(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層構造は、前記下部領域と前記第2の磁性層との間に設けられ、前記第2の磁性層の磁化方向に対して平行な固定された磁化方向を有し、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有する第3の磁性層を、さらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、第1の実施形態に係る磁気記憶装置(半導体集積回路装置)の構成を模式的に示した断面図である。
【0011】
図1において、下部領域10には、半導体基板(図示せず)、MOSトランジスタ(図示せず)、層間絶縁膜11及び下部電極(bottom electrode)12等が含まれている。下部電極12は、層間絶縁膜11内に設けられ、MOSトランジスタのソース及びドレインの一方に接続されている。
【0012】
下部領域10上には、磁気抵抗効果素子(magnetoresistive element)用の積層構造(stacked structure)20が設けられている。なお、磁気抵抗効果素子は、MTJ(magnetic tunnel junction)素子とも呼ばれる。
【0013】
積層構造20は、第1の磁性層21、第2の磁性層22、第3の磁性層23、第4の磁性層24、非磁性層(nonmagnetic layer)25、下地層(under layer)26、導電性酸化物層31、中間層(intermediate layer)32、中間層33、及び導電性コンタクト層34を含んでいる。
【0014】
具体的には、下部領域10と導電性酸化物層31との間に第1の磁性層21が設けられ、下部領域10と第1の磁性層21との間に第2の磁性層22が設けられ、第1の磁性層21と第2の磁性層22の間に非磁性層25が設けられ、下部領域10と第2の磁性層22との間に第3の磁性層23が設けられ、下部領域10と第3の磁性層23との間に第4の磁性層24が設けられ、下部領域10と第4の磁性層24との間に下地層26が設けられ、第1の磁性層21と導電性コンタクト層34との間に導電性酸化物層31が設けられ、第2の磁性層22と第3の磁性層23との間に中間層32が設けられ、第3の磁性層23と第4の磁性層24との間に中間層33が設けられている。
【0015】
第1の磁性層21は、磁気抵抗効果素子の記憶層(storage layer)として用いられ、可変の磁化方向(variable magnetization direction)を有している。第1の磁性層21は、少なくとも鉄(Fe)及びボロン(B)を含有している。第1の磁性層21は、鉄(Fe)及びボロン(B)に加えて、さらにコバルト(Co)を含有していてもよい。本実施形態では、第1の磁性層21は、CoFeBで形成されている。
【0016】
第2の磁性層22は、磁気抵抗効果素子の参照層(reference layer)の一部として用いられ、固定された磁化方向(fixed magnetization direction)を有している。第2の磁性層22は、少なくとも鉄(Fe)及びボロン(B)を含有している。第2の磁性層22は、鉄(Fe)及びボロン(B)に加えて、さらにコバルト(Co)を含有していてもよい。本実施形態では、第2の磁性層22は、CoFeBで形成されている。
【0017】
なお、磁化方向が可変とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わることを表し、磁化方向が固定とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わらないことを表す。
【0018】
第3の磁性層23は、磁気抵抗効果素子の参照層の一部として用いられ、第2の磁性層22の磁化方向に対して平行な固定された磁化方向を有している。第3の磁性層23は、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有している。具体的には、第3の磁性層23は、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子(artificial lattice)で形成されている。
【0019】
第4の磁性層24は、磁気抵抗効果素子のシフトキャンセリング層として用いられ、第2の磁性層22の磁化方向に対して反平行(antiparallel)な固定された磁化方向を有している。第4の磁性層24は、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有している。具体的には、第4の磁性層24は、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子で形成されている。第4の磁性層24をシフトキャンセリング層として設けることで、参照層(第2の磁性層22及び第3の磁性層23)から記憶層(第1の磁性層21)に印加される磁界をキャンセルすることが可能である。
【0020】
非磁性層25は、絶縁性を有し、磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層として用いられる。非磁性層25は、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)を含有している。具体的には、非磁性層25は、MgOで形成されている。
【0021】
下地層26は、積層構造20の最下層であり、下部電極12に接続されている。下地層26は、例えば、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)又はタングステン(W)で形成されている。
【0022】
導電性酸化物層31は、磁気抵抗効果素子のキャップ層として用いられ、ボロン(B)を含有した導電性酸化物で形成されている。具体的には、導電性酸化物層31は、ボロン(B)を含有した導電性金属酸化物で形成されている。例えば、導電性酸化物層31には、以下の材料を用いることが可能である。
【0023】
第1に、導電性酸化物層31には、酸素(O)及びボロン(B)に加えて、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した材料を用いることが可能である。具体的には、そのような導電性酸化物層31として、ボロン(B)を含有したITO(indium tin oxide)、或いはボロン(B)を含有したIGZO(indium gallium zinc oxide)を用いることができる。
【0024】
第2に、導電性酸化物層31には、酸素(O)及びボロン(B)に加えて、遷移金属元素(transition metal element)及び希土類金属元素(rare earth metal element)から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した材料を用いることが可能である。この場合、そのような材料に、金属元素がドーピングされていることが好ましい。導電性酸化物層31の主成分が遷移金属元素である場合には、ドーピングされる金属元素として、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、リチウム(Li)等を用いることができる。例えば、導電性酸化物層31として、Nb、Ta、W或いはLiがドーピングされたチタン酸化物を用いることができる。導電性酸化物層31の主成分が希土類金属元素である場合には、ドーピングされる金属元素として、インジウム(In)、リチウム(Li)等を用いることができる。例えば、導電性酸化物層31として、In或いはLiがドーピングされたガドリニウム(Gd)酸化物や、In或いはLiがドーピングされたテルビウム(Tb)酸化物を用いることができる。また、導電性酸化物層31(遷移金属元素及び希土類金属元素から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した導電性酸化物層)として、酸素欠損(oxygen deficiency)を有する酸化物層を用いてもよい。この場合、導電性酸化物層31に含有される酸素の組成比は、ストイキオメトリよりも低い。例えば、高還元性雰囲気中で酸化物の一部を還元したり、酸素の少ない環境で成膜したりすることで、このような酸素欠損を有する導電性酸化物層を形成することが可能である。
【0025】
中間層32は、第2の磁性層22と第3の磁性層23との間の拡散バリア層(diffusion barrier layer)として用いられる。この中間層32には、タンタル(Ta)層等が用いられる。
【0026】
中間層33は、第3の磁性層23と第4の磁性層24との間のSAF結合層(synthetic antiferromagnetic coupling layer)として用いられる。中間層33には、ルテニウム(Ru)層等が用いられる。
【0027】
導電性コンタクト層34は、積層構造20の最上層であり、後述する上部電極(top electrode)53に接続されている。導電性コンタクト層34は、ルテニウム(Ru)及びイリジウム(Ir)から選択された少なくとも1つの元素を含有している。ルテニウム及びイリジウムは、その酸化物が導電性を有しているため、積層構造20の最上層として好適である。
【0028】
上述した積層構造20は保護絶縁膜51で覆われ、保護絶縁膜51は層間絶縁膜52で覆われている。保護絶縁膜51及び層間絶縁膜52に形成されたホール内には、上部電極(top electrode)53が設けられている。
【0029】
上述した磁気抵抗効果素子は、垂直磁化(perpendicular magnetization)を有するSTT(spin transfer torque)型の磁気抵抗効果素子である。すなわち、第1〜第4の磁性層21〜24はいずれも、それぞれの主面に対して垂直な磁化方向を有している。
【0030】
また、上述した磁気抵抗効果素子用の積層構造20の抵抗は、記憶層(第1の磁性層21)の磁化方向が参照層(第2の磁性層22及び第3の磁性層23)の磁化方向に対して平行であるときの方が、記憶層の磁化方向が参照層の磁化方向に対して反平行であるときよりも低い。すなわち、記憶層の磁化方向が参照層の磁化方向に対して平行である場合には、積層構造20は低抵抗状態を示し、記憶層の磁化方向が参照層の磁化方向に対して反平行である場合には、積層構造20は高抵抗状態を示す。したがって、磁気抵抗効果素子は、抵抗状態(低抵抗状態及び高抵抗状態)に応じて2値(binary)データ(0又は1)を記憶することができる。また、磁気抵抗効果素子の抵抗状態は、磁気抵抗効果素子(積層構造20)を流れる書き込み電流の方向に応じて設定することができる。
【0031】
次に、
図1〜
図3を参照して、本実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法について説明する。
【0032】
まず、
図2に示すように、半導体基板(図示せず)上に、MOSトランジスタ(図示せず)、層間絶縁膜11及び下部電極12等を形成する。これにより、下部領域10が形成される。
【0033】
次に、下部領域10上に、磁気抵抗効果素子用の積層膜(stacked film)20aを形成する。以下、積層膜20aの形成方法について説明する。
【0034】
まず、下部領域10上に、スパッタリングによって下地層26を形成する。下地層26の材料には、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)或いはタングステン(W)等を用いる。
【0035】
続いて、下地層26上に、スパッタリングによって、シフトキャンセリング層となる第4の磁性層24を形成する。具体的には、第4の磁性層24として、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子層を形成する。人工格子の周期数は、10〜15周期程度とする。スパッタリングには、アルゴン(Ar)やクリプトン(Kr)等の不活性ガスを用いる。
【0036】
続いて、第4の磁性層24上に、スパッタリングによって中間層33を形成する。具体的には、中間層33として、0.4〜0.8nm程度の厚さを有するルテニウム(Ru)層を形成する。
【0037】
続いて、中間層33上に、スパッタリングによって、参照層の一部となる第3の磁性層23を形成する。具体的には、第3の磁性層23として、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子層を形成する。人工格子の周期数は、3〜5周期程度とする。
【0038】
続いて、第3の磁性層23上に、スパッタリングによって中間層32を形成する。具体的には、中間層32としてタンタル(Ta)層を形成する。
【0039】
続いて、中間層32上に、スパッタリングによって、参照層の一部となる第2の磁性層22を形成する。具体的には、第2の磁性層22として、1.0〜1.5nm程度の厚さを有するCoFeB層を形成する。
【0040】
続いて、第2の磁性層22上に、スパッタリングによって、トンネルバリア層となる非磁性層25を形成する。具体的には、非磁性層25として、1.0nm程度の厚さを有するMgO層を形成する。
【0041】
続いて、非磁性層25上に、スパッタリングによって、記憶層となる第1の磁性層21を形成する。具体的には、第1の磁性層21として、1.0〜1.5nm程度の厚さを有するCoFeB層を形成する。
【0042】
続いて、第1の磁性層21上に、スパッタリングによって、キャップ層となる導電性酸化物層(導電性金属酸化物層)31を形成する。具体的には、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した導電性酸化物層31を形成する。例えば、導電性酸化物層31として、ITO層或いはIGZO層を形成する。或いは、導電性酸化物層31として、金属元素(Nb、Ta、W、Li等)がドーピングされた遷移金属酸化物層や、金属元素(In、Li等)がドーピングされた希土類金属酸化物層を形成してもよい。導電性酸化物層31の形成方法としては、酸化物ターゲットを用いる方法や、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリングによる方法があげられる。
【0043】
続いて、熱処理を行う。具体的には、RTA(rapid thermal annealing)により、真空中において、350〜450℃程度の温度で、30〜180秒程度の熱処理を行う。この熱処理により、第1及び第2の磁性層等が結晶化される。また、第1の磁性層21に含有されているボロン(B)が導電性酸化物層31中へ拡散する。その結果、ボロン(B)を含有した導電性酸化物層31が得られる。第1の磁性層21に隣接して導電性酸化物層31が形成されているため、第1の磁性層21に含有されているボロン(B)を効率的に導電性酸化物層31中へ拡散させることができる。
【0044】
続いて、ボロン(B)を含有した導電性酸化物層31上に導電性コンタクト層34を形成する。具体的には、スパッタリングによって、導電性コンタクト層34としてルテニウム(Ru)層或いはイリジウム(Ir)層を形成する。
【0045】
以上のようにして、下部領域10上に、磁気抵抗効果素子用の積層膜20aが形成される。
【0046】
次に、積層膜20aの導電性コンタクト層34上に、ハードマスク61を形成する。具体的には、まず、導電性コンタクト層34上に、シリコン酸化膜或いはシリコン窒化膜を用いたハードマスク膜を形成する。続いて、ハードマスク膜上にレジストパターンを形成する。さらに、レジストパターンをマスクとして用いてハードマスク膜をパターニングすることで、ハードマスク61が形成される。
【0047】
次に、
図3に示すように、
図2に示したハードマスク61をマスクとして用いて積層膜20aをエッチングする。具体的には、IBE(ion beam etching)によって積層膜20aをエッチングする。このとき、ハードマスク61もエッチングされる。本工程により、積層構造20が形成される。
【0048】
次に、
図1に示すように、積層構造20を覆う保護絶縁膜51を形成する。保護絶縁膜51にはシリコン窒化膜を用いる。続いて、保護絶縁膜51を覆う層間絶縁膜52を形成する。層間絶縁膜52にはシリコン酸化膜を用いる。続いて、保護絶縁膜51及び層間絶縁膜52に、導電性コンタクト層34に達するホールを形成する。さらに、ホール内に上部電極53を形成することで、
図1に示すような磁気記憶装置が得られる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、積層構造20のキャップ層として導電性酸化物層31を用いている。すなわち、本実施形態では、記憶層として機能する第1の磁性層21上に導電性酸化物層31を形成している。そのため、熱処理の際に、第1の磁性層21に含有されているボロン(B)を導電性酸化物層31によって効率的に吸収することができ、第1の磁性層21の結晶性を向上させることができる。また、導電性酸化物層31では、導電性酸化物層31に含有されている金属元素等の所定元素と酸素とが強く結合しているため、所定元素が導電性酸化物層31から第1の磁性層21に拡散することを防止することができる。そのため、所定元素に起因する第1の磁性層21の劣化を抑制することができる。したがって、本実施形態では、第1の磁性層21の特性を向上させることができ、優れた特性を有する磁気抵抗効果素子を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、第1の磁性層21に含有されているボロン(B)が導電性酸化物層31によって吸収されるため、第1の磁性層21の側面へのボロン(B)の拡散量を減少させることができる。そのため、第1の磁性層21の側面近傍にボロン(B)が蓄積することを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、積層構造20のキャップ層として導電性酸化物層31を用いるため、上部電極53と第1の磁性層21との間の電気的な接続を得るためにキャップ層にホールを形成しなくてもよい。すなわち、キャップ層として絶縁性材料層を用いた場合には、上部電極53と第1の磁性層21との間の電気的な接続を得るために絶縁性材料層にホールを形成しなければならない。本実施形態では、そのようなホールを設ける必要がなく、上部電極53と第1の磁性層21との間の電気的な接続を、導電性酸化物層31を介して確実に且つ容易に得ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、積層構造20のキャップ層として導電性酸化物層31を用いるため、積層膜20aをエッチングして積層構造20を形成するときに、導電性酸化物層31によって高いエッチング耐性を得ることが可能である。そのため、エッチングの際に導電性酸化物層31の一部(例えば上部コーナー部分)が露出しても、高いエッチング耐性を有する導電性酸化物層31によって第1の磁性層21等を保護することができ、積層構造20を的確に形成することができる。特に、IBEでは、導電性酸化物のエッチング速度が金属のエッチング速度よりも小さいため、このような効果が顕著である。
【0053】
また、本実施形態では、導電性酸化物層31上に、ルテニウム(Ru)及びイリジウム(Ir)から選択された少なくとも1つの元素を含有する導電性コンタクト層34を設けている。ルテニウム及びイリジウムは、その酸化物が導電性を有している。そのため、導電性コンタクト層34の表面が露出して酸化されたとしても、導電性コンタクト層34の導電性を維持することができる。したがって、上部電極53と第1の磁性層21との間の電気的な接続を確実に得ることができる。
【0054】
(実施形態2)
図4は、第2の実施形態に係る磁気記憶装置(半導体集積回路装置)の構成を模式的に示した断面図である。なお、基本的な構成は第1の実施形態と類似しているため、第1の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0055】
下部領域10の構造は第1の実施形態と同様である。下部領域10上には、磁気抵抗効果素子用の積層構造20が設けられている。
【0056】
積層構造20は、第1の磁性層21、第2の磁性層22、第3の磁性層23、第4の磁性層24、非磁性層25、下地層26、導電性酸化物層41、第2の導電性酸化物層42、及び中間層43を含んでいる。
【0057】
具体的には、下部領域10と導電性酸化物層41との間に第1の磁性層21が設けられ、導電性酸化物層41と第1の磁性層21との間に第2の磁性層22が設けられ、第1の磁性層21と第2の磁性層22との間に非磁性層25が設けられ、第2の磁性層22と第3の磁性層23との間に導電性酸化物層41が設けられ、導電性酸化物層41と第2の導電性酸化物層42との間で且つ導電性酸化物層41と第4の磁性層24との間に第3の磁性層23が設けられ、第3の磁性層23と第2の導電性酸化物層42との間に第4の磁性層24が設けられ、下部領域10と第1の磁性層21との間に下地層26が設けられ、第3の磁性層23と第4の磁性層24との間に中間層43が設けられている。
【0058】
第1の磁性層21、第2の磁性層22、第3の磁性層23、第4の磁性層24、非磁性層25及び下地層26の機能及び構成材料は、第1の実施形態と同様である。すなわち、第1の磁性層21は記憶層として用いられ、第2の磁性層22は参照層の一部として用いられ、第3の磁性層23は参照層の一部として用いられ、第4の磁性層24はシフトキャンセリング層として用いられ、非磁性層25はトンネルバリア層として用いられる。
【0059】
導電性酸化物層41は、第2の磁性層22と第3の磁性層23との間に設けられ、ボロン(B)を含有した導電性酸化物で形成されている。具体的には、導電性酸化物層41は、ボロン(B)を含有した導電性金属酸化物で形成されている。この導電性酸化物層41には、第1の実施形態の導電性酸化物層31に用いられる材料と同様の材料を用いることが可能である。
【0060】
第2の導電性酸化物層42は、磁気抵抗効果素子のキャップ層として用いられ、ボロン(B)を含有した導電性酸化物で形成されている。具体的には、第2の導電性酸化物層42は、ボロン(B)を含有した導電性金属酸化物で形成されている。この第2の導電性酸化物層42にも、第1の実施形態の導電性酸化物層31に用いられる材料と同様の材料を用いることが可能である。
【0061】
中間層43は、第3の磁性層23と第4の磁性層24との間のSAF結合層として用いられる。中間層43には、第1の実施形態の中間層33に用いられる材料と同様の材料を用いることが可能である。
【0062】
上述した積層構造20は保護絶縁膜51で覆われ、保護絶縁膜51は層間絶縁膜52で覆われている。保護絶縁膜51及び層間絶縁膜52に形成されたホール内には、上部電極53が設けられている。
【0063】
上述した磁気記憶装置における磁気抵抗効果素子の基本的な機能及び基本的な動作は、第1の実施形態の磁気抵抗効果素子と同様である。
【0064】
次に、
図4〜
図7を参照して、本実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法について説明する。
【0065】
まず、
図5に示すように、半導体基板(図示せず)上に、MOSトランジスタ(図示せず)、層間絶縁膜11及び下部電極12等を形成する。これにより、下部領域10が形成される。
【0066】
次に、下部領域10上に、磁気抵抗効果素子用の積層膜20b1を形成する。以下、積層膜20b1の形成方法について説明する。
【0067】
まず、下部領域10上に、スパッタリングによって下地層26を形成する。下地層26の材料には、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)或いはタングステン(W)等を用いる。
【0068】
続いて、下地層26上に、スパッタリングによって、記憶層となる第1の磁性層21を形成する。具体的には、第1の磁性層21として、1.0〜1.5nm程度の厚さを有するCoFeB層を形成する。
【0069】
続いて、第1の磁性層21上に、スパッタリングによって、トンネルバリア層となる非磁性層25を形成する。具体的には、非磁性層25として、1.0nm程度の厚さを有するMgO層を形成する。
【0070】
続いて、非磁性層25上に、スパッタリングによって、参照層の一部となる第2の磁性層22を形成する。具体的には、第2の磁性層22として、1.0〜3.0nm程度の厚さを有するCoFeB層を形成する。
【0071】
続いて、第2の磁性層22上に、スパッタリングによって、導電性酸化物層(導電性金属酸化物層)41を形成する。具体的には、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した導電性酸化物層41を形成する。例えば、導電性酸化物層31として、ITO層或いはIGZO層を形成する。或いは、導電性酸化物層31として、金属元素(Nb、Ta、W、Li等)がドーピングされた遷移金属酸化物層や、金属元素(In、Li等)がドーピングされた希土類金属酸化物層を形成してもよい。
【0072】
続いて、熱処理を行う。具体的には、RTAにより、真空中において、350〜450℃程度の温度で、30〜180秒程度の熱処理を行う。この熱処理により、第1及び第2の磁性層等が結晶化される。また、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)が導電性酸化物層41中へ拡散する。その結果、ボロン(B)を含有した導電性酸化物層41が得られる。第2の磁性層22に隣接して導電性酸化物層41が形成されているため、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)を効率的に導電性酸化物層41中へ拡散させることができる。
【0073】
次に、
図6に示すように、ボロン(B)を含有した導電性酸化物層41を、ドライエッチングによって薄くする。
【0074】
続いて、薄くされた導電性酸化物層41上に、スパッタリングによって、参照層の一部となる第3の磁性層23を形成する。具体的には、第3の磁性層23として、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子層を形成する。人工格子の周期数は、3〜5周期程度とする。このとき、第2の磁性層22と第3の磁性層23との磁気的結合(magnetic coupling)が十分に得られるようにする。すなわち、第2の磁性層22と第3の磁性層23との磁気的結合が十分に得られるように、導電性酸化物層41の厚さを十分に薄くしておく。
【0075】
続いて、第3の磁性層23上に、スパッタリングによって中間層43を形成する。具体的には、中間層43として、0.4〜0.8nm程度の厚さを有するルテニウム(Ru)層を形成する。
【0076】
続いて、中間層43上に、スパッタリングによって、シフトキャンセリング層となる第4の磁性層24を形成する。具体的には、第4の磁性層24として、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子層を形成する。人工格子の周期数は、10〜15周期程度とする。
【0077】
続いて、第4の磁性層24上に、スパッタリングによって、キャップ層となる第2の導電性酸化物層(導電性金属酸化物層)42を形成する。具体的には、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した導電性酸化物層42を形成する。例えば、導電性酸化物層42として、ITO層或いはIGZO層を形成する。或いは、導電性酸化物層42として、金属元素(Nb、Ta、W、Li等)がドーピングされた遷移金属酸化物層や、金属元素(In、Li等)がドーピングされた希土類金属酸化物層を形成してもよい。なお、以後のプロセスにおいて、先に述べた素子の側面上部のエッチングに起因する素子へのダメージが許容できるようであれば、導電性酸化物層42の代わりにタンタル(Ta)層或いはルテニウム(Ru)層といった金属層を用いてもよい。
【0078】
以上のようにして、下部領域10上に、磁気抵抗効果素子用の積層膜20b2が形成される。
【0079】
次に、積層膜20b2の第2の導電性酸化物層42上に、ハードマスク61を形成する。ハードマスク61の具体的な材料及び形成方法は、第1の実施形態と同様である。
【0080】
次に、
図7に示すように、
図6に示したハードマスク61をマスクとして用いて積層膜20b2をエッチングする。具体的には、IBEによって積層膜20b2をエッチングする。このとき、ハードマスク61もエッチングされる。本工程により、積層構造20が形成される。
【0081】
次に、
図4に示すように、第1の実施形態と同様にして、積層構造20を覆う保護絶縁膜51を形成し、保護絶縁膜51を覆う層間絶縁膜52を形成する。続いて、保護絶縁膜51及び層間絶縁膜52に、第2の導電性酸化物層42に達するホールを形成する。さらに、ホール内に上部電極53を形成することで、
図4に示すような磁気記憶装置が得られる。なお、ホール内に上部電極53を形成する代わりに、CMP或いはドライエッチバックによって素子の上面を露出させ、露出した上面に上部電極53をコンタクトさせるようにしてもよい。
【0082】
以上のように、本実施形態では、参照層の一部として機能する第2の磁性層22上に導電性酸化物層41を形成している。そのため、熱処理の際に、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)を導電性酸化物層41によって効率的に吸収することができ、第2の磁性層22の結晶性を向上させることができる。また、導電性酸化物層41では、導電性酸化物層41に含有されている金属元素等の所定元素と酸素とが強く結合しているため、所定元素が導電性酸化物層41から第2の磁性層22に拡散することを防止することができる。そのため、所定元素に起因する第2の磁性層22の劣化を抑制することができる。したがって、本実施形態では、第2の磁性層22の特性を向上させることができ、優れた特性を有する磁気抵抗効果素子を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態では、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)が導電性酸化物層41によって吸収されるため、第2の磁性層22の側面へのボロン(B)の拡散量を減少させることができる。そのため、第2の磁性層22の側面近傍にボロン(B)が蓄積することを抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態では、積層構造20のキャップ層として第2の導電性酸化物層42を用いるため、第1の実施形態と同様に、キャップ層(第2の導電性酸化物層42)にホールを設ける必要がなく、上部電極53と第4の磁性層24との間の電気的な接続を、第2の導電性酸化物層42を介して確実に且つ容易に得ることができる。
【0085】
また、本実施形態では、積層構造20のキャップ層として第2の導電性酸化物層42を用いるため、積層膜20b2をエッチングして積層構造20を形成するときに、第2の導電性酸化物層42によって高いエッチング耐性を得ることが可能である。そのため、第1の実施形態と同様に、積層構造20を的確に形成することができる。
【0086】
なお、本実施形態において、下地層26に導電性酸化物層を用い、第1の磁性層21からボロン(B)を吸収するようにしてもよい。これにより、第1の磁性層21の結晶性を向上させることが可能となる。
【0087】
(実施形態3)
図8は、第3の実施形態に係る磁気記憶装置(半導体集積回路装置)の構成を模式的に示した断面図である。なお、基本的な構成は第1及び第2の実施形態と類似しているため、第1及び第2の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0088】
下部領域10の構造は第1の実施形態と同様である。下部領域10上には、磁気抵抗効果素子用の積層構造20が設けられている。
【0089】
積層構造20は、第1の磁性層21、第2の磁性層22、第3の磁性層23、第4の磁性層24、非磁性層25、下地層26、導電性酸化物層41、第2の導電性酸化物層42、及び中間層44を含んでいる。
【0090】
具体的には、下部領域10と導電性酸化物層41との間に第1の磁性層21が設けられ、導電性酸化物層41と第1の磁性層21との間に第2の磁性層22が設けられ、第1の磁性層21と第2の磁性層22との間に非磁性層25が設けられ、第2の磁性層22と第3の磁性層23との間に導電性酸化物層41が設けられ、導電性酸化物層41と第2の導電性酸化物層42との間に第3の磁性層23が設けられ、下部領域10と第1の磁性層21との間に第4の磁性層24が設けられ、下部領域10と第4の磁性層24との間に下地層26が設けられ、第1の磁性層21と第4の磁性層24との間に中間層44が設けられている。
【0091】
第1の磁性層21、第2の磁性層22、第3の磁性層23、第4の磁性層24、非磁性層25及び下地層26の機能及び構成材料は、第1の実施形態と同様である。すなわち、第1の磁性層21は記憶層として用いられ、第2の磁性層22は参照層の一部として用いられ、第3の磁性層23は参照層の一部として用いられ、第4の磁性層24はシフトキャンセリング層として用いられ、非磁性層25はトンネルバリア層として用いられる。
【0092】
導電性酸化物層41は、第2の磁性層22と第3の磁性層23との間に設けられ、ボロン(B)を含有した導電性酸化物で形成されている。具体的には、導電性酸化物層41は、ボロン(B)を含有した導電性金属酸化物で形成されている。この導電性酸化物層41には、第1の実施形態の導電性酸化物層31に用いられる材料と同様の材料を用いることが可能である。
【0093】
第2の導電性酸化物層42は、磁気抵抗効果素子のキャップ層として用いられ、ボロン(B)を含有した導電性酸化物で形成されている。具体的には、第2の導電性酸化物層42は、ボロン(B)を含有した導電性金属酸化物で形成されている。この第2の導電性酸化物層42にも、第1の実施形態の導電性酸化物層31に用いられる材料と同様の材料を用いることが可能である。
【0094】
中間層44は、第1の磁性層21と第4の磁性層24との間の拡散バリア層として用いられる。この中間層44には、タンタル(Ta)層等が用いられる。
【0095】
上述した積層構造20は保護絶縁膜51で覆われ、保護絶縁膜51は層間絶縁膜52で覆われている。保護絶縁膜51及び層間絶縁膜52に形成されたホール内には、上部電極53が設けられている。
【0096】
上述した磁気記憶装置における磁気抵抗効果素子の基本的な機能及び基本的な動作は、第1の実施形態の磁気抵抗効果素子と同様である。
【0097】
次に、
図8〜
図11を参照して、本実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法について説明する。
【0098】
まず、
図9に示すように、半導体基板(図示せず)上に、MOSトランジスタ(図示せず)、層間絶縁膜11及び下部電極12等を形成する。これにより、下部領域10が形成される。
【0099】
次に、下部領域10上に、磁気抵抗効果素子用の積層膜20c1を形成する。以下、積層膜20c1の形成方法について説明する。
【0100】
まず、下部領域10上に、スパッタリングによって下地層26を形成する。下地層26の材料には、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)或いはタングステン(W)等を用いる。
【0101】
続いて、下地層26上に、スパッタリングによって、シフトキャンセリング層となる第4の磁性層24を形成する。具体的には、第4の磁性層24として、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子層を形成する。人工格子の周期数は、10周期程度とする。
【0102】
続いて、第4の磁性層24上に、スパッタリングによって中間層44を形成する。具体的には、中間層44としてタンタル(Ta)層を形成する。
【0103】
続いて、中間層44上に、スパッタリングによって、記憶層となる第1の磁性層21を形成する。具体的には、第1の磁性層21として、1.0〜1.5nm程度の厚さを有するCoFeB層を形成する。
【0104】
続いて、第1の磁性層21上に、スパッタリングによって、トンネルバリア層となる非磁性層25を形成する。具体的には、非磁性層25として、1.0nm程度の厚さを有するMgO層を形成する。
【0105】
続いて、非磁性層25上に、スパッタリングによって、参照層の一部となる第2の磁性層22を形成する。具体的には、第2の磁性層22として、1.0〜1.5nm程度の厚さを有するCoFeB層を形成する。
【0106】
続いて、第2の磁性層22上に、スパッタリングによって、導電性酸化物層(導電性金属酸化物層)41を形成する。具体的には、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した導電性酸化物層41を形成する。例えば、導電性酸化物層41として、ITO層或いはIGZO層を形成する。或いは、導電性酸化物層41として、金属元素(Nb、Ta、W、Li等)がドーピングされた遷移金属酸化物層や、金属元素(In、Li等)がドーピングされた希土類金属酸化物層を形成してもよい。
【0107】
続いて、熱処理を行う。具体的には、RTAにより、真空中において、350〜450℃程度の温度で、30〜180秒程度の熱処理を行う。この熱処理により、第1及び第2の磁性層等が結晶化される。また、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)が導電性酸化物層41中へ拡散する。その結果、ボロン(B)を含有した導電性酸化物層41が得られる。第2の磁性層22に隣接して導電性酸化物層41が形成されているため、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)を効率的に導電性酸化物層41中へ拡散させることができる。
【0108】
次に、
図10に示すように、ボロン(B)を含有した導電性酸化物層41を、ドライエッチングによって薄くする。
【0109】
続いて、薄くされた導電性酸化物層41上に、スパッタリングによって、参照層の一部となる第3の磁性層23を形成する。具体的には、第3の磁性層23として、Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子層を形成する。人工格子の周期数は、3〜5周期程度とする。このとき、第2の磁性層22と第3の磁性層23との磁気的結合が十分に得られるようにする。すなわち、第2の磁性層22と第3の磁性層23との磁気的結合が十分に得られるように、導電性酸化物層41の厚さを十分に薄くしておく。
【0110】
続いて、第3の磁性層23上に、スパッタリングによって、キャップ層となる第2の導電性酸化物層(導電性金属酸化物層)42を形成する。具体的には、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素を含有した第2の導電性酸化物層42を形成する。例えば、第2の導電性酸化物層42として、ITO層或いはIGZO層を形成する。或いは、第2の導電性酸化物層42として、金属元素(Nb、Ta、W、Li等)がドーピングされた遷移金属酸化物層や、金属元素(In、Li等)がドーピングされた希土類金属酸化物層を形成してもよい。
【0111】
以上のようにして、下部領域10上に、磁気抵抗効果素子用の積層膜20c2が形成される。
【0112】
次に、積層膜20c2の第2の導電性酸化物層42上に、ハードマスク61を形成する。ハードマスク61の具体的な材料及び形成方法は、第1の実施形態と同様である。
【0113】
なお、第3の磁性層23上にSAF結合層として中間層(Ru層等)を形成し、この中間層上にシフトキャンセリング層として第5の磁性層(Co/Pt、Co/Ni或いはCo/Pd等の人工格子層)を形成してもよい。この場合には、第5の磁性層上に第2の導電性酸化物層42が形成される。
【0114】
次に、
図11に示すように、
図10に示したハードマスク61をマスクとして用いて積層膜20c2をエッチングする。具体的には、IBEによって積層膜20c2をエッチングする。このとき、ハードマスク61もエッチングされる。本工程により、積層構造20が形成される。
【0115】
次に、
図8に示すように、第1の実施形態と同様にして、積層構造20を覆う保護絶縁膜51を形成し、保護絶縁膜51を覆う層間絶縁膜52を形成する。続いて、保護絶縁膜51及び層間絶縁膜52に、第2の導電性酸化物層42に達するホールを形成する。さらに、ホール内に上部電極53を形成することで、
図8に示すような磁気記憶装置が得られる。
【0116】
以上のように、本実施形態では、参照層の一部として機能する第2の磁性層22上に導電性酸化物層41を形成している。そのため、熱処理の際に、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)を導電性酸化物層41によって効率的に吸収することができ、第2の磁性層22の結晶性を向上させることができる。また、導電性酸化物層41では、導電性酸化物層41に含有されている金属元素等の所定元素と酸素とが強く結合しているため、所定元素が導電性酸化物層41から第2の磁性層22に拡散することを防止することができる。そのため、所定元素に起因する第2の磁性層22の劣化を抑制することができる。したがって、本実施形態では、第2の磁性層22の特性を向上させることができ、優れた特性を有する磁気抵抗効果素子を得ることができる。
【0117】
また、本実施形態では、第2の磁性層22に含有されているボロン(B)が導電性酸化物層41によって吸収されるため、第2の磁性層22の側面へのボロン(B)の拡散量を減少させることができる。そのため、第2の磁性層22の側面近傍にボロン(B)が蓄積することを抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態では、積層構造20のキャップ層として第2の導電性酸化物層42を用いるため、第1の実施形態と同様に、キャップ層(第2の導電性酸化物層42)にホールを設ける必要がなく、上部電極53と第3の磁性層23との間の電気的な接続を、第2の導電性酸化物層42を介して確実に且つ容易に得ることができる。
【0119】
また、本実施形態では、積層構造20のキャップ層として第2の導電性酸化物層42を用いるため、積層膜20c2をエッチングして積層構造20を形成するときに、第2の導電性酸化物層42によって高いエッチング耐性を得ることが可能である。そのため、第1の実施形態と同様に、積層構造20を的確に形成することができる。
【0120】
図12は、上述した第1、第2及び第3の実施形態で示した磁気抵抗効果素子が適用される半導体集積回路装置の一般的な構成の一例を模式的に示した断面図である。
【0121】
半導体基板SUB内に、埋め込みゲート(buried gate)型のMOSトランジスタTRが形成されている。MOSトランジスタTRのゲート電極は、ワード線WLとして用いられる。MOSトランジスタTRのソース/ドレイン領域S/Dの一方には下部電極(bottom electrode)BECが接続され、ソース/ドレイン領域S/Dの他方にはソース線コンタクトSCが接続されている。
【0122】
下部電極BEC上には磁気抵抗効果素子MTJが形成され、磁気抵抗効果素子MTJ上には上部電極(top electrode)TECが形成されている。上部電極TECにはビット線BLが接続されている。ソース線コンタクトSCにはソース線SLが接続されている。
【0123】
上述した第1、第2及び第3の実施形態で説明したような磁気抵抗効果素子を
図12に示したような半導体集積回路装置に適用することで、優れた半導体集積回路装置を得ることができる。
【0124】
以下、上述した実施形態の内容を付記する。
[付記1]
下部領域と、
前記下部領域上に設けられた積層構造と、
を備えた磁気記憶装置であって、
前記積層構造は、
ボロン(B)を含有する導電性酸化物層と、
前記下部領域と前記導電性酸化物層との間に設けられ、可変の磁化方向を有し、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有する第1の磁性層と、
前記下部領域と前記第1の磁性層との間に設けられ、固定された磁化方向を有し、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有する第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた非磁性層と、
を含む
ことを特徴とする磁気記憶装置。
[付記2]
前記積層構造は、前記下部領域と前記第2の磁性層との間に設けられ、前記第2の磁性層の磁化方向に対して平行な固定された磁化方向を有し、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有する第3の磁性層を、さらに含む
ことを特徴とする付記1に記載の磁気記憶装置。
[付記3]
前記積層構造は、前記下部領域と前記第3の磁性層との間に設けられ、前記第2の磁性層の磁化方向に対して反平行な固定された磁化方向を有し、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有する第4の磁性層を、さらに含む
ことを特徴とする付記2に記載の磁気記憶装置。
[付記4]
前記導電性酸化物層は、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの元素を含有する
ことを特徴とする付記1に記載の磁気記憶装置。
[付記5]
前記導電性酸化物層は、遷移金属元素及び希土類金属元素から選択された少なくとも1つの元素を含有する
ことを特徴とする付記1に記載の磁気記憶装置。
[付記6]
前記導電性酸化物層には、所定の金属元素がドープされている
ことを特徴とする付記5に記載の磁気記憶装置。
[付記7]
前記導電性酸化物層に含有される酸素の組成比は、ストイキオメトリよりも低い
ことを特徴とする付記5に記載の磁気記憶装置。
[付記8]
前記積層構造は、ルテニウム(Ru)及びイリジウム(Ir)から選択された少なくとも1つの元素を含有する導電性コンタクト層を、さらに含み、
前記導電性酸化物層は、前記第1の磁性層と前記導電性コンタクト層との間に設けられている
ことを特徴とする付記1に記載の磁気記憶装置。
[付記9]
前記非磁性層は、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)を含有する
ことを特徴とする付記1に記載の磁気記憶装置。
[付記10]
下部領域と、
前記下部領域上に設けられた積層構造と、
を備えた磁気記憶装置であって、
前記積層構造は、
ボロン(B)を含有する導電性酸化物層と、
前記下部領域と前記導電性酸化物層との間に設けられ、可変の磁化方向を有し、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有する第1の磁性層と、
前記導電性酸化物層と前記第1の磁性層との間に設けられ、固定された磁化方向を有し、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有する第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた非磁性層と、
を含む
ことを特徴とする磁気記憶装置。
[付記11]
前記積層構造は、前記第2の磁性層の磁化方向に対して平行な固定された磁化方向を有し、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有する第3の磁性層を、さらに含み、
前記導電性酸化物層は、前記第2の磁性層と前記第3の磁性層との間に設けられている
ことを特徴とする付記10に記載の磁気記憶装置。
[付記12]
前記積層構造は、第2の導電性酸化物層をさらに含み、
前記第3の磁性層は、前記導電性酸化物層と前記第2の導電性酸化物層との間に設けられている
ことを特徴とする付記11に記載の磁気記憶装置。
[付記13]
前記積層構造は、前記第2の磁性層の磁化方向に対して反平行な固定された磁化方向を有し、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有する第4の磁性層を、さらに含み、
前記第3の磁性層は、前記導電性酸化物層と前記第4の磁性層との間に設けられている
ことを特徴とする付記11に記載の磁気記憶装置。
[付記14]
前記積層構造は、第2の導電性酸化物層をさらに含み、
前記第4の磁性層は、前記第3の磁性層と前記第2の導電性酸化物層との間に設けられている
ことを特徴とする付記13に記載の磁気記憶装置。
[付記15]
前記積層構造は、前記下部領域と前記記憶層との間に設けられ、前記第2の磁性層の磁化方向に対して反平行な固定された磁化方向を有し、コバルト(Co)と、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)及びパラジウム(Pd)から選択された少なくとも1つの元素とを含有する第4の磁性層を、さらに含む
ことを特徴とする付記11に記載の磁気記憶装置。
[付記16]
前記導電性酸化物層は、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの元素を含有する
ことを特徴とする付記10に記載の磁気記憶装置。
[付記17]
前記導電性酸化物層は、遷移金属元素及び希土類金属元素から選択された少なくとも1つの元素を含有する
ことを特徴とする付記10に記載の磁気記憶装置。
[付記18]
前記導電性酸化物層には、所定の金属元素がドープされている
ことを特徴とする付記17に記載の磁気記憶装置。
[付記19]
前記導電性酸化物層に含有される酸素の組成比は、ストイキオメトリよりも低い
ことを特徴とする付記17に記載の磁気記憶装置。
[付記20]
前記非磁性層は、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)を含有する
ことを特徴とする付記10に記載の磁気記憶装置。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。