【文献】
Advanced Materials,2010年,Vol.22,No.42,p4731−4735,doi:10.1002/adma.201001718
【文献】
Geuss, Markus, et al.,Oriented crystal growth of nonlinear optical dyes in macroporous silicon 2D photonic crystals,PMSE Preprints,2011年,[online],Retrieved from the internet:,URL,http://pubs.acs.org/cgi-bin/preprints/display?div=pmse&meet=241&page=68695_16548.pdf
【文献】
Australian Journal of Chemistry,2014年,Vol.67,No.5,p711−721,doi:10.1071/CH13528
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、第一には、室温において液体として扱うことができ、従来よりも応用性の高められた新規なπ共役オリゴマーを提供することを目的とする。また本発明は、第二には、そのようなπ共役オリゴマーを用いることにより、酸性物質や塩基性物質の存在を光学的な変化で検出することのできるガスセンサ材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、π共役オリゴマーであるp−フェニレンエチニレン(以下、「p−」の記載を適宜省略する。)化合物において、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基をベンゼン環に導入すると融点が室温まで低下し、物体の表面に塗布するのに適した化合物になること、及びこの化合物において、少なくとも一つのベンゼン環をピリジン環にする、又はベンゼン環に対して少なくとも一つの酸性基を導入することにより、それぞれ、酸性物質又は塩基性物質に曝露した際に色調や蛍光が変化するようになり、これらを検出するためのガスセンサ材料として有用であることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、以下のようなものを提供する。
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で表す化合物である。
【化1】
(上記一般式(1)中、各Rpは、少なくとも一つのRpがR又はORであることを条件に、それぞれ独立にR、OR、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基、アンモニウム基、ピリジル基又はアミド基であり、各Rは、それぞれ独立に、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基であ
って、その分岐鎖の炭素数が6以上であり、Arは下記一般式(2)で表す2価の基であり、mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、
a及びbはともに1であり、、cは1〜
4の整数であり、dは1〜
4の整数である。)
【化2】
(上記一般式(2)中、フェニレン環に含まれる各炭素原子の1又は2が窒素原子で置換されてもよく、各Raは、それぞれ独立に、R、OR、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基、アンモニウム基、ピリジル基、アミド基、又は互いに隣り合った2つのRaが結合して環構造を形成したものであり、各Rは、それぞれ独立に、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基であ
って、その分岐鎖の炭素数が6以上であり、pは1〜3の整数であり、eは0〜4の整数である。)
【0011】
また本発明は、上記化合物を含むことを特徴とする発光材料でもある。
【0012】
また本発明は、上記化合物を含むことを特徴とする電子材料でもある。
【0013】
また本発明は、下記一般式(3)で表す化合物を含むことを特徴とする酸感応型のガスセンサ材料でもある。
【化3】
(上記一般式(3)中、各Rpは、それぞれ独立にR、ORであり、各Rは、それぞれ独立に、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基であ
って、その分岐鎖の炭素数が6以上であり、Arは下記一般式(4)で表す2価の基であり、mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、
a及びbはともに1であり、cは1〜
4の整数であり、dは1〜
4の整数である。)
【化4】
(上記一般式(4)中、フェニレン環に含まれる各炭素原子の少なくとも1つが窒素原子で置換されており、各Raは、それぞれ独立に、R、OR、又は互いに隣り合った2つのRaが結合して環構造を形成したものであり、各Rは、それぞれ独立に、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基であ
って、その分岐鎖の炭素数が6以上であり、pは1〜3の整数であり、eは0〜3の整数である。)
【0014】
上記一般式(3)におけるArがピリジン骨格であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第一には、室温において液体として扱うことができ、従来よりも応用性の高められた新規なπ共役オリゴマーが提供される。また第二には、そのようなπ共役オリゴマーを用いることにより、酸性物質や塩基性物質の存在を光学的な変化で検出することのできるガスセンサ材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る化合物、発光材料、電子材料、酸感応型のガスセンサ材料、及び塩基感応型のガスセンサ材料の各一実施形態についてそれぞれ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
[化合物、発光材料、及び電子材料]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されるオリゴフェニレンエチニレン誘導体である。オリゴフェニレンエチニレンのようなπ共役オリゴマーは、発達したπ共役系を備え、有機導電性材料、有機半導体、発光材料等への用途が期待される化合物である。しかしながら、発達したπ共役系を備えるということは、同時にπ−πスタッキングによる高度な自己組織性を備えることにもつながり、溶解性が極めて乏しい等、応用面で大きな不都合をもたらすものである。そのため、上記特許文献2記載の発明のように、オリゴフェニレンエチニレンに対して長鎖のアルキル基等を導入するなどの手段により溶解性を増加させることも検討されているが、そのような手段を用いたとしても、溶液として用いる以上、十分な濃度を確保するのが難しいことによる膜形成の困難さを伴うことがある。
【0022】
そのような背景のもと、本発明者らはオリゴフェニレンエチニレンへの化学修飾の検討を続けた結果、炭素数を多く含むアルキル基の中でも特に分岐を有するものをオリゴフェニレンエチニレンへ導入することにより、その融点を室温以下にまで下げることができることを見出した。このような融点降下を生じる理由として、長鎖分岐アルキルによるオリゴフェニレンエチニレン骨格の被覆が考えられる。すなわち、上記のようにオリゴフェニレンエチニレン骨格を有する化合物は高度な自己組織性を備え、これが融点の上昇や溶解性の不足をもたらすが、長鎖分岐アルキル基を備えることによりオリゴフェニレンエチニレン骨格が長鎖分岐アルキル基により被覆され、自己組織性が低下するものと考えられる。このようなオリゴフェニレンエチニレン誘導体であれば、それ自身が室温で液体であったり、室温で良好な溶液を形成することが可能であったりすることで、容易に膜形成をさせることが可能である。本発明に係るオリゴフェニレンエチニレン誘導体は、そのような知見に基づいて完成されたものであり、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基を備えることを特徴とする。なお、本発明において室温とは概ね15〜30℃の範囲を想定するが、本発明に係る化合物の融点が30℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下である、又はこれらの温度において安定な溶液を形成することができれば、本発明でいう「室温で液体である」ものとする。
【0024】
上記一般式(1)中、各Rpは、少なくとも一つのRpがR又はORであることを条件に、それぞれ独立にR、OR、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基、アンモニウム基、ピリジル基又はアミド基である。そして、各Rは、それぞれ独立に、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基である。そのため、本発明の化合物は、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基を一つ以上有することになる。mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、
a及びbはともに1であり、cは1〜
4の整数であり、dは1〜
4の整数である。
【0025】
Rは、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基である。「分岐を有する」とはアルキル基が枝分かれ構造を有することを意味し、この場合、直鎖として見たときに最も長いアルキル鎖となる主鎖に結合したアルキル基が分岐鎖(側鎖)となる。オリゴフェニレンエチニレン骨格を効果的に被覆するとの観点からは、上記分岐鎖がある程度の長さを有することが望ましく、分岐鎖が直鎖状でありかつその炭素数が4以上であることが好ましく挙げられ、分岐鎖がn−ヘキシル基であることがより好ましく挙げられる。より具体的には、中間体の入手容易性等の観点から、Rとして下記の2−n−ヘキシルデシル基を特に好ましく挙げることができる。なお、下記の2−n−ヘキシルデシル基を例として上記の主鎖と分岐鎖との関係を説明すれば、炭素数10のデシル鎖(デシル基)が主鎖となり、炭素数6のヘキシル鎖(ヘキシル基)が分岐鎖(側鎖)となる。Rは、分岐を有する炭素数10以上20以下のアルキル基であることが好ましく、分岐を有する炭素数12以上20以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0027】
上記一般式(1)で表す化合物のうち、上記一般式(1)において両末端のベンゼン環のそれぞれに1以上のR又はORを持ち、m個の繰り返しを有するベンゼン環のそれぞれに2以上のR又はORを持ち、n個の繰り返しを有するベンゼン環のそれぞれに2以上のR又はORを持つものを好ましく例示できる。
【0028】
上記一般式(1)中、Arは、下記一般式(2)で表す2価の基である。
【0030】
上記一般式(2)中、フェニレン環(すなわち2価のベンゼン環)に含まれる各炭素原子の1又は2が窒素原子で置換されてもよい。この場合、一般式(2)におけるベンゼン環はピリジン環やピリミジン環となる。これらピリジン環やピリミジン環を備えることにより、本発明の化合物は、後述する酸感応型のガスセンサ材料としても用いることが可能になる。
【0031】
上記一般式(2)中、各Raは、それぞれ独立に、R、OR、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基、アンモニウム基、ピリジル基、アミド基、又は互いに隣り合った2つのRaが結合して環構造を形成したものである。Rは、上記一般式(1)におけるものと同様である。互いに隣り合った2つのRaが結合して形成される環構造は、一般式(2)におけるベンゼン環と縮合した環となり、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪環又は芳香環である。このような環構造としては、ベンゼン環(一般式(2)におけるベンゼン環と縮合してナフタレン環となる。)や、2,1,3−チアジアゾール環(一般式(2)におけるベンゼン環と縮合して2,1,3−ベンゾチアジアゾール環となる。)が例示される。eは0〜4の整数であり、pは1〜3の整数である。
【0032】
上記一般式(1)で表す本発明の化合物は、エチニルベンゼンとジヨードベンゼンとの間で薗頭クロスカップリング反応を行って得ることができる。この場合、3核のオリゴフェニレンエチニレン化合物が得られる。また、ジエチニルベンゼンと、エチニルベンゼン及びジヨードベンゼンを薗頭クロスカップリング反応させたものとを薗頭クロスカップリングさせてもよい。この場合、5核のオリゴフェニレンエチニレン化合物が得られる。これらの反応例を下記スキーム1及びスキーム2に示す。また、下記スキーム1や2におけるジヨードベンゼンに代えてジヨードピリジン等の化合物を用いることにより、上記一般式(1)におけるArのバリエーションとなる化合物を得ることができる。そのような例を下記スキーム3及びスキーム4に示す。なお、下記の各スキームにおけるRとしては上記一般式(1)について説明したものを選択可能であるが、下記の各スキームでは説明のための便宜として、Rを上記2−nーヘキシルデシル基としている。また、下記の各スキームは説明のための一例であり、本発明が下記のスキームに記載された化合物に限定されることはない。
【0035】
上記一般式(1)で表す化合物は、発達した共役系に基づく優れた発光特性、電気伝導性、半導体特性等を示す一方で、融点が低く、室温にて液体として存在させることが可能である。そのため、薄膜化等の加工が容易であり、有機EL、半導体、電子ペーパー、蛍光素子、二次電池等における電解液、液体導電体、水素吸蔵材料等への応用が期待される。特に、上記一般式(1)におけるArとして環に窒素を含む化合物は、適当な酸化剤をドープすることにより電子が奪われ、導電性材料や半導体材料として用いることが可能である。これらのことから、本発明の化合物を含む発光材料や電子材料を作製することも可能である。このような発光材料や電子材料もまた本発明の一つである。なお、本発明において、「室温にて液体として存在させることが可能」とは、上記のように室温よりも融点が低いことのみならず、溶媒に対する溶解性が高く、室温にて良好な溶液を形成できることも含むものとする。
【0036】
[酸感応型のガスセンサ材料]
次に、本発明の酸感応型のガスセンサ材料について説明する。本発明の酸感応型のガスセンサ材料は、一般式(1)でArとして表される(ポリ)フェニレン基において、フェニレン環に含まれる各炭素原子の少なくとも1つが窒素原子で置換された化合物を含むことを特徴とする。このような化合物は、一般式(1)でArとして表される部分にピリジン骨格やピリミジン骨格等の塩基性基を含み、塩酸ガス等の酸性ガスが存在すると当該酸性ガスによりこれら塩基性基がプロトン化され、窒素原子が4級化される。これにより、分子内及び/又は分子間でのエネルギー移動を生じるようになり、蛍光発光の波長や、光吸収の波長がシフトする。本発明の酸感応型のガスセンサ材料は、このような原理に基づくものであり、上記一般式(1)で表す化合物の応用例ともいうことができる。以下、本発明の酸感応型のガスセンサ材料について説明するが、上記本発明の化合物の説明と重複する部分については、その説明を適宜省略する。
【0037】
本発明の酸感応型のガスセンサ材料は、下記一般式(3)で表す化合物を含むことを特徴とする。
【0039】
上記一般式(3)中、各Rpは、それぞれ独立にR、ORである。そして、各Rは、それぞれ独立に、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基である。mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、aは1〜5の整数であり、bは1〜5の整数であり、cは1〜
4の整数であり、dは1〜
4の整数である。そのため、本発明の化合物は、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基を有することになる。なお、上記一般式(1)では、Rpの選択肢としてスルホ基、カルボキシル基といった酸性基が含まれていたが、本発明の酸感応型のガスセンサ材料ではこれらの酸性基の存在が酸性ガスの検出の障害になることも考えられるため、これらの酸性基はRpの選択肢として含まれない。
【0040】
Rは、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基である。これについては、上記一般式(1)と同様であるので説明を省略する。Rは、分岐を有する炭素数10以上20以下のアルキル基であることが好ましく、分岐を有する炭素数12以上20以下のアルキル基であることがより好ましい。また、上記一般式(3)で表す化合物のうち、上記一般式(3)において両末端のベンゼン環のそれぞれに1以上のR又はORを持ち、m個の繰り返しを有するベンゼン環のそれぞれに2以上のR又はORを持ち、n個の繰り返しを有するベンゼン環のそれぞれに2以上のR又はORを持つものを好ましく例示できる点についても、上記一般式(1)と同様である。
【0041】
上記一般式(3)中、Arは、下記一般式(4)で表す2価の基である。
【0043】
上記一般式(4)中、フェニレン環に含まれる各炭素原子の少なくとも1つが窒素原子で置換されている。このため、上記一般式(4)で表される上記Arで表される部分には、ピリジン骨格やピリミジン骨格等の塩基性基が含まれる。そしてこれらの塩基性基は、塩酸ガス等の酸性ガスに曝された際に窒素原子がプロトン化され4級化される。これにより、分子内及び/又は分子間でのエネルギー移動を生じるようになり、蛍光発光の波長や、光吸収の波長がシフトするようになる。本発明の酸感応型のガスセンサ材料は、本化合物のこのような性質を利用したものであり、当該化合物自身の色調や蛍光発光の色調の変化といった、目視可能な変化により酸性物質の存在を検出することが可能になる。勿論、本化合物は発達した共役系を備えるので、こうした変化を電気的に検出することも可能である。
【0044】
各Raは、それぞれ独立に、R、OR、又は互いに隣り合った2つのRaが結合して環構造を形成したものである。Rは、上記一般式(3)におけるものと同様である。互いに隣り合った2つのRaが結合して形成される環構造は、一般式(4)におけるベンゼン環と縮合した環となり、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪環又は芳香環である。このような環構造としては、ベンゼン環(一般式(4)におけるベンゼン環と縮合してナフタレン環となる。)や、2,1,3−チアジアゾール環(一般式(4)におけるベンゼン環と縮合して2,1,3−ベンゾチアジアゾール環となる。)が例示される。eは0〜3の整数であり、pは1〜3の整数である。
【0045】
上記一般式(3)におけるArとして、より具体的には、ピリジン骨格であることを好ましく挙げることができる。なお、pが1よりも大きな整数である場合、Arに含まれるいずれかの環がピリジン骨格であれば、「Arがピリジン骨格である」ものとする。
【0046】
また、上記一般式(3)及び(4)におけるアルキル基の分岐鎖の炭素数が4以上であることが好ましいことや、分岐鎖がn−ヘキシル基であることがより好ましく挙げられる点については、上記一般式(1)及び(2)と同様である。
【0047】
上記一般式(3)で表す化合物は、室温にて液体であり得る程度に融点が低いので、表面への塗布等といった加工性に優れる。また、酸性ガスの存在を、蛍光や色調の変化という目視観測可能な変化により高感度に示すことができる。よって、このような化合物を含んでなる本発明の酸感応型のガスセンサ材料は、実用性に優れた材料として有用である。なお、上記「室温にて液体であり得る」との表現が、室温よりも融点が低いことのみならず、溶媒に対する溶解性が高く、室温にて良好な溶液を形成できることも含むことは既に述べた通りである。
【0048】
[塩基感応型のガスセンサ材料]
次に、本発明の塩基感応型のガスセンサ材料について説明する。本発明の塩基感応型のガスセンサ材料は、一般式(1)で表すオリゴフェニレンエチニレン化合物のうち、酸性置換基を備えた化合物を含むことを特徴とする。このような化合物は、アンモニア等の塩基性ガスに曝されると当該酸性置換基が脱プロトンされアニオンになる。これにより、分子内及び/又は分子間でのエネルギー移動を生じるようになり、蛍光発光の波長や光吸収の波長がシフトする。本発明の塩基感応型のガスセンサ材料は、このような原理に基づくものであり、上記一般式(1)で表す化合物の応用例ともいうことができる。以下、本発明の塩基感応型のガスセンサ材料について説明するが、上記本発明の化合物の説明と重複する部分については、その説明を適宜省略する。
【0049】
本発明の塩基感応型ガスセンサ材料は、下記一般式(5)で表す化合物を含むことを特徴とする。
【0051】
上記一般式(5)中、各Rpは、少なくとも一つのRpがR又はORであることを条件に、それぞれ独立にR、OR、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基、アンモニウム基、ピリジル基又はアミド基である。そして、各Rは、それぞれ独立に、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基である。そのため、本発明の化合物は、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基を一つ以上有することになる。mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、aは1〜5の整数であり、bは1〜5の整数であり、cは1〜5の整数であり、dは1〜5の整数である。
【0052】
Rは、分岐を有する炭素数8以上20以下のアルキル基である。これについては、上記一般式(1)と同様であるので説明を省略する。Rは、分岐を有する炭素数10以上20以下のアルキル基であることが好ましく、分岐を有する炭素数12以上20以下のアルキル基であることがより好ましい。また、上記一般式(5)で表す化合物のうち、上記一般式(5)において両末端のベンゼン環のそれぞれに1以上のR又はORを持ち、m個の繰り返しを有するベンゼン環のそれぞれに2以上のR又はORを持ち、n個の繰り返しを有するベンゼン環のそれぞれに2以上のR又はORを持つものを好ましく例示できる点についても、上記一般式(1)と同様である。
【0053】
上記一般式(5)中、Arは、下記一般式(6)で表す2価の基である。
【0055】
上記一般式(6)中、各Raは、それぞれ独立に、R、OR、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ヒドロキシル基、アンモニウム基、ピリジル基、アミド基、又は互いに隣り合った2つのRaが結合して環構造を形成したものである。Rは、上記一般式(5)におけるものと同様である。互いに隣り合った2つのRaが結合して形成される環構造は、一般式(6)におけるベンゼン環と縮合した環となり、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪環又は芳香環である。このような環構造としては、ベンゼン環(一般式(6)におけるベンゼン環と縮合してナフタレン環となる。)や、2,1,3−チアジアゾール環(一般式(6)におけるベンゼン環と縮合して2,1,3−ベンゾチアジアゾール環となる。)が例示される。eは0〜4の整数であり、pは1〜3の整数である。
【0056】
ここで、一般式(5)及び(6)において、各Rp及び各Raのうちの少なくとも一つは、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基又はヒドロキシル基である。本発明の塩基感応型ガスセンサに含まれる化合物がこれらの酸性置換基を備えることにより、アンモニア等の塩基性ガスに曝された際にこれら酸性置換基が脱プロトンされてアニオンになり、それに伴って分子内及び/又は分子間でのエネルギー移動が生じ、蛍光発光の波長や光吸収の波長がシフトするようになる。
【0057】
上記一般式(5)及び(6)におけるアルキル基の分岐鎖の炭素数が4以上であることが好ましいことや、分岐鎖がn−ヘキシル基であることがより好ましく挙げられる点については、上記一般式(1)及び(2)と同様である。
【0058】
上記一般式(5)で表す化合物は、室温にて液体であり得る程度に融点が低いので、表面への塗布等といった加工性に優れる。また、塩基性ガスの存在を、蛍光や色調の変化という目視観測可能な変化により高感度に示すことができる。よって、このような化合物を含んでなる本発明の塩基感応型のガスセンサ材料は、実用性に優れた材料として有用である。なお、上記「室温にて液体であり得る」との表現が、室温よりも融点が低いことのみならず、溶媒に対する溶解性が高く、室温にて良好な溶液を形成できることも含むことは既に述べた通りである。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の合成例では、
1H−NMR、
13C−NMR、FT−IR、UV−vis、FL測定等により構造を確認した。また、反応に用いた各種の溶媒は、定法により乾燥させ、蒸留したものである。
【0060】
[OPE−Py1の合成]
上記スキーム3に記載したOPE−Py1を下記合成例1〜4の各ステップを経ることにより合成した。
【0061】
[合成例1]
【化16】
【0062】
4−ヨードフェノール0.50g(2.25mmol)、1−クロロ−2−n−ヘキシルデカン0.94g(11.3mmol)及びジメチルホルムアミド(DMF)10mLを反応容器に加え100℃で撹拌し、その中へ炭酸カリウム1.56g(11.3mmol)及びヨウ化カリウム25mgを加え、150℃で3日間撹拌しながら還流させた。その後、吸引濾過で固形分を除いた後、溶液にジクロロメタンを加えて分液ロートでジクロロメタン層を分取し、これを硫化マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー(留出液:ヘキサン)で精製し、化合物3を0.75g(収率75.0%)得た。
【0063】
[合成例2]
【化17】
【0064】
化合物3(0.25g、0.563mmol)及びトリエチルアミン(TEA、5mL)を反応容器に加えて溶解させ、これにヨウ化銅(I)3.2mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。その後、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド11.8mg及びトリメチルシリルアセチレン0.15mL(0.675mmol)を加えて、60℃で1日間撹拌還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ヘキサン)で精製し、化合物4を0.20g(収率87.0%)得た。
【0065】
[合成例3]
【化18】
【0066】
化合物4(0.20g、0.482mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)5mLを反応容器に入れて溶解させ、これにテトラブチルアンモニウムフロリド(TBAF)0.58mL(0.579mmol)を加えて遮光下で30分間撹拌し、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ヘキサン)で精製し、化合物5を0.15g(収率93.8%)得た。
【0067】
[合成例4]
【化19】
【0068】
2,5−ジヨードピリジン0.06g(0.170mmol)、化合物5(0.14g、0.409mmol)及びトルエン10mLを反応容器に入れて溶解させ、これにヨウ化銅(I)0.9mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム5.9mg及びTEA5mLを加えて90℃で1日間撹拌しながら還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)で精製し、OPE−Py1を0.08g(収率61.5%)得た。得られたOPE−Py1は、室温で液体だった。
【0069】
[OPE−Py2の合成]
上記スキーム3に記載したOPE−Py2を下記合成例5〜9の各ステップを経ることにより合成した。
【0070】
[合成例5]
【化20】
【0071】
3,6−ジヨード−1,4−ヒドロキノン0.55g(1.53mmol)、1−クロロ−2−n−ヘキシルデカン1.00g(3.83mmol)及びDMF10mLを反応容器に加え、溶解するまで100℃で撹拌した。これに炭酸カリウム2.12g(15.3mmol)を加え、150℃で3日間撹拌しながら還流させた。溶液にジクロロメタンを加えて分液ロートでジクロロメタン層を分取し、これを硫化マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー(留出液:ヘキサン)で精製し、化合物6を0.19g(収率15.3%)得た。
【0072】
[合成例6]
【化21】
【0073】
化合物6(0.35g、0.432mmol)、化合物5(0.07g、0.216mmol)及びトルエン10mLを反応容器に加えて溶解させ、これにヨウ化銅(I)1.2mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム7.5mg及びTEA5mLを加えて90℃で1日間撹拌しながら還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:3)で精製し、化合物7を0.13g(収率59.1%)得た。
【0074】
[合成例7]
【化22】
【0075】
2,5−ジヨードピリジン0.20g(0.604mmol)及びTEA10mLを反応溶液に入れて溶解させ、これにヨウ化銅(I)3.5mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド12.7mg及びトリメチルシリルアセチレン0.20mL(1.45mmol)を加えて60℃で1日間撹拌還流し、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製し、化合物8を0.19g(収率119%)得た。
【0076】
[合成例8]
【化23】
【0077】
化合物8(0.19g、0.700mmol)及びTHF10mLを反応容器に入れて溶解させた後、TBAF1.68mL(1.68mmol)を加えて遮光下で30分間撹拌し、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン)で精製し、化合物9を0.06g(収率66.7%)得た。
【0078】
[合成例9]
【化24】
【0079】
化合物9(4.0mg、0.0311mmol)、化合物7(0.07g、0.0683mmol)及びトルエン5mLを反応容器に入れて溶解させ、これにヨウ化銅(I)0.2mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.1mg及びTEA5mLを加えて90℃で1日間撹拌しながら還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)で精製し、OPE−Py2を0.03g(収率50.0%)得た。得られたOPE−Py2は、室温で液体だった。
【0080】
[OPE1の合成]
上記スキーム1に記載したOPE1を下記合成例10により合成した。
【0081】
[合成例10]
【化25】
【0082】
化合物6(0.07g、0.0973mmol)、化合物5(0.08g、0.234mmol)及びトルエン10mLを反応容器に加えて溶解させ、これにヨウ化銅(I)0.6mgを加えて30分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム3.4mg及びTEA5mLを加えて90℃で1日間撹拌しながら還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:4)で精製し、OPE1を0.04g(収率33.3%)得た。得られたOPE1は、室温で液体だった。
【0083】
[OPE2の合成]
上記スキーム2に記載したOPE2を下記合成例11により合成した。
【0084】
[合成例11]
【化26】
【0085】
1,4−ジエチニルベンゼン10(5.6mg、0.0444mmol)、化合物7(0.10g、0.0976mmol)及びトルエン10mLを反応容器に入れて溶解させ、これにヨウ化銅(I)0.3mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.5mg及びTEA5mLを加えて90℃で1日間撹拌しながら還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:4)で精製し、OPE2を0.03g(収率33.3%)得た。得られたOPE2は、室温で液体だった。
【0086】
[OPE−Bt1の合成]
上記スキーム4に記載したOPE−Bt1を下記合成例12により合成した。
【0087】
[合成例12]
【化27】
【0088】
化合物11(0.09g、0.182mmol)、化合物5(0.15g、0.438mmol)及びトルエン10mLを反応容器に加えて溶解させ、これにヨウ化銅(I)1.0mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム6.3mg及びTEA5mLを加えて90℃で1日間撹拌しながら還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:2)で精製し、OPE−Bt1を0.05g(収率27.8%)得た。得られたOPE−Bt1は、室温で液体だった。
【0089】
[OPE−Bt2の合成]
上記スキーム4に記載したOPE−Bt2を下記合成例13〜15により合成した。
【0090】
[合成例13]
【化28】
【0091】
化合物11(0.16g、0.296mmol)及びTEA10mLを反応容器に加えて60℃に加熱して溶解させ、これにヨウ化銅(I)1.7mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。その後、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド6.2mg及びトリメチルシリルアセチレン0.15mL(0.675mmol)を加えて、60℃で1日間撹拌還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:2)で精製し、化合物12を0.10g(収率71.4%)得た。
【0092】
[合成例14]
【化29】
【0093】
化合物12(0.10g、0.208mmol)及びTHF5mLを反応容器に入れて溶解させ、これにTBAF0.50mL(0.499mmol)を加えて遮光下で30分間撹拌し、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)で精製し、化合物13を0.02g(収率28.6%)得た。
【0094】
[合成例15]
【化30】
【0095】
化合物13(0.02g、0.0577mmol)、化合物7(0.13g、0.127mmol)及びトルエン7mLを反応容器に入れて溶解させ、これにヨウ化銅(I)0.3mgを加えて窒素気流下で30分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.0mg及びTEA5mLを加えて90℃で1日間撹拌しながら還流させ、得られた反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(留出液:ジクロロメタン:ヘキサン=1:2)で精製し、OPE−Bt2を0.02g(収率16.7%)得た。得られたOPE−Bt2は、室温で液体だった。
【0096】
[蛍光特性]
上記の手順で合成されたOPE1、OPE2、OPE−Py1、OPE−Py2、OPE−Bt1及びOPE−Bt2のそれぞれについて、クロロホルム溶液としたときの紫外可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトル、並びに化合物自体を石英板に塗布して薄膜としたときの紫外可視吸収」スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した。その測定により得られた極大吸収波長、極大発光波長、及び薄膜時の蛍光の色調を表1に記載した。
【0097】
[Tg測定]
上記の手順で合成されたOPE1、OPE2、OPE−Py1、OPE−Py2、OPE−Bt1及びOPE−Bt2のそれぞれについて、示差走査熱量計(DSC)を用いてガラス転移温度(Tg)を求めた。DSC測定は窒素雰囲気下で行い、走査範囲を−50℃〜150℃とし、10℃/分で昇温させて行った。測定結果を表1のTg欄に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、いずれの化合物もTgは0℃以下であり、室温で液体状態であることがわかる。また、それぞれの化合物の蛍光色調は、π共役系の長さや、一般式(1)におけるArの構造に応じて様々に変化させることができ、本発明の化合物によれば三原色の蛍光発光を揃えることも可能なことがわかる。
【0100】
クロロホルム溶液と薄膜とでは分子の存在する環境が大きく異なるが、特に異なる要素として分子の密度を挙げることができる。すなわち、溶液中では分子が希薄な状態で存在するが薄膜では分子が密に存在するため、自己組織性のある分子であれば薄膜において自己組織化しやすい状況にあるといえる。このような場合、溶液中では自己組織化が生じにくい一方で薄膜では自己組織化を生じ、そのような場合には分子間エネルギー移動による蛍光波長の変化が観察される。本発明の化合物はいずれもTgが0℃以下であり、この点で自己組織化を生じにくいといえるが、OPE1、OPE2、OPE−Py1、OPE−Py2、及びOPE−Bt2では、いずれも薄膜時の蛍光が溶液中よりも長波長側にシフトしており、薄膜のような厳しい環境では自己組織性を示すことがわかる。その一方でOPE−Bt1では、薄膜の蛍光波長が溶液におけるそれと同じであり、薄膜のような厳しい環境でも自己組織化を生じにくいことがわかる。
【0101】
[酸性ガス曝露時の吸収及び蛍光変化]
OPE−Py1及びOPE−Py2のそれぞれについて、化合物を石英板に塗布して薄膜とした状態で塩酸(HCl)ガスに曝露させ、吸収波長及び蛍光波長の変化を観察した。その結果を表2に示す。なお、表2における吸収波長及び蛍光波長は、いずれも吸収極大及び蛍光極大における波長である。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示すように、HClガスの曝露により吸収波長及び蛍光波長の両方が長波長側にシフトし、その変化は目視でも観察できた。このことから、OPE−Py1やOPE−Py2を含んでなる本発明に係る酸感応型ガスセンサの有用性が理解できる。
【0104】
次に、HClガスに曝露されたOPE−Py1及びOPE−Py2の薄膜に対して、それぞれ塩基性であるピリジンガスを曝露させた。そのときの吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの変化を
図1に示す。
図1は、HClに曝露されたOPE−Py1及びOPE−Py2の薄膜に対してピリジンガスを曝露させたときの蛍光スペクトルの変化を示し、
図1(a)はOPE−Py1のスペクトル変化を示し、
図1(b)はOPE−Py2のスペクトル変化を示す。
図1(a)及び(b)ともに、点線はもとの薄膜時の蛍光スペクトルであり、「HCl」はHClガス曝露後の蛍光スペクトルであり、「Py」はHClガス曝露後のサンプルにピリジンガスを曝露させたときの蛍光スペクトルである。
【0105】
図1(a)及び(b)に示すように、HClガスに曝露されることにより長波長側へシフトしていた蛍光スペクトルが、ピリジンガスに曝露されることにより短波長側へシフトし、もとの蛍光スペクトルに近いスペクトルになることがわかる。特に、
図1(b)に示すOPE−Py2では、ほぼ完全にもとの蛍光スペクトルへ戻ることがわかる。また、OPE−Py2に関しては、HClガスとピリジンガスとの曝露を何度も繰り返した際に同じ変化を繰り返したことから、サイクル耐久性を有することもわかった。