(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832958
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】診断的経頭蓋手順および治療的経頭蓋手順のための患者個体別ヘッドセット
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20210215BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20210215BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20210215BHJP
A61N 7/02 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
A61B8/00
A61B5/055 390
G01T1/161 A
A61N7/02
【請求項の数】51
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-562396(P2018-562396)
(86)(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公表番号】特表2019-510599(P2019-510599A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】CA2017050230
(87)【国際公開番号】WO2017143444
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2020年2月5日
(31)【優先権主張番号】62/298,873
(32)【優先日】2016年2月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514125101
【氏名又は名称】サニーブルック リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クレルヴォ・ヘンリク・ヒュニュネン
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0241529(US,A1)
【文献】
特表2006−523509(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0210134(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第1809317(CN,A)
【文献】
国際公開第2002/043805(WO,A1)
【文献】
米国特許第8086336(US,B2)
【文献】
国際公開第2015/092604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B8/00 − 8/15
A61N7/00 − 7/02
A61B5/055
G01T1/161− 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断的経頭蓋手順または治療的経頭蓋手順を実施するためのシステムであって、
患者個体別経頭蓋ヘッドセットであって、
患者の頭部の一部分の解剖学的曲線に形状合致するように構成された患者個体別フレームであって、前記患者に関連する体積測定画像データに基づき作製された、患者個体別フレーム、および
前記患者個体別フレームにより支持された複数のトランスデューサであって、前記患者個体別フレームに対して事前選択された位置および配向に支持される、複数のトランスデューサ
を備える、患者個体別経頭蓋ヘッドセットと、
前記複数のトランスデューサに動作可能に接続された制御および処理ハードウェアであって、
前記体積測定画像データに前記複数のトランスデューサの前記事前選択された位置および配向を空間的に位置合わせするトランスデューサ位置合わせデータを取得し、
事前選択された組織領域にエネルギーを集束するために前記複数のトランスデューサの少なくとも一部分を制御する
ように構成された、制御および処理ハードウェアと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記複数のトランスデューサの少なくとも一部分が、フェーズドアレイトランスデューサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フェーズドアレイトランスデューサの少なくとも一部分が、超音波トランスデューサである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記フェーズドアレイトランスデューサは、分散アレイを形成する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記フェーズドアレイトランスデューサの少なくとも一部分が、磁気共鳴コイルである、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
光音響検出を実施するために適したものになるように、前記複数のトランスデューサの第1の部分が超音波トランスデューサであり前記複数のトランスデューサの第2の部分が光トランスデューサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
同時的な超音波イメージングおよびMRイメージングまたはMRイメージングを利用しつつの超音波処理の実施に適したものになるように、前記複数のトランスデューサの第1の部分が超音波トランスデューサであり、前記複数のトランスデューサの第2の部分がMRIコイルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
MRイメージングおよびPETイメージングの両方を実施するのに適したものとなるように、前記複数のトランスデューサの第1の部分がMRIコイルであり、前記複数のトランスデューサの第2の部分が陽電子放射検出器(PET)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
超音波療法の実施またはイメージングをしつつMRイメージングおよびPETイメージングの両方を実施するのに適したものとなるように、前記複数のトランスデューサの第1の部分がMRIコイルであり、前記複数のトランスデューサの第2の部分が陽子放出検出器(PET)であり、前記複数のトランスデューサの第3の部分が超音波トランスデューサである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御および処理ハードウェアは、
前記複数のトランスデューサのサブセットの各トランスデューサごとに、前記患者個体別フレームに対する前記患者の頭蓋骨の空間オフセットを測定するために、トランスデューサの前記サブセットを制御し、
前記事前選択された組織領域に対する前記複数のトランスデューサの空間的位置合わせを補正するために前記空間オフセットを使用する
ようにさらに構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のトランスデューサの前記サブセットの少なくとも一部分が、超音波トランスデューサである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のトランスデューサの前記サブセットの少なくとも一部分が、光コヒーレンストモグラフィシステムに動作可能に接続された光ファイバである、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記患者個体別フレームは、前記患者の頭部の前記一部分の解剖学的曲線に形状合致するプラスチック支持部を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記プラスチック支持部は、前記複数のトランスデューサを受け固定するために形成された装着インターフェースを備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
各装着インターフェースが、トランスデューサのサブアレイを備えるトランスデューサモジュールを受け支持するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
各装着インターフェースおよび各トランスデューサモジュールが、所与のトランスデューサモジュールがその各装着インターフェースに固有に嵌着するように固有の形状を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
各サブアレイが、フェーズドアレイを形成するためのトランスデューサ素子を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
各サブアレイが、集束超音波ビームを発生させるために適した複数の超音波トランスデューサ素子を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記装着インターフェースの前記事前選択された位置および配向は、グレーティングローブを低減させるように選択される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
各トランスデューサモジュールが、前記患者の頭蓋骨からの反射を受けるように構成された少なくとも1つのイメージングトランスデューサをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記装着インターフェースは、前記複数のトランスデューサを受けるための複数の凹部を備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
前記患者個体別経頭蓋ヘッドセットは、結合層をさらに備え、前記結合層は、前記患者個体別経頭蓋ヘッドセットが着用された場合に、前記結合層の外方表面が前記複数のトランスデューサの遠位表面に接触し、前記結合層の内方表面が前記患者の頭部に接触し、それにより前記患者個体別フレームと前記患者の頭部との間におけるエネルギー結合が助長されるように、前記患者個体別フレームの内方表面に隣接して設けられる、請求項1から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記患者個体別フレームは、装着された1つまたは複数の基準マーカをさらに備え、前記システムは、
前記基準マーカからの信号を検出し、術中基準座標系内における前記患者個体別フレームの空間位置および空間配向を判定するように構成されたトラッキングシステムと、
誘導画像を生成および表示するために前記患者個体別フレームの前記空間位置および空間配向を使用するように構成された誘導システムと
をさらに備える、請求項1から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記トランスデューサは、取外し可能である、請求項1から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
診断法または治療手段のための経頭蓋ヘッドセットを作製する方法であって、
患者の頭部の体積測定画像データから、前記患者の頭部の一部分の解剖学的曲線を特徴付ける表面データを取得するステップと、
患者個体別フレームが前記患者の頭部の前記一部分の前記解剖学的曲線に形状合致するように、前記患者個体別フレームのデジタルモデルを生成するために前記表面データを使用するステップと、
前記患者個体別フレームが、前記患者の頭部に対して事前選択された位置および配向に複数のトランスデューサを受け支持するための複数のトランスデューサ装着インターフェースを備えるように、前記デジタルモデルを修正するステップと、
前記デジタルモデルにしたがって前記患者個体別フレームを作製するステップと、
前記トランスデューサ装着インターフェースに前記複数のトランスデューサを固定するステップと、
前記体積測定画像データに対する前記複数のトランスデューサの前記位置および配向を特徴付けるトランスデューサ位置合わせデータを生成するステップと
を含む、方法。
【請求項26】
前記患者個体別フレームを作製する前記ステップは、前記患者個体別フレームを3Dプリンティングするステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記患者個体別フレームを作製する前記ステップは、型を作製し、前記患者個体別フレームを作製するために前記型を使用するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記トランスデューサの少なくとも一部分が、フェーズドアレイ超音波トランスデューサであり、前記フェーズドアレイ超音波トランスデューサに関連付けられた前記トランスデューサ装着インターフェースの前記事前選択された位置および配向は、グレーティングローブを低減させるように選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
診断的経頭蓋手順または治療的経頭蓋手順を実施するためのキットであって、
患者個体別経頭蓋ヘッドセットであって、
患者の頭部の一部分の解剖学的曲線に形状合致するように構成された患者個体別フレームであって、前記患者に関連する体積測定画像データに基づき作製された、患者個体別フレーム、および
前記患者個体別フレームにより支持された複数のトランスデューサであって、前記患者個体別フレームに対して事前選択された位置および配向に支持される、複数のトランスデューサ
を備える、患者個体別経頭蓋ヘッドセットと、
前記体積測定画像データに前記複数のトランスデューサの前記事前選択された位置および配向を空間的に位置合わせするトランスデューサ位置合わせデータと
を備える、キット。
【請求項30】
前記複数のトランスデューサの少なくとも一部分が、フェーズドアレイトランスデューサである、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記フェーズドアレイトランスデューサの少なくとも一部分が、超音波トランスデューサである、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記フェーズドアレイトランスデューサは、散在アレイを形成する、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記フェーズドアレイトランスデューサの少なくとも一部分が、磁気共鳴コイルである、請求項30に記載のキット。
【請求項34】
前記複数のトランスデューサの第1の部分が超音波トランスデューサであり、前記複数のトランスデューサの第2の部分が光トランスデューサである、請求項29に記載のキット。
【請求項35】
前記患者個体別経頭蓋ヘッドセットが同時的な超音波イメージングおよびMRイメージングまたはMRイメージングを利用しつつの超音波処理の実施に適したものになるように、前記複数のトランスデューサの第1の部分が超音波トランスデューサであり、前記複数のトランスデューサの第2の部分がMRIコイルである、請求項29に記載のキット。
【請求項36】
前記患者個体別経頭蓋ヘッドセットがMRイメージングおよびPETイメージングの両方を実施するのに適したものとなるように、前記複数のトランスデューサの第1の部分がMRIコイルであり、前記複数のトランスデューサの第2の部分が陽電子放射検出器(PET)である、請求項29に記載のキット。
【請求項37】
前記患者個体別経頭蓋ヘッドセットが超音波療法の実施またはイメージングをしつつMRイメージングおよびPETイメージングの両方を実施するのに適したものとなるように、前記複数のトランスデューサの第1の部分がMRIコイルであり、前記複数のトランスデューサの第2の部分が陽子放出検出器(PET)であり、前記複数のトランスデューサの第3の部分が超音波トランスデューサである、請求項29に記載のキット。
【請求項38】
前記複数のトランスデューサのサブセットが、トランスデューサの前記サブセットの各トランスデューサごとに、前記患者個体別フレームに対する前記患者の頭蓋骨の空間オフセットを測定するように構成される、請求項29から37のいずれか一項に記載のキット。
【請求項39】
前記複数のトランスデューサの前記サブセットの少なくとも一部分が、超音波トランスデューサである、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記複数のトランスデューサの前記サブセットの少なくとも一部分が、光コヒーレンストモグラフィシステムに動作可能に接続された光ファイバである、請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記患者個体別フレームは、前記患者の頭部の前記一部分の解剖学的曲線に形状合致するプラスチック支持部を備える、請求項29から40のいずれか一項に記載のキット。
【請求項42】
前記プラスチック支持部は、前記複数のトランスデューサを受け固定するために形成された装着インターフェースを備える、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
各装着インターフェースが、トランスデューサのサブアレイを備えるトランスデューサモジュールを受け支持するように構成される、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
各装着インターフェースおよび各トランスデューサモジュールが、所与のトランスデューサモジュールがその各装着インターフェースに固有に嵌着するように固有の形状を有する、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
各サブアレイが、フェーズドアレイを形成するためのトランスデューサ素子を備える、請求項43に記載のキット。
【請求項46】
各サブアレイが、集束超音波ビームを発生させるために適した複数の超音波トランスデューサ素子を備える、請求項43に記載のキット。
【請求項47】
前記装着インターフェースの前記事前選択された位置および配向は、グレーティングローブを低減させるように選択される、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
各トランスデューサモジュールが、前記患者の頭蓋骨からの反射を受けるように構成された少なくとも1つのイメージングトランスデューサをさらに備える、請求項46に記載のキット。
【請求項49】
前記装着インターフェースは、前記複数のトランスデューサを受けるための複数の凹部を備える、請求項42に記載のキット。
【請求項50】
前記患者個体別フレームは、装着された1つまたは複数の基準マーカをさらに備える、請求項29から49のいずれか一項に記載のキット。
【請求項51】
前記トランスデューサは、取外し可能である、請求項29から50のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「PATIENT-SPECIFIC HEADSET FOR DIAGNOSTIC AND THERAPEUTIC TRANSCRANIAL PROCEDURES」と題する2016年2月23日出願の米国特許仮出願第62/298,873号に基づく優先権を主張する。この仮出願の全内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、経頭蓋診断法(transcranial diagnostic procedure)および経頭蓋治療手段(transcranial therapeutic procedure)に関する。
【背景技術】
【0003】
なんら処理を施されていない頭蓋骨を通して脳に集束超音波を印加することは、今日の臨床実施に至るまでの長い歴史を有する。1980年に単一トランスデューサを使用して動物の脳組織を経頭蓋的にアブレーションすることに初めて成功して以来、今日の1000個を超える要素からなる半球フェーズドアレイを使用した本能的振戦の治療のための磁気共鳴(MR)誘導下集束超音波の多施設臨床試験に至るまで、新たなフェーズドアレイ設計が、頭蓋骨収差補正、定常波低減、頭蓋骨加熱、2周波血液脳関門破壊などの以前の難点を克服するためにコンセプト化されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8,086,336号
【特許文献2】米国特許第6,612,988号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
患者個体別経頭蓋ヘッドセットを使用して診断的経頭蓋手順(diagnostic transcranial procedure)または治療的経頭蓋手順(therapeutic transcranial procedure)を実施するためのシステム、方法、およびデバイスが提供される。患者個体別ヘッドセットは、患者の頭部の一部分の解剖学的曲線に形状合致するように体積測定画像データにしたがって作製された患者個体別フレームを備え得る。患者個体別フレームは、体積測定画像データに空間的に位置合わせされ得る事前選択された位置および配向に複数のトランスデューサを支持するように構成される。この空間的位置合わせは、事前選択された組織領域にエネルギーを集束させるためにトランスデューサの少なくとも一部分を制御するために使用され得る。
【0006】
したがって、第1の態様では、診断的経頭蓋手順または治療的経頭蓋手順を実施するためのシステムであって、
患者個体別経頭蓋ヘッドセットであって、
患者の頭部の一部分の解剖学的曲線に形状合致するように構成された患者個体別フレームであって、患者に関連する体積測定画像データに基づき作製された、患者個体別フレーム、および
患者個体別フレームにより支持された複数のトランスデューサであって、前記患者個体別フレームに対して事前選択された位置および配向に支持される、複数のトランスデューサ
を備える、患者個体別経頭蓋ヘッドセットと、
前記複数のトランスデューサに動作可能に接続された制御および処理ハードウェアであって、
体積測定画像データに前記複数のトランスデューサの事前選択された位置および配向を空間的に位置合わせするトランスデューサ位置合わせデータを取得し、
事前選択された組織領域にエネルギーを集束するために前記複数のトランスデューサの少なくとも一部分を制御する
ように構成された、制御および処理ハードウェアと
を備える、システムが提供される。
【0007】
別の態様では、診断法または治療手段のための経頭蓋ヘッドセットを作製する方法であって、
患者の頭部の体積測定画像データから、患者の頭部の一部分の解剖学的曲線を特徴付ける表面データを取得するステップと、
患者個体別フレームが患者の頭部の部分の解剖学的曲線に形状合致するように、患者個体別フレームのデジタルモデルを生成するために表面データを使用するステップと、
患者個体別フレームが、患者の頭部に対して事前選択された位置および配向に複数のトランスデューサを受け支持するための複数のトランスデューサ装着インターフェースを備えるように、デジタルモデルを修正するステップと、
デジタルモデルにしたがって患者個体別フレームを作製するステップと、
トランスデューサ装着インターフェースに複数のトランスデューサを固定するステップと、
体積測定画像データに対する複数のトランスデューサの位置および配向を特徴付けるトランスデューサ位置合わせデータを生成するステップと
を含む、方法が提供される。
【0008】
別の態様では、診断的経頭蓋手順または治療的経頭蓋手順を実施するためのキットであって、
患者個体別経頭蓋ヘッドセットであって、
患者の頭部の一部分の解剖学的曲線に形状合致するように構成された患者個体別フレームであって、患者に関連する体積測定画像データに基づき作製された、患者個体別フレーム、および
前記患者個体別フレームにより支持された複数のトランスデューサであって、前記患者個体別フレームに対して事前選択された位置および配向に支持される、複数のトランスデューサ
を備える、患者個体別経頭蓋ヘッドセットと、
体積測定画像データに前記複数のトランスデューサの事前選択された位置および配向を空間的に位置合わせするトランスデューサ位置合わせデータと
を備える、キットが提供される。
【0009】
本開示の機能的態様および有利な態様のさらなる理解は、以下の詳細な説明および図面を参照することにより得ることができる。
【0010】
以下、図面を参照としてもっぱら例として実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】経頭蓋的診断法および/または経頭蓋的治療手段を実施するための一例の患者個体別ヘッドセットの断面図である。
【
図2】患者個体別ヘッドセットを製造する一例の方法を示す流れ図である。
【
図3】経頭蓋的診断法および/または経頭蓋的治療手段を実施するためのシステムを示す図である。
【
図4】フェーズドアレイ超音波トランスデューサのサブアレイをそれぞれが支持する複数の超音波モジュールを備える患者個体別ヘッドセットの一例の実装形態を示す図である。
【
図5A】一例の超音波トランスデューサモジュールの写真を示す図である。
【
図5B】フェーズドアレイ超音波トランスデューサのサブアレイをそれぞれが支持する複数の超音波トランスデューサを示す、一例の患者個体別ヘッドセットの写真を示す図である。
【
図5C】可撓性ケーブルを介して外部駆動回路に接続された複数の超音波モジュールを示す、一例の患者個体別ヘッドセットの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下で論じる詳細を参照として、本開示の様々な実施形態および態様を説明する。以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を限定するものとして見なされるべきではない。多数の具体的詳細が、本開示の様々な実施形態の十分な理解をもたらすために説明される。しかし、いくつかの例においては、本開示の実施形態を簡潔に論じるために、周知のまたは従来の詳細が説明されない。
【0013】
本明細書において、「備える」および「備えている」という用語は、包含的かつ無制限の、非排他的なものとして解釈されるべきである。具体的には、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合に、「備える」および「備えている」という用語ならびにその変形語は、特定の特徴、ステップ、または構成要素が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または構成要素の存在を排除するものとして解釈されるべきではない。
【0014】
本明細書において、「例示の」という用語は、「一例、一実例、または一例示としての役割を果たす」ということを意味し、本明細書において開示される他の構成に対して好ましいまたは有利であるものとして解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書において、「約(about, approximately)」という用語は、特性、パラメータ、および寸法における変動値など、値域の上限と下限との間に存在し得る変動値を含むように意図される。別様のことが明示されない限り、「約」という用語は、±25パーセント以下であることを意味する。
【0016】
別様のことが明示されない限り、任意の特定の範囲または群は、ある範囲または群の各要素を個別に示す、ならびにその範囲または群に包含される可能な各下位範囲または下位群を示す、および同様にその範囲または群の中の任意の下位範囲または下位群に関する略記法として理解されたい。別様のことが明示されない限り、本開示は、下位範囲または下位群の各特定の要素およびそれらの組合せに関し、これを明確に包含する。
【0017】
本明細書において、「〜のオーダの」という用語は、量またはパラメータと組み合わせて使用される場合に、述べられた量またはパラメータの約1/10〜10倍の範囲に及ぶ範囲を示す。
【0018】
別様の定義がなされない限り、本明細書において使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、当業者にとって一般的に理解されるものと同じ意味を有するように意図される。文脈を通じてなど別様のことが示されない限り、本明細書において、以下の用語は以下の意味を有するように意図される。
【0019】
本明細書において、「術前の」という表現は、医療処置(medical procedure)前に生じるまたは実施される動作、プロセス、方法、事象、またはステップを示す。本明細書において定義されるような「術前の」は、外科処置(surgical procedure)に限定されず、他のタイプの診断法および治療手段などの医療処置を示し得る。
【0020】
本明細書において、「術中の」という表現は、医療処置の少なくとも一部分の最中に生じるまたは実施される動作、プロセス、方法、事象、またはステップを示す。本明細書において定義されるような「術中の」は、外科処置に限定されず、他のタイプの診断法および治療手段などの医療処置を示し得る。
【0021】
次に
図1を参照すると、患者の頭部50に着用された、経頭蓋的診断法または経頭蓋的治療手段を実施するための患者個体別ヘッドセット100が示される。複数のトランスデューサ120を支持する患者個体別フレーム(支持構造体)110を備えるこの患者個体別ヘッドセット100は、患者の頭部の少なくとも一部分の解剖学的輪郭に形状合致する。
図1に断面で示される患者個体別フレーム110は、事前選択された位置および配向でトランスデューサ120を機械的に支持する。トランスデューサ120は、脳診断もしくは脳治療の目的または頭蓋骨表面の定位のためにエネルギーを送出および/または受領するために使用され得る。
【0022】
患者個体別フレーム110は、トランスデューサ120を受けるおよび支持するための複数の装着インターフェースを備える。
図1に示す例の実施形態では、装着インターフェースは、トランスデューサ120が中に配置されるアパーチャ(凹部)として設けられる。トランスデューサ120は、限定するものではないが装着機構(例えば患者個体別フレーム110内に、任意には事前形成された穴内に延在する固定具を介して)、またはグルーなどの接着剤を用いてなど、多様な種々の手段により患者個体別フレーム110に固着され得る。
図1に示す例の実装形態では、トランスデューサ120は、電線を介してまたは可撓性プリント回路基板140を介して電子機器と遠隔的に接続される。トランスデューサ120は、患者個体別フレーム110に取外し可能に装着されてもよい。
【0023】
図1に示すように、患者個体別ヘッドセットは、患者個体別フレームの内方表面に隣接して設けられた結合層130をさらに備え得る。結合層130の外方表面がトランスデューサ120の遠位表面に接触し、結合層の内方表面が患者の頭部50に接触することにより、患者個体別フレーム内のトランスデューサと患者の頭部との間のエネルギー結合が助長される。結合層130を備えることと、結合層の構成および/または形状とは、トランスデューサ120のタイプに依拠し得る。例えば、トランスデューサ120が超音波トランスデューサである場合には、結合層130は、音響波の伝播を容易化しインターフェースにおける反射を低減させる音響結合層であり得る。一例の実装形態では、結合層130は、弾性膜を備え、この弾性膜は、皮膚への結合が実現されるように、トランスデューサ表面と弾性膜との間に液体層を保持する。
【0024】
図1は、トランスデューサが超音波トランスデューサである一例の実施形態を示すが、トランスデューサは、エネルギーを放出または受領することが可能な任意のトランスデューサであってもよい点が理解されよう。種々のタイプのトランスデューサの非限定的な例としては、超音波エネルギーを放出および/または受領するように構成された超音波トランスデューサ、磁気共鳴コイル(高周波コイル)、ならびにレーザ、発光ダイオード、光源および/または検出器に結合された光ファイバなどの光変換器が含まれる。トランスデューサは、すべてが同一タイプのものである必要はなく、トランスデューサの第1の部分が、第1のタイプのエネルギー(例えば超音波)を放出および/または検出するように選択され、トランスデューサの別の部分が、第2のタイプのエネルギー(例えば光波または電磁波)を放出および/または検出するように選択されてもよい。
【0025】
一例の実装形態では、患者個体別ヘッドセットが光音響イメージングを実施できるように、トランスデューサの第1のサブセットが、超音波トランスデューサであり、トランスデューサの第2のサブセットが、光変換器(例えば光源および/または検出器と光通信状態にある光ファイバ)であってもよい。
【0026】
別の例の実装形態では、システムが同時的な超音波イメージングおよびMRイメージングまたはMRイメージングを使用しつつの超音波処理の実施に適するように、トランスデューサの第1のサブセットが、超音波トランスデューサであり、トランスデューサの第2のサブセットが、MRIコイルであってもよい。
【0027】
別の例の実装形態では、システムがMRイメージングおよびPETイメージングの両方の実施に適するように、トランスデューサの第1のサブセットが、MRIコイルであり、トランスデューサの第2のサブセットが、陽電子放射検出器(PET)であってもよい。
【0028】
別の例の実装形態では、前記システムが超音波療法または超音波イメージングを行いつつMRイメージングおよびPETイメージングの両方を実施するのに適するように、トランスデューサの第1のサブセットが、MRIコイルであり、トランスデューサの第2のサブセットが、陽電子放射検出器(PET)であり、トランスデューサの第3のサブセットが、超音波トランスデューサあってもよい。
【0029】
いくつかの例の実施形態では、トランスデューサの少なくとも一部分が、フェーズドアレイを形成するためのトランスデューサ素子であってもよい(すなわちトランスデューサは、フェーズドアレイトランスデューサであってもよい)。かかるフェーズドアレイトランスデューサは、完全フェーズドアレイまたは散在フェーズドアレイを実現するように患者個体別ヘッドセット上に空間的に配置され得る。
【0030】
いくつかの例の実施形態では、フェーズドアレイトランスデューサは、複数のサブアレイとして設けられてもよく、各サブアレイは、各トランスデューサモジュールが各装着インターフェースにより患者個体別フレーム110上に機械的に支持されるように、別個のトランスデューサモジュールとして機械的に支持される。例えば
図1を参照すると、各トランスデューサ120は、患者個体別ヘッドセット100上に空間的に分布するサブアレイが、別個のフェーズドアレイを別個に形成するかまたは複合フェーズドアレイを集合的に形成するような、トランスデューサのサブアレイを収容するトランスデューサモジュールであってもよい。トランスデューサモジュールおよびそれらの各装着インターフェースは、所与のトランスデューサモジュールがそれぞれの装着インターフェースと固有に嵌着するように、固有の形状を有してもよい(すなわちそれぞれに特定形状化されてもよい)。フェーズドアレイが、各サブアレイを収容するトランスデューサモジュールセットにより形成される場合には、トランスデューサモジュールは、グレーティンローブ形成を低減させるまたは最小限に抑えるように患者個体別フレーム上に空間的に分布してもよい。
【0031】
上記のように、患者個体別フレームは、患者の頭部の少なくとも一部分の解剖学的輪郭に形状合致する。かかる形状合致フレームは、患者の頭部の体積測定画像データに基づき作製され得る。
図2は、患者に関連する体積測定画像データに基づき患者個体別フレームを作製するための一例の方法を示す。ステップ200および210で、患者の頭部の体積測定画像データが、患者の頭部の一部分の解剖学的曲線(例えば皮膚表面または骨表面)を特徴付ける表面データを提供するために取得および処理される。この体積測定データは、例えば限定するものではないが磁気共鳴(MR)イメージングおよびコンピュータトモグラフィ(CT)イメージングなどのイメージングモダリティを使用してイメージングを実施することなどによって取得され得る。体積測定画像データは、以前に実施されたイメージング手順(procedure)に基づき取得され得る。
【0032】
体積測定画像データは、患者の頭蓋骨の一部分の表面を特徴付ける表面データを取得するために処理およびセグメント化され得る。かかる表面セグメント化は、例えばMimics(商標)ソフトウェアプラットフォーム(Materialise、Belgium)などのイメージング処理ソフトウェアを使用して実施され得る。かかるソフトウェアは、患者の頭部の一部分の表面の3Dモデル(表面データ)の生成を可能にする。このモデルは、二値化するステップと、領域拡張するステップと、手動編集するステップとを利用してなどの既知の技術を利用して生成され得る。自動二値化が、洗練されたモデルを取得するために手動編集を行う前に、頭蓋骨の骨表面の第1の近似値化を達成するために実施されてもよい。例えばPHANTOM(商標)デスクトップ触覚デバイスなどのモデリングソフトウェアプラットフォームなどを使用した触覚モデリングが、このモデルをさらに洗練するために利用されてもよい。体積測定画像データの画像処理およびセグメント化のさらなる例の方法が、米国特許第8,086,336号に開示されている。
【0033】
その後、ステップ220に示すように、表面データは、患者個体別フレームのデジタルモデルを生成するために使用される。例えば、適切なソフトウェアプラットフォーム(ソフトウェアパッケージSurfacer(商標)など)が、表面データ点の点群に基づきモデルを生成するために使用されてもよい。ステップ230で示すように、次いでモデルは、患者の頭部に対し事前選択された位置および配向に複数のトランスデューサを受けるおよび支持するための、ならびにエネルギーが経頭蓋的に結合されるようにトランスデューサを支持するための複数のトランスデューサ装着インターフェースを備えるように、修正または洗練化(例えばアップデート)される。
【0034】
トランスデューサ装着インターフェースの位置および配向は、例えばトランスデューサの1つまたは複数のフェーズドアレイを形成するように選択されてもよい。サブアレイが各サブアレイを収容するトランスデューサモジュールセットにより形成される実施形態では、トランスデューサモジュールは、グレーティンローブ形成を低減させるまたは最小限に抑えるように患者個体別フレーム上に空間的に分布してもよい。
【0035】
デジタルモデルは、限定するものではないが1つまたは複数の基準マーカの装着用の装着インターフェース、患者個体別フレームが着用される場合に患者の頭部の選択領域への外科的アクセスを可能にするためのアパーチャ、基準方向を識別するためのマーカ、および外部ハンドルなどの1つまたは複数の位置決め特徴部などの、1つまたは複数の追加的な特徴部を備えるようにさらに洗練化されてもよい。
【0036】
トランスデューサ装着インターフェースを備えるようにアップデートされたデジタルモジュールは、次いでステップ240にて示されるように患者個体別フレームを作製するために使用される。例えば、患者個体別フレームは、3Dプリンティングを利用してモデルから作製され得る。別の例では、モデルは、患者個体別フレームを形成するために適した型を作製するために使用され、この型が、後に患者個体別フレームを作製するために使用され得る。
【0037】
患者個体別フレームの作成後に、トランスデューサ(またはトランスデューサアセンブリもしくはトランスデューサモジュール)は、ステップ250に示すように、患者個体別フレームの各トランスデューサ装着インターフェースに固定(装着、接着、等)される。
【0038】
術前体積測定画像データに基づき診断法または治療手段を実施するための患者個体別ヘッドセットを使用するためには、トランスデューサの位置および配向と体積測定画像データとの間に関係性が確立され得る(すなわち、共通基準座標系内においてトランスデューサの位置および配向と体積測定画像データとの両方が表され得るように)。したがって、ステップ260で、トランスデューサの既知の位置および配向(デジタルモデルで記述されるような)が、体積測定画像データに対して空間的に位置合わせされ、それにより体積測定画像データに対するトランスデューサの位置および配向を特徴付けるトランスデューサ位置合わせデータが生成される。例えば、かかるトランスデューサ位置合わせデータは、体積測定データの基準座標系内に、トランスデューサの空間座標とトランスデューサのそれぞれの配向を識別するベクトルとを含み得る。別の例の実装形態では、トランスデューサ位置合わせデータは、第1の基準座標系から体積測定画像データの基準座標系へとトランスデューサの位置および配向を変換するための座標変換を含み得る。トランスデューサ位置合わせデータにより、体積測定画像データに対するトランスデューサの位置および配向の決定が可能となり、それにより例えば患者の頭部内の特定位置または特定領域にエネルギー光線を集束させるようにトランスデューサの1つまたは複数のフェーズドアレイ(例えばサブアレイ)をパルス駆動するための適切なビーム形成パラメータの決定が可能となる。
【0039】
いくつかの例の実施形態では、トランスデューサのサブセットが、トランスデューサのサブセット内の各サブセットごとにおける患者個体別フレームに対する患者の頭蓋骨の局所的空間オフセットの検出を容易にするために、患者の頭蓋骨に向かってエネルギー光線を放出し、頭蓋骨から反射されるエネルギーを検出するように構成され得る。次いで、検出された空間オフセットは、例えば米国特許第6,612,988号に開示されるように、患者の解剖学的構造体(例えば頭蓋骨および/または1つまたは複数の内部組織の関心領域など)に対するトランスデューサの空間的位置合わせを補正するか、または検出された信号に基づき補正を実施するために使用され得る。例えば、トランスデューサのサブセットは、超音波トランスデューサか、または例えば光コヒーレンストモグラフィシステムに動作可能に接続された光ファイバであってもよい。
【0040】
別の実施形態では、ヘッドセットと頭部および脳との間の位置合わせが、ヘッドセット内のイメージング可視基準マーカからトランスデューサ位置を判定するのを可能にする、被験者頭部上に配置されたヘッドセットを用いたイメージング(例えばMRI、CT、トモシンセシス、またはX線など)により達成され得る。
【0041】
図3は、診断的経頭蓋手順または治療的経頭蓋手順を実施するためのシステムの一例の実装形態を示すブロック図を示す。制御および処理ハードウェア300が、任意にはトランスデューサドライバ電子機器/回路380を介して、患者個体別経頭蓋ヘッドセット100に動作可能に接続される。
【0042】
制御および処理ハードウェア300は、1つまたは複数のプロセッサ310(例えばCPU/マイクロプロセッサ)、バス305、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/またはリードオンリーメモリ(ROM)を備え得るメモリ315、データ取得インターフェース320、ディスプレイ325、外部ストレージ330、1つまたは複数の通信インターフェース335、電源340、ならびに1つまたは複数の入出力デバイスおよび/または入出力インターフェース345(例えばスピーカ、ならびにキーボード、キーパッド、マウス、位置トラッキングスタイラス、位置トラッキングプローブ、フットスイッチ、および/または音声コマンドをキャプチャするためのマイクロフォンなどのユーザ入力デバイスなど)を備える。
【0043】
体積測定画像データ370およびトランスデューサ位置合わせデータ375は、外部データベース上に格納されてもよく、または制御および処理ハードウェア300のメモリ315もしくはストレージ330に格納されてもよい。
【0044】
トラッキングシステム365は、任意には患者個体別ヘッドセット100に装着された1つまたは複数の基準マーカ160の、および任意にはやはり基準マーカが装着された1つまたは複数の医療機器または医療デバイスの検出を介した、患者の位置および配向のトラッキングのために使用されてもよい。例えば、基準マーカから発せられた受動信号または能動信号が、2つのトラッキングカメラを使用するステレオトラッキングシステムにより検出され得る。トランスデューサ駆動電子機器/回路380は、例えば限定するものではないがTx/Rxスイッチ、送信ビームフォーマ、および/または受信ビームフォーマを備え得る。
【0045】
制御および処理ハードウェア300は、実行可能命令を含むプログラム、サブルーチン、アプリケーション、またはモジュール350でプログラミングされてもよく、この実行可能命令は、1つまたは複数のプロセッサ310により実行されると、本開示において説明される1つまたは複数の方法をシステムに実施させる。かかる命令は、例えばメモリ315および/または他のストレージに格納され得る。
【0046】
図示する一例の実施形態では、トランスデューサ制御モジュール355は、トランスデューサ位置合わせデータ375による体積測定画像データへのトランスデューサの位置および配向の位置合わせに基づき、関心対象位置または関心対象領域にエネルギーを送達するように患者個体別経頭蓋ヘッドセット100のトランスデューサを制御するための実行可能命令を備える。例えば、患者個体別ヘッドセット100が複数のフェーズドアレイトランスデューサを支持し、トランスデューサ制御モジュール355が体積測定画像データに対するフェーズドアレイトランスデューサの既知の位置および配向に基づき、関心領域に1つまたは複数の集束エネルギー光線を送達するように、(送信および/または受信において)適用されるビーム形成を制御し得る。関心領域は、ユーザによって術中に(例えば制御および処理ハードウェア300により制御されるユーザインターフェースを介した)または事前に確立された外科プランにしたがって指定され得る。
【0047】
位置合わせモジュール360は、任意にはトラッキングシステム365に関連付けられた術中基準座標系に対して体積測定画像データ370を位置合わせするために使用され得る。オプションのガイダンスユーザインターフェースモジュール362は、画像誘導手順(procedure)のために空間的に位置合わせされた体積測定画像を示すユーザインターフェースを表示するための実行可能命令を含む。また、位置合わせモジュール360は、患者個体別フレームと患者の頭部との間において検出される空間オフセット(上述のように距離感知トランスデューサのサブセットにより与えられ得る)に基づき空間補正情報を術中に受領し、この空間補正情報を使用してトランスデューサと体積測定画像データとの間の位置合わせを動的に調節(例えば補正)してもよい。
【0048】
各構成要素の1つのみが
図3に示されるが、任意個数の各構成要素が、制御および処理ハードウェア300に備えられ得る。例えば、コンピュータが、典型的には複数の種々のデータストレージ媒体を収容する。さらに、バス305がすべての構成要素間において単一接続部として図示されるが、バス305は、2つ以上の構成要素をリンクする1つまたは複数の回路、デバイス、あるいは通信チャネルを表し得る点が理解されよう。例えば、パーソナルコンピュータにおいて、バス305はしばしばマザーボードを備えるか、またはマザーボードである。制御および処理ハードウェア300は、図示するものよりも多数または少数の構成要素を備えてもよい。
【0049】
制御および処理ハードウェア300は、1つまたは複数の通信チャネルまたはインターフェースを介してプロセッサ310に結合される1つまたは複数の物理デバイスとして実装され得る。例えば、制御および処理ハードウェア300は、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実装することが可能である。代替的には、制御および処理ハードウェア300は、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せとして実装することが可能であり、ソフトウェアは、メモリからプロセッサ内にまたはネットワーク接続を経由してロードされる。
【0050】
本開示のいくつかの態様は、少なくとも部分的にはソフトウェアにおいて具現化することが可能であり、このソフトウェアは、コンピューティングシステム上で実行されると、コンピューティングシステムを、本明細書において開示される方法を実施することが可能な特定用途向けコンピューティングシステムへと変換する。すなわち、これらの技術は、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、キャッシュ、磁気ディスクおよび光ディスク、またはリモートストレージデバイスなどのメモリ内に収容された命令シーケンスを実行するマイクロプロセッサなどのプロセッサに応答してコンピュータシステムまたは他のデータ処理システムにおいて実行され得る。さらに、これらの命令は、コンパイル済みバージョンおよびリンクバージョンの形態でデータネットワークを経由してコンピューティングデバイスにダウンロードされ得る。代替的には、上記で論じたようなプロセスを実施するための論理が、追加のコンピュータ、および/または、大規模集積回路(LSI)、特定用途向け集積回路(ASIC)などの別個のハードウェア構成要素もしくは電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのファームウェアなどの機械可読媒体に実装され得る。
【0051】
コンピュータ可読媒体が、データ処理システムにより実行されると様々な方法をシステムに実施させるソフトウェアおよびデータを格納するために使用され得る。実行可能ソフトウェアおよびデータは、例えばROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、および/またはキャッシュなどを含む様々な場所に格納され得る。このソフトウェアおよび/またはデータの部分を、これらのストレージデバイスの中の任意の1つに格納することが可能である。一般的には、機械可読媒体が、機械(例えばコンピュータ、ネットワークデバイス、個人用デジタル補助装置、製造ツール、1つまたは複数のプロセッサのセットを有する任意のデバイス等)によるアクセスが可能な形態で情報を提供する(すなわち格納および/または送信する)任意の機構を備える。
【0052】
コンピュータ可読媒体の例としては、限定するものではないが、とりわけ揮発性メモリデバイスおよび不揮発性メモリデバイス、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリデバイス、フロッピおよび他のリムーバブルディスク、磁気ディスクストレージ媒体、光ストレージ媒体(例えばコンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD))等の、書き込み可能タイプおよび書き込み不可能なタイプの媒体が含まれる。これらの命令は、搬送波、赤外線信号、およびデジタル信号等の、電気形態、光形態、音声形態、または他の形態で伝播される信号用のデジタル通信リンクおよびアナログ通信リンクで具現化され得る。本明細書において、「コンピュータ可読マテリアル」および「コンピュータ可読ストレージ媒体」という表現は、本質的に過渡的伝播信号を除くすべてのコンピュータ可読媒体を指す。
【0053】
患者個体別ヘッドセットおよび関連するトランスデューサ位置合わせデータは、限定するものではないが、診断目的または治療目的のための脳の神経調節、神経刺激、神経画像処理、神経モニタリング、集束超音波経頭蓋アブレーション、軽度加熱(温熱療法)、神経調節、神経刺激、機械的励起、気泡、液滴、固体粒子、細胞、ナノ粒子、量子ドット、または電子回路もしくは電子デバイスの操作、制御、励起、または感知、脳インプラント、デバイス、電子回路、もしくは電子センサの集束超音波経頭蓋励起もしくは集束超音波経頭蓋感知、および治療薬剤もしくは診断薬剤、細胞、粒子、液滴、気泡、電子デバイス、送信器、センサ、もしくは診断用の他の異物を送達するために血液脳関門の破壊および開口のために集束超音波の使用を伴う経頭蓋手術(procedure)を含む、多様な経頭蓋手術(procedure)に対して使用され得る。
【0054】
本開示は、患者の頭部に着用されることとなる患者個体別ヘッドセットに関する多数の例の実施形態を含むが、本明細書において開示されるシステム、デバイス、および方法は、身体の他の部位または部分の上で診断法または治療手段を実施するための患者個体別装置を提供するように構成してもよい点が理解されよう。患者個体別フレームは、他の身体領域または身体部分の体積測定画像データにしたがって作製され得る。例えば、患者個体別フレームは、患者個体別フレームにより支持されるトランスデューサを使用して膝に対して診断法または治療手段を実施するために、患者の膝の輪郭に形状合致するように患者の膝の体積測定画像データに基づき作製され得る。同様に、患者個体別フレームは、患者個体別フレームにより支持されるトランスデューサを使用して脊柱に対して診断法または治療手段を実施するために、患者の脊柱の輪郭に形状合致するように患者の脊柱の体積測定画像データに基づき作製され得る。
【0055】
(実施例)
以下の実施例は、当業者が本開示の実施形態を理解し実施することを可能にするために示される。これらの実施例は、本開示の範囲に対する限定ではなく、単にそれらの例示および代表例として見なされるべきである。
【0056】
次に
図4を参照すると、一例の患者個体別ヘッドセット400が示され、患者個体別フレーム410(サブアレイホルダ)が、複数の集束超音波フェーズドアレイトランスデューサを支持する。この実施例のシステムは、例えばヒトまたは大型動物における神経調節実験などのために使用され得る。
【0057】
図4に示すように、超音波ビーム420が、複数のトランスデューササブアレイモジュール430により発生され、各トランスデューササブアレイモジュールは、一例の実装形態では、半波の中心間距離をおいて離間された64個のトランスデューサ素子のセットを備え、それにより完全な電子ビームステアリングが可能となる。例えば、500kHzの超音波周波数では、前述の例の実装形態のモジュールサイズは、約8.5mm×8.5mmとなるが、周波数と逆比例のスケールになる。ステアリング範囲を限定し、いくつかのグレーティングローブを許容することによって、またはアレイをステアリングすることのみにより限定された組織体積に集束するようにアレイ表面を湾曲させることによって、より大きな中心間間隔の使用が可能となる。各モジュールは、可撓性回路を介して64チャネルRF駆動基板に接続され得る。かかるサブアレイモジュールの一実施例の写真が、
図5Aに示される。
図5Bおよび
図5Cは、患者個体別フレーム上で組み立てられ支持された複数のサブモジュールの画像を示す。
【0058】
一例の実装形態では、前述のモジュールは、サブアレイモジュール430を定位置に支持および保持する剛性ベースに連結されたサブアレイモジュール430を形成するサブモジュール440として設けられ得る。また、各サブアレイモジュール430は、頭蓋骨表面からの反射および脳組織からの散乱を検出するために1つまたは複数の(例えば4つの)PVDF広帯域受信器450を収容し得る。これらのモジュールの位置および個数は、これらのモジュールがいずれもモジュール同士の間の距離がグレーティングローブ形成の防止に適した(例えば最大の)可変性を有する散在(例えば最適な)アレイを形成するように、コンピュータシムレーションに基づき患者ごとに選択され得る。
【0059】
上記のように、コンピュータシミュレーションは患者の頭部の表面のモデルを取得するために、および患者の解剖学的構造体に対するトランスデューサモジュールの空間的分布の計算を行うために、被験者の頭部の体積測定画像データ(例えばMRIまたはCTスキャン)を利用する。この情報は、サブアレイの挿入用の取付け穴を有するカスタムヘルメットのような、被験者の頭部を覆ってぴったりと嵌るプラスチック支持部(フレーム)を形成するために、3Dプリンタと共に使用され得る。これらのサブアレイは、コンピュータプランにより決定された位置のみにおいて合致するように固有の形状を有し得る。
【0060】
本例の実装形態では、さらに、高周波送受信素子が、サブアレイアセンブリに一体化され(例えば128個の高周波素子)、これらは、アレイからの頭蓋骨の距離を判定するために使用され得る。上記のように、かかる距離は、アレイ座標に対して以前に取得された体積測定イメージングデータの位置合わせを改善し、追加的な術中イメージングの必要性の回避を可能にするために使用され得る。これらの高周波素子は、任意の頭部の動きを継続的にトラッキングするために使用することが可能であり、したがって本デバイスの場合のように反転ピン固定の必要性が存在しない。
【0061】
図1を参照として上述したように、モジュール表面と膜との間に液体層を確保する弾性膜が設けられてもよく、これにより患者個体別ヘッドセットが着用される場合の皮膚への結合が容易になる。
【0062】
本実施例において説明された設計により作製されたヘッドセットは、256個のサブアレイを駆動し、16,000個を超える各素子および64個のモジュールのアレイを結果としてもたらすことが可能であり得るが、十分な集束が達成され得る場合にはより少数の素子が必要となり得る。超音波を伝播するために利用可能であるヒトの頭蓋冠の最大面積は、約450〜700cm
2の間で変動するように予想され、したがって完全アレイが、全体を占めなくてもよく、代わりに分散的であってもよく、これにより高出力要件が代わりに必要にはなるが、高い集束品質が依然として維持される。かかる分散アレイ実装形態は、露光中に低出力を典型的に必要とするこれらの用途(例えば血液脳関門の開口および神経調節など)のすべてと適合性を有することが予想される。
【0063】
上述の具体的な実施形態は、例として示されたものであり、これらの実施形態は、様々な修正および代替形態を適用され得るものである点を理解されたい。さらに、特許請求の範囲は、開示された特定の形態に限定されるように意図されるものではなく、本開示の趣旨および範囲に含まれるあらゆる修正、均等物、および代替を範囲に含むように意図される点を理解されたい。
【符号の説明】
【0064】
50 頭部
100 患者個体別ヘッドセット
110 患者個体別フレーム
120 トランスデューサ
130 結合層
140 可撓性プリント回路基板
160 基準マーカ
300 処理ハードウェア
305 バス
310 プロセッサ
315 メモリ
320 データ取得インターフェース
325 ディスプレイ
330 外部ストレージ
335 通信インターフェース
340 電源
345 入出力デバイス、入出力インターフェース
350 モジュール
355 トランスデューサ制御モジュール
360 位置合わせモジュール
362 ガイダンスユーザインターフェースモジュール
365 トラッキングシステム
370 体積測定画像データ
375 トランスデューサ位置合わせデータ
380 トランスデューサ駆動電子機器/回路、トランスデューサドライバ電子機器/回路
400 患者個体別ヘッドセット
410 患者個体別フレーム
420 超音波ビーム
430 トランスデューササブアレイモジュール
440 サブモジュール
450 PVDF広帯域受信器