(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一実施形態>本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、「電流の量を徐々にまたは段階的に減少/増加させる」とは、光源に印加する電流量の減少または増加を開始して(印加電流量が定格値よりも少なくなり、または0よりも多くなって)から、その印加電流量が0または定格値に到達するまでの間に所定の時間を要することをいう。即ち、印加電流量がステップ的に定格値から0に減少し、またはステップ的に0から定格値に増加することは、「電流の量を徐々にまたは段階的に減少/増加させる」ことに含まれない。また、「電流の量を複数段階に切り替えることができる」とは、少なくとも、光源に印加する電流量を、定格値と、定格値よりも少ないが0ではない値との二段階以上の量に制御できることをいう。即ち、印加電流量を、定格値と0との間の中間的な値に安定させることができることをいう。本実施形態の灯具は、例えば車両Cの前照灯として用いられる。
図1に示すように、一般の自動車Cは、遠方正面を指向し路面CLと平行に光を放つ走行用前照灯Hと、前方距離40m辺りの路面CLを指向し斜め下方に光を放つすれ違い用前照灯Lとを両備しており、走行用前照灯Hを点灯しすれ違い用前照灯Lを消灯している状態と、すれ違い用前照灯Lを点灯し走行用前照灯Hを消灯している状態とを切り替えることが可能となっている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の灯具は、基板(放熱板を兼ねることがある)1の下向面に前後方向に沿って離間させて設置された第一の光源3及び第二の光源4と、これら第一の光源3及び第二の光源4の各々から下方に向けて放射される光束H、Lを前方に向けて反射させるリフレクタ2とを主たる構成要素とする。
【0017】
本実施形態において、第一の光源3は、走行用前照灯となる第一の照明光Hを出力する。そして、第二の光源4は、すれ違い用前照灯となる第二の照明光Lを出力する。第一の光源3及び第二の光源4は、それぞれ発光ダイオードである。第一の光源3及び第二の光源4は、互いに独立に点灯/消灯させることが可能である。各光源3、4から出射する光束の量の制御は、当該光源3、4に印加する平均の電流量をFET(Field Effect Transistor)その他の半導体スイッチング素子を介して増減させるPWM(Pulse Width Modulation)制御により実現できる。
図2に示しているように、本実施形態の灯具では、第一の光源3及び第二の光源4の組が、基板1の下向面に、左右方向に沿って間欠的に複数(図示例では、三組)配列されている。
【0018】
図3に示しているように、第一の光源3から下方に出射する第一の照明光H、及び第二の光源4から下方に出射する第二の照明光Lはそれぞれ、凹面状をなすリフレクタ2の正面側の反射面に当たり、同一のリフレクタ2により反射されて前方へと向かう。
【0019】
第一の照明光Hの光軸(実線で表す)は、リフレクタ2で反射された後、路面CLと平行な向き即ち略水平となる。これに対し、第二の照明光Lの光軸(鎖線で表す)は、リフレクタ2の反射面における、第一の照明光Hの光軸が当たる箇所の近傍に当たる。そして、リフレクタ2で反射された後、略水平な第一の照明光Hの光軸に対して相対的に下方に傾斜した方向を向く。
図4に示すように、本実施形態の灯具から放たれる照明光H、Lを車両Cに正対するスクリーンに投影して同車両Cの運転席から見たとき、第二の照明光Lの照明範囲は、第一の照明光Hの照明範囲よりも下方に偏倚する。
【0020】
走行用前照灯Hを点灯しすれ違い用前照灯Lを消灯した状態から、すれ違い用前照灯Lを点灯し走行用前照灯Hを消灯する状態へと切り替える際には、
図5に示すように、第一の光源3に印加する電流の量(PWM制御による印加電流のDUTY比)を徐々に減少させて第一の光源3が出力する光束の量を徐々に減らしながら、第二の光源4に印加する電流の量を徐々に増加させて第二の光源4が出力する光束の量を徐々に増やしてゆく。第一の光源3に対する印加電流量の減少の期間と、第二の光源4に対する印加電流量の増加の期間とは、少なくとも一部で重なり合う。
【0021】
第一の光源3の印加電流量を点灯時の定格値から0まで減少させるのに要する時間の長さ、及び第二の光源4の印加電流量を0から点灯時の定格値まで増加させるのに要する時間の長さは、それぞれ100ミリ秒ないし700ミリ秒の範囲内の値に設定する。このような制御により、従来のハロゲンランプを使用した前照灯と同等の切り替わり感を搭乗者に与え、走行用前照灯Hが即時に消灯しすれ違い用前照灯Lが即時に点灯することで車両Cの搭乗者に与える負担、具体的には搭乗者の注視点が遠方から手前方へと移動する過程で搭乗者の弁別視野が急に暗くなる問題を回避することが可能である。換言すれば、発光ダイオード特有の高速応答性の影響を緩和することができる。
【0022】
また、すれ違い用前照灯Lを点灯し走行用前照灯Hを消灯した状態から、走行用前照灯Hを点灯しすれちがい用前照灯Lを消灯する状態へと切り替える際には、第二の光源4に印加する電流の量を徐々に減少させて第二の光源4が出力する光束の量を徐々に減らしながら、第一の光源3に印加する電流の量を徐々に増加させて第一の光源3が出力する光束の量を徐々に増やしてゆけばよい。このときにも、第二の光源4に対する印加電流量の減少の期間と、第一の光源3に対する印加電流量の増加の期間とは、少なくとも一部で重なり合う。
【0023】
しかして、第二の光源4の印加電流量を点灯時の定格値から0まで減少させるのに要する時間の長さ、及び第一の光源3の印加電流量を0から点灯時の定格値まで増加させるのに要する時間の長さは、それぞれ100ミリ秒ないし700ミリ秒の範囲内の値に設定する。このような制御により、すれ違い用前照灯Lが即時に消灯し走行用前照灯Hが即時に点灯することで車両Cの搭乗者に与える負担、具体的には搭乗者の注視点が手前方から遠方へと移動する過程で搭乗者の弁別視野が急に暗くなる問題を回避することが可能である。
【0024】
第一の光源3に印加する電流量と、第二の光源4に印加する電流量との総和は、何れかの光源3、4のみを点灯させるときに当該光源3、4に印加する電流量の定格値の100%を超えないようにすることが望ましい。例えば、第一の光源3の印加電流量が定格値の30%である時点において、第二の光源4の印加電流量は定格値の70%またはそれよりも小さい値とする。両光源3、4に印加する電流量の総和が常に定格値の100%を超えないように制御すれば、両光源3、4による総発熱量を抑制でき、総発熱量が灯具の放熱性能を超えて光源である発光ダイオード3、4にダメージを与えることを予防することができる。灯具には、光源3、4の何れか一方が点灯し続ける場合に必要となる放熱性能(即ち、両光源3、4が同時に点灯し続けると仮定した場合に必要となる放熱性能よりも少ない放熱性能)を備えればよいこととなり、構造の簡便化及び低コスト化に資する。尤も、短時間であれば、第一の光源3に印加する電流量と第二の光源4に印加する電流量との総和が定格値の100%を超えることを妨げない。
【0025】
本実施形態では、走行用前照灯Hの光源となる第一の発光ダイオード3と、すれ違い用前照灯Lの光源となる第二の発光ダイオード4と、これら第一の発光ダイオード3及び第二の発光ダイオード4の各々から放射される光束を前方に向けて反射させるリフレクタ2とを具備し、前記第一の発光ダイオード3と前記第二の発光ダイオード4とのうちの一方を点灯させ他方を消灯している状態から他方を点灯させ一方を消灯する状態へと切り替える際、一方に印加する電流の量を所定時間をかけて定格値から徐々に減少させながら他方に印加する電流の量を所定時間をかけて定格値まで徐々に増加させる灯具を構成した。
【0026】
本実施形態によれば、発光ダイオード3、4を光源として用いた走行用前照灯H及びすれ違い用前照灯Lの点灯/消灯の切り替えの際に搭乗者の弁別視野が急に暗くなる問題を緩和ないし解消することができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、第一の発光ダイオード3と第二の発光ダイオード4とのうちの一方を点灯させ他方を消灯している状態から他方を点灯させ一方を消灯する状態へと切り替える際、一方に印加する電流の量を所定時間をかけて定格値から徐々に減少させながら他方に印加する電流の量を所定時間をかけて定格値まで徐々に増加させていたが、
図6に示すように、一方に印加する電流の量を所定時間をかけて定格値から段階的に(例えば、定格値の10%ずつステップ的に)減少させながら他方に印加する電流の量を所定時間をかけて定格値まで段階的に増加させるようにしても構わない。このときにも、一方の印加電流量の減少の期間と、他方の印加電流量の増加の期間とは、少なくとも一部で重なり合う。また、一方の印加電流量を点灯時の定格値から0まで減少させるのに要する時間の長さ、及び他方の印加電流量を0から点灯時の定格値まで増加させるのに要する時間の長さは、それぞれ100ミリ秒ないし700ミリ秒の範囲内の値に設定する。
【0028】
あるいは、
図7に示すように、第一の発光ダイオード3と第二の発光ダイオード4とのうちの一方を点灯させ他方を消灯している状態から他方を点灯させ一方を消灯する状態へと切り替える際に、一方に印加する電流を遮断しないままで他方に定格値の電流を印加する状態を所定時間、例えば100ミリ秒ないし700ミリ秒の間維持することも考えられる。要するに、一方を消灯する前に他方を点灯させ、両光源3、4がともに点灯している期間を短時間であるが作り出すのである。これにより、弁別視野が非常に暗くなる瞬間を作らないようにすることができる。この場合には、一方に印加する電流の量をステップ的に定格値から0まで減少させることが許されるし、他方に印加する電流の量をステップ的に0から定格値まで増加させることも許される。
【0029】
<第二実施形態>続いて述べる第二実施形態は、走行用前照灯が配光可変型前照灯H1、H2、H31、H32、H51、H52、H6、H7、H8となっている態様のものである。以降、第一実施形態との相違点を中心に述べる。第一実施形態と共通する要素については、説明を割愛する。
【0030】
本実施形態の車両Cの走行用前照灯は、車両Cの前端部における左右の側部にそれぞれ複数個の光源セグメントを設置してなるものである。各セグメントは、照明光を放射する光源である発光ダイオード3と、光源3から放射される照明光を車両Cの前方に向けるリフレクタ2とを要素とする。各セグメントの光源3は、互いに独立に点灯/消灯させることが可能である。光源3から放たれる光束の量の制御は、例えば、当該光源に印加する平均の電流量をFETその他の半導体スイッチング素子を介して増減させるPWM制御により実現できる。
【0031】
図8ないし
図12に、走行用前照灯の各セグメントの配光パターンの一例を示す。なお、図示例の配光パターンは、左側通行を採用する国または地域を想定したものであり、右側通行を採用する国または地域に適用する際にはこれを左右反転させる必要がある。
【0032】
従来の車両の走行用前照灯では、車両Cの搭乗者から見て左側に設置したセグメントが主として車両中心線よりも左方の領域を照らし、右側に設置したセグメントが主として車両中心線よりも右方の領域を照らしていた。これに対し、本実施形態の走行用前照灯では、車両Cの搭乗者から見て左側に設置したセグメントが車両中心線よりも右方の領域を照らし、右側に設置したセグメントが車両中心線よりも左方の領域を照らすように配光している。
【0033】
詳述すると、搭乗者から見て左側に設置した第一セグメント、第二セグメント及び第三セグメントのうち、第一セグメントは、自車線CLに沿った前方を照明する。
図9に示す例に則して述べると、第一セグメントから放たれる照明光H1を車両Cに正対する(車両Cの前方10mの距離に設立した)スクリーンに投影して運転席から(車両Cの前方を向いて)見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aと車両Cの前端部との交点を基点として右方に少しく偏倚した角度から左方に偏倚した角度までの領域が、その照明光H1の照射範囲に含まれる。
【0034】
第二セグメントは、自車線CLよりも寧ろ対向車線OLを照明する。第二セグメントから放たれる照明光H2を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから右方に偏倚した領域が、その照明光H2の照射範囲に含まれる。
【0035】
第三セグメントは、運転席から見て、第二セグメントが照明する領域よりもさらに右方の領域を照明する。その光軸は、車両Cの前方100m超の地点の対向車線OLの路肩の辺りを指向する。第三セグメントから放たれる照明光H31、H32を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから右方により偏倚した領域が、その照明光H31、H32の照射範囲に含まれる。第二セグメント及び第三セグメントの光軸は、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右方を指向している。これら第二セグメント及び第三セグメントは、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右側(特に、対向車線OL)に存在する障害物を照明するものであり、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左側(特に、自車線CL及びその路肩)に存在する障害物を積極的に照明しようとしていない。
図8に示しているように、第二セグメント及び第三セグメントは、搭乗者から見て車両Cの左側端よりも左方に照明光H2、H31、H32を照射しない。なお、第三のセグメントは二個の光源3を有しており、一方の光源3から出射する照明光H31は当該セグメントと同等の高さに位置する水平面(路面CLと平行な面)HLよりも上方の領域を照明し、他方の光源3から出射する照明光H32は当該セグメントと同等の高さに位置する水平面HLよりも下方の領域を照明する。つまり、第三セグメントによる照明範囲は、水平面HLを境として上下に二分割される。
【0036】
搭乗者から見て右側に設置した第五セグメント、第六セグメント、第七セグメント及び第八セグメントのうち、第五セグメントは、運転席から見て大きく左方に偏倚した領域を照明する。その光軸は、車両Cの前方100m超の地点の自車線CLの路肩の辺りを指向する。
図12に示す例に則して述べると、第五セグメントから放たれる照明光H51、H52を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から(車両Cの前方を向いて)見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから左方に偏倚した領域が、その照明光H51、H52の照射範囲に含まれる。なお、第五のセグメントは二個の光源3を有しており、一方の光源L1から出射する照明光H51は当該セグメントと同等の高さに位置する水平面HLよりも上方の領域を照明し、他方の光源L2から出射する照明光H52は当該セグメントと同等の高さに位置する水平面HLよりも下方の領域を照明する。つまり、第三セグメントによる照明範囲は、水平面HLを境として上下に二分割される。
【0037】
第六セグメントは、運転席から見て、第五セグメントが照明する領域よりはやや右方即ち車両中心線寄りの領域、車両Cの前方100m程度の地点までの自車線CLの左半部を含む領域を照明する。第六セグメントから放たれる照明光H6を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから左方に偏倚した領域が、その照明光H6の照射範囲に含まれる。
【0038】
第七セグメントは、運転席から見て、第六セグメントが照明する領域よりもやや右方、自車線CLの大半部を含む領域を照明する。第七セグメントから放たれる照明光H7を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aから左方に偏倚した領域が、その照明光H7の照射範囲に含まれる。第五セグメント、第六セグメント及び第七セグメントの光軸は、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左方を指向している。これら第五セグメント、第六セグメント及び第七セグメントは、車両中心線を含む鉛直面Aよりも左側(特に、自車線CL及びその路肩)に存在する障害物を照明するものであり、車両中心線を含む鉛直面Aよりも右側(特に、対向車線OL及びその路肩)に存在する障害物を積極的に照明しようとしていない。
図11に示しているように、第五セグメント、第六セグメント及び第七セグメントは、搭乗者から見て車両Cの右側端よりも右方に照明光H51、H52、H6、H7を照射しない。
【0039】
並びに、第八セグメントは、自車線CLに沿った前方を照明する。第八セグメントから放たれる照明光H8を車両Cに正対するスクリーンに投影して運転席から見たとき、車両中心線を含み車両Cの進行方向と平行な鉛直面Aと車両Cの前端部との交点を基点として左方に少しく偏倚した角度から右方に偏倚した角度までの領域が、その照明光H8の照射範囲に含まれる。
【0040】
図10に示すように、第一セグメント、第二セグメント、第六セグメント、第七セグメント及び第八セグメントの光軸は、水平方向即ち路面CLと平行な方向に設定する。これらセグメントの光源3が放つ照明光H1、H2、H6、H7、H8は、既存の走行用前照灯と同様に車両Cの前方そして無限遠方を正射する。これに対し、すれ違い用前照灯を構成する第四セグメントの光軸は斜め下方を指向しており、当該セグメントの光源4が放つ照明光L4は既存のすれ違い用前照灯と同様に前方距離40m辺りの路面CLを照明する。
【0041】
なお、車両Cの搭乗者から見て最も左右の外側方を照明するセグメント、即ち対向車線OLの路肩を指向して照明光H31、H32を照射する第三のセグメント、及び自車線CLの路肩を指向して照明光H51、H52を照射する第五のセグメントは、既に述べた通り、それぞれ複数の光源3を具備している。そして、そのうちの一方の光源3が放つ照明光H31、H51は、当該セグメントと同等の高さに位置する水平面HLよりも上方の領域を照明し、他方の光源3が放つ照明光H32、H52は、当該セグメントと同等の高さに位置する水平面HLよりも下方の領域を照明する。
【0042】
本実施形態における車両Cの配光可変型前照灯システムの制御を司る電子制御装置(Electronic Control Unit)は、車両Cの前方を撮影することのできる車載カメラ(イメージセンサ)で撮影した動画像を解析し(当該画像内に現れる対向車の前照灯や先行車の尾灯、歩行者等を検出して)、対向車線OLを走行する対向車や、自車線CLを走行する先行車等の存在を認識する。そして、その対向車や先行車等に対して照射されることとなる照明光H1、H2、H6、H7、H8を適時消灯し、または当該照明光H1、H2、H6、H7、H8の光束の量を平常よりも減光しながら、それ以外の照明光H1、H2、H6、H7、H8を点灯させた状態に維持する。
【0043】
加えて、自車線CLの路肩に隣接する歩道上を通行する歩行者や道路標識が存在するときには、第三セグメントの照明光H32による自車線CLの路肩側の照明を維持しながら、照明光H31を消光または減光することで、自車線CL側の歩道上の歩行者の眩惑を防止し、あるいは照明光H31が自車線CL側の道路標識に当たって反射し搭乗者の目に入る問題を回避する。
【0044】
さらに、対向車線OL上を走行する対向車Oや、対向車線OLの路肩に隣接する歩道上を通行する歩行者が存在するときには、第五のセグメントの照明光H52による対向車線OLの路肩側の照明を維持しながら、照明光H51を消光または減光することで、対向車Oの搭乗者や対向車線OL側の歩道上の歩行者の眩惑を防止する。
【0045】
本実施形態の車両Cのすれ違い用前照灯は、自車線CLに沿った前方を照明する。
図8及び
図10に示すように、すれ違い用前照灯となる第四の光源セグメントの光源4から放たれる照明光L4を車両Cに正対するスクリーンに投影して同車両Cの運転席から見たとき、すれ違い用前照灯L4の照明範囲は、走行用前照灯H1、H2、H31、H32、H51、H52、H6、H7、H8の照明範囲よりも下方に偏倚する。
【0046】
本実施形態において、走行用前照灯H1、H2、H31、H32、H51、H52、H6、H7、H8が備える複数のセグメントのうちの一部、例えば照明光H1及び/または照明光H8の光源3と、すれ違い用照明灯L4の光源4との位置関係は、
図2及び
図3に示しているものと同様である。
【0047】
しかして、本実施形態では、その照明光H1及び/または照明光H8の光源である発光ダイオード3に印加する電流の量を複数段階に切り替えることができ、なおかつ、すれ違い用前照灯L4の光源である発光ダイオード4に印加する電流の量を複数段階に切り替えることができるようにしている。
【0048】
これにより、前者の照明光H1、H8と後者の照明光L4とを同時に点灯させるとともに、前者の照明光H1、H8と後者の照明光L4とが合わさった照明光により路面CL上のどの領域を照明するのかを段階的に調整することが可能となる。例えば、前者の照明光H1、H8の光源3に印加する電流量を点灯時の定格値の80%に設定し、後者の照明光L4の光源4に印加する電流量を点灯時に定格値の20%に設定することで、車両Cからより遠い領域への配光を重視する遠方配光重視モードを具現できる。また、前者の照明光H1、H8の光源3に印加する電流量を点灯時の定格値の30%に設定し、後者の照明光L4の光源4に印加する電流量を点灯時に定格値の70%に設定することで、車両Cにより近い領域への配光を重視する近傍配光重視モードを具現できる。つまるところ、ハイビームとロービームとの中間の状態、いわば「ミドルビーム」を実現できるのである。
【0049】
本実施形態では、走行用前照灯H1、H8の光源でありかつ配光可変型前照灯の要素でもある第一の発光ダイオード3と、すれ違い用前照灯L4の光源となる第二の発光ダイオード4と、これら第一の発光ダイオード3及び第二の発光ダイオード4の各々から放射される光束を前方に向けて反射させるリフレクタ2とを具備し、前記第一の発光ダイオード3に印加する電流の量を複数段階に切り替えることができ、かつ前記第二の発光ダイオード4に印加する電流の量を複数段階に切り替えることができる灯具を構成した。
【0050】
本実施形態によれば、第一の発光ダイオード3から出力される(原則として路面CLと平行な水平方向、無限遠方を指向する走行用前照灯H1、H8となる)光束の量が多く第二の発光ダイオード4から出力される(路面CLに向かう下方を指向するすれ違い用前照灯L4となる)光束の量が少ない状態や、第一の発光ダイオード3から出力される光束の量が少なく第二の発光ダイオード4から出力される光束の量が多い状態といった、ハイビームとロービームとの中間的な状態を作り出すことが可能となる。ひいては、発光ダイオード3、4を光源として用いた走行用前照灯H1、H8及びすれ違い用前照灯L4の点灯/消灯の切り替えの際に搭乗者の弁別視野が急に暗くなる問題を緩和ないし解消することができる。
【0051】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、第二実施形態に第一実施形態の特徴を組み合わせてもよいことは当然である。
【0052】
第二の光源4が供給する第二の照明光Lが、すれ違い用前照灯であるとは限られない。例えば、路面と平行な水平面を境として上方の領域を照明する照明光を第一の光源により実現し、下方の領域を照明する照明光を第二の光源により実現するようなことも考えられる。この場合における第一の光源(による第一の照明光)及び第二の光源(による第二の照明光)はともに、走行用前照灯の要素となり得る。
【0053】
さらには、第一の光源3及び/または第二の光源4は、発光ダイオードには限定されない。発光ダイオード以外の種類の高速応答性を有した光源が、第一の光源3及び/または第二の光源4に採用されることも当然にあり得る。
【0054】
その他、各部の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。