特許第6833105号(P6833105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6833105-被検出物体に検出信号を提供する方法 図000002
  • 特許6833105-被検出物体に検出信号を提供する方法 図000003
  • 特許6833105-被検出物体に検出信号を提供する方法 図000004
  • 特許6833105-被検出物体に検出信号を提供する方法 図000005
  • 特許6833105-被検出物体に検出信号を提供する方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833105
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】被検出物体に検出信号を提供する方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20210215BHJP
   G01S 17/32 20200101ALI20210215BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20210215BHJP
   G02F 1/39 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   G01S7/481 A
   G01S17/32
   G02F1/37
   G02F1/39
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-507106(P2020-507106)
(86)(22)【出願日】2018年7月30日
(65)【公表番号】特表2020-530902(P2020-530902A)
(43)【公表日】2020年10月29日
(86)【国際出願番号】EP2018070589
(87)【国際公開番号】WO2019030041
(87)【国際公開日】20190214
【審査請求日】2020年3月27日
(31)【優先権主張番号】102017213729.0
(32)【優先日】2017年8月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】デゲンフェルト−ショーンブルク,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ウターメーレン,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ライディッヒ,シュテファン
【審査官】 渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−226035(JP,A)
【文献】 特開2016−53566(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0177128(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0076503(US,A1)
【文献】 米国特許第7280186(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0002307(US,A1)
【文献】 米国特許第5291263(US,A)
【文献】 米国特許第4413905(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 − 7/51
17/00 − 17/95
G01B 11/00 − 11/30
G01C 3/00 − 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物体(70)に検出信号を提供する方法であって、
− 第1の光学非線形3波プロセス(30、30a)によって、出力周波数(flaser)を有する光源(10)の光線から、異なる周波数(fobj、fref)を有する少なくとも第1および第2の光線が生成され、
− 前記第1の光線は参照周波数(fref)で検出され、
− 前記第2の光線は物体周波数(fobj)で放射され、物体(70)での反射後に受光され、
− 前記出力周波数(flaser)を有する光線と、前記物体周波数(fobj)を有する前記第2の光線とが重畳され、
− 前記出力周波数(flaser)および前記物体周波数(fobj)を有する2つの重畳光線から、第2の光学非線形3波プロセス(30、30b)によって、参照周波数(fref)を有する参照光が生成され、
− 前記参照周波数(fref)を有する前記第1の光線の検出と、前述の重畳に基づいた前記参照周波数(fref)を有する前記参照光の変化の検出との間の時間差により、前記物体(70)の距離(d)を決定できるように検出信号が生成される、方法。
【請求項2】
前述の重畳に基づいて、参照周波数(fref)を有する前記参照光の強度が変化し、特に増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被検出物体(70)に検出信号を提供するためのセンサ装置(1)であって、
少なくとも1つの出力周波数(flaser)を有する出力光を生成するための光源(10)と、
前記出力光(flaser)から、第1の光学非線形3波プロセスによって、異なる周波数(fobj、fref)の少なくとも第1および第2の光線を生成するための第1の光線生成装置(30、30a)と、
放射され、物体(70)で反射した後に受光される第2の光線(fobj)と、前記出力周波数(flaser)を有する光線との重畳から、第2の光学非線形3波プロセスによって、参照周波数(fref)を有する参照光を生成する第2の光線生成装置(30、30b)と、
前記参照周波数(fref)を有する前記第1の光線の検出と、前述の重畳に基づいた参照周波数(fref)を有する前記参照光の変化の検出との間の時間差により、前記物体(70)の距離(d)を決定できるように検出信号を生成するよう構成された、光を検出するための検出装置(100)と
を含む、センサ装置(1)。
【請求項4】
前記第1および/または第2の光線生成装置(30a、30b)が、非線形光学結晶(30)を含み、前記非線形光学結晶(30)が、特に周期分極したリン酸チタニルカリウム、ニオブ酸リチウム、および/または定比タンタル酸リチウム、および/またはホウ酸バリウム、三ホウ酸リチウム、ホウ酸ビスマス、および/またはリン酸二水素カリウムから製造できる、請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記第1の光線生成装置(30a、30b)が、自発的パラメトリック蛍光を用いて、前記第1の光学非線形3波プロセスを提供するように構成されている、請求項3〜4のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記第2の光線生成装置(30、30b)が、差周波発生を用いて前記第2の光学非線形3波プロセスを提供するように構成されている、請求項3〜5のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
少なくとも前記第2の光線生成装置(30b)からの光線のために、ブラックシリコンから製造できる吸収体(96)が配置されている、請求項3〜6のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記第1の光線(fref)を抑制し、前記第2の光線(fobj)を透過するように構成された周波数フィルタ(66)、特にバンドパスフィルタを有する、物体で反射された光線を受光する受光装置(67)が配置されている、請求項3〜7のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
特に高周波数のクロック源によって制御されるデジタルカウンタ、および/または複数のデジタルゲートの直列回路を有する時間差測定装置(110)が、光パルスの生成時点(t)と反射光の検出時点(t)とが時間差を形成するように配置されている、請求項3〜8のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記検出装置(110)が非線形検出特性を有する、請求項3〜9のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのセンサ装置を備えたLIDARスキャナ、特にマイクロスキャナであって、前記LIDARスキャナが、前記第1の光線生成装置(30、30a)の光線を偏向するためのマイクロメカニカルミラーを有するLIDARスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出物体に検出信号を提供する方法に関する。
本発明は、同様に、被検出物体に検出信号を提供するためのセンサ装置にも関する。
本発明は、さらに、LiDARスキャナ、特にマイクロスキャナにも関する。
【0002】
任意のセンサ装置に適用可能であるが、本発明は、LiDARマクロスキャナに関連して説明される。
【背景技術】
【0003】
公知のLiDARマクロスキャナは、例えば、光源や検出器などの光学要素が配置されたロータを有する。他の公知のスキャナは、回転要素として光線偏向用のミラーを有するのみである。公知の方法では、パルス光源を用いて、例えばレーザの形態で光線を放射し、反射光に基づいて物体の距離を決定するために、物体での反射を検出する。このために、マクロスキャナは、送光光路および受光光路のいわゆる同軸配置を有することができ、反射光は、放射光学系の光路を介して導かれる。そして、受光機で光を十分に検出できるようにするために、光学部品、特に受光経路のミラーが、適切な大きさに選択される。2軸配置構成を使用する場合、レンズのサイズおよび倍率に基づいて、例えば太陽光または他の外部光源による光学雑音出力を低減するために、大きな検出器アレイが使用される。静的受光チャネルを備えた2軸配置構成は、通常、広い角度範囲から照射され、低い信号対雑音比、ひいては到達範囲を有する。
【0004】
消費者製品および自動車製品用のLiDARセンサ装置を設計する場合、目の安全性も重要である。
独国実用新案第202009015194号明細書により、光送光機と、光を走査面に偏向する光偏向ユニットと、スキャナの視野内に存在する物体に放射される光に応じて受信信号を提供する受光機と、受信信号を評価し安全信号を提供する評価ユニットとを備えた、物体の走査面への進入について走査面を監視する安全スキャナが公知となり、光送光機は1200nm〜1700nmの波長の光を送出する。
【0005】
独国特許出願公開第102007032997号明細書により、異なる反射を認識できるようにするために、900nmと1550nmの2つの波長を使用する道路特性を決定するレーザスキャナが公知となった。
【0006】
さらに、米国特許出願公開第2015/0177128号明細書により、2つの異なる波長を有する量子力学的状態の光子を使用したイメージング方法が公知になった。ここでは、供試材を照射するために第1の波長の光子が使用され、検出器に第2の波長の光子が供給され、光子は放射されないため、光路から分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国実用新案第202009015194号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007032997号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0177128号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、被検出物体に検出信号を提供する方法を提供し、
− 第1の光学非線形3波プロセスによって、出力周波数を有する光源の光線から、異なる周波数を有する少なくとも第1および第2の光線が生成され、
− 第1の光線は参照周波数で検出され、
− 第2の光線は物体周波数で放射され、物体での反射後に受光され、
− 出力周波数を有する光線と物体周波数を有する第2の光線とが重畳され、
− 出力周波数および物体周波数を有する2つの重畳光線から、第2の光学非線形3波プロセスによって、参照周波数を有する参照光が生成され、
− 参照周波数を有する第1の光線の検出と、前述の重畳に基づいた参照周波数を有する参照光の変化の検出との間の時間差により、物体の距離を決定できるように検出信号が生成される。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、被検出物体に検出信号を提供するためのセンサ装置であって、
少なくとも1つの出力周波数を有する出力光を生成するための光源と、
出力光から、第1の光学非線形3波プロセスによって、異なる周波数の少なくとも第1および第2の光線を生成するための第1の光線生成装置と、
放射され、物体で反射した後に受光される第2の光線と、出力周波数を有する光線との重畳から、第2の光学非線形3波プロセスによって、参照周波数を有する参照光を生成する第2の光線生成装置と、
参照周波数を有する第1の光線の検出と、前述の重畳に基づいた参照周波数を有する参照光の変化の検出との間の時間差により、物体の距離を決定できるように検出信号を生成するよう構成された、光を検出するための検出装置と
を含む、センサ装置を提供する。
【0010】
さらなる実施形態において、本発明は、請求項3から10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのセンサ装置を備えたLiDARスキャナ、特にマイクロスキャナを提供し、LiDARスキャナは、第1の光線生成装置の光線を偏向するためのマイクロメカニカルミラーを有する。
【0011】
言い換えると、本発明の実施形態の少なくとも1つは、光源からの光を用いて、第1の光学非線形3波プロセスによって、異なる周波数を有する2つのさらなる光線、すなわち物体光および参照光が生成されるセンサ装置を提供する。物体光が被走査物体または対応する領域/範囲に送光される一方で、参照光は直接測定される。物体光が物体に当たると、これは少なくとも部分的に反射し、こうして物体光の反射した光が検出される。物体光の反射光は、光源の光線と共に重畳される。次に、被検出光線における変化は、第2の光学非線形3波プロセスによって生成される。ここで、参照光の最初の測定と、受光された物体光と参照光との重畳に基づいた参照周波数を有する参照光の割合の変化の検出との間の時間は、物体距離を決定するために使用できる。
【発明の効果】
【0012】
達成される利点の1つは、目の安全性を改善できることであり、特に検出器の設計とは関係なく送光出力を増加できる点である。別の利点は、完全に異なる雑音出力経路が使用されるため、感度が高い点である。別の利点は、例えばフラット検出器も2軸配置構成で使用できるため、柔軟性が向上する点である。別の利点は、同じ信号対雑音比でより小さな検出器または検出装置を使用できるため、設置スペースを削減できる点である。製造が複雑な、狭帯域で角度に依存しない波長フィルタを省略することができるため、より単純な波長フィルタも使用できる。
【0013】
「ブラックシリコン」という用語は、黒色シリコンと理解することができる。
「非線形3波プロセス」という用語は、最も広い意味で理解することができ、特に、説明、好ましくは請求項において、入力周波数を有する電磁波から出力周波数の異なる2つの電磁波を、または入力周波数の異なる2つの電磁波から、出力周波数を有する電磁波を生成するために、非線形光学効果が使用されるプロセスに関する。非線形光学効果の例は、周波数倍増またはカー効果である。
【0014】
本発明のさらなる特徴、利点およびさらなる実施形態を以下に説明するか、またはそれによって開示する。
有利な発展形態によれば、前述の重畳に基づいて、参照周波数を有する参照光の強度は変化し、特に強度は増加する。これにより、重畳時点を簡単かつ確実に検出できる。
【0015】
さらなる有利な発展形態によれば、第1および/または第2の光線生成装置は、非線形光学結晶を含む。これにより達成される利点の1つは、パラメトリック光学プロセスおよび/または非線形光学効果を、簡単かつ同時に確実な方法で提供できることである。
【0016】
さらなる有利な発展形態によれば、非線形光学結晶は、特に周期分極したリン酸チタニルカリウム、ニオブ酸リチウム、および/または定比タンタル酸リチウム、および/またはホウ酸バリウム、三ホウ酸リチウム、ホウ酸ビスマス、および/またはリン酸二水素カリウムから製造できる。このように、非線形光学結晶は、柔軟に製造することができる。
【0017】
さらなる有利な発展形態によれば、第1の光線生成装置は、自発的パラメトリック蛍光を用いて、第1の光学非線形3波プロセスを提供するように構成されている。これによって達成される利点の1つは、「parametric down−conversion(パラメトリック下方変換)」という用語でも知られている、パラメトリック蛍光によって、簡単かつ同時に確実な方法で2つの光線を生成できることである。
【0018】
さらなる有利な発展形態によれば、第2の光線生成装置は、差周波発生を用いて第2の光学非線形3波プロセスを提供するように構成されている。このようにして達成される利点の1つは、「difference frequency generation(差周波発生)」という用語でも知られる差周波発生によって、簡単かつ同時に確実な方法で2つの光線を生成できる。
【0019】
さらに有利な発展形態によれば、光源はパルス光を生成するように構成されている。光パルスを使用すると、簡単な時間分解測定が可能である。
さらなる有利な発展形態によれば、光源は、パルス状の変調電流源によって制御可能である。したがって、光源は簡単な方法で制御できる。
【0020】
さらなる有利な発展形態によれば、検出装置は、フォトダイオード、特にアバランシェフォトダイオードおよび/またはSPADダイオードを有する。したがって、簡単で同時に確実な検出装置を提供できる。SPADダイオードを使用すると、個々の光子を検出できる。これにより、低光度でも確実な検出が可能になる。
【0021】
さらなる有利な発展形態によれば、少なくとも第2の光線生成装置からの光線のための吸収体が配置されている。達成される利点の1つは、簡単かつ確実な方法で、第2の光線生成装置からの光線を弱められることである。同様に、レーザからの不要な光のための吸収体も配置できる。
【0022】
さらなる有利な発展形態によれば、吸収体はブラックシリコンから製造される。これにより、光を効果的に吸収できる。
さらなる有利な発展形態によれば、物体で反射された光線を受光する受光装置が配置されており、これは、第1の光線を抑制し、第2の光線を透過するように構成された周波数フィルタ、特にバンドパスフィルタを有する。考えられる利点は、外部光を確実に弱められることである。ここで、バンドパスフィルタは、第2の光線λ+/−10nm、特にλ+/−5nm、好ましくはλ+/−2.5nm、特にλ+/−1.5nmおよび/または好ましくはλ+/−5%、特にλ+/−2%、好ましくはλ+/−1%の波長の光を透過させるように構成されている。
【0023】
さらなる有利な発展形態によれば、特に、高周波数のクロック源によって制御されるデジタルカウンタ、および/または複数のデジタルゲートの直列回路を有する時間差測定装置が、光パルスの生成時点と反射光の検出時点とが時間差を形成するように配置されている。これにより、パルスの放射と物体で反射した光パルスの入射との間の時間間隔の、特に確実な測定が可能になる。ここで、高周波とは、GHz範囲、好ましくは1〜300GHz、特に5〜100GHzの周波数として理解できる。
【0024】
さらなる有利な発展形態によれば、検出装置は非線形検出特性を有する。これにより、検出装置の過負荷が防止される。
さらなる有利な発展形態によれば、物体の距離を決定するための距離決定装置は、時間差測定装置によって算出された時間差に基づいて配置されている。したがって、算出された距離は、検出信号に直接符号化できる。
【0025】
本発明のさらなる重要な特徴および利点は、従属請求項、図面、およびそれに属する、図面を参照した図面の説明から生じる。
言うまでもなく、上述の特徴および以下でまだ説明されるべき特徴は、それぞれに示された組合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せまたは単独で使用することができる。
【0026】
本発明の好ましい実施例および実施形態は、図面に示され、以下の説明においてより詳述され、同じ参照番号は、同一または類似または機能的に同一の構成要素または要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態にかかるセンサ装置を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態にかかる検出装置の測定信号を示す図である。
図3】本発明の第3の実施形態にかかるセンサ装置を示す図である。
図4】本発明の第4の実施形態にかかる検出装置の参照信号を示す図である。
図5】本発明の第5の実施形態にかかる方法ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるセンサ装置を示す。
図1には、本発明にかかるシステムの実施形態が示されている。
まず、周波数flaser、波長λ、例えば531nmのレーザ光線2がレーザ10によって生成される。レーザ10の出力は、連続レベルlおよびパルスレベルlを有するパルス形状の変調電流源によって制御される。したがって、レーザ10は、例えば1mWなどの連続出力Pと、例えば50Wなどのパルス出力Pとを放出する。パルス長は、例えば1ns〜10ns、好ましくは2ns〜8ns、特に4ns〜6nsである。
【0029】
レーザ光線2は、非線形結晶30に供給される。これは、(周期分極した)リン酸チタニルカリウム、(周期分極した)ニオブ酸リチウム、(周期分極した)定比タンタル酸リチウム、ホウ酸バリウム、三ホウ酸リチウム、ホウ酸ビスマスおよび/またはリン酸二水素カリウムから製造できる。最初のステップでは、パラメトリック下方変換とも呼ばれるパラメトリック蛍光によって、例えばλ=1550nmおよびλ=810nm、または700nmから1600nmの間の任意の波長である、周波数fobj、波長λを有する物体光3と、周波数fref、波長λを有する参照光4とが発生し、ここで共鳴条件fobj+fref=flaserが満たされる。物体光および参照光3、4は、この第1のステップでは図1の実線で示されている。
【0030】
第2のステップにおいて、物体光および参照光3、4は、例えばダイクロイックミラーの形態の波長選択性ビームスプリッタ60によって空間的に分離される。
参照光4は検出器100に供給され、電気信号に変換される。検出器100は、光子電流の強度を検出するフォトダイオード、および/または個々の光子に反応するSPADダイオードを有することができる。代替的または追加的に、アバランシェフォトダイオードも使用できる。
【0031】
物体光3は、送光装置68および/または偏向装置によって測定物体70に供給される。物体光3の光は、測定物体70によって(ここでは拡散的に)反射され、受光光学系67によって部分的に受光される。受光光学系67は、波長フィルタ66を有する。波長または周波数フィルタは、好ましくはλ−1.5nm〜λ+1.5nmの高透過、λの低透過のバンドパスフィルタである。ここで、バンドパスフィルタは、物体光3の波長λ+/−10nm、特にλ+/−5nm、好ましくはλ+/−2.5nm、特にλ+/−1.5nmおよび/または好ましくはλ+/−5%、特にλ+/−2%、好ましくはλ+/−1%の光を透過するために、また、λ、好ましくはλ+/−10nm、特にλ+/−5nm、好ましくはλ+/−2.5nmまたはλ+/−1.5nm、および/または好ましくはλ+/−5%、特にλ+/−2%の範囲での低透過のために構成されている。
【0032】
第3のステップでは、受光光学系67によって受光された光5は、偏向ミラー55、56および57を介して再び非線形結晶30に供給される。そこで、第1のステップで生成されたパラメトリック蛍光に加えて、波長λの光線5の追加供給によって、差周波発生の効果による波長λの光線6が発生する。次に、この光線6は、さらなる過程でビームスプリッタ60に当たる。波長λの光線6の部分は、検出器100に供給され、これにより、測定信号が生成される。
【0033】
図1では、差周波発生後に発生した光線6、7が破線で示されている。一方ではパラメトリック蛍光によって、他方では差周波発生によって生成された光線3、4、6、7は、それらの周波数または波長で区別することができない。「phase matching(位相整合)」とも呼ばれる光線の位相調整のために選択された技術に応じて、光線3、4、6、7は、例えばその偏光で区別することができる。これにより、光線3、4、6、7の分離が可能となり、波長λの差周波発生による不要な光線7は、吸収体96に供給することができる。レーザ11の他の光子も吸収体に供給することができる。
【0034】
図1に記載される装置1は、図2に示される検出信号を提供するLiDARシステムの実施形態である。レーザPの基本レベルは、検出信号レベルSにつながる。パルス発生時t、検出信号はレベルSまで急激に上昇する。非線形検出器特性によって、過負荷を防ぐことができる。光パルスの放射tから物体で反射する光の入射tTOFまでの時間間隔では、参照光4の強度のみを検出器100で見ることができる。非線形結晶30での差周波発生により波長λの光線4が発生する時点t≒tTOFでは、図2に示すように、検出信号λの変化が予想される。
【0035】
光パルス3の発生と物体70の検出との間の時間間隔は、時間差測定装置110によって測定され、評価装置120によって求められている物体距離dに変換できる。
d=1/2tTOF・C、C=真空中の光の速度
時間間隔tTOFは、電気的時間測定の公知の方法を使用して決定できる。特に適しているのは、高周波クロック源によってインクリメントされるデジタルカウンタ、またはデジタルゲートの直列接続であり、信号tが測定をトリガし、t1の検出が測定を終了する。
【0036】
図3は、本発明の第2の実施形態を示しており、以下に説明する。
まず、周波数flaserまたは例えば531nmの波長λのレーザ光線2が、レーザ10によって生成される。レーザ10の出力は、連続レベルlおよびパルスレベルlを有するパルス形状の変調電流源によって制御される。したがって、レーザ10は、例えば1mWの連続出力Pと、例えば50Wのパルス出力Pとを放出する。パルス長は、通常1ns〜10ns、好ましくは2ns〜8ns、特に4ns〜6nsである。
【0037】
第2のステップでは、レーザ光線2はビームスプリッタ20で分離される。
光路A上のレーザ光線2は、非線形結晶30aに供給される。これは、(周期分極した)リン酸チタニルカリウム、(周期分極した)ニオブ酸リチウム、(周期分極した)定比タンタル酸リチウム、ホウ酸バリウム、三ホウ酸リチウム、ホウ酸ビスマスおよびリン酸二水素カリウムから製造できる。最初のステップでは、パラメトリック蛍光によって、例えばλ=1550nmおよびλ=810n、または700nmから1600nmの間の任意の波長である、周波数fobj、波長λを有する物体光3と、周波数fref、波長λを有する参照光4とが発生し、ここで共鳴条件fobj+fref=flaserが満たされる。
【0038】
第3のステップにおいて、物体光および参照光3、4は、例えばダイクロイックミラーなどの波長選択性ビームスプリッタ60によって光路A上で空間的に分離される。
参照光4は検出器100に供給され、電気参照信号に変換される。検出器100は、光子電流の強度を検出するフォトダイオード、または個々の光子に反応するSPADダイオードを有することができる。後者により、低光度でも確実な検出が可能になる。代替的または追加的に、アバランシェフォトダイオードも使用できる。検出器101で測定された参照信号は図4に示されている。
【0039】
物体光3は、測定物体70に供給される。物体光3の光は、測定物体70によって拡散反射され、受光光学系67によって部分的に吸収される。受光光学系67は、波長フィルタ66を有する。波長または周波数フィルタ66は、好ましくは、λ−1.5nm〜λ+1.5nmの高透過、およびλの低透過のバンドパスフィルタである。バンドパスフィルタは、物体光3の波長λ+/−10nm、特にλ+/−5nm、好ましくはλ+/−2.5nm、特にλ+/−1.5nmおよび/または好ましくはλ+/−5%、特にλ+/−2%、好ましくはλ+/−1%の光を透過させるために、かつ、λ、好ましくはλ+/−10nm、特にλ+/−5nm、好ましくはλ+/−2.5nmまたはλ+/−1.5nm、および/または好ましくはλ+/−5%、特にλ+/−2%の範囲で低透過させるために構成することができる。
【0040】
第4のステップでは、受光光学系67によって受光された光は、ビーム結合器80を介して、光路8を介して延びるレーザ光線8と結合され、次に非線形結晶30bに供給される。そこで、光路A上を延びるレーザ光線5によって生成されるパラメトリック蛍光に加えて、波長λの光線の追加供給によって、差周波発生に基づく波長λのレーザ光線6の強度が増加する。波長λのレーザ光線6の部分は検出器100に供給され、これにより、図2に示されるような測定信号が生じる。波長λのレーザ光線7の成分は不要となり、吸収体96に供給することができる。
【0041】
図5は、本発明の第5の実施形態にかかる方法のステップを示す。
第1のステップS1では、レーザ源10からの光が非線形光学結晶に送られる。
第2のステップS2では、周波数fobjを有する物体光と、frefを有する参照光とが、パラメトリック下方変換とも呼ばれるパラメトリック蛍光によって生成され、共鳴条件fobj+fref=flaserが満たされる。物体光の波長は、1550nmの範囲にあり、参照光の波長は810nmの範囲にあることが好ましい。
【0042】
参照光の強度は、第3のステップS3において、検出器100、例えばフォトダイオードで連続的に測定される。
第4のステップS4では、検出された光信号が電気信号に変換される。
【0043】
他方、物体光は、例えばレンズまたはミラー光学系などの適切な送光装置によって、任意選択的に、例えばマイクロミラーまたは回転ミラーなどの偏向装置を用いて、第5のステップS5において測定物体70に供給される。
【0044】
物体光の光は、第6のステップS6において測定物体70で拡散反射し、受光光学系67によって部分的に受光される。
第7のステップS7において、周波数fobjの受光された物体光は、レーザ光線とともに周波数flaserで再び非線形結晶30に供給される。
【0045】
そこで、第8のステップS8において、difference frequency generation(差周波発生)とも呼ばれる差周波発生の効果により、周波数frefを有する光線が発生する。
【0046】
第9のステップS9において、この光線は参照光と重畳され、第3のステップS3で説明された検出器100で測定される。これにより、測定信号の強度が増加する。参照光の最初の測定と強度増加の測定との間の時間差は、物体距離を決定するための測定信号として機能する。
【0047】
要約すると、本発明、特に記載された実施形態の少なくとも1つによって、高感度および目の安全性の高い、コンパクトで、安価で、かつ確実なLiDARセンサシステムが提供される。詳細には、対象物の照明し検出するための波長分離により、例えば、適切な検出器の実現に関係なく、目の安全性の最適化および/または許容送光出力の最大化が可能となる。さらに、検出パスに配置されたスペクトルフィルタの帯域幅は、もはや雑音出力を決定せず、ひいては、特に太陽光に依存しない。したがって、例えば、平面検出器を2軸検出経路で使用することができ、統合フォトニクスにおける適切な構造により、受光光学系によって収集された全ての光を単一の検出器に供給することができ、ひいては受光アレイを回避できる。同時に、狭帯域で角度に依存しない、複雑な波長フィルタを省くことができる。
【0048】
さらに、完全に異なる雑音出力経路が使用されるため、高感度が可能になり、これにより、小型のレンズと、場合によってマイクロミラー偏向装置を備えたコンパクトなLiDARシステムが可能になる。同様に、LiDARシステムは、光学位相アレイと組み合わせることもできる。
【0049】
本発明を好ましい実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されず、様々な方法で修正することができる。
図1
図2
図3
図4
図5