特許第6833211号(P6833211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833211
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】インプリント成型用光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20210215BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   C08F290/06
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-11390(P2018-11390)
(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公開番号】特開2019-129280(P2019-129280A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】青野 智史
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−009102(JP,A)
【文献】 特開2010−209323(JP,A)
【文献】 特開2012−092307(JP,A)
【文献】 特開2010−138393(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0113313(KR,A)
【文献】 国際公開第2015/141537(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0244831(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/047615(WO,A1)
【文献】 特開2010−260272(JP,A)
【文献】 特開2009−062433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、イオン性化合物(成分B)と、光ラジカル重合開始剤(成分C)とを含むインプリント成型用光硬化性樹脂組成物であって、
前記成分Aは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種のオリゴマー(成分A1)と、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー(成分A2)とを含み、
前記成分A1は、重量平均分子量が500〜50,000であり、
前記成分A中、前記成分A2が20〜90重量%であり、
前記成分A100重量部に対して前記成分Bが1〜20重量部であり、
粘度が1,000mPa・s以下であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分A1が、ポリエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー又はその水素添加物である請求項1に記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
硬化物のガラス転移温度(Tg)が85℃以上である請求項1又は2に記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分Bがイオン液体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント成型用光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂組成物を使用したインプリント成型によるインプリント成型硬化体の製造方法は、通常、光硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程、基材上に塗布された光硬化性樹脂組成物をスタンパする工程、スタンパされた光硬化性樹脂組成物を光硬化させてインプリント成型硬化体とする工程、インプリント成型硬化体をスタンパから剥離する工程からなる。このようなインプリントで製造した成形品は、電子機器への用途に多く用いられている。
電子機器に用いられる場合、静電気を生じないことを求められることが多く、そのような場合、一般的な帯電防止の基準である10E13Ω以下の表面抵抗値にすることが求められる。
【0003】
さらに電子機器への用途に用いられる場合、温度85℃/湿度85%の高温高湿試験や、−40〜85℃のヒートショック試験などを合格する必要があり、高温での耐久性が求められている。
【0004】
特許文献1には、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー及びカルボキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含んでなり、粘度が1000mPa・s以下であることを特徴とするインプリント成形用組成物が開示され、この組成物は、モールドへ流れ込み易く、IZOやITO等の金属酸化物に対する接着性が優れていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−62433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記耐久性を高める要素の1つとしてガラス転移温度が高いことが挙げられるが、特許文献1に開示されている組成物は、ガラス転移温度が80℃以下と低く、上記試験に見合った耐久性がなかった。
また、一般に表面抵抗値が低い材料は柔軟である傾向があるのに対し、ガラス転移温度が高いと組成物の硬化物が硬くなるため、帯電防止能と高いガラス転移温度による耐久性との両立は大変困難であった。
そこで、本発明は、硬化物において、帯電防止能と高いガラス転移温度とを両立させたインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に関する。
[1]ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、イオン性化合物(成分B)と、光ラジカル重合開始剤(成分C)とを含むインプリント成型用光硬化性樹脂組成物であって、
前記成分Aは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種のオリゴマー(成分A1)と、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー(成分A2)とを含み、
前記成分A1は、重量平均分子量が500〜50,000であり、
前記成分A中、前記成分A2が20〜90重量%であり、
前記成分A100重量部に対して前記成分Bが1〜20重量部であり、
粘度が1,000mPa・s以下であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
[2]前記成分A1が、ポリエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー又はその水素添加物である[1]のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
[3]硬化物のガラス転移温度(Tg)が85℃以上である[1]又は[2]のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
[4]前記成分Bがイオン液体である[1]〜[3]のいずれかに記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化物において、帯電防止能と高いガラス転移温度とを両立させたインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[用語の定義]
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方の意味を有する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方の意味を有する。
【0010】
[インプリント成型用光硬化性樹脂組成物]
インプリント成型用光硬化性樹脂組成物(以下、単に「光硬化性樹脂組成物」又は「組成物」ともいう)は、ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、イオン性化合物(成分B)と、光ラジカル重合開始剤(成分C)とを含むインプリント成型用光硬化性樹脂組成物であって、
前記成分Aは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種のオリゴマー(成分A1)と、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー(成分A2)とを含み、前記成分A1は、重量平均分子量が500〜50,000であり、前記成分A中、前記成分A2が20〜90重量%であり、前記成分A100重量部に対して前記成分Bが1〜20重量部であり、粘度が1,000mPa・s以下である
【0011】
(成分A)
成分Aは、ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマーである。ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマーは、ラジカル重合反応性の官能基を有する。ラジカル重合反応性の官能基は、不飽和二重結合含有基であれば特に限定されないが、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)又は(メタ)アクリロイル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0012】
成分Aは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より選択される少なくとも1種のオリゴマー(成分A1)と、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー(成分A2)とを含む。
【0013】
<ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より選択される1以上のオリゴマー(成分A1)>
成分A1は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より選択される1以上のオリゴマーである。成分A1は、インプリント成型硬化体を製造する過程において、基材密着性及び型剥離性を付与する成分であり、インプリント成型硬化体が付着した基材の反りを抑える成分である。
【0014】
<<ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー>>
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系又はこれらの組合せのポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。これらは、1種でも、2種以上の組合せでもよい。これらの中でも脂肪族系が好ましく、脂肪族系の中でもポリエン骨格を有するもの又はポリエン骨格を有するものの水素添加物(水添物)が好ましい。ポリエン骨格としては、ポリブタジエン及びポリイソプレンの骨格が挙げられる。
【0015】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、特開2008−260898号公報に記載されているような方法で、有機ジイソシアネートとヒドロキシル基を有する樹脂とを反応させた後、さらにヒドロキシル基を有する1〜5官能の(メタ)アクリレートとを反応して製造することができる。有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のジイソシアネートが挙げられ、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ジイソシアネート類が挙げられる。これらの中でも脂環式系のジイソシアネートが好ましい。
【0016】
ヒドロキシル基を有する樹脂としては、例えば両末端水酸基ポリアルキレン、両末端水酸基水素化ポリアルキレン、両末端水酸基ポリオール、両末端水酸基ポリカーボネート、両末端水酸基ポリエステル等が挙げられ、両末端水酸基水素化ポリアルキレンが好ましく、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、両末端水酸基水素化ポリイソプレンがより好ましい。
ヒドロキシル基を有する1〜5官能の(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、それらのアルキルオキサイド変性物等が挙げられる。
【0017】
<<エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー>>
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の全てのエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマーである。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の一部のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマー、すなわち、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含んでいてもよい。ここで、エポキシ樹脂として、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びその他のエポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、芳香族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種でも、2種以上の組合せでもよい。
【0018】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーである成分A1は、例えば、特開2002−105168号公報に記載されているような方法で、2〜5官能のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等とを反応して製造することができる。
【0019】
<<成分A1の重量平均分子量>>
成分A1のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、重量平均分子量が500〜50,000であり、1,000〜40,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した重量平均分子量である。また、成分A1が複数のオリゴマーからなる場合は、重量平均分子量は、各オリゴマーの値である。
【0020】
このような成分A1は、市販品を用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである成分A1の好ましい市販品として、UV−7550B、UV−3700B(日本合成化学社製)、UV−6630B(日本合成化学社製)、UV−3200B(日本合成化学社製)、UN−9000PEP、UN−9200A(根上化学社製)、UA−7100(新中村化学製)等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーである成分A1の好ましい市販品として、EB3700、EB3708(ダイセルオルネクス製)等が挙げられる。
【0021】
成分A1は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであるのが好ましく、ポリエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリエン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの水素添加物であることがより好ましい。成分A1は、1種でも、2種以上の組合せでもよい。
【0022】
<成分A2:環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
成分A2は、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーである。成分A2は、各成分の相溶化に寄与する成分である。さらに成分A2は、環構造を有することにより組成物の硬化物のガラス転移温度を上昇させる。環構造は、脂肪族の環構造及び芳香族の環構造が挙げられる。よって、成分A2は、脂環式(メタ)アクリレートモノマー及び芳香族(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらは2官能(メタ)アクリレートモノマーであることも好ましい。
【0023】
脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等が挙げられ、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが好ましい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、1種でも、2種以上の組合せでもよい。
【0024】
芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート(EO変性フェニルフェノール(メタ)アクリレートとも呼ばれる。)、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートとも呼ばれる。)、変性ビスフェノールAジメタクリレート(ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物ジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられ、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、1種でも、2種以上の組合せでもよい。ここで、「EO」とはエチレンオキシドを意味する。
【0025】
成分A2は、脂環式(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
成分A2は、1種でも、2種以上の組合せでもよく、単官能(メタ)アクリレートモノマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーとの組み合わせも好ましい。
【0026】
<その他のA成分>
A成分は、成分A1、成分A2以外の成分(成分A3及び成分A4)を含むことができる。そのような成分としては、ラジカル重合反応性の官能基を有するものであれば特に限定されないが、成分A3として、成分A1以外のラジカル重合反応性の官能基を有するオリゴマー、成分A4として、成分A2以外のラジカル重合反応性の官能基を有するモノマー等が挙げられる。なお、組成物は、A成分が、成分A1及び成分A2のみからなるものであってもよい。
【0027】
<<成分A3:成分A1以外のラジカル重合反応性の官能基を有するオリゴマー>>
成分A1以外のラジカル重合反応性の官能基を有するオリゴマーは、成分A1以外の(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。このような成分A3としてのオリゴマーは、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等のアクリレートオリゴマーが挙げられる。これらは、1種でも、2種以上の組合せもよい。
【0028】
<<成分A4:成分A2以外のラジカル重合反応性の官能基を有するモノマー>>
成分A2以外のラジカル重合反応性の官能基を有するモノマーは、成分A2以外の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。このような成分A4としてのモノマーは、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート;エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートとも呼ばれる。)、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート及びトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセロールトリ(メタ)アクリレート(EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレートとも呼ばれる。)、PO(プロピレンオキシド)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種でも、2種以上の組合せもよい。
【0029】
<成分B:イオン性化合物>
イオン性化合物としては、カチオンとアニオンとからなる化合物であれは、特に制限されないが、以下の構造を有するものが挙げられる。イオン性化合物を含有することで、組成物の硬化物が良好な帯電防止能を発揮する。
【化1】

(式中、R、R’、R”及びR’’’は、各々独立して、水素、ハロゲン特にフッ素により置換されていてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基又は複素環基であり、
は、各構造のカチオン部分のカウンターアニオンであり、好ましくは、BF、PF、SO、N(SOR)、Cl、Br(ここで、Rは、上記定義のとおりである)からなる群より選択され、より好ましくは、BF、PF、N(SOCF、SO3からなる群より選択される)
【0030】
イオン性化合物の中でも、イオン液体が好ましい。イオン液体は、液体状態で存在する塩である。イオン液体の種類は、融点が150℃以下のもの、好ましくは融点が100℃以下のもの、特に好ましくは常温(25℃、1気圧)で液体であるものであれば、特に制限はされない。
上記構造式の中で、Li以外はイオン液体である。
【0031】
イオン性化合物の例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド等のイミダゾリウム塩誘導体;3−メチル−1−プロピルピリジミウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド等のピリジニウム塩誘導体;メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルフォネート、テトラフェニルアンモニウムメタンスルフォネート等のアルキルアンモニウム誘導体;テトラブチルフォスフォニウムメタンスルフォネート等のホスホニウム塩誘導体;リチウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド等のリチウム塩誘導体、ポリアルキレングリコールと過塩素酸リチウムの複合体等の複合化導電性付与剤等を示すことができる。
【0032】
このような成分Bは、市販品を用いることができる。成分Bの好ましい市販品として、広栄化学工業社のIL−AP3等のIL−APシリーズ、IL−Aシリーズ、IL−Pシリーズ、IL−IMシリーズ、IL−MAシリーズ、日本カーリット社のCILシリーズ、三菱マテリアル電子化成社のMTOATFSI、EF−N115等が挙げられる。
【0033】
<成分C:光ラジカル重合開始剤>
光ラジカル重合開始剤は、光の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定されない。光ラジカル重合開始剤は、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン及び4−N,N’−ジメチルアセトフェノン類等のカルボニル基系光重合開始剤;ジフェニルジスルフィド及びジベンジルジスルフィド等のスルフィド系光重合開始剤;ベンゾキノン及びアントラキノン等のキノン系光重合開始剤;アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビスプロパン等のアゾ系光重合開始剤などの紫外光開始剤、並びに、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドなどの可視光開始剤が挙げられる。
【0034】
このような成分Cは、市販品を用いることができる。成分Cの好ましい市販品として、BASF社の、Irgacure184、Irgacure819等のIrgacure(登録商標)シリーズ、Darocur1173等のDarocur(登録商標)シリーズ、Lucirin TPO等のLucirin(登録商標)シリーズ、日本シイベルヘグナー社のESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0035】
光ラジカル重合開始剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は(メタ)アクリレートモノマーのラジカル反応において未硬化の要因となる酸素阻害を受けにくくするという観点から、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドからなる群より選択される1種又は2種が好ましく、2種が特に好ましい。
成分Cは、1種でも、又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
<その他の成分>
組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、シランカップリング剤、界面活性剤、重合禁止剤、光増感剤、酸化防止剤、連鎖移動剤及び溶剤等を更に含むことができる。
【0037】
離型性を改善するために界面活性剤等を加える場合は、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0038】
溶剤は、組成物の粘度を調整するための成分である。溶剤は、成分A、成分B、成分C及び、溶剤以外の任意成分と非反応性の成分であり、ケトン類、アルコール類、環状エーテル類及びエステル類等が挙げられる。組成物は、溶剤を含まないのが好ましい。
【0039】
(組成及び特性等)
<粘度>
組成物は、溶剤を含まない場合の粘度が、1,000mPa・s以下である。溶剤を含まない組成物の粘度が、前記した範囲であれば、基材への密着性が良好である。さらには、特にロールtoロール方式の場合において、組成物の各成分が基材から流れ出て、装置を汚染してしまうという不具合を低減することができる。溶剤を含まない組成物の粘度は、50〜800mPa・sであるのがより好ましく、100〜500mPa・sであるのが特に好ましい。粘度は、粘度計(RE105U:東機産業(株)製)を用い、大気圧下、25℃で、適切なコーンプレートと回転速度を選定して測定した値である。
【0040】
<組成>
成分Aを100重量%とした時、成分A中、成分A1及び成分A2の合計は、基材密着性と型剥離性を両立させる観点から、30〜100重量%であるのが好ましく、50〜100重量%であるのがより好ましく、75重量%〜100重量%が更に好ましい。残余は、成分A3及びA4である。
基材密着性と高いガラス転移温度を両立させ、基材密着性をより安定にする観点から、成分Aを100重量%とした時、成分A中、成分A2は、20〜90重量%であり、30〜80重量%が好ましく、45〜75重量%が特に好ましい。
【0041】
成分Aは、組成物の主剤として、組成物中、好ましくは80〜98.5重量%であり、より好ましくは84〜98重量%であり、特に好ましくは90〜95重量%である。
【0042】
成分Bは、表面抵抗値及び硬化物の硬さ、透明性などの観点から、成分Aの100重量部に対して、1〜20重量部であり、2〜15重量部が好ましく、5〜10重量部が特に好ましい。
【0043】
成分Cは、硬化速度、粘度などの観点から、成分Aの100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部が特に好ましい。
【0044】
但し、組成物において、基材密着性と型剥離性を両立させ、基材密着性の低下の抑止、インプリント成型する過程での界面活性剤の分離によるインプリント成型硬化体の透明性の低下の抑止、界面活性剤のブリードによる他の部材への影響の抑止の観点から、界面活性剤の含有量は、組成物中、3重量%以下であるのが好ましく、1重量%以下であるのがより好ましい。また、組成物は、界面活性剤を含まないのが特に好ましい。
【0045】
<ガラス転移温度(Tg)>
組成物の硬化物のガラス転移温度は85℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度は、実施例記載の方法で測定した値である。ガラス転移温度が上記範囲であると、高温下での耐久性に優れる。
ガラス転移温度を上記範囲とするためには、本発明の内容であれば特に制限されないが、成分A2を本発明の量で用いることが挙げられ、好ましくは成分A1が環構造を有すること、及び/又は成分A2が環構造を有するメタクリレートモノマーであることが挙げられる。
【0046】
<表面抵抗値>
組成物の硬化物の表面抵抗値は、1×10E13Ω/□以下であることが好ましく、5×10E12Ω/□以下であることがより好ましく、3×10E12Ω/□以下であることがさらに好ましい。表面抵抗値は、実施例記載の方法で測定した値である。表面抵抗値が上記範囲であると、帯電防止能に優れる。
表面抵抗値は、組成物に成分Bを配合することを主な理由として、上記範囲とすることができる。
【0047】
〔インプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法〕
インプリント成型用光硬化性樹脂組成物は、成分A、成分B及び任意成分を混合する工程含む製造方法により得られる。
【0048】
〔インプリント成型硬化体の製造方法〕
インプリント成型硬化体の製造方法は、特に限定されないが、特開2012−214716号公報に記載された方法が挙げられる。具体的には、インプリント成型硬化体の製造方法は、下記工程(1)〜(4):
(1)前記したインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程、
(2)前記基材上に塗布されたインプリント成型用光硬化性樹脂組成物に、微細凹凸パターンを有するスタンパを圧接する工程、
(3)工程(2)の後、前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を光硬化させてインプリント成型硬化体を得る工程、及び、
(4)前記インプリント成型硬化体を前記スタンパから剥離する工程を含む。
【0049】
インプリント成型硬化体の製造方法では、組成物が工程(1)〜(4)を含む製造方法で使用されることによって、インプリント成型体の基材密着性と型剥離性が両立し、基材密着性、好ましくはインプリント成型硬化体上に形成された金属膜の密着性に優れ、透明性に優れ、基材の反りが最小限である、インプリント成型硬化体を得ることができる。
【0050】
(工程(1))
工程(1)は、インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程である。工程(1)により、インプリント成型用光硬化性樹脂組成物層を有する基材が得られる。工程(1)で形成される、インプリント成型用光硬化性樹脂組成物層は、工程(2)においてパターン受容体となる。
【0051】
基材は、光透過性基材及び非光透過性基材が挙げられる。光透過性基材は、石英、ガラス、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の光透過性ポリマー基材、その他プラスチック基材等の半導体作製基材等が挙げられる。非光透過性基材は、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Fe等の金属基材、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の非光透過性ポリマー基材、TFTアレイ基材、PDPの電極板、IZO、ITO又は金属などの導電性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーン等の半導体作製基材等が挙げられる。基材の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0052】
組成物を基材に塗布する方法は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法等が挙げられる。
【0053】
組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmであるのが好ましい。
【0054】
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)で得られた基材上に塗布されたインプリント成型用光硬化性樹脂組成物に、微細凹凸パターンを有するスタンパを圧接する工程である。具体的には、工程(1)で得られた基材上のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物層に金型を圧接し、金型パターンを転写する加工を行う。工程(2)により、基材上に、組成物からなる硬化前の微細凹凸パターンが形成される。
【0055】
金型は、転写されるべきパターンを有する金型が使われる。金型は、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成されている。
【0056】
金型は、光透過性金型及び非光透過性金型が挙げられる。光透過性金型は、ガラス、石英、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が挙げられる。非光透過性金型は、例えば、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Fe、真鍮等の金属金型、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーン等の金型等が例示される。
【0057】
金型の形状は板状金型、ロール状金型等のいずれでもよい。ロール状金型は、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0058】
金型は、組成物と金型との剥離性をより向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。このような離型処理を行うための離型剤は、シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤、例えば、ダイキン工業製、オプツールDSXや住友スリーエム製、Novec EGC−1720等の市販品が挙げられる。
【0059】
インプリント成型硬化体の製造方法を用いてインプリント成型硬化体の製造を行う場合、通常、金型の圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。金型圧力を10気圧以下とすることにより、金型や基材が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。金型の圧力は、金型凸部の組成物の残膜が少なくなる範囲で、金型転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0060】
なお、工程(1)で用いられる基材及び工程(2)で用いられる金型の少なくとも一方は、光透過性の材料である。工程(1)で用いられる基材が光透過性基材である場合、工程(3)において、基材の裏面から光を照射し、組成物を硬化させることができる。また、工程(2)で用いられる金型が光透過性金型である場合、工程(3)において、金型の裏面から光を照射し、組成物を硬化させることができる。
【0061】
(工程(3))
工程(3)は、工程(2)の後、前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を光硬化させてインプリント成型硬化体を得る工程である。
【0062】
組成物を硬化させる光としては、特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、メタルハライドランプ、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
【0063】
露光量は、光硬化を十分に進行させ、安定した硬度を得る観点から、500〜6,000mJ/cmの範囲にすることが好ましい。
【0064】
(工程(4))
工程(4)は、前記インプリント成型硬化体をスタンパから剥離する工程である。工程(4)により、インプリント成型硬化体の製造方法によるインプリント成型硬化体が得られる。
【0065】
(好ましい態様)
インプリント成型硬化体の製造方法は、工程(1)〜工程(4)を、それぞれ単独で又は組み合わせで、複数行うことにより、積層化や多重パターニングもできる。また、インプリント成型硬化体の製造方法は、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。インプリント成型硬化体の製造方法は、更に、インプリント成型硬化体上に金属膜を形成する工程を含んでいてもよい。
【0066】
インプリント成型硬化体の製造方法は、溶剤を含まない組成物の粘度が前記範囲にある場合、大量に高速でこの工程が実施されるロールtoロール方式に適用されることが好ましい。
【0067】
〔インプリント成型硬化体〕
組成物の硬化物は、組成物をインプリント成型して得られる硬化物である。組成物の硬化物を電子機器に組み込むことによって、組成物の硬化物を備える電子機器を得ることができる。
【0068】
組成物は、例えば、半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサ、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルタ、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用できる。
【0069】
また、組成物は、光硬化性転写層が微細凹凸パターンを有するスタンパ等の金型との剥離性、及び製品の硬化した光硬化性樹脂との剥離性が良好で、且つ基材フィルムとの密着性が良好であるので、金型のパターンを忠実に転写することができ、樹脂の付着により金型を損傷することが無く、且つ膜自立性が優れた光硬化性転写シートを形成できる。このため、光硬化性樹脂組成物は、光ナノインプリントプロセス法等の微細な凹凸パターンの形成方法により、金型のパターンを忠実に形成することができ、高価なスタンパを損傷することが無い。更に、光硬化性転写シートの膜自立性が良好であるため、シートのハンドリング性が優れており、連続製造する場合のタクト(処理に必要な時間)を短縮することで、生産性の向上が可能となり、コスト低減を図ることができる。従って、凹凸パターンの形成方法により、電子ディスプレイリブ、電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)を有利に得ることができる。
【0070】
組成物の硬化物を備える電子機器としては、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、蛍光表示管、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ及び発光ダイオードなどの平面ディスプレイが挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0072】
〔測定方法及び評価条件〕
(1)粘度
粘度は、粘度計(RE105U:東機産業(株)製)を用い、大気圧下、25℃で、適切なコーンプレートと回転速度を選定して、液状の光硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。なお、実施例及び比較例はいずれも溶剤を含まない組成物であった。
【0073】
(2)Tg(ガラス転移温度)
メタルハライドランプ(アイグラフィックス製、M06−L31)にて6000mJ/cmのUVを光硬化性樹脂組成物に照射して、0.5×5×50mmの板状硬化体を作製し、動的粘弾性を測定し(SII社製、DMS−6100)、E’(貯蔵弾性率)及びE’’(損失弾性率)を求めた。tanδ=E’’/E’よりtanδのピークトップ温度をTgとした。
【0074】
(3)表面抵抗値
メタルハライドランプ(アイグラフィックス製、M06−L31)にて6000mJ/cmのUVを光硬化性樹脂組成物に照射して、1×50×50mmの板状硬化体を作製し、極超絶縁計(日置電機社製)にて表面抵抗値を測定した。
【0075】
[合成例1:水添ポリブタジエン骨格ウレタンアクリレート(オリゴマーA)の製造]
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコに、両末端水酸基水素化ポリブタジエン(GI−3000、日本曹達株式会社製、数平均分子量3,000、ヨウ素価21、水酸基価25〜35mgKOH/g)300g(水酸基価を30mgKOHとして計算した分子量:0.080モル)、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.1g、錫触媒としてジブチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、L101)0.1gを入れた。80℃に昇温後、イソホロンジイソシアネート(デスモデュールI、住化バイエルウレタン社製)30.2g(0.136モル)を1時間かけて均一滴下した。滴下終了後、80℃で3時間反応を行った。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4−HBA、日本化成株式会社製)11.5g(0.080モル)を追加した。80℃で4時間反応を行った後、FT−IRにてイソシアネートの吸収波長(2270nm)での吸収が消失したことを確認して反応を終了し、水添ポリブタジエンとイソホロンジイソシアネートを繰り返し単位として有し、末端に重合性不飽和結合を有する平均官能基数2のポリウレタンアクリレートオリゴマーを得た。得られた水添ポリブタジエン骨格ポリウレタンアクリレートの重量平均分子量は8,000であった。なお、重量平均分子量はGPCによって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値である。
【0076】
[合成例2:水添ポリイソプレン骨格ウレタンアクリレート(オリゴマーB)の製造]
両末端水酸基水素化ポリブタジエンの代わりに両末端水酸基水素化ポリイソプレン(エポール、出光興産株式会社製、数平均分子量2500)を用い、4−ヒドロキシブチルアクリレートを4−ヒドロキシブチルアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの併用にした以外は合成例1と同様にして、水添ポリイソプレンとイソホロンジイソシアネートを繰り返し単位として有し、末端に重合性不飽和結合を有する平均官能基数2.4のポリウレタンアクリレートオリゴマーを得た。得られた水添ポリイソプレン骨格ポリウレタンアクリレートの重量平均分子量は15,000であった。なお、重量平均分子量はGPCによって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値である。
【0077】
表1中略称で記載されている成分は以下の通りである。
なお、表1中、オリゴマーA及びオリゴマーB以外の成分A1の重量平均分子量は、カタログ値である。
オリゴマーA:合成例1で製造した水添ポリブタジエン骨格ウレタンアクリレート
UN−7550B:日本合成社製、ウレタンアクリレート
オリゴマーB:合成例2で製造した水添ポリイソプレン骨格ウレタンアクリレート
UV3700B:日本合成化学化学工業社製、ポリエーテル骨格ウレタンアクリレート
EB3700:ダイセルオルネクス社製 ビスフェノールA型エポキシアクリレート
IB:新中村化学社製 イソボルニルメタクリレート
DCP−A:共栄社化学社製 ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
HO−MS:共栄社化学社製 2−メタクリロイルオキシエチル−コハク酸
HO−250:共栄社化学社製 2−ヒドロキシエチルアクリレート
L−A:共栄社化学社製 ラウリルアクリレート
IL−AP3:広栄化学工業社製 ホスホニウムカチオン系イオン液体
CIL−312:日本カーリット社製 N−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド
MTOAFS1:三菱マテリアル電子化成社製 メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド
EF−N115:三菱マテリアル電子化成社製 リチウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド
I−184:BASF社製 Irgacure184 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン
I−819:BASF社製 Irgacure819 ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
【0078】
(1)実施例1
成分A1として、オリゴマーAの30重量部、成分A2として、IBの70重量部、及び、成分Bとして、IL−AP3の5重量部と、成分Cとして、成分I−184の3重量部とI−819の0.5重量部と、成分A4としてHO−MSの5重量部とを、全成分の合計が0.1kgである量で、手動にて撹拌した後自転・公転ミキサーあわとり錬太郎(THINKY社製、品番ARV−200)に投入し、1800rpm、室温25℃で3分間混錬して排出したものを実施例1のインプリント用光硬化性樹脂組成物とした。
【0079】
(2)実施例2〜10及び比較例1〜3
表1に記載される重量部にて、全成分の合計で0.1kgを、実施例1と同じ条件で混錬して排出したものをそれぞれの例のインプリント用光硬化性樹脂組成物とした。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から、本発明のインプリント用光硬化性樹脂組成物は、ガラス転移温度が85℃以上と高いながら、表面抵抗値が低く帯電防止能を有することがわかった。
実施例1〜10と比較例1〜3とを比較すると、組成物が成分Bを含まないと表面抵抗値が上がることがわかった。比較例3は、成分A2の量が20重量%未満であってガラス転移温度が低く、硬化物が比較的柔軟であるため、表面抵抗値は比較例1及び2よりも低くなっているものと考えられる。