特許第6832946号(P6832946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6832946キナーゼ阻害剤およびその中間体の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832946
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】キナーゼ阻害剤およびその中間体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 217/02 20060101AFI20210215BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
   C07D217/02
   !C07B61/00 300
【請求項の数】24
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2018-544754(P2018-544754)
(86)(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公表番号】特表2018-535260(P2018-535260A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】US2015061177
(87)【国際公開番号】WO2017086941
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】518023485
【氏名又は名称】アエリエ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】スターディバント、ジル エム
(72)【発明者】
【氏名】デロング、ミッチェル エイ
(72)【発明者】
【氏名】シャンブールニエ、ジル
(72)【発明者】
【氏名】パムメント、マイケル ジー
(72)【発明者】
【氏名】フェディイ、ビクター
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−525386(JP,A)
【文献】 特表2012−525442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 217/00−217/26
C07B 61/00
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I−a)の化合物
【化1】
(各式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシまたはシアノから独立して選択され、nは0〜3の整数である)、またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、
(a)式(IV−a)の化合物であって、
【化2】
ここで、Tが、
【化3】
(式中、
Zは、SまたはOであり、
Bは、SまたはOであり、
は、水素、C1−4アルキル、またはアリールであり、
は、C1−4アルキル、C3−7分枝アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)である化合物を、
【化4】
(式中、PGは、窒素保護基である)と、塩基の存在下で、反応させて、式(V−a)の化合物
【化5】
を形成すること、
(b)式(V−a)の化合物から前記Tを除去して式(II−a)
【化6】
の化合物を形成すること、
(c)式(II−a)の化合物を6−アミノイソキノリンと反応させて、式(III−a)の化合物
【化7】
を形成すること、
および、
(d)式(III−a)の化合物から前記窒素保護基を除去して式(I−a)の化合物を形成すること、
を含む、方法。
【請求項2】
式(VIII−a)の化合物
【化8】
(式中、Rは、ハロゲン、OR、OC(O)R、SR、またはSC(O)Rであり、Rは、H、アルキル、またはアリールであり、Rは、アルキルまたはアリールである)を式(IV−a)の化合物
【化9】
に変換させること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(VIII−a)の化合物が、
(a)
【化10】
を式(VI−a)の化合物
【化11】
と反応させて、式(VII−a)の化合物
【化12】
を形成すること、および、
(b)式(VII−a)の化合物を式(VIII−a)の化合物に変換すること、
を含む方法により合成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
nが2であり、各Rがメチルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式(I−a)の化合物が、
【化13】
である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(VIII−a)の化合物が、
【化14】
である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
nが0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
は、水素またはアリールであり、
は、C1−4アルキル、アリールアルキルまたはアリールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Tが、
【化15】
からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Tが、
【化16】
である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
以下の式の化合物
【化17】
、またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、
(a)
【化18】
を塩素化剤と反応させて、酸塩化物を形成することと、
(b)前記酸塩化物をn−ヘプタンから結晶化させて、精製された酸塩化物を形成することと、
(c)塩基の存在下で、前記精製された酸塩化物を
【化19】
と反応させて、
【化20】
を形成することと、
(d)−50℃および−20℃の間の温度で塩基の存在下で前記工程(c)の生成物を
【化21】
と反応させて、
【化22】
を形成することと、
(e)前記工程(d)の生成物をLiOOHと反応させて、
【化23】
を形成することと、
(f)前記工程(e)の生成物を再結晶させて、精製された前記工程(e)の生成物を形成することと、
(g)前記工程(f)の精製された生成物のカルボン酸基を活性化させると共に、前記活性化カルボン酸を6−アミノイソキノリンと反応させて、
【化24】
を形成することと、
(h)前記工程(g)の生成物を再結晶することと、
(i)前記工程(h)の生成物を少なくとも2当量のMeSOHと反応させて、
【化25】
を形成することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記工程(a)の塩素化剤が、塩化オキサリルまたは塩化チオニルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(c)の塩基が、NaH、LiH、KH、nBuLi、secBuLi、LiHMDS、NaHMDS、またはKHMDSであり、前記工程(b)が−90℃および50℃の間の温度で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(d)の塩基が、LiHMDSまたはNaHである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記LiOOHが、水酸化リチウムおよび過酸化水素によってその場で形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記カルボン酸基が、約0℃の温度で、トリクロロジメチルエチルクロロホルメートおよびコリジンを添加することによって、前記工程(g)において活性化される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(f)の精製された生成物、6−アミノイソキノリン、およびコリジンを混合し、続いてトリクロロジメチルエチルクロロホルメートを添加する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボン酸基は、混合無水物中間体への変換によって活性化される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式(I)の化合物、
【化26】
(各式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、またはシアノから独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)、またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、
(a)式(IV)の化合物であって、
【化27】
Tが、
【化28】
(式中、
Zは、SまたはOであり、
Bは、SまたはOであり、
は、水素、C1−4アルキルまたはアリールであり、
は、C1−4アルキル、C3−7分枝アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)である化合物を、
【化29】
(式中、PGは、窒素保護基である)と反応させて、式(V)の化合物
【化30】
を形成すること、
(b)式(V)の化合物から前記Tを除去して式(II)の化合物
【化31】
を形成すること、
(c)式(II)の化合物を6−アミノイソキノリンと反応させて、式(III)の化合物
【化32】
を形成すること、および、
(d)式(III)の化合物から前記窒素保護基を除去して式(I)の化合物を形成すること、
を含む、方法。
【請求項20】
式(VIII)の化合物
【化33】
(式中、Rは、ハロゲン、OR、OC(O)R、SR、またはSC(O)Rであり、Rは、H、アルキル、またはアリールであり、Rは、アルキルまたはアリールである)を式(IV)の化合物
【化34】
に変換させること、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式(VIII)の化合物が、
(a)
【化35】
を式(VI)の化合物
【化36】
と反応させて、式(VII)の化合物
【化37】
を形成すること、および、
(b)式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物に変換すること、
を含む方法により合成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
は、水素またはアリールであり、
は、C1−4アルキル、アリールアルキルまたはアリールである、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
Tが、
【化38】
からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
Tが、
【化39】
である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、式(I)による化合物を調製するための方法に関する。これらの化合物は、緑内障および高眼圧症のような眼の疾患および障害、呼吸器系、心臓血管系、皮膚の疾患および障害の治療に有用であり、癌などの異常な成長を特徴とする疾患に有用である。
【背景技術】
【0002】
大規模な量の生成を可能にする、効率的で、拡張可能で、かつ再現可能な方法のうちの少なくとも1つ以上において、本明細書に開示される化合物を作製する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、式(I)の化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)、
(a)式(II)の化合物を
【化2】
(式中、PGは、窒素保護基である)6−アミノイソキノリンと反応させて式(III)の化合物を形成すること、
【化3】
および
(b)窒素保護基を除去して式(I)の化合物を形成すること、を含む方法が開示される。
【0004】
別の態様では、式(I−a)の化合物、
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)、
(a)式(II−a)の化合物を
【化5】
6−アミノイソキノリンと反応させて式(III−a)の化合物を形成すること、
【化6】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)および
(b)窒素保護基を除去して式(I−a)の化合物を形成すること、を含む方法が開示される。
【0005】
別の態様では、式(XI)の化合物、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)、
(a)式(XII)の化合物を
【化8】
(式中、PGは、窒素保護基である)6−アミノイソキノリンと反応させて式(XIII)の化合物を形成すること、
【化9】
および
(b)窒素保護基を除去して式(XI)の化合物を形成すること、を含む方法が開示される。
【0006】
別の態様では、式(Xl−a)の化合物、
【化10】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)、
(a)式(XII−a)の化合物を
【化11】
6−アミノイソキノリンと反応させて式(XIII−a)の化合物を形成すること、
【化12】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)
(b)窒素保護基を除去して式(XI−a)の化合物を形成すること、を含む方法が開示される。
【0007】
別の態様では、
【化13】
および塩基の存在下でアミンまたはアルコールをカルボン酸と反応させることを含む、アミドまたはエステル結合の形成方法が開示される。
【0008】
別の態様では、オキサゾリジニルイミドを
【化14】
と反応させることを含む、アルファ−アルキル化イミドを合成する方法が開示される。
【0009】
別の態様では、請求項に記載された方法における使用のための様々な中間体が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
式(I)の化合物の合成ための方法が本明細書に開示される。式(I)の化合物は、大量の式(I)の化合物を効率的に生成する方法で合成され得る。式(I)の化合物は、キナーゼ関連疾患および/または障害を治療または予防するために使用され得る。これらには、緑内障および高眼圧症のような眼の疾患および障害、呼吸器系疾患および障害、心臓血管系疾患および障害、皮膚の疾患および障害、癌などの異常な成長を特徴とする疾患を含む。
【0011】
1.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が支配する。適切な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載された方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用し得る。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に開示された材料、方法および実施例は、例示的なものに過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0012】
本明細書で使用される用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る(can)」、「含有する(contain)」およびそれらの変形体は、追加の行為または構造の可能性を排除しないオープンエンドの移行句、用語、または単語を意図する。単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されていない限り、複数の参照を含む。本開示はまた、明示的に示されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態または要素を「含む」、「からなる」、および「から本質的になる」他の実施形態を意図する。
【0013】
量に関連して使用される修飾語「約」は、記載された値を含み、文脈によって示される意味を有する(例えば、特定の量の測定値に関連する少なくともある程度の誤差を含む)。修飾語「約」はまた、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示するものとして考慮されるべきである。例えば、「約2〜約4」という表現は、範囲「2〜4」も開示する。「約」という用語は、示された数のプラスまたはマイナス10%を意味し得る。例えば、「約10%」は、9%〜11%の範囲を示し得、「約1」は、0.9〜1.1を意味し得る。「約」の他の意味は、文脈から明らかであり、例えば四捨五入、したがって、例えば、「約1」はまた、0.5〜1.4を意味し得る。
【0014】
特定の官能基および化学用語の定義については、以下でより詳細に説明する。この開示の目的のために、元素周期律表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、表紙裏に従って化学元素を同定し、特定の官能基は概してそこに記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般的原理、ならびに特定の官能部分および反応性はOrganic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989; Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987;に記載され、そのそれぞれの全体の内容が参考により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に付加する本明細書で定義されるアルキル基を指す。アルコキシの代表例には、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシおよびtert−ブトキシが含まれる。
【0016】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルキル」または「C1−6−アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。用語「C3−7分枝アルキル」は、3〜7個の炭素原子を含有する分枝鎖の炭化水素を意味する。用語「C1−4−アルキル」は、1〜4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。アルキルの代表例には、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、およびn−デシルが含まれる。アルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0017】
本明細書で使用される用語「アルキレン」は、1〜10個の炭素原子、例えば2〜5個の炭素原子の直鎖または分枝鎖の炭化水素から誘導される二価の基を指す。アルキレンの代表例には、限定されないが、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、および−CHCHCHCHCH=−が含まれる。アルキレン基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0018】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および1〜10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルケニル」または「C2−6−アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および1〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。アルケニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0019】
本明細書で使用される用語「アルコキシアルキル」は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に結合する、本明細書で定義されるアルコキシ基を指す。
【0020】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合および1〜10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルキニル」または「C2−6−アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合および1〜6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。アルキニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0021】
本明細書で使用される用語「アリール」は、フェニル基、または二環式縮合環系を指す。二環式縮合環系は、親分子部分に結合すると共に、本明細書で定義されるシクロアルキル基、フェニル基、本明細書で定義されるヘテロアリール基、または本明細書で定義される複素環に縮合したフェニル基によって例示される。アリールの代表例には、限定されないが、インドリル、ナフチル、フェニル、キノリニルおよびテトラヒドロキノリニルが含まれる。アリール基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0022】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子、0個のヘテロ原子および0個の二重結合を含有する炭素環系を指す。シクロアルキルの代表例には、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシルが含まれる。シクロアルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0023】
本明細書で使用される用語「シクロアルケニル」は、3〜10個の炭素原子、0個のヘテロ原子および少なくとも1つの二重結合を含有する炭素環系を指す。シクロアルケニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0024】
本明細書で使用される用語「フルオロアルキル」は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に結合する少なくとも1つのフッ素原子を指す。フルオロアルキルの代表例には、限定されないが、トリフルオロメチルが含まれる。
【0025】
本明細書で使用される用語「フルオロアルコキシ」は、本明細書で定義されるアルコキシ基を介して親分子部分に結合する少なくとも1つのフッ素原子を指す。
【0026】
本明細書で使用される用語「アルコキシフルオロアルキル」は、本明細書で定義されるフルオロアルキル基を介して親分子部分に結合する、本明細書で定義されるアルコキシ基を指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、Cl、Br、I、またはFを意味する。
【0028】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に結合する少なくとも1つのハロゲン原子を指す。
【0029】
本明細書で使用される用語「ヘテロアルキル」は、1個以上の炭素原子がS、O、PおよびNから選択されるヘテロ原子によって置換されている本明細書で定義されるアルキル基を意味する。ヘテロアルキルの代表例には、限定されないが、アルキルエーテル、第二級および第三級アルキルアミン、アミド、およびアルキルスルフィドが含まれる。ヘテロアルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0030】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、芳香族単環式環系または芳香族二環式環系を指す。芳香族単環式環は、N、OおよびS(例えば、O、S、およびNから独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子)からなる群から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5または6員環である。5員芳香族単環式環は2つの二重結合を有し、6員芳香族単環式環は3つの二重結合を有する。二環式ヘテロアリール基は、親分子部分に結合すると共に、本明細書で定義される単環式シクロアルキル基、本明細書で定義される単環式アリール基、本明細書で定義される単環式ヘテロアリール基、または本明細書で定義される単環式複素環に縮合した単環式ヘテロアリール環によって例示される。ヘテロアリールの代表例には、限定されないが、インドリル、ピリジニル(ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イルを含む)、ピリミジニル、チアゾリル、イソキノリニル、およびキノリニルが含まれる。ヘテロアリール基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0031】
本明細書で使用される用語「複素環」または「複素環式」は、単環式複素環、二環式複素環、または三環式複素環を意味する。単環式複素環は、O、NおよびSからなる群から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する3員、4員、5員、6員、7員、または8員環である。3員または4員環は、0または1個の二重結合、ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含有する。5員環は、0または1個の二重結合、ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。6員環は、0、1または2個の二重結合、ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。7員および8員環は、0、1、2、または3個の二重結合、ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する。複素環式基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0032】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリールアルキル」は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に結合する、本明細書で定義されるヘテロアリール基を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に結合するヒドロキシ基を指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「アリールアルキル」は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に結合する、本明細書で定義されるアリール基を指す。
【0035】
いくつかの例では、ヒドロカルビル置換基(例えば、アルキルまたはシクロアルキル)中の炭素原子の数は、接頭辞「Cx−y−」で示され、ここで、xは置換基中の炭素原子の最小数であり、yは置換基中の炭素原子の最大数である。したがって、例えば、「C1−3−アルキル」は、1〜3個の炭素原子を含有するアルキル置換基を指す。
【0036】
用語「芳香族アミン」は、RがHまたはC1−4アルキルであるArN(R)Hを指す。
【0037】
用語「芳香族アルコール」は、Rがアリール基であるROHを指す。
【0038】
用語「置換基」は、その基の任意の原子における基に「置換」された基を指す。任意の原子が置換され得る。
【0039】
用語「置換(された)」は、1つ以上の非水素置換基でさらに置換され得る基を指す。置換基には、限定されないが、ハロゲン、=O、=S、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、−COOH、ケトン、アミド、カルバメート、およびアシルが含まれる。
【0040】
本明細書に記載の化合物について、その基および置換基は、原子および置換基の許容される原子価に従って選択され得、その結果、選択および置換は、例えば、転位、環化、脱離などによる自発的に変換を受けない安定な化合物をもたらす。
【0041】
本明細書における数値範囲の列挙について、同じ程度の正確さを有するその間の各介在数が明らかに考慮される。例えば、6〜9の範囲では、6および9に加えて7および8の数値が考慮され、6.0〜7.0の範囲では、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0の数が明らかに考慮される。
【0042】
2.方法
A.式(I)の化合物
一態様では、式(I)の化合物、
【化15】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)またはその薬学的に許容される塩を合成する方法が開示される。
【0043】
一実施形態では、6−アミノイソキノリンを式(II)の化合物と反応させて、式(III)の化合物を形成することを含む方法が提供される。式(III)の化合物は、窒素保護基を除去することによって式(I)の化合物に変換され得る。窒素保護基PGは、本分野で知られた任意の適切な窒素保護基であり得る。特定の実施形態では、PGは、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、およびパラ−メトキシベンジルカルボニル(Moz)からなる群から選択される。
【化16】
(式中、PGは窒素の保護基である)
【0044】
いくつかの実施形態では、式(II)の化合物の合成も含まれ得る。式(IV)の化合物(式中、Tはキラル補助剤である)のアミノアルキル化は、キラル補助剤の除去時に式(II)の化合物に変換され得る式(V)の化合物を提供し得る。
【化17】
【0045】
いくつかの実施形態では、式(VII)の化合物は、メチル2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートの式(VI)の化合物との反応によって調製され得る。式(VII)の化合物は、式(VIII)の化合物(式中、Rは、ハロゲン、OR、OC(O)R、SR、またはSC(O)Rであり、Rは、H、アルキルまたはアリールであり、Rはアルキルまたはアリールである)に変換され得る。式(IV)の化合物(式中、Tはキラル補助剤である)は、式(VIII)の化合物から順に得られ得る。
【化18】
【0046】
B.式(I−a)の化合物
一実施形態では、式(I−a)の化合物、
【化19】
またはその薬学的に許容される塩を合成(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)が提供される。いくつかの実施形態では、C1−4アルキルは、C1−4フルオロアルキルであり得る。
【0047】
方法は、6−アミノイソキノリンを式(II−a)の化合物と反応させて、式(III−a)の化合物を形成することを含む。式(III−a)の化合物は、窒素保護基を除去することによって式(I−a)の化合物に変換され得る。窒素保護基PGは、本分野で知られた任意の適切な窒素保護基であり得る。特定の実施形態では、PGは、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、およびパラ−メトキシベンジルカルボニル(Moz)からなる群から選択される。
【化20】
(式中、PGは窒素の保護基である)
【0048】
いくつかの実施形態では、式(II−a)の化合物の合成も提供され得る。式(IV−a)の化合物(式中、Tはキラル補助剤である)のアミノアルキル化は、キラル補助剤の除去時に式(II−a)の化合物に変換され得る式(V−a)の化合物を提供し得る。
【化21】
【0049】
いくつかの実施形態では、式(VII−a)の化合物の合成も提供される。式(VII−a)の化合物は、メチル2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートの式(VI−a)の化合物との反応によって調製され得る。いくつかの実施形態では、式(VII−a)の化合物は、式(VIII−a)の化合物に変換され得る。いくつかの実施形態では、式(IV−a)の化合物(式中、Tはキラル補助剤である)は、式(VIII−a)の化合物から順に得られ得る。
【化22】
(式中、Rは、ハロゲン、OR、OC(O)R、SR、またはSC(O)Rであり、Rは、H、アルキルまたはアリールであり、Rはアルキルまたはアリールである)
【0050】
特定の実施形態では、Tは、式(IX)の化合物
【化23】
(式中、ZはSまたはOであり、BはSまたはOであり、Rは水素、C1−4アルキル、またはアリールであり、RはC1−4アルキル、C−C分枝アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)であり得る。
【0051】
具体的には、Tは、式(IX−a)の化合物
【化24】
(式中、ZはSまたはOであり、BはSまたはOであり、Rは水素またはアリールであり、RはC1−4アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)であり得る。
【0052】
より具体的には、Tは、
【化25】
からなる群から選択され得る。
【0053】
特定の実施形態では、Tは、
【化26】
である。
【0054】
C.化合物(1)
一実施形態では、開示される式(I)の化合物の合成のための方法は、化合物(1)、
【化27】
またはその薬学的に許容される塩を合成するために使用され得る。
【0055】
6−アミノイソキノリンを化合物(2)と反応させて化合物(3)を形成し得る。化合物(3)は、Boc保護基を除去することにより化合物(1)に変換され得る。
【化28】
【0056】
いくつかの実施形態では、化合物(2)の合成も含まれ得る。化合物(4)のアミノアルキル化により、キラル補助剤の除去時に化合物(2)に変換され得る化合物(5)を提供する。
【化29】
【0057】
いくつかの実施形態では、化合物(4)は、メチル2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートの化合物(6)との反応によって調製され得る。化合物(7)は、化合物(8)に変換され得る。化合物(4)は、化合物(8)から順に得られ得る。
【化30】
【0058】
式(I)の化合物(例えば、化合物(1))の合成方法の特定の実施形態では、方法は、EDCおよびDMAPの存在下でのメチル2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセテートの2,4−ジメチル安息香酸(6)とのカップリングを含み、化合物(7)を形成し得る。適切な溶媒中で、化合物(7)のメチルエステルを適切な塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような金属水酸化物)で選択的に加水分解して化合物(9)を得ることができる。適切には、加水分解条件は、塩基としての水酸化リチウムならびに溶媒としてのTHFおよび水の混合物を含む。これらの条件は、それらがベンジルエステルの加水分解量を制限するのに役立つので、有利である。
【化31】
【0059】
いくつかの実施形態では、化合物(9)は、塩素化剤で処理することによって酸塩化物(8)に変換され得る。塩素化剤は、塩化オキサリルまたは塩化チオニルであり得る。溶媒は、塩化メチレン、ジクロロエタンまたはクロロホルムなどの塩素化溶媒であってもよく、あるいはそれは、THF、ジエチルエーテル、ジオキサンまたはアセトニトリルなどの非塩素化溶媒であってもよい。塩素化剤および溶媒は、塩化チオニルであり得る。適切には、塩素化剤は塩化オキサリルであり、溶媒は塩化メチレンまたはテトラヒドロフラン/ジメチルホルムアミド溶媒混合物である。化合物(8)は、例えば再結晶により精製され得る。再結晶に適した溶媒には、n−ヘプタンが含まれる。
【化32】
【0060】
いくつかの実施形態では、(R)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オンへの塩基の添加後、−90℃〜50℃の温度で化合物(8)と反応させて化合物(4)を得ることができる。(R)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オンへの添加に用いられる塩基は、NaH、LiH、KH、nBuLi、NaHMDS、LDA、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、臭化メチルマグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、secBuLi、LiHMDS、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムイソプロポキシドまたはKHMDSであり得る。溶媒は、THF、トルエン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、メチルt−ブチルエーテルまたはそれらの組み合わせであり得る。適切には、(R)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オンへの添加に使用される塩基はnBuLiであり、溶媒はTHFである。
【化33】
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物(4)を塩基で処理した後、−50℃〜−20℃の温度でN−Boc−1−アミノメチルベンゾトリアゾールを添加して、ジアステレオ選択的様式で化合物(5)を得ることができる。化合物(4)の処理に用いられる塩基は、LiHMDS、LDAまたはNaHMDSであり得る。溶媒は、THF、トルエン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、メチルt−ブチルエーテルまたはそれらの組み合わせであり得る。適切には、化合物(4)の処理に使用される塩基はLiHMDSであり、溶媒はTHFである。いくつかの実施形態では、化合物(4)の脱プロトン化を促進して反応性中間体を形成するために、ルイス酸を塩基と共に添加し得る。化合物(5)は、1:1超、2:1超、5:1超、10:1超、20:1超、50:1超、または99:1超のジアステレオマー比で得られ得る。所望であれば、少ない方のジアステレオマーは、限定されないが、再結晶およびシリカゲルクロマトグラフィーのような標準的な精製技術によって除去され得る。
【化34】
【0062】
いくつかの実施形態では、オキサゾリジノンキラル補助剤を除去するために適切な求核剤を添加することによって、化合物(5)をカルボン酸(2)に変換し得る。適切には、求核剤は、水酸化リチウムの過酸化水素との反応によってその場で形成されるリチウムヒドロペルオキシドである。適切な求核剤は、ベンジルエステルの開裂を最小限用いてまたは全く用いないでキラル補助剤を除去することを可能にする。化合物(2)は、所望により、例えば再結晶により精製され得る。
【化35】
【0063】
いくつかの実施形態では、カルボン酸基を活性化し、6−アミノイソキノリンと反応させることにより、化合物(2)を化合物(3)に変換し得る。カルボン酸基は、混合無水物または酸ハロゲン化物への変換、あるいは標準アミドカップリング試薬(例えば、EDCI、HOBT、DCC、DIC、HBTU、およびHATU)の使用を含む、様々な試薬および条件によって活性化され得る。適切には、カルボン酸基は、混合無水物の形成によって活性化される。いくつかの実施形態では、混合無水物は、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルクロロホルメートのようなアルキルクロロホルメートおよび塩基の添加によって、またはプロピルホスホン酸無水物のようなホスホン酸無水物および塩基の添加によって形成され得る。
【0064】
一実施形態では、6−アミノイソキノリンの存在下、0℃で、化合物(2)にホスホン酸無水物およびピリジンを添加する。反応性の混合無水物中間体は、6−アミノイソキノリンと反応して化合物(3)を形成し得るような反応条件下で形成され得る。
【0065】
別の実施形態では、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルクロロホルメートおよびコリジンを、6−アミノイソキノリンの存在下で、0℃で化合物(2)に添加する。一実施形態では、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルクロロホルメートを、化合物(2)、6−アミノイソキノリン、およびコリジンの混合物に添加する。反応性の混合無水物中間体は、6−アミノイソキノリンと反応して化合物(3)を形成し得るこのような反応条件下で形成され得る。溶媒は、DMFを単独でまたは塩化メチレンまたはアセトニトリルと組み合わせて使用することができ、適切には使用される溶媒はDMFである。単離すると、化合物(3)は任意に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび/または再結晶によって精製され得る。
【化36】
【0066】
いくつかの実施形態では、化合物(3)の化合物(1)への変換は、Boc保護基を除去するための適切な試薬の添加によって達成され得る。適切には、酸を用いてBoc保護基を除去する。Boc保護基を除去するのに有用な任意の酸を使用し得る。Boc保護基を除去するために使用される酸はまた、化合物(1)の塩の形成を促進し得る。酸は、保護基の除去に有利であり、かつ適切な薬学的に許容される塩を形成するように選択され得る。適切には、化合物(3)の化合物(1)への変換に用いられる酸は、少なくとも2当量のメタンスルホン酸を含み、化合物(1)のジメタンスルホン酸塩をもたらす。メタンスルホン酸は、所望の生成物が、副生成物をほとんど生じることなくかつほとんど分解されることなく高収率で形成されるので特に有用である。ジメタンスルホン酸塩は、容易に精製され、取り扱いが容易であり、大きな再現性を伴って大規模プロセスで製造することができるなどの有用な特性を提供する。
【化37】
【0067】
D.式(XI)の化合物
別の態様では、式(XI)の化合物、
【化38】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)が開示される。
【0068】
方法は、6−アミノイソキノリンを式(XII)の化合物と反応させて、式(XIII)の化合物を形成することを含む。式(XIII)の化合物は、窒素保護基を除去することによって式(XI)の化合物に変換され得る。窒素保護基PGは、本分野で知られた任意の適切な窒素保護基であり得る。特定の実施形態では、PGは、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、およびパラ−メトキシベンジルカルボニル(Moz)からなる群から選択される。
【化39】
(式中、PGは窒素の保護基である)
【0069】
方法は、式(XII)の化合物の合成をさらに含む。式(IV)の化合物(式中、Tはキラル補助剤である)のアミノアルキル化は、キラル補助剤の除去時に式(XII)の化合物に変換され得る式(XV)の化合物を提供し得る。
【化40】
【0070】
特定の実施形態では、式(XI)の化合物は、式(I)の化合物の合成について上述した方法を介して得られ得る。特に、式(XV)の化合物は、式(IV)の化合物の式(V)の化合物への変換において、少ない方の生成物として形成され得る。上記の反応工程およびスキームを用いて、式(XV)の化合物を式(XI)の化合物に順に変換することができる。したがって、中間体化合物、式(XII)および(XIII)の化合物はまた、このようにしてプロセスにおいて形成され得る。
【化41】
【0071】
E.式(Xl−a)の化合物
実施形態では、式(XI−a)の化合物、
【化42】
またはその薬学的に許容される塩を合成(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)が提供される。一実施形態では、C1−4アルキルは、C1−4フルオロアルキルである。
【0072】
方法は、6−アミノイソキノリンを式(XII−a)の化合物と反応させて、式(XIII−a)の化合物を形成することを含む。式(XIII−a)の化合物は、窒素保護基を除去することによって式(XI−a)の化合物に変換され得る。窒素保護基PGは、本分野で知られた任意の適切な窒素保護基であり得る。特定の実施形態では、PGは、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、およびパラ−メトキシベンジルカルボニル(Moz)からなる群から選択される。
【化43】
(式中、PGは窒素の保護基である)
【0073】
式(XII−a)の化合物の合成も含まれ得る。式(IV−a)の化合物(式中、Tはキラル補助剤である)のアミノアルキル化は、キラル補助剤の除去時に式(XII−a)の化合物に変換され得る式(XV−a)の化合物を提供し得る。
【化44】
【0074】
特定の実施形態では、Tは、式(IX)の化合物
【化45】
(式中、ZはSまたはOであり、BはSまたはOであり、Rは水素、C1−4アルキル、またはアリールであり、RはC1−4アルキル、C−C分枝アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)であり得る。
【0075】
特定の実施形態では、Tは、式(IX−b)の化合物
【化46】
(式中、ZはSまたはOであり、BはSまたはOであり、Rは水素またはアリールであり、RはC1−4アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)であり得る。
【0076】
特定の実施形態では、Tは、
【化47】
からなる群から選択され得る。
【0077】
特定の実施形態では、Tは、
【化48】
である。
【0078】
特定の実施形態では、式(XI−a)の化合物は、式(I−a)の化合物の合成について上述した方法を介して得られ得る。特に、式(XV−a)の化合物は、式(IV−a)の化合物の式(V−a)の化合物への変換において、少ない方の生成物として形成され得る。上記の反応工程およびスキームを用いて、式(XV−a)の化合物を式(XI−a)の化合物に順に変換することができる。したがって、中間体化合物、式(XII−a)および(XIII−a)の化合物はまた、このようにしてプロセスにおいて形成され得る。
【化49】
【0079】
F.化合物(11)
実施形態では、化合物(11)、
【化50】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法が提供される。
【0080】
方法は、6−アミノイソキノリンを化合物(12)と反応させて化合物(13)を形成することを含む。化合物(13)は、Boc保護基を除去することにより化合物(11)に変換され得る。
【化51】
【0081】
いくつかの実施形態では、方法は、化合物(12)の合成をさらに含む。化合物(8)にキラル補助剤を添加することにより、化合物(14)を得ることができる。化合物(14)のアミノアルキル化により、キラル補助剤の除去時に化合物(12)に変換され得る化合物(15)が得られ得る。
【化52】
【0082】
特定の実施形態では、化合物(11)は、化合物(1)の合成について上述した方法を介して得られ得る。特に、化合物(16)は、化合物(4)の化合物(5)への変換において、少ない方の生成物として形成され得る。上記の反応工程およびスキームを用いて、化合物(16)を化合物(11)に順に変換することができる。したがって、中間体化合物、化合物(12)および(13)はまた、このようにしてプロセスにおいて形成され得る。
【化53】
【0083】
別の態様では、本発明は、
【化54】
および塩基の存在下でアミンまたはアルコールをカルボン酸と反応させることを含む、アミドまたはエステル結合の形成方法を提供する。アミンおよびエステルは、一般に非反応性であると考えられる。一実施形態では、アミンは芳香族アミンである。一実施形態では、アルコールは芳香族アルコールである。1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルクロロホルメートは、容易にラセミ化されたカルボン酸、特にアルファ−芳香族酸の立体選択的カップリングを可能にし得る。
【0084】
別の態様では、本発明は、オキサゾリジニルイミドを
【化55】
と反応させることを含むアルファ−アルキル化イミドを合成するためのA法の形成方法を提供する。
【0085】
上記の構造およびスキームの説明に使用されている略語には、以下が含まれる。すなわち、ベンジルについてはBn、フェニルについてはPh、メチルについてはMe、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩についてはEDC、tert−ブチルカルボニルについてはBoc、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドについてはEDCI、ヒドロキシベンゾトリアゾールについてはHOBT、カルボニルジイミダゾールについてはCDI、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドについてはDCC、N,N’−ジプロピルカルボジイミドについてはDIC、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートについてはHBTU、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム3−オキシドヘキサフルオロホスフェートについてはHATU、ジメチルアミノピリジンについてはDMAP、リチウムヘキサメチルジシラジドについてはLiHMDS、ナトリウムヘキサメチルジシラジドについてはNaHMDS、カリウムヘキサメチルジシラジドについてはKHMDS、リチウムジイソプロピルアミドについてはLDA、ジメチルホルムアミドについてはDMF、テトラヒドロフランについてはTHFである。
【0086】
化合物および中間体は、有機合成の当業者に周知の方法によって単離および精製され得る。化合物を単離および精製するための従来の方法の例としては、限定されないが、例えば、「Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry」, 5th edition (1989), by Furniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, pub.Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載されるような、シリカゲル、アルミナまたはアルキルシラン基で誘導されたシリカのような固体支持体でのクロマトグラフィー、高温または低温での活性炭での任意の前処理を伴う再結晶、薄層クロマトグラフィー、様々な圧力での蒸留、真空下での昇華および粉砕を含み得る。
【0087】
開示された化合物は、少なくとも1つの塩基性窒素を有し得、それによって化合物を酸で処理して所望の塩を形成し得る。例えば、化合物を室温以上の温度で酸と反応させて所望の塩を得、これを沈殿させ、冷却後に濾過により回収し得る。反応に適した酸の例には、限定されないが、酒石酸、乳酸、コハク酸、およびマンデル酸、アトロ乳酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、炭酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、クエン酸、ヒドロキシ酪酸、ショウノウスルホン酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、アスパラギン酸、またはグルタミン酸などが含まれる。
【0088】
それぞれの個々の工程の最適反応条件および反応時間は、使用される特定の反応物および使用される反応物中に存在する置換基に依存して変化し得る。具体的な手順は、実施例の節に記載されている。反応は、従来の方法で仕上げることができ、例えば、残渣から溶媒を除去し、さらに限定されないが結晶化、蒸留、抽出、粉砕およびクロマトグラフィーなどの本分野で一般的に知られている方法に従ってさらに精製される。特に明記しない限り、出発物質および試薬は、市販されているか、または化学文献に記載された方法を用いて市販物質から当業者によって調製され得る。反応条件の適切な操作、合成経路の試薬および順序、反応条件と適合できない任意の化学官能基の保護、および方法の反応順序における適切な時点での脱保護を含む通常の実験は、本発明の範囲内である。適切な保護基ならびにそのような適切な保護基を使用して異なる置換基を保護および脱保護する方法は、当業者に周知であり、その例は、例えば、その全体が参照により本願明細書に組み込まれる、PGM Wuts and TW Greene, in Greene’s book titled Protective Groups in Organic Synthesis (4th ed.), John Wiley & Sons, NY (2006)に見い出され得る。記載された合成スキームおよび特定の実施例は例示的なものであり、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解され得る。合成方法および特定の実施例のすべての代替物、修飾物および等価物は、特許請求の範囲内に含まれる。
【0089】
3.化合物
A.式(I)の化合物
別の態様では、式(I)の化合物、
【化56】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)が本明細書に開示される。
【0090】
実施形態では、式(I)の化合物は、式(I−a)の化合物、
【化57】
またはその薬学的に許容される塩である(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)。
【0091】
実施形態では、式(I)の化合物は、化合物(1)、
【化58】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0092】
別の態様では、式(XI)の化合物、
【化59】
またはその薬学的に許容される塩を合成する方法(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)が本明細書に開示される。
【0093】
実施形態では、式(XI)の化合物は、式(XI−a)の化合物、
【化60】
またはその薬学的に許容される塩である(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)。
【0094】
実施形態では、式(XI)の化合物は、化合物(11)、
【化61】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0095】
この化合物は、不斉中心またはキラル中心が存在する立体異性体として存在し得る。立体異性体は、キラル炭素原子の周辺の置換基の配置に依存して、「R」または「S」である。本明細書で使用される用語「R」および「S」は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E, Fundamental Stereochemistry, in Pure Appl. Chem., 1976, 45: 13−30で定義される構造である。本開示は、種々の立体異性体およびそれらの混合物を想定しており、これらは特に本発明の範囲内に含まれる。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびにエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物が含まれる。化合物の個々の立体異性体は、不斉またはキラル中心を含有する市販の出発物質から、またはラセミ混合物の調製後、当業者に周知の分割方法によって合成的に調製され得る。これらの分割方法は、(1)エナンチオマーの混合物のキラル補助剤への結合、得られたジアステレオマー混合物の再結晶化またはクロマトグラフィーによる分離、およびFurniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, 「Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry」, 5th edition (1989), Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載されるような光学的に純粋な生成物を補助剤から任意に遊離させる、あるいは、(2)キラルクロマトグラフィーカラムでの光学エナンチオマーの混合物の直接分離、あるいは、(3)分別再結晶法により、例示される。
【0096】
化合物は、互変異性体および幾何異性体を有していてもよく、これらもまた本発明の態様を構成することを理解すべきである。
【0097】
本開示はまた、1つ以上の原子が、自然に広く見い出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換されていることを除いて、式(I)に記載されたものと同一である同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に含めるのに適した同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素および塩素の同位体であり、例えば、限定されないが、それぞれ H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36C1である。重水素、すなわちHのようなより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えばin vivoでの半減期の増加、または必要用量の減少から生じる特定の治療上の利点をもたらすことができ、したがって状況によっては好ましいことがある。化合物は、受容体の分布を決定するための医療用イメージングおよび陽電子放射断層撮影(PET)研究のための陽電子放出同位体を組み込むことができる。式(I)の化合物に組み込むことができる適切な陽電子放出同位体は、11C、13N、15O、および18Fである。同位体標識された式(I)の化合物は概して、同位体非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いて、当業者に既知の従来の技術によって、または添付の実施例に記載のものと類似の方法によって調製され得る。
【0098】
開示される化合物は、薬学的に許容される塩として存在し得る。用語「薬学的に許容される塩」は、妥当な利益/危険比に相応し、かつそれらの意図された使用に有効な、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応を伴わない障害の治療に適した、水溶性または油溶性若しくは分散性である、化合物の塩または双性イオンを指す。塩は、化合物の最終的な単離および精製の間に、または化合物のアミノ基を適切な酸と反応させることによって別個に調製され得る。例えば、化合物は、限定されないが、メタノールおよび水などの適切な溶媒に溶解され、塩酸のような少なくとも1当量の酸で処理され得る。得られた塩は沈殿し、濾過により単離され、減圧下で乾燥され得る。あるいは、溶媒および過剰の酸を減圧下で除去して塩を得ることができる。代表的な塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、イセチオン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などが含まれる。化合物のアミノ基は、また、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルなどの塩化アルキル、臭化アルキルおよびヨウ化アルキルで四級化され得る。
【0099】
塩基付加塩は、開示された化合物の最終的な単離および精製の間に、分子中に存在するならば、遊離カルボキシル基と、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、またはアルミニウムなどの金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩などの適切な塩基、あるいは有機第一級アミン、有機第二級アミン、または有機第三級アミンとの反応により調製され得る。第四級アミン塩は、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルフェネチルアミン、1−エフェナミンおよびN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどから誘導されたものように調製され得る。
【0100】
本発明の化合物および方法は、本発明の範囲を限定するものではなく、例示として意図される以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0101】
4.実施例
特に明記しない限り、温度は摂氏(℃)で示される。周囲温度、「rt」または「RT」(典型的には約18〜25℃の範囲)で合成操作を行った。溶媒の蒸発は、ロータリーエバポレーターを用いて60℃までの浴温度で減圧(典型的には4.5〜30mmHg)下で行った。典型的には薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて反応の経過を追跡した。与えられた、すべての融点は補正されていない。すべての中間体および最終生成物は、満足のいくH−NMR、HPLCおよび/または微量分析データを示した。L(リットル)、mL(ミリリットル)、mmol(ミリモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、min(分)、およびh(時間)の従来の略語が使用される。
【0102】
プロトン磁気共鳴(H NMR)スペクトルを、 VarianINOVA 600 MHz (H) NMR分析計、Varian INOVA 500 MHz (H) NMR分析計、Varian Mercury 300 MHz (H) NMR分析計、またはa Varian Mercury 200 MHz (H) NMR分析計のいずれかで記録した。指示された溶媒中ですべてのスペクトルを測定した。化学シフトは、テトラメチルシランの低磁場ppmで報告されているが、それらはH NMRのそれぞれの溶媒ピークの残留プロトンピークを基準とする。プロトン間結合定数は、ヘルツ(Hz)で報告される。
【0103】
実施例1:2−(4−(((2,4−ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)酢酸(9)
【化62】
2−(4−(ブロモメチル)フェニル)酢酸(B):アセトニトリル(22L)中のA(4.4kg、29.3mol、1当量)の溶液に、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(5740g、32.2mol、1.1当量)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(9.2g、0.02当量)を添加した。得られた混合物をゆっくりと80℃に加熱し、15〜30分間撹拌した。出発1がTLCで示されるように消費された後、反応混合物を−5℃までゆっくりと冷却し、−5℃で一晩保持した。得られた固体を濾過により回収した。濾過ケーキを石油エーテル/EtOAc(1:1)(5L)、石油エーテル(5L×2)、飽和NaHSO(水溶液)(5L)、水(5L)、および石油エーテル(5L)で洗浄し、表題化合物(2.3kg、収率34.2%)を得た。HPLC純度:96.8%(254nm);H NMR (300 MHz, DMSO−d) δ 12.3 (s, 1H), 7.4 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.2 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.7 (s, 2H), 3.57 (s, 2H).
【0104】
2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)酢酸(C):水(90L)中のNaOH(1.61kg、40.2mol、4当量)の溶液に、B(2.3kg、10.0mol、1当量)を加え、得られた混合物をRTで一晩撹拌した。TLC分析はBの消費を示した。次いで、反応混合物を濃HSO(1.0L)でpH約2まで慎重に酸性化した。次いで、固体NaCl(25kg)を混合物に加え、続いてEtOAc(33L×3)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、有意な量の固体が沈殿するまで濃縮した。得られた懸濁液を約4〜6℃で一晩保持してさらなる結晶化を可能にした。次いで、固体生成物を濾過によって回収した。濾過ケーキを石油エーテル(2L×2)で洗浄し、表題化合物(1.2kg、収率:71.9%)を得た。HPLC純度:97.8%(220nm);H NMR (300 MHz, DMSO−d) δ 12.27 (s, 1H), 7.26−7.12 (m, 4H), 5.14 (s, 1H), 4.47 (s, 2H), 3.53 (s, 2H).
【0105】
2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)酢酸メチル(D):MeOH(15L)中のC(2.5kg、15.06mol、1当量)の溶液に、0℃で濃HSO(1.5L)をゆっくり加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。TLCに示すようにCを消費した後、反応混合物を水(20L)に注ぎ、EtOAc(20L×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO溶液(水溶液)(20L×3)、次いでブライン(20L)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粘性油状物として表題化合物(2.2kg)を得た。HPLC純度:90%(220nm);H NMR (300 MHz, CDCl) δ 7.35−7.28 (m, 4H), 4.68 (s, 2H), 3.70 (s, 3H), 3.64 (s, 2H).
【0106】
2,4−ジメチル安息香酸4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)ベンジル(7):ジクロロメタン中の2,4−ジメチル安息香酸(6)(2.01kg、13.4mol、1.1当量)およびEDC(4.2kg、21.9mol、1.8当量)の溶液をRTで1h撹拌した。反応混合物にD(2.2kg、12.2mol、1当量)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(298g、2.44mol、0.2当量)を添加し、RTで一晩撹拌した。TLCによりDの消費が完了した後、反応混合物を1NのHCl溶液(16L×3)で3回、次いでブライン(16L)で1回洗浄した。分離した有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をMeOH中で再結晶させて、表題化合物(2.32kg、収率60.9%)を得た。HPLC純度:98.6%(210nm);H NMR (300 MHz, CDCl) δ 7.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.05 (m, 2H), 5.32 (s, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.64 (s, 2H), 2.60 (s, 3H), 2.36 (s, 3H).
【0107】
2−(4−(((2,4−ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)酢酸(9):THF(2.4L)中の7(1.2kg、3.85mol、1当量)の溶液に、LiOH(176g、4.2mol、1.1eq)の水(3.6L)溶液を1hかけて滴下しながら加えた。得られた混合物を1.5時間撹拌した。TLC分析は7の消費を示した。反応混合物をMTBE(2.5L×4)で洗浄した。水層を飽和クエン酸水溶液(550mL)でpH3〜4に酸性化し、沈殿物を形成した。得られた混合物をロータリーエバポレーターで濃縮して有機溶媒を除去した。次いで、固体生成物を濾過によって回収した。粗生成物を水(3.5L)中で30分間スラリー化した。濾過後、回収した固体をヘプタン(5L)中でスラリー化して、表題化合物(2.05kg、収率:89.6%)を得た。HPLC純度:100%(210nm);LCMS(ESI−):m/z=297(M−1)。H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.05 (m, 2H), 5.32 (s, 2H), 3.69 (s, 2H), 2.59 (s, 3H), 2.36 (s, 3H)。分析データが残留クエン酸の存在を示す場合、化合物は水/アセトンから再結晶され得る。
【0108】
実施例2:2,4−ジメチル安息香酸4−(2−クロロ−2−オキソエチル)ベンジル(8)
【化63】
2,4−ジメチル安息香酸4−(2−クロロ−2−オキソエチル)ベンジル(8):ジクロロメタン中の9(750.19g)および塩化オキサリル(1.15当量)を反応器に加え、続いてRTで18時間撹拌した。(0.5mlの反応物をメタノール(1ml)で処理した後、TLCにより9の消失をモニターした。過剰のメタノールの存在下で表題化合物(8)を対応するメチルエステル(化合物7)に定量的に変換した。TLCの結果は、出発物質9のH NMRスペクトル対反応混合物の蒸発したアリコートのスペクトルを比較することによって確認した。)反応混合物をロータリーエバポレーターに移し、油状物に濃縮し、ジクロロメタンでチェイス蒸留し、一晩乾燥させて、表題化合物794.7g(収率98.8%)を白色固体として得た。8は反応性であり、クロマトグラフすることができないので、化合物の同定を確認するために、IRによる特徴付けおよび参照スペクトルとの比較を行った。
【0109】
実施例3:2,4−ジメチル安息香酸(R)−4−(2−(4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−オキソエチル)ベンジル(4)
【化64】
2,4−ジメチル安息香酸(R)−4−(2−(4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−オキソエチル)ベンジル(4):THF中の(R)−(+)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(0.95当量)の溶液を−70℃でヘプタン(1.05当量)中のn−ブチルリチウムで処理し、続いて、内部温度を−65℃未満に維持する速度で、THF中の8(794.6g、1.0当量)の溶液を添加した。30分間撹拌した後、TLCは完全な変換を示し、反応は10%NHCl(水溶液)でクエンチした。水層を除去した後、有機層を濃縮してTHFを除去した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解した。水およびブラインで洗浄した後、得られた有機抽出物を減圧濃縮した。次いで、残留物をジクロロメタンでチェイス蒸留して1136.5gの粗生成物を得た。
【0110】
得られた粗生成物をジクロロメタンで希釈して43.4%w/wの溶液を得、これをシリカゲルクロマトグラフィー用に2つに分けた。43.4%w/wジクロロメタン溶液の分割は、精製がうまくいくのに有用であると判明している、シリカゲル対粗生成物の6.5:1の比を維持した。ジクロロメタン溶液43.4%w/wの2つの部分はそれぞれ、552.4gおよび568.4gの粗物質を含有していた。次いで、両方のジクロロメタン部分を十分なヘプタン/MTBE(3:1)混合物でさらに希釈して、ヘプタン/ジクロロメタン/MTBE(3:2:1)溶媒混合物溶液にした。それぞれの精製は、5kgのシリカゲルカラムで行われ、60Lのヘプタン/MTBE(75:25)、続いてヘプタン/酢酸エチル(3:1)で所望の生成物が溶出するまで溶出した。高濃度の所望の物質を含有する画分は、不純物含有量とは無関係にプールされ、真空中で濃縮して、937.2gの固体物質を得た。
【0111】
次いで、残渣を3容量の酢酸エチルに溶解させた。20μmのナイロンフィルターを用いてポリッシュ濾過を行い、0.5容量の酢酸エチルですすいだ。溶液をヘプタン(7容量)で処理して、一晩撹拌すると固体が形成した。混合物を5℃に冷却し、濾過した。固体生成物を濾過により単離した。得られた固体を追加のヘプタンで洗浄し、続いてオーブン中で真空乾燥して、表題化合物を白色固体として得た(707.2g;63.6%のアッセイ補正収率)。複数のガラス乾燥皿(スケールに適したもの)の使用は、固体の乾燥に有益であると決定された。
【表1】
【0112】
実施例4:2,4−ジメチル安息香酸4−((S)−1−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジル(5)
【化65】
2,4−ジメチル安息香酸4−((S)−1−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジル(5):THF中の4(691.33gアッセイ補正、1.0当量)の溶液を、−65℃〜−70℃で、ヘプタン中のLiHMDSの溶液(1.2当量+出発物質に含有される水分の調整)で処理し、次いで40分間撹拌した。N−Boc−1−アミノメチルベンゾトリアゾール(1.2当量)のTHF溶液の添加後、−30℃に加温し、−30℃で90分間撹拌した。1時間おいて採取した試料間のTLCによってさらなる変換が検出されなかった場合、反応は完了したとみなした。2容量の10%NHCl(水溶液)、続いて2容量の10%クエン酸(水溶液)を加えることにより反応をクエンチさせた。反応混合物を濃縮してTHFの大部分を除去し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、得られた有機抽出物を真空中で濃縮して1196.9gの粗生成物を得た。
【0113】
得られた粗生成物を希釈してジクロロメタン中の23.3%w/w溶液を得、これを純粋なジクロロメタンを用いたシリカゲルクロマトグラフィー用に5等分した。23.3%w/wジクロロメタン溶液の分割は、精製がうまくいくのに有用であると判明している、シリカゲル対粗生成物の20:1の比を維持した。23.3%w/wの量のジクロロメタン溶液を5つのカラムに充填して、それぞれ239.7g、240.3g、236.4g、233.8g、および229.1gの粗物質を示した。すべての5つのカラムからの画分を含有する生成物を合わせて濃縮した後、高真空下で乾燥させると、表題化合物が淡黄色固体として単離された(619.3g;アッセイ補正収率68%)。
【表2】
【0114】
実施例5:(S)−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(((2,4−ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパン酸(2)
【化66】
(S)−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(((2,4−ジメチルベンゾイル)オキシ)メチル)フェニル)プロパン酸(2):5(600.1g、1.0当量)をTHF/水(75:25)混合物に溶解し、−5℃に冷却した。混合物をH(4.0当量)、続いてLiOH−HO(1.2当量)で処理すると、過酸中間体に迅速に変換した。次いで、反応混合物を亜硫酸カリウム水溶液(6当量)でクエンチした。副生成物の硫酸塩を濾過により除去し、続いて得られた濾液を2等分した。濾液を真空下で濃縮してTHF溶媒の大部分を除去した。得られた2つの水溶液を合わせ、MTBE/クエン酸で抽出した。有機抽出物を水で洗浄し、濃縮した。
【0115】
得られた残渣を4容量のMTBEに溶解させた。(R)−(+)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノンを播種し、−25℃に冷却すると、固体が結晶化した。化合物Eを濾過により除去し、濾液を濃縮し、得られた残渣を酢酸エチルで2回チェイス蒸留し、高真空下で乾燥させた。
【0116】
得られた固体の結晶化は、乾燥残渣の重量を基準にして4容量の酢酸エチルおよび貧溶媒として14容量のヘプタンを用いて行った。一晩撹拌すると、白色固体が結晶化し、これを濾過し、乾燥させて371.7gの表題化合物を得、これをプロセス中の純度およびキラル純度分析に付した。固体は、化合物Eおよび(S)−3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)プロパン酸(F)の濃度、反応の両副生成物を除いて、これらの2つの試験に関するすべての事前設定された仕様を満たした。
【0117】
固体の追加の再結晶は、固体の重量に基づいて4容量の酢酸エチルおよび貧溶媒として14容量のヘプタンを用いて行われた。高真空下で乾燥させた後、表題化合物を白色固体として得た(341.3g;78.0%のアッセイ補正)。
【表3】
【0118】
望ましくない副生成物Fの量を減少させるために、最初のTHFの蒸発終了時に得られた塩基性の大部分の水溶液を5±3℃で反応器に貯蔵し、その後の部分を蒸発させることが有用であり得る。また、亜硫酸カリウム添加後に生成された水酸化物を中和して、Fの形成を防止することも有用であり得る。
【0119】
実施例6:2,4−ジメチル安息香酸(S)−4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−(イソキノリン−6−イルアミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジル(3)
【化67】
2,4−ジメチル安息香酸(S)−4−(3−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−1−(イソキノリン−6−イルアミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジル(3):50Lの反応器中、0℃のDMF中の2(340.41gのアッセイ補正、1.0当量)、コリジン(1.3当量)および6−アミノイソキノリン(1.3当量)の混合物を、DMF中のクロロギ酸2,2,2−トリクロロ−1,1−ジメチルエチル(1.3当量)の溶液で一度に急速に処理した。反応は発熱性であり、温度は約10℃まで上昇した。最低60分間撹拌して、反応をTLCによりアッセイし、1時間おいて試料を2回採取してもそれ以上の変換を示さなければ、反応が完了したとみなした。10%KHCO(水溶液)を加えてクエンチし、その後、酢酸エチルで希釈し、クエン酸で洗浄し、最後に10%KHCO(水溶液)で洗浄し、ほぼ乾固するまで濃縮して粗残渣を得た。
【0120】
粗残渣をジクロロメタン/酢酸エチル(1:1)に溶解させ、得られた溶液を50L反応器に戻し、4.5時間撹拌した。得られた溶液を10μmテフロンフィルターで濾過してコロイド状固体を除去した。10μmのテフロンフィルターの選択は、十分な表面積を有し、ジクロロメタン/酢酸エチル(1:1)溶媒混合物と化学的に相性のよいフィルターに基づいていた。濾液を真空中で濃縮して、666.3gの粗物質を得た。
【0121】
得られた粗生成物をジクロロメタンで希釈して溶液を得、これをシリカゲルクロマトグラフィー用に2つに分けた。ジクロロメタン溶液の分割は、精製がうまくいくのに有用であると判明している、シリカゲル対粗生成物の25:1の比を維持した。ジクロロメタン溶液の2つの部分はそれぞれ166.5gおよび170.2gの粗生成物を示した。精製は、所望の生成物が溶出するまで酢酸エチル/ヘプタン(60:40)で溶出する2つの5kgシリカゲルカラムの使用によって行われた。所望の物質の高濃度を含有する画分は、不純物含量とは無関係に、合わせて濃縮して363.3gの灰白色固体を得た。
【0122】
オフホワイトの固体をジクロロメタンに溶解し、10μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した。次いで、溶媒の大部分を留去し、残りを徐々にチェイス蒸留によってアセトニトリルに交換した。この時点で、白色固体が結晶化し、混合物を0±5℃に冷却した。固体を濾過により単離し、乾燥させて333.7gの白色固体を得た。固体試料をTLCおよびHPLC純度分析に付した。TLCによって不純物は検出されなかったが、HPLC分析では0.46%の濃度で特定されていない不純物の存在が示されたが、同定されたすべての不純物はプロセス中の処理濃度(In−Process−Action−Level)未満であった。
【0123】
次いで、ジクロロメタン/ヘプタンからの最初の再結晶を実施した。固体をジクロロメタンに溶解した後、ヘプタンを加え、得られた混合物を室温で4h撹拌した。白色固体が結晶化した。固体を濾過し、乾燥させて307.0gの固体を得た。固体の試料を採取し、TLCおよびHPLC純度分析に付した。TLCで不純物は検出されなかったが、HPLC分析では、同じ特定されていない不純物の存在を示されたが、0.28%の濃度に低下した。
【0124】
第2再結晶を用いた。固体をジクロロメタンに溶解した後、ヘプタンを加え、得られた混合物を室温で3.5h撹拌した。白色固体が結晶化した。固体を濾過し、乾燥させて固体288.5gを得、これをHPLC純度分析に付した。再度、HPLC分析では、同じ特定されていない不純物の存在を示し、今回は0.16%の濃度に低下した。
【0125】
第3再結晶は最初の2つと同様に実施された。固体をジクロロメタンに溶解した後、ヘプタンを加え、得られた混合物を室温で4h撹拌した。白色固体が結晶化した。白色固体を濾過し、乾燥させて、標記化合物を白色固体として得た(272.1g;アッセイ補正収率60.5%)。
【0126】
ジクロロメタン/ヘプタンからの第4再結晶を利用した。固体をジクロロメタンに溶解した後、ヘプタンを加え、得られた混合物を室温で4h撹拌し、その間に白色固体が結晶化した。白色固体を濾過し、乾燥させて、HPLC純度試験に付した。不純物は、0.05%未満で検出された。ジクロロメタン/ヘプタンからの第4再結晶により、250.9gの標記化合物(アッセイ補正収率55.3%)が白色固体として得られた。
【0127】
所望の生成物のさらに高い純度を達成するために、追加の再結晶を実施することが有用であり得る。
【表4】
【0128】
実施例7:2,4−ジメチル安息香酸(S)−4−(3−アミノ−1−(イソキノリン−6−イルアミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジルジメタンスルホン酸(1)
【化68】
2,4−ジメチル安息香酸(S)−4−(3−アミノ−1−(イソキノリン−6−イルアミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジルジメタンスルホン酸(1):ジクロロメタン中の3(242.68gのアッセイ補正、1.0当量)の溶液をメタンスルホン酸(2.5当量)で処理し、室温で48時間撹拌した。次いで、反応混合物を2h加熱還流した。反応の完了は、TLCアッセイによって確かめられた。次いで、ジクロロメタンからイソプロパノールへの漸進的な溶媒交換を行った。ジクロロメタン溶媒の大部分を、低真空(200〜400mmHg)下、45℃での蒸留によって除去した。イソプロパノールの添加、続いて10容量の留出物が収集されるまで60℃での低真空蒸留を行い、残留ジクロロメタンを除去した。IPAの第2部分を添加し、60℃で反応混合物の初期容量まで低真空蒸留によって容量を調整した。
【0129】
20±5℃に冷却し、この温度で9h撹拌して、機械的撹拌および窒素の気流下で、濾過反応器に収容された30ミクロンのテフロンフィルターで濾過することによりジメシル酸塩を固体として単離した。ヘプタンですすいだ後、得られたペースト状の固体を乾燥皿に移し、続いて69℃で予熱した真空オーブンに移した。真空下で24.5時間乾燥した後、固体をガラス乳鉢および乳棒で粉砕した。得られた自由流動性固体を不純物分析のために提出し、固体はすべての純度の仕様を満たした。固体を真空下で69℃でさらに96h乾燥させて残留イソプロパノールを除去した。その後、固体はイソプロパノール含量仕様および水含量仕様の両方を満たした。表題化合物を白色固体として得た(258.7g;アッセイ補正収率90.3%)。
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
実施例8.N−Boc−1−アミノメチルベンゾトリアゾールの合成。
【化69】
トルエン(217mL)中の1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾール(12g、80.5mmol)に、tert−ブチルカルバメート(9.4g、80.5mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(30.7mg、0.2mmol)を加え、溶液をDean−Starkトラップを用いて24時間還流させた(110〜120℃)。トルエンの半分を蒸発させ、溶液を0℃に冷却し、生成物を再結晶させた。トルエンをデカントし、新鮮なトルエン(50〜55mL)を加えた。溶液を100℃に加熱して溶解し、次いで再び0℃に冷却した。再結晶により、N−Boc−1−アミノメチルベンゾトリアゾール(11.9g、60%、純度94%)を得た。反復再結晶(2回)を行い、純粋なN−Boc−1−アミノメチルベンゾトリアゾール(>95%純度、9.9g、50%)を得た。
【表9】
【0134】
実施例9.N−Boc−1−アミノメチルベンゾトリアゾールの再結晶
N−Boc−1−アミノメチルベンゾトリアゾール(90g)を熱い(40±5℃)アセトン(608mL)に溶解させ、濾過し(Whatmann 1濾紙)、アセトン(2×40mL)で洗浄し、次いで濃縮した。固体にIPA(2×250mL)を添加し、毎回濃縮した。再びIPA(900mL)を加え、溶液を2Lの3つ口丸底フラスコに移し、70±5℃(透明溶液)に加熱した。溶液を室温に冷却し、一晩撹拌した。白色の結晶性沈殿物が観察された。混合物を−40±5℃に冷却し、30分間撹拌した。白色結晶を濾過し、IPA(2×50mL)で洗浄し、室温で1時間減圧乾燥した。次いで、結晶を真空下70±5℃で48時間乾燥させて、71.1g(79%)の白色結晶性固体を得た。
【0135】
前述の詳細な説明および添付の実施例は、単なる例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。
【0136】
開示された実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者には明らかであろう。本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、処方物、または使用方法に関連するものを含むが、これらに限定されないそのような変更および改変が、その精神および範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0137】
(付記)
(付記1)
式(I−a)の化合物
【化70】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)、またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、
(a)式(II−a)の化合物
【化71】
(式中、PGは、窒素保護基である)を6−アミノイソキノリンと反応させて、式(III−a)の化合物
【化72】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)を形成すること、
および、
(b)前記窒素保護基を除去して式(I−a)の化合物を形成すること、
を含む、方法。
【0138】
(付記2)
(a)式(IV−a)の化合物
【化73】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数であり、Tはキラル補助剤である)を
【化74】
(式中、PGは、窒素保護基である)と、塩基の存在下で、反応させて、式(V−a)の化合物
【化75】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数であり、Tはキラル補助剤である)を形成すること、および、
(b)前記キラル補助剤を除去して式(II−a)の化合物を形成すること、
をさらに含む、付記1に記載の方法。
【0139】
(付記3)
式(VIII−a)の化合物
【化76】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数であり、Rは、ハロゲン、OR、OC(O)R、SR、またはSC(O)Rであり、Rは、H、アルキル、またはアリールであり、Rは、アルキルまたはアリールである)を式(IV−a)の化合物
【化77】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数であり、Tはキラル補助剤である)に変換させること、をさらに含む、付記2に記載の方法。
【0140】
(付記4)
式(II−a)の化合物が、
(a)
【化78】
を式(VI−a)の化合物
【化79】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)と反応させて、式(VII−a)の化合物
【化80】
(式中、各Rは、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシおよびシアノからなる群から独立して選択され、nは0〜3の整数である)を形成すること、および、
(b)式(VII−a)の化合物を式(VIII−a)の化合物に変換すること、
を含む方法により合成される、付記3に記載の方法。
【0141】
(付記5)
nが2であり、各Rがメチルである、付記1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
(付記6)
式(I−a)の化合物が、
【化81】
である、付記1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
(付記7)
式(VIII−a)の化合物が、
【化82】
である、付記3〜6のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
(付記8)
nが0である、付記1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
(付記9)
Tが、
【化83】
(式中、
Zは、SまたはOであり、
Bは、SまたはOであり、
は、水素、C1−4アルキル、またはアリールであり、
は、C1−4アルキル、C3−7分枝アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)
である、付記2〜8のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
(付記10)
Tが、
【化84】
(式中、
Zは、SまたはOであり、
Bは、SまたはOであり、
は、水素またはアリールであり、
は、C1−4アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)
である、付記9に記載の方法。
【0147】
(付記11)
Tが、
【化85】
からなる群から選択される、付記10に記載の方法。
【0148】
(付記12)
Tが、
【化86】
である、付記11に記載の方法。
【0149】
(付記13)
以下の式の化合物
【化87】
、またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、
(a)
【化88】
を塩素化剤と反応させて、酸塩化物を形成することと、
(b)前記酸塩化物をn−ヘプタンから結晶化させて、精製された酸塩化物を形成することと、
(c)塩基の存在下で、前記精製された酸塩化物を
【化89】
と反応させて、
【化90】
を形成することと、
(d)−50℃および−20℃の間の温度で塩基の存在下で前記工程(c)の生成物を
【化91】
と反応させて、
【化92】
を形成することと、
(e)前記工程(d)の生成物をLiOOHと反応させて、
【化93】
を形成することと、
(f)前記工程(e)の生成物を再結晶させて、精製された前記工程(e)の生成物を形成することと、
(g)前記工程(f)の精製された生成物のカルボン酸基を活性化させると共に、前記活性化カルボン酸を6−アミノイソキノリンと反応させて、
【化94】
を形成することと、
(h)前記工程(g)の生成物を再結晶することと、
(i)前記工程(h)の生成物を少なくとも2当量のMeSOHと反応させて、
【化95】
を形成することと、
含む、方法。
【0150】
(付記14)
前記工程(a)の塩素化剤が、塩化オキサリルまたは塩化チオニルである、付記13に記載の方法。
【0151】
(付記15)
前記工程(c)の塩基が、NaH、LiH、KH、nBuLi、secBuLi、LiHMDS、NaHMDS、またはKHMDSであり、前記工程(b)が−90℃および50℃の間の温度で行われる、付記13に記載の方法。
【0152】
(付記16)
前記工程(d)の塩基が、LiHMDSまたはNaHである、付記13に記載の方法。
【0153】
(付記17)
前記LiOOHが、水酸化リチウムおよび過酸化水素によってその場で形成される、付記13に記載の方法。
【0154】
(付記18)
前記カルボン酸基が、約0℃の温度で、トリクロロジメチルエチルクロロホルメートおよびコリジンを添加することによって、前記工程(g)において活性化される、付記13に記載の方法。
【0155】
(付記19)
前記工程(f)の精製された生成物、6−アミノイソキノリン、およびコリジンを混合し、続いてトリクロロジメチルエチルクロロホルメートを添加する、付記18に記載の方法。
【0156】
(付記20)
前記カルボン酸基は、混合無水物中間体への変換によって活性化される、付記18に記載の方法。
【0157】
(付記21)
式(I)の化合物、
【化96】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)、またはその薬学的に許容される塩を合成する方法であって、
(a)式(II)の化合物
【化97】
(式中、PGは、窒素保護基である)を6−アミノイソキノリンと反応させて、式(III)の化合物
【化98】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)を形成すること、および、
(b)前記窒素保護基を除去して式(I)の化合物を形成すること、
を含む、方法。
【0158】
(付記22)
(a)式(IV)の化合物
【化99】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルであり、Tはキラル補助剤である)を
【化100】
(式中、PGは、窒素保護基である)と反応させて、式(V)の化合物
【化101】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルであり、Tはキラル補助剤である)を形成すること、および、
(b)前記キラル補助剤を除去して式(II)の化合物を形成すること、
をさらに含む、付記21に記載の方法。
【0159】
(付記23)
式(VIII)の化合物
【化102】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルであり、Rは、ハロゲン、OR、OC(O)R、SR、またはSC(O)Rであり、Rは、H、アルキル、またはアリールであり、Rは、アルキルまたはアリールである)を式(IV)の化合物
【化103】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルであり、Tはキラル補助剤である)に変換させること、をさらに含む、付記22に記載の方法。
【0160】
(付記24)
式(II)の化合物が、
(a)
【化104】
を式(VI)の化合物
【化105】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)と反応させて、式(VII)の化合物
【化106】
(式中、Aは、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、およびシアノからなる群から独立して選択される0〜3個の置換基で置換されたシクロヘキシルまたはフェニルである)を形成すること、および、
(b)式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物に変換すること、
を含む方法により合成される、付記23に記載の方法。
【0161】
(付記25)
Tが、
【化107】
(式中、
Zは、SまたはOであり、
Bは、SまたはOであり、
は、水素、C1−4アルキルまたはアリールであり、
は、C1−4アルキル、C3−7分枝アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)
である、付記22〜24のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
(付記26)
Tが、
【化108】
(式中、
Zは、SまたはOであり、
Bは、SまたはOであり、
は、水素またはアリールであり、
は、C1−4アルキル、アリールアルキルまたはアリールである)
である、付記25に記載の方法。
【0163】
(付記27)
Tが、
【化109】
からなる群から選択される、付記26に記載の方法。
【0164】
(付記28)
Tが、
【化110】
である、付記27に記載の方法。
【0165】
(付記29)
【化111-1】
【化111-2】
からなる群から選択される、化合物。
【0166】
(付記30)
【化112】
および塩基の存在下で、アミンまたはアルコールをカルボン酸と反応させることを含む、アミド結合またはエステル結合を形成する方法。
【0167】
(付記31)
前記アミンが、芳香族アミンである、付記31に記載の方法。
【0168】
(付記32)
前記アルコールが、芳香族アルコールである、付記32に記載の方法。
【0169】
(付記33)
【化113】
による化合物。
【0170】
(付記34)
塩基の存在下で、オキサゾリジニルイミドを
【化114】
と反応させることを含む、アルファ−アルキル化イミドを合成する方法。