特許第6832841号(P6832841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832841
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/12 20060101AFI20210215BHJP
   B62D 5/12 20060101ALI20210215BHJP
   B62D 11/08 20060101ALI20210215BHJP
   B60K 7/00 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
   B62D61/12
   B62D5/12
   B62D11/08 E
   !B60K7/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-248208(P2017-248208)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-111985(P2019-111985A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭61−500604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/10 − 61/12
B60K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、
少なくとも2個以上の関節を有するように複数のリンクが枢支連結され、且つ、前記走行装置を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の多関節リンク機構と、
前記多関節リンク機構の姿勢を変更可能な駆動操作手段と、が備えられ、
複数の前記リンクのうちの最も前記車両本体に近い箇所に位置する第一リンクが、本体側連結箇所を支点として横軸芯周りで揺動自在に支持され、
前記第一リンクを予め設定されている複数の揺動切り換え位置のいずれかにおいて選択的に固定可能な手動操作式の位置固定手段が備えられ、
前記位置固定手段は、前記第一リンクが、略鉛直姿勢となる縦向き位置と、縦向き位置に対して車体前後方向の内方側に向けて揺動する内向き揺動位置と、縦向き位置に対して車体前後方向の外方側に向けて揺動する外向き揺動位置との夫々において、位置固定可能に構成され、
前記駆動操作手段は、複数の前記リンクのうちの前記第一リンク以外の他のリンクの姿勢を変更する作業車。
【請求項2】
前記多関節リンク機構は、前記他のリンクとして、一端部が前記第一リンクの他端部に横軸芯周りで揺動自在に支持され且つ他端部にて前記走行装置を支持する第二リンクを備えている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記駆動操作手段が、油圧シリンダである請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
前記多関節リンク機構が縦軸芯周りで向き変更可能に前記車両本体に支持され、
前記多関節リンク機構を向き変更操作する旋回操作用の油圧シリンダが備えられている請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、4つの走行車輪を夫々、2つの関節を持ち屈伸操作可能に構成された多関節リンク機構を介して車両本体に支持するとともに、夫々の関節に電動モータと減速用ギア機構とが設けられ、複数の電動モータの駆動力により多関節リンク機構が屈伸駆動可能に構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−142347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成における車輪支持構造は、走行路面に凹凸があってもリンク機構を屈伸させながら車両本体を適正な姿勢に維持して走行することを可能にしたものである。そこで、このような車輪支持構造を、走行路面に凹凸がある作業地で走行する農用の作業車に適用することが考えられる。
【0005】
しかし、上記従来構成では、複数の関節の夫々に駆動用の電動モータと減速用ギア機構等が備えられる構成であり、駆動構造が複雑となり、コスト高を招く不利な面があった。
【0006】
そこで、駆動構造の簡素化を図ることが可能でありながら、凹凸の多い作業地であっても車両本体を適正な姿勢に維持することが可能な作業車が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車の特徴構成は、
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、
少なくとも2個以上の関節を有するように複数のリンクが枢支連結され、且つ、前記走行装置を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の多関節リンク機構と、
前記多関節リンク機構の姿勢を変更可能な駆動操作手段と、が備えられ、
複数の前記リンクのうちの最も前記車両本体に近い箇所に位置する第一リンクが、本体側連結箇所を支点として横軸芯周りで揺動自在に支持され、
前記第一リンクを予め設定されている複数の揺動切り換え位置のいずれかにおいて選択的に固定可能な手動操作式の位置固定手段が備えられ、
前記位置固定手段は、前記第一リンクが、略鉛直姿勢となる縦向き位置と、縦向き位置に対して車体前後方向の内方側に向けて揺動する内向き揺動位置と、縦向き位置に対して車体前後方向の外方側に向けて揺動する外向き揺動位置との夫々において、位置固定可能に構成され、
前記駆動操作手段は、複数の前記リンクのうちの前記第一リンク以外の他のリンクの姿勢を変更する点にある。
【0008】
本発明によれば、車両本体に対して複数の走行装置が多関節リンク機構によって各別に昇降自在に支持される。駆動操作手段によって多関節リンク機構が姿勢を変更することにより、複数の走行装置夫々の車両本体に対する高さ(相対高さ)を変更することができる。つまり、車両本体の左右両側の前後夫々に備えられる走行装置の高さを変更することができるので、凹凸のある地面を走行するときであっても、複数の走行装置により安定的に接地支持しながら、車両本体を適正な姿勢に維持した状態で走行することが可能となる。
【0009】
複数のリンクのうちの第一リンクは、本体側連結箇所を支点として横軸芯周りで揺動して複数の揺動切り換え位置に切り換え可能であり、いずれかの位置に切り換えた状態で、手動操作式の位置固定手段によって固定することができる。第一リンク以外の他のリンクは駆動操作手段によって姿勢を変更することができる。
【0010】
例えば、作業の種類の違いに応じて、第一リンクの位置を作業に適した位置に切り換えて固定しておき、他のリンクの姿勢を駆動操作手段により切り換えて、車両本体を適正な姿勢に維持して走行することが可能となる。その結果、駆動操作手段は、第一リンクを姿勢変更するための装置を用いないで、駆動構造の簡素化を図ることができるものでありながら、車両本体を作業に適した姿勢に維持して作業走行することが可能となる。
【0011】
従って、駆動構造の簡素化を図ることが可能でありながら、凹凸の多い作業地であっても車両本体を適正な姿勢に維持しながら作業走行することが可能となった。
【0012】
本発明においては、前記多関節リンク機構は、前記他のリンクとして、一端部が前記第一リンクの他端部に横軸芯周りで揺動自在に支持され且つ他端部にて前記走行装置を支持する第二リンクを備えていると好適である。
【0013】
本構成によれば、第一リンクと第二リンクとにより多関節リンク機構が構成され、第一リンクを作業に適した揺動切り換え位置に切り換えた状態で、第二リンクを揺動操作することにより、走行装置を車両本体に対して昇降自在に支持することができる。駆動操作手段は2つのリンクのうちの1つのリンクを姿勢変更操作するだけの構成であるから駆動構成が簡素なものになる。
【0014】
本発明においては、前記駆動操作手段が、油圧シリンダであると好適である。
【0015】
本構成によれば、多関節リンク機構の姿勢変更操作を油圧シリンダにより行う構成であり、油圧シリンダは、電動モータとギア機構とを組み合わせる構成に比べて、細かな塵埃や水分等が侵入することがあっても、そのことによって悪影響を受けて動作不良等を起すおそれが少ない。
【0016】
本発明においては、前記多関節リンク機構が縦軸芯周りで向き変更可能に前記車両本体に支持され、
前記多関節リンク機構を向き変更操作する旋回操作用の油圧シリンダが備えられていると好適である。
【0017】
本構成によれば、多関節リンク機構を縦軸芯周りで向き変更することにより、走行装置の車両本体に対する左右向きを変更することができる。左右いずれかに旋回走行させるときは、走行装置を旋回方向に向き変更することにより、走行装置に横向きの無理な力が加わることがない状態で走行駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】作業車の全体側面図である。
図2】作業車の全体平面図である。
図3】屈折リンク機構の平面図である。
図4】屈折リンク機構の側面図である。
図5】取外した状態での屈折リンク機構の取付け状態を示す正面図である。
図6】取付けた状態での屈折リンク機構の取付け状態を示す正面図である。
図7】旋回機構による左旋回状態を示す平面図である。
図8】旋回機構による右旋回状態を示す平面図である。
図9】第一リンクを縦向き位置にした状態の説明図である。
図10】第一リンクを内向き揺動位置にした状態の説明図である。
図11】第一リンクを外向き揺動位置にした状態の説明図である。
図12】4輪走行状態の説明図である。
図13】自由移動状態の説明図である。
図14】法面走行状態の側面図である。
図15】跨ぎ走行状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る作業車の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1,2に示すように、作業車には、車両全体を支持する略矩形枠状の車両本体1と、複数(具体的には4個)の油圧駆動式の走行装置2と、複数の走行装置2の夫々に対応して設けられた複数の補助輪3と、複数の走行装置2を各別に位置変更自在に車両本体1に支持する複数の多関節リンク機構としての屈折リンク機構4と、屈折リンク機構4を変更操作可能な油圧操作式の駆動操作手段5と、作動油を供給する油圧源としての作動油供給装置6とが備えられている。駆動操作手段5は油圧シリンダ26にて構成されている。
【0021】
4個の走行装置2は夫々、横軸芯周りで回転可能に支持された駆動輪7と、駆動輪7の軸支部に設けられた油圧モータ9とを備えている。各走行装置2は、油圧モータ9を作動させることにより、各別に駆動輪7を回転駆動することができる。
【0022】
この実施形態で、車体の前後方向を定義するときは、車体進行方向に沿って定義し、車体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、図1に符号(A)で示す方向が車体前後方向であり、図2に符号(B)で示す方向が車体左右方向である。
【0023】
車両本体1は、車両本体1の全周を囲うとともに、全体を支持する矩形枠状の支持フレーム10を備えている。作動油供給装置6は車両本体1の内部に収納して支持されている。詳述はしないが、作動油供給装置6には、車両に搭載されるエンジンにて駆動されて作動油を送り出す油圧ポンプ、複数の油圧シリンダ26及び複数の油圧モータ9に対する作動油の給排動作及び流量を制御する油圧制御ユニット、作動油を貯留する作動油タンク等が備えられている。
【0024】
車両本体1には、作動油供給装置6の動作を制御する制御装置11が備えられている。 制御装置11の制御動作については詳述はしないが、図示しない手動入力装置(例えば、リモコン装置等)にて入力される指令情報、あるいは、予め設定して記憶されている指令情報に基づいて油圧制御ユニットの作動を制御する。
【0025】
次に、走行装置2を車両本体1に支持するための支持構造について説明する。
4個の走行装置2は夫々、屈折リンク機構4を介して車両本体1に対して各別に昇降自在に支持されている。そして、屈折リンク機構4は旋回機構12により縦軸芯周りで向き変更可能に車両本体1に支持されている。
【0026】
図2に示すように、屈折リンク機構4は、旋回機構12を介して縦軸芯Y周りで揺動自在に支持フレーム10に支持されている。旋回機構12は、支持フレーム10に連結されるとともに、屈折リンク機構4を揺動自在に支持する車体側支持部13(図3図4参照)と、屈折リンク機構4を旋回操作させる旋回用油圧シリンダ14(以下、旋回シリンダと称する)とを備えている。
【0027】
図3図6に示すように、車体側支持部13は、支持フレーム10における横側箇所に備えられた上下一対の角筒状の前後向きフレーム体15に対して、横側外方から挟み込む状態で嵌め合い係合するとともに、取外し可能にボルト連結される連結部材16と、連結部材16の車体前後方向外方側箇所に位置する外方側枢支ブラケット17と、連結部材16の車体前後方向の内方側箇所に位置する内方側枢支ブラケット18と、外方側枢支ブラケット17に支持される縦向きの回動支軸19とを備え、回動支軸19の軸芯Y周りで回動自在に屈折リンク機構4を支持している。
【0028】
屈折リンク機構4は、上下方向の位置が固定された状態で且つ縦軸芯Y周りで回動自在に車体側支持部13に支持される基端部20と、一端部が基端部20の下部に横軸芯X1周りで揺動自在に支持された第一リンク21と、一端部が第一リンク21の他端部に横軸芯X2周りで揺動自在に支持され且つ他端部に走行装置2が支持された第二リンク22とを備えている。つまり、屈折リンク機構4における2個のリンク21,22のうちの最も車両本体1に近い箇所側に位置する第一リンク21は、本体側連結箇所(基端部20の下部)を支点として揺動自在に支持され、第二リンク22は、第一リンク21との連結箇所を支点として揺動自在に支持されている。
【0029】
説明を加えると、基端部20は、平面視で矩形枠状に設けられ、車体横幅方向内方側に偏倚した箇所において、回動支軸19を介して縦軸芯Y周りで回動自在に、車体側支持部13の外方側枢支ブラケット17に支持されている。旋回シリンダ14は、一端部が、内方側枢支ブラケット18に回動自在に連結され、他端部が、基端部20における回動支軸19に対して横方向に位置ずれした箇所に回動自在に連結されている。
【0030】
基端部20の左右両側部に亘って第一リンク21の一端側に備えられた支持軸23が回動自在に架設支持され、第一リンク21は基端部20の下部に対して支持軸23の軸芯周りで回動自在に連結されている。図4に示すように、第一リンク21の基端側箇所には、第一リンク21が縦向き姿勢であるときに斜め上外方に向けて延びる基端側アーム部21bが一体的に形成されている。
【0031】
図3に示すように、第二リンク22は、左右一対の帯板状の板体22a,22bを備えて平面視で二股状に形成されている。第二リンク22の第一リンク21に対する連結箇所は一対の板体22a,22bが間隔をあけている。一対の板体22a,22bで挟まれた領域に、第一リンク21と連結するための連結支軸24が回動自在に支持されている。第二リンク22の第一リンク21に対する連結箇所とは反対側の揺動側端部には走行装置2が支持されている。
【0032】
4個の屈折リンク機構4の夫々に、第一リンク21を予め設定されている複数の揺動切り換え位置にて固定可能な手動操作式の位置固定手段としての揺動位置調節部25と、第一リンク21に対する第二リンク22の揺動姿勢を変更可能な駆動操作手段5としての油圧シリンダ26とが備えられている。油圧シリンダ26は、第一リンク21の近傍に並ぶ状態で配置されている。第一リンク21及び油圧シリンダ26が、平面視において、第二リンク22の一対の板体22a,22bの間に位置する状態で配備されている。
【0033】
揺動位置調節部25について説明する。
揺動位置調節部25は、第一リンク21を略鉛直姿勢となる縦向き位置(図10参照)と、縦向き位置に対して車体前後方向の内方側に向けて設定量揺動する内向き揺動位置(図9参照)と、縦向き位置に対して車体前後方向の外方側に向けて設定量揺動する外向き揺動位置(図11参照)との夫々において、位置固定可能に構成されている。説明を加えると、第一リンク21に一体的に係止作用部27が形成され、その係止作用部27に左右方向に挿通する状態で挿通孔28が形成されている。
【0034】
側面視で第一リンク21の挿通孔28が通過する位置と重なる状態で規制部材29が設けられている。規制部材29は、屈折リンク機構4の基端部20に一体的に連結されて固定されている。規制部材29には、第一リンク21が縦向き位置、内向き揺動位置、外向き揺動位置の夫々に切り換えられたときに、第一リンク21に形成されている挿通孔28が対向する箇所に夫々、左右方向に挿通する位置規制用の係合孔30が形成されている。そして、第一リンク21が縦向き位置、内向き揺動位置、外向き揺動位置のいずれかに切り換えられた状態で、規制部材29の係合孔30と第一リンク21の挿通孔28とに亘って係止ロッド31を差し込み挿入することにより、第一リンク21の車両本体1に対する相対位置を固定することができる。
【0035】
作業車が、例えば畦畔上を走行したり、圃場内で走行する場合等のように、平坦な地面を走行する場合には、図10に示すように、第一リンク21を縦向き位置に切り換えた状態で作業走行する。この状態では、第一リンク21の車両本体側の支持位置における揺動位置調節部25に対して、捻じれ方向の無理な力が掛かるおそれが少なく、主に油圧シリンダ26により車両本体1の荷重を受けることができる。その結果、油圧制御が行い易くなり、車両本体1の姿勢制御を精度よく行える。
【0036】
作業車が例えば、比較的狭い作業領域内で旋回走行するときや、作業車を格納場所に収納したり、運搬車により運搬する場合等においては、図9に示すように、第一リンク21を内向き揺動位置に切り換えた状態に切り換える。この状態では、作業車の前後方向の外形寸法を小さくしてコンパクトな形状になる。
【0037】
作業車が、法面を走行したり、平坦で整地されている路面を高速で走行する場合等においては、図11に示すように、第一リンク21を外向き揺動位置に切り換えた状態で作業走行する。この状態では、前後の走行装置2の間隔が広くなり、しかも、低重心状態で安定的に走行することができる。
【0038】
油圧シリンダ26は、第一リンク21に対して車体前後方向外方側に位置して、第一リンク21の長手方向に略沿うように設けられている。油圧シリンダ26は、基端側(上部側)端部が第一リンク21の基端側に一体的に形成された基端側アーム部21bに連動連結されている。油圧シリンダ26の揺動側(下部側)端部が、円弧状の第一連動部材32を介して、第二リンク22の基端側箇所に一体的に形成されたアーム部22Aに連動連結されている。油圧シリンダ26の揺動側端部は、別の第二連動部材33を介して第一リンク21の揺動端側箇所にも連動連結されている。第一連動部材32及び第二連動部材33は、両側端部が夫々、相対回動可能に枢支連結されている。
【0039】
油圧シリンダ26を伸縮操作すると、第一リンク21の車両本体1に対する姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク22及び走行装置2が、一体的に、第一リンク21と第二リンク22との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0040】
4個の屈折リンク機構4夫々の中間屈折部に自由回転自在に補助輪3が支持されている。図1,2に示すように、補助輪3は走行装置2の駆動輪7と略同じ外径の車輪にて構成されている。図3に示すように、第一リンク21と第二リンク22とを枢支連結する連結支軸34が、第二リンク22よりも車体横幅方向外方側に突出するように延長形成されている。連結支軸24の延長突出箇所に補助輪3が回動自在に支持されている。つまり、第一リンク21と第二リンク22とを枢支連結する連結支軸24が、補助輪3の回動支軸を兼用する構成となっており、部材の兼用により構成の簡素化を図っている。
【0041】
図7,8に示すように、屈折リンク機構4、走行装置2、補助輪3、油圧シリンダ26の夫々が、一体的に、回動支軸19の軸芯Y周りで回動自在に外方側枢支ブラケット17に支持されている。そして、旋回シリンダ14を伸縮させることにより、それらが一体的に回動操作される。走行装置2が前後方向に向く直進状態から左旋回方向及び右旋回方向に夫々、約45度ずつ旋回操作させることができる。
【0042】
前後向きフレーム体15に対する連結部材16のボルト連結を解除すると、旋回機構12、屈折リンク機構4、走行装置2、補助輪3、及び、油圧シリンダ26の夫々が、一体的に組付けられた状態で、車両本体1から取り外すことができる。又、前後向きフレーム体15に対して連結部材16をボルト連結することで、上記各装置が一体的に組付けられた状態で、車両本体1に取付けることができる。
【0043】
作動油供給装置6から複数の屈折リンク機構4夫々の油圧シリンダ26に対して作動油の給排が行われて、油圧シリンダ26を伸縮操作させることができる。油圧モータ9に対する作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ9すなわち駆動輪7の回転速度を変更することができる。
【0044】
図1に示すように、この作業車は種々のセンサを備える。具体的には、油圧シリンダ26に、第一ヘッド側圧力センサS1及び第一キャップ側(反ヘッド側)圧力センサS2が備えられる。第一ヘッド側圧力センサS1は、油圧シリンダ26のヘッド側室の油圧を検出する。第一キャップ側圧力センサS2は、油圧シリンダ26のキャップ側室の油圧を検出する。又、図示はしていないが、上記各油圧シリンダ26,14は、伸縮ストローク量を検出可能なストロークセンサを内装しており、操作状態を制御装置11にフィードバックするように構成されている。
【0045】
なお、各圧力センサS1,S2の取り付け位置は上記した位置に限られるものではない。各圧力センサS1,S2は、対応するキャップ側室又はヘッド側室の油圧を検出(推定)可能であればよく、弁機構から対応するキャップ側室又はヘッド側室の間の配管に設けられてもよい。
【0046】
これらのセンサの検出結果に基づいて、車両本体1を支持するために必要な力が算出され、その結果に基づいて、それぞれの油圧シリンダ26への作動油の供給が制御される。具体的には、第一ヘッド側圧力センサS1の検出値と第一キャップ側圧力センサS2の検出値とに基づき、油圧シリンダ26のキャップ側室とヘッド側室との差圧から、油圧シリンダ26のシリンダ推力が算出される。
【0047】
車両本体1には、例えば、三軸加速度センサ等からなる加速度センサS3が備えられている。加速度センサS3の検出結果に基づき、車両本体1の前後左右の傾きが検知され、その結果に基づいて車両本体1の姿勢が制御される。つまり、車両本体1の姿勢が目標の姿勢となるよう、各油圧シリンダ26への作動油の供給が制御される。
【0048】
走行装置2には、駆動輪7の回転速度を検出する回転センサS4が備えられる。回転センサS4にて算出された駆動輪7の回転速度に基づいて、駆動輪7の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ9への作動油の供給が制御される。
【0049】
上述したように、本実施形態の作業車は、駆動輪7を支持する屈折リンク機構4の姿勢を油圧シリンダ26により変更操作する構成であり、しかも、走行駆動も油圧モータ9にて行う構成であるから、例えば、電動モータ等のように水分や細かな塵埃等による影響を受け難く、農作業に適したものになる。
【0050】
平坦地を走行する場合、複数種の異なる走行形態のいずれかにて走行することができる。すなわち、図9図11に示すように、4個の駆動輪7及び4個の補助輪3が全て接地する状態、図12、15に示すように、4個の駆動輪7が全て接地し且つ4個の補助輪3が全て地面から浮上する4輪走行状態等である。図15では、畝を跨いで走行する状態を示している。上記したような走行形態の他、図13に示すように、4組全ての駆動輪7を浮上させて全て自由移動状態に切り換えて使用することもできる。この場合には、駆動走行することはできないが、手動で楽に押し移動させることができる。
【0051】
この作業車では、上記したような平坦面での走行の他にも、図14に示すように、4組全ての第一リンク21を外向き揺動位置に切り換えて、駆動輪7と補助輪3とが全て接地している状態で、法面を乗り上がりながら走行することができる。この走行形態では、車体前後方向に沿う接地幅が広くなり、大きく傾斜している法面であっても転倒することなく安定した状態で走行することができる。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、多関節リンク機構として、2つのリンク21,22を備える構成とし、駆動操作手段5として、1つの油圧シリンダ26を備える構成としたが、この構成に代えて、次のように構成してもよい。
【0053】
多関節リンク機構として、3個以上の関節を有するように、枢支連結される3つ以上のリンクを備える構成とし、駆動操作手段として、第一リンク以外の他のリンクの姿勢を変更する2つ以上の油圧シリンダを備える構成としてもよい。又、駆動操作手段として、屈折リンク機構4の揺動支点部に油圧モータを備えて、その油圧モータによって屈折リンク機構4の姿勢を変更する構成でもよい。
【0054】
(2)上記実施形態では、走行装置2が油圧モータ9により駆動される構成としたが、この構成に代えて、例えば、車両に搭載されたエンジンの動力がチェーン伝動機構等の機械式伝動機構を介して駆動輪7に供給される構成でもよい。
【0055】
(3)上記実施形態では、走行装置2として1つの駆動輪7を備える構成としたが、この構成に代えて、走行装置2として、複数の輪体にクローラベルトが巻回されたクローラ走行装置を備える構成としてもよい。
【0056】
(4)上記実施形態では、走行装置2が、車両本体1の前後両側部において左右一対ずつ備えられる構成としたが、走行装置2が3個備えられる構成、あるいは、走行装置2が5個以上備えられる構成であってもよい。
【0057】
(5)上記実施形態では、旋回操作用の油圧シリンダ14が備えられる構成としたが、旋回操作を電動モータや油圧モータにより行うものでもよく、このような旋回操作用のアクチュエータを備えない構成としてもよい。その場合、進行方向先頭側の左右の走行装置の駆動速度を異ならせて旋回走行させる構成としてもよい。
【0058】
(6)上記実施形態では、手動操作式の位置固定手段として、規制部材29の係合孔30と第一リンク21の挿通孔28とに亘って係止ロッド31を差し込み挿入することで3位置に切り換え可能な構成を示したが、この構成に代えて、4箇所以上の位置で係止ロッドにて固定する構成、あるいは、ギア式の倍力機構等を用いて、手動ハンドルを回動操作することにより第一リンク21を無段階に位置変化意位置で位置保持可能な構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 車両本体
2 走行装置
4 多関節リンク機構
5 駆動操作手段
14 旋回操作用の油圧シリンダ
21 第一リンク
22 第二リンク
25 位置固定手段
26 油圧シリンダ
Y 軸芯
図1
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