(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係る農業用シート及び積層シートについて詳説する。
【0016】
<農業用シート>
図1の農業用シート10は、本発明の積層シートの一実施形態であり、パルプを主成分とする紙基材11、及びこの紙基材11の一方の面側へ積層される塗工層12を備える。塗工層12は、主成分としてセルロースナノファイバー(CNF)を含む層(CNF層13)と、主成分としてポリビニルアルコール(PVA)を含む層(PVA層14)とを有する。当該農業用シート10によれば、紙基材11に、いずれもガスバリア性が良好であるCNF層13とPVA層14とを有するため、良好なガスバリア性を発揮することができる。また、例えばCNFとPVAとを混在させた層とするのではなく、別々の層とした複数層構造とすることにより、例えば生じた亀裂からのガスの透過等を抑制することができるため、ガスバリア性を高めることができる。さらに、当該農業用シート10によれば、パルプ、CNF及びPVAのいずれもが生分解性を有し、特にパルプ及びCNFは天然素材を原料とするものであり、良好な生分解性を発揮することができる。
【0017】
紙基材11は、パルプを抄紙して得られる公知の紙を用いることができる。紙基材11としては、例えばろ紙、上質紙、中質紙、コピー用紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、クラフト紙等が挙げられ、コピー用紙が好ましい。
【0018】
紙基材11の坪量の下限としては、40g/m
2が好ましく、50g/m
2がより好ましく、60g/m
2がさらに好ましい。紙基材11の坪量を上記下限以上とすることで、良好なガスバリア性を発揮することができる。一方、この上限としては、100g/m
2が好ましく、90g/m
2がより好ましく、80g/m
2がさらに好ましい。紙基材11の坪量が上記上限を超える場合、可撓性、取扱性等が低下したり、コスト高になるおそれがある。
【0019】
CNF層13は、紙基材11の一方の面側に積層されている。CNF層13は、セルロースナノファイバーを主成分として含むCNF塗工液の塗工により形成される。
【0020】
セルロースナノファイバーとは、パルプ(パルプ繊維)を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいう。セルロースナノファイバーは、通常、パルプ(パルプ繊維)を公知の方法により解繊することにより得ることができる。
【0021】
セルロースナノファイバーの原料となるパルプとしては、例えば
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ;
ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の機械パルプ;
茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ;
古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
パルプとしては、これらの中で、塗工液の乾燥が容易となる観点から、化学パルプが好ましく、広葉樹クラフトパルプ(LKP)がより好ましい。このようなパルプは、不純物が少ないという利点もある。
【0023】
セルロースナノファイバーの製造方法としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えばパルプを機械的処理による解繊に付してよく、酵素処理、酸処理等の化学的処理による解繊に付してもよい。セルロースナノファイバーをより容易かつ確実に得ることができる観点から、パルプを機械的処理による解繊に付することが好ましい。
【0024】
機械的処理による解繊方法としては、例えばパルプを回転する砥石間で磨砕するグラインダー法、ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル等を用いる粉砕法などが挙げられる。
【0025】
機械的処理による解繊方法としては、これらの中でセルロースナノファイバーをより容易かつ確実に得ることができる観点から、パルプを回転する砥石間で磨砕するグラインダー法が好ましい。
【0026】
回転する砥石間で磨砕するグラインダー法としては、例えば石臼式磨砕機を使用する磨砕処理法を用いることができる。具体的には、石臼式磨砕機の擦り合わせ部にパルプを通過させることで、パルプが、通過の際の衝撃、遠心力、剪断力等により次第に磨り潰され、化学的に変質することなく、均一なセルロースナノファイバーが得られる。そのため、上記セルロースナノファイバーを用いることで緻密な構造を有するガスバリア層を形成することができる。
【0027】
なお、パルプは解繊の前に予備叩解に付してもよい。予備叩解(機械的前処理)は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法の例としては、段階的に解繊を進めることが好ましい。特に未叩解の原料パルプをナイヤガラビーター等のいわゆる粘状叩解設備にて予めろ水度(カナディアンフリーネス)を出発原料の30%以下まで予備叩解処理した後、回転する砥石間で磨砕するグラインダー法にてセルロースナノファイバーが得られるまで解繊処理することが好ましい。この方法は、ナノセルロース化処理において効率的であり、ガスバリア性を付与できる良好なセルロースナノファイバーを得ることができる。
【0028】
また、パルプは、解繊の前に化学的な前処理を施してもよい。この化学的な前処理としては、硫酸等の酸などを用いた加水分解処理や、オゾンなどの酸化剤を用いた酸化処理などを挙げることができる。このように化学的な前処理を施すことで、機械的又は化学的な解繊処理により、効率的にナノファイバーを得ることができる。なお、用途(例えば食品関連用途等)などに応じて、化学的前処理はしないほうが良い場合もある。
【0029】
セルロースナノファイバーは、保水度が300%以下であることが好ましい。このような保水度を有するセルロースナノファイバーを用いることで、乾燥過程での凝集が抑制され、良好な乾燥性が発揮される。この保水度の下限としては、例えば150%である。セルロースナノファイバーの保水度(%)はJAPAN TAPPI No.26に準拠して測定される。
【0030】
セルロースナノファイバーは、水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線において単一のピークを有することが好ましい。このように、一つのピークを有するセルロースナノファイバーは、十分な微細化が進行しており、良好なガスバリア性を発揮することができる。また、このピークとなるセルロースナノファイバーの粒径(最頻値)としては、5μm以上25μm以下が好ましい。セルロースナノファイバーが上記サイズであることで、より良好なガスバリア性を発揮することができる。「擬似粒度分布曲線」とは、粒度分布測定装置(例えば株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を用いて測定される体積基準粒度分布を示す曲線を意味する。
【0031】
セルロースナノファイバーの濃度2質量%の水分散液のB型粘度としては、1,000cps以下が好ましい。このような粘度であることで、塗工性に優れ、塗工ムラの発生を十分に抑制することができる。このB型粘度の下限としては、例えば100cpsが好ましい。「B型粘度」とは、JIS−K−7117−1:1999に準拠して測定される値をいう。
【0032】
セルロースナノファイバーの結晶化度としては70%以下が好ましい。結晶化度を上記上限以下とすることで、セルロースナノファイバーの化学修飾が容易になると考えられる。なお、この結晶化度は、例えば30%以上とすることができる。「結晶化度」とは、JIS−K−0131:1996に準拠して、X線解析法により測定される値をいう。
【0033】
CNF塗工液は、セルロースナノファイバーの水分散液である。CNF塗工液のセルロースナノファイバー濃度の下限としては、0.5質量%が好ましく、1.0質量%がより好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が上記下限未満であると、十分なガスバリア性を発揮させるために塗工量が増え、乾燥効率が低下する場合がある。他方、CNF塗工液中のセルロースナノファイバーの濃度の上限としては、3.0質量%が好ましく、2.5質量%がより好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が上記上限を超えると、塗工の際の塗工液の粘度が高くなるおそれがある。
【0034】
CNF塗工液には、水及びセルロースナノファイバーの他、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分が含有されていてもよい。他の成分としては、無機粒子、粘度調整剤、pH調整剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、水溶性樹脂等が挙げられる。上記無機粒子としては、クレー等の平板状無機粒子が好ましい。上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を挙げることができる。上記可塑剤としては、エチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。但し、CNF塗工液における固形分中のセルロースナノファイバーの含有量としては、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0035】
CNF塗工液の塗工は、公知の方法により行うことができる。塗工は、例えばブレードコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング等により行うことができる。CNF塗工液の塗工量の下限としては、固形分(CNF)量として、0.1g/m
2が好ましく、0.5g/m
2がより好ましく、1g/m
2がさらに好ましく、1.5g/m
2が特に好ましい。塗工量を上記下限以上とすることで、十分なガスバリア性を発揮することができる。一方、この塗工量の上限としては、例えば5g/m
2とすることができ、3g/m
2が好ましい。塗工量が上記上限を超える場合は、乾燥性の低下や、コスト高を招くおそれがある。
【0036】
PVA層14は、CNF層13の紙基材11とは反対側の面に積層されている。すなわち、PVA層14は、塗工層12の最表層となっている。PVA層14は、PVAを主成分として含むPVA塗工液をCNF層13上へ塗工することにより形成される。
【0037】
ポリビニルアルコールとは、酢酸ビニル等のビニルエステル化合物を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られる重合体である。ポリビニルアルコールは、本発明の効果を阻害しない範囲で、ビニルエステル化合物とその他の単量体との共重合体のけん化物や、その他の変性物であってもよい。
【0038】
ポリビニルアルコールのけん化度の下限としては、70モル%が好ましく、80モル%がより好ましい。一方、この上限としては、100モル%が好ましく、99.8モル%がより好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度の下限としては、500が好ましく、1,000がより好ましい。一方、この上限としては、8,000が好ましく、4,000がより好ましい。上記範囲のけん化度及び重合度を有するポリビニルアルコールを用いることで、良好な塗工性やガスバリア性等を発揮することができる。なお、けん化度は、JIS−K−6726:1994試験法に準拠して測定される値をいう。重合度(Po)は、JIS−K−6726:1994試験法に準拠して測定される値であり、ポリビニルアルコールを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められる値をいう。
Po=([η]×103/8.29)(1/0.62)
【0039】
ポリビニルアルコールは、市販されているものを使用することができる。市販されているポリビニルアルコールとしては、クラレ社のエクセバール(登録商標)、日本合成化学社のNichigo G−polymer(登録商標)等を用いることができる。
【0040】
PVA塗工液は、ポリビニルアルコールの水溶液である。PVA塗工液におけるポリビニルアルコールの濃度は、例えば1質量%以上30質量%以下とすることができる。PVA塗工液の濃度を上記範囲とすることにより、乾燥性や、塗工性等を良好にすることができる。
【0041】
PVA塗工液には、水及びポリビニルアルコールの他、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分が含有されていてもよい。他の成分としては、無機粒子、粘度調整剤、pH調整剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、水溶性樹脂等が挙げられる。上記無機粒子としては、クレー等の平板状無機粒子が好ましい。上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を挙げることができる。上記可塑剤としては、エチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。上記可塑剤の含有量の下限としては、ポリビニルアルコール100質量部に対して、1質量部が好ましく、2質量部がより好ましい。一方、この上限としては、30質量部が好ましく、25質量部がより好ましい。但し、PVA塗工液における固形分中のポリビニルアルコールの含有量としては、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0042】
PVA塗工液の塗工は、公知の方法により行うことができる。塗工は、例えばブレードコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング等により行うことができる。PVA塗工液の塗工量の下限としては、固形分(PVA)量として、1g/m
2が好ましく、2g/m
2がより好ましく、3g/m
2がさらに好ましい。塗工量を上記下限以上とすることで、十分なガスバリア性を発揮することができる。一方、この塗工量の上限としては、例えば10g/m
2とすることができ、5g/m
2が好ましい。塗工量が上記上限を超える場合は、乾燥性の低下や、コスト高を招くおそれがある。
【0043】
CNF塗工液及びPVA塗工液の塗工後は、塗工された塗工液を乾燥させることによりCNF塗工層13及びPVA塗工層14が形成される。乾燥は、それぞれの塗工液を塗工した毎に行ってもよいし、2つの塗工液を塗工後にまとめて行ってもよい。乾燥は公知の方法により行うことができる。
【0044】
塗工層12の塗工量(固形分)、すなわち全塗工量(固形分)の下限としては、2g/m
2が好ましく、4g/m
2がより好ましい。一方、この上限としては、10g/m
2が好ましく、8g/m
2がより好ましい。塗工量を上記範囲とすることで、コスト高を抑えつつ、ガスバリア性、乾燥性等を良好にすることができる。
【0045】
塗工層12の最表面(PVA層14の表面)には、カレンダー処理(平坦化処理)が施されていることが好ましい。カレンダー処理を施すことにより、塗工後の乾燥により生じ得る塗工層中の微小な空隙が、加熱及び加圧により塞がれ、ガスバリア性をより高めることができる。上記カレンダー処理は公知の方法により行うことができ、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトコンパクトカレンダー等の金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる各種カレンダーを、オンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用することができる。
【0046】
カレンダー処理の際の加熱温度の下限としては、60℃が好ましく、75℃がより好ましく、80℃がより好ましい。一方、この上限としては、例えば100℃とすることができる。ポリビニルアルコールのガラス転移温度は、55〜75℃程度であるので、上記加熱温度とすることにより、ポリビニルアルコールが溶融し、微小な空隙をカレンダー処理により効果的に塞ぐことができる。
【0047】
上記カレンダー処理における加圧は、例えば10kgf/cm
2以上100kgf/cm
2以下とすることができる。上記範囲の加圧でカレンダー処理を行うことにより、微小な空隙を効果的に塞ぐことができる。
【0048】
当該農業用シート10は、良好なガスバリア性を有し、マルチシート、燻蒸用シート、防草シート、ハウス用シート等として好適に利用することができる。当該農業用シート10の酸素透過度としては、8,000cc/m
2・24hr・atm以下が好ましく、6,000cc/m
2・24hr・atm以下がより好ましい。なお、この酸素透過度の下限としては、例えば100cc/m
2・24hr・atmとすることができ、1,000cc/m
2・24hr・atmであってよい。このように低い酸素透過度を有する場合で、農業用シートとして特に好適に用いることができる。
【0049】
<積層シート>
本発明の積層シートは、紙基材、及びこの紙基材の一方の面側へ積層される塗工層を備え、上記塗工層が、主成分としてセルロースナノファイバーを含む層と、主成分としてポリビニルアルコールを含む層とを有する積層シートである。当該積層シートは、生分解性を有する素材から形成され、十分なガスバリア性を有する。当該積層シートの一実施形態としては、上述した農業用シート10を挙げることができる。当該積層シートは、農業用シートの他、各種包装材料、製袋材料等として好適に用いることができる。
【0050】
<他の実施の形態>
本発明の農業用シート及び積層シートは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、塗工層におけるCNF層とPVA層とは、
図1の農業用シートとは逆に積層されていてもよい。すなわち、紙基材、PVA層及びCNF層の順に積層された農業用シート(積層シート)であってもよい。このような農業用シート又は積層シートであっても、PVA層とCNF層との2層の塗工層を有することで、良好なガスバリア性を発揮することができる。
【0051】
また、本発明の農業用シート及び積層シートにおいては、CNF層及びPVA層の少なくとも一方が2層以上積層されていてもよい。この場合、CNF層とPVA層とが交互に積層されてなる塗工層とすることができる。また、紙基材の両面に塗工層を設け、それぞれの塗工層が、CNF層とPVA層とを有していてもよい。塗工層においては、CNF層及びPVA層以外の塗工層が積層されていてもよい。
【0052】
さらに、本発明の農業用シート及び積層シートは、紙基材及び塗工層以外の層が設けられていてもよいし、複数の紙基材を有するものであってもよい。このような構造のものとしては、例えば、第1の紙基材の表面に塗工層を積層し、この塗工層の表面に第2の紙基材を積層した構造のものを挙げることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
<評価方法>
実施例及び比較例における各種物性は以下の評価方法に準じて測定した。
(酸素透過度及び窒素透過度(cc/m
2・day・atm))
JIS−K−7126−1:2006「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第1部:差圧法」に準拠して、GTR社の「GTR−11AET」を用いて25℃で2時間測定した。
【0055】
実施例及び比較例で用いたCNF及びPVAは以下の通りである。
・CNF:機械パルプであるBTMP(晒サーモメカニカルパルプ漂白品)をナイヤガラビーターで2時間叩解した後、摩砕機(増幸産業社の「マスコロイダー」)により解繊して得られたセルロースナノファイバー
・PVA:クラレ社のエクセバール(登録商標)「RS−2117」
【0056】
[実施例1]
紙基材としてのPPC原紙(68g/m
2)の一方の面に、CNF塗工液としてのCNFの水分散液(CNF濃度1.5質量%)を2g/m
2(固形分)塗工した。次いで、CNF塗工液を塗工した面上に、PVA塗工液としてのPVA水溶液(PVA濃度5.0質量%)を3.8g/m
2(固形分)塗工し、乾燥させることで実施例1の積層シートを得た。
【0057】
[比較例1]
PVAとCNFとを85:15の質量比で混合した塗工液を用い、これを紙基材としてのPPC原紙(68g/m
2)の一方の面に7.3g/m
2(固形分)塗工し、乾燥させることで比較例1の積層シートを得た。
【0058】
[比較例2]
PVAとCNFとを70:30の質量比で混合した塗工液を用い、これを紙基材としてのPPC原紙(68g/m
2)の一方の面に5.3g/m
2(固形分)塗工し、乾燥させることで比較例2の積層シートを得た。
【0059】
[比較例3]
PVA水溶液を塗工液として用い、これを紙基材としてのPPC原紙(68g/m
2)の一方の面に2回塗工し(合計塗工量6.5g/m
2(固形分))、比較例3の積層シートを得た。
【0060】
[評価]
得られた各積層シートについて、酸素透過度及び窒素透過度を測定した。なお、それぞれの積層シートについて、80℃、30kgf/cm
2にてカレンダー処理を行ったものと、カレンダー処理を行わなかったものとのそれぞれで酸素透過度及び窒素透過度を測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示されるように、実施例1の積層シートは、比較例1〜3の積層シートと比較して、ガスバリア性に優れていることがわかる。特に、実施例1の積層シートは、カレンダー処理を施すことにより、ガスバリア性が格段に向上することがわかる。