特許第6832793号(P6832793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832793
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】子作業車と協調して作業を行う親作業車
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   A01B69/00 303Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-105911(P2017-105911)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-198583(P2018-198583A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】新海 敦
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】島本 出
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和央
(72)【発明者】
【氏名】森下 孝文
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0215381(US,A1)
【文献】 特開2014−197992(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/129671(WO,A1)
【文献】 特開2005−238962(JP,A)
【文献】 特開2005−138751(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0165649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00 − 63/12
A01B 69/00
G05D 1/00 − 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人自動走行可能な子作業車と協調して作業を行う親作業車であって、
前記子作業車の作業走行状態を示す子作業走行状態情報を前記子作業車から受信する無線モジュールと、
自車の作業走行状態を示す親作業走行状態情報を生成する作業走行状態情報生成部と、
各種情報を表示する表示装置と、
前記子作業走行状態情報から前記子作業車の状態を記述した子状態メッセージ、及び、前記親作業走行状態情報から前記親作業車の状態を記述した親状態メッセージを作成するメッセージ作成部と、
前記子状態メッセージと前記親状態メッセージとを前記表示装置に表示するとともに、前記子状態メッセージと前記親状態メッセージとを識別するための付加情報を付与する報知制御部と、
を備え
前記子状態メッセージは第1音色の音とともに前記表示装置に表示され、前記親状態メッセージは前記第1音色とは異なる第2音色の音とともに前記表示装置に表示される親作業車。
【請求項2】
前記報知制御部には、前記子状態メッセージが書き込まれる子状態メッセージボックスと、前記親状態メッセージが書き込まれる親状態メッセージボックスとが用意されている請求項1記載の親作業車。
【請求項3】
前記子状態メッセージは第1文字色または第1背景色あるいはその両方で表示され、前記親状態メッセージは前記第1文字色とは異なる第2文字色または前記第1背景色とは異なる第2背景色あるいはその両方で表示される請求項1又は2に記載の親作業車。
【請求項4】
前記報知制御部には、前記子作業車を表す子表示体と前記親作業車を表す親表示体とが用意されており、前記子状態メッセージと前記子表示体とが組み合わされて子用表示データが生成され、前記親状態メッセージと前記親表示体とが組み合わされて親用表示データが生成される請求項1からのいずれか一項に記載の親作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人自動走行可能な子作業車と協調して作業を行い、子作業車との間で無線によるデータ通信が可能な親作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、親作業車とこの親作業車に倣う無人操縦式の子作業車とによって対地作業を行う作業車協調システムが開示されている。このシステムでは、親作業車の位置である親位置を検出する親位置検出モジュールと、子作業車の位置である子位置を検出する子位置検出モジュールと、親作業車の走行軌跡から子作業車の目標走行位置を算定する子走行目標算定部と、親作業車によって実行された作業運転に関する親作業運転パラメータを親位置にリンクさせて生成する親パラメータ生成部と、親作業運転パラメータに基づいて子作業車の対応する目標走行位置にリンクさせた子作業車のための子作業運転パラメータを生成する子パラメータ生成部と、子位置と目標走行位置と前記子作業運転パラメータとに基づいて前記子作業車を無人操縦する操縦制御部とが備えられている。親作業車によって実行された作業運転に関する親作業運転パラメータが親作業車の位置とリンクされた形で生成される。さらに、この親作業運転パラメータに基づいて、親作業車の位置に対応する子作業車の目標走行位置にリンクさせた子作業車のための子作業運転パラメータが生成される。これにより、子作業車は、作業運転パラメータと目標走行位置に基づいて親作業車の作業運転に忠実に倣った作業運転を行うことができる。
【0003】
特許文献2には、走行経路に沿って自動的に作業走行を行うように制御された自律走行作業車と、該自律走行作業車に対して所定距離離れた位置を随伴走行しながら作業を行う随伴走行作業車とからなる協調作業システムが開示されている。随伴走行作業車に備えられたモニタ装置と自律走行作業車の制御装置とが無線通信によってデータ交換可能で接続されている。モニタ装置は設定された走行経路や自律走行作業車の状態を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−188351号公報
【特許文献2】特開2015−221614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による作業車協調システムでは、親作業車の作業走行の状態を規定する親作業運転パラメータが生成される。さらに、この親作業運転パラメータに対応する子作業運転パラメータが生成され、子作業車に無線通信され、子作業車において、子作業運転パラメータが設定される。しかしながら、運転者や管理者が把握できるように、親作業運転パラメータや子作業運転パラメータの内容をモニタなどに表示することは考えられていない。
【0006】
特許文献2に開示された、自律走行作業車(子作業車)と随伴走行作業車(親作業車)とによる作業車協調システムでは、運転者が乗り込んでいる随伴走行作業車のモニタ装置には、走行状態やエンジンの状態や作業機の状態が表示されるが、随伴走行作業車の走行作業の状態は表示されない。このため、モニタ画面を通じて、自律走行作業車と随伴走行作業車との走行作業の状態を比較することはできない。エンジン同様に、異常などの異常事態時には、自律走行作業車においても操縦パネルでのランプ表示や警告メッセージ表示が行われが、随伴走行作業車の運転者は、随伴走行作業車の異常状態を自律走行作業車の異常状態と誤って認識してしまう可能性がある。
【0007】
上述した実情に鑑み、無人自動走行可能な子作業車と、監視者が乗り込んだ親作業車とが協調して作業走行を行う際に、監視者が表示装置を通じて子作業車及び親作業車の作業走行状態を明確に把握できることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
無人自動走行可能な子作業車と協調して作業を行う親作業車は、前記子作業車の作業走行状態を示す子作業走行状態情報を前記子作業車から受信する無線モジュールと、自車の作業走行状態を示す親作業走行状態情報を生成する作業走行状態情報生成部と、各種情報を表示する表示装置と、前記子作業走行状態情報から前記子作業車の状態を記述した子状態メッセージ及び前記親作業走行状態情報から前記親作業車の状態を記述した親状態メッセージを作成するメッセージ作成部と、前記子状態メッセージと前記親状態メッセージとを前記表示装置に表示するとともに、前記子状態メッセージと前記親状態メッセージとを識別するための付加情報を付与する報知制御部とを備え、前記子状態メッセージは第1音色の音とともに前記表示装置に表示され、前記親状態メッセージは前記第1音色とは異なる第2音色の音とともに前記表示装置に表示される。
【0009】
なお、この発明で使われている「親作業車」及び「子作業車」なる語句は、説明の都合上用いられており、いずれも作業車を意味しており、本発明は「親作業車」という特定な作業車に限定されるのではなく、いわゆる作業車に適用されるものである。
【0010】
この構成によれば、子作業車の作業走行状態を示す子作業走行状態情報から作成された子作業車の状態を記述した子状態メッセージと、親作業車の作業走行状態を示す親作業走行状態情から作成された親作業車の状態を記述した親状態メッセージとが、表示装置に表示される。その際、表示装置に表示されているメッセージが親作業車に関するものであるか、あるいは子作業車に関するものであるかを明確に識別できる付加情報が与えられるので、監視者は、表示装置に表示されたメッセージをより正確に把握することができる。これにより、親作業車に乗り込んだ監視者は表示装置を通じて子作業車及び親作業車の作業走行状態を混乱なく把握することができる。
【0011】
表示装置に表示される子状態メッセージまたは親状態メッセージを識別するための好適な付加情報の1つは、メッセージの表示とともに、親作業車または子作業車のために割り当てられた音を鳴らすことである。上記構成により、作業走行状態に関する視覚的な情報伝達に、聴覚的な情報伝達を加えることで、より正確な情報伝達を実現することができ
【0012】
表示装置に表示される子状態メッセージまたは親状態メッセージが、親作業車向けであるのかまたは子作業車向けであるのかを明確にするためには、それぞれにおける表示形態を相違させることも好適である。そのような表示形態の1つは、子状態メッセージを表示する領域と、親状態メッセージを表示する領域を区分けすることである。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記報知制御部には、前記子状態メッセージが書き込まれる子状態メッセージボックスと、前記親状態メッセージが書き込まれる親状態メッセージボックスとが用意されている。
【0013】
さらに別な実施形態の1つでは、前記子状態メッセージは第1文字色または第1背景色あるいはその両方で表示され、前記親状態メッセージは前記第1文字色とは異なる第2文字色または前記第1背景色とは異なる第2背景色あるいはその両方で表示される。表示装置がカラー表示可能であれば、子状態メッセージと親状態メッセージとの表示においてメッセージを構成する文字の色やその背景色の色を相違させることで、それらの識別が容易となる。
【0014】
チャットなどのコミュニケーション手段では、発言の主体である発言者のアイコンやニックネームなどは発言の前に付与することで、発言者を一目で把握できるように工夫されている。本発明においても、そのような識別方法を、作業走行状態を示す状態メッセージの主体を識別するために好適に用いることができる。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記報知制御部には、前記子作業車を表す子表示体と前記親作業車を表す親表示体とが用意されており、前記子状態メッセージと前記子表示体とが組み合わされて子用表示データが生成され、前記親状態メッセージと前記親表示体とが組み合わされて親用表示データが生成される。子表示体や親表示体として、子作業車と親作業車とを簡単に識別できるアイコン、イラスト、図像、記号、文字などを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】親作業車と子作業車とによる協調作業の様子を示す説明図である。
図2】無人走行可能な作業車の一例であるトラクタの側面図である。
図3】親作業車の制御系を示す機能ブロック図である。
図4】作業走行情報に関するメッセージの表示過程におけるデータの流れを示す流れ図である。
図5】親メッセージと子メッセージとを識別するための第1の形態を示す模式図である。
図6】親メッセージと子メッセージとを識別するための第2の形態を示す模式図である。
図7】親メッセージと子メッセージとを識別するための第3の形態を示す模式図である。
図8】親メッセージと子メッセージとを識別するための第4の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、無人自動走行可能な子作業車と協調して作業を行う親作業車の実施形態を説明する。この実施形態では、子作業車と親作業車とは、実質的に同等な機能を有する作業車であるトラクタであり、走行車体の後部に作業装置を装備し、作業地である圃場に対して設定された走行経路に沿って作業(この実施形態では耕耘作業)を行う。
【0017】
図1で示す協調耕耘作業では、2台のトラクタのうち、文字「子」を付与されたトラクタである子トラクタ(以下子作業車と呼ぶ)が先行して走行し、文字「親」を付与された親トラクタ(以下親作業車)が、先行するトラクタによって耕耘された領域に対してわずかなオーバーラップ幅をもって、追従走行している。もちろん、親作業車が先行し、子作業車が親作業車を追従走行してもよい。また、子作業車と親作業車とが圃場の区分けされた区画を個別に作業走行することも可能である。図1での例では、圃場は、圃場の中央側に位置する中央作業地CLと、その中央作業地CLの周囲で畦に沿って規定される枕地HLとに区分けされている。各作業車は、中央作業地CLにおいて予め設定された目標走行経路に沿って直進走行し、枕地HLに達するとUターン走行し、再び中央作業地CLでの直進走行に戻る。最後に、いずれかの作業車また両者が、枕地HLを周回作業走行する。
【0018】
2台の作業車は、設定された目標走行経路に沿って自動走行可能である。親作業車に運転者兼管理者が乗り込んで手動走行され、子作業車は自動走行される第1協調走行形態、親作業車と子作業車の両方が自動走行され、親作業車には監視者が乗り込む第2協調走行形態、親作業車と子作業車の両方が無人で自動走行され、車外で監視者が親作業車と子作業車との作業走行状態を監視する第3協調走行形態、などの協調走行形態が可能である。いずれの場合でも、監視者は、親作業車及び子作業車の緊急停止などの基本的な動作を指令することができる。
【0019】
この実施形態では、親作業車と子作業車とは、実質的に同じ構成のトラクタである。図2に示すように、この作業車は、前輪11と後輪12とによって支持された車体10の中央部に操縦部20が設けられている。車体10の後部には油圧式の昇降機構31を介して作業装置としてのロータリ式の耕耘装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、操舵機構13によって操舵角が変更されることでトラクタの走行方向が変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行では、前輪11の操舵は操縦部20に配置されているステアリングホイール22を用いて行われる。操縦部20には、この実施形態では、タブレットコンピュータによって構成されている汎用端末装置6が操縦席に設置されたクレードルに装着されている。この汎用端末装置6は、無線データ伝送機能を備えており、クレードルから取り外して、管理者が作業車の外部に持ち出しても、トラクタの制御系との間でデータ通信可能である。汎用端末装置6は、運転者や管理者に情報を提供する機能と、運転者や管理者からの情報を入力する機能とを有する。
【0020】
さらに、この実施形態では、図2に示すように、親作業車及び子作業車は、衛星測位システムとして、RTK−GPS方式を採用しているので、基本構成要素として、衛星測位基地局ユニット9Bと車載衛星測位ユニット9Aとを備えている。衛星測位基地局ユニット9Bは、圃場近くに設置され、その設置された位置を示すパラメータである位置座標と衛星ASからの電波とに基づいて生成された補正データを、車載衛星測位ユニット9Aに送信する。トラクタに装備されており、GNSS信号(GPS信号も含む)を受信するための衛星用アンテナが、トタクタキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、衛星測位システムを用いた衛星航法を補完するために、車載衛星測位ユニット9Aに、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを組み合わせることも可能である。そのような慣性航法モジュールは、車載衛星測位ユニット9Aとは別の場所に設けてもよい。
【0021】
図3には、作業車の制御系の機能ブロック図が示されている。この制御系の中核要素である制御ユニット5は、入出力インタフェースとして、出力処理部7と入力処理部8とを備えている。異なるタイプの無線通信機器と無線通信を行うために、複数の通信方式で動作可能な無線モジュール70が制御ユニット5と接続している。無線モジュール70は、他の作業車の無線モジュール70とも無線通信可能であり、作業車間(親作業車と子作業車との間)のデータ交換、及び、車外に持ち出された汎用端末装置6との間のデータ交換に用いられる。図3では、制御ユニット5は、汎用端末装置6及び衛星測位システムの車両側構成要素である車載衛星測位ユニット9Aと車載LANなどを介して接続している。
【0022】
出力処理部7は、車両走行機器群71及び作業装置機器群72と接続している。車両走行機器群71には、車両走行に関する制御機器、例えばエンジン制御機器、変速制御機器、制動制御機器、操舵制御機器などが含まれている。作業装置機器群72には、耕耘装置30への動力伝達を入り切りするPTOクラッチなどの動力制御機器や、耕耘装置30を昇降させる昇降機構31の昇降シリンダ制御機器などが含まれている。
【0023】
入力処理部8には、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、走行モード切替器83などが接続されている。走行モード切替器83は、自動操舵で走行する自動走行モードと、手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。例えば、自動操舵モードで走行中に走行モード切替器83を操作することで、手動操舵での走行に切り替えられ、手動操舵での走行中に走行モード切替器83を操作することで、自動操舵での走行に切り替えられる。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数調整具、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール22などの操作具の状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、耕耘装置30の駆動状態や姿勢を検出するセンサなどが含まれている。
【0024】
制御ユニット5には、作業走行制御モジュール50、自車位置算出部57、作業走行状態情報生成部58が備えられている。自車位置算出部57は、車載衛星測位ユニット9Aから逐次送られてくる測位データに基づいて、車体10の座標位置(地図座標または圃場座標)である自車位置を算出する。
【0025】
作業走行制御モジュール50には、走行制御部51、作業制御部52、エンジン制御部53、自動作業走行指令部54、走行経路設定部55、協調走行管理部56が含まれている。走行制御部51は、操舵モータ14などの車両走行機器群71を制御する。この作業車は自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能である。このため、走行制御部51は、手動走行制御機能と自動走行制御機能とを有する。手動走行制御機能が実行されている場合、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71が制御される。自動走行制御機能が実行されている場合、自動作業走行指令部54から与えられる自動操舵指令に基づいて、走行制御部51が車両走行機器群71を制御する。作業制御部52は、耕耘装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に作業制御信号を与える。エンジン制御部53は、エンジンの動作機器にエンジン制御信号を与える。
【0026】
走行経路設定部55は、入力された圃場情報から、圃場の外形データを読み出し、この圃場における適正な走行経路を生成し、設定する。この走行経路は、運転者や監視者によって入力される基本的な初期パラメータに基づいて生成される。また、別なコンピュータで生成された走行経路をダウンロードして、設定することも可能である。いずれにしても、走行経路設定部55が生成した、あるいは取得した走行経路は、メモリに展開され、自動走行における目標走行経路として設定される。もちろん、この走行経路は、手動走行であっても、作業車が当該走行経路に沿って走行するためのガイダンスのために利用できる。
【0027】
自動作業走行指令部54は、走行経路設定部55によって目標走行経路として設定された走行経路と、自車位置算出部57によって算出された自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、その方位ずれ及び位置ずれを解消する自動操舵指令を生成して、走行制御部51に与える。
【0028】
協調走行管理部56は、協調相手の作業車(親作業車または子作業車)と協調作業を行う際に、協調走行のパターンに基づいて、協調相手の作業車の走行経路を考慮した、走行経路の生成及び設定を走行経路設定部55に要求する。また、協調走行管理部56は、協調相手のトラクタの走行状態や作業状態を取得し、協調相手のトラクタの作業走行を制御する機能、及び協調相手の作業車から自己の作業走行を制御される機能も有する。
【0029】
作業走行状態情報生成部58は、自車の作業走行状態を示す作業走行状態情報(親作業車なら親作業走行状態情報、子作業車なら子作業走行状態情報)を生成する。作業走行状態情報は、入力処理部8を介して入力される走行系検出センサ群81や作業系検出センサ群82からの検出データ、及び作業走行制御モジュール50で取り扱われる制御データなどに基づいて生成される。作業走行状態情報には、運転者または監視者に対する警告情報が含まれている。警告情報には、車体10の許容以上の傾斜、目標走行経路に対する自車位置の許容以上の位置ずれ、オーバーヒートなどのエンジントラブル、燃料切れ、バッテリ切れ、などがある。警告情報が生成されると、その報知とともに、必要の場合、車体10の停止やエンジンの停止、自動走行の停止などが実行される。
【0030】
作業走行状態情報生成部58で生成された作業走行状態情報は、この実施形態では、各種情報を運転者や管理者のために表示する表示装置としても機能している汎用端末装置6に転送される。
【0031】
汎用端末装置6は、実質的には、タブレットコンピュータのような無線通信機能を有するコンピュータであり、タッチパネル60、スピーカ67、入出力処理部61などが標準機能として備えられている。さらに、この汎用端末装置6には、メッセージ管理モジュール62を実現するコンピュータプログラムがインストールされている。メッセージ管理モジュール62には、メッセージ作成部63と報知制御部64とが含まれている。
【0032】
メッセージ作成部63は、子作業車の作業走行状態情報生成部58で生成され、無線通信で送られてきた作業情報状態情報から子作業車の状態を記述した子状態メッセージを作成する。また、メッセージ作成部63は、自車(親作業車)の作業走行状態情報生成部58で生成され、転送されてきた作業情報状態情報から自己(親作業車)の状態を記述した親状態メッセージを作成する。例えば、警告情報が、車体10が許容以上に傾斜しているという内容であれば、「異常傾斜のために子作業車(または親作業車)は停車します」といったような内容の状態メッセージが作成され、それを受けて、メッセージ作成部63は、運転者や監視者が確認することができるメッセージを作成する。
【0033】
報知制御部64には、表示データ生成部65が含まれており、この表示データ生成部65は、メッセージ作成部63で作成された状態メッセージ(親状態メッセージまたは子状態メッセージ)を表示データ化して、タッチパネル60に転送することで、タッチパネル60の画面に、対応するメッセージを表示する。さらに、報知制御部64は、画面表示される子状態メッセージにおいては、この子状態メッセージが子作業車に関するものであることを明確にする。また、画面表示される親状態メッセージにおいては、この親状態メッセージが親作業車に関するものであることを明確にする。このために、それぞれの状態メッセージに子状態メッセージと親状態メッセージとを識別するための付加情報が付与される。
【0034】
この実施形態では、付加情報の一例として、視覚を刺激する視覚情報と、聴覚を刺激する聴覚情報とが用意されている。視覚情報には、後述するように、種々の形態があり、表示データ生成部65によって生成される。ここでの聴覚情報は音色の異なる音データであり、親作業車に割り当てられる音データと、子作業車に割り当てられる音データとが、音データ生成部66によって生成されか、あるいは、予め音データ生成部66に記録されている。
【0035】
さらに、この音データ生成部66は、メッセージ作成部63で作成された状態メッセージを音声データ化した音データを生成し、スピーカ67から状態メッセージを音声として報知させることも可能である。
【0036】
次に、図4を用いて、状態メッセージの画面表示するプロセスにおけるデータの流れを説明する。ここでは、協調作業に、1台の親作業車と2台の子作業車(第1子作業車と第2子作業車)とが参加している。
【0037】
親作業車側では、検出センサ信号などに基づいて、作業走行状態情報生成部58によって生成された作業走行情報は、汎用端末装置6に送られる。この作業走行情報には、送信元を識別するコード(図4では「親」と記されている)が付けられているので、汎用端末装置6のメモリに割り当てられている作業走行情報メモリ620の親用メモリエリアに記録される。
【0038】
子作業車側でも、同様に、作業走行状態情報生成部58によって生成された作業走行情報は、無線モジュール70を介して、親作業車の汎用端末装置6に送られる。この作業走行情報には、送信元を識別するコード(図4では「子1」または「子2」と記されている)が付けられているので、作業走行情報メモリ620の子1用メモリエリアまたは子2用メモリエリアに記録される。
【0039】
メッセージ作成部63は、作業走行情報メモリ620から作業走行情報を読み出し、対応する作業車の状態を記述した状態メッセージ(親状態メッセージ、子1状態メッセージ、子2状態メッセージ)を作成して、報知制御部64に与える。
【0040】
報知制御部64では、受け取った状態メッセージを表示データ化して、タッチパネル60に転送する。その際に、状態メッセージの出自(親作業車または子作業車)を識別するための付加情報として、聴覚情報が選択されている場合には、メッセージ作成部63から状態メッセージの出自を示す出自コードが音データ生成部66に与えられるので、音データ生成部66に出自コードに対応する音色の音データをスピーカ67に送信して、対応する音をスピーカ67から流す。また、状態メッセージの出自を識別するための付加情報として、視覚情報が選択されている場合には、後述するような視覚的に識別できる形態の表示データが生成され、タッチパネル60に表示される。また、状態メッセージのタッチパネル60での表示とともに、スピーカ67から当該状態メッセージを音声として流すことも可能である。
【0041】
状態メッセージの出自を識別するためのいくつかの形態を、図5から図8に示された例を用いて説明する。
図5で示されている例では、状態メッセージの出自が音色の異なる音で識別される。出自が子作業車であれば、その状態メッセージの表示とともに、第1音色である「ピーピーピー」という音が流される。出自が親作業車であれば、その状態メッセージの表示とともに、第2音色である「ボーンボーン」という音が流される。
【0042】
図6で示されている例では、状態メッセージとともに画面に表示される子状態メッセージボックスと親状態メッセージボックスとが用意されている。出自が子作業車であれば、その状態メッセージは子状態メッセージボックスに表示される。出自が親作業車であれば、その状態メッセージは親状態メッセージボックスに表示される。これは、状態メッセージのための表示領域が大きい場合には、有効な手段となる。
【0043】
図7で示されている例では、出自が子作業車である子状態メッセージは第1文字色と第1背景色で表示され、出自が親作業車である親状態メッセージは第2文字色と第2背景色で表示されている。第1文字色と第2文字色と第1背景色と第2背景色とはそれぞれ異なる色である。もちろん、第1文字色と第2文字色とだけを異なる色としてもよいし、第1背景色と第2背景色とだけを異なる色としてもよい。
【0044】
図8で示されている例では、出自が子作業車である子状態メッセージには、子作業車を表す子表示体として、ここでは、「子」の字を用いたアイコンが状態メッセージの前に表示され、出自が親作業車である親状態メッセージには、親作業車を表す親表示体として、ここでは、「親」の字を用いたアイコンが状態メッセージの前に表示されている。子表示体や親表示体としては、様々なデザインの図像を用いることができる。表示データ生成部65は、子状態メッセージと子表示体とを組み合わされて子用表示データを生成するとともに、親状態メッセージと親表示体とを組み合わせて親用表示データを生成する。
【0045】
図7図8で示されたような、状態メッセージの出自をより明確に識別するための種々の形態は、状態メッセージの内容によって選択されてもよいし、監視者の好みで選択されてもよい。また、2つ以上の形態を組み合わせることも可能である。
【0046】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0047】
〔別実施の形態〕
(1)メッセージ管理モジュール62が汎用端末装置6に構築されているので、汎用端末装置6を車外に持ち出して、車外において、状態メッセージを確認することも可能である。これに代えて、車外への持ち出しは不能であるが、メッセージ管理モジュール62を制御ユニット5内に構築してもよい。その際、状態メッセージを表示する表示装置として、作業車に備えられている液晶などのディスプレイが利用される。
(2)図3図4で示された各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合してもよいし、またはさらに複数の機能部に分けてもよい。
(3)上述した実施形態では、作業車として、耕耘装置30を作業装置として装備したトラクタを取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車、建設作業車、などの種々の作業車にも、本願発明を適用することができる。また、協調作業を行う複数台の作業車は同一種類の作業車でなくてもよく、例えば、一方がコンバインで他方がトラクタでもよい。
(4)上述した実施形態では、親作業車と子作業車とによって行われる協調作業が取り上げられていたが、もちろん、この親作業車は単独での作業のためにも用いられる。その際、状態メッセージの表示においては、親作業車と子作業車との区別を行う必要はなく、常に親作業車が出自となる状態メッセージの表示となるが、上述したような、親作業車が出自であることを強調した状態メッセージの表示を行うことも可能である。また、その際、状態メッセージの音声による報知も可能である。さらには、状態メッセージは表示せずに、音声による報知だけにすることも可能である。監視者が汎用端末装置6を車外に持ち出して使用している場合、周囲の騒音を避けるために、状態メッセージの音声をイヤフォンやヘッドフォンを用いて監視者が聞くことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、無人自動走行可能な作業車と協調して作業を行い、当該作業車との間で無線によるデータ通信が可能な作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
5 :制御ユニット
50 :作業走行制御モジュール
51 :走行制御部
52 :作業制御部
53 :エンジン制御部
54 :自動作業走行指令部
55 :走行経路生成部
56 :協調走行管理部
57 :自車位置算出部
58 :作業走行状態情報生成部
6 :汎用端末装置
60 :タッチパネル(表示装置)
61 :入出力処理部
62 :メッセージ管理モジュール
620 :作業走行情報メモリ
63 :メッセージ作成部
64 :報知制御部
65 :表示データ生成部
66 :音データ生成部
67 :スピーカ
70 :無線モジュール
81 :走行系検出センサ群
82 :作業系検出センサ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8