(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の車両用制御装置、および鉄道車両を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の鉄道車両1の一例を示す図である。鉄道車両1は、例えば、先頭車両1Aと、複数の後続車両1B−1、・・・1B−Nとを含む。Nは1以上の親善数である。なお、以下の説明において、後続車両を他の後続車両と区別しない場合は「後続車両1B」と記載する。先頭車両1Aと複数の後続車両1Bとは機械的に連結される。先頭車両1Aおよび複数の後続車両1Bは、後続車両1Bに備えられた車両用電動機により発生した牽引トルクにより進行方向に走行する。
【0009】
先頭車両1Aは、先行車両の一例である。先頭車両1Aは、例えば、電圧検出装置10を含む。電圧検出装置10は、第三軌条1000から供給されている電力の電圧の有無を検出する。第三軌条1000は、給電部材の一例である。第三軌条1000は、鉄道車両1が走行するレールに沿って設けられている。電圧検出装置10は、信号線10Aを介して、後続車両1B内の各車両用制御装置100に接続されている。電圧検出装置10が検出した電圧の有無を示す先頭車両電圧有無信号は、信号線10Aを介して、複数の車両用制御装置100に供給される。なお、給電部材は、第三軌条1000であってもよいが、これに限定されない。給電部材は、架線であってもよい。
【0010】
後続車両1Bは、例えば、車両用制御装置100と、集電装置200とを含む。車両用制御装置100は、車両用電動機に電力を供給する。集電装置200は、例えば、集電靴である。集電装置200は、集電靴の接触部210が第三軌条1000と接触することで、第三軌条1000から供給された電力を車両用制御装置100に供給する。
【0011】
図2は、第1の実施形態の車両用制御装置100の一例を示す図である。車両用制御装置100は、例えば、電力変換回路110と、接触器120と、電圧検出部130と、制御部140とを含む。
【0012】
電力変換回路110は、例えば、複数の半導体素子、および複数の半導体素子をオンオフ制御する制御回路を備えるスイッチング回路を含む。電力変換回路110には、車両用電動機300に発生させる牽引トルクを指示するトルク指令値が供給される。電力変換回路110は、トルク指令値に基づいて半導体素子をオンオフ制御することで、接触器120を介して供給された直流電力を交流電力に変換して、車両用電動機300に供給する。
【0013】
接触器120は、機械的なスイッチである。接触器120は、開閉器の一例である。開閉器は、半導体素子を主回路として含む半導体スイッチであってもよい。接触器120は、制御部140から供給された制御信号Cに基づいて、導通状態と遮断状態との間で状態が切り替えられる。接触器120が遮断状態である場合、接触器120は、電力変換回路110を第三軌条1000から切り離す。接触器120は、制御信号Cに基づいて状態を切り替えた場合に、アンサ信号Rを制御部140に出力する。
【0014】
電圧検出部130は、集電装置200を介して第三軌条1000から車両用制御装置100に供給されている電力の電圧を検出する。電圧検出部130により検出した電圧値Vは、制御部140により読み取られる。
【0015】
制御部140は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、制御部140のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよい。制御部140には、信号線10Aを介して先頭車両電圧有無信号が供給される(信号検出部)。また、制御部140には、車両用制御装置100が搭載された号車を示す号車識別信号が供給される。さらに、制御部140には、速度センサ400が接続される。制御部140には、速度センサ400から鉄道車両1の走行速度が供給される。
【0016】
制御部140は、接触器120の状態を遮断状態に切り替える基準値としての距離(以下、距離基準値Drefと記載する。)を設定する距離設定部142を含む。距離設定部142は、CPUがプログラムを実行することにより実現される機能部である。
図3は、第1の実施形態における距離設定部142の一例を示す図である。距離設定部142には、号車識別信号が供給される。号車識別信号は、車両用制御装置100が先頭車両1Aから何番目の後続車両1Bであるかを示す。号車識別信号は、先頭車両1Aから供給されてよいが、これに限定されない。号車識別信号は、車両用制御装置100が接続された信号線(不図示)に供給されている信号レベルに基づいて判定された号車であってもよい。距離設定部142は、参照値としての距離D−1[メートル]、・・・D−N[メートル]のうち、いずれかの距離を距離基準値Drefとして設定する。距離設定部142は、例えば、号車識別信号が「2号車」である場合、距離D−1を距離基準値Drefとして設定する。
【0017】
以下、第三軌条1000にギャップ区間がある場合に、第三軌条1000から電力変換回路110に電力が供給されなくなる前に接触器120を遮断状態に切り替え、第三軌条1000から電力変換回路110への電力供給が再開した場合に接触器120を導通状態に切り替える動作について説明する。
図4は、第1の実施形態における先頭車両電圧有無信号、後続車両1Bの検出電圧、接触器120の状態、車両速度、および後続車両1Bの走行距離の関係を示す図である。
図5は、第1の実施形態における制御部140の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0018】
先頭車両1Aおよび後続車両1Bが第三軌条1000のギャップ区間1000#の開始位置P1に進入した場合、先頭車両1Aおよび後続車両1Bは、第三軌条1000から電力が給電されない状態になる。ギャップ区間1000#は、レールが交差するようなポイント切り替えなどの場所や、踏切において第三軌条1000が1000Aと1000Bとで途切れる区間(P1〜P2)である。
図6は、先頭車両1Aの集電靴の接触部210Aがギャップ区間1000#の開始位置P1に到来した様子を示す図である。
【0019】
先頭車両1Aがギャップ区間1000#の開始位置P1に到来した場合、先頭車両電圧有無信号は、オン状態からオフ状態に切り替わる(時刻t1)。制御部140は、先頭車両電圧有無信号がオフ状態であるか否かを判定することで(ステップS100)、先頭車両電圧有無信号がオフ状態に変化したと判定する。
【0020】
制御部140は、先頭車両電圧有無信号がオフ状態であると判定した場合、速度センサ400から供給されている車両速度を取得する(ステップS102)。次に、制御部140は、先頭車両電圧有無信号がオフ状態であると判定した時刻からの経過時間および車両速度に基づいて後続車両1Bの走行距離を算出する(ステップS104)。次に、制御部140は、算出した走行距離が距離基準値Dref以上であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0021】
制御部140は、走行距離が距離基準値Dref以上である場合、接触器120を遮断状態に切り替える(ステップS108)。制御部140は、
図4に示すように、走行距離が距離基準値Dref以上に至った時刻t2以後、接触器120に投入指令としての制御信号Cを供給する。制御部140は、接触器120が遮断状態に切り替えられた場合に、「オフ状態」のアンサ信号Rを受信する(時刻t3)。次に、制御部140は、電圧検出部130により検出される電圧値Vが閾値Vth以上であるか否かを判定する(ステップS110)。制御部140は、電圧値Vが閾値Vth以上ではない場合、待機する。
【0022】
その後、先頭車両1Aがギャップ区間1000#の終了位置P2に到来した場合、先頭車両電圧有無信号は、オフ状態からオン状態に切り替わる(時刻t4)。
【0023】
後続車両1Bがギャップ区間1000#の開始位置P1に進入した場合、電圧検出部130により検出される電圧値Vは、0付近に低下する(時刻t5)。
図7は、後続車両1Bの集電靴の接触部210Bがギャップ区間1000#の開始位置P1に到来した様子を示す図である。その後、後続車両1Bがギャップ区間1000#の終了位置P2に進入した場合、電圧検出部130により検出される電圧値Vは、第三軌条1000から供給される電力の電圧まで立ち上がる(時刻t6)。
図8は、後続車両1Bの集電靴の接触部210Bがギャップ区間1000#の終了位置P2に到来した様子を示す図である。
【0024】
制御部140は、後続車両1Bがギャップ区間1000#の終了位置P2を通過し、電圧検出部130により検出される電圧値Vが閾値Vth以上である場合、接触器120を導通状態に切り替える(ステップS112)。
図9は、第1の実施形態における電圧値Vの変化の一例を示す図である。制御部140は、例えば、接触器120を遮断状態に切り替えた場合の電圧値Vが所定の低電圧値VLに低下したことを判定し、且つ、低下した電圧値Vが閾値Vth以上に変化したことを判定してもよい。低電圧値VLは、例えば、後続車両1Bが第三軌条1000から離線したことを認識することができる値である。閾値Vthは、後続車両1Bが第三軌条1000に再着線したと認識することができる値である。
【0025】
制御部140は、
図4に示すように、電圧値Vが閾値Vth以上になった時刻t6の後、接触器120に投入指令としての制御信号Cを供給する(時刻t7)。制御部140は、接触器120が遮断状態に切り替えられた場合に、「オン状態」のアンサ信号Rを受信する(時刻t8)。以上のように、車両用制御装置100は、電圧値Vが低下する前に接触器120を遮断状態に切り替え、電圧値Vが立ち上がったことを検出した後に接触器120を導通状態に切り替えることができる。
【0026】
図10は、第1の実施形態における先頭車両電圧有無信号、後続車両1B−1の検出電圧、後続車両1B−1における接触器120の状態、後続車両1B−2の検出電圧、後続車両1B−2における接触器120の状態、および後続車両1B−1および1B−2の走行距離の関係を示す図である。後続車両1B−1は、例えば、先頭車両1Aに連結された2号車であり、後続車両1B−2は、例えば後続車両1B−1に連結された3号車であるものとする。また、後続車両1B−1の制御部140は、距離基準値Dref−1を設定しており、後続車両1B−2の制御部140は、距離基準値Dref−1より長い距離基準値Dref−2を設定しているものとする。
【0027】
先頭車両電圧有無信号がオン状態からオフ状態に切り替わった場合(時刻t11)、後続車両1B−1および1B−2の制御部140は、走行距離をそれぞれ算出する。後続車両1B−1の制御部140は、時刻t13において走行距離が距離基準値Dref−1に至ったと判定し、接触器120を遮断状態に切り替える(時刻t14)。その後、後続車両1B−1の電圧値Vは、後続車両1B−1がギャップ区間1000#の開始位置P1に進入した場合に低下し(時刻t15)、後続車両1B−1がギャップ区間1000#の終了位置P2に進入した場合に立ち上がる(時刻t16)。後続車両1B−1の制御部140は、電圧値Vが閾値Vthを超えたことを判定し、接触器120を導通状態に切り替える(時刻t17)。
【0028】
後続車両1B−2の制御部140は、時刻t18において走行距離が距離基準値Dref−2に至ったと判定し、接触器120を遮断状態に切り替える(時刻t19)。その後、後続車両1B−2の電圧値Vは、後続車両1B−2がギャップ区間1000#の開始位置P1に進入した場合に低下し(時刻t20)、後続車両1B−2がギャップ区間1000#の終了位置P2に進入した場合に立ち上がり(時刻t21)。後続車両1B−2の制御部140は、電圧値Vが閾値Vthを超えたことを判定し、接触器120を導通状態に切り替える(時刻t22)。
【0029】
以上より、鉄道車両1によれば、後続車両1Bがギャップ区間1000#の開始位置P1に進入する前に、先頭車両1Aに近い後続車両1Bから順次、接触器120を遮断状態に切り替える。また、鉄道車両1によれば、後続車両1Bがギャップ区間1000#の終了位置P2を通過した後、先頭車両1Aに近い後続車両1Bから順次、接触器120を導通状態に切り替える。
【0030】
以上説明した第1の実施形態の車両用制御装置100によれば、電圧値Vが低下する前に接触器120を遮断状態に切り替え、電圧値Vが立ち上がったことを検出した後に接触器120を導通状態に切り替えることができる。これにより、第1の実施形態の車両用制御装置100によれば、接触器120を遮断してからギャップ区間1000#に進入するので、第三軌条1000から車両用制御装置100に過電圧が印加されることを抑制することができる。この結果、第2の実施形態の車両用制御装置100によれば、接触器120の劣化を抑制することができる。
【0031】
第1の実施形態の車両用制御装置100は、先頭車両1Aに近い後続車両1Bの接触器120を遮断状態に切り替えた場合には、先頭車両1Aから遠い後続車両1Bにより牽引トルクを発生させて、鉄道車両1を走行させることができる。第1の実施形態の車両用制御装置100は、先頭車両1Aから遠い後続車両1Bの接触器120を遮断状態に切り替えた場合には、先頭車両1Aに近い後続車両1Bにより牽引トルクを発生させて、鉄道車両1を走行させることができる。この結果、車両用制御装置100によれば、鉄道車両1全体として力行性能が低下することを抑制することができる。また、車両用制御装置100によれば、鉄道車両1全体の過電圧保護の発生数と、接触器120の接点摩耗を抑制することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。
図11は、第2の実施形態において、鉄道車両1と第三軌条1000との関係の一例を示す図である。第三軌条1000は、例えば、複数のギャップ区間1000#−1、1000#−2および1000#−3が、各車両の進行方向長さよりも狭い間隔で設けられる場合がある。車両用制御装置100により後続車両1Bがギャップ区間1000#の開始位置P1、P3、およびP5のそれぞれに進入する前に接触器120を遮断状態に切り替え、ギャップ区間1000#の終了位置P2、P4、およびP6のそれぞれを通過した後に接触器120を導通状態に切り替えると、接触器120の切り替えが繰り返して行われてしまう。この場合、例えば、後続車両1Bがギャップ区間1000#の終了位置P2を通過した後に後続車両1Bの接触器120を導通状態に制御しても、ギャップ区間1000#の開始位置P3に進入した後に接触器120が導通状態に切り替わってしまう可能性がある。また、先頭車両1Aがギャップ区間1000#の開始位置P3に進入した後に後続車両1Bの接触器120を遮断状態に制御しても、ギャップ区間1000#の終了位置P4を通過した後に接触器120が遮断状態に切り替わってしまう可能性がある。
【0033】
第2の実施形態の車両用制御装置100は、先頭車両1Aがギャップ区間1000#の開始位置に進入した回数と、後続車両1Bがギャップ区間1000#の終了位置を通過した回数とが一致した場合に、接触器120を遮断状態から導通状態に切り替える。以下、このような第2の実施形態の車両用制御装置100の動作について説明する。
【0034】
図12は、第2の実施形態における先頭車両電圧有無信号、後続車両1Bの検出電圧、接触器120の状態、車両速度、後続車両1Bの走行距離、ギャップ区間1000#のへの進入回数と、ギャップ区間1000#の通過回数の関係を示す図である。
図13は、第2の実施形態における制御部140の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図12に示した先頭車両電圧有無信号の変化は、鉄道車両1が
図11に示した第三軌条1000に沿って走行した場合の一例を示す。
図12における先頭車両電圧有無信号の変化に、先頭車両1Aが進入した位置P1〜P6を示す。
【0035】
まず、制御部140は、先頭車両電圧有無信号がオフ状態であるか否かを判定し(ステップS200)、先頭車両1Aがギャップ区間1000#−1の開始位置P1に進入して先頭車両電圧有無信号がオフ状態に変化した場合(時刻t31)、ギャップ進入回数をカウントアップする(ステップS202)。これにより、後続車両1Bにおいてカウントされたギャップ進入回数は「1」に変化する。次に、制御部140は、鉄道車両1の速度を取得して(ステップS204)、後続車両1Bの走行距離を算出し(ステップS206)、算出した走行距離が距離基準値Dref以上である場合に(ステップS208)、接触器120を遮断状態に切り替える(ステップS210)。制御部140は、電圧値Vが閾値Vthではない場合、ステップS200に処理を戻す。
【0036】
その後、先頭車両1Aがギャップ区間1000#−1の終了位置P2を通過して先頭車両電圧有無信号がオン状態に変化し(時刻t34)、さらに先頭車両1Aがギャップ区間1000#−2の開始位置P3に進入して先頭車両電圧有無信号がオフ状態に変化した場合(時刻t35、ステップS200)、制御部140は、ギャップ進入回数をカウントアップする(ステップS202)。これにより、後続車両1Bにおいてカウントされたギャップ進入回数は「2」に変化する。さらに、先頭車両1Aがギャップ区間1000#−2の開始位置P5に進入して先頭車両電圧有無信号がオフ状態に変化した場合(時刻t37、ステップS200)、制御部140は、ギャップ進入回数をカウントアップする(ステップS202)。これにより、後続車両1Bにおいてカウントされたギャップ進入回数は「3」に変化する。
【0037】
その後、後続車両1Bがギャップ区間1000#−1の開始位置P1に進入した場合に電圧値Vが低下し(時刻t36)、後続車両1Bがギャップ区間1000#−1の終了位置P2に進入した場合に電圧値Vが立ち上がる(時刻t38)。この場合、制御部140は、電圧値Vが閾値Vth以上であると判定し(ステップS212)、ギャップ通過回数をカウントアップする(ステップS214)。これにより、後続車両1Bにおいてカウントされたギャップ通過回数は「1」に変化する。
【0038】
次に、制御部140は、ギャップ進入回数とギャップ通過回数が一致したか否かを判定する(ステップS216)。制御部140は、ギャップ進入回数とギャップ通過回数が一致していないので、ステップS200に処理を戻す。これにより、制御部140は、接触器120の遮断状態を継続する。
【0039】
その後、後続車両1Bがギャップ区間1000#−2の終了位置P4に進入した場合に電圧値Vが立ち上がる(時刻t39)。この場合、制御部140は、電圧値Vが閾値Vth以上であると判定し(ステップS212)、ギャップ通過回数をカウントアップする(ステップS214)。これにより、後続車両1Bにおいてカウントされたギャップ通過回数は「2」に変化する。次に、制御部140は、ギャップ進入回数とギャップ通過回数とが一致していないので(ステップS216)、ステップS200に処理を戻す。これにより、制御部140は、接触器120の遮断状態を継続する。
【0040】
その後、後続車両1Bがギャップ区間1000#−3の終了位置P6に進入した場合に電圧値Vが立ち上がる(時刻t40)。この場合、制御部140は、電圧値Vが閾値Vth以上であると判定し(ステップS212)、ギャップ通過回数をカウントアップする(ステップS214)。これにより、後続車両1Bにおいてカウントされたギャップ通過回数は「3」に変化する。次に、制御部140は、ギャップ進入回数とギャップ通過回数とが一致したので(ステップS216)、所定時間Tが経過したか否かを判定する(ステップS218)。
【0041】
制御部140は、所定時間Tが経過していない場合、ステップS200に処理を戻す。制御部140は、所定時間Tが経過した場合、接触器120に投入指令としての制御信号Cを供給する(ステップS220、時刻t41)。制御部140は、接触器120が遮断状態に切り替えられた場合に、「オン状態」のアンサ信号Rを受信する(時刻t42)。以上のように、車両用制御装置100は、電圧値Vが低下する前に接触器120を遮断状態に切り替え、電圧値Vが立ち上がったことを検出した後に接触器120を導通状態に切り替えることができる。
【0042】
以上説明したように、第2の実施形態の車両用制御装置100によれば、ギャップ進入回数とギャップ通過回数とが一致した場合に、接触器120を導通状態に切り替えるので、ギャップ区間が繰り返されるような状況であっても、接触器120の状態を繰り返して切り替えることを抑制することができる。これにより、第2の実施形態の車両用制御装置100によれば、接触器120の動作回数を削減することができる。この結果、第2の実施形態の車両用制御装置100によれば、接触器120の劣化を抑制することができる。
【0043】
また、第2の実施形態の車両用制御装置100は、ギャップ進入回数とギャップ通過回数とが一致した後に遅れ時間としての所定時間Tが経過した後に、接触器120を導通状態に切り替える。第2の実施形態の車両用制御装置100によれば、遅れ時間を経過する前にギャップ進入回数がカウントアップされた場合に、接触器120を遮断状態に維持することができる。この結果、第2の実施形態の車両用制御装置100によれば、ギャップ区間1000#が繰り返される区間が経過したと判定した場合に接触器120を導通状態に切り替えることができ、接触器120の劣化を更に抑制することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の車両用制御装置100Aは、外部装置から電力変換回路110に供給されているトルク指令値に基づいて鉄道車両1の速度を推定する点で、第1および第2の実施形態の車両用制御装置100とは異なる。以下、この相違点を中心に説明する。
【0045】
図14は、第3の実施形態の車両用制御装置100Aの一例を示す図である。車両用制御装置100Aの制御部140は、速度推定部144を備える。速度推定部144は、トルク指令値に基づいて、車両用電動機300の回転数などの鉄道車両1の速度を推定する情報を取得する。また、速度推定部144は、例えば、車両用電動機300の回転による誘導起電力に基づいて、鉄道車両1の速度を推定してもよい。
【0046】
第3の実施形態の車両用制御装置100Aによれば、速度センサ400を備えることなく鉄道車両1の速度を推定するので、部品点数および信号線を削減することができると共に、装置の低コスト化を図ることができる。
【0047】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の車両用制御装置100Bは、外部装置から供給される前後進指令信号に基づいて、先頭車両1Aから自車両までの距離を設定する点で、第1、第2、および第3の実施形態とは異なる。以下、この相違点を中心に説明する。
【0048】
図15は、第4の実施形態の車両用制御装置100Bの一例を示す図である。車両用制御装置100Bの制御部140には、外部装置から前後進指令信号が供給される。前後進指令信号は、後続車両1Bが前進する指令信号、または後続車両1Bが
後進する指令信号を含む。後続車両1Bが前進する指令信号は、鉄道車両1のうち進行方向側の後続車両1Bに供給される。後続車両1Bが後進する指令信号は、鉄道車両1のうち進行方向とは逆側の後続車両1Bに供給される。
【0049】
前後進指令信号は、例えば、電力変換回路110の制御回路に供給される
。
【0050】
図16は、第4の実施形態において、前後進指令信号を鉄道車両1の各車両に分配する一例を示す図である。後続車両1B−1は、鉄道車両1の中間位置から進行方向側の後続車両1Bであり、後続車両1B−2および1B−3は、鉄道車両1の中間位置から進行方向とは逆側の後続車両1Bである。鉄道車両1は、例えば、信号反転部5を含む。信号反転部5は、例えば、鉄道車両1の運転台に備えられる。信号反転部5は、進行方向側の後続車両1B−1に前進指令信号を供給する。信号反転部5は、前進指令信号の振幅を反転させた後進指令信号を後続車両1B−2および1B−3に供給する。
【0051】
図17は、第4の実施形態における車両用制御装置100Bにより先頭車両1Aから自車両までの距離を設定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、制御部140は、前後進指令信号を受信したか否かを判定する(ステップS300)。制御部140は、受信した前後進指令信号が前進指令信号であるか否かを判定する(ステップS302)。制御部140は、例えば、前後進指令信号の振幅に基づいて、前進指令信号であるか否かを判定する。制御部140は、受信した前後進指令信号が前進指令信号である場合、距離基準値Drefを0メートルに設定する(ステップS304)。制御部140は、受信した前後進指令信号が後進指令信号である場合、距離基準値Drefを先頭車両1Aから鉄道車両1の中間位置までの距離Dref#に設定する(ステップS306)。
【0052】
なお、制御部140は、前後進指令信号が後進指令信号である場合、距離基準値Drefを先頭車両1Aから鉄道車両1の中間位置までの距離Dref#に設定してもよいが、これに限定されない。制御部140は、先頭車両1Aから鉄道車両1の中間位置よりも進行方向側の位置までの距離を設定してもよい。また、制御部140は、受信した前後進指令信号が前進指令信号である場合、距離基準値Drefを0メートルに設定してもよいが、これに限定されない。制御部140は、後続車両1Bに電力が供給されなくなる前に接触器120を遮断状態に切り替えればよく、先頭車両1Aの先端から先頭車両1Aの進行方向の逆側の位置を第2の距離に設定してもよい。
【0053】
これにより、後続車両1B−1の制御部140は、距離基準値Drefを0メートルに設定する。後続車両1B−1の制御部140は、Drefが0メートルであるので、先頭車両電圧有無信号がオフ状態に変化した場合に、すぐに接触器120を遮断状態に制御する。このとき、制御部140は、走行距離の算出をすることなく、接触器120の遮断状態に制御してもよい。
【0054】
後続車両1B−2および1B−3の制御部140は、距離基準値DrefをDref#に設定する。後続車両1B−2および1B−3の制御部140は、先頭車両電圧有無信号がオフ状態に変化した場合に、後続車両1B−2および1B−3がDref#だけ走行したことを判定した場合に接触器120を遮断状態に制御する。
【0055】
以上説明した第4の実施形態の車両用制御装置100Bによれば、後続車両1Bが辞し車両の号車を認識できないが前後進指令信号を受信した場合、距離基準値を設定することができる。これにより、第4の実施形態の車両用制御装置100Bによれば、上述した実施形態と同様に、接触器120の劣化を抑制すると共に、力行性能の低下を抑制することができる。
【0056】
第4の実施形態の車両用制御装置100Bは、鉄道車両1における中間位置から先頭車両1A側の後続車両1Bの接触器120を遮断状態に切り替えた場合には、中間位置から進行方向の逆側の後続車両1Bにより牽引トルクを発生させて、鉄道車両1を走行させることができる。第4の実施形態の車両用制御装置100は、中間位置から進行方向の逆側の後続車両1Bの接触器120を遮断状態に切り替えた場合には、中間位置から先頭車両1A側の後続車両1Bにより牽引トルクを発生させて、鉄道車両1を走行させることができる。この結果、車両用制御装置100によれば、鉄道車両1全体として力行性能が低下することを抑制することができる。
【0057】
例えば、ギャップ区間1000#がある登り区間を走行する場合において、先頭車両1Aがギャップ区間1000#に進入した場合には、後進指令信号を受信している後続車両1Bにより鉄道車両1を加速させ、後進指令信号を受信している後続車両1Bがギャップ区間1000#に進入した場合には、前進指令信号を受信している後続車両1Bにより鉄道車両1を加速させることができる。これにより、車両用制御装置100Bによれば、上り勾配のために鉄道車両1の加速ができない状態に陥ることを回避することができる。
【0058】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、先頭車両電圧有無が先頭車両1Aに電力が供給されていないことを表す値に変化した場合、距離設定部142により設定された距離および鉄道車両1の速度に基づいて、第三軌条1000から電力変換回路110に電力が供給されなくなる前に接触器120を遮断状態に切り替え、電圧検出部130により検出された電圧が閾値Vthよりも低い値から閾値Vthよりも高い状態に変化した場合に、接触器120を導通状態に切り替える制御部140を持つことにより、車両用制御装置100に過電圧が供給されること、および接触器120の接点摩耗を抑制することができるために部品の劣化を抑制すると共に、牽引トルクの低下を抑制することができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。