(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833031
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】車両を自動的に減速させるための方法
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20210215BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20210215BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20210215BHJP
B60T 13/12 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
B60T7/12 D
B60T7/12 A
B60T1/06 G
B60T13/74 G
B60T13/12
B60T13/74 D
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-524322(P2019-524322)
(86)(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公表番号】特表2019-537536(P2019-537536A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2017074009
(87)【国際公開番号】WO2018091177
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】102016222522.7
(32)【優先日】2016年11月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ニヤコウスキ,クラウス―ディーター
(72)【発明者】
【氏名】エングラート,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】プッツァー,トビアス
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−193468(JP,A)
【文献】
特表2008−507443(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/146158(WO,A2)
【文献】
特表2015−509455(JP,A)
【文献】
特開平11−139278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 1/06
B60T 13/12
B60T 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動的に且つドライバーに依存せずに減速させるための方法において、
前記車両のブレーキシステムが、液圧式車両ブレーキ(1)とバックアップブレーキシステムとを備え、
前記液圧式車両ブレーキ(1)のブレーキ液圧が、調整可能なブレーキ圧アクチュエータを介して調整可能であり、
自動的な減速過程において、前記液圧式車両ブレーキ(1)のコントローラ(40)内で自動的に特定され、前記液圧式車両ブレーキ(1)内で調整されるべき目標値が閾値を超えない場合は、前記車両を前記ブレーキ圧アクチュエータの操作を介して制動し、前記目標値が前記閾値を超える場合は、ブレーキ力を発生させるために少なくとも前記バックアップブレーキシステムを操作する、方法。
【請求項2】
減速過程を、駐車過程を自動的に実施するために行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標値が、前記液圧式車両ブレーキ(1)内で調整されるべき目標ブレーキ圧であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標値を、停止時に前記車両を減速させるためのブレーキ予設定に基づいて確定することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記調整可能なブレーキ圧アクチュエータが、エレクトロニックスタビリティプログラムの液圧ポンプまたは電気機械式ブレーキ倍力装置(10)であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記バックアップブレーキシステムが、前記閾値を超えたときに動作する、電気ブレーキモータ(13)を備えた電気機械式ブレーキ機構であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記バックアップブレーキシステムが、前記閾値を超えたときに動作する第2の液圧式ブレーキ圧アクチュエータ(10)であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記第2の液圧式ブレーキ圧アクチュエータが、前記閾値を超えたときに動作する電気機械式ブレーキ倍力装置(10)であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の液圧式ブレーキ圧アクチュエータが、前記閾値を超えたときに動作する、エレクトロニックスタビリティプログラムの液圧ポンプであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記車両の停止後に、変速装置ロック爪を用いて継続的に移動を阻止することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記車両の停止後に、補助ブレーキを用いて継続的に移動を阻止することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一つに記載の方法を実施するための調整器または制御器(11)。
【請求項13】
調整可能なブレーキ圧アクチュエータおよびバックアップブレーキシステムを備えた液圧式車両ブレーキ(1)と、ブレーキシステムの調整可能な構成要素を起動させるための請求項12に記載の調整器または制御器(11)とを備えた、車両のブレーキシステム。
【請求項14】
前記バックアップブレーキシステムが、電気ブレーキモータ(13)を備えた電気機械式ブレーキ機構であることを特徴とする、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項15】
請求項13ないし14のいずれか一つに記載のブレーキシステムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧式車両ブレーキとバックアップブレーキシステムとを備えたブレーキシステムで構成して成る車両を自動的に且つドライバーに依存せずに減速させるための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、液圧式車両ブレーキと、電気ブレーキモータを備えた電気機械式ブレーキ機構とを含んでいる車両用ブレーキシステムが知られている。通常の制動作動では、車両を減速させるために液圧式車両ブレーキが作動される。電気機械式ブレーキ機構はパーキングブレーキとして使用され、電気ブレーキモータを介して車両停止状態でブレーキ力を発生させる。この場合、電気ブレーキモータは液圧式車両ブレーキと同じブレーキピストンに作用し、ブレーキピストンの端面に設けたブレーキライニングをブレーキディスクのほうへ変位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004004992A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明による方法は、液圧式車両ブレーキを備えた車両を自動的に且つドライバーに依存せずに減速させるために使用する。液圧式車両ブレーキは、車両の車輪に車輪ブレーキ装置を有し、これらの車輪ブレーキ装置はそれぞれ車両ブレーキのブレーキ回路を介して液圧流体の供給を受け、液圧流体がブレーキピストンをブレーキディスクのほうへ変位させる。ブレーキ液圧はブレーキ圧アクチュエータを用いて調整でき、たとえばモータで駆動される液圧ポンプを備えたエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)を用いて調整でき、この場合ブレーキ圧アクチュエータは、コントローラを介して所定の目標値へ調整可能である。
【0005】
車両のブレーキシステムは、バックアップブレーキシステムをも含んでいる。バックアップブレーキシステムは、液圧式車両ブレーキが特にエラーのために部分的にまたは完全に故障して、所望のブレーキ液圧を提供できなくなるような場合に作動させることができる。バックアップブレーキシステムとは、たとえば他のブレーキ圧アクチュエータ、特に電気機械式ブレーキ倍力装置のような、液圧式車両ブレーキに組み込まれた付加的なブレーキ装置であり、この場合バックアップブレーキシステムは、液圧式車両ブレーキの他の構成要素とは独立に起動可能である。或いは、バックアップブレーキシステムは、場合によっては非液圧機能に基づいていてもよく、たとえば液圧式車両ブレーキと同じブレーキピストンか、または、別個のブレーキピストンかのいずれかに作用する電気ブレーキモータを備えた電気機械式ブレーキ機構として実施してもよい。
【0006】
自動的な減速過程を実施するため、通常時(液圧式車両ブレーキが機能している時)には、車両はブレーキ圧アクチュエータの操作を介して制動される。これは、たとえば自動的に且つドライバーに依存せずに実施される車両の駐車過程の間に、液圧式車両ブレーキ内のブレーキ圧アクチュエータを作動させることが必要であるような所定の制動状況において行われる。ブレーキ圧アクチュエータの作動は、センサで1つまたは複数の走行状態量および/または周辺量を検出し、液圧式車両ブレーキのコントローラ内にブレーキ圧アクチュエータ用の目標値を発生させ、この目標値にブレーキ圧アクチュエータを調整することで、制御方式で行われる。たとえば、自動的な駐車過程を実施するため、センサで車両停止までに利用できる制動距離を連続的に検出して、液圧式車両ブレーキ内のブレーキ圧アクチュエータのための目標値の算出の基礎にする。
【0007】
本発明による方法では、液圧式車両ブレーキのコントローラ内で自動的に連続的に特定される目標値が閾値を超えた場合に対してブレーキ力を発生させるため、バックアップブレーキシステムを作動させる。この場合には、液圧式車両ブレーキの構成要素にエラーが発生した確率が高いという前提から出発しなければならない。たとえば自動化されてドライバーに依存しない車両の駐車過程のように快適性を意識した制動過程においては、液圧式車両ブレーキが機能している通常の場合でも、発生されるブレーキ液圧は比較的わずかにすぎない。液圧式車両ブレーキ内のエラーのために、利用できる制動距離の範囲内で車両を減速させて停止させようとコントローラが試みることで、ブレーキ圧が次第にさらに上昇すると、このことは、目標値が割り当てられた閾値を超えている場合のエラーを示唆している。この場合には、ブレーキ力を補完的にまたは独占的に発生させるためにバックアップブレーキシステムを作動させることができる。このようにして、自動的でドライバーに依存せずに実施される制動過程を所望通りに且つ著しく快適性および安全性を損なうことなく終了させることができる。
【0008】
本方法は、好ましくは自動的な駐車過程を行うために実施される。しかし、一般的に、たとえば最大限利用できる制動距離または快適性に基づいた最大許容ブレーキ減速のような所定の境界条件が維持されるように車両を減速させるために、調整可能なブレーキ圧アクチュエータに割り当てられているコントローラ内で連続的に且つ順応的に目標値を検出するようにした自動的でドライバーに依存しない制動過程において本方法を実施することも可能である。
【0009】
有利な実施態様によれば、連続的に且つ順応的に特定されてコントローラに入力値として供給される目標値とは、液圧式車両ブレーキ内での目標ブレーキ圧である。液圧式車両ブレーキ内のブレーキ圧アクチュエータの操作を介して目標ブレーキ圧を調整することができる。しかし、たとえば連続的に検出される、まだ利用できる残制動距離、ブレーキ力、ブレーキ減速などの、ブレーキ圧アクチュエータのコントローラに入力値として供給されるその他の目標値も考慮される。
【0010】
閾値を超えたときに作動させるバックアップブレーキシステムとは、好ましくは、電気ブレーキモータを備えた電気機械式ブレーキ機構として実施されている補助ブレーキまたはパーキングブレーキである。電気機械式ブレーキ機構は、通常は、停車状態で車両を停止させるための補助ブレーキ力またはパーキングブレーキ力を継続的に発生させるために使用する。場合によっては、電気機械式ブレーキ機構を、車両が走行しているときにもブレーキ力を発生させるために使用でき、特に液圧式車両ブレーキ内で前述のように目標値を超えた場合に使用できる。
【0011】
電気機械式ブレーキ機構に加えて、または、これとは択一的に、バックアップブレーキシステムを、液圧式車両ブレーキ内の目標値が閾値を超えた場合に適宜作動せしめられる第2の液圧式ブレーキ圧アクチュエータの形態でも設けることができる。第2の液圧式ブレーキ圧アクチュエータ、たとえば電気機械式ブレーキ倍力装置は、自動的で且つドライバーに依存しない減速過程で液圧式車両ブレーキの構成要素が機能している通常時には作動されず、液圧式車両ブレーキ内の目標値が閾値を超えた場合にだけ使用される。
【0012】
通常時に自動的で且つドライバーに依存しない減速過程で作動される第1のブレーキ圧アクチュエータは、好ましくはエレクトロニックスタビリティプログラムESPの液圧ポンプである。これに割り当てられた調整器または制御器内で、供給された目標値に基づいて、液圧ポンプを起動させるための動作信号を発生させる。
【0013】
通常時に自動的で且つドライバーに依存しない減速過程で作動される第1のブレーキ圧アクチュエータは、場合によっては液圧式車両ブレーキ内の電気機械式ブレーキ倍力装置によって形成されていてよい。このケースでのバックアップブレーキシステムは、ESPシステムの液圧ポンプであるか、或いは、電気ブレーキモータを備えた電気機械式ブレーキ機構のいずれかである。
【0014】
駐車過程が自動化されているケースでは、更なる合目的な実施態様によれば、停止させた後の車両は補助ブレーキを用いて継続的に移動させないようにする。補助ブレーキとは、特に、ブレーキピストンをブレーキディスクのほうへ変位させる電気ブレーキモータを備えた電気機械式ブレーキ機構である。
【0015】
補助ブレーキに加えて、または、補助ブレーキとは択一的に、停止後に車両を該車両の変速装置内の変速装置ロック爪を用いて継続的に移動しないようにすることができる。
【0016】
上述した複数の方法ステップは、ブレーキシステムの種々の構成要素を起動させるための動作信号を発生させる調整器または制御器内で経過する。
【0017】
本発明は、さらに、調整可能なブレーキ圧アクチュエータを備えた液圧式車両ブレーキと、付加的なブレーキ力を発生させるためのバックアップブレーキシステムとを有する車両におけるブレーキシステムに関する。ブレーキシステムは、該ブレーキシステムの調整可能な構成要素を起動させるための調整器または制御器をも含んでいる。調整器または制御器内では、コントローラを起動させるための目標値をも発生させる。コントローラは調整器または制御器の構成要素であってよく、コントローラ内には、液圧式車両ブレーキ内のブレーキ圧アクチュエータを起動させるための動作信号またはバックアップブレーキシステムを起動させるための動作信号を発生させることができる。
【0018】
他の利点および合目的な実施態様は他の請求項、図面を用いた説明および図面から読み取れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ブレーキ倍力装置を備えた液圧式車両ブレーキの概略図であって、該車両ブレーキの車輪ブレーキ装置が、車両後車軸に、電気ブレーキモータを備える電気機械式ブレーキ機構を付加的に備えている概略図である。
【
図2】電気ブレーキモータを備える電気機械式ブレーキ機構の断面図である。
【
図3】車両を自動的に且つドライバーに依存せずに減速させるための方法ステップを含むフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図において、同じ構成部材には同じ参照符号が付してある。
【0021】
図1に図示した車両用液圧式車両ブレーキ1は、車両の各車輪にブレーキ圧のもとにあるブレーキ流体を供給し、車輪ブレーキ装置9を起動させるため、前車軸ブレーキ回路2と後車軸ブレーキ回路3とを含んでいる。両ブレーキ回路2,3は1つの共通のブレーキマスタシリンダ4に接続され、該ブレーキマスタシリンダにはブレーキ液リザーバ5を介してブレーキ流体が供給される。ブレーキマスタシリンダ4内部のブレーキマスタシリンダピストンはドライバーによってブレーキペダル6を介して操作され、ドライバーによって及ぼされるペダルストロークはペダルストロークセンサ7によって測定される。ブレーキペダル6とブレーキマスタシリンダ4との間には、電気機械式ブレーキ倍力装置10があり、該電気機械式ブレーキ倍力装置は、有利には変速装置を介してブレーキマスタシリンダ4を操作する電動機を含んでいる。電気機械式ブレーキ倍力装置10は、場合によってはドライバーとは独立にブレーキ圧を自動的に発生させるために起動させることができるブレーキ圧アクチュエータを形成している。
【0022】
ペダルストロークセンサ7によって測定されたブレーキペダル6の動作運動は、センサ信号として調整器または制御器11へ送られ、該調整器または制御器内で、ブレーキ倍力装置10を起動させるための動作信号が生成される。車輪ブレーキ装置9へのブレーキ流体の供給は、各ブレーキ回路2,3内で、他のアッセンブリとともにブレーキ液圧装置8の一部である異なる切換弁を介して行われる。ブレーキ液圧装置8には、さらに、エレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)の構成部材である液圧ポンプが属している。エレクトロニックスタビリティプログラムの液圧ポンプも、ドライバーとは独立にブレーキ圧を自動的に発生させるためのブレーキ圧アクチュエータを形成している。液圧ポンプは同様に調整器または制御器11によって起動される。
【0023】
図2には、車両の後車軸の1つの車輪に配置されている車輪ブレーキ装置9が詳細に図示されている。車輪ブレーキ装置9は液圧式車両ブレーキ1の一部であり、後車軸ブレーキ回路からブレーキ流体22の供給を受ける。車輪ブレーキ装置9は、さらに、電気機械式ブレーキ機構を有している。電気機械式ブレーキ機構は、有利には停車時に車両を停止させるための補助ブレーキとして使用されるが、しかし車両の移動時にも、特に車速が速度制限値以下の比較的低い場合にも、車両を減速させるために使用することができる。
【0024】
電気機械式ブレーキ機構は、ブレーキディスク20に跨っているキャリパー19を備えたブレーキキャリパー12を含んでいる。ブレーキ機構は、アクチュエータ部材として、ブレーキモータ13としての直流電動機を有し、そのロータ軸はスピンドル14を回転駆動させ、該スピンドル上にはスピンドルナット15が相対回転不能に支持されている。スピンドル14が回転すると、スピンドルナット15が軸線方向に変位する。スピンドルナット15は、ブレーキライニング17の担持体であるブレーキピストン16の内部で運動し、ブレーキライニングはブレーキピストン16によってブレーキディスク20に対し押圧される。ブレーキディスク20の反対側には、キャリパー19に位置固定して保持されている他のブレーキライニング18がある。ブレーキピストン16は、その外面において、取り囲んでいるパッキンリング23を介して、受容しているハウジングに対し圧力が漏れないよう密封されている。
【0025】
ブレーキピストン16の内部では、スピンドル14の回転運動時にスピンドルナット15が軸線方向において前方へ、すなわちブレーキディスク20の方向へ移動することができ、または、スピンドル14の逆方向への回転運動時には、軸線方向において後方へ、エンドストッパー21に到達するまで移動することができる。締め付け力を発生させるため、スピンドルナット15はブレーキピストン16の内側端面に作用し、これによって、軸線方向に変位するようにブレーキ機構内に支持されているブレーキピストン16は、ブレーキライニング17でもってブレーキディスク20の対向端面に対し押圧される。スピンドルナット15は、ブレーキモータとブレーキピストンとの間の伝達部材である。
【0026】
液圧ブレーキ力のため、ブレーキピストン16には、液圧式車両ブレーキ1からのブレーキ流体22の液圧が作用する。液圧は、車両停止時にも電気機械式ブレーキ機構の操作時に補助的に作用していてよく、その結果全ブレーキ力は、電気機械式に提供される成分と液圧による成分とから構成される。車両の走行中には、ブレーキ力を発生させるため、液圧式車両ブレーキのみが作動しているか、液圧式車両ブレーキと電気機械式ブレーキ機構との双方が作動しているか、電気機械式ブレーキ機構のみが作動しているかのいずれかである。液圧式車両ブレーキ1の調整可能な構成要素と電気機械式車輪ブレーキ装置9の調整可能な構成要素との双方を起動させるための動作信号は、調整器または制御器11内で発生させる。
【0027】
自動的な、ドライバーに依存しない駐車過程の間、車両をドライバーの介入なしに且つ高い機能安全性で減速させねばならない。このため、センサで検出した情報をもとに、たとえば駐車過程の間で現時点においてまだ利用できる制動距離を連続的に検出する。液圧式車両ブレーキは、その複数のブレーキ圧アクチュエータのうちの1つの起動によって自動的に且つドライバーに依存せずに起動されて、所望の目標ブレーキ圧を発生させる。これは、特に、調整器および制御器11の動作信号を介して起動されるエレクトロニックスタビリティプログラムの液圧ポンプを介して行われる。起動は、周辺状態量および走行状態量を連続的にセンサで検出し、それをもとにしてコントローラ内にブレーキ圧アクチュエータを起動させるための、特にエレクトロニックスタビリティプログラムの液圧ポンプを起動させるための動作信号を発生させることで、制御方式で行われる。コントローラは、場合によっては調整器または制御器の構成要素であってよく、或いは、これとは別個に形成されるユニットとして実施されていてもよい。
【0028】
図3は、自主的に実施される駐車過程の間に車両を自動的に且つドライバーに依存せずに減速させるための方法ステップのフローチャートを示している。
【0029】
第1の方法ステップ30は、たとえばドライバーが手動で行う駐車過程の開始を表している。車両内のセンサ装置を用いて、ステップ31で、たとえば障害物のような周辺情報と、たとえば現時点での車速のような走行状態量とを検出する。これをもとに、次のステップ32で、最終的な駐車位置に到達するまでに車両を操作し制動させるためにまだ利用できる距離を連続的に検出する。この距離情報は、たとえば快適性の理由から予め設定される最大減速度のような他の境界条件または最大ブレーキ力とともに、次のステップ33でブレーキシステムのための目標値を算出するために用いられる。
【0030】
最初の3つの方法ステップ30,31,32は、上位の調整器または制御器11内で実施される。これに対し、ステップ33で液圧式車両ブレーキを自動的に起動させるための目標値の算出は、液圧式車両ブレーキ内のブレーキ圧アクチュエータを起動させる、特にエレクトロニックスタビリティプログラムの液圧ポンプを起動させる距離コントローラ40に属している。コントローラ40は、場合によっては調整器または制御器11の構成要素であってよい。目標値として、方法ステップ33で液圧式車両ブレーキのための目標ブレーキ圧が確定される。
【0031】
次に、コントローラ40から送られてくる目標ブレーキ圧を、方法ステップ34に従ってブレーキシステム1内で制御ユニットに供給し、その際制御ユニットも調整器または制御器11の構成要素であってよい。ステップ34に従って制御ユニット内で、発生させた目標ブレーキ圧が許容値範囲内にあるかどうかをチェックする。許容値範囲内にあれば、液圧式車両ブレーキに完全な動作信頼性があるという前提から出発して、方法ステップ35に従って液圧式車両ブレーキのブレーキ圧アクチュエータ(ESPシステムの液圧ポンプ)を起動させることで、所望の目標ブレーキ圧を発生させる。
【0032】
これに対し、方法ステップ34でのチェックの結果、目標ブレーキ圧が割り当てられた閾値を超えていることが明らかになった場合には、目標ブレーキ圧の連続的なアクティブな発生のために、その上昇が液圧式車両ブレーキの構成要素における欠陥に起因しているとの前提から出発しなければならない。コントローラ40内で発生させた目標ブレーキ圧が故障時に上昇するのは、所望の車両減速がその前に発生させた目標ブレーキ圧によって達成できなかったためである。
【0033】
閾値を超えたことにより、方法ステップ34から次の方法ステップ36へ分岐し、ステップ35に従ってブレーキ圧アクチュエータを起動することに対し補完的にまたは択一的に動作するバックアップブレーキシステムを起動させる。バックアップブレーキシステムは、同様に車両ブレーキ内のブレーキ圧アクチュエータ、たとえばドライバーに依存せずに起動させることができる電気機械式ブレーキ倍力装置である。これに加えて、または、これとは択一的に、電気機械式ブレーキ機構を電気ブレーキモータで起動させて、利用できる制動距離内で停止するまで車両を減速させるような車両減速を達成することも可能である。
【0034】
次のステップ37で、車両が停止したかどうかをチェックする。停止した場合には、最後のステップ38で、電気機械式パーキングブレーキまたは補助ブレーキをロックするか、或いは、変速装置において変速装置ロック爪を用いて車両の移動を阻止することにより、停止している車両の移動を阻止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 液圧式車両ブレーキ
10 電気機械式ブレーキ倍力装置
11 調整器または制御器
13 電気ブレーキモータ
40 コントローラ