(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833316
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】再帰性反射体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/136 20060101AFI20210215BHJP
G02B 5/124 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
G02B5/136
G02B5/124
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-254475(P2015-254475)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-116848(P2017-116848A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】
池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2003/014779(WO,A1)
【文献】
特開2011−212971(JP,A)
【文献】
特表2011−511303(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0212182(US,A1)
【文献】
米国特許第6452734(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/136
G02B 5/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の入射側であるベース部材(11)の表面に、該ベース部材(11)の裏面(11b)に平行な上平面(17b)、該上平面(17b)の一方端に連接され該上平面(17b)に垂直な一側面、及び該上平面(17b)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の土手部(17)と、該各土手部(17)の一側面が平行に配置され、隣り合う該土手部(17)の間にそれぞれ該土手部(17)の長手方向と直交して配置された複数の谷部(16)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体(10)であって、
1)前記土手部(17)及び前記谷部(16)は、透明又は不透明な樹脂フィルム(19)からなる前記ベース部材(11)の表面に形成され、該樹脂フィルム(19)は、屈曲性を有し、その厚みtが0.08〜0.5mmの範囲にあり、2)前記谷部(16)の深さdは、厚みtの0.2〜0.8倍となって、3)直角に交差する第1、第2の光反射面(13、14)が、前記各谷部(16)に形成され、前記第1、第2の光反射面(13、14)に直交する第3の光反射面(15)が、前記各土手部(17)の一側面に形成されて、前記第1〜第3の光反射面(13、14、15)が、入射光を反射するキュービックコーナーとして作用することを特徴とする再帰性反射体。
【請求項2】
請求項1記載の再帰性反射体において、前記凹凸面は、表面が平坦となった透明樹脂材によって埋められて、全体が等厚みのシート状となっていることを特徴とする再帰性反射体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の再帰性反射体において、前記第3の光反射面(15)を形成する前記土手部(17)の一側面と、該土手部(17)の他側面との交差角度は0度又は0度を超え10度以下の範囲にあることを特徴とする再帰性反射体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の再帰性反射体において、前記土手部(17)の他側面には第4の光反射面(18)が形成されていることを特徴とする再帰性反射体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1記載の再帰性反射体において、少なくとも前記第1〜第3の光反射面(13、14、15)は、金属蒸着面によって形成されていることを特徴とする再帰性反射体。
【請求項6】
光の非入射側であるベース部材(40)の裏面に、該ベース部材(40)の表面(40a)に平行な底面(39a)、該底面(39a)の一方端に連接され該底面(39a)に垂直な一側面、及び該底面(39a)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の溝部(39)と、該各溝部(39)の一側面が平行に配置され、隣り合う該溝部(39)の間にそれぞれ該溝部の長手方向と直交して配置された複数の谷部(38)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体(32)であって、
1)前記溝部(39)及び前記谷部(38)は、透明な樹脂フィルムからなる前記ベース部材(40)の裏面に形成され、該樹脂フィルムは、屈曲性を有し、その厚みtが0.08〜0.5mmの範囲にあり、2)前記谷部(38)の深さdは、厚みtの0.2〜0.8倍となって、3)直角に交差する第1、第2の光反射面(33、34)が、前記各谷部(38)に形成され、前記第1、第2の光反射面(33、34)に直交する第3の光反射面(35)が、前記各溝部(39)の一側面に形成されて、前記第1〜第3の光反射面(33、34、35)が、前記ベース部材(40)を通過した入射光を反射するキュービックコーナーとして作用することを特徴とする再帰性反射体。
【請求項7】
請求項6記載の再帰性反射体において、前記第3の光反射面(35)を形成する前記溝部(39)の一側面と、該溝部(39)の他側面との交差角度は0度又は0度を超え10度以下の範囲にあることを特徴とする再帰性反射体。
【請求項8】
請求項6又は7記載の再帰性反射体において、前記溝部(39)の他側面には第4の光反射面(36)が形成されていることを特徴とする再帰性反射体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1記載の再帰性反射体において、少なくとも前記第1〜第3の光反射面(33、34、35)は、金属蒸着面によって形成されていることを特徴とする再帰性反射体。
【請求項10】
光の入射側であるベース部材(11)の表面に、該ベース部材(11)の裏面(11b)に平行な上平面(17b)、該上平面(17b)の一方端に連接され該上平面(17b)に垂直な一側面、及び該上平面(17b)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の土手部(17)と、該各土手部(17)の一側面が平行に配置され、隣り合う該土手部(17)の間にそれぞれ該土手部(17)の長手方向と直交して配置された複数の谷部(16)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体(10)の製造方法であって、
前記谷部(16)及び前記土手部(17)をそれぞれ形成する原型を透明又は不透明な樹脂フィルム(19)の片面に押し当てて、原形材(11a)を製造する第1工程と、
前記原形材(11a)の前記谷部(16)及び前記土手部(17)が形成された面に金属蒸着を行い、直角に交差する第1、第2の光反射面(13、14)を前記谷部(16)に形成し、前記第1、第2の光反射面(13、14)に直交する第3の光反射面(15)を前記各土手部(17)の一側面に形成する第2工程と、
キュービックコーナーとして作用する前記第1〜第3の光反射面(13、14,15)を透明樹脂材で覆い、該再帰性反射体(10)全体をシート状とする第3工程とを有することを特徴とする再帰性反射体の製造方法。
【請求項11】
光の非入射側であるベース部材(40)の裏面に、該ベース部材(40)の表面(40a)に平行な底面(39a)、該底面(39a)の一方端に連接され該底面(39a)に垂直な一側面、及び該底面(39a)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の溝部(39)と、該各溝部(39)の一側面が平行に配置され、隣り合う該溝部(39)の間にそれぞれ該溝部(39)の長手方向と直交して配置された複数の谷部(38)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体(32)の製造方法であって、
前記谷部(38)及び前記溝部(39)をそれぞれ形成する原型を透明な樹脂フィルムの片面に押し当てて、原形材(37)を製造する第1工程と、
前記原形材(37)の前記谷部(38)及び前記溝部(39)が形成された面に金属蒸着を行なって、直角に交差する第1、第2の光反射面(33、34)を前記各谷部(38)に形成し、前記第1、第2の光反射面(33、34)に直交する第3の光反射面(35)を前記各溝部(39)の一側面に形成して、前記樹脂フィルムを通過した入射光を反射してキュービックコーナーとして作用する前記第1〜第3の光反射面(33、34、35)とする第2工程と、
金属蒸着された前記谷部(38)及び前記溝部(39)を樹脂材(41)で覆い、該再帰性反射体(32)全体をシート状とする第3工程とを有することを特徴とする再帰性反射体の製造方法。
【請求項12】
光の非入射側であるベース部材の裏面に、該ベース部材の表面に平行な底面、該底面の一方端に連接され該底面に垂直な一側面、及び該底面の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の溝部(50)と、該各溝部(50)の一側面が平行に配置され、隣り合う該溝部(50)の間にそれぞれ該溝部の長手方向と直交して配置された複数の谷部(49)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体(45)の製造方法であって、
前記谷部(49)及び前記溝部(50)をそれぞれ形成する原型を透明な樹脂フィルム(46)の片面に押し当てて、原形材を製造する第1工程と、
前記原形材の前記谷部(49)及び前記溝部(50)が形成された面を空気又は透明ガスに曝し、直角に交差する第1、第2の光反射面(47、48)を前記各谷部(49)に形成し、前記第1、第2の光反射面(47、48)に直交する第3の光反射面(51)を前記各溝部(50)の一側面に形成して、前記樹脂フィルム(46)を通過した入射光を全反射してキュービックコーナーとして作用する前記第1〜第3の光反射面(47、48、51)とする第2工程とを有することを特徴とする再帰性反射体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射される光を入射角度の方向に反射する再帰性反射体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明球体や3面コーナーキューブを用いた再帰性反射体は、入射光と反射光の方向が略一致するので、交通標識や画像投影装置(特許文献1参照)等に応用されている。そして、透明球体を用いる場合より、3面コーナーキューブを用いた再帰性反射体の方がより強い反射光を得ることが知られている。
【0003】
特許文献1、2にはコーナーキューブを変形させて製造を容易にした再帰性反射体が開示されている。これらは、直交する第1、第2の光反射面と、第1、第2の光反射面に直交する第3又は第4の光反射面を板状の透明体に形成している。
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/082154号公報
【特許文献2】WO2015/181994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、特許文献1、2記載の板状の透明体(板材)の材料は、例えば、ガラス、クリスタル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネイト等を使用しており、これらの板材に第1〜第4の光反射面の形状を金型成形している。しかしながら、ガラスやクリスタルの場合は、金型成形は困難であるし、仮に板材に透明樹脂を用いても、特許文献1、2の場合は、第3、第4の光反射面が平行であるので、金型成形(押圧又はインジェクション)を行うと脱型性が悪いという問題があった。
また、第1〜第4の光反射面の形成にあっては、板材の片面を金属蒸着する必要があり、この場合、板材を完全に収納する炉が必要となり、大型の再帰性反射体を形成することは困難であった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、材料が比較的安価で、製造方法も容易な再帰性反射体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る再帰性反射体は、光の入射側である
ベース部材(11)の表面に、
該ベース部材(11)の裏面(11b)に平行な上平面(17b)、該上平面(17b)の一方端に連接され該上平面(17b)に垂直な一側面、及び該上平面(17b)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の土手部
(17)と、
該各土手部(17)の一側面が平行に配置され、隣り合う該土手部
(17)の間にそれぞれ該土手部
(17)の長手方向と直交して配置された複数の谷部
(16)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体
(10)であって、
1)前記土手部
(17)及び前記谷部
(16)は、透明又は不透明な樹脂フィルム
(19)からなる
前記ベース部材
(11)の表面に形成され、該樹脂フィルム
(19)は、屈曲性を有し、その厚みtが0.08〜0.5mmの範囲にあり、2)前記谷部
(16)の深さdは、厚みtの0.2〜0.8倍となって、3)直角に交差する第1、第2の光反射面
(13、14)が、前記各谷部
(16)に形成され、前記第1、第2の光反射面
(13、14)に直交する第3の光反射面
(15)が、前記各土手部
(17)の一側面に形成されて、前記第1〜第3の光反射面
(13、14、15)が、入射光を反射するキュービックコーナーとして作用する。
【0008】
第1の発明に係る再帰性反射体において、前記凹凸面は、表面が平坦となった透明樹脂材によって埋められて、全体が等厚みのシート状となっているのが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る再帰性反射体において、前記第3の光反射面
(15)を形成する前記土手部
(17)の一側面と、該土手部
(17)の他側面との交差角度は0度又は0度を超え10度以下(更に詳細には1〜3度)の範囲にあるのがよい。
【0010】
第1の発明に係る再帰性反射体において、前記土手部
(17)の他側面には第4の光反射面
(18)を形成することもできる。この場合、第4の光反射面
(18)は第1、第2の光反射面
(13、14)に直交するのがよい。
【0011】
第1の発明に係る再帰性反射体において、少なくとも前記第1〜第3の光反射面
(13、14、15)は、金属蒸着面によって形成されているのが好ましい。
【0012】
第2の発明に係る再帰性反射体は、光の非入射側である
ベース部材(40)の裏面に、
該ベース部材(40)の表面(40a)に平行な底面(39a)、該底面(39a)の一方端に連接され該底面(39a)に垂直な一側面、及び該底面(39a)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の溝部
(39)と、
該各溝部(39)の一側面が平行に配置され、隣り合う該溝部
(39)の間にそれぞれ該溝部の長手方向と直交して配置された複数の谷部
(38)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体
(32)であって、
1)前記溝部
(39)及び前記谷部
(38)は、透明な樹脂フィルムからなる
前記ベース部材
(40)の裏面に形成され、該樹脂フィルムは、屈曲性を有し、その厚みtが0.08〜0.5mmの範囲にあり、2)前記谷部
(38)の深さdは、厚みtの0.2〜0.8倍となって、3)直角に交差する第1、第2の光反射面
(33、34)が、前記各谷部
(38)に形成され、前記第1、第2の光反射面
(33、34)に直交する第3の光反射面
(35)が、前記各溝部
(39)の一側面に形成されて、前記第1〜第3の光反射面
(33、34、35)が、前記ベース部材
(40)を通過した入射光を反射するキュービックコーナーとして作用する。
【0013】
第2の発明に係る再帰性反射体において、前記第3の光反射面
(35)を形成する前記溝部
(39)の一側面と、該溝部
(39)の他側面との交差角度は0度又は0度を超え10度以下(更に詳細には1〜3度)の範囲にあるのが好ましい。
【0014】
第2の発明に係る再帰性反射体において、前記溝部
(39)の他側面には第4の光反射面
(36)が形成されているのが好ましい。この場合、第4の光反射面
(36)は第1、第2の光反射面
(33、34)に直交するのがよい。
【0015】
第2の発明に係る再帰性反射体において、少なくとも前記第1〜第3の光反射面
(33、34、35)は、金属蒸着面によって形成することもできる。
【0016】
【0017】
第3の発明に係る再帰性反射体の製造方法は、光の入射側である
ベース部材(11)の表面に、
該ベース部材(11)の裏面(11b)に平行な上平面(17b)、該上平面(17b)の一方端に連接され該上平面(17b)に垂直な一側面、及び該上平面(17b)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の土手部
(17)と、
該各土手部(17)の一側面が平行に配置され、隣り合う該土手部
(17)の間にそれぞれ該土手部
(17)の長手方向と直交して配置された複数の谷部
(16)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体
(10)の製造方法であって、
前記谷部
(16)及び前記土手部
(17)をそれぞれ形成する原型を透明又は不透明な樹脂フィルム
(19)の片面に押し当てて、原形材
(11a)を製造する第1工程と、
前記原形材
(11a)の前記谷部
(16)及び前記土手部
(17)が形成された面に金属蒸着を行い、直角に交差する第1、第2の光反射面
(13、14)を前記谷部
(16)に形成し、前記第1、第2の光反射面
(13、14)に直交する第3の光反射面
(15)を前記各土手部
(17)の一側面に形成する第2工程と、
キュービックコーナーとして作用する前記第1〜第3の光反射面
(13、14,15)を透明樹脂材で覆い、該再帰性反射体
(10)全体をシート状とする第3工程とを有する。
【0018】
第4の発明に係る再帰性反射体の製造方法は、光の非入射側である
ベース部材(40)の裏面に、
該ベース部材(40)の表面(40a)に平行な底面(39a)、該底面(39a)の一方端に連接され該底面(39a)に垂直な一側面、及び該底面(39a)の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の溝部
(39)と、
該各溝部(39)の一側面が平行に配置され、隣り合う該溝部
(39)の間にそれぞれ該溝部
(39)の長手方向と直交して配置された複数の谷部
(38)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体
(32)の製造方法であって、
前記谷部
(38)及び前記溝部
(39)をそれぞれ形成する原型を透明な樹脂フィルムの片面に押し当てて、原形材
(37)を製造する第1工程と、
前記原形材
(37)の前記谷部
(38)及び前記溝部
(39)が形成された面に金属蒸着を行なって、直角に交差する第1、第2の光反射面
(33、34)を前記各谷部
(38)に形成し、前記第1、第2の光反射面
(33、34)に直交する第3の光反射面
(35)を前記各溝部
(39)の一側面に形成して、前記樹脂フィルムを通過した入射光を反射してキュービックコーナーとして作用する前記第1〜第3の光反射面
(33、34、35)とする第2工程と、
金属蒸着された前記谷部
(38)及び前記溝部
(39)を樹脂材
(41)で覆い、該再帰性反射体
(32)全体をシート状とする第3工程とを有する。
【0019】
第5の発明に係る再帰性反射体の製造方法は、光の非入射側である
ベース部材の裏面に、
該ベース部材の表面に平行な底面、該底面の一方端に連接され該底面に垂直な一側面、及び該底面の他方端に連接され該一側面に対向する他側面をそれぞれ有する複数の溝部
(50)と、
該各溝部(50)の一側面が平行に配置され、隣り合う該溝部
(50)の間にそれぞれ該溝部の長手方向と直交して配置された複数の谷部
(49)とで形成した凹凸面を有する再帰性反射体
(45)の製造方法であって、
前記谷部
(49)及び前記溝部
(50)をそれぞれ形成する原型を透明な樹脂フィルム
(46)の片面に押し当てて、原形材を製造する第1工程と、
前記原形材の前記谷部
(49)及び前記溝部
(50)が形成された面を空気又は透明ガスに曝し、直角に交差する第1、第2の光反射面
(47、48)を前記各谷部
(49)に形成し、前記第1、第2の光反射面
(47、48)に直交する第3の光反射面
(51)を前記各溝部
(50)の一側面に形成して、前記樹脂フィルム
(46)を通過した入射光を全反射してキュービックコーナーとして作用する前記第1〜第3の光反射面
(47、48、51)とする第2工程とを有する。この場合、樹脂フィルム
(46)の裏面に透明又は不透明のフィルムシート(保護シート)を貼着してもよい。
【発明の効果】
【0020】
第1、第2の発明に係る再帰性反射体、及び第3〜第5の発明に係る再帰性反射体の製造方法によって製造される再帰性反射体は、薄くて屈曲可能であるので、使用場所で広げて大型の再帰性反射体とすることができる。また、対象物の形状に応じて対象物に再帰性反射体を貼着することができる。更に一部又は全部を曲面状に形成できるので、従来とは異なる用途に再帰性反射体を使用できる。
【0021】
また、第3、第4の発明に係る再帰性反射体の製造方法は、屈曲性を有する樹脂フィルムの片面に、金属蒸着によって、直角に交差する第1〜第3の光反射面を形成するので、小型の設備で製造が可能となり、製造コストの軽減を図ることができる。
また、再帰性反射体の谷部を含む表面を透明樹脂材又は不透明の樹脂材で覆った場合は、表面にゴミ等の付着がなく、掃除も容易となる。
第5の発明に係る再帰性反射体の製造方法によって製造された再帰性反射体は、全反射で入射光を反射するので、より強い反射光が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る再帰性反射体の説明図、(B)は
図1(A)のG−G’断面図、(C)は
図1(A)のK−K’断面図である。
【
図2】カバー部材を省略した同再帰性反射体の一部斜視図である。
【
図3】同再帰性反射体の製造状況を示す説明図である。
【
図4】同再帰性反射体の製造方法を示す工程図である。
【
図5】(A)は組立状態の同再帰性反射体の説明図、(B)は
図5(A)のJ−J’断面図である。
【
図6】別の再帰性反射体の製造方法を示す説明図である。
【
図7】更に別の再帰性反射体の製造方法を示す説明図である。
【
図8】(A)は本発明の第2の実施の形態に係る再帰性反射体の断面図、(B)は
図8(A)のL−L’断面図である。
【
図9】(A)は本発明の第3の実施の形態に係る再帰性反射体の断面図、(B)は
図9(A)のM−M’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。まず、本発明の第1の実施の形態に係る再帰性反射体10について説明する。
図1(A)〜(C)、
図2、
図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る再帰性反射体10は、ベース部材11とその上に密着接合されているカバー部材12とを有している。
ベース部材11は、透明(又は不透明)の樹脂フィルムからなって、その片面(表面)に、直角に交差する第1、第2の光反射面13、14と、第1、第2の光反射面13、14に直交する第3の光反射面15を一定方向に並べて形成している。
【0024】
第3の光反射面15は第1、第2の光反射面13、14によって形成される断面直角二等辺三角形の谷部16を横断する土手部17の片面(一側面)に形成され、土手部17の裏側の他側面には第4の光反射面18が形成されている。以上の谷部16と土手部17で樹脂フィルムの表面に形成される凹凸面を形成している。
【0025】
ベース部材11の元となる樹脂フィルムは、アクリル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、AS、PMMA、PET樹脂等の透明樹脂フィルムからなる。表面が鏡面処理(金属蒸着)されたベース部材11の厚みtは、例えば0.05〜1mmの範囲、特に、0.08〜0.5mmの範囲になり、十分な屈曲性及び型による成形性を有している。そして、第1、第2の光反射面13、14によって形成される谷部16の深さdは、厚みtの0.2〜0.8倍となっている。
土手部17は平行、又は上方に幅狭となっており、第3の光反射面15と第4の光反射面18の交差角度θは0度又は0度を超え10度以下(更に詳細には、1〜3度)となって、金型成形時の脱型が容易となっている。
【0026】
土手部17の上平面
17bの幅aは小さい方
が好ましいが、第3の光反射面15の強度を確保するためには、谷部16(底)の長さcの0.1〜0.4倍程度となっている。また、谷部16の長さcは谷部16の深さdの1倍を超え5倍以下(より好ましくは1.2〜3倍)となっている。土手部17の傾斜幅bはd・tanθとなる。
なお、符号11bはベース部材11の裏面を示す。
【0027】
続いて、
図1〜
図4を参照して、このベース部材11の製造方法について説明するが、第1〜第4の光反射面13〜15、18(即ち、金属蒸着膜)を除いた原形材11aは、第1〜第4の光反射面13〜15、18に対応して第1〜第4の光反射形成面13a〜15a、18aを有する。従って、第1、第2の光反射形成面13a、14aによって形成される谷部16a、第3の光反射形成面15a、第4の光反射形成面18aを形成する土手部17aを、原形材11aに縦横に定ピッチで備えている。なお、第4の光反射形成面18aは本発明の必須の要件ではない。
【0028】
原形材11aの製造にあっては、まず、
図3に示すように、厚みが例えば0.05〜1mm(より、好ましくは0.07〜0.6mm)の透明又は不透明のロール巻きされた樹脂フィルム19を用意する(ステップS1)。なお、樹脂フィルム19の厚みをベース部材11より厚くしている理由は潰し代を考慮している。
次に、外側面が完全円筒状(全体として完全円柱状)の筒状ロール20と、これに対向して配置される成形ロール21とを用意する。成形ロール21の表面には、押圧挟持される樹脂フィルム19の片面に、第1、第2の光反射形成面13a、14aによって形成される谷部16aと、第3の光反射形成面15aを形成する土手部17a(即ち、凹凸面)を形成する凹凸パターン23(原型)が形成されている。この成形ロール21と筒状ロール20によって樹脂フィルム19を圧縮成形する。なお、筒状ロール20と成形ロール21は樹脂フィルム19の押圧成形温度又はその近傍に加熱されているのが好ましい(ステップS2)。
【0029】
以上の処理によって原形材11aを製造できる。この原形材11aを再度ロール巻きして、真空蒸着装置内に入れて、真空蒸着装置内で徐々に解いて、原形材11aの表面に金属蒸着して鏡面を形成する(ステップS3)。この場合、土手部17aの表面にも金属蒸着されるので、土手部17aの表面に遮光処理(例えば、塗料を塗布、金属蒸着面の除去)を行うのが好ましいが本発明の必須の要件ではない。
【0030】
以上のようにして形成されたベース部材11はそのまま再帰性反射体として使用することができる。ところが、ベース部材11には凹凸が形成されているので、ゴミ等が付着し易く、更に掃除も容易でない。そこで、透明樹脂材を谷部16に被せて全体を平面状とする。これによって、ベース部材11に表面が平坦となったカバー部材12を被せた再帰性反射体10が等厚みのシート状となる。
この場合、予めカバー部材12を
図5(A)、(B)に示すように、透明樹脂等で成形して、カバー部材12をベース部材11の上に置いて、透明な接着材を介してベース部材11に接合する方法がある。
【0031】
また、
図6に示すように、ベース部材11の表面側に軟化させた透明な樹脂24を被せ又は接させて、対向する平面ロール25、26でベース部材11上にカバー部材12をコーティングすることもできる。この場合、透明な樹脂24はベース部材11を構成する樹脂より融点の低いものを使用するのが好ましい(以上、ステップS4、S5)。なお、この実施の形態では土手部17の表面も透明樹脂材によって覆われている。
【0032】
前記実施の形態において、原形材11aの製造にあっては、対向する筒状ロール20と成形ロール21を使用していたが、
図7に示すように、上型28と下型29を用いて成形することもできる。この場合、上型28(又は下型29)に原形材11aと凹凸が逆となった上金型(原型)30を取り付ける。ここで、31は平面状の下金型を示す。
更に、カバー部材12の成形、及び取付けも平面状の上型及び下型を用いて行える。
【0033】
再帰性反射体10の使用にあっては、第1〜第3の光反射面13〜15がキュービックコーナーを構成するので、これらのいずれかに照射された光は入射角と同じ角度で反射する。第4の光反射面18は、第4の光反射面18が第1、第2の光反射面13、14と直交する場合は、第1、第2、第4の光反射面13、14、18で再帰性反射体を構成する。また、第1〜第3の光反射面13、14、15の中心を通る面に平行な光が最も有効に再帰性反射をするので、入射方向を選択するように配置するのがよい。
なお、対向するロールを用いて原形材を製造する場合は、第3の光反射面15が第4の光反射面18と平行であっても型抜きが可能であるが、傾斜を付けた方がより円滑に型抜きを行える。
【0034】
続いて、
図8(A)、(B)を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る再帰性反射体32について説明する。この再帰性反射体32も厚みが0.08〜0.5mmの折り曲げ自在な透明樹脂フィルムを用いて、第1〜第4の光反射形成面33a〜36aを裏面側に有する原形材37を形成している。第1の実施の形態に係る再帰性反射体10と相違する点は、再帰性反射体10においては、原形材11aの表面に金属蒸着をしているが、この再帰性反射体32では原形材37の裏面側に形成された谷部38と谷部38を仕切る溝部(再帰性反射体10の土手部に対応する)39内に金属蒸着して鏡面を形成し、第1〜第4の光反射形成面33a〜36aにそれぞれ第1〜第4の光反射面33〜36を形成している。これによって、裏面側に凹凸面を有するベース部材40が完成する。このベース部材40はそのままでも、再帰性反射体として使用可能であるが、裏面(谷部38と溝部39)に樹脂材によるカバー部材41を設けるのが好ましい。これによって、全体を等厚みのシート状とすることができる。なお、第1〜第4の光反射面33〜36の寸法、形態は、第1の実施の形態に係る再帰性反射体10の寸法及び形態に合わせることができる。
図8において、符号39aは溝部39の底面を示し、符号40aはベース部材40の表面を示す。
【0035】
次に、
図9(A)、(B)に示す本発明の第3の実施の形態に係る再帰性反射体45について説明する。この実施の形態では、第2の実施の形態に係る再帰性反射体32と同一形状の透明樹脂フィルム46を使用し、その裏面に、直交する第1、第2の光反射面47、48によって形成される谷部49と、谷部49を横切る溝部50の一側面に形成される第3の光反射面51を有している。谷部49の表面に金属蒸着はされておらず、空気(又はその他の透明ガス)に接している。第1〜第3の光反射面47、48、51は全反射面によって形成されている。溝部50の他側面を第1、第2の光反射面47、48に垂直な第4の光反射面とすることもできる。
【0036】
即ち、透明樹脂フィルム46の屈折率をn(通常1.5程度)とすると、φ(=sin
-11/n)より大きい入射角で入射した光は全反射を行うので、この原理を応用し、金属蒸着の工程を省略できる。従って、この再帰性反射体45においては、
図9に示すように第1〜第3の光反射面47、48、51に対してφより大きい入射角で入射した光Sがより有効に作用する。なお、第1、第2の実施の形態に係る再帰性反射体10、32においては、金属蒸着を行って鏡面を形成することによって、より広い範囲の入射光に対して再帰性反射を行うことができる。
【0037】
図9において、再帰性反射体45の裏面側には凹凸面があり、油や水が表面に付着すると、反射面の状況が変わって全反射しない場合が発生する。そこで、再帰性反射体45の裏面に更に平面状の保護シート53を設けるのが好ましい。
第2、第3の実施の形態に係る再帰性反射体の製造方法は、第1の実施の形態に係る再帰性反射体の製造方法と略同一で、
図3に示すように、対となる対向する筒状ロール20と成形ロール21を使用して原形材を形成することができるが、
図7に示すように、上型28と下型29を用いて成形することもできることは当然である。なお、平面状の上型28と下型29は広い面積を必要とするので、金属蒸着をする場合(第1、第2の実施の形態)は大型の炉が必要となる。
【0038】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、第1、第2の発明に係る再帰性反射体、及び第3〜第5の発明に係る再帰性反射体の製造方法の一部を他の発明に使用することもできる。
また、本発明(本実施の形態)は具体的数字を用いて説明したが、要旨を変更しない範囲で数値限定を外すことができる。
【符号の説明】
【0039】
10:再帰性反射体、11:ベース部材、11a:原形材、
11b:裏面、12:カバー部材、13:第1の光反射面、13a:第1の光反射形成面、14:第2の光反射面、14a:第2の光反射形成面、15:第3の光反射面、15a:第3の光反射形成面、16、16a:谷部、17、17a:土手部、
17b:上平面、18:第4の光反射面、18a:第4の光反射形成面、19:樹脂フィルム、20:筒状ロール、21:成形ロール、23:凹凸パターン、24:樹脂、25、26:平面ロール、28:上型、29:下型、30:上金型、31:下金型、32:再帰性反射体、33:第1の光反射面、33a:第1の光反射形成面、34:第2の光反射面、34a:第2の光反射形成面、35:第3の光反射面、35a:第3の光反射形成面、36:第4の光反射面、36a:第4の光反射形成面、37:原形材、38:谷部、39:溝部、
39a:底面、40:ベース部材、
40a:表面、41:カバー部材、45:再帰性反射体、46:樹脂フィルム、47:第1の光反射面、48:第2の光反射面、49:谷部、50:溝部、51:第3の光反射面、53:保護シート