(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学材料用重合性組成物100重量%に対し、亜リン酸トリエステル(A)を0.01重量%〜0.5重量%含む、請求項1から3のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
亜リン酸トリエステル(A)が、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、トリス(2,4−ジブチルフェニル)ホスファイトから選択される少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
ポリイソシアネート化合物(E)が、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、請求項1から14のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
活性水素化合物(F)が、ポリオール化合物、ポリチオール化合物およびヒドロキシ基を有するチオール化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1から15のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
活性水素化合物(F)が、グリセリン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、およびトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)から選択される少なくとも1種である、請求項1から17のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
亜リン酸トリエステル(A)、フォトクロミック化合物(D)およびポリイソシアネート化合物(E)を含む、請求項1から18のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物用マスターバッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、ポリ(チオ)ウレタン樹脂製の調光材料において、必須なモノマー成分であるポリイソシアネート化合物の品質により、硬化後の調光材料が著しく赤く着色し、色調が悪化して安定化しない場合があることを見出した。この場合、特に高い透明性が要求される眼鏡レンズ材料として適用することはできない。
【0011】
通常、ポリイソシアネート化合物の品質が劣化した場合、得られるプラスチックレンズが白濁する現象や、あるいは黄色に着色する現象が認められることが多い。しかしながら、本発明者らが見出した今回の現象は、プラスチックレンズに白濁は全く認められないものの、赤色の着色が認められる現象であることから、当該現象は単純にポリイソシアネート化合物の品質劣化のみに起因しているとは考えられない。
【0012】
また、特許文献9、10に記載されている、ポリ(メタ)アクリレート樹脂やポリアリルカーボネート樹脂には、この赤色に着色する現象は認められない。
以上のことから、この現象は、ポリイソシアネート化合物中の不純物に起因して発生しているものと推察された。
上記知見に基づき、本発明者らは、ポリイソシアネート化合物の品質に依らず、赤色の着色が抑制され、安定して良好な初期色調が得られ、さらに良好な調光性能を有する調光材料を提供できる重合性組成物を開発すべく鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、特定の亜リン酸トリエステルとフォトクロミック化合物とを併存することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は以下に示すことができる。
[1] (A)一般式(1)で表される亜リン酸トリエステルと、
【化1】
(一般式(1)中、R
1、R
2、R
3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から18の脂肪族または芳香族の炭化水素基を示す。R
1、R
2、R
3は、同一でも異なっていてもよい。また、R
1、R
2、R
3は、それぞれ結合してヘテロ原子を含んでいてもよい環構造を形成することができる。)
(D)フォトクロミック化合物と、
(E)ポリイソシアネート化合物と、
(F)二官能以上の活性水素化合物と、
を含む、光学材料用重合性組成物。
[2] さらに、(C)一般式(3a)で表される化合物および一般式(3b)で表される化合物から選択される少なくとも1種のアルコール化合物を含む、[1]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化2】
(一般式(3a)中、R
7およびR
8は、水素原子、メチル基、エチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
7およびR
8は、同一でも異なっていてもよい。nは30以上500以下の整数を示す。)
【化3】
(一般式(3b)中、Qは、ジオールから誘導される2価の基、または少なくとも3つの第1級アルコール基を有するポリオールから誘導される3〜30価の基を表し、mは3〜10の整数を示し、nは2〜30の整数を示す。)
[3] さらに、(B)一般式(2)で表される酸性リン酸エステルを含む、[1]または[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化4】
(一般式(2)中、mは1または2の整数を示し、nは0〜18の整数を示し、R
4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基を示す。)
[4] 光学材料用重合性組成物100重量%に対し、亜リン酸トリエステル(A)を0.01重量%〜0.5重量%含む、[1]から[3]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[5] 亜リン酸トリエステル(A)が、芳香環を含む化合物である、[1]から[4]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[6] 亜リン酸トリエステル(A)が、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、トリス(2,4−ジブチルフェニル)ホスファイトから選択される少なくとも1種である、[1]から[5]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[7] 亜リン酸トリエステル(A)が、トリフェニルホスファイトである、[1]から[6]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[8] 酸性リン酸エステル(B)が、nは4以下の整数を示し、R
4は炭素数1〜12のアルキル基を示す、[3]に記載の光学材料用重合性組成物。
[9] アルコール化合物(C)が、一般式(4a)で表される化合物である、[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化5】
(一般式(4a)中、R
9およびR
10は、水素原子、メチル基、エチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
9およびR
10は、同一でも異なっていてもよい。a+cは2以上400以下の整数であり、bは1以上100以下の整数を表す。)
[10] アルコール化合物(C)の数平均分子量が1000から15000である、[9]に記載の光学材料用重合性組成物。
[11] アルコール化合物(C)の数平均分子量が1500から7500である、[9]または[10]に記載の光学材料用重合性組成物。
[12] フォトクロミック化合物(D)が、一般式(5)および一般式(6)で表される化合物から選択される少なくとも一種である、[1]から[11]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【化6】
【化7】
(一般式(5)および一般式(6)中、R
1およびR
2は同一でも異なっていてもよく、独立して、水素;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルキル基;
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数4〜24のヘテロアリール基;
アラルキルまたはヘテロアラルキル基(炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基が前記のアリール基またはヘテロアリール基で置換されている。)を示す。
置換された炭素数6〜24のアリール基または置換された炭素数4〜24のヘテロアリール基の置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルコキシ基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルコキシ基、少なくとも一つの炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基により置換されたフェノキシ基またはナフトキシ基、炭素数2〜12の直鎖または分枝のアルケニル基、−NH
2基、−NHR基、−N(R)
2基(Rは炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。Rが2つ存在する場合、2つのRは同一でも異なっていてもよい。)、およびメタクリロイル基またはアクリロイル基から少なくとも1つ選択される。
R
3は同一でも異なっていてもよく、独立して、ハロゲン原子;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルキル基;
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルコキシ基;
少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数3〜12のハロシクロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分岐ハロアルコキシ基;
置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数4〜24のヘテロアリール基(置換基として、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルコキシ基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルコキシ基、少なくとも一つの炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基により置換されたフェノキシ基またはナフトキシ基、炭素数2〜12の直鎖または分枝のアルケニル基、およびアミノ基、から選択される少なくとも1つの置換基を有する。);
アラルキルまたはヘテロアラルキル基(炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基が前記のアリール基またはヘテロアリール基で置換されている。);
置換または無置換のフェノキシまたはナフトキシ基(置換基として、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基またはアルコキシ基から選択される少なくとも1つの置換基を有する。);
−NH
2、−NHR、−CONH
2、または−CONHR
(Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。);
−OCORまたは−COOR(ここで、Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基、またはR
1、R
2において、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基の置換基の少なくとも1つにより置換されているフェニル基または無置換のフェニル基である。);
を表す。
少なくとも2つの隣接するR
3同士が結合し、R
3が結合している炭素原子を含んで、1つ以上の芳香環基または非芳香環基を形成することができる。芳香環基または非芳香環基は、酸素、硫黄、及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい1つの環または2つのアネル化された環を含む。
mは、0〜4までの整数である。pは、0〜2までの整数である。)
[13] フォトクロミック化合物(D)が、一般式(7)で表される化合物である、[1]から[12]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
【化8】
(一般式(7)中、R
1、R
2、R
3、mは、一般式(5)と同じであり、Aは、下記式(A1)〜(A5)のアネル化環を表す。
【化9】
(これらのアネル化環(A1)〜(A5)において、点線が、一般式(7)のナフトピラン環の炭素C5炭素C6結合を表す。アネル化環(A4)または(A5)のα結合が、一般式(7)のナフトピラン環の炭素C5または炭素C6に結合される。
R
4が、同じかまたは異なり、独立して、OH、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基を表し、もしくは2つのR
4がカルボニル(CO)を形成する。
R
5、R
6およびR
7が、独立して、ハロゲン原子;
炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基;
少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、炭素数1〜6の直鎖または分枝のハロアルキル基;
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルコキシ基;
置換または無置換のフェニルまたはベンジル基(置換基として、一般式(7)のR
1、R
2基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R
1、R
2基の定義において上述した置換基の少なくとも1つを有する。);
−NH
2、−NHR
(ここで、Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。);
置換または無置換であるフェノキシまたはナフトキシ基(置換基として、少なくとも炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基を有する。);
−COR、−COORまたは−CONHR基(ここで、Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基、または置換または無置換のフェニルまたはベンジル基(置換基として、一般式(7)のR
1、R
2基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R
1、R
2基の定義において上述した置換基の少なくとも1つを有する。)を表す。)
qが0〜6までの整数であり、rが0〜4までの整数であり、sが0〜2までの整数であり、tが0〜3までの整数である。
なお、Aが(A4)を示す場合、qが0〜2までの整数であり、rが0〜4までの整数であり、Aが(A2)を示す場合、qが0〜2までの整数である。))
[14] フォトクロミック化合物(D)が、一般式(a)または一般式(b)で表される化合物である、[1]から[13]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
PC-L-Chain (a)
PC-L-Chain-L'-PC' (b)
(PCとPC'は一般式(c)〜(f)のいずれかを示す。PCとPC'は同一でも異なっていても良い。)
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(一般式(c)〜(f)中、R
1〜R
18は、水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、アセチル基、ホルミル基、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基、置換されてもよいC3〜C20の脂環族基、または置換されてもよいC6〜C20の芳香族有機基を示し、それぞれ同一でも異なってもよい。これら脂肪族基、脂環族基または芳香族有機基は、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。一般式(c)〜(f)で表される化合物に含まれる、いずれか1つの基は、2価の有機基であるLまたはL'と結合する。LとL'は、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、(チオ)エステル基、(チオ)アミド基から選択される1種以上を含む2価の有機基を示す。Chainは、ポリシロキサン鎖、ポリオキシアルキレン鎖から選択される1種以上を含む1価または2価の有機基を示す。)
[15] ポリイソシアネート化合物(E)が、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、およびジフェニルメタンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、[1]から[14]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[16] 活性水素化合物(F)が、ポリオール化合物、ポリチオール化合物およびヒドロキシ基を有するチオール化合物から選択される少なくとも1種である、[1]から[15]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[17] 活性水素化合物(F)が三官能以上の活性水素化合物である、[1]から[16]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[18] 活性水素化合物(F)が、グリセリン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、およびトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)から選択される少なくとも1種である、[1]から[17]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[19] [1]から[18]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の硬化物からなる成形体。
[20] [19]に記載の成形体からなる光学材料。
[21] [19]に記載の成形体からなるプラスチックレンズ。
[22] 偏光フィルムと、
前記偏光フィルムの少なくとも一方の面上に形成された、[19]に記載の成形体からなる基材層と、を備えるプラスチック偏光レンズ。
[23] 亜リン酸トリエステル(A)、フォトクロミック化合物(D)およびポリイソシアネート化合物(E)を含む、[1]から[18]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物用マスターバッチ。
[24] 亜リン酸トリエステル(A)を0.1重量%〜2重量%含む、[23]に記載のマスターバッチ。
[25] 亜リン酸トリエステル(A)とポリイソシアネート化合物(E)とを混合する工程と、
前記工程で得られた混合液に、フォトクロミック化合物(D)を混合する工程と、を含む、[23]または[24]に記載の光学材料用重合性組成物用マスターバッチの製造方法。
[26] (A)一般式(1)で表される亜リン酸トリエステルと、
【化14】
(一般式(1)中、R
1、R
2、R
3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から18の脂肪族または芳香族の炭化水素基を示す。R
1、R
2、R
3は、同一でも異なっていてもよい。またR
1、R
2、R
3は、それぞれ結合してヘテロ原子を含んでいてもよい環構造を形成することができる。)
(D)フォトクロミック化合物と、
(E)ポリイソシアネート化合物と、
(F)二官能以上の活性水素化合物と、を混合する工程を含む、光学材料用重合性組成物の製造方法。
[27] (A)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分を混合する前記工程は、
[25]に記載の製造方法によりマスターバッチを調製する工程と、
前記マスターバッチに、光学材料用重合性組成物を構成する残りの(E)成分と、活性水素化合物(F)とを混合する工程と、
を含む、[26]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[28] (A)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分(ただし、一般式(3a)および一般式(3b)で表されるアルコール化合物を除く)を混合する前記工程は、
さらに、(C)一般式(3a)で表される化合物および一般式(3b)で表される化合物から選択される少なくとも1種のアルコール化合物を混合する工程を含む、[26]または[27]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化15】
(一般式(3a)中、R
7およびR
8は、水素原子、メチル基、エチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
7およびR
8は、同一でも異なっていてもよい。nは30以上500以下の整数を示す。)
【化16】
(一般式(3b)中、Qは、ジオールから誘導される2価の基、または少なくとも3つの第1級アルコール基を有するポリオールから誘導される3〜30価の基を表し、mは3〜10の整数を示し、nは2〜30の整数を示す。)
[29] (A)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分を混合する前記工程は、
さらに、(B)一般式(2)で表される酸性リン酸エステルを混合する工程を含む、[26]から[28]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化17】
(一般式(2)中、mは1または2の整数を示し、nは0〜18の整数を示し、R
4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基を示す。)
[30] [26]から[29]のいずれかに記載の製造方法により光学材料用重合性組成物を調製する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を鋳型内で注型重合することによりレンズ基材を形成する工程と、
を含む、プラスチックレンズの製造方法。
[31] [26]から[29]のいずれかに記載の製造方法により光学材料用重合性組成物を調製する工程と、
偏光フィルムを、モールドから離隔した状態でレンズ注型用鋳型内に固定する工程と、
前記偏光フィルムと、前記モールドとの間に形成される空隙の少なくとも一方に前記光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に基材層を積層する工程と、
を含む、プラスチック偏光レンズの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学材料用重合性組成物によれば、ポリイソシアネート化合物の品質に依らず、安定して良好な初期色調が得られ、さらに調光性能にも優れた、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン系光学材料またはポリチオウレタン系光学材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の光学材料用重合性組成物を、以下の実施の形態に基づいて説明する。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
(A)一般式(1)で表される亜リン酸トリエステルと、
(D)フォトクロミック化合物と、
(E)ポリイソシアネート化合物と、
(F)二官能以上の活性水素化合物と、
を含む。
【0018】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から18の脂肪族または芳香族の炭化水素基を示す。R
1、R
2、R
3は、同一でも異なっていてもよい。またR
1、R
2、R
3は、それぞれ結合してヘテロ原子を含んでいてもよい環構造を形成することができる。
環構造としては、置換基を有していてもよい、炭素数3から18の脂環族基、炭素数5から18の芳香族基、炭素数3から18の複素環基、または炭素数7から18のスピロ環基等を挙げることができる。
【0019】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、亜リン酸エステル(A)を添加することで、イソシアネート化合物中の不純物とフォトクロミック化合物との反応で生じると推察される、赤色に着色する現象を抑制することができ、初期色調を改善することができる。
以下、各成分について説明する。
【0020】
[(A)亜リン酸トリエステル]
亜リン酸トリエステル(A)は、一般式(1)で表される。
【0022】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1から18の脂肪族または芳香族の炭化水素基を示す。R
1、R
2、R
3は、同一でも異なっていてもよい。またR
1、R
2、R
3は、それぞれ結合してヘテロ原子を含んでいてもよい環構造を形成することができる。
【0023】
亜リン酸トリエステル(A)としては、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソトリデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、ビス(イソデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等の脂肪族亜リン酸エステル;
トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、トリス(2,4-ジブチルフェニル)ホスファイト等の芳香族亜リン酸エステル等を挙げることができる。亜リン酸トリエステル(A)としては、これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0024】
亜リン酸トリエステル(A)としては、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソトリデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、トリス(2,4-ジブチルフェニル)ホスファイトから選択される少なくとも1種が好ましく、
トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、トリス(2,4-ジブチルフェニル)ホスファイトから選択される少なくとも1種の芳香環を含む化合物がより好ましい。本実施形態においては、トリフェニルホスファイトが特に好ましい。
これらの亜リン酸トリエステル(A)は単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0025】
[(D)フォトクロミック化合物]
本実施形態において、フォトクロミック化合物としては、特に制限はなく、フォトクロミックレンズに使用しうる従来公知の化合物の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フルギド系化合物、ナフトピラン系化合物、ビスイミダゾール化合物、から所望の着色に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
前記スピロピラン系化合物の例としては、インドリノスピロベンゾピランのインドール環及びベンゼン環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、インドリノスピロナフトピランのインドール環及びナフタリン環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、インドリノスピロキノリノピランのインドール環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、インドリノスピロピリドピランのインドール環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、等が挙げられる。
【0027】
前記スピロオキサジン系化合物の例としては、インドリノスピロベンゾオキサジンがインドール環及びベンゼン環で置換されたハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、インドリノスピロナフトオキサジンのインドール環及びナフタリン環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、インドリノスピロフェナントロオキサジンのインドール環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、インドリノスピロキノリノオキサジンのインドール環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、ピペリジノスピロナフトオキサジンのピペリジン環及びナフタリン環がハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等で置換された各置換体、等が挙げられる。
【0028】
前記フルギド系化合物の例としては、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ[b]チオフェンジカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ[b]チオフェンジカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン)、6,7−ジヒドロ−N−メトキシカルボニルメチル−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ[b]チオフェンジカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン)、6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−(p−メチルフェニル)−N−ニトロメチルスピロ(5,6−ベンゾ[b]チオフェンジカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−シクロプロピル−3−メチルスピロ(5,6−ベンゾ[b]チオフェンジカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−シクロプロピルスピロ(5,6−ベンゾ[b]チオフェンジカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−シクロプロピルスピロ(5,6−ベンゾ[b]チオフェンジカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン)、等が挙げられる。
【0029】
前記ナフトピラン系化合物の例としては、スピロ(ノルボルナン−2,2'−[2H]ベンゾ[h]クロメン)、スピロ(ビシクロ[3.3.1]ノナン−9,2'−[2H]ベンゾ[h]クロメン)、7'−メトキシスピロ(ビシクロ[3.3.1]ノナン−9,2'−[2H]ベンゾ[h]クロメン)、7'−メトキシスピ(ノルボルナン−2,2'−[2H]ベンゾ[f]クロメン)、2,2−ジメチル−7−オクトキシ[2H]ベンゾ[h]クロメン、スピロ(2−ビシクロ[3.3.1]ノネン−9,2'−[2H]ベンゾ[h]クロメン)、スピロ(2−ビシクロ[3.3.1]ノネン−9,2'−[2H]ベンゾ[f]クロメン)、6−モルホリノ−3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ[f]クロメン、5−イソプロピル−2,2−ジフェニル−2H−ベンゾ(h)クロメン、等や、一般式(5)や一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
一般式(5)および一般式(6)中、R
1およびR
2は同一でも異なっていてもよく、独立して、水素;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルキル基;
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数4〜24のヘテロアリール基;
アラルキルまたはヘテロアラルキル基(炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基が前記のアリール基またはヘテロアリール基で置換されている。)を示す。
【0033】
置換された炭素数6〜24のアリール基または置換された炭素数4〜24のヘテロアリール基の置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルコキシ基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルコキシ基、少なくとも一つの炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基により置換されたフェノキシ基またはナフトキシ基、炭素数2〜12の直鎖または分枝のアルケニル基、−NH
2基、−NHR基、−N(R)
2基(Rは炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。Rが2つ存在する場合、2つのRは同一でも異なっていてもよい。)、およびメタクリロイル基またはアクリロイル基から少なくとも1つ選択される。
R
3は同一でも異なっていてもよく、独立して、ハロゲン原子;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルキル基;
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
炭素数1〜12の直鎖または分岐アルコキシ基;
少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数3〜12のハロシクロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分岐ハロアルコキシ基;
置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数4〜24のヘテロアリール基(置換基として、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルコキシ基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルキル基、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝のハロアルコキシ基、少なくとも一つの炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基により置換されたフェノキシ基またはナフトキシ基、炭素数2〜12の直鎖または分枝のアルケニル基、およびアミノ基、から選択される少なくとも1つの置換基を有する。);
アラルキルまたはヘテロアラルキル基(炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基が前記のアリール基またはヘテロアリール基で置換されている。);
置換または無置換のフェノキシまたはナフトキシ基(置換基として、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基またはアルコキシ基から選択される少なくとも1つの置換基を有する。);
−NH
2、−NHR、−CONH
2、または−CONHR
(Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。);
−OCORまたは−COOR(ここで、Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基、またはR
1、R
2において、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基の置換基の少なくとも1つにより置換されているフェニル基または無置換のフェニル基である。);
を表す。
少なくとも2つの隣接するR
3同士が結合し、R
3が結合している炭素原子を含んで、1つ以上の芳香環基または非芳香環基を形成することができる。芳香環基または非芳香環基は、酸素、硫黄、及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい1つの環または2つのアネル化された環を含む。
mは、0〜4までの整数である。pは、0〜2までの整数である。
【0034】
また、その他に、ナフトピラン系化合物として、WO2013/78086公報、WO2012/149599公報、WO2010/020770公報、WO2009/146509公報に記載のポリシロキサンオリゴマー、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキルエステルそれぞれの少なくとも1つの末端に調光染料分子が付加した化合物や、上記の一般式(5)または一般式(6)で示される構造が連結基で結合され、1分子中にナフトピラン環を2個以上含む化合物などが挙げられる。
一般式(5)で表されるナフトピラン系化合物において、一般式(7)で表される化合物が好ましい例として挙げられる。
【0036】
R
1、R
2、R
3、mは、一般式(5)と同じであり、Aは、下記式(A1)〜(A5)のアネル化環を表す。
【0038】
これらのアネル化環(A1)〜(A5)において、点線が、一般式(7)のナフトピラン環の炭素C5炭素C6結合を表す。アネル化環(A4)または(A5)のα結合が、一般式(7)のナフトピラン環の炭素C5または炭素C6に結合される。
【0039】
R
4が、同じかまたは異なり、独立して、OH、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基を表し、もしくは2つのR
4がカルボニル(CO)を形成する。
R
5、R
6およびR
7が、独立して、ハロゲン原子(好ましくはフッ素、塩素または臭素);
炭素数1〜12の直鎖または分枝のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基);
少なくとも1つのハロゲン原子により置換された、炭素数1〜6の直鎖または分枝のハロアルキル基(好ましくは、フルオロアルキル基);
炭素数3〜12のシクロアルキル基;
炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルコキシ基;
置換または無置換のフェニルまたはベンジル基(置換基として、一般式(7)のR
1、R
2基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R
1、R
2基の定義において上述した置換基の少なくとも1つを有する。);
−NH
2、−NHR
(ここで、Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基である。);
置換または無置換であるフェノキシまたはナフトキシ基(置換基として、少なくとも炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基またはアルコキシ基を有する。);
−COR、−COORまたは−CONHR基(ここで、Rが、炭素数1〜6の直鎖または分枝のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基、または置換または無置換のフェニルまたはベンジル基(置換基として、一般式(7)のR
1、R
2基が独立してアリールまたはヘテロアリール基に対応する場合、R
1、R
2基の定義において上述した置換基の少なくとも1つを有する。)を表す。)を表す。
qが0〜6までの整数であり、rが0〜4までの整数であり、sが0〜2までの整数であり、tが0〜3までの整数である。
なお、Aが(A4)を示す場合、qが0〜2までの整数であり、rが0〜4までの整数であり、Aが(A2)を示す場合、qが0〜2までの整数である。
【0040】
一般式(7)のフォトクロミック化合物は、求められている用途に適用される変色反応速度と組み合わされ、40℃でさえ高い着色適性を有する。容易に達成できる色は、オレンジから青にまで及ぶ。
【0041】
なお、本実施態様において、A=(A1)である一般式(7)で表される化合物、A=(A2)である一般式(7)で表される化合物、A=(A3)である一般式(7)で表される化合物、A=(A4)である一般式(7)で表される化合物、およびA=(A5)である一般式(7)で表される化合物からなる群より選択される1種、または2種以上の異なる種類に属する一般式(7)で表される化合物の混合物も包含する。
本実施形態では、一般式(7)で表される化合物として、下記一般式(8)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0043】
Ar
1、Ar
2は、芳香族基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、置換されていてもよいベンゼン環またはチオフェン環を表す。ベンゼン環またはチオフェン環の置換基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルモノ(またはジ)置換アミノ基を挙げることができる。R
3、R
4、R
5、m、q、rは前記と同義である。
一般式(7)で表される化合物として、一般式(9)で表される化合物をさらに好ましく用いることができる。
【0045】
一般式(9)中、R
8、R
9は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキルモノ(またはジ)置換アミノ基を表す。mが2のとき、隣接するR
3同士が結合し、R
3が結合している炭素原子を含んで環構造を形成することができる。u、vは、0〜4の整数である。上記環構造は、置換または無置換である、炭素数6〜24のアリール基または炭素数3〜24のヘテロアリール基である。
R
3、R
4、R
5、m、q、rは前記と同義である。
【0046】
一般式(9)で示される化合物の具体例としては、一般式(10)または一般式(11)で示される化合物が挙げられる。本実施形態においては、一般式(10)及び一般式(11)で示される化合物が好ましい。
【0049】
フォトクロミック化合物である一般式(5)および(6)で表される化合物は、公知の方法で合成することができる。たとえば、特表2004−500319号に記載の方法で合成することもできる。
また、さらに一般式(5)で表されるナフトピラン系化合物の具体例としては、一般式(12)で示される化合物を好ましい例として挙げることができる。
【0051】
ナフトピラン系化合物としては、前記に記載の化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物を用いてよい。
【0052】
本実施形態のフォトクロミックレンズは、樹脂100重量%に対して、ナフトピラン系化合物を100〜5000ppm、好ましくは100〜3000ppm含むことができる。添加量については、ナフトピラン系化合物の種類により性能が異なるため一概に限定することはできないが、ナフトピラン系化合物の性能や重合性組成物への溶解性によって適宜選定される。
【0053】
本実施形態におけるフォトクロミック化合物として、一般式(a)および一般式(b)から選択される少なくとも1種を用いることもできる。
PC-L-Chain (a)
PC-L-Chain-L'-PC' (b)
PCとPC'は一般式(c)〜(f)の化合物から誘導される1価の基を示す。PCとPC'は同一でも異なっていてもよい。
【0058】
一般式(c)〜(f)中、R
1〜R
18は、水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、アセチル基、ホルミル基、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基、置換されてもよいC3〜C20の脂環族基、または置換されてもよいC6〜C20の芳香族有機基を示し、それぞれ同一でも異なってもよい。これら脂肪族基、脂環族基または芳香族有機基は、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。一般式(c)〜(f)で表される化合物に含まれる、いずれか1つの基は、2価の有機基であるLまたはL'と結合する。
【0059】
置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基としては、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルコキシ基、直鎖あるいは分枝鎖状のC2〜C10アルケニル基、C1〜C10ヒドロキシアルキル基、C1〜C10ヒドロキシアルコキシ基、C1〜C10アルコキシ基で置換されたC1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基で置換されたC1〜C10アルコキシ基、C1〜C5ハロアルキル基、C1〜C5ジハロアルキル基、C1〜C5トリハロアルキル基、C1〜C10アルキルアミノ基、C1〜C10アミノアルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C20アルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
置換されてもよいC3〜C20の脂環族基として、C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C20のビシクロアルキル基等を挙げることができる。
【0060】
置換されてもよいC6〜C20の芳香族有機基としては、フェニル基、C7〜C16アルコキシフェニル基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールC1〜C5アルキルアミノ基、環状アミノ基、アリールカルボニル基、アロイル基等を挙げることができる。
【0061】
R
1とR
2として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルコキシ基、C1〜C10ヒドロキシアルコキシ基、C1〜C10アルコキシ基で置換されたC1〜C10アルコキシ基、C1〜C5ハロアルキル基、C1〜C5ジハロアルキル基、C1〜C5トリハロアルキル基、C1〜C5アルキルアミノ基等の、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基;
フェニル基、C7〜C16アルコキシフェニル基、C1〜C5ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールC1〜C5アルキルアミノ基、環状アミノ基等の、置換されてもよいC6〜C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。R
1とR
2は、それぞれ同一でも異なってもよい。
R
3として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;カルボキシル基;アセチル基;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC2〜C10アルケ二ル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルコキシ基、C1〜C10ヒドロキシアルキル基、C1〜C10アルコキシ基で置換されたC1〜C10アルキル基、C1〜C10アミノアルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C20アルコキシカルボニル基等の、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基;
C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C20のビシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3〜C20の脂環族基;
アリールカルボニル基、ホルミル基、アロイル基等の、置換されてもよいC6〜C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。
【0062】
R
4として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;カルボキシル基;アセチル基;ホルミル基;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC2〜C10アルケ二ル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルコキシ基、C1〜C10ヒドロキシアルキル基、C1〜C10アルコキシ基で置換されたC1〜C10アルキル基、C1〜C10アミノアルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C20アルコキシカルボニル基等の、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基;
C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C20のビシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3〜C20の脂環族基;
アリールカルボニル基、アロイル基、フェニル基、C7〜C16アルコキシフェニル基、C1〜C10ジアルコキシフェニル基、C1〜C10アルキルフェニル基、C1〜C10ジアルキルフェニル基等の、置換されてもよいC6〜C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。
【0063】
R
3とR
4は互いに結合してもよい。R
3とR
4が互いに結合して環構造を形成する場合、一般式(g)または(h)が挙げられる。点線部分が、R
3が結合している炭素原子とR
4が結合している炭素原子との間の結合を表す。
【0066】
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
14、R
15、R
16は、R
1、R
2と同様な官能基を示す。複数存在するR
5〜R
7とは同一でも異なっていてもよい。
【0067】
R
11として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C20アルキル基、C1〜C5ハロアルキル基、C1〜C5ジハロアルキル基、C1〜C5トリハロアルキル基等の、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基;
C3〜C20のシクロアルキル基、C6〜C20のビシクロアルキル基、C1〜C5アルキル基で置換されたC3〜C20シクロアルキル基、C1〜C5アルキル基で置換されたC6〜C20のビシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3〜C20の脂環族基;
C1〜C5アルキル基で置換されたアリール基等の、置換されてもよいC6〜C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。
【0068】
R
12とR
13として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
C1〜C10アルキル基、C1〜C5アルキルアルコキシカルボニル基等の、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基;C5〜C7のシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3〜C20の脂環族基;等を示す。
【0069】
R
17とR
18として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基、C1〜C10ヒドロキシアルキル基等の、置換されてもよいC1〜C20の脂肪族基;C5〜C7のシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3〜C20の脂環族基;等を示す。
【0070】
一般式(a)または(b)のLとL'は、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、(チオ)エステル基、(チオ)アミド基から選択される少なくとも1種の基を含む2価の有機基を示す。
具体的には、LとL'は、一般式(i)〜(o)で表される。LとL'は同一でも異なっていてもよい。
【0072】
一般式(i)〜(o)中、Yは、酸素、硫黄を示す。
R
19は、水素、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基を示す。
R
20は、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキレン基を示す。
pは、0〜15の整数を示し、rは、0〜10の整数を示す。
【0073】
Qは、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキレン基、C1〜C10アルケニレン基、1,2-、1,3-、1,4-位の置換アリール基から誘導される2価の基、置換ヘテロアリール基から誘導される2価の基等を示す。
*1、*2は結合手を表し、*1は「Chain」で表される1価または2価の有機基と結合し、*2はPCまたはPC' で表される1価の有機基と結合する。
【0074】
一般式(a)または(b)の「Chain」は、ポリシロキサン鎖、ポリオキシアルキレン鎖から選択される1種以上を含む1価または2価の有機基を示す。
ポリシロキサン鎖としては、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリメチルフェニルシロキサン鎖、ポリメチルヒドロシロキサン鎖等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシヘキサメチレン鎖等が挙げられる。
具体的には、
「Chain」は、フォトクロミック化合物が一般式(a)の場合は、一般式(p)または(q)の1価の有機基を示す。
【0076】
「Chain」は、フォトクロミック化合物が一般式(b)の場合、一般式(r)または(s)の2価の有機基を示す。
【0078】
一般式(p)〜(s)中、
R
21は、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基を示す。
R
22は、直鎖あるいは分枝鎖状のC1〜C10アルキル基を示す。
R
23は、水素、メチル基、エチル基を示す。
nは4〜75の整数を示し、mは1〜50の整数を示す。
qは1〜3の整数を示す。
*3、*4は結合手を表し、*3はLで表される2価の有機基と結合し、*4はL'で表される2価の有機基と結合する。
【0079】
本実施形態のフォトクロミックレンズ(100重量%)は、一般式(a)または一般式(b)で表されるフォトクロミック化合物を100〜5000ppm、好ましくは100〜3000ppm含むことができる。添加量については、一般式(a)または一般式(b)で表されるフォトクロミック化合物の種類により性能が異なるため一概に限定することはできないが、一般式(a)または一般式(b)で表されるフォトクロミック化合物の性能やテトラアザポルフィリン化合物の種類や添加量によって適宜選定される。
【0080】
本実施形態のフォトクロミック化合物は、WO2009/146509公報、WO2010/20770公報、WO2012/149599公報、WO2012/162725公報に記載の方法により得られる。
【0081】
本実施形態におけるフォトクロミック化合物としては、Vivimed社のReversacol Humber Blue(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Calder Blue(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Trent Blue(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Pennine Green(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Heath Green(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Chilli Red(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Wembley Grey(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Cayenne Red(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))、Reversacol Wilson Blue(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))等が挙げられる。
【0082】
[(E)ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物(E)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、1,3,5−トリス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4'−ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;
ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。ポリイソシアネート化合物(E)としては、これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0083】
ポリイソシアネート化合物(E)としては、単量体以外に、変性体および/または変性体との混合物の場合も含み、イソシアネートの変性体としては、例えば、多量体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、オキサジアジントリオン変性体、ポリオール変性体などが挙げられる。多量体としては、例えば、ウレットジオン、ウレトイミン、カルボジイミド等の二量体、イソシアヌレート、イミノオキサジアンジオン等の三量体以上の多量体が挙げられる。
【0084】
ポリイソシアネート化合物(E)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートから選択される少なくとも1種が好ましく、
イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンから選択される少なくとも1種がより好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0085】
ポリイソシアネート化合物(E)として上記の化合物を用いた場合、特にm−キシリレンジイソシアネートを用いた場合、硬化後の調光材料が赤く着色する現象が特に顕著に認められる。つまり、本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(E)として上記の化合物を用いた場合、特にm−キシリレンジイソシアネートを用いた場合、亜リン酸トリエステル(A)による赤色着色抑制効果が特に顕著となる。
【0086】
[(F)二官能以上の活性水素化合物]
本実施形態において、二官能以上の活性水素化合物(F)は、後述する一般式(3a)および一般式(3b)で表されるアルコール化合物(C)を含まない。二官能以上の活性水素化合物(F)(以下、単に「活性水素化合物(F)」)としては、特に限定されるものではないが、ポリオール化合物、ポリチオール化合物、ヒドロキシ基を有するチオール化合物等を挙げることができる。これらは適宜組み合わせて用いることができる。
【0087】
ポリオール化合物としては、たとえば、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ジグリセロール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−ジメタノール、ビシクロ[4.3.0]−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジオール、ビシクロ[4.3.0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5.3.1.1]ドデカノール、スピロ[3.4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1'−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクトース等の脂肪族ポリオール;
ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ポリオール;
ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール;
グリセロールのエチレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加体、グリセロールのプロピレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加体、カプロラクトン変性グリセロール、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性ペンタエリスリトール等の3官能以上のアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させた化合物;
エポキシ樹脂等の高分子ポリオールが挙げられる。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも1種を組み合わせて用いることができる。
【0088】
また、ポリオール化合物として他に、シュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸、シクロヘキサンカルボン酸、β−オキソシクロヘキサンプロピオン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモグリコール、ジカルボキシシクロヘキサン、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ブロモフタル酸などの有機酸と上記ポリオールとの縮合反応生成物;
上記ポリオールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物;
アルキレンポリアミンとエチレンオキサイドや、プロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物;さらには、
ビス−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−( 2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−(4−ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[2−メチル−4−(ヒドロキシエトキシ)−6−ブチルフェニル]スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物;
ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも1種を組み合わせて用いることができる。
【0089】
ポリチオール化合物としては、例えば、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも1種を組み合わせて用いることができる。
【0090】
ヒドロキシ基を有するチオール化合物としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンビス(メルカプトアセテート)、4−メルカプトフェノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)等を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
さらにこれら活性水素化合物のオリゴマーや塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体を使用しても良い。これら活性水素化合物は単独でも、2種類以上を混合しても使用することができる。
【0091】
本実施形態においては、得られる成形体の機械的強度などの物性の観点から、活性水素化合物(F)として、三官能以上の活性水素化合物を用いることが好ましい。
具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)から選択される少なくとも1種が好ましく使用される。
【0092】
[(C)アルコール化合物]
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらにアルコール化合物(C)を含むことができる。アルコール化合物(C)を含むことにより、フォトクロミック性能により優れた光学材料を得ることができる。さらに、亜リン酸トリエステル(A)とアルコール化合物(C)とを併用することにより、ポリイソシアネート化合物の品質に依らず、光学材料の赤色の着色がより抑制されるとともに、黄色の着色も効果的に抑制されるため、特に良好な初期色調を得ることができる。
アルコール化合物(C)は、一般式(3a)で表される化合物および一般式(3b)で表される化合物から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0094】
一般式(3a)中、R
7およびR
8は、水素原子、メチル基、エチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
7およびR
8は、同一でも異なっていてもよい。nは30以上500以下の整数を示す。
一般式(3a)で表されるアルコール化合物として、具体的に一般式(4a)で表される化合物を用いることができる。
【0096】
一般式(4a)中、R
9およびR
10は、水素原子、メチル基、エチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
9およびR
10は、同一でも異なっていてもよい。a+cは2以上400以下の整数であり、bは1以上100以下の整数を表す。
アルコール化合物(C)の数平均分子量は、1000から15000であり、1500から7500が好ましい。
【0097】
一般式(3a)で表されるアルコール化合物としては、アデカ社製のアデカプルロニックシリーズ、BASF社製のプルロニックシリーズなどが挙げられる。プルロニックシリーズに含まれる化合物の構造は非特許文献1に示される。
【0098】
一般式(3a)で表されるアルコール化合物としては、アデカ社製のアデカプルロニックL-44、L-62、L-64、L-72、P-84、P-85、BASF社製のプルロニックL-43、L-44、L-62、L-64、L-72、P-65、P-84、P-85、F-68、F-77が好ましく、
アデカ社製のアデカプルロニックL-62、L-64、P-84、P-85、BASF社製のプルロニックL-62、L-64、L-72、P-65、P-84、P-85、F-77がより好ましい。これらのアルコール化合物は単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0100】
一般式(3b)中、Qは、ジオールから誘導される2価の基、または少なくとも3つの第1級アルコール基を有するポリオールから誘導される3〜30価の基を表す。mは3〜10の整数を示し、nは2〜30の整数を示す。
なお、式中、Qに直結する酸素原子は、ジオール由来の酸素原子またはポリオール由来の酸素原子である。
【0101】
Qは、本発明の効果の観点から、少なくとも3つの第1級アルコール基を有するポリオールから誘導される3〜30価の基であることが好ましい。
【0102】
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0103】
少なくとも3つの第1級アルコール基を有するポリオールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0104】
一般式(3b)で表されるアルコール化合物としては、PERSTORP社のCAPA polycaprolactone polyolシリーズ、DEICEL社のPLACCELシリーズ等を用いることができる。これらのアルコール化合物は単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
本実施形態においては、一般式(3a)で表されるアルコール化合物と一般式(3b)で表されるアルコール化合物とを併用することもできる。
【0105】
[(B)酸性リン酸エステル]
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらに酸性リン酸エステル(B)を含むことができる。酸性リン酸エステル(B)を含むことにより、離型性に優れるとともに、赤色の着色抑制効果により優れた光学材料を得ることができる。
酸性リン酸エステル(B)は、一般式(2)で表すことができる。
【0107】
一般式(2)中、mは1または2の整数を示し、nは0〜18の整数を示し、R
4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、R
5、R
6はそれぞれ独立に水素原子または、メチル基、エチル基を示す。
本実施形態においては、nは4以下の整数を示し、R
4は炭素数1〜12のアルキル基を示すことが好ましい。
【0108】
一般式(2)中のR
4としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、へキサデカン等の直鎖の脂肪族化合物から誘導される有機残基;
2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、3−エチルペンタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2−メチルへプタン、3−メチルへプタン、4−メチルへプタン、3−エチルへプタン、4−エチルへプタン、4−プロピルへプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、4−メチルオクタン、3−エチルオクタン、4−エチルオクタン、4−プロピルオクタン等の分岐鎖の脂肪族化合物から誘導される有機残基;
シクロペンタン、シクロへキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン等の脂環族化合物から誘導される有機残基;
等を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
一般式(2)中のnは、10以下の整数が好ましく、4以下の整数がより好ましい。
一般式(2)中のR
4は、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
【0109】
酸性リン酸エステル(B)としては、STEPAN社製のZelecUN、城北化学工業社製のJPシリーズ、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、大八化学工業社製のAP、DPシリーズ等を用いることができる。
【0110】
[その他の成分]
本実施形態においては、上記(A)〜(F)成分に加えて、紫外線吸収剤、光安定剤、重合触媒、樹脂改質剤等をさらに含んでいてもよい。
【0111】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外吸収剤、ジフェニルアクリレート系紫外線吸収剤、フェノール系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、およびマロン酸エステル系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤としての能力は最大吸収波長が330nm以下にあり、かつ最大吸収波長の吸光度に対する、360nmの吸光度の割合が0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることが更に好ましい。好ましい数値範囲に該当する紫外線吸収剤としては、下記一般式(I)で表されるオキサニリド系紫外線吸収剤、下記一般式(II)で表されるマロン酸エステル系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0113】
一般式(I)中、Z
1およびZ
2は同一でも異なっていてもよく、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルコキシ基等を挙げることができる。
【0115】
一般式(II)中、Z
3は、置換されていてもよいC6〜C20の芳香族有機基、置換されていてもよいC5〜C20の脂環族基等を挙げることができ、Z
4およびZ
5は同一でも異なっていてもよく、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルコキシ基等を挙げることができる。
【0116】
C6〜C20の芳香族有機基としては、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、p-メトキシベンジル基等を挙げることができる。C5〜C20の脂環族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロペンタニル基、シクロデカニル基等を挙げることができる。
【0117】
置換されたC6〜C20の芳香族有機基の置換基、および置換されたC5〜C20の脂環族基の置換基としては、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルコキシ基等を挙げることができる。
【0118】
一般式(I)または(II)において、C1〜C6アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、ペンチル基、へキシル基等を挙げることができ、C1〜C6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等を挙げることができる。
具体的な化合物名としては2−エチル−2'−エトキシオキサニリド、(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルが一例としてあげられる。
【0119】
具体的には、Seesorb 107(シプロ化成社製)、Viosorb 583(共同薬品社製)、Tinuvin 405(BASF社製)、Tinuvin PS(BASF社製)、HOSTAVIN PR 25(CLARIANT社製)及びHOSTAVIN VSU(CLARIANT社製)を挙げることができ、HOSTAVIN PR 25及びHOSTAVIN VSUが好ましい。
【0120】
紫外線吸収剤の添加量は、本発明の効果の観点から、光学材料用重合性組成物中に200〜14000ppm、好ましくは500〜14000ppm、さらに好ましくは1000〜12000ppm、特に好ましくは5000〜10000ppmの量で含むことできる。
【0121】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が用いられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)、セバシン酸1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)10−メチル、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)カーボネート、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−4−オキシル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンヘキサデカノエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンオクタデカノエート等を挙げることができ、
セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)カーボネート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンヘキサデカノエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンオクタデカノエートが好ましい。
具体的には、LA72(ADEKA社製)、LA81(ADEKA社製)、LA402AF(ADEKA社製)、を挙げることができる。
【0122】
光安定化剤の添加量は、光学材料用重合性組成物中に500〜5000ppm、好ましくは1000〜4000ppm、さらに好ましくは2500〜3500ppmの量で含むことできる。
【0123】
重合触媒としては、3級アミン化合物およびその無機酸塩または有機酸塩、金属化合物、4級アンモニウム塩、または有機スルホン酸等を挙げることができる。
【0124】
樹脂改質剤としては、例えば、エピスルフィド化合物、アルコール化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等が挙げられる。
【0125】
<光学材料用重合性組成物の製造方法>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
亜リン酸トリエステル(A)、フォトクロミック化合物(D)、ポリイソシアネート化合物(E)、活性水素化合物(F)を混合して、調製することができる。
【0126】
本実施形態において、活性水素化合物(F)がポリチオール化合物の場合、SH基の総和に対する、ポリイソシアネート化合物(E)に含まれるNCO基のモル比(NCO基/SH基)は、通常0.8〜1.2の範囲内であり、好ましくは0.85〜1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9〜1.1の範囲内である。
【0127】
NCO基/SH基のモル比が上記の範囲内であれば組成物が十分硬化し、耐熱性、耐湿性、耐光性に優れた樹脂が得られる。
【0128】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらに必要に応じて、アルコール化合物(C)および/または酸性リン酸エステル(B)を含むことができる。
アルコール化合物(C)を添加する場合は、アルコール化合物(C)および活性水素化合物(F)に含まれるOH基およびSH基の総和に対する、ポリイソシアネート化合物(E)に含まれるNCO基のモル比(NCO基/(OH基+SH基))が、上記の範囲内となるように用いられる。
【0129】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、本発明の効果の観点から、光学材料用重合性組成物100重量%に対し、亜リン酸トリエステル(A)を0.01重量%〜0.5重量%、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%、さらに好ましくは0.05重量%〜0.3重量%、特に好ましくは0.05重量%〜0.2重量%含むことができる。
【0130】
なお、本実施形態の光学材料用重合性組成物が、アルコール化合物(C)として一般式(3a)で表される化合物を含む場合、本発明の効果の観点から、光学材料用重合性組成物100重量%に対し、亜リン酸トリエステル(A)を0.01重量%〜0.5重量%、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜0.3重量%、特に好ましくは0.1重量%〜0.2重量%含むことができる。
【0131】
なお、本実施形態の光学材料用重合性組成物が、アルコール化合物(C)として一般式(3b)で表される化合物を含む場合、本発明の効果の観点から、光学材料用重合性組成物100重量%に対し、亜リン酸トリエステル(A)を0.01重量%〜0.5重量%、好ましくは0.01重量%〜0.3重量%、さらに好ましくは0.01重量%〜0.1重量%、特に好ましくは0.05重量%〜0.1重量%含むことができる。
【0132】
アルコール化合物(C)を添加する場合は、NCO基/(OH基+SH基)のモル比が上記の範囲内であれば組成物が十分硬化し、耐熱性、耐湿性、耐光性に優れた樹脂が得られる。
【0133】
フォトクロミック化合物(D)は、光学材料用重合性組成物100重量%に対して、10ppm〜5000ppmの量で用いることができる。
【0134】
亜リン酸トリエステル(A)、フォトクロミック化合物(D)、ポリイソシアネート化合物(E)、および活性水素化合物(F)と、必要に応じて酸性リン酸エステル(B)および/またはアルコール化合物(C)と、その他添加剤とを混合して重合性組成物を調製する場合の温度は通常25℃以下で行われる。重合性組成物のポットライフの観点から、さらに低温にすると好ましい場合がある。ただし、触媒、内部離型剤、添加剤の重合性組成物への溶解性が良好でない場合は、あらかじめ加温して、重合性組成物に溶解させることも可能である。
【0135】
組成物中の各成分の混合順序や混合方法は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加剤を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを重合性組成物に分散・溶解させる方法などがある。
【0136】
本実施形態において、光学材料用重合性組成物の製造方法は、亜リン酸トリエステル(A)、フォトクロミック化合物(D)およびポリイソシアネート化合物(E)を含むマスターバッチ(中間組成物)を製造する工程と、このマスターバッチに、活性水素化合物(F)とを混合する工程と、を含むことが好ましい。
なお、マスターバッチ(中間組成物)を製造する工程において、光学材料用重合性組成物を構成する一部の(E)成分を混合する場合には、残りの(E)成分を後工程において別途添加することができる。マスターバッチに含まれる(E)成分と、後工程において別途添加される(E)成分とは、同一でも異なっていてもよい。
【0137】
マスターバッチを製造する工程(方法)は、具体的には、亜リン酸トリエステル(A)とポリイソシアネート化合物(E)とを混合する工程と、
前記工程で得られた混合液に、フォトクロミック化合物(D)を混合する工程と、を含む。
(D)成分と(E)成分とが接触する前に、(E)成分に予め(A)成分を添加しておくことにより、赤色の着色はより抑制され、初期色調により優れた光学材料を得ることができる。
【0138】
マスターバッチを製造する際に用いるポリイソシアネート化合物(E)としては、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンを含む組成物、m−キシリレンジイソシアネート等を用いることが好ましく、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンを含む組成物を用いることがより好ましい。
(E)成分としてこれらの化合物を用いることにより、赤色の着色はより抑制され、初期色調により優れた光学材料を得ることができるとともに、亜リン酸トリエステル(A)の光学材料用重合性組成物への分散性が改善される。
【0139】
本実施形態において、マスターバッチは、本発明の効果の観点から、亜リン酸トリエステル(A)、フォトクロミック化合物(D)およびポリイソシアネート化合物(E)の合計量100重量%に対し、亜リン酸トリエステル(A)を0.1重量%〜2重量%、好ましくは0.2重量%〜1.9重量%、さらに好ましくは0.2重量%〜1.8重量%含むことができる。
【0140】
酸性リン酸エステル(B)およびアルコール化合物(C)を用いる場合、好ましい光学材料用重合性組成物の製造方法は、
ポリイソシアネート化合物(E)に、亜リン酸トリエステル(A)を添加して混合する工程と、
前記工程で得られた組成物に、フォトクロミック化合物(D)を添加して混合する工程と、
続いて前記工程で得られた組成物に、酸性リン酸エステル(B)と、アルコール化合物(C)と、光学材料用重合性組成物を構成する残りのポリイソシアネート化合物(E)と、を混合する工程と、
更に前記工程で得られた組成物に、活性水素化合物(F)と、を混合する工程と、を含む。
【0141】
<光学材料の製造方法>
本実施形態において、光学材料の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法として注型重合が挙げられる。はじめに、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に重合性組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0142】
重合条件については、重合性組成物の組成、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、−50〜150℃の温度で1〜50時間かけて行われる。場合によっては、10〜150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1〜25時間で硬化させることが好ましい。
【0143】
光学材料は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50〜150℃の間で行われるが、90〜140℃で行うことが好ましく、90〜130℃で行うことがより好ましい。
【0144】
本実施形態において、樹脂を成形する際には、上記「その他の成分」に加えて、目的に応じて公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、酸化防止剤、ブルーイング剤、油溶染料、充填剤、密着性向上剤、特定波長吸収剤などの種々の添加剤を加えてもよい。
【0145】
<用途>
本実施形態の重合性組成物は、注型重合時のモールドの種類を変えることにより種々の形状の成形体として得ることができる。成形体は、フォトクロミック性能を備えるともに、高い屈折率及び高い透明性を備え、プラスチックレンズ等の各種光学材料に使用することが可能である。特に、プラスチック眼鏡レンズやプラスチック偏光レンズとして好適に用いることができる。
【0146】
[プラスチック眼鏡レンズ]
本実施形態の成形体からなるレンズ基材を用いたプラスチック眼鏡レンズは必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
本実施形態のプラスチック眼鏡レンズは、上述の重合性組成物からなるレンズ基材とコーティング層とからなる。
【0147】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0148】
これらのコーティング層はそれぞれ、紫外線からレンズや目を守る目的で紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0149】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られたレンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラニン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0150】
プライマー層は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズに塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等の機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0151】
ハードコート層は、一般的には硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/またはこれら元素群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含むハードコート組成物が使用される。
【0152】
ハードコート組成物には上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよいし、無溶剤で用いてもよい。
【0153】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0154】
反射防止層は、通常、必要に応じて前記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系および有機系があり、無機系の場合、SiO
2、TiO
2等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ−ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0155】
反射防止層は単層および多層があり、単層で用いる場合はハードコート層よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO
2、CeO
2、Sb
2O
5、SnO
2、ZrO
2、Ta
2O
5等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO
2膜等が挙げられる。
【0156】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇処理方法、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0157】
[プラスチック偏光レンズ]
本実施形態のプラスチック偏光レンズは、偏光フィルムと、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に形成された、本実施形態の光学材料用重合性組成物を硬化させた成形体からなる基材層と、を備える。
【0158】
本実施形態における偏光フィルムは、熱可塑性樹脂から構成することができる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリカーボネート、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリイミド等を挙げることができる。耐水性、耐熱性および成形加工性の観点から、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリカーボネートが好ましく、熱可塑性ポリエステルがより好ましい。
熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等を挙げることができ、耐水性、耐熱性および成形加工性の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0159】
偏光フィルムとして、具体的には、二色性染料含有熱可塑性ポリエステル偏光フィルム、ヨウ素含有ポリビニルアルコール偏光フィルム、二色性染料含有ポリビニルアルコール偏光フィルム等が挙げられる。
偏光フィルムは乾燥、安定化のため加熱処理を施したうえで使用してもよい。
【0160】
さらに、偏光フィルムは、アクリル系樹脂との密着性を向上させるために、プライマーコーティング処理、薬品処理(ガス又はアルカリ等の薬液処理)、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、粗面化処理、火炎処理などから選ばれる1種又は2種以上の前処理を行った上で使用してもよい。このような前処理のなかでも、プライマーコーティング処理、薬品処理、コロナ放電処理、プラズマ処理から選ばれる1種又は2種以上が特に好ましい。
【0161】
本実施形態のプラスチック偏光レンズは、このような偏光フィルムの少なくとも一方の面上に、本実施形態の光学材料用重合性組成物を硬化させて得られる基材層を設けることにより得ることができる。
プラスチック偏光レンズの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは注型重合法を挙げることできる。
【0162】
本実施形態のプラスチック偏光レンズの製造方法は、例えば、
偏光フィルムを、モールドから離隔した状態でレンズ注型用鋳型内に固定する工程と、
前記偏光フィルムと、前記モールドとの間に形成される空隙の少なくとも一方に前記光学材料用重合性組成物を注入する工程と、
前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に基材層を積層する工程と、を含むことができる。
【0163】
レンズ注型用鋳型は、ガスケットで保持された2個の略円盤状のガラス製のモールドから構成されるものが一般的である。このレンズ注型用鋳型の空間内に、偏光フィルムを、フィルム面が対向するフロント側のモールド内面と平行となるように設置する。偏光フィルムとモールドとの間には、空隙部が形成される。なお、偏光フィルムは予め附形されていてもよい。
【0164】
光学材料用重合性組成物の重合条件は、重合性組成物の組成、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって条件が異なるが、5〜140℃の温度で1〜50時間かけて行われる。場合によっては、5〜130℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1〜25時間で硬化させることが好ましい。
重合により硬化した積層体を鋳型より離型して、本実施形態のプラスチック偏光レンズを得ることができる。
【0165】
本実施形態において、重合・離型後の積層体は、必要に応じて、アニール等の加熱処理を行ってもよい。処理温度は、本発明の効果の観点から、90〜150℃の間で行われるが、110〜130℃で行うことが好ましく、115〜125℃で行うことがより好ましい。処理時間は、本発明の効果の観点から、1〜10時間、好ましくは2〜5時間の範囲である。
なお、得られた基材層の表面には、プラスチック眼鏡レンズと同様な前記コーティング層を形成してもよい。
【実施例】
【0166】
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、評価に用いた方法と使用した装置は以下のとおりである。
【0167】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
樹脂の性能試験において、透明性、屈折率、アッベ数、色調(a*,b*)、調光性能は、以下の方法により評価した。
【0168】
・透明性:得られた成形体を暗所にてプロジェクターに照射して、曇り、不透明物質、テープからの粘着成分の溶出の有無を目視にて判断した。曇り、不透明物質、テープからの溶出が確認されないものを「あり」(透明性あり)、確認されたものを「なし」(透明性なし)とした。
・屈折率(ne)、アッベ数(νe):プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
・色調(a*,b*):コニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用いて、L*a*b*表色系(CIE 1976)でのa*,b*を測定した。
【0169】
・調光性能:ウシオ電気社製励起光源キセノンランプMS-35AAA/FB2000-Oを備えた、大塚電子社製瞬間マルチ測光システムMSPD-7700を用いて、2mm厚に加工した成形体サンプルに、温度23℃、照度50000ルクスの条件で、励起光を15分間照射し、その発色前後の視感透過率の差(Δ%T)を求めた。この変化量が大きいほど調光性能が高いことを示す。
【0170】
[実施例1]
m−キシリレンジイソシアネート49.6重量部に、亜リン酸トリエステルとしてトリフェニルホスファイト0.10重量部、酸性リン酸エステルとして城北化学工業社製JP−504を0.05重量部、アデカ社製アデカプルロニックL-64を2.0重量部、フォトクロミック化合物としてVivimed社製Reversacol Wembley Greyを0.0745重量部、Vivimed社製Reversacol Heath Greenを0.061重量部、紫外線吸収剤としてHOSTAVIN PR-25を0.10重量部加え、撹拌して溶解した。この混合液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを含む組成物を48.2重量部を添加して撹拌した後、ジメチルチンジクロリドを0.008重量部を加え、均一に溶解した。その後真空ポンプにより脱気し、この溶液をガラスモールドへ注型した。これを15℃〜120℃の範囲で24時間かけて重合させた後、成形型をはずして、成形体を取り出した。
成形体は無色透明であり、太陽光線下に置くと直ちに発色し、光線を遮断すると消色するという良好な調光性能を有するものであった。得られた成形体の評価結果は表−1に示した。
【0171】
[実施例2]
トリフェニルホスファイトの添加量を、0.10重量部から0.20重量部に変えた以外は、実施例1と同様な方法で行った。評価結果は表−1に示した。
【0172】
[実施例3]
m−キシリレンジイソシアネートの製造ロットを変えた以外は、実施例1と同様な方法で行った。評価結果は表−1に示した。
【0173】
[実施例4]
酸性リン酸エステルとして城北化学工業社製JP−504から、城北化学工業社製JP−506Hに変え、添加量を0.30重量部とした以外は、実施例1と同様な方法で行った。評価結果は表−1に示した。
【0174】
[実施例5]
アデカ社製のアデカプルロニック L−64の添加量を1.9重量部とし、モノマー(E成分)を、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンを含む組成物49.8重量部に変え、モノマー(F成分)を、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)23.4重量部、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタンを24.9重量部に変えた以外は、実施例4と同様な方法で行った。評価結果は表−1に示した。
【0175】
[実施例6]
m−キシリレンジイソシアネートを9.7重量部、亜リン酸トリエステルとしてトリフェニルホスファイトを0.10重量部混合して均一溶液とした後に、フォトクロミック化合物としてVivimed社製Reversacol Wembley Greyを0.0745重量部、Vivimed社製Reversacol Heath Greenを0.061重量部、紫外線吸収剤としてHOSTAVIN PR-25を0.10重量部混合して、マスターバッチを調製した。そのマスターバッチと、m−キシリレンジイソシアネート39.9重量部、酸性リン酸エステルとして城北化学工業社製JP−506Hを0.30重量部、アデカ社製アデカプルロニックL-64を2.0重量部混合、撹拌して溶解した。この混合液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを含む組成物48.2重量部を添加して撹拌した後、ジメチルチンジクロリド0.008重量部を加え、均一に溶解した。その後真空ポンプにより脱気し、この溶液をガラスモールドへ注型した。これを15℃〜120℃の範囲で24時間かけて重合させた後、成形型をはずして、成形体を取り出した。
成形体は無色透明であり、太陽光線下に置くと直ちに発色し、光線を遮断すると消色するという良好な調光性能を有するものであった。得られた成形体の評価結果は表−1に示した。
【0176】
[比較例1]
トリフェニルホスファイトを添加しない以外は、実施例1と同様な方法で行った。評価結果は表−1に示した。
【0177】
[比較例2]
m−キシリレンジイソシアネートの製造ロットを変えた以外は、比較例1と同様な方法で行った。評価結果は表−1に示した。
【0178】
[比較例3から5]
トリフェニルホスファイトから、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、フェノール、p−トルエンスルホンアミドに変えた以外は、実施例1と同様な方法で行った。評価結果は表−1に示した。
【0179】
【表1】
【0180】
表−1に記載の化合物は以下のとおり。
・A1:トリフェニルホスファイト
・A2:3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
・A3:フェノール
・A4:p−トルエンスルホンアミド
・B1:城北化学工業社製 JP−504(式(2)中、m:1または2、n:0、R
4:C4アルキル基)
・B2:城北化学工業社製 JP−506H(式(2)中、m:1または2、n:1、R
4:C4アルキル基、R
5、R
6:水素原子)
・C1:アデカ社製 アデカプルロニック L−64(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)
・D1:Vivimed社製 Reversacol Wembley Grey(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))
・D2:Vivimed社製 Reversacol Heath Green(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))
・D3:Vivimed社製 Reversacol Cayenne Red(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式(c)))
・E1:m−キシリレンジイソシアネート
・E2:2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンを含む組成物
・F1:5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを含む組成物
・F2:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
・F3:4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン
【0181】
実施例1と比較例1及び3〜5との比較から、亜リン酸トリエステル(A)であるトリフェニルホスファイトを用いた時に、得られる成形体のa*が減少し、初期色調の赤みが抑制されていた。また、比較例1と2においては、E成分の品質により、得られる成形体の初期色調の赤みa*が異なるが、実施例1と3においては、E成分の品質が異なっていても、トリフェニルホスファイトを用いることで安定して初期色調に優れる結果となった。トリフェニルホスファイトを用いても、調光性能への影響は認められなかった。
【0182】
[実施例7]
m−キシリレンジイソシアネートを9.235重量部、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンを含む組成物0.765重量部、亜リン酸トリエステルとしてトリフェニルホスファイトを0.010重量部混合して均一溶液とした後に、フォトクロミック化合物としてVivimed社製Reversacol Wembley Greyを0.0820重量部、Vivimed社製Reversacol Heath Greenを0.067重量部、紫外線吸収剤としてHOSTAVIN PR-25を0.10重量部混合して、マスターバッチを調製した。そのマスターバッチと、m−キシリレンジイソシアネート41.685重量部、酸性リン酸エステルとして城北化学工業社製JP−506Hを0.20重量部、パーストーブ社CAPA2302Aを2.0重量部混合、撹拌して溶解した。この混合液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを含む組成物49.01重量部を添加して撹拌した後、ジメチルチンジクロリド0.005重量部を加え、均一に溶解した。その後真空ポンプにより脱気し、この溶液をガラスモールドへ注型した。これを15℃〜120℃の範囲で48時間かけて重合させた後、成形型をはずして、成形体を取り出した。
成形体は無色透明であり、太陽光線下に置くと直ちに発色し、光線を遮断すると消色するという良好な調光性能を有するものであった。得られた成形体の評価結果は表−2に示した。
【0183】
[実施例8]
トリフェニルホスファイトの添加量を、0.010重量部から0.050重量部に変えた以外は、実施例7と同様な方法で行った。評価結果は表−2に示した。
【0184】
[実施例9]
トリフェニルホスファイトの添加量を、0.010重量部から0.10重量部に変えた以外は、実施例7と同様な方法で行った。評価結果は表−2に示した。
【0185】
[実施例10]
トリフェニルホスファイトの添加量を、0.10重量部から0.30重量部に変えた以外は、実施例7と同様な方法で行った。評価結果は表−2に示した。
【0186】
[実施例11]
トリフェニルホスファイトの添加量を、0.10重量部から0.50重量部に変えた以外は、実施例7と同様な方法で行った。評価結果は表−2に示した。
【0187】
【表2】
【0188】
以下の化合物を除き、表−2に記載の化合物は上記のとおり。
C2:カプロラクトン、1,4−ブタンジオールポリエステル(製品名:CAPA 2302A、PERSTORP社製)
【0189】
実施例7〜11の比較から、亜リン酸トリエステル(A)であるトリフェニルホスファイトを100ppm〜5000ppmの範囲で含む場合、得られる成形体のa*が低く、初期色調の赤みが抑制されており、調光性能への影響は認められなかった。
【0190】
以上の結果から、亜リン酸トリエステル(A)を用いる本発明によれば、ポリイソシアネート化合物の品質に依らず、安定して良好な初期色調が得られ、さらに調光性能にも優れた、フォトクロミックレンズを提供することができることが明らかとなった。
【0191】
この出願は、2017年7月3日に出願された日本出願特願2017−130119号および2018年5月25日に出願された日本出願特願2018−100565号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。