(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の発明では、圧縮機で生じた圧縮熱は、空冷式の熱交換器(10,11)において外気へ捨てられており、熱回収されていない。仮に、前記熱交換器において、セパレータタンク(6)からの圧縮空気(または分離水)と通水とを熱交換して、圧縮熱を通水の加温に用いて熱回収するにしても、次のような課題が残る。
【0006】
すなわち、圧縮熱を回収して温水を製造しても、その温水の用途が常にあるとは限らない。温水の用途がないのに、温水を製造して排水するのでは、熱だけでなく水も無駄にすることになる。一方、前記特許文献2に記載の発明では、熱回収用熱交換器(9,11)での熱回収停止中には、他の熱交換器(8,10)において圧縮空気や潤滑油を冷却することができるが、熱交換器の数が多くなり、コストを要する。なお、これらの事情は、圧縮熱を回収して温水を製造する場合に限らず、圧縮熱により各種液体を加温する場合も同様である。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、圧縮機から熱回収して冷却液を加温する熱回収システムにおいて、簡易な構成で、熱回収の有無(たとえば温水製造の有無)を切替可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、
吸込空気に水が添加され、この添加水により圧縮室のシール並びに圧縮機構の冷却および潤滑を図る水添加式の圧縮機と、前記圧縮機からの吐出流体を受け入れて、この吐出流体を圧縮空気と添加水とに気水分離するプレセパレータと、前記プレセパレータで気水分離後の圧縮空気と添加水とを別箇に受け入れて、圧縮空気を気水分離すると共に、添加水を貯留するセパレータタンクと、前記プレセパレータの気相部と前記セパレータタンクの気相部とを接続する気相連通路に設けられ、圧縮空気を冷却液で冷却するアフタークーラと、前記プレセパレータの液相部と前記セパレータタンクの液相部とを接続する液相連通路に設けられ、添加水を冷却液で冷却する水クーラと、前記セパレータタンクの気相部に接続された圧縮空気の送出路と、前記セパレータタンクの液相部に接続された添加水の戻し路と、前記アフタークーラへの冷却液の入口路と、
前記アフタークーラと前記水クーラとを接続する冷却液の連絡路と、前記水クーラからの冷却液の出口路と、前記出口路と前記入口路とを接続する冷却液の返送路と、前記入口路、
前記アフタークーラ、前記連絡路、前記水クーラ、および前記出口路を含み、かつ前記返送路を含まない冷却液の通液経路と、前記返送路の接続箇所よりも下流側の前記入口路、
前記アフタークーラ、前記連絡路、前記水クーラ、前記返送路の接続箇所よりも上流側の前記出口路、および前記返送路を含む冷却液の循環経路と、を切り替える切替手段と、前記循環経路に設けられ、循環冷却液を冷却するラジエータとを備えることを特徴とする熱回収システムである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、熱回収用熱交換器
(アフタークーラ、水クーラ)に対する冷却液の入口路と出口路とを返送路で接続し、切替手段により通液経路と循環経路とに切替可能である。通液経路では、入口路から熱回収用熱交換器を介した冷却液を、返送路で入口路へ戻すことなく出口路の下流へ導出する。従って、通液経路では、熱回収用熱交換器において圧縮熱で加温された冷却液を、外部へ導出して利用することができる(熱回収実施)。一方、循環経路では、入口路から熱回収用熱交換器を介した冷却液を、返送路で入口路へ戻すことで冷却液を循環させる。この際、循環経路に設けられたラジエータにより、循環冷却液を冷却することができる(熱回収停止)。このようにして、簡易な構成で、熱回収の有無(たとえば温水製造の有無)を切替可能とすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記入口路には、前記返送路の接続箇所またはそれよりも下流に、冷却液の貯留タンクを備えることを特徴とする請求項1に記載の熱回収システムである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、切替手段を通液経路とした熱回収中、貯留タンクには給液源からの比較的低温の冷却液が貯留される。従って、その後、切替手段を循環経路として熱回収を停止する際、まずは貯留タンク内の比較的低温の冷却液を熱回収用熱交換器に循環させることができる。これにより、切替手段による切替時の冷却液の温度変化を抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記入口路には、前記返送路の接続箇所よりも下流に、前記ラジエータが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱回収システムである。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、返送路との接続箇所よりも下流の入口路にラジエータを設けることで、循環経路の際には、循環冷却液の冷却ができる一方、通液経路の際には、状況に応じて、熱回収用熱交換器への冷却液の予熱が可能となる。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記圧縮機の作動中において、前記通液経路に切り替えた状態で、前記入口路の給液温度が外気温度よりも低い場合、前記ラジエータのファンを作動させ、前記通液経路に切り替えた状態で、前記入口路の給液温度が外気温度よりも高い場合、前記ラジエータのファンを停止させ、前記循環経路に切り替えた状態では、前記ラジエータのファンを作動させることを特徴とする請求項3に記載の熱回収システムである。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、熱回収中、入口路の給液温度が外気温度よりも低い場合、ラジエータのファンを作動させることで、熱回収用熱交換器への冷却液の予熱が可能である。一方、熱回収中、入口路の給液温度が外気温度よりも高い場合、ラジエータのファンを停止させることで、熱回収用熱交換器への冷却液を冷却してしまう不都合を防止できる。そして、熱回収停止中、ラジエータのファンを作動させることで、循環冷却液の冷却を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧縮機から熱回収して冷却液を加温する熱回収システムにおいて、簡易な構成で、熱回収の有無(たとえば温水製造の有無)を切替可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す概略図であり、圧縮空気を製造する空気圧縮システム1と、この空気圧縮システム1による圧縮熱を回収可能な熱回収システム2を示している。つまり、本実施例では、空気圧縮システム1は熱回収システム2を備え、逆に言えば、熱回収システム2は空気圧縮システム1に適用される。以下、空気圧縮システム1と熱回収システム2について、順に説明する。
【0019】
≪空気圧縮システム1の構成≫
まず、本実施例の空気圧縮システム1の構成について説明する。本実施例の空気圧縮システム1は、水添加式の圧縮機3と、この圧縮機3からの吐出流体を気水分離するプレセパレータ4と、このプレセパレータ4で気水分離後の圧縮空気を冷却するアフタークーラ5と、プレセパレータ4で気水分離後の分離水を冷却する水クーラ6と、各クーラ5,6を通過後の圧縮空気と分離水とが供給されるセパレータタンク7とを主要部として備える。
【0020】
圧縮機3は、水添加式の空気圧縮機である。圧縮機3は、その形式は特に問わないが、たとえばスクリュー式またはスクロール式とされる。水添加式の圧縮機3は、空気の吸込口に水(典型的には精製水(純水)または軟化水)が添加され、この添加水を圧縮室のシールや圧縮機構の冷却などに用いつつ、空気を圧縮して吐出する。この吐出時、圧縮空気と共に添加水も吐出される。
【0021】
圧縮機3は、図示例では電気モータ8により駆動されるが、その他の原動機で駆動されてもよい。たとえば、圧縮機3は、蒸気モータ(蒸気エンジン)により駆動されてもよい。また、圧縮機3は、オンオフ制御されてもよいし、容量制御(出力調整)されてもよい。たとえば、圧縮機3は、電気モータ8をオンオフ制御されるか、電気モータ8の回転数をインバータ制御される。あるいは、蒸気モータの場合には、蒸気モータへの給蒸弁の開閉または開度が制御される。
【0022】
圧縮機3を運転すると、外気がエアフィルタ9を介して吸込路10から圧縮機3内へ吸い込まれるが、その際、詳細は後述するが、セパレータタンク7からの添加水戻し路11を介して水が設定流量で添加される。そして、圧縮機3において圧縮された空気は、添加水を伴いながら、プレセパレータ4へ吐出される。圧縮機3からプレセパレータ4への吐出路12には、逆止弁13が設けられている。
【0023】
なお、水添加式の圧縮機3は、水潤滑式または水噴射式などということもできる(言い換えればこれらを含んでもよい)。また、ここでは、圧縮機3は、空気の吸込口に水が添加されるが、空気の吸込口以外に給水口を備え、この給水口に水が添加されてもよい。
【0024】
プレセパレータ4は、圧縮機3からの吐出流体(添加水と共に吐出される圧縮空気)を受け入れて、気水分離する。つまり、圧縮機3からの吐出流体は、プレセパレータ4において、圧縮空気と分離水とに分けられる。これに伴い、プレセパレータ4内は、上方の気相部と、下方の液相部とに分かれる。そして、プレセパレータ4の気相部は、気相連通路14を介して、セパレータタンク7の気相部に接続される一方、プレセパレータ4の液相部は、液相連通路15を介して、セパレータタンク7の液相部に接続される。
【0025】
プレセパレータ4からセパレータタンク7への気相連通路14には、アフタークーラ5が設けられる。アフタークーラ5は、プレセパレータ4で気水分離後の圧縮空気を冷却する手段である。ここでは、圧縮熱を回収する熱回収用熱交換器16として、アフタークーラ5は、圧縮空気と冷却液とを混ぜることなく熱交換する。アフタークーラ5において、圧縮空気は冷却液により冷却される一方、冷却液は圧縮空気により加温される。
【0026】
プレセパレータ4からセパレータタンク7への液相連通路15には、水クーラ6が設けられる。水クーラ6は、プレセパレータ4で気水分離後の分離水を冷却する手段である。ここでは、圧縮熱を回収する熱回収用熱交換器16として、水クーラ6は、分離水と冷却液とを混ぜることなく熱交換する。水クーラ6において、分離水は冷却液により冷却される一方、冷却液は分離水により加温される。
【0027】
セパレータタンク7は、前記各クーラ5,6を通過後の圧縮空気と分離水とを受け入れて、気水分離する。プレセパレータ4からの圧縮空気は、アフタークーラ5で冷却されて水分の凝縮が図られ、その水分はセパレータタンク7で除去される。従って、セパレータタンク7内も、上方の気相部と、下方の液相部とに分かれる。なお、プレセパレータ4から各連通路14,15を介したセパレータタンク7への流体供給は、圧縮機3の吐出圧や水頭圧差によりなされる。
【0028】
セパレータタンク7の気相部には、前述した気相連通路14の他、圧縮空気利用部への圧縮空気送出路17が接続されている。圧縮空気送出路17には、セパレータタンク7の側から順に、一次圧調整弁18と逆止弁19とが設けられている。一次圧調整弁18は、圧縮機3の運転中、セパレータタンク7内を設定圧力以上に保持する弁である。ここでは、一次圧調整弁18は、一次側(つまりセパレータタンク7側)の圧力に基づき、機械的に動作する自力弁とされるが、場合により、一次側の圧力をセンサで監視して、その検出圧力に基づき制御される電動弁であってもよい。その他、本実施例では、セパレータタンク7の気相部には、安全弁20の他、外部へ排気用の放気弁21が設けられている。なお、一次圧調整弁18と逆止弁19とは、一体型の弁機構として構成することもできる。
【0029】
セパレータタンク7の液相部には、前述した液相連通路15の他、圧縮機3への添加水戻し路11が接続されている。添加水戻し路11には、セパレータタンク7の側から順に、添加水弁22と水フィルタ23とが設けられている。圧縮機3の運転中、添加水弁22を開けることで、セパレータタンク7内の貯留水を添加水戻し路11を介して、圧縮機3へ戻すことができる。その際、圧縮機3の運転による圧縮機3への吸込みと、セパレータタンク7内の加圧とにより、セパレータタンク7から圧縮機3へ添加水を戻すことができる。また、一次圧調整弁18により、セパレータタンク7内は設定圧力以上に保持される上、後述するように、圧縮空気送出路17内の圧力(ひいてはセパレータタンク7内の圧力)は所望に維持されるので、添加水弁22をオリフィスとして機能させつつ、設定流量で添加水を圧縮機3へ供給することができる。しかも、セパレータタンク7から圧縮機3へ添加水を供給する際、水フィルタ23により夾雑物を除去することができる。
【0030】
空気圧縮システム1は、さらに、給水路24と排水路25とを備える。給水路24は、イオン交換装置(たとえば、混床式純水装置や硬水軟化装置)のような給水源からの水を、添加水として補給する手段である。本実施例では、給水源からの給水路24は、第一給水路24Aと第二給水路24Bとに分岐され、第一給水路24Aが圧縮機3への吸込路10に接続される一方、第二給水路24Bがセパレータタンク7に接続される。そして、第一給水路24Aには、第一給水弁26が設けられる一方、第二給水路24Bには、逆止弁27と第二給水弁28とが順に設けられる。なお、本実施例では、第一給水弁26は電磁弁であり、第二給水弁28は手動弁とされる。
【0031】
一方、排水路25は、セパレータタンク7の底部に接続される。排水路25には、排水弁29が設けられており、排水弁29を開けることで、セパレータタンク7内からの排水を図ることができる。
【0032】
その他、セパレータタンク7には、水位検出器30が設けられる。水位検出器30は、その構成を特に問わないが、たとえばイオン類を含まない精製水・凝縮水の水位を検出可能なフロート水位検出器とされる。また、セパレータタンク7からの圧縮空気送出路17には、一次圧調整弁18や逆止弁19よりも下流に、圧力センサ31が設けられる。この圧力センサ31により、圧縮空気の吐出圧(圧縮空気利用部への供給圧)を監視することができる。
【0033】
≪空気圧縮システム1の動作≫
次に、本実施例の空気圧縮システム1の動作について説明する。以下に述べる一連の制御は、基本的には、図示しない制御器により自動でなされる。つまり、制御器は、圧縮機3(具体的にはそのモータ8)、放気弁21、添加水弁22、第一給水弁26、排水弁29、水位検出器30および圧力センサ31などに接続されており、水位検出器30や圧力センサ31の検出信号などに基づき、圧縮機3や各弁21,22,26,29などを制御する。
【0034】
まず、空気の流れについて説明する。圧縮機3の運転を開始すると、圧縮機3は、エアフィルタ9を介して空気を吸い込み、圧縮して吐出する。圧縮機3から吐出される圧縮空気は、プレセパレータ4、アフタークーラ5およびセパレータタンク7を介して、圧縮空気送出路17から圧縮空気利用部へ送られる。但し、圧縮空気送出路17には一次圧調整弁18が設けられているので、運転開始直後のようにセパレータタンク7内の圧力が低い状態では、一次圧調整弁18は閉じられており、圧縮空気利用部へ圧縮空気は送出されない。一次圧調整弁18の一次側(つまりセパレータタンク7側)の圧力が設定圧力以上になると、一次圧調整弁18が開いて、圧縮空気利用部へ圧縮空気が送出される。
【0035】
圧縮機3の運転中、圧縮機3は、圧力センサ31の検出圧力を目標圧力に維持するように、制御される。たとえば、圧縮機3のモータ8が、オンオフ制御されるか、インバータ制御される。なお、目標圧力は、一次圧調整弁18の設定圧力よりも高い。従って、以後、基本的には、セパレータタンク7内は、目標圧力に維持される。
【0036】
圧縮機3の運転中、添加水弁22を開けることで、圧縮機3の吸込口に、設定流量で水を添加することができる。これにより、圧縮機3のシール、冷却および潤滑を図ることができる。圧縮機3からの圧縮空気は、添加水を伴った状態で、プレセパレータ4へ吐出される。そして、プレセパレータ4において気水分離が図られる。プレセパレータ4で気水分離後の圧縮空気は、アフタークーラ5で冷却された後、セパレータタンク7でさらに気水分離され、圧縮空気送出路17から外部へ送出される。一方、プレセパレータ4での分離水は、水クーラ6で冷却された後、セパレータタンク7に貯留され、添加水戻し路11を介して圧縮機3へ供給可能とされる。
【0037】
圧縮機3の運転中、セパレータタンク7内の水位は、設定水位に維持される。たとえば、水位検出器30による検出水位が上限水位を上回ると、排水弁29を開けて水位を所定まで下げる。逆に、水位検出器30による検出水位が下限水位を下回ると、第一給水弁26を開けて水位を所定まで上げる。第一給水弁26の開放中、補給水は、圧縮機3を介してセパレータタンク7へ供給される。この間、添加水弁22を閉鎖しておいてもよい。なお、圧縮機3の停止中には、第二給水弁28を開けて、セパレータタンク7へ直接に給水することができる。
【0038】
一方、圧縮機3の停止時、放気弁21が開けられる。圧縮機3の停止中も放気弁21を開けておくことで、圧縮機3の逆転を防止することができる。その後、圧縮機3の再起動時、放気弁21が閉じられる。
【0039】
本実施例の空気圧縮システム1によれば、圧縮機3からの吐出流体をプレセパレータ4で気水分離し、気水分離後の圧縮空気をアフタークーラ5で冷却する一方、分離水を水クーラ6で冷却した後、セパレータタンク7へ供給する。従って、セパレータタンク7は、事前に気水分離されて冷却された流体が供給され、比較的低温に維持される。好適には、セパレータタンク7内の温度は、圧縮空気の露点温度以下に維持される。そのため、セパレータタンク7からの圧縮空気に随伴して外部へ持ち出される水分量を低減でき、ひいては外部からの補給水量を削減して、ランニングコストの低減を図ることができる。また、圧縮空気送出路17に第二のアフタークーラを設置したり、添加水戻し路11に第二の水クーラを設置したりすることは、それぞれ必須ではなくなり基本的には不要である。
【0040】
さらに、本実施例の空気圧縮システム1によれば、プレセパレータ4で気水分離して、アフタークーラ5による圧縮空気の冷却と、水クーラ6による分離水の冷却とに分けることで、各クーラ5,6における熱交換効率を向上することができる。それに伴い、各クーラ5,6を構成する熱交換器を小型化することもできる。
【0041】
≪熱回収システム2の構成≫
次に、本実施例の熱回収システム2の構成について説明する。本実施例の熱回収システム2は、圧縮機3の圧縮熱を冷却液の加温に用いて熱回収するシステムであり、しかも熱回収の有無を切替可能に構成される。
【0042】
冷却液は、特に問わないが、典型的には水である。この水として、用途に応じて、水道水の他、軟化水または精製水(純水)などを用いることができる。たとえば、熱回収システム2を用いて蒸気ボイラへの給水の予熱を行う場合、後述するように脱気処理された軟化水が用いられる。以下、冷却液は水(つまり冷却水)として説明するが、その他の液体の場合も同様である。言い換えれば、以下において、冷却水は、文字通りの水ではなく、水以外の冷却液であってもよい。
【0043】
本実施例の熱回収システム2は、圧縮機3の圧縮熱により冷却水を加温する熱回収用熱交換器16(アフタークーラ5,水クーラ6)と、この熱回収用熱交換器16への冷却水の入口路32と、熱回収用熱交換器16からの冷却水の出口路33と、出口路33と入口路32とを接続する冷却水の返送路34と、後述する通液経路と循環経路とを切り替える切替手段35(熱回収弁36,返送弁37)と、循環経路の循環冷却水を冷却するラジエータ38とを主要部として備える。
【0044】
熱回収用熱交換器16は、本実施例では、アフタークーラ5および水クーラ6である。アフタークーラ5では、圧縮空気と冷却水とを熱交換して、圧縮空気を冷却水で冷却する一方、冷却水を圧縮空気で加温する。圧縮空気が有する圧縮熱を冷却水の加温に用いて、熱回収を図ることができる。一方、水クーラ6は、添加水(プレセパレータでの分離水)と冷却水とを熱交換して、添加水を冷却水で冷却する一方、冷却水を添加水で加温する。添加水が有する圧縮熱を冷却水の加温に用いて、熱回収を図ることができる。
【0045】
なお、アフタークーラ5と水クーラ6とには、本実施例では、冷却水が順に通される。そのため、本実施例では、アフタークーラ5と水クーラ6とは、連絡路39で接続されている。そして、冷却水は、入口路32から、アフタークーラ5、連絡路39および水クーラ6を順に介して、出口路33へ流される。以下、連絡路39で接続されたアフタークーラ5と水クーラ6とを合わせて、単に熱回収用熱交換器16という。
【0046】
給水源から熱回収用熱交換器16への入口路32には、熱回収用熱交換器16へ向けて順に、ポンプ40、逆止弁41およびラジエータ38が設けられる。ポンプ40を作動させることで、熱回収用熱交換器16に、冷却水を通すことができる。ラジエータ38は、本実施例では空冷式であり、冷却水と外気(ファン38Aによる通風)とを熱交換する。詳細は後述するが、たとえば、ラジエータ38の入口側における冷却水温度が外気温度よりも高い場合、ラジエータ38のファン38Aを作動させることで、ファン38Aによる通風で冷却水を冷却することができる。
【0047】
熱回収用熱交換器16からの出口路33には、熱回収弁36が設けられる。圧縮機3の運転中、熱回収弁36を開けてポンプ40を作動させることで、熱回収用熱交換器16に冷却水を通して、圧縮熱の回収を図ることができる。熱回収弁36は、本実施例では、開度調整可能な電動弁から構成される。
【0048】
熱回収弁36よりも上流側の出口路33と、ポンプ40よりも上流側の入口路32とは、返送路34で接続される。この際、入口路32と返送路34との接続箇所には、冷却水の貯留タンク42を設けておくのが好ましい。但し、貯留タンク42は、場合により、その設置を省略可能である。また、貯留タンク42は、入口路32の内、返送路34との接続箇所ではなく、それよりも下流(好ましくはポンプ40より上流)に設けられてもよい。なお、ポンプ40は、入口路32の内、返送路34との接続箇所よりも下流に設けられる以外に、連絡路39や、出口路33の内、返送路34との接続箇所よりも上流に設けられてもよい。
【0049】
返送路34には、返送弁37が設けられる。返送弁37は、本実施例では、電動弁から構成される。詳細は後述するが、熱回収弁36と返送弁37との内、いずれか一方のみを択一的に開くことで、熱回収用熱交換器16を通過後の冷却水を、返送路34を介して入口路32へ戻すか、返送路34を介さずに出口路33の下流へ送るかを切り替えることができる。
【0050】
切替手段35は、本実施例では、熱回収弁36と返送弁37とで構成される。熱回収弁36と返送弁37との各開閉を切り替えることで、冷却水の流路を、次に述べる通液経路と循環経路とのいずれかに切り替えることができる。
【0051】
通液経路は、返送弁37を閉じた状態で、熱回収弁36を開くことで実現される。通液経路は、入口路32、熱回収用熱交換器16、および出口路33を含み、かつ返送路34を含まない経路である。通液経路にした状態でポンプ40を作動させると、入口路32からの冷却水が、熱回収用熱交換器16を介して、出口路33の熱回収弁36を通過して導出される(熱回収実施状態)。この際、貯留タンク42には、給水源から適宜給水される。言い換えれば、通液経路でポンプ40を作動中、入口路32には給水源からの水が供給される。
【0052】
循環経路は、熱回収弁36を閉じた状態で、返送弁37を開くことで実現される。循環経路は、返送路34の接続箇所よりも下流側の入口路32、熱回収用熱交換器16、返送路34の接続箇所よりも上流側の出口路33、および返送路34を含む経路である。循環経路にした状態でポンプ40を作動させると、ポンプ40からの冷却水は、熱回収用熱交換器16および返送路34を介して、ポンプ40へ戻されて循環される。その際、ラジエータ38を作動させることで、ラジエータ38において循環冷却水を冷却することができる(熱回収停止状態)。なお、循環経路で冷却水を循環中、給水源から貯留タンク42への新たな給水の必要はない。
【0053】
出口路33には、熱回収弁36の出口側に、出湯温度センサ43が設けられる。一方、入口路32には、ラジエータ38の入口側に、給水温度センサ(図示省略)が設けられる。給水温度センサは、入口路32の内、ラジエータ38よりも上流側であれば、場合により給水源の水温を検出してもよい。但し、入口路32に貯留タンク42が設けられる場合には、給水温度センサは、入口路32の内、貯留タンク42またはそれよりも下流で、かつラジエータ38よりも上流に設けられるのが好ましい。その他、本実施例の熱回収システム2は、外気温度を検出可能に、外気温度センサ(図示省略)も設けられる。
【0054】
≪熱回収システム2の動作≫
次に、本実施例の熱回収システム2の動作について説明する。以下に述べる一連の制御は、図示しない制御器により自動でなされる。つまり、制御器は、ポンプ40、ラジエータ38(具体的にはそのファン38Aのモータ)、熱回収弁36および返送弁37の他、出湯温度センサ43、給水温度センサおよび外気温度センサなどに接続されており、各温度センサの検出信号などに基づき、ポンプ40、ファン38Aおよび各弁36,37などを制御する。
【0055】
圧縮機3の作動中(つまり圧縮空気の製造中)、ポンプ40を作動させて、熱回収用熱交換器16に冷却水を通す。これにより、熱回収用熱交換器16において、圧縮機3からの吐出流体(圧縮空気や添加水)を冷却できると共に、吐出流体からの圧縮熱で冷却水を加温することができる。このようにして製造された温水は、温水利用部の使用負荷(出口路33末端の温水利用部における温水要求の有無)に応じて、切替手段35により流路が切り替えられる。つまり、温水利用部において温水を必要とする場合、通液経路に切り替えられ、温水利用部において温水を必要としない場合、循環経路に切り替えられる。
【0056】
たとえば、熱回収用熱交換器16で加温した温水を、出口路33を介して蒸気ボイラの給水タンクに給水可能としておき、その給水タンク内の水位に応じて、通液経路と循環経路とが切り替えられる。その場合、たとえば、給水タンク内の水位が下限水位を下回ると、上限水位を上回るまで、通液経路として温水を供給可能とすればよい。そして、給水タンク内の水位が上限水位を上回ると、循環経路に切替えればよい。
【0057】
なお、熱回収システム2を蒸気ボイラの給水タンクへの給水の予熱に用いる場合(言い換えれば、冷却水として蒸気ボイラの給水タンクへの給水を用いる場合)、入口路32には、硬水軟化装置と脱気装置(脱酸素装置)とで処理された脱気軟化水が供給される。この場合、貯留タンク42において、酸素の再溶存を防止するために、貯留タンク42の水面には、プラスチックビーズを一面に浮かべるのが好ましい。
【0058】
熱回収用熱交換器16に冷却水を通水中、熱回収(言い換えれば外部への出湯)を実施するには、切替手段35を通液経路に切り替える。通液経路では、返送弁37を閉じる一方、熱回収弁36を開ける。また、詳細は後述するが、典型的にはファン38Aを停止させる。この場合、給水源からの水は、熱回収用熱交換器16で加温されて、出口路33の下流の温水利用部へ送られる。この際、出湯温度センサ43の検出温度を設定温度に維持するように熱回収弁36の開度を調整すれば、温水利用部へ設定温度の温水を供給することができる。
【0059】
熱回収用熱交換器16に冷却水を通水中、熱回収(言い換えれば外部への出湯)を停止するには、切替手段35を循環経路に切り替える。循環経路では、熱回収弁36を閉じる一方、返送弁37を開ける。また、ラジエータ38のファン38Aを作動させる。この場合、熱回収用熱交換器16で加温された冷却水は、返送路34を介して入口路32へ戻され、ラジエータ38で冷却された後、再び熱回収用熱交換器16に供給される。つまり、冷却水を熱回収用熱交換器16に循環させつつ、ラジエータ38で外気へ放熱する。
【0060】
通液経路で冷却水を通水中、給水温度センサの検出温度と、外気温度センサの検出温度とに基づいて、ラジエータ38のファン38Aを次のように制御してもよい。すなわち、通液経路にある状態で、給水温度センサの検出温度が外気温度センサの検出温度よりも低い場合、ラジエータ38のファン38Aを作動させる。これにより、ラジエータ38で冷却水を外気により加温(つまりラジエータ38をヒータとして利用)でき、熱回収用熱交換器16への冷却水の予熱が可能である。一方、通液経路にある状態で、給水温度センサの検出温度が外気温度センサの検出温度よりも高い場合、ラジエータ38のファン38Aを停止させる。これにより、ラジエータ38で冷却水を外気により冷やしてしまう不都合が回避される。
【0061】
ところで、本実施例では、前述したとおり、入口路32には、返送路34の接続箇所またはそれよりも下流に、冷却水の貯留タンク42が設けられる。この場合、切替手段35を通液経路とした熱回収中、貯留タンク42には給水源からの比較的低温の冷却水が貯留される。従って、その後、切替手段35を循環経路として熱回収を停止する際、まずは貯留タンク42内の比較的低温の冷却水を熱回収用熱交換器16に循環させることができる。これにより、切替手段35による切替時の冷却水の温度変化を抑制することができる。
【0062】
次に、本実施例の熱回収システム2の変形例について説明する。
まず、ラジエータ38の設置位置は、循環経路内であれば、特に問わない。たとえば、前記実施例では、ラジエータ38は、入口路32(返送路34との接続箇所よりも下流側の入口路32)に設けられたが、出口路33(返送路34との接続箇所よりも上流側の出口路33)や返送路34に設けられてもよい。但し、ラジエータ38を入口路32に設けた場合、前述したように、通液経路において、給水温度と外気温度との関係で、冷却水の予熱が可能となる。一方、ラジエータ38を出口路33または返送路34に設ける場合、通液経路において、給水温度や外気温度に関わらず、ラジエータ38のファン38Aを停止させておけばよい。その場合、給水温度センサや外気温度センサの設置は、省略可能である。なお、ラジエータ38をいずれの位置に設置する場合も、循環経路においては、ラジエータ38のファン38Aを作動させる。
【0063】
また、切替手段35は、冷却水の流れを通液経路と循環経路とで切替可能であれば、特に問わず、たとえば、出口路33と返送路34との接続箇所に設ける三方弁、あるいは、入口路32と返送路34との接続箇所に設ける三方弁から構成されてもよい。
【0064】
また、前記実施例では、冷却水を、アフタークーラ5に通した後、水クーラ6に通したが、場合により、水クーラ6に通した後、アフタークーラ5に通してもよい。但し、先に、アフタークーラ5に通した方が、圧縮空気の冷却を確実に行える上、それにより加温した冷却水を水クーラ6でさらに昇温できるメリットがある。
【0065】
また、前記実施例では、熱回収用熱交換器16としてのアフタークーラ5と水クーラ6とに、冷却水を直列に通したが、場合により並列に通してもよい。つまり、入口路32の下流において、冷却水を二股に分岐させ、一方をアフタークーラ5に通し、他方を水クーラ6に通した後、合流させて出口路33へ通してもよい。
【0066】
また、前記実施例では、アフタークーラ5と水クーラ6との双方を熱回収用熱交換器16としたが、場合により、いずれか一方のみを熱回収用熱交換器16としてもよい。たとえば、アフタークーラ5のみを熱回収用熱交換器16として、入口路32からの冷却水をアフタークーラ5に通して、出口路33から導出してもよい。その場合、水クーラ6は、他の手段(たとえばファンによる通風)により、プレセパレータ4からの分離水を冷却すればよい。逆に、水クーラ6のみを熱回収用熱交換器16として、入口路32からの冷却水を水クーラ6に通して、出口路33から導出してもよい。その場合、アフタークーラ5は、他の手段(たとえばファンによる通風)により、圧縮機3からの圧縮空気を冷却すればよい。
【0067】
また、前記実施例では、通液経路での冷却水の通水中、出湯温度センサ43の検出温度に基づき熱回収弁36の開度を調整したが、出湯温度センサ43の検出温度に基づきポンプ40をインバータ制御して、出湯温度を一定に制御してもよい。あるいは、場合により、このような出湯温度一定制御の実施を省略してもよい。
【0068】
また、前記実施例では、熱回収用熱交換器16に水を通したが、前述したとおり、水以外の液体を通してもよい。つまり、熱回収用熱交換器16は、圧縮空気または添加水を冷却するに際し、水冷式に限らず、その他の液体を用いた液冷式としてもよい。
【0069】
さらに、熱回収用熱交換器16で熱回収して温水を製造するに際し、前記実施例では、熱回収用熱交換器16に水(冷却水)を通したが、次のように構成してもよい。すなわち、熱回収用熱交換器16と他の熱交換器(以下、通水加温用熱交換器という)との間で、たとえばエチレングリコールなどの不凍液または水を循環させ、この循環液と圧縮空気などを熱回収用熱交換器16で熱交換する一方、前記循環液と通水とを通水加温用熱交換器において熱交換して、通水加温用熱交換器において通水を加温して温水を製造してもよい。
【0070】
本発明の熱回収システム2は、前記実施例(変形例を含む)の構成(制御を含む)に限らず適宜変更可能である。特に、(a)圧縮機3の圧縮熱により冷却液を加温する熱回収用熱交換器16と、(b)熱回収用熱交換器16への冷却液の入口路32と、(c)熱回収用熱交換器16からの冷却液の出口路33と、(d)出口路33と入口路32とを接続する冷却液の返送路34と、(e)冷却液の通液経路と循環経路とを切り替える切替手段35と、(f)循環経路に設けられ、循環冷却液を冷却するラジエータ38とを備えるのであれば、その他の構成は特に問わない。
【0071】
たとえば、前記実施例では、熱回収用熱交換器16として、水潤滑式の圧縮機3のアフタークーラ5と水クーラ6との双方を用いたが、前述したとおり、いずれか一方のみでもよい。また、熱回収システム2が適用される空気圧縮システム1は、前記実施例の構成に限らず、従来公知の各種のものを用いることもできる。
【0072】
具体例を挙げると、
図1において、プレセパレータ4の設置を省略すると共に、アフタークーラ5の設置箇所を、セパレータタンク7よりも下流の圧縮空気送出路17としてもよい。また、水クーラ6の設置箇所を、セパレータタンク7から圧縮機3への添加水戻し路11としてもよい。
【0073】
また、前記実施例では、圧縮機3は、水添加式とされたが、これに限らない。たとえば、油潤滑式の圧縮機に適用して、その圧縮機からの圧縮空気から熱回収したり、圧縮機の潤滑油から熱回収したりしてもよい。その場合、熱回収用熱交換器16は、圧縮空気と冷却水との熱交換器、および/または、潤滑油と冷却水との熱交換器とされる。
【0074】
さらに、圧縮機3は、前記実施例では、空気圧縮機とされたが、場合により、空気以外の圧縮機とされてもよい。
【0075】
本発明の熱回収システム2は、前記実施例で例示した蒸気ボイラの給水予熱以外の用途にも好適に利用することができる。たとえば、熱回収システム2で製造した温水を工場や事業所の空調に利用してもよいし、各種製造プロセスにおいて保温や洗浄などに利用してもよい。