(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エレクトロニクスデバイス(52)は、力差(ΔF)の値がゼロに等しくない所定の参照値(x)よりも小さい場合には、目標回転速度(ω0)の値を所定の最低回転速度値(ωmin)に等しく決定し、力差(ΔF)の値が所定の参照値(x)よりも大きい場合には、目標回転速度(ω0)の値を力差(ΔF)の関数として決定する請求項1に記載の制御装置(50)。
前記エレクトロニクスデバイス(52)は、前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の前記モータ(56)の実際モータ力(Fsup)を、または後置されたマスタブレーキシリンダへの前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の実際ブレーキング力(Festimated)を、前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の前記モータ(56)のモータ電流の少なくとも1つの最新の電流強さ(I)と、前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の前記モータ(56)のロータの最新の回転角(φ)に基づいて見積もる、請求項1または2に記載の制御装置(50)。
力差(ΔF)の値がゼロに等しくない所定の参照値(x)よりも小さい場合には、目標回転速度(ω0)の値が所定の最低回転速度値(ωmin)に等しく決定され、力差(ΔF)の値が所定の参照値(x)よりも大きい場合には、目標回転速度(ω0)の値が力差(ΔF)の関数として決定される、請求項6に記載の方法。
前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の前記モータ(56)の実際モータ力(Fsup)が、または後置されたマスタブレーキシリンダへの前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の実際ブレーキング力(Festimated)が、前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の前記モータ(56)のモータ電流の少なくとも1つの最新の電流強さ(I)と、前記電気機械式のブレーキ倍力装置(58)の前記モータ(56)のロータの最新の回転角(φ)とに基づいて見積もられる、請求項6または7に記載の方法。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の構成要件を有する、車両のブレーキシステムの少なくとも1つの電気機械式のブレーキ倍力装置を作動させるための制御装置、請求項6の構成要件を有する、車両のブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ倍力装置、請求項7の構成要件を有する、車両のためのブレーキシステム、および請求項8の構成要件を有する、車両のブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置を作動させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの決定された目標モータ力と、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの見積もられた、もしくは測定された実際モータ力との間の(または、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の決定された目標ブレーキング力と、マスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の見積もられた、もしくは測定された実際ブレーキング力との間の)力差を考慮したうえで電気機械式のブレーキ倍力装置が制御されることで、本発明は、電気機械式のブレーキ倍力装置がその使用中に、これをそれぞれ装備するブレーキシステムが感じている負荷を「間接的に考慮に含めた」うえでの、それぞれの電気機械式のブレーキ倍力装置の制御を可能にする。そのために本発明は、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの実際モータ力が(ないしは、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の実際ブレーキング力が)、現在の負荷に依存することを利用する。
【0006】
本発明は、後置されたマスタブレーキシリンダの(およびマスタブレーキシリンダに接続された少なくとも1つのホイールブレーキシリンダの)圧力を上昇させるための電気機械式のブレーキ倍力装置を利用するための好ましい可能性も提供するものであり、それと同時に電気機械式のブレーキ倍力装置を、電気機械式のブレーキ倍力装置に反対作用する負荷/負荷変化を判定するための「センサ装置」として利用可能である。さらに、本発明によって負荷/負荷変化が認識されれば、電気機械式のブレーキ倍力装置の本発明に基づく作動によって、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの高すぎる回転速度がマスタブレーキシリンダにおける望ましくないほど高い圧力または圧力ピークの発生につながるのを防止することができる。それに応じてブレーキシステムで本発明が適用されれば、それぞれのマスタブレーキシリンダに接続されている他のブレーキシステムコンポーネントで、望ましくない圧力または圧力ピークが発生しないことが保証される。このように本発明は、そのつど使用されるブレーキシステムのブレーキシステムコンポーネントにおける損傷リスクの低減に寄与する。本発明は、電気機械式のブレーキ倍力装置に対する機械的な負荷の回避にも寄与し、それにより、電気機械式のブレーキ倍力装置の耐用寿命が長くなる。
【0007】
たとえば電気機械式のブレーキ倍力装置の「センサ装置」としての本発明に基づく利用によって、たとえばアンチロック制御(ABS制御ないしESP制御)中にそれぞれのブレーキシステムのホイール取込弁が閉じられたときに発生する、それぞれのブレーキシステムの液圧剛性が増大する状況を迅速に認識することができる。ホイール取込弁の閉止に関する信号を電気機械式のブレーキ倍力装置の従来の制御エレクトロニクスへ伝送するには、通常、少なくとも30ms(ミリ秒)を要するのに対して、本発明によって負荷変化をこれよりもはるかに迅速に認識し、それに応じていっそう早期にこれに反応することができる。特にアンチロック制御中には、ブレーキシステムの少なくとも1つのポンプ/リターンポンプによって、比較的多くのブレーキ液がマスタブレーキシリンダに送出される。これに加えて、それぞれのブレーキシステムのホイール取込弁の閉止が行われる。しかし本発明によって、電気機械式のブレーキ倍力装置を「センサ装置」として利用することで、マスタブレーキシリンダにおける望ましくない高い圧力という、生じている可能性があるリスクに対して迅速に反応することができる。このように本発明は、アンチロック制御中にも損傷リスクの低減に寄与する。したがって、通常は弾性的に反応せず、高いギヤ伝達比と高いギヤ摩擦とに基づいて高い保持能を有するという電気機械式のブレーキ倍力装置の従来の欠点を解消することができる。それに伴い、アンチロック制御の複数回の実行後でさえブレーキシステムが損傷する恐れがない。以下に説明する制御装置をブレーキシステムに装備することは、補修コストの節減によって容易に採算がとれる。
【0008】
制御装置の1つの好ましい実施形態では、エレクトロニクスデバイスは、力差を考慮したうえで電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの目標回転速度を決定し、決定された目標回転速度を考慮したうえで少なくとも1つの制御信号を電気機械式のブレーキ倍力装置のモータに出力するように設計される。このようにして、モータの目標回転速度の設定によって制御される電気機械式のブレーキ倍力装置の動作を、それぞれのブレーキシステムで発生している負荷変化に合わせて確実に適合化可能である。
【0009】
エレクトロニクスデバイスは、力差を考慮したうえで、決定される目標回転速度の値がゼロに等しくない所定の最低回転速度値よりも常に大きいか、またはこれに等しくなるように、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの目標回転速度を決定するように設計されるのが好ましい。それに伴って、正しい負荷見積り/負荷変化見積りを行うことができるのは、通常、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータが回転している場合に限られることを、この制御装置の実施形態は考慮に入れている。したがって、少なくとも所定の最低回転速度値の目標回転速度の値の設定による電気機械式のブレーキ倍力装置の制御は、電気機械式のブレーキ倍力装置の「センサ装置」としての途切れることのない利用を可能にする。
【0010】
たとえばエレクトロニクスデバイスは、力差の値がゼロに等しくない所定の参照値よりも小さい場合には、目標回転速度の値を所定の最低回転速度値に等しく決定し、力差の値が所定の参照値よりも大きい場合には、目標回転速度の値を力差の関数として決定するように設計されていてよい。このようにして、エレクトロニクスデバイスを比較的低コストに、かつ比較的小さい所要設計スペースで構成することができる。
【0011】
制御装置のさらに別の好ましい実施形態では、エレクトロニクスデバイスは、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの実際モータ力を、または後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の実際ブレーキング力を、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータ電流の少なくとも1つの最新の電流強さと、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの最新の回転角とを考慮したうえで見積もるように設計される。あとで詳しく説明するとおり、この制御装置の実施形態は、最新の負荷および/または最新の負荷変化を「間接的に考慮に含めた」うえでの、実際ブレーキング力の確実な見積りを可能にする。
【0012】
上に説明した利点は、このような種類の制御装置を有する、車両のブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ倍力装置においても保証される。
【0013】
相応の制御装置と、制御装置の少なくとも1つの制御信号によって制御可能な電気機械式のブレーキ倍力装置と、電気機械式のブレーキ倍力装置に後置されたマスタブレーキシリンダとを有する車両のためのブレーキシステムも、上に説明した利点を具体化する。
【0014】
さらに、車両のブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置を作動させる対応する方法の実施も、上に説明した利点をもたらす。明文をもって断っておくと、車両のブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置を作動させる方法は、制御装置の上に説明した各実施形態に基づいて発展形にすることが可能である。
【0015】
次に、本発明の詳しい構成要件と利点について図面を参照しながら説明する。図面は次のものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1a〜
図1dは、車両のブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置を作動させる方法の第1の実施形態を説明するためのフローチャートと座標系を示している。
【0018】
以下に説明する方法の実施可能性は、電気機械式のブレーキ倍力装置を装備するブレーキシステムの特定のブレーキシステム型式には限定されず、ブレーキシステムを搭載する車両/自動車の特定の車両型式/自動車型式にも限定されない。電気機械式のブレーキ倍力装置とは、(電気)モータを装備しているブレーキ倍力装置を意味する。さらに電気機械式のブレーキ倍力装置は、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの作動によってマスタブレーキシリンダの少なくとも1つの位置調節可能なピストンがマスタブレーキシリンダの中へ位置調節可能であるように/位置調節されるように、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに前置される。
【0019】
以下に説明する方法では、
図1aのブロック10によって模式的に掲げている方法ステップで、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の目標ブレーキング力F
0が決定される(別案として、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの目標モータ力も決定される)。マスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の目標ブレーキング力F
0(または目標モータ力)の決定は、車両の運転者および/または車両の速度自動制御装置(たとえばACCオートマチック)のブレーキ要求に関わる少なくとも1つのブレーキ設定信号12を考慮したうえで行われる。たとえば車両の運転者は、ブレーキ操作部材/ブレーキペダルの操作によって目標車両減速を設定することができ、このことは、目標車両減速を生じさせるときに電気機械式のブレーキ倍力装置によって運転者を力的にサポートするための目標ブレーキング力F
0(または目標モータ力)の決定を惹起する(ブレーキ設定信号12は、このケースでは、ブレーキ操作部材/ブレーキペダルに配置されたセンサの信号である)。車両の速度自動制御装置がブレーキ設定信号12によって車両の目標車両減速および/または目標速度を要求する場合には、目標ブレーキング力F
0(または目標モータ力)は、目標車両減速および/または車両の目標速度を電気機械式のブレーキ倍力装置によってのみ惹起可能であるように決定可能であってもよい。
【0020】
ブレーキ設定信号12の補足として、さらに別の信号14〜18、たとえばABSフラッグ信号14、マスタブレーキシリンダで生じているマスタブレーキシリンダ圧力に関わるマスタブレーキシリンダ圧力信号16、および/またはブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで生じているブレーキ圧力に関わるブレーキ圧力信号18などが、目標ブレーキング力F
0(または目標モータ力)の決定にあたって考慮に含まれる。少なくともブレーキ設定信号12を考慮したうえでの電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの制御のために、決定された目標ブレーキング力F
0(または目標モータ力)が、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの制御にあたって考慮に含まれる。特に、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの制御は、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の決定された目標ブレーキング力F
0と、見積もられた、もしくは測定された実際ブレーキング力F
estimatedとの間の(または、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの決定された目標モータ力と、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの見積もられた、もしくは測定された実際モータ力との間の)力差ΔFを考慮したうえで行われる。
【0021】
ここで説明している本方法の実施形態では、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の実際ブレーキング力F
estimatedは、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータ電流の少なくとも1つの最新の電流強さIと、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの最新の回転角φとを考慮したうえで見積もられる。それに伴い、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の実際ブレーキング力F
estimatedの見積りのために、容易に見積り可能または測定可能である値を利用することができる(モータのロータの最新の回転角φは、たとえばロータ位置信号によって判定/見積りをすることができる)。さらに、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータ電流の最新の電流強さIとロータの最新の回転角φは、非常に高いダイナミクスを有する値/信号である。それに伴い、以下に説明する方式は、電気機械式のブレーキ倍力装置と協同作用するブレーキシステムの液圧剛性の変化に対する早期の反応に適しているという利点がある。
【0022】
図1bには、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置の実際ブレーキング力F
estimatedを見積もるための部分ステップが模式的に示されている。そのために、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータトルクM
motorが、モータのモータ電流の最新の電流強さIを少なくとも考慮したうえで決定される。電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータトルクM
motorを、モータのモータ電流の最新の電流強さIから導き出すために、ブロック20に保存されているモータ固有のデータが考慮される。電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータトルクM
motorは、動的成分M
dynについては「モータのダイナミクス」を惹起し、静的成分M
statについては、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータに対してブレーキシステムが抵抗する負荷トルク/カウンタートルクLの「克服」を惹起する。動的成分M
dynは、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの回転加速度ω・と、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの慣性θとの積として計算することができる。電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの回転加速度ω・は、モータのロータの最新の回転角φを少なくとも考慮したうえで、容易に決定することができる。たとえばモータのロータの回転加速度ω・は、ブロック22で実行されるモータのロータの最新の回転角φの2回の時間微分から得られる。それに伴い、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータトルクM
motorの静的成分M
statは、モータトルクM
motorと、モータトルクM
motorの動的割合M
dynとの間の差から得られる。引き続いて、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータに反対作用する負荷トルクLを、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのモータトルクM
motorの静的成分M
statを考慮したうえで見積もることができる。たとえば静的成分M
statは、ブロック24に格納されているフィルタおよび/または(相応に保存されている)特性曲線を利用したうえで、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータに反対作用する負荷トルクLへと変換することができる。
【0023】
負荷トルクLを考慮したうえで、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータによって及ぼされる実際モータ力/サポート力F
supが決定される。たとえばブロック26には、電気機械式のブレーキ倍力装置のギヤのギヤサイズ/ギヤ伝達比rと、電気機械式のブレーキ倍力装置の効率ηが保存されている。これらの量を用いて、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータによって及ぼされる実際モータ力/サポート力F
supを、負荷トルクLから導き出すことができる(別案として見積り方法をここで中断することができ、見積もられた実際モータ力/サポート力F
supを、決定された目標モータ力と見積もられた実際モータ力/サポート力F
supとの間の力差の決定のために利用することができる)。
【0024】
電気機械式のブレーキ倍力装置のピストンの位置調節距離/並進τを、モータのロータの最新の回転角φを少なくとも考慮したうえで決定することができる。たとえば、ブロック28で実行される電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの最新の回転角φの時間微分によって、モータのロータの回転速度ωが得られる。ブロック30には、電気機械式のブレーキ倍力装置のギヤのギヤサイズ/ギヤ伝達比rが保存されており、これを用いてモータのロータの回転速度ωが、電気機械式のブレーキ倍力装置のギヤに後置されたピストンの位置調節距離/並進τへと換算される。ギヤに後置されたピストンは、たとえば電気機械式のブレーキ倍力装置のバルブボディ(Valve Body)または倍力装置ボディ(Boost Body)であってよい。
【0025】
さらにブロック32では、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータによって及ぼされる実際モータ力/サポート力F
supの時間微分/勾配Fsup・が判定される。別のブロック34で時間微分/勾配Fsup・を電気機械式のブレーキ倍力装置のピストンの位置調節距離/並進τで割った商C
totalが計算されて、これが負荷変化C
totalを表す。この負荷変化C
totalを、ブレーキシステムの液圧剛性(Stiffness)と言い換えることもできる。
【0026】
負荷変化C
totalがブロック36に出力され、そこには、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの慣性θと、電気機械式のブレーキ倍力装置のギヤのギヤサイズ/ギヤ伝達比rが保存されている。それに伴い負荷変化C
totalから、電気機械式のブレーキ倍力装置によって及ぼされる動的な力F
dynを計算することができる。電気機械式のブレーキ倍力装置によって及ぼされるべき動的な力F
dynは、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの「運動エネルギーに由来する力」とも呼ぶことができる。
【0027】
電気機械式のブレーキ倍力装置によって及ぼされる実際モータ力/サポート力F
supと、電気機械式のブレーキ倍力装置によって及ぼされる動的な力F
dynとの合計から、電気機械式のブレーキ倍力装置がマスタブレーキシリンダへとブレーキングをして、その中で生じるマスタブレーキシリンダ圧力を惹起し/上昇させる電気機械式のブレーキ倍力装置のブレーキング力F
estimatedを計算することができる。任意選択として、ブレーキング力F
estimatedについて(図示しない)摩擦補正をさらに実行することができる。
【0028】
前の段落で説明した部分ステップは、ブレーキング力F
estimatedの確実な見積りのための、迅速に実施される特別に好ましい手段を提供する。断っておくと、
図1bに示す部分ステップは、少なくとも1つの圧力センサにより測定される測定値のデータバスを通じてのデータトランスファ/信号トランスファよりも迅速に実施可能である。このように、ここで説明している方法の実施は、ブレーキシステムの液圧剛性の変化の「予測」(ブレーキシステムの液圧剛性の変化の測定と比べたとき)を可能にする。しかしながら本方法の実施可能性は、前段落に説明した部分ステップだけに限定されるものではない。特に断っておくと、上に説明した部分ステップは、実際モータ力/サポート力F
supの見積りの後に中断することもできる。このケースでは、決定された目標モータ力および見積もられた実際モータ力/サポート力F
supを(決定された目標ブレーキング力F
0および見積もられた実際ブレーキング力F
estimatedの代わりに)を用いて、以下に説明する方法ステップが実行される。
【0029】
図1aのブロック38によって表されている方法ステップで、決定された目標ブレーキング力F
0と、見積もられた(もしくは測定された)実際ブレーキング力F
estimatedとの間の(または決定された目標モータ力と、見積もられた、測定された実際モータ力との間の)力差ΔFを考慮したうえで、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの目標回転速度ω
0が決定される。このとき、決定された目標ブレーキング力F
0と見積もられた(または測定された)実際ブレーキング力F
estimatedとの間の力差ΔFを考慮したうえで、決定される目標回転速度の値が、常に、ゼロに等しくない所定の最低回転速度値ω
minよりも大きいか、またはこれに等しくなるように、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの目標回転速度ω
0が決定されるのが好ましい。このような方式は、モータ(ないしそのロータ)が回転している限りにおいてのみ、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータが最新の負荷および/または最新の負荷変化を「感じる」ことを考慮している。このように最低回転速度値ω
min(ゼロに等しくない)が設定されることで、最新の負荷および/または最新の負荷変化を判定するための「センサ装置」としての電気機械式のブレーキ倍力装置のモータの途切れることのない利用を保証することができる。
【0030】
図1cは、まず、決定された目標ブレーキング力F
0と、見積もられた(または測定された)実際ブレーキング力F
estimatedとの間の力差ΔFの値が、(固定的に)設定されるゼロに等しくない参照値xと比較される、ブロック38で実行される方法ステップの特別に好ましい実施形態を示している。力差ΔFの値が所定の参照値xよりも小さい場合、目標回転速度ω
0の値は所定の最低回転速度値ω
minに等しく決定される(力差ΔF<0については、目標回転速度ω
0は正の最低回転速度値ω
minに等しく決定される。一方で力差ΔF>0であれば、目標回転速度ω
0は負の最低回転速度値−ω
minに等しく決定される)。しかし、力差ΔFの値が所定の参照値xよりも大きいことが確認されたときは、目標回転速度ω
0の値が力差ΔFの関数として決定される。その場合、たとえば力差ΔFの線形関数としての目標回転速度ω
0の値の決定が可能である。たとえば目標回転速度ω
0は、力差ΔFと所定の増幅係数kとの積に等しく決定される(原則としてどのような制御コンセプトでも適用することができるが、ここではあくまで一例としてPコントローラを掲げる)。
【0031】
図1dは、
図1cによって模式的に表されている方式の利点を示しており、
図1dの座標系の横軸は電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの最新の回転速度ωを表し、
図1dの座標系の縦軸は力Fを表す。
【0032】
図1cに模式的に示す方法ステップによって、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータが駆動動作(ω>ω
min)または伝動動作(ω<−ω
min)のいずれかにあることを保証可能であることが明らかである。電気機械式のブレーキ倍力装置の「センサ装置」としての確実な利用が可能ではない、負の最低回転速度値−ω
minよりも大きく正の最低回転速度値−ω
minよりも小さい回転速度ωの回転速度値範囲Wでは、電気機械式のブレーキ倍力装置の動作が行われない。
【0033】
図1cに模式的に示す方法ステップは、ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける少なくとも1つのブレーキ圧力の(所望の目標ブレーキ圧力からの)差異にはほとんどつながらない。特にABS制御中には有意な容積変位が発生し、したがって、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータが常にゼロに等しくない目標回転速度ω0で制御されていれば、それが通常はまったく/ほとんど目立つことはない。
【0034】
そして電気機械式のブレーキ倍力装置のモータは、決定された目標回転速度ω0を考慮したうえで制御される。電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの最新の回転速度ωが、
図1cの方法ステップによって決定された目標回転速度ω
0に等しくない場合には、電気機械式のブレーキ倍力装置のモータのロータの目標回転速度ω
0と最新の回転速度ωとの間の回転速度差Δωを制御量として決定することができる(最新の回転速度ωが決定された目標回転速度ω
0に等しいときは、最低回転速度値ω
minが制御量として決定されるのが好ましい)。
【0035】
引き続いて、回転速度差Δω/最低回転速度値ω
minをブロック40で、モータの目標モータ電流の目標電流強さI
0に変換することができる。次いで、目標電流強さI
0と、目標電流強さI
0に等しくないモータのモータ電流の最新の電流強さIから、電流強さ差ΔIを電流制御量として導き出すことができる(最新の電流強さIが目標電流強さI
0に等しい場合には、最低回転速度値ω
minに相当する電流強さIを電流制御量として決定することもできる)。そして電流制御量がモータの以後の制御のために利用される。
【0036】
ここで説明している方法の発展例では、上に説明した各方法ステップを実行するようにブロック38を制御する「イネーブル」信号を、ブロック10からブロック38へさらに出力することができる。
【0037】
図2は、車両のブレーキシステムの少なくとも1つの電気機械式のブレーキ倍力装置のための制御装置の一実施形態の模式図を示している。
【0038】
以下に説明する制御装置50の適用可能性は、これを装備するブレーキシステムの特定のブレーキシステム型式に限定されず、ブレーキシステムを搭載する車両/自動車の特定の車両型式/自動車型式にも限定されない。制御装置50は、車両の運転者および/または車両の速度自動制御装置のブレーキ要求に関してエレクトロニクスデバイス52に出力される少なくとも1つのブレーキ設定信号12を考慮したうえで、電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56に少なくとも1つの制御信号54を出力するように設計されたエレクトロニクスデバイス52を有している。さらにエレクトロニクスデバイス52は、ブレーキ設定信号12を少なくとも考慮したうえで、電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56の目標モータ力を、または、電気機械式のブレーキ倍力装置58に後置された(図示しない)ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置58の目標ブレーキング力F
0を決定するように設計されている。さらにエレクトロニクスデバイス52は、電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56の決定された目標モータ力と、見積もられた、もしくは測定された実際モータ力F
supとの間の、または、後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置58の決定された目標ブレーキング力F
0と、見積もられた、もしくは測定された実際ブレーキング力F
estimatedとの間の力差ΔFを考慮したうえで、少なくとも1つの制御信号54をモータ56に出力するように設計されている。
【0039】
これに伴って制御装置50の動作も、電気機械式のブレーキ倍力装置58を制御するときの非常に高いダイナミクスを可能にする。ブレーキ不足またはブレーキシステム過負荷を、制御装置50を装備した/これと協同作用するブレーキシステムでは排除することができる。これに加えて、制御装置50は、比較的簡素に構成されて低コストなエレクトロニクスデバイス52を装備していてよい。さらに、上で説明した方法ステップを実行するのに適したエレクトロニクスデバイス52は、比較的少ない設計スペースしか必要としない。
【0040】
特にエレクトロニクスデバイス52は、力差ΔFを考慮したうえで電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56の目標回転速度ω
0を決定し、決定された目標回転速度ω
0を考慮したうえで電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56に少なくとも1つの制御信号54を出力するように設計されていてよい。エレクトロニクスデバイス52は、力差ΔFを考慮したうえで、決定される目標回転速度ω
0の値が、常に、ゼロに等しくない所定の最低回転速度値ω
minよりも大きいか、またはこれに等しくなるように、電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56の目標回転速度ω
0を決定するように設計されるのが好ましい。たとえばエレクトロニクスデバイス52は、力差ΔFの値がゼロに等しくない所定の参照値xよりも小さい場合には、目標回転速度ω
0の値を所定の最低回転速度値ω
minに等しく決定し、力差ΔFの値が所定の参照値xよりも大きい場合には、目標回転速度ω
0の値を力差ΔFの(たとえば線形の)関数として決定するように設計されていてよい。同様にエレクトロニクスデバイス52によって、電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56の実際モータ力F
supを、または後置されたマスタブレーキシリンダへの電気機械式のブレーキ倍力装置58の実際ブレーキング力F
estimatedを、電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56のモータ電流の少なくとも1つの最新の電流強さIと、電気機械式のブレーキ倍力装置58のモータ56のロータの最新の回転角φとを考慮したうえで見積もることができる。明文をもって断っておくと、上で説明したその他の方法ステップもエレクトロニクスデバイス52によって実行可能であってよい。