した(圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用した(圧縮速度は25cm/分程度)。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0124】
[実施例13]
複合体Cを実施例5で製造した複合体Eとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0125】
[比較例20]
複合体Cを比較例3で製造したセルロース粉末Iとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0126】
[比較例21]
複合体Cを比較例4で製造したセルロース粉末Jとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0127】
[比較例22]
複合体Cを比較例5で製造したセルロース粉末Kとした以外は、実施例12と同様に操作し錠剤を作製した。得られた錠剤の錠剤物性を表6に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
表6に示すように、本発明に係るセルロース複合体を用いて製造された錠剤は、従来のセルロース粉末を用いて製造された錠剤と同程度に硬度が高く、口腔内崩壊時間が短いという利点を有していた。
【0130】
[実施例14]
実施例1で製造した複合体A0.5gを、臼(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)に入れ、直径1.13cm(底面積が1cm
2)の平面杵(菊水製作所製、材質SUK2,3を使用)を用い、打圧2kNで圧縮した。圧縮機はアイコーエンジニアリング製、PCM−1Aを使用した(圧縮速度は25cm/分程度)。得られた錠剤の錠剤物性を表7に示す。当該錠剤の初期と3ヵ月後の硬度はほとんど変わらなかった。
【0131】
[比較例23]
実施例1で製造した複合体Aを特許文献7の実施例7に記載のセルロース複合体とした以外は実施例14と同様に操作した。得られた錠剤の錠剤物性を表7に示す。当該錠剤の3ヵ月後の錠剤硬度は明らかに低下していた。
【0132】
【表7】