【文献】
篠永充良,“5-2-2 測距・測角技術”,電子情報通信学会「知識ベース」[online],2011年 4月15日,第11群第2編第5章,Pages 11-13,URL,http://www.ieice-hbkb.org/files/11/11gun_02hen_05.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DBF(Digital Beam Forming)、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.289-291(1996)
【非特許文献2】テーラー分布、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.134-135(1996)
【非特許文献3】測角方式(モノパルス)、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.260-264(1996)
【非特許文献4】マルチビーム、電子情報通信学会編、アンテナ工学ハンドブック第2版、Ohmsha、pp.419-424(2008)
【非特許文献5】位相によるパターン成形、Robert C. Voges, ‘Phase Optimization of Antenna Array Gain with Constrained Amplitude Excitation’, IEEE Trans. Antennas & Propagation, AP-20, No.4, pp.432-436(1972)
【非特許文献6】MUSIC/ESPRIT、菊間、アダプティブアンテナ技術、Ohmsha、pp.137-164(2003)
【非特許文献7】エレメントスペースとビームスペース、電子情報通信学会編、アンテナ工学ハンドブック第2版、Ohmsha、pp.458(2008)
【非特許文献8】SLC(SideLobe Canceller)とSLB(SideLobe Blanker)、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.295-296(1996)
【非特許文献9】MSN方式、菊間、“アレーアンテナによる適応信号処理”、科学技術出版、pp.67-86(1999)
【非特許文献10】直接解方式(SMI方式等)、菊間、“アレーアンテナによる適応信号処理”、科学技術出版、pp.35-37, 98-99(1999)
【非特許文献11】パルス圧縮、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.275-280(1996)
【非特許文献12】CFAR処理、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.87-89(1996)
【非特許文献13】KR積アレイ、Wing-Kin Ma,“DOA Estimation of Quasi-Stationary Signals With Less Sensors Than Sources and Unkown Spatial Noise Covariance: A Khatri-Rao Subspace Approach”, IEEE Trans. Signal Process., vol.58, no.4, pp.2168-2180, April(2010)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図。
【
図2】
図1に示すアンテナ装置の信号処理の流れを示す概念図。
【
図3】
図2に示す信号処理を説明するための観測座標系を示す図。
【
図4】第2の実施形態に係るアンテナ装置のΣ、Σ2選定方法を説明するためのモノパルスビームを示す図。
【
図5】
図4に示すモノパルスビームによる測角処理を説明するための図。
【
図6】第3の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図。
【
図7】第3の実施形態において、ビーム再形成の様子を示す図。
【
図8】第3の実施形態において、ヌル劣化を補正する様子を示す図。
【
図9】第3の実施形態において、開口2分割信号について同一セルにより振幅を補正する様子を示す図。
【
図10】第3の実施形態において、ΣとΔビームの特性と誤差電圧との関係を示す図。
【
図11】第4の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図。
【
図12】第4の実施形態において、開口2分割信号それぞれの移相器による指向方向制御を説明するための概念図。
【
図13】第4の実施形態において、捜索空間内に形成される受信ビームの走査を説明するための図。
【
図14】第5の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図。
【
図15】第5の実施形態において、開口2分割信号それぞれの捜索空間における送受信ビームの形成方法を説明するための図。
【
図16】第5の実施形態において、開口2分割信号それぞれの捜索空間における送受信ビームのクロスマルチビームを説明するための図。
【
図17】第6の実施形態に係るアンテナ装置を構成を示すブロック図。
【
図18】第6の実施形態において、補助ビームによるSLC処理を説明するための図。
【
図19】第6の実施形態に用いられるSLC回路の具体的な構成を示すブロック図。
【
図20】第6の実施形態において、SLC処理後のモノパルスビーム形成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)(モノパルスビームによる信号処理)
図1乃至
図3を参照して、第1の実施形態について説明する。本実施形態では、モノパルスビームを用いて2(Na)×2(Nb)のアレイを形成して信号処理する方式について述べる。
【0012】
図1は第1の実施形態に係るアンテナ装置が適用されるレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。
図1において、アレイアンテナ1を構成するN×M個のアンテナ素子111〜1NMから入力した信号は、それぞれビ−ム走査するための所定の位相が設定された移相器211〜2NMで移相処理された後、モノパルスビーム合成器30に送られる。このモノパルスビーム合成器30は、移相処理によりビーム走査されたアンテナ素子111〜1NMからの信号をAZ面とEL面で開口分割して和ビーム(Σ)とAZ面差ビーム(ΔAZ)とEL面差ビーム(ΔEL)を形成し、それぞれの形成ビームからモノパルス信号(Σ、ΔAZ、ΔEL)を取得する。
【0013】
上記モノパルスビーム合成器30で取得されたモノパルス信号(Σ、ΔAZ、ΔEL)は、AD変換器31によって周波数変換後にデジタル信号に変換されて開口分割信号生成器40に送られる。この開口分割信号生成器40は、モノパルス出力信号(Σ、ΔAZ、ΔEL)から開口2分割信号Xa1(左開口ビーム), Xa2(右開口ビーム), Xb1(上開口ビーム), Xb2(下開口ビーム)を生成する。開口2分割信号(アレイデジタル信号)を生成するには、次式を用いる。
【数1】
【0014】
これらの開口2分割信号(Xa1, Xa2, Xb1, Xb2)はビーム形成器60に送られる。
【0015】
ビーム形成器60は、縦方向の軸(以下、A軸)のアレイについてはXa1とXa2の信号を、横方向の軸(以下、B軸)のアレイについてはXb1とXb2の信号を用いてビーム形成を行う。このビーム形成全体系統を
図2に示す。このアレイデジタル信号Xdata(Xa1, Xa2, Xb1, Xb2)は、ビーム形成器60によりDBF(デジタルビーム形成)され、さらに信号処理器70により所定の信号処理が実施される。この信号処理としては、
図2に示すようにA軸信号処理(71)とB軸信号処理(72)があり、それらの信号処理結果を用いて、更に、両者を用いた統合処理(73)を行って出力を得る。
【0016】
このビーム形成の部分を定式化する。まず、観測方向(AZ,EL)を含めた2軸の入力信号をそれぞれXa,Xbと表すと、
図3に示す座標系により次式となる。なお、A軸とB軸のアンテナアレイの位相中心は一致している。
【数2】
【0019】
以上より、平面アレイの位相中心に入力される信号をXinとすると、2軸の信号XaとXbは次式となる。
【数5】
【0020】
受信ビーム出力は、ビーム形成器60において、ビーム指向方向制御用の複素ウェイトが乗算された後、DBFによる加算が行われ、次式となる。
【数6】
【0022】
ビーム指向方向制御用のウェイトWapnm, Wbpnmは次式で表現できる。
【数8】
【0024】
このビーム出力はDBFによる処理結果である。DBFでは自由度が高いため、本実施形態では、モノパルスビーム出力を用いて開口分割信号を生成し、DBF処理によりビームを形成して、2次元のDBF相当の機能性能を発揮することに特徴がある。
【0025】
(第2の実施形態)(モノパルスビームによる測角)
図4及び
図5を参照して、第2の実施形態について説明する。なお、系統図は
図1と同様であるので割愛する。第1の実施形態では、モノパルス出力を用いてアレイデジタル信号を生成し、信号処理する手法について述べたが、本実施形態では、信号処理器70内のモノパルス測角に適用する場合について述べる。
【0026】
モノパルス測角(非特許文献3)としては、位相モノパルスやスクイントモノパルスがあるが、ここではスクイントモノパルスの場合について述べる。
【0027】
スクイントモノパルスはΣビームとΣ2ビームにより測角する手法である。この手法を適用する場合は、
図4(a)に示すように、Σの候補とΣ2の候補を抽出し、
図4(b)に示すように、目標に対してマルチパスの影響が小さくなるようにΣとΣ2を選定する。
【0028】
レーダ反射信号には、目標信号の他に、地表面や海面からのマルチパス波がある場合がある。これを避けるには、極力マルチパスの影響を受けないようにビーム形成する必要がある。このため、
図4(a)に示すように、目標方向に対して、アレイデジタル信号を用いてΣ(N本)とΣ2(N2本)の複数のビームを形成し、
図5(a)に示すΣとΣ2の組み合わせで、
図5(b)に示す各々誤差電圧εの虚数部を算出して目標角度を求める。
【0029】
ここで、Σ2としては、下方からのマルチパスの場合には、A軸のアレイデジタル信号を用いるが、側方からのマルチパスの場合には、B軸のアレイデジタル信号を用いる。また、マルチパスの方向が混在する場合は、A軸とB軸のアレイデジタル信号を用いることになる。
【数10】
【0030】
このεimagが大きいとマルチパスの影響が大きいため、これが最小となるΣとΣ2の組み合わせの誤差電圧εを次式により算出する。
【数11】
【0031】
この誤差電圧εを用いて、測角テーブルを参照して測角値を算出する。
【0032】
以上は、スクイント測角の場合について述べたが、位相モノパルスの場合でも、ΣとΔビームを複数形成して、同様の手法でマルチパスの影響を抑圧することができる。
【0033】
(第3の実施形態)(再形成ビーム)
図6乃至
図10を参照して、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、再形成ビームを用いて2(Na)×2(Nb)のアレイを形成して信号処理する方式について述べる。
【0034】
図6は第3の実施形態に係るアンテナ装置が適用されるレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。但し、
図6において、
図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、
図6に示すように、ビーム形成器60の前段にデータ保存器50を設け、開口分割信号生成器40で生成されたA軸とB軸のアレイデジタル信号をデータ保存器50にメモリしておく。ビーム形成器60で形成したビームを信号処理器70で目標検出処理した後、検出した目標方向(測角値)をビーム形成器60に送り、当該ビーム形成器60でメモリした信号を用いてビームを再形成する。
【0036】
その例を以下に示す。まず、
図7(a)に示すように、一度形成したビームで、次式の誤差電圧εを用いて、誤差電圧と角度のテーブルを引用したモノパルス測角(非特許文献3)を行う。
【数12】
【0037】
この測角値によりオフボアサイト方向に目標がある場合には、
図7(b)に示すように、目標がボアサイト方向になるように、(8)及び(9)式によりビーム指向方向を変えて、ビーム形成器60によりデータ保存器50で保存していたアレイデジタル信号を用いてビームを再形成する。
【0038】
更に、
図8(a)に示すヌルの劣化を
図8(b)に示すように補正する手法について述べる。
図9(a)〜(d)にそれぞれA軸及びB軸の各々のアレイデジタル信号(Xa1, Xa2, Xb1, Xb2)のレンジ−ドップラ(周波数)の信号を示す。A軸とB軸の各々で、所定のスレショルドを超えて検出したレンジ−ドップラセルのうち、同一のセルのアレイデジタル信号を抽出し、これらを用いて、次式により、開口分割ビーム信号を補正する。
【数13】
【0042】
これにより、
図8に示すように振幅を補正してΔビームのヌルディプスを深くし、
図10(a)に示すモノパルス測角において
図10(b)に示す誤差電圧εの傾斜を大きくすることで、測角精度を向上させることができる。
【0043】
なお、本手法は、主にヌルディプスを深くするのが目的であり、Σa及びΣbについては、(13)〜(16)の補正をしない再形成ビ−ムを用いてもよい。
【0044】
(第4の実施形態)(受信用マルチビーム)
図11乃至
図13を参照して、第4の実施形態について説明する。本実施形態では、アレイデジタル信号を用いて受信用マルチビームを形成する手法について述べる。
【0045】
図11は第4の実施形態に係るアンテナ装置が適用されるレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。但し、
図11において、
図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0046】
本実施形態では、
図11に示すように、移相器211〜2NMは、所定の方向θB(θAZ、θEL)にビーム指向するように設定し、A軸において、EL面にDBFによりマルチビ−ムを形成し、同様にB軸において、AZ面にマルチビームを形成する。すると、
図12に示すように、所定の方向θBを通るマルチビーム(十字型またはT字型)を形成することができる。例えば、A軸アレイを用いた場合には、
図12のZ軸を軸とする円錐状にマルチビームが形成される。また、B軸アレイを用いた場合には、Y軸を軸とする円錐状にマルチビームが形成される。
【0047】
これを用いて、例えば、
図13に示すように、所定の空間ΩをA軸による縦バーによるAZ面走査とB軸による横バーによるEL面走査を同時に行うことで、捜索空間Ωの中の任意の領域を2回観測することになり、1バーによる走査の場合よりもデータレートを2倍にすることができる。
【0048】
(第5の実施形態)(レーダ用マルチビーム)
図14乃至
図16を参照して、第5の実施形態について説明する。第4の実施形態では受信のみの系統について述べたが、本実施形態では送信系統を付加したレーダ装置について述べる。
【0049】
図14は第5の実施形態に係るアンテナ装置が適用されるレーダ装置の送受信系統の構成を示すブロック図である。但し、
図14において、
図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0050】
図14において、送信系統では、A軸とB軸の各々について、送信器90により送信信号を生成し、その送信信号を送信分配器80によりNM系統に分配し、送信移相器411〜4NMによりビーム走査のための所定の移相量を設定した後、送信増幅器511〜5NMにより電力増幅して、サーキュレータ611〜6NMを介してアンテナ素子111〜1NMから送出する。受信系統では、アンテナ素子111〜1NMで受けた信号をサーキュレータ611〜6NMを介して取り込み、それぞれ受信増幅器711〜7NMにより低雑音増幅し、受信移相器211〜2NMでビーム走査のための所定の移相量を設定し、送信ビームを形成した捜索空間Ωの範囲内に受信マルチビームを形成する。
【0051】
すなわち、本実施形態のビ−ム形成手法としては、
図15(a),(b)に示すように、A軸とB軸の各々について、送信器90により送信信号を生成し、それを送信分配器80により分配して、送信移相器411〜4NMによりビーム走査のための所定の移相量を設定した後、送信増幅器511〜5NMにより増幅して、送信ビームを所定の捜索空間Ωに形成し、その範囲内に受信マルチビームを任意に形成することにより、同時に広角範囲を観測することができる。
【0052】
また、
図16に示すように、送信用移相器411〜4NMにより、所定の捜索範囲Ωにおいて送信ビームを広範囲に形成した場合(非特許文献5)には、受信用移相器211〜2NMにより所定の方向に指向した受信ビームを中心に、十字型またはT字型の受信マルチビームを形成することで、高データレートに観測することができる。
【0053】
(第6の実施形態)(不要波抑圧ビーム)
図17乃至
図20を参照して、第6の実施形態について説明する。本実施形態ではアレイデジタル信号を用いて不要波を抑圧する手法について述べる。
【0054】
図17は第6の実施形態に係るアンテナ装置が適用されるレーダ装置の受信系統の構成を示すブロック図である。但し、
図17において、
図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、
図17に示すように、補助ビーム形成器601、不要波抑圧信号処理器701、モノパルスビーム形成器801を備える。補助ビーム形成器601は、モノパルスビーム(Σ、ΔAZ、ΔEL)と開口2分割信号(Xa1, Xa2, Xb1, Xb2)から妨害レベルの大きな補助ビームを形成する。不要波抑圧信号処理器701は、補助ビーム出力を補助チャンネルとして入力し、この補助チャンネルを用いて主チャンネル(Xa1、Xa2、Xb1、Xb2)のSLC処理を行う。モノパルスビーム形成器801は、SLC処理された主チャンネルからモノパルスビームを形成し、測角処理の対象とする。
【0056】
すなわち、本実施形態では、不要波抑圧処理として、SLC(非特許文献8)を適用する。この場合には、補助チャンネルの選定が必要となる。アンテナ開口面に専用の補助アンテナを用いるのが通常であるが、本実施形態では、ハードウェア(HW)の規模を縮小するために、モノパルスビーム(Σ、ΔAZ、ΔEL)を用いる。補助チャンネルの選定の際には、主ビーム方向にヌルをもつビームを選定することで、SLCによる指向精度の劣化を抑圧ことができる。このため、
図18に示すように、ΔAZ、ΔELを候補とする。
【0057】
ΔAZとΔELで妨害方向を全て覆うことができない場合には、更に補助ビームの候補を選定する必要がある。ここで、(1)式を用いてXa1、Xa2、Xb1、Xb2のアレイデジタル信号を生成できるため、このアレイデジタル信号を用いて、AZ軸、EL軸のうち、ΔAZとΔELで覆えない方向にビームΣauxn(n=1〜Naux)を形成する。この際、Σauxnのアレイデジタル信号は、主ビーム方向を中心にビーム幅をもつ。
【0058】
ここで、アレイデジタル信号Σauxnを用いて合成するビームには、元々のアレイデジタル信号の角度応答の制約がある。但し、ΔAZとΔELが覆えない範囲に応答をもつビームを形成することが目的であり、Σauxnのアレイデジタル信号は、指向方向を制御することができるため、妨害方向を全て覆うビームを形成することができる。
【0059】
この際、主ビーム方向に所定のレベル以上の応答を持ち、SLC処理後に主ビームの指向精度やΔビームのヌル形成に影響を及ぼす場合が考えられる。その場合には、もともとあるモノパルスビームのΣ等を用いて、アレイデジタル信号を用いて形成した補助ビームΣauxnとΣの主ビーム方向の振幅及び位相とΣを合わせて減算することにより、補助ビームΣauxnの主ビーム方向のレベルを低下すればよい。
【0060】
これらの候補ビーム(ΔAZ,、ΔEL、Σauxn)の中で、補助ビーム形成器601において、妨害レベルの大きなビームを選定して、不要波抑圧信号処理器701の補助チャンネルとして入力する。この補助チャンネルを用いて、(Xa1、Xa2、Xb1、Xb2)を主チャンネルとして、不要波抑圧信号処理器701内でSLC処理を行う。
図19にSLC処理回路の具体的な構成を示す。このSLC処理回路は、補助チャンネルの信号AUX1〜AUXNaで得られる不要波成分をウェイト制御して主チャンネルの信号Σから減算処理することで不要波を抑圧する。このSLC処理のウェイト制御としては、MSN方式(非特許文献9)、SMI方式(非特許文献10)等、種々の方式が適用できる。
【0061】
本実施形態では、不要波抑圧後の信号Xa(A軸のXa1, Xa2)とXb(B軸のXb1, Xb2)を用いて、(6)、(7)式と同様に、
図20に示すようにモノパルスビーム(Σ、ΔAZ、ΔEL)を形成する。一般に、特にΔビームは、SLC前のサイドローブが高く、補助チャンネルでそのサイドローブを覆うことが困難な場合に、SLCによる不要波抑圧効果が低下する場合がある。しかしながら、本手法によれば、アレイデジタル信号に対してSLC処理した後、ΣとΔビーム(ΔAZ、ΔEL)を形成するため、Δビームに対しても効果的なSLC処理を行うことができる。
【0062】
上記Σ、ΔAZ、ΔELそれぞれのビームを用いて、信号処理器901により、例えば、パルス圧縮(非特許文献11)、FFT処理を施してCFAR検出(非特許文献12)をした後、検出したレンジ−ドップラセルに対して測距処理、測角処理を行う。これにより、十分な自由度が得られ、ビームの指向精度を向上させ、サイドローブを低減することができる。また、角度高分解能や不要波抑圧を行う際の自由度を確保することができ、AZ軸及びEL軸で所定の性能を発揮することができる。
【0063】
なお、本実施形態において、モノパルスビーム出力についてデジタルアレイ信号を用いて性能を向上させる他の手法として、KR積アレイ(非特許文献13)等の角度高分解能処理が可能となる。
【0064】
また、上記実施形態はモノパルス出力を入力として開口分割信号を生成して処理する手法であるが、もともと開口4分割信号を入力できる場合は、それを用いて第1、第2の軸のアレイデジタル信号を生成し、以降の同様の処理を適用できるのは言うまでもない。
【0065】
なお、上記実施形態では、レーダ装置を例にして説明したが、パッシブ型のように送信系統を持たない受信装置のアンテナ装置に適用することも可能である。また、上記実施形態はそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。