(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1電流供給先切替器(6)が、前記第1ライン(10)の第1焼入装置(11)と、前記第2ライン(20)の第1焼入装置(21)の間に配置されている請求項1又は2に記載の高周波熱処理設備(1)。
前記第1整合盤(3)が、前記第1ライン(10)の第1焼入装置(11)と前記第2ライン(20)の第1焼入装置(21)の上方に配置されている請求項1〜3の何れか一項に記載の高周波熱処理設備(1)。
前記第2整合盤(4)が、前記第1ライン(10)の第2焼入装置(14)と前記第2ライン(20)の第2焼入装置(24)の上方に配置されている請求項5に記載の高周波熱処理設備(1)。
前記第1ライン(10)と前記第2ライン(20)との間に、ワークを高周波熱処理設備(1)内で搬送する搬送ロボット(50)が配置されている請求項1〜6の何れか一項に記載の高周波熱処理設備(1)。
ワークが、車輪取付用のフランジ部と内側軌道面とを有する車輪用軸受装置のハブ輪と、前記内側軌道面に対向する外側軌道面を有する車輪用軸受装置の外輪との組である請求項1〜7の何れか一項に記載の高周波熱処理設備(1)。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図8に示すようなカップ部101および軸部102を一体に有する等速自在継手の外側継手部材100の製造過程においては、外側継手部材100に必要とされる機械的強度等を付与するための熱処理(焼入硬化処理)が実施される。外側継手部材100は、その機能上、部材全体が高い機械的強度を具備している必要はなく、高い機械的強度が必要とされるのはその一部である場合が多い。具体的には、
図8中にクロスハッチングで示すように、トラック溝を含むカップ部101の内径面と、軸部102の外径面とに熱処理による硬化層Hが形成される。このため、外側継手部材(外側継手部材の基材。以下、単に「ワーク」ともいう。)100に対する焼入硬化処理の手法としては、加熱コイルを用いてワークの要焼入領域を狙い温度に誘導加熱した後、ワークの要焼入領域を冷却する、いわゆる高周波焼入を採用するのが一般的である。
【0003】
上記の理由から、熱処理設備(高周波熱処理設備)に投入されるワークの変更時(型番変更時)には、加熱コイルが型番変更後のワークの要焼入領域の形状等に対応した加熱コイルに交換されると共に、焼入条件が変更される。このように、加熱コイルが交換されたり、焼入条件が変更された場合には、通常、まず、所定の焼入条件で高周波焼入が施された焼入サンプルを作製・切断し、焼入深さ(硬化層厚さ)や表面硬度等を測定すると共に、硬化層の金属組織を顕微鏡で観察する、などといった品質検査(係る品質検査は、破壊検査とも称される)が実行される。そして、品質検査によって加熱コイルの形状・設置態様、さらには焼入条件等に問題がないことが確認されてから、高周波熱処理設備を実質的に稼働させ、型番変更後のワークに高周波焼入を施す。
【0004】
以上で述べた加熱コイルの交換や焼入条件の設定変更等に要する時間(段取り時間)と、焼入サンプルの作製および品質検査としての破壊検査に要する時間(検査時間)とは、何れもいわゆるダウンタイムであり、
図8に示す外側継手部材100に高周波焼入を施すために使用される高周波熱処理設備を例にとると、型番変更時に生じるダウンタイムは合計で120分程度に上る場合がある(段取り時間:30分程度、検査時間:90分程度)。従って、特に
図8に示す外側継手部材100のように、多数の型番を有するワークに高周波焼入を施すために使用される高周波熱処理設備は、その稼働率が低いという問題がある。
【0005】
型番変更に伴う高周波熱処理設備のダウンタイムを短縮するための技術手段としては、加熱コイルの交換や位置調整を容易化することにより段取り時間を短縮する、というものがある(例えば、特許文献1−3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1−3に記載の技術手段を採用することで段取り時間を短縮できたとしても、ダウンタイムの3/4程度を占める検査時間は依然として残る。検査時間は、例えば、超音波による組織変化の検出方法(特許文献4)や、渦電流を用いた焼入深さの測定方法(特許文献5)などを採用することで短縮することができる。しかしながら、特許文献4,5に記載された方法は、何れも、一部の品質特性を測定・検査することができる方法に過ぎず、ワークに適切に高周波焼入が施されているか否かを判断する上では不十分である。そのため、特許文献4,5に記載の技術手段は、前述した破壊検査の代替手段として採用できないのが実情である。
【0008】
品質検査として破壊検査を実施することを最優先に考えた場合、多数の高周波熱処理設備を設置することが考えられる。しかしながら、このような対策は、個々の熱処理設備の稼働率向上を図ることができないのはもちろんのこと、多大な投資や設備設置スペースが必要になるため、現実的には採用不可能である。
【0009】
以上の実情に鑑み、本発明は、コンパクトで設備稼働率が高く、しかもワークに対して適切に高周波焼入を施し得る高周波熱処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために創案された本発明に係る高周波熱処理設備(1)は、
・1台の高周波電源(2)と、
・高周波電源(2)から出力された高周波電力を受けて共振電流を発生させる第1整合盤(3)および第2整合盤(4)と、
・高周波電源(2)から出力された高周波電力の供給先を、第1整合盤(3)と第2整合盤(4)との間で切り替える電力供給先切替器(5)と、
・それぞれが、ワークの要焼入領域に高周波焼入を施し得る第1焼入装置(11)および第2焼入装置(14)を有する第1ライン(10)と、
・ワークの要焼入領域に高周波焼入を施し得る第1焼入装置(21)を有する第2ライン(20)とを備え、
第1ライン(10)の第1焼入装置(11)に設けられた加熱部(12)、および第2ライン(20)の第1焼入装置(21)に設けられた加熱部(22)のそれぞれが、第1整合盤(3)で発生した共振電流の供給先を2つの加熱部12,22)の間で切り替える第1電流供給先切替器(6)、第1整合盤(3)および電力供給先切替器(5)を介して高周波電源(2)と電気的に接続され、第1ライン(10)の第2焼入装置(14)に設けられた加熱部(15)が、第2整合盤(4)および電力供給先切替器(5)を介して高周波電源(2)と電気的に接続され、高周波電源(2)、第1整合盤(3)、第2整合盤(4)、電力供給先切替器(5)および第1電流供給先切替器(6)のそれぞれが、制御信号を出力する制御装置(8)と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成を有する熱処理設備(1)によれば、熱処理設備(1)の稼働中に制御装置(8)から出力される制御信号の出力先等を適宜切り替えることにより、例えば、第1ライン(10)でワークに対して高周波焼入が施されている間に、第2ライン(20)において、第1ライン(10)に投入されたワーク(第1ワーク)とは異なる形状を有するワーク(第2ワーク)に対して高周波焼入を施すための加熱部(加熱コイル)の設置作業や焼入条件の設定などを含むいわゆる段取作業、さらには第2ワークの焼入サンプルの作製および品質検査を実行することができる。この場合、第1ラインでの第1ワークに対する高周波焼入が完了すると、第2ワークに対する高周波焼入にスムーズに移行することが可能となるので、熱処理設備(1)全体としての設備稼働率を高めることができる。また、品質検査としていわゆる破壊検査を実行しても、当該検査に要する時間がそのまま熱処理設備(1)のダウンタイムとはならないため、破壊検査を実施することによる設備稼働率の大幅な低下を抑制あるいは防止することができる。そのため、品質検査としての破壊検査を適切に実施することができる。従って、ワークに対して適切に高周波焼入を施し得ることに加え、形状(型番)が互いに異なる複数種のワークに対して高周波焼入を効率良く実施することができる。
【0012】
また、高周波電源(2)が、各焼入装置(11,14,21)に設けられた加熱部(12,15,22)で共用されると共に、第1整合盤(3)が、第1ライン(10)および第2ライン(20)の第1焼入装置(11,21)にそれぞれ設けられた加熱部(12,22)で共用される。そのため、各焼入装置(11,14,21)の加熱部(12,15,22)に個別に高周波電源や整合盤を接続する場合に比べ、コンパクトで安価な熱処理設備(1)を実現することもできる。
【0013】
第1ライン(10)と第2ライン(20)とを1台のフレーム(9)に収容しておけば、コンパクトな高周波熱処理設備(1)を実現する上で有利となる。
【0014】
第1の電流供給先切替器(6)を、第1ライン(10)を構成する第1焼入装置(11)と、第2ライン(20)を構成する第1焼入装置(21)との間に配置すれば、第1ライン(10)の第1焼入装置(11)と第2ライン(20)の第1焼入装置(21)とを物理的に隔てることができる。この場合、別途の隔壁等を設けることなく、例えば、第1ライン(10)で第1ワークに対して高周波焼入が施されている間に、第2ライン(20)の第1焼入装置(21)でコイル交換等の段取作業を人手作業で実施する際の安全性を確保することができる。
【0015】
第1整合盤(3)を、第1ライン(10)の第1焼入装置(11)と第2ライン(20)の第1焼入装置(21)の上方に配置すれば、コンパクトな熱処理設備(1)を実現する上で有利となる。
【0016】
第2ライン(20)には、ワークの要焼入領域に高周波焼入を施し得る第2焼入装置(24)をさらに設けることができる。このようにすれば、第2ライン(20)に投入されるワークに対して二段階で高周波焼入を施すことが可能となるので、当該熱処理設備(1)の汎用性を高めることができる。この場合、第1ライン(10)の第2焼入装置(14)に設けられた加熱部(15)、および第2ライン(20)の第2焼入装置(24)に設けられた加熱部(25)のそれぞれを、制御装置(8)と電気的に接続され、第2整合盤(4)で発生した共振電流の供給先を上記2つの加熱部(15,25)の間で切り替える第2電流供給先切替器(7)、並びに第2整合盤(4)および電力供給先切替器(5)を介して高周波電源(2)と接続することができる。このようにすれば、高周波電源(2)が、各焼入装置(11,14,21,24)に設けられた加熱部(12,15,22,25)で共用され、また、第2整合盤(4)が、第1ライン(10)および第2ライン(20)の第2焼入装置(14,24)にそれぞれ設けられた加熱部(15,25)で共用されるので、全体としてコンパクトでありながら、汎用性が高められた熱処理設備(1)を実現することができる。
【0017】
第2整合盤(4)を、第1ライン(10)の第2焼入装置(14)と第2ライン(20)の第2焼入装置(24)の上方に配置すれば、少なくとも4台の焼入装置を備えた熱処理設備(1)のコンパクト化を図る上で有利となる。
【0018】
第1ライン(10)と第2ライン(20)との間に、ワークを高周波熱処理設備(1)内で搬送する搬送ロボット(50)を配置すれば、簡素でコンパクトな熱処理設備を実現することができる。
【0019】
本発明に係る熱処理設備は、前述の特徴を有することから、数多くの型番を有し、型番変更が頻繁に行われる部材、例えば、等速自在継手の外側継手部材に対して高周波焼入処理を施すための熱処理設備として好適に用い得る。また、本発明に係る熱処理設備は、車輪取付用のフランジ部と内側軌道面とを有する車輪用軸受装置のハブ輪と、上記内側軌道面に対向する外側軌道面を有する車輪用軸受装置の外輪との組に対して高周波焼入処理を施すための熱処理設備としても好適に用い得る。
【発明の効果】
【0020】
以上から、本発明によれば、は、コンパクトで稼働率が高く、しかもワークに対して適切に高周波焼入処理を施し得る高周波熱処理設備を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る高周波熱処理設備1の斜視図、
図2は、同熱処理設備1の上面図である。
図1および
図2に示す高周波熱処理設備1は、それぞれがワーク(第1ワークW1)に対して高周波焼入を施し得る第1焼入装置11および第2焼入装置14を有する第1ライン10と、それぞれがワーク(特に、第1ワークW1とは形状・型番が異なる第2ワークW2)に対して高周波焼入を施し得る第1焼入装置21および第2焼入装置24を有する第2ライン20と、熱処理設備1内にワークを搬入する搬入装置30と、焼入完了後のワークを熱処理設備1外に搬出する搬出装置40と、第1ライン10と第2ライン20の間に配置された内部搬送装置としての搬送ロボット50とを備える。第1ライン10、第2ライン20および搬送ロボット50は、平面視で角丸長方形状をなすフレーム(筐体)9の内部に収容・配置されている。
【0024】
図示例の搬入装置30は、2列の搬送路を有する搬送コンベアである。本実施形態では、2列の搬送路のうちの一方が第1ワークW1を搬送するために使用され、他方が第2ワークW2を搬送するために使用される。また、搬出装置40は、搬入装置30と同様に、2列の搬送路を有する搬送コンベアである。また、内部搬送装置としての搬送ロボット50には、伸縮、起伏および回転(旋回)可能なアームを有する搬送ロボットを採用している。
【0025】
以下では、熱処理設備1に投入される熱処理対象のワーク(第1ワークW1および第2ワークW2の双方)が、
図8に示すカップ部101および軸部102を一体に有する等速自在継手の外側継手部材(の基材)100である場合を例にとって、本実施形態の熱処理設備1の具体的な構成を説明する。
【0026】
第1ライン10に設けられた第1焼入装置11は、第1ワークW1としての外側継手部材100のうち、カップ部101の内径面に高周波焼入を施すことでカップ部101の内径側表層部に硬化層Hを形成し、第2焼入装置14は、軸部102の外径面に高周波焼入を施すことで軸部102の外径側表層部に硬化層Hを形成する。搬入装置30の終端位置(下流端)に到達した第1ワークW1は、搬送ロボット50によって、第1焼入装置11→第2焼入装置14→搬出装置40の順に搬送される。
【0027】
図3(a)に概念的に示すように、第1焼入装置11としては、例えば、筒状のハウジング内に、第1ワークW1の要焼入領域(ここではカップ部101の内径面)を狙い温度に誘導加熱するための加熱コイルを有する加熱部12と、加熱部12の下方側に配置され、加熱部12で加熱された第1ワークW1の要焼入領域に向けて冷却液を噴射可能な冷却ジャケットを有する冷却部13と、第1ワークW1を保持した状態で昇降移動する図示外の昇降機構とを設けたものが採用される。昇降機構が昇降移動することにより、第1ワークW1の要焼入領域が、加熱部12(加熱コイル)の対向領域→冷却部13(冷却ジャケット)の対向領域の順に配置される。
【0028】
図3(b)に概念的に示すように、第2焼入装置14としては、第1焼入装置11と同様に、筒状のハウジング内に、第1ワークW1の要焼入領域(ここでは軸部102の外径面)を狙い温度に誘導加熱するための加熱コイルを有する加熱部15と、加熱部15の下方側に配置され、加熱部15で加熱された第1ワークW1の要焼入領域に冷却液を噴射可能な冷却ジャケットを有する冷却部16と、第1ワークW1を保持した状態で昇降移動する図示外の昇降機構とを設けたものが採用される。昇降機構が昇降移動することにより、第1ワークW1の要焼入領域が、加熱部15(加熱コイル)の対向領域→冷却部16(冷却ジャケット)の対向領域の順に配置される。但し、加熱部15に設けられる加熱コイルおよび冷却部16に設けられる冷却ジャケットは、それぞれ、軸部102の外径面を誘導加熱および冷却することができるように、第1焼入装置11の加熱部12および冷却部13にそれぞれ設けられる加熱コイルおよび冷却ジャケットとは異なる形状を有する。
【0029】
第1ライン10は主に以上の構成を有し、以下に示す態様で第1ワークW1としての外側継手部材100のカップ部101および軸部102に対して高周波焼入を施す。
【0030】
まず、
図1および
図2に示すように、搬入装置30の下流端に到達した第1ワークW1は、搬送ロボット50によって第1焼入装置11に設けられたワーク受け渡し位置11aに搬送された後、図示外の昇降機構に保持される。次いで、昇降機構が駆動し、第1ワークW1のカップ部101が通電状態の加熱部12(加熱コイル)の対向領域に所定時間配置される。これにより、カップ部101の内径面が狙い温度に誘導加熱される。カップ部101の内径面が狙い温度に加熱された後、昇降機構が再駆動してカップ部101の内径面が冷却部13(冷却ジャケット)の対向領域に配置され、冷却ジャケットから噴射される冷却液によってカップ部101の内径面が冷却される。これにより、カップ部101の内径側表層部に硬化層Hが形成された第1ワークW1が得られる。第1ワークW1はワーク受け渡し位置11aに戻された後、搬送ロボット50によって第2焼入装置14に設けられたワーク受け渡し位置14aに搬送される。第2焼入装置14では、その加熱部15および冷却部16において、第1焼入装置11の加熱部12および冷却部13と同様の処理が施される。これにより、軸部102の外径側表層部に硬化層Hが形成された第1ワークW1が得られる。以上のようにして、カップ部101の内径側表層部および軸部102の外径側表層部のそれぞれに硬化層Hが形成された焼入完了済の第1ワークW1は、搬送ロボット50によって第2焼入装置14のワーク受け渡し位置14aから搬出装置40に搬送され、熱処理設備1外に搬出される。
【0031】
次に、第2ライン20に設けられた第1焼入装置21は、第2ワークW2としての外側継手部材(詳細には、第1ワークW1としての外側継手部材100とは形状等(型番)が異なる外側継手部材)100のうち、カップ部101の内径面に高周波焼入を施すことでカップ部101の内径側表層部に硬化層Hを形成し、第2焼入装置24は、軸部102の外径面に高周波焼入を施すことで軸部102の外径側表層部に硬化層Hを形成する。搬入装置30の下流端に到達した第2ワークW2は、搬送ロボット50によって、第1焼入装置21→第2焼入装置24→搬出装置40の順に搬送される。
【0032】
図3(c)に概念的に示すように、第1焼入装置21としては、第1ライン10の第1焼入装置11と同様に、筒状のハウジング内に、加熱コイルを有する加熱部22、冷却ジャケットを有する冷却部23および昇降機構を設けたものが採用される。加熱部22に設けられる加熱コイルおよび冷却部23に設けられる冷却ジャケットは、それぞれ、第2ワークW2のカップ部101の内径面に対応した形状を有する。また、
図3(d)に概念的に示すように、第2焼入装置24としては、第1ライン10の第2焼入装置14と同様に、筒状のハウジング内に、加熱コイルを有する加熱部25、冷却ジャケットを有する冷却部26および昇降機構を設けたものが採用される。加熱部25に設けられる加熱コイルおよび冷却部26に設けられる冷却ジャケットは、それぞれ、第2ワークW2の軸部102の外径面に対応した形状を有する。
【0033】
第2ライン20は、第1ライン10と同様の手順で第2ワークW2としての外側継手部材100のカップ部101および軸部102に対して高周波焼入を施す。
【0034】
本実施形態の熱処理設備1は、以上で説明した加熱部12,15,22,25を含むワークの加熱系統に主たる特徴がある。
図4を参照して説明すると、第1ライン10の第1焼入装置11に設けられた加熱部12、および第2ライン20の第1焼入装置21に設けられた加熱部22は、それぞれ、第1電流供給先切替器6、第1整合盤3および電力供給先切替器5を介して高周波電源2と電気的に接続される。また、第1ライン10の第2焼入装置14に設けられた加熱部15、および第2ライン20の第2焼入装置24に設けられた加熱部25は、それぞれ、第2電流供給先切替器7、第2整合盤4および電力供給先切替器5を介して高周波電源2と電気的に接続される。すなわち、熱処理設備1に設けられた4つの加熱部12,15,22,25は、一台の高周波電源2を共用している。また、加熱部12,22は第1整合盤3を共用し、加熱部15,25は第2整合盤4を共用している。
【0035】
詳細な図示は省略しているが、第1ライン10の両焼入装置11,14にそれぞれ設けられる冷却部13,16や昇降機構、および第2ライン20の両焼入装置21,24にそれぞれ設けられる冷却部23,26や昇降機構は、図示外の交流電源から供給される電力を受けて運転される。
【0036】
詳細な図示は省略するが、第1整合盤3および第2整合盤4は、それぞれ、高周波電源2から出力された高周波電力を受けて共振電流を発生させる共振回路を備えている。共振回路としては、例えば複数のコンデンサとトランスとで構成されたものが使用される。
図1および
図2に示すように、第1整合盤3は、第1ライン10の第1焼入装置11と第2ライン20の第1焼入装置21とに跨るようにして両焼入装置11,21の上方側に配置され、フレーム9の天井部に保持されている。また、第2整合盤4は、第1ライン10の第2焼入装置14と第2ライン20の第2焼入装置24とに跨るようにして両焼入装置14,24の上方側に配置され、フレーム9の天井部に保持されている。
【0037】
図4に示すように、電力供給先切替器5は、両整合盤3,4と高周波電源2とを電気的に接続する電線上に設けられており、高周波電源2から出力される高周波電力の供給先を第1整合盤3と第2整合盤4との間で切り替える。
【0038】
図4に示すように、第1電流供給先切替器6は、第1整合盤3と、第1ライン10の第1焼入装置11に設けられた加熱部12および第2ライン20の第1焼入装置21に設けられた加熱部22とを電気的に接続する電線上に設けられており、第1整合盤3(の共振回路)で発生した共振電流の供給先を、第1ライン10の加熱部12(の加熱コイル)と第2ライン20の加熱部22(の加熱コイル)との間で切り替える。
図1および
図2に示すように、第1電流供給先切替器6は、第1ライン10の第1焼入装置11と、第2ライン20の第1焼入装置21との間に配置されており、フレーム9の内部空間のうち、第1ライン10の第1焼入装置11が配置された空間と、第2ライン20の第1焼入装置21が配置された空間とを隔てる隔壁としても機能する。
【0039】
また、
図4に示すように、第2電流供給先切替器7は、第2整合盤4と、第1ライン10の第2焼入装置14に設けられた加熱部15および第2ライン20の第2焼入装置24に設けられた加熱部25とを電気的に接続する電線上に設けられており、第2整合盤4(の共振回路)で発生した共振電流の供給先を、第1ライン10の加熱部15(の加熱コイル)と第2ライン20の加熱部25(の加熱コイル)との間で切り替える。
図1および
図2に示すように、第2の電流供給先切替器7は、第1ライン10の第2焼入装置14と、第2ライン20の第2焼入装置24との間に配置されており、フレーム9の内部空間のうち、第1ライン10の第2焼入装置14が配置された空間と、第2ライン20の第2焼入装置24が配置された空間とを隔てる隔壁としても機能する。
【0040】
図4に示すように、熱処理設備1は、さらに制御装置8を有し、この制御装置8は、高周波電源2、第1整合盤3、第2整合盤4、電力供給先切替器5、第1電流供給先切替器6、第2の電流供給先切替器7および搬送ロボット50と電気的に接続されている。
【0041】
制御装置8には、焼入対象のワークの型番毎の加熱(焼入)条件に関するデータが保存されており、熱処理設備1(の第1ライン10および第2ライン20)を稼働させる際には、作業者が図示外の操作盤を操作して熱処理対象のワークの型番を選択することにより、ワークの型番に応じた焼入条件に関する制御信号が制御装置8から高周波電源2、第1整合盤3および第2整合盤4に対して出力される(
図4中の破線矢印参照)。そして、高周波電源2は、制御装置8から出力された制御信号に基づき、所定量の高周波電力を所定時間出力し、整合盤3,4は、制御装置8から出力された制御信号に基づき、例えばトランスと電気的に接続されるコンデンサ数を増減させて所定量の共振電流を発生させる。
【0042】
また、熱処理設備1の稼働中、制御装置8は、
図4中に破線矢印で示すように、高周波電源2から出力される高周波電力の供給先、第1整合盤3で発生した共振電流の供給先および第2整合盤4で発生した共振電流の供給先に関する制御信号を、それぞれ、電力供給先切替器5、第1の電流供給先切替器6および第2の電流供給先切替器7に対して所定のタイミングで出力する。さらに、制御装置8には搬送ロボット50の動作態様に関するプログラムが保存されており、搬送ロボット50は、制御装置8から出力される制御信号(
図4中の破線矢印参照)に基づいて動作する。
【0043】
以下、以上の構成を有する高周波熱処理設備1の稼働(運転)手順を説明する。
【0044】
[第1ステップ:第1ワークの焼入および第2ワークの焼入準備]
まず、第1ライン10を稼働させ、搬入装置30によって次々に搬送されてくる第1ワークW1としての外側継手部材100に対して順次高周波焼入を施す。このとき、制御装置8は、第1整合盤3、第2整合盤4、第1の電流供給先切替器6、第2の電流供給先切替器7および搬送ロボット50のそれぞれに対して、以下のような制御信号を出力する。
・第1整合盤3:第1ワークW1のカップ部101の焼入条件に応じた制御信号。
・第2整合盤4:第1ワークW1の軸部102の焼入条件に応じた制御信号。
・第1電流供給先切替器6:第1整合盤3と第1焼入装置11の加熱部12とを電気的に接続する(第1整合盤3で生じた共振電流の供給先を加熱部12とする)制御信号。
・第2電流供給先切替器7:第2整合盤4と第2焼入装置14の加熱部15とを電気的に接続する(第2整合盤4で生じた共振電流の供給先を加熱部15とする)制御信号。
・搬送ロボット50:搬入装置30の下流端→第1焼入装置11のワーク受け渡し位置11a(
図2参照)→第2焼入装置14のワーク受け渡し位置14a(
図2参照)→搬出装置40の上流端を1サイクル動作とする制御信号。
【0045】
また、このとき、制御装置8は、第1ワークW1が第1焼入装置11に投入されるタイミングに合わせ、高周波電源2および電力供給先切替器5のそれぞれに対して、第1ワークW1のカップ部101の焼入条件に応じた制御信号、および高周波電源2と第1整合盤3(の共振回路)とを電気的に接続させる制御信号を出力すると共に、第1ワークW1が第2焼入装置14に投入されるタイミングに合わせて、高周波電源2および電力供給先切替器5のそれぞれに対して、第1ワークW1の軸部102の焼入条件に応じた制御信号、および高周波電源2と第2整合盤4(の共振回路)とを電気的に接続させる制御信号を出力する。
【0046】
上記態様で制御装置8から制御信号が出力されることにより第1ライン10が稼働している間、高周波電源2と、第2ライン20に設けられた2つの加熱部22,25とは電気的に接続されていないことから、第2ライン20においては、第2ワークW2としての外側継手部材100の要焼入領域の形状に対応した加熱コイルを加熱部22,25にセットする、などといった段取作業を実施する。
【0047】
なお、前述のとおり、第1ライン10の第1焼入装置11と第2ライン20の第1焼入装置21との間、および第1ライン10の第2焼入装置14と第2ライン20の第2焼入装置24との間には、それぞれ、隔壁として機能する第1電流供給先切替器6および第2電流供給先切替器7が配置されていることから、第2ライン20で段取作業を実施する作業者の安全性はある程度確保されている。
【0048】
しかしながら、焼入完了済の第1ワークW1は、搬送ロボット50によって、第2ライン20を構成する第1焼入装置21と第2焼入装置24との間を通過するようにして搬出装置40に搬送されることから、段取作業中の作業者が搬送ロボット50と接触(衝突)する、焼入完了済の第1ワークW1に付着した高温の冷却液が段取作業中の作業者に飛散する、などといった事態が生じる可能性がある。そのため、本実施形態の熱処理設備1には、第1焼入装置11,21と搬送ロボット50との間、および第2焼入装置21,24と搬送ロボット50との間に可動式の隔壁60をそれぞれ設けている。これにより、第1ライン10と第2ライン20の何れか一方のラインの稼働中に他方のラインで段取作業等を実施する際の作業者の安全性が確保されるようになっている。
【0049】
[第2ステップ:第2ワークの試焼入(焼入サンプルの作製)]
上記態様で複数の第1ワークW1に対して順次焼入処理を施している最中に、第2ライン20における段取作業が完了すると、第1ライン10を一時的に停止(第1ワークW1に対する高周波焼入を一時的に中断)する一方、第2ライン20を一時的に稼働させ、第2ワークW2の試焼入(焼入サンプルの作製)を行う。このとき、制御装置8は、第1整合盤3、第2整合盤4、第1の電流供給先切替器6、第2の電流供給先切替器7および搬送ロボット50のそれぞれに対して、以下のような制御信号を出力する。
・第1整合盤3:第2ワークW2のカップ部101の焼入条件に応じた制御信号。
・第2整合盤4:第2ワークW2の軸部102の焼入条件に応じた制御信号。
・第1電流供給先切替器6:第1整合盤3と第1焼入装置21の加熱部22とを電気的に接続する(第1整合盤3で生じた共振電流の供給先を加熱部22とする)制御信号。
・第2電流供給先切替器7:第2整合盤4と第2焼入装置24の加熱部25とを電気的に接続する(第2整合盤4で生じた共振電流の供給先を加熱部25とする)制御信号。
・搬送ロボット50:搬入装置30の下流端→第1焼入装置21のワーク受け渡し位置21a(
図2参照)→第2焼入装置24のワーク受け渡し位置24a(
図2参照)→搬出装置40の上流端を1サイクル動作とする制御信号。
【0050】
また、このとき、制御装置8は、第2ワークW2が第1焼入装置21に投入されるタイミングに合わせて、高周波電源2および電力供給先切替器5のそれぞれに対して、第2ワークW2のカップ部101の焼入条件に応じた制御信号、および高周波電源2と第1整合盤3とを電気的に接続させる制御信号を出力すると共に、第2ワークW2が第2焼入装置24に投入されるタイミングに併せて、高周波電源2および電力供給先切替器5のそれぞれに対して、第2ワークW2の軸部102の焼入条件に応じた制御信号、および高周波電源2と第2整合盤4とを電気的に接続させる制御信号を出力する。
【0051】
[第3ステップ:第1ワークの焼入および第2ワークの焼入サンプルの品質検査]
前述した第2ステップにおいて、第2ワークW2の焼入サンプルの作製が完了すると、第2ライン20を停止する一方、第1ライン10を再稼働させて第1ワークW1に対する高周波焼入を再開する。このときの制御装置8からの制御信号の出力態様は、上述した第1ステップと同様である。第1ワークW1に対する高周波焼入の再開後には、第2ワークW2の焼入サンプルの焼入深さ(硬化層Hの厚さ)や表面硬度等を測定すると共に、硬化層Hの金属組織を顕微鏡で観察する、などといった品質検査としての破壊検査を実施する。品質検査の結果、第2ワークW2の焼入サンプルに所望の硬化層Hが形成されていなければ、焼入条件を適宜修正した上で上記の第2ステップおよび当該第3ステップを再度実行する。
【0052】
[第4ステップ:第1ワークの焼入終了および第2ワークの焼入開始]
全ての第1ワークW1に対する高周波焼入が終了すると、第1ライン10を停止する一方、第2ライン20を稼働させて第2ワークW2に対する高周波焼入を開始する。このときの制御装置8からの制御信号の出力態様は、上述した第2ステップと同様である。
【0053】
[第5ステップ:第2ワークの焼入および次型番の段取作業]
第2ワークW2に対する高周波焼入が開始された後、第1ライン10においては、両焼入装置11,14の加熱部12,15に取り付けていた加熱コイルの取り外し作業や、当該熱処理設備1に次に投入されるワーク(例えば、第2ワークW2とは形状・型番が異なる外側継手部材100)の形状に対応した加熱コイルを加熱部12,15に取り付ける作業、などを含む、次型番の段取作業が実施される。
【0054】
以降、以上で説明した第1ステップ〜第5ステップが順に実行されることにより、第2ワークW2に対する焼入が完了すると、第1ライン10を用いて次型番の外側継手部材100に対して高周波焼入を施す。
【0055】
以上で説明したように、本発明に係る熱処理設備1によれば、熱処理設備1の稼働中に制御装置8からの制御信号の出力先を適宜切り替えることにより、第1ライン10と第2ライン20の何れか一方のラインでワークに対して高周波焼入が施されている間に、他方のラインにおいて、焼入中のワークとは形状が異なるワーク(当該熱処理設備1に投入される次型番のワーク)に高周波焼入を施すための加熱コイルの設置や焼入条件の設定などを含むいわゆる段取作業、さらには、次型番のワークの焼入サンプルの作製および品質検査を実行することができる。この場合、上記一方のラインでのワークに対する高周波焼入が完了すると、次型番のワークに対する高周波焼入にスムーズに移行することが可能となるので、熱処理設備1全体としての設備稼働率を高めることができる。
【0056】
また、焼入サンプルの品質検査として、いわゆる破壊検査を実行しても、当該検査に要する時間がそのまま熱処理設備1のダウンタイムとはならず、破壊検査を実施することによる設備稼働率の大幅な低下を抑制あるいは防止することができる。そのため、品質検査としての破壊検査を適切に実行することができる。従って、ワークに対して適切に高周波焼入を施し得ることに加え、形状(型番)が互いに異なる複数種のワークに対する高周波焼入を効率良く実施することができる。
【0057】
また、高周波電源2が、第1ライン10の両焼入装置11,14に設けられた加熱部12,15と、第2ライン20の両焼入装置21,24に設けられた加熱部22,25とで共用され、第1整合盤3が、第1ライン10の第1焼入装置11に設けられた加熱部12と、第2ライン20の第1焼入装置21に設けられた加熱部22とで共用され、さらには、第2整合盤4が、第1ライン10の第2焼入装置14に設けられた加熱部15と、第2ライン20の第2焼入装置24に設けられた加熱部25とで共用される。そのため、各焼入装置11,12,21,22の加熱部に個別に高周波電源や整合盤を接続する場合に比べ、コンパクトで安価な熱処理設備1を実現することもできる。
【0058】
また、本実施形態の熱処理設備1は、第1ライン10と第2ライン20とを1台のフレーム9内に収容していること、第1ライン10と第2ライン20の間に配置した内部搬送装置としての搬送ロボット50により、第1ライン10と第2ライン20のそれぞれに投入されるワークを搬送するようにしたこと、などにより、一層コンパクトな熱処理設備1を実現することができる。
【0059】
以上では、
図8に示すような等速自在継手の外側継手部材100に高周波焼入を施すにあたり、本発明の第1実施形態に係る高周波熱処理設備1を使用する場合について説明したが、高周波熱処理設備1は、その他のワークに高周波焼入を施す際にも好ましく使用することができる。
【0060】
図5に、本発明の第2実施形態に係る高周波熱処理設備1の上面図を示す。なお、この実施形態は、焼入対象のワークが、車輪用軸受装置のハブ輪と、車輪用軸受装置の外輪との組からなるワークに変更された場合の具体例であり、熱処理設備1の全体構成は、
図1および
図2に示した熱処理設備1と実質的に同一である。すなわち、本実施形態のワーク(第1ワークW11)は、一つの外輪W11aと一つのハブ輪W11bとの組からなり、外輪W11aとハブ輪W11bとは対をなすかたちで熱処理設備1内に搬入される。
【0061】
ここで、
図6に基づき、車輪用軸受装置の一例を説明する。
図6に示すように、車輪用軸受装置200は、それぞれが筒状をなすハブ輪201、外輪202および内方部材203と、二列に配置された複数の転動体(ボール)204と、ボール204を保持する保持器205とを備える。ハブ輪201は、車輪取付用のフランジ部201aと、二列に配置されたボール204のうち、一方の列のボール204が転動する内側軌道面201bとを有し、内側軌道面201bを含む外径側表層部に硬化層H(
図6中、クロスハッチングで示す)が形成されている。また、外輪202は、ハブ輪201の内側軌道面201b(および内方部材203の外径面に設けられた内側軌道面)に対向する外側軌道面202aを有し、外側軌道面202aを含む内径側表層部に硬化層Hが形成されている。そして、
図5に示す高周波熱処理設備1は、
図6に示すハブ輪201および外輪202のそれぞれに対応するハブ輪W11bおよび外輪W11aに上記の硬化層Hを形成するために使用される。
【0062】
図5に示すように、搬入装置30の下流端に到達した外輪W11aは、搬送ロボット50によって第1ライン10の第1焼入装置11(のワーク受け渡し位置11a)→搬出装置40の順に搬送され、第1焼入装置11に投入された外輪W11aの内径面(外側軌道面)に高周波焼入が施される。また、搬入装置30の下流端に到達したハブ輪W11bは、搬送ロボット50によって第1ライン10の第2焼入装置14(のワーク受け渡し位置14a)→搬出装置40の順に搬送され、第2焼入装置14に投入されたハブ輪W11bの外径面に高周波焼入が施される。この場合における制御装置8から高周波電源2、第1整合盤3、第2整合盤4、第1の電流供給先切替器6、第2の電流供給先切替器7および搬送ロボット50のそれぞれに対する制御信号の出力態様は、前述した第1ステップにおける制御信号の出力態様と基本的に同じである。
【0063】
なお、本実施形態における搬送ロボット50の1サイクル動作は、例えば、搬入装置30の下流端に到達した外輪W11aを第1焼入装置11のワーク受け渡し位置11aに搬送→搬入装置30の下流端に到達したハブ輪W11bを第2焼入装置14のワーク受け渡し位置14aに搬送→第1焼入装置11のワーク受け渡し位置11aに戻された焼入完了済の外輪W11aを搬出装置40に搬送→第2焼入装置14のワーク受け渡し位置14aに戻された焼入完了済のハブ輪W11bを搬送、に設定することができる。係る態様で搬送ロボット50が動作することにより、外輪W11aとハブ輪W11bとの組からなる第1ワークW11に高周波焼入を施す際のサイクルタイムを効果的に減じることができる。
【0064】
そして、上記態様で第1ライン10が稼働している間(外輪W11aおよびハブ輪W11bに高周波焼入を施している間)に、第2ライン20においては、前述した第1実施形態と同様に、次型番(上記外輪W11aとは形状・型番が異なる外輪と、上記ハブ輪W11bとは形状・型番が異なるハブ輪との組からなる第2ワーク)の高周波焼入に必要な段取作業を実施する。以降、前述した第2ステップ〜第5ステップを順に実施する。このようにすれば、それぞれが、一つの外輪と一つのハブ輪との組からなる複数種のワークに対し、効率良く、かつ精度良く高周波焼入を施すことができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態に係る高周波熱処理設備1について説明を行ったが、この高周波熱処理設備1には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことができる。
【0066】
例えば、以上で説明した実施形態では、第1ライン10および第2ライン20のそれぞれに2台の焼入装置を設けたが、第2ライン20は、1台の焼入装置(第1焼入装置21)のみで構成することも可能である。このように、第2ライン20を1台の焼入装置(第1焼入装置21)のみで構成した高周波熱処理設備1’の加熱系統のブロック図を
図7に示す。
図7に示すように、この熱処理設備1’においては、
図1、
図2および
図5に示す熱処理設備1の第2ライン20に設けていた第2焼入装置24が省略されている。そのため、熱処理設備1’の加熱系統においては、熱処理設備1の加熱系統に設けられていた第2電流供給先切替器7が省略されている。
【0067】
このような構成であっても、第1実施形態の熱処理設備1と同様に、設備稼働率が高く、かつワークに対して適切に高周波焼入を施し得る熱処理設備1’を実現することができる。また、高周波電源2が、第1ライン10の両焼入装置11,14に設けられた加熱部12,15と、第2ライン20の第1焼入装置21に設けられた加熱部22とで共用され、第1整合盤3が、第1ライン10の第1焼入装置11に設けられた加熱部12と、第2ライン20の第1焼入装置21に設けられた加熱部22とで共用される。そのため、コンパクトで安価な熱処理設備1’となる。
【0068】
また、内部搬送装置としては、搬送ロボット50に替えて搬送コンベアを用いることも可能である。また、以上で説明した実施形態では特に言及していないが、各焼入装置11,14,21,24は、非酸化性ガス雰囲気下でワークに対して高周波焼入を施す、いわゆる無酸化焼入装置とすることも可能である。このようにすれば、ワーク表面にワークの外観品質を低下させる酸化スケールが生成されるのを可及的に防止することができるので、高品質の焼入完了済ワークを得ることができる。
【0069】
また、以上では、本発明に係る高周波熱処理設備1を、等速自在継手の外側継手部材、あるいは、ハブ輪と外輪との組に高周波焼入処理を施す際に用いる場合を説明したが、本発明に係る高周波熱処理設備1は、多数の型番を有するその他のワーク、すべり軸受、等速自在継手の内側継手部材、転がり軸受の軌道輪などに高周波焼入処理を施す際にも好ましく適用することができる。
【0070】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得る。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。