(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記延伸取付部から延伸した状態の段部状の耳部が設けられ、この耳部を含む前記延伸取付部の表面に複数の使用圧力のフランジ面の外径の位置が表された表示部が設けられた請求項1に記載のガスケット。
前記耳部が延長されて摘み部が設けられ、水平配管された前記フランジ面に前記ガスケット本体を装着する際に、前記摘み部を摘んで前記ガスケット本体を垂下させた状態で、被取付面である前記フランジ面に形成されたボルト穴と前記ボルト穴との位置を合わせた請求項8に記載のガスケット。
前記耳部が延長されて設けられた摘み部について、使用圧力に応じた複数の摘み部を設けることで、水平配管された前記フランジ面に前記ガスケット本体を垂下させた状態で、被取付面である前記フランジ面に形成された使用圧力に応じたボルト穴と前記ガスケットのボルト穴の位置を合わせた請求項9に記載のガスケット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、フランジ継手同士を接合する場合、RF形−RF形、RF形―GF形、或はFF形同士の各接合において、フェイス面の形状や使用圧力の違いによってフランジへの締付け状態が違うため、異なるガスケットが必要になる。このことから、特許文献1のようなRF形ガスケットやFF形同士用のリングガスケットを、GF形ガスケット用として兼用化することはできない。RF形ガスケットにおいては、フランジにおいてボルトナットで接続するRF形全面ガスケットと呼ばれるガスケットも存在するが、このRF形全面ガスケットや、或は、FF形同士用の全面形ガスケットを上記の各接合に使用しようとしても、ボルト穴の穴径や使用圧力によってフランジの大きさが異なるため、芯出し状態で装着することが難しい。
一方、RF形−RF形やFF形同士用としてGF形ガスケットを兼用化しようとしたとしても、GF形ガスケットは甲丸形であるため、シール面が平面であるRF形フランジやFF形フランジに装着することはできない。
このような理由から、接合するフランジの種類や大きさの違いに応じて多種類のガスケットを予め用意する必要があり、ガスケットの在庫が増加したり、施工時に作業者のガスケットの選択の誤りにより施工不良が起こるおそれがある。
【0007】
特許文献2に記載されたガスケットは、多種類の接続締結に用いることができるが、呼び圧力が異なり、ボルト穴のピッチ円、穴径、フランジの種類(RF形、GF形)が異なる場合には兼用することができない。
【0008】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、フランジの種類や大きさが異なる場合にも兼用可能であり、接合するフランジに応じて芯出ししながら装着して高いシール性を発揮できるとともに、ガスケットの装着作業の容易化と耐久性の向上を図ったガスケットとこれを用いた配管機材のフランジ接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、略環状のガスケット本体の両面に環状シール面が設けられ、この環状シール面の外周側
は、各種フランジ面の外径に合わせた複数の異なる直径の延伸取付部で構成されて
おり、略環状の芯金のガスケット本体のボルト穴に対応する部位には、芯金の外周側を開放した切欠き部が設けられているガスケットである。
【0010】
請求項2に係る発明は、ガスケット本体は、略環状の芯金が被覆部で被覆されたガスケットである。
【0011】
請求項3に係る発明は、芯金の外径は、最小のフランジ面の外径に合わせた外径であるガスケットである。
【0012】
請求項4に係る発明は、延伸取付部に、複数の使用圧力に応じたピッチ円の異なるボルト穴が設けられたガスケットである。
【0013】
請求項5に係る発明は、複数の使用圧力に応じたピッチ円の異なるボルト穴を同一中心線上に重ねて配置して各ボルト穴を兼用可能としたガスケットである。
【0014】
請求項6に係る発明は、複数の使用圧力に応じたピッチ円の異なるボルト穴を同一中心線上に重ねて配置して各ボルト穴を兼用可能としたガスケットである。
【0016】
請求項
7に係る発明は、切欠き部には、芯金を被覆した被覆部でボルト穴がゴムライニングされた状態でボルト穴を形成したガスケットである。
【0017】
請求項
8に係る発明は、延伸取付部から延伸した状態の段部状の耳部が設けられ、この耳部を含む延伸取付部の表面に複数の使用圧力のフランジ面の外径の位置が表された表示部が設けられたガスケットである。
【0018】
請求項
9に係る発明は、耳部が延長されて摘み部が設けられ、水平配管されたフランジ面にガスケット本体を装着する際に、摘み部を摘んでガスケット本体を垂下させた状態で、被取付面であるフランジ面に形成されたボルト穴とボルト穴との位置を合わせたガスケットである。
【0019】
請求項
10に係る発明は、耳部が延長されて設けられた摘み部について、使用圧力に応じた複数の摘み部を設けることで、水平配管された前記フランジ面にガスケット本体を垂下させた状態で、被取付面であるフランジ面に形成された使用圧力に応じたボルト穴とガスケットのボルト穴の位置を合わせたガスケットである。
【0020】
請求項
11に係る発明は、ガスケットの延伸取付部には、凹状の切込み部が備えられ、この切込み部によって引きちぎることでガスケットの余分な外周部位を除去したガスケットである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によると、ガスケット本体の両面の対称位置に環状シール面を設け、この環状シール面の外周側に延伸取付部を設け、この適宜の延伸取付部でフランジ面の外径に対応可能になることで、使用圧力などの違いによりフランジの種類や大きさが異なる場合にも、ガスケット本体を兼用可能であり、延伸取付部を介して接合するフランジの外径に応じて芯出ししながら装着して高いシール性を発揮できる。
また、芯金のガスケット本体のボルト穴に対応する部位には、芯金の外周側を開放した切欠き部を設け、この切欠き部にボルトを通すようにしているので、使用圧力に応じてピッチ円と穴数が異なるフランジ毎に異なる形状の芯金を準備する必要がなく、芯金の形状を一種類に集約することができる。
さらに、芯金に切欠き部を設けてボルトを通すようにしてボルト穴を設けないため、芯金にボルト穴を設けた場合のように、ボルト穴の外側の部分では芯金の幅が細くなって強度が低下し、ガスケットを誤って落とした場合等、外部から力が加わったときにこの部分が変形するおそれがない。
【0024】
請求項2に係る発明によると、芯金を設けていることにより施工がしやすく、フランジ面の間に強く締付けた場合にも、その締付け荷重による環状シール面の内外周側への変形やフランジからのはみ出しを芯金で防止してシール性を確保できる。被覆部の延伸取付部を平面座形フランジ、全面座形フランジ、溝形フランジのフランジ面の外径に合わせながら装着することにより、ガスケット本体を芯出し状態で装着してフランジ接合できる。
【0025】
請求項3に係る発明によると、芯金の外径を最小のフランジ面の外径と同一かわずかに小さくすることで、フランジ接合後にフランジ面の外径からはみ出したガスケット本体を切除できる。これにより、フランジの周りに保温材や固定金具を施工できる。
【0026】
請求項4に係る発明によると、フランジ外径や、ボルト穴の穴径、位置が異なる場合にも、ガスケット本体を兼用しながら締付けでき、しかも、ピッチ円の異なるボルト穴を同じピッチ角で同じボルト穴として形成すればボルト穴の数を少なくすることもできる。
【0027】
請求項5又は6に係る発明によると、各ボルト穴を兼用可能としていることで、ボルト穴の位置を間違うことなくガスケット本体をフランジ面に装着しながら複数の使用圧力に対応できる。ボルト穴の数を必要最小限に抑えながら異なる使用圧力に対応できるため、ガスケット本体の強度の低下を抑えて製作も容易になる。
【0030】
請求項
7に係る発明によると、切欠き部には、芯金を被覆した被覆部でボルト穴がゴムライニングされた状態でボルト穴が形成され、このボルト穴の外側の部分には芯金が通っていないので、ボルト穴を小さく形成してもゴムの伸縮性によりボルト穴を広げて挿入スペースを確保することができる。加えて、ゴムの収縮力によりボルトをフランジの中心に向かって押し付けることによってボルトの位置をフランジのボルト穴に固定することになり、その結果、ガスケットの中心とフランジの中心とを一致させることができる。
【0031】
請求項
8に係る発明によると、耳部の表示部をフランジ外径に合わせることで外径の異なるフランジ面にガスケット本体を芯出ししながらフランジ接合でき、フランジ接合後には、フランジ面の外径からはみ出した部分を切除することでフランジ外径に延伸取付部の大きさを合わせて複数種の外径のフランジにも対応できる。
【0032】
請求項
9に係る発明によると、摘み部を摘んでガスケット本体を垂下させることにより、水平配管されたフランジ面のボルト穴の位置にボルト穴を合わせつつ適正な装着状態でガスケット本体を取付けできる。これにより、異なる使用圧力でボルトナットの本数が異なる場合でも、容易にボルト穴を合わせて適正な状態で締付け固定できるため、ガスケットのシール性能を確保して確実に止水できる。
【0033】
請求項
10に係る発明によると、複数の摘み部のうち、使用圧力に応じた摘み部を摘んでガスケット本体を垂下させることで異なる使用圧力にも使用でき、異なる使用圧力でボルトナットの本数が異なる場合でも、容易にボルト穴を合わせて適正な状態で締付け固定できるため、ガスケットのシール性能を確保して確実に止水できる。
【0034】
請求項
11に係る発明によると、フランジ周りにはみ出したガスケットの余分な外周部位を、はさみやカッター等の道具を使用することなく、手などで切込み部に沿って簡単に引きちぎって除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明におけるガスケットとこれを用いた配管機材のフランジ接合構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明のガスケットを介して補修弁をフランジ接合した状態、
図3においては、本発明のガスケットの第1実施形態、
図5においては、
図3のガスケットの装着状態を示している。なお、本例の場合は、配管の呼び径75の場合を示している。
【0039】
図1に示した補修弁(以下、補修弁本体1という)は、配管機材の一種であり、本発明のガスケット(以下、ガスケット本体10という)は、この補修弁本体1の一次側を立ち上がり管2に接合し、補修弁本体1の二次側を空気弁(又は図示しない消火栓、短管)3に接合する際に設けられる。補修弁本体1の一、二次側にはそれぞれ継手部5が設けられ、この継手部5には後述する各種の外径を有するガスケット本体10締付用のフランジ面20〜22の何れかが設けられている。一方、立ち上がり管2の二次側、空気弁3の一次側にもそれぞれ継手部5が設けられ、この継手部5にも同様にフランジ面20〜22の何れかが設けられる。
図2に示すように、ガスケット本体10は、補修弁本体1の一次側継手部5と立ち上がり管2の二次側継手部5との間、補修弁本体1の二次側継手部5と空気弁3の一次側継手部5との間にそれぞれ装着される。
なお、配管機材とは、フランジ継手をもつバルブ、直管、異形管である。
【0040】
ガスケット本体10は、上記した外部の継手部5のフランジ面である、平面座形(Raised Face:RF形)のフランジ面20、後述の全面座形(Flat Face:FF形)のフランジ面22、溝形(Grooved Face:GF形)のフランジ面21に装着可能に設けられ、より具体的には、RF形フランジ面20同士を接合するRF形−RF形、RF形フランジ面20とGF形フランジ面21とを接合するRF形−GF形、FF形フランジ面22同士を接合するFF形−FF形の接合に用いられる。これらの組合わせは、流体の使用圧力(呼び圧力)によって選定され、RF形−RF形は、一般に、使用圧力7.5K(0.75MPa用)、RF形−GF形は、使用圧力7.5K、10K(1.0MPa用)、16K(1.6MPa用)、20K(2.0MPa用)の場合に用いられる。被取付面であるフランジ面20〜22には、フランジ接合用のボルト穴11が使用圧力に応じたピッチにより等間隔に形成され、このボルト穴11を介してボルトナット12により各フランジ面が接合される。
【0041】
図5においては、継手部5の一方をRF形フランジ面20、他方をGF形フランジ面21とし、これらの間にガスケット本体10を装着して接合した状態を示している。RF形フランジ面20は、ガスケット本体10とのシール面が環状のフラット面により設けられる。一方、GF形フランジ面21では、環状のフラット面の略中央位置に環状溝23が形成され、この環状溝23を有するフラット面がガスケット本体10とのシール面となる。環状溝23には、図示しない一般のGF形ガスケットを嵌合させて装着することも可能になっている。
【0042】
図3、
図5、
図6(a)、
図6(b)に示すように、ガスケット本体10は、芯金30と被覆部31とを有し、内部に補強用の金属製芯金30が設けられ、この芯金30がゴム等の弾性材料からなる被覆部31で被覆されて薄板状に設けられる。
【0043】
ガスケット本体10の両面は対称形状に設けられ、被覆部31の両面には環状シール面32が設けられる。環状シール面32の外周側には、フランジ面20(、フランジ面22)、21への取付け用の延伸取付部33が一体に設けられ、この延伸取付部33にはフランジ面20、21への取付け用のボルト穴34、35、36が複数箇所に設けられる。このように、ガスケット本体10は、両面が対称形状に設けられる。なお、環状シール面32とは、フランジ面20と接する面のことである。
【0044】
図4において、芯金30は略環状に設けられ、この芯金30の外周縁のボルト穴34〜36が設けられる位置には、切欠き部37が形成される。切欠き部37(ボルト穴34〜36)は、ボルト穴11の後述するピッチ円DP1、DP2、DP3と同じピッチ円で等間隔に配設される。切欠き部37は、芯金30の外周側を開放して形成されているため、ボルト穴34〜36よりも外周側となる延伸取付部には芯金30が通っていない。このため、ボルト穴34〜36は、切欠き部37の開放方向に対しては、穴部を構成するゴム等の弾性材料からなる延伸取付部33を引き伸ばして拡径させ、ボルトを挿通することができる。
【0045】
芯金30の外径DSは、RF形フランジ面20(、FF形フランジ面22)及びGF形フランジ面21の最小のフランジ面の外径、本実施形態では使用圧力1.0MPaのフランジ面20、21の外径に合わせた外径に設けられる。
【0046】
図5、
図6(b)において、環状シール面32は、フランジ面20、21よりも大径に設けられ、これによって、ガスケット本体10は、RF形フランジ面20(、FF形フランジ面22)、GF形フランジ面21の何れのフランジ面にも当接可能に設けられて兼用可能になっている。
延伸取付部33と環状シール面32との間には段部39が形成され、この段部39を介して環状シール面32よりも延伸取付部33が薄く設けられている。
【0047】
ガスケット本体10の両面には、環状シール面32、32から突出するように環状突部40が同心上に設けられる。環状突部40は、断面略三角形状であって、GF形フランジ面21の環状溝23の内周縁23a或は外周縁23bの少なくとも何れか一方に当接しながら、この環状溝23に嵌め込まれる嵌め込み部位になっている。本実施形態では、内周縁23aに当接しながら環状溝23に嵌め込み可能に設けられ、これにより、ガスケット本体10をGF形フランジ面21に装着するときにこのガスケット本体10を位置決め状態で装着可能になる。
【0048】
これと共に、環状突部40は、RF形フランジ面20、後述のFF形フランジ面22に圧接シールするシール部位になっている。これにより、ガスケット本体10をRF形フランジ面20、FF形フランジ面22に装着するときに、これらフランジ面20、22と環状突部40とによりシール性が発揮される。
【0049】
図7に示すように、環状突部40の内径側と外周側にはテーパ面41、42がそれぞれ設けられ、これらテーパ面41、42は、垂直面からの角度α、角度βによって異なる勾配で形成される。角度αと角度βとは、角度α≦角度βの関係であり、これによって内周側のテーパ面41が外周側のテーパ面42によりも急勾配に設けられる。
【0050】
図5、
図6(a)において、環状突部40の両側には、窪み部43、44が設けられる。この窪み部43、44は、環状突部40の角度α≦角度βの関係に応じて、内周側の窪み部43が狭い溝幅、外周側の窪み部44が窪み部43よりも広い溝幅で形成される。環状突部40は、RF形フランジ面20で押しつぶされ、この場合、窪み部43、44が押しつぶされた環状突部40の逃げ代となり、環状突部40が窪み部43、44に逃げるように弾性変形することで、この環状突部40のフランジ面20側への膨出変形が防がれる。
【0051】
窪み部44よりも外周側には、複数の溝部45、45がフランジ面20、21との対向面に同心上に形成され、これら溝部45の間に幅狭の環状シール部46が設けられる。環状シール部46は、ガスケット本体10の装着時において、RF形フランジ面20(、FF形フランジ面22)又はGF形フランジ面21に圧接シール可能となる。本実施形態では、溝部45の数を2本としているが、溝部45を3本以上設けるようにしてもよい。
この場合、環状シール部46が複数本形成される。
【0052】
図3、
図9において、延伸取付部33は、複数の使用圧力のフランジ面20〜22の外径に合わせた複数の異なる直径で構成され、本実施形態では、RF形フランジ面20(FF形フランジ面22)、GF形フランジ面21の外径に合わせて延伸するように設けられる。延伸取付部33は、少なくとも環状シール面32からボルト穴34〜36までよりも大径となる位置まで設けられ、この延伸取付部33により、ガスケット本体10がボルトナット12を介してフランジ面20、21の間に取付けられる。
【0053】
延伸取付部33には、芯金30の切欠き部37の位置に合わせてボルト穴34〜36がそれぞれ同一中心線で複数箇所に形成され、これらのボルト穴34〜36は、複数の使用圧力に応じて異なるピッチ円で設けられる。例えば、ボルト穴34は、使用圧力0.75MPa用のボルトナット用のピッチ円、ボルト穴35は、使用圧力1.0MPaのボルトナット用のピッチ円、ボルト穴36は、使用圧力1.6MPaのピッチ円によりそれぞれ設けられる。使用圧力1.0MPa、1.6MPaのボルト穴35、36は同じピッチ角により同一中心線上に重ねて配置され、これらの場合にはそれぞれ8組のボルトナット12、使用圧力0.75MPaの場合には4組のボルトナット12で締付け固定される。
【0054】
また、切欠き部37は、芯金30の外周側を開放して形成されているため、ボルト穴34〜36よりも外周側となる延伸取付部には芯金30が通っていない。このため、ボルト穴34〜36は、切欠き部37の開放方向に対しては、穴部を構成するゴム等の弾性材料からなる延伸取付部33を引き伸ばして拡径させ、ボルトを挿通することができる。
【0055】
延伸取付部33の外周方向には円弧状の耳部50が延伸して形成され、この耳部50は、複数の使用圧力の違いに応じて段部状に設けられ、各耳部50の外縁が異なるフランジ外径と一致するようになっている。耳部50を含む延伸取付部33の表面には表示部51、52、53が設けられ、これら表示部51〜53は、複数の使用圧力のRF形フランジ面20(FF形フランジ面22)、GF形フランジ面21の使用圧力に応じて外径の位置を示す位置に設けられる。
【0056】
本実施形態では、延伸取付部33の外周縁が使用圧力1.0MPaのフランジ径の表示部51であり、この表示部51が使用圧力1.0MPaのフランジ面に一致する。耳部50における延伸取付部33よりも一段拡径した部分には、使用圧力1.6MPaのフランジ径の表示部52が設けられ、この表示部52が一点鎖線で示す使用圧力1.6MPaのフランジ面に一致する。表示部52よりも拡径側の耳部50の外周縁には、使用圧力0.75MPaのフランジ径の表示部53が設けられ、この表示部53が二点鎖線に示す使用圧力0.75MPaのフランジ面に一致する。これらのうち、例えば、使用圧力1.0MPaの表示部51は、図示しない圧力の数値が表示され、使用圧力0.75MPa、1.6MPaの表示部53、52は、図示しない圧力の数値とフランジ面の外径を表す円弧により表示される。
【0057】
耳部50はガスケット本体10の四箇所に形成され、この耳部50と、耳部50に挟まれた部分により、使用圧力0.75MPa、1.0MPa、1.6MPaの各表示部53、51、52がそれぞれ円周方向に4箇所ずつ設けられる。
【0058】
さらに、図に示すように、少なくとも一箇所の耳部50から延長されて摘み部55が形成され、この摘み部55を摘んで装着することが可能になる。この実施形態では、水平配管されたフランジ面にガスケット本体10の摘み部55を摘んで垂下させたときに、使用圧力10K、16Kのボルト穴35、36がフランジ面のボルト穴11の位置に合うようになっている。
【0059】
なお、この実施形態では、ガスケット本体10が使用圧力0.75MPa、1.0MPa、1.6MPaのフランジ面に対応する場合を説明したが、使用圧力1.6MPa以上もしくは0.75MPa以下のフランジ面の場合にも、前記の場合と同様に、環状突部40や耳部50等を設けたガスケット本体を構成できる。
また、配管機材として補修弁本体1を用いた例を説明したが、補修弁本体1以外の様々な図示しないバルブや水栓等の配管機材のフランジ接合にも利用できる。
【0060】
続いて、上記のガスケット本体を用いた配管機材のフランジ接合構造と作用を説明する。
図1、
図2に示した配管機材である補修弁本体1を、RF形フランジ面20、FF形フランジ面22、GF形フランジ面21の何れかを介して立ち上がり管2と空気弁3との間に接合する場合には、この配管機材の対向する継手部5のフランジ面の間に、前述したガスケット本体10を装着しながら接合する。
【0061】
この場合、環状突部40の何れか一方又は双方を、GF形フランジ面21の環状溝23の内周縁23a或は外周縁23bの少なくとも何れか一方に当接させながら環状溝23に嵌め込むようにするか、又は、環状突部40の何れか一方又は双方をRF形フランジ面20或はFF形フランジ面22に圧接シールした状態でフランジ接合するようにする。
【0062】
図5においては、ガスケット本体10を用いてRF形−GF形のフランジ接合を実施した状態を示す。
この場合、ガスケット本体10をGF形フランジ面21に載置したときに、環状突部40が、環状溝23の内周縁23aに当接しながら環状溝23に嵌め込んだ状態になる。これにより、ガスケット本体10をGF形フランジ面21の所定位置に配置する。しかも、
図7に示すように、角度α≦角度βの関係によって内周側のテーパ面41を急勾配に設けているため、テーパ面41が内周縁23aに触れたときには、
図5においてテーパ面41が内周縁23aに案内されるようにして環状突部40が環状溝23内に滑り込む。これにより、ガスケット本体10を容易にGF形フランジ面21の所定位置に装着できる。装着後には、急勾配のテーパ面41が内周縁23aに当接していることで、環状突部40が環状溝23に対して位置ずれしにくくなり、ガスケット本体10の装着状態を維持できる。
しかも、このとき環状溝23の内周縁23aが寸法基準になっているため、環状突部40の当接を介してフランジ本体10を芯出ししながら適正な状態でフランジ面21に装着できる。
【0063】
このことから、
図1、
図2、
図5に示した垂直配管の場合、
図8(a)に示すように一般に下側に配管されるGF形フランジ面21にガスケット本体10を簡単に位置決め装着でき、しかも、ガスケット本体10の両面を対称形状に設けていることで何れの面を下にした場合にも同様に装着した状態となる。
この状態でボルトナット12によりボルト穴11、延伸取付部33のボルト穴34〜36を介して締付けてフランジ接合できる。
【0064】
その際、フランジ面の種類や使用圧力の違いによりフランジ面の外径が異なる場合にも、各フランジ面の外径に合わせた延伸取付部33を設けると共に、適宜の延伸取付部33で各種のフランジ面の外径に対応するようにして、各種フランジ面に兼用可能となる。図示しないが、水平配管の場合にも、環状突部40を環状溝23に嵌め込むようにしながらガスケット本体10を装着すれば、垂直配管の場合と同様に位置決め装着し、ボルトナット12で締付けてフランジ接合可能となる。
【0065】
図8(b)に示すように、フランジ接合後のGF形フランジ面21側では、環状溝23を挟んで内径側が縮径シール面21aとなり、この縮径シール面21aにガスケット本体10の環状突部40よりも内径側が圧接して止水性を発揮する。また、環状溝23を挟んでフランジ面21の外周側は拡径シール面21bとなり、この拡径シール面21bにガスケット本体10の幅狭の環状シール部46を中心とした外周側が圧接シールすることで接触面積が小さくなり面圧が上昇する。
【0066】
これらのことから、GF形フランジ面21側では、環状溝23を挟んだ内周側と外周側との小さい接触面積でガスケット本体10の環状シール面32とフランジ面21とが密着シールしてシール性が向上する。このとき、特に、外周側の拡径シール面21bで高いシール面圧を確保できることで水漏れを確実に防止する。
【0067】
一方、フランジ接合後のRF形フランジ面20側では、ガスケット本体10の環状突部40が二点鎖線の状態から弾性変形しながらフランジ面20に圧縮シールすることで、これらの面圧を局部的に上昇させてシール性能を向上できる。このとき、環状突部40の両側の窪み部43、44に弾性変形した環状突部40が逃げ込むことで、環状突部40に亀裂や破断が生じることを防止し、延いては被覆部31全体の劣化を防止してガスケット本体10によるシール性能を維持できる。
さらに、GF形フランジ面21側の場合と同様に、ガスケット本体10の環状シール部46を中心とした外周側が、拡径シール面21bに小さい接触面積で圧接シールすることで高シール性を発揮する。
【0068】
段部39を介して環状シール面32よりも延伸取付部33を薄く設けていることで、段部39を境界として延伸取付部33とフランジ面20、21との接触を防いで、環状シール面32とフランジ面20、21との接触面積(シール面積)を一定の大きさに規制している。この小さい接触面積により高い面圧力で均一にガスケット本体10の両面とフランジ面20、21とをシールでき、FF形フランジ面22同士を接合する場合にも、RF形フランジ面20に圧接シールする場合と同等の止水機能を発揮する。
【0069】
図9に示すように、ガスケット本体10の延伸取付部33において、二点鎖線に示した使用圧力0.75MPaのRF形フランジ面20、GF形フランジ面21の外周に対して、表示部53である耳部50の外周縁を一致させることで、各フランジ面20、21の中心にガスケット本体10を合わせながら配置できる。この状態で、もう一方のフランジ面20(21)でガスケット本体10を挟んでボルトナット12で締付けるようにすれば、ガスケット本体10を芯出し状態で配置しながらフランジ接合できる。そのため、ボルト穴34〜36をボルト穴11よりも大径に設けてあそびがある場合にも、ガスケット本体10のずれを防止できる。
【0070】
破線に示した使用圧力1.0MPaのフランジ面20、21、一点鎖線に示した使用圧力1.6MPaのフランジ面20、21の場合も同様であり、耳部50の表示部51、52をそれぞれフランジ面20、21の外周に一致させることで芯出し状態によってガスケット本体10を配置でき、この状態で確実にシールしながらフランジ接合できる。
【0071】
芯金30の外径DSを、RF形フランジ面20、GF形フランジ面21の最小のフランジ面である使用圧力1.0Maのときの外径よりわずかに小さい外径にしていることで、使用圧力0.75MPa、1.0MPa、1.6MPaの何れの場合にも、芯金30をフランジ面20(21)の間に挟みながら接合可能になる。フランジ接合後には、環状シール面32を芯金30で補強しながらフランジ面20、21にシールでき、GF形フランジ面21の環状溝23側への変形を防止する。フランジ面20、21に対する環状シール面32によるシール性を確保し、また、フランジ面20、21の外径からはみ出している不要な段形状の耳部50を切除することで複数種の使用圧力のフランジ面に対応している。
これに加えて、耳部50の切除により、図示しないフランジ保温材、フランジ固定金具等の取付けが容易になる。
【0072】
図10においては、RF形−GF形以外の組合わせのフランジ接合を示している。
図10(a)において、RF形−RF形によりフランジ接合する場合には、RF形フランジ面20の外径に前述した耳部50を合わせることにより、ガスケット本体10を介して芯出し状態でこれらフランジ面20、20の接合が可能となる。フランジ接合後には、両側のフランジ面20、20でそれぞれ環状突部40を圧縮して内周側の面圧を上昇させ、かつ、環状シール部46によりフランジ面20の外周側との面圧を上昇させることで、フランジ面20の内外周側でシール性を高めることができる。
【0073】
図10(b)において、FF形−FF形によりフランジ接合する場合にも、RF形−RF形と同様に、FF形フランジ面22の外径に耳部50を合わせて芯出しでき、フランジ接合後には、環状突部40と、環状シール部46とによりフランジ面22との面圧を上昇させてシール性を高めて止水性能を向上できる。
【0074】
図10(c)において、GF形−GF形によりフランジ接合する場合、ガスケット本体10の両面の環状突部40を内周縁23aに当接させながら環状溝23に嵌め込むことで、ガスケット本体10を芯出し状態でGF形フランジ面21、21の間に装着できる。フランジ接合後には、フランジ面21の内外周側の縮径シール面21a、拡径シール面21bと、ガスケット本体10の内周側、環状シール部46を含む外周側とがそれぞれ小さい接触面積で圧接シールすることで面圧力を上昇させることができる。
【0075】
以上のことから、RF形フランジ面20、GF形フランジ面21、FF形フランジ面22の何れのフランジ面にもガスケット本体10を兼用しながら装着でき、しかも、これらを異なる組み合わせで接合する場合にも、ガスケット本体10を兼用できる。何れの場合にも、ガスケット本体10の両面が対称形状であるため、表裏の向きにこだわることなく装着できる。これにより、作業者が施工時に迷うことなく素早く作業でき、確実に止水できる。
【0076】
図11(a)においては、本発明におけるガスケットの第2実施形態、
図11(b)においては、第3実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0077】
図11(a)では、ガスケット本体60の両面の環状突部61が、GF形フランジ面21の環状溝23の外周縁23bに当接させながら嵌め込み可能に設けられたものであり、環状突部61が前述した環状突部40とは対称の断面形状に設けられている。このガスケット本体60は、環状溝23の外周縁23bを寸法基準として形成されているGF形フランジ面21である場合に特に有効であり、外周縁23bで位置決めしながらガスケット本体60を芯出しして正確に装着可能となる。
【0078】
図11(b)では、ガスケット本体70の両面の環状突部71が、GF形フランジ面21の環状溝23の内外周側に当接されながら嵌め込み可能な位置に設けられたものであり、各環状突部71は、図の左右方向に対称の断面形状に設けられる。この場合、ガスケット本体70を、環状溝23の内周縁23a、外周縁23bで位置決めして正確に芯出ししながら装着可能となる。
【0079】
何れの場合にも、
図5の環状突部40と同様に、
図7に示した角度αと角度βとの関係を、角度α≦角度βの関係にしながらテーパ面41、42を形成し、各環状突部61、71の内外周に逃げ代となる窪み部62、63又は窪み部72、73をそれぞれ設けることにより、
図5のガスケット本体10と同様の機能を発揮しながらシール可能になる。
【0080】
図12においては、本発明における呼び径75のガスケットの第4実施形態を示している。
このガスケット本体80では、複数の使用圧力のピッチ円と穴径と穴数の異なるボルト穴を同一中心線上に重ねたボルト穴81が回転対称で配置されたものであり、使用圧力0.75MPa、1.0MPa、1.6MPaに対応するボルト穴81が一組に集約され、
図12(a)に示すように、ボルト穴81を1種類のパターンで形成しながら、フランジ面の外径の異なる場合にも兼用可能としたものである。この場合、
図12(a)のガスケット本体80、
図12(b)に示したガスケット本体80内に設けられる芯金82に示すように、異なる径のピッチ円DQ1、DQ2、DQ3で同じピッチ角のボルト穴81、芯金82の切欠き部83が形成され、8組の図示しないボルトナットで締付け固定可能に設けられる。
これにより、ボルト穴81や切欠き部83を最小限の数にして芯金82の強度を向上でき、これらボルト穴81や切欠き部83の加工も容易になる。また、使用するボルト穴81の選択間違いも防止できる。
【0081】
図13においては、本発明における呼び径75のガスケットの第5実施形態を示している。
このガスケット本体120は、
図12のガスケット本体80と同様に、複数の使用圧力のピッチ円と穴径と穴数の異なるボルト穴を同一中心線上に重ねたボルト穴81が回転対称で配置され、このボルト穴81を兼用可能としたものである。
さらに、このガスケット本体120においては、ボルト穴81をフランジ面のボルト穴11の位置に合わせることが可能な位置に複数の摘み部121が設けられる。水平配管されたフランジ面にガスケット本体120を装着する際には、使用圧力に応じた複数の摘み部121の何れかを摘んで垂下させた状態で、被取付面であるフランジ面に形成された使用圧力に応じたボルト穴11にボルト穴81の位置を合わせることができる。
これによって、適切な摘み部121を摘んでガスケット本体120を垂下させることで、このガスケット本体120を正確にフランジ面に配置し、締付け位置を間違うことなくボルトナットで簡便に取付けできるため、ガスケット本体120の誤装着や片締めを防いで高シール性を発揮できる。
【0082】
図14においては、本発明におけるガスケットの第6実施形態を示している。
ガスケット本体90において、
図14(a)に示すように、芯金91の両面に突条部92が形成されたものであり、この突条部92は、
図14(b)に示すように、芯金91の内周縁を折り曲げ加工により表裏面に交互に折り曲げて形成されたものである。この場合、芯金91に被覆部31を設ける際に、被覆部31によるシール面をフラット状に形成することでシール性を確保できる。突条部92を設けることにより、この突条部92でフランジ接合時の潰し代を規制し、被覆部31の破損や施工時の片締めを防止できる。
【0083】
図15においては、本発明におけるガスケットの第7実施形態を示している。
ガスケット本体100において、
図15(a)に示すように、芯金101の両面に突条部102が形成され、この突条部102は、
図15(b)に示すように、芯金101の同心上に長穴状の折り曲げ部位が複数形成され、各折り曲げ部位を表裏面側に折り曲げて設けられたものである。この場合にも、
図14のガスケット本体90と同様に、突条部102付近の被覆部31のシール面をフラット状に形成してシール性を確保でき、突条部102によりフランジ接合時の潰し代を規制して被覆部31の破損や施工時の片締めを防止可能となる。
【0084】
図16においては、本発明におけるガスケットの第8実施形態を示している。
ガスケット本体110において、
図16(a)に示すように、芯金111の両面に突条部112が形成され、この突条部112は、
図16(b)に示すように、芯金111の両面に半抜き加工を施すことにより設けられる。この場合にも、
図14、
図15のガスケット本体と同様に、突条部112付近の被覆部31のフラット状態を確保し、シール性並びに片締め防止機能を発揮する。
図16(c)においては、半抜き加工によって芯金115の両面に複数の半球状の環状突部116が形成され、この場合にも、
図16(b)と同様の機能を発揮する。
以上のように、環状突部の加工手段や加工位置にこだわることはなく、これら以外にも各種の加工手段によりフランジ面の任意の位置に圧接シール可能な環状突部を形成することもできる。
【0085】
図17においては、本発明におけるガスケットの第9実施形態を示している。
このガスケット本体130は、7.5Kフランジに対応するガスケットであり、
図17(a)に示す芯金131が
図17(b)に示すガスケット本体130内に設けられており、7.5Kフランジに対応するボルト穴133が4箇所設けられている。
【0086】
芯金131の直径は、ガスケット本体130が7.5Kフランジ対応であるため、このフランジ面の外径に合わせられている。
図17(a)に示すように、芯金131には、7.5Kフランジに使用する4本のボルトに対応する切欠き部132が回転対称に4箇所設けられている。この切欠き部132の幅は、7.5Kフランジに使用するM16ボルトの外径よりも大きく形成され、切欠き部132の底部を形成する円弧面は、その中心は、ボルト穴133の中心と同一上にあり、同心円状に径を拡大して形成している。
【0087】
以上のように形成した芯金131を被覆部31で被覆してガスケット本体130を構成すると、
図17(b)に示すように、ガスケット本体130のボルト穴133は、被覆部31から一体に延設したゴムライニング部に形成され、その形状は真円ではなく、
図17(c)に示すように、切欠き部132の開放側の被覆部を芯金131の中心方向に寄せた状態で形成されている。このように、ゴムライニング部に形成されたボルト穴133は、その径を略切欠き部132の幅まで容易に拡径することができる。また、
図17(b)に示すように、切欠き部132は芯金131の外周側を開放して形成されているため、ボルト穴133よりも外周側となる延伸取付部33には芯金131が通っていないので、ボルト穴133は、切欠き部132の開放部方向に対しては、前述の拡径量よりも大きく引き伸ばして変形させることができる。従って、使用するボルトが通常のボルトである場合はもちろん、標準のネジ径よりも太い絶縁スリーブが付いた絶縁ボルトであっても容易にボルト穴133を挿通させることができる。さらに、異なる延伸取付部を構成する外形のガスケットのみだけでなく、
外形形状は特に規制せず、例えば単純な円形の
外形のガスケット等にも適用できる。
【0088】
次いで、芯金131に切欠き部132を設け、ガスケット本体130のボルト穴133を被覆部31から一体に延設したゴムライニング部に形成した効果を説明する。
図18(a)は、ガスケット本体130を装着したRF形フランジ1とGF形フランジ2の接合前の状態を示す要部拡大断面図である。ガスケット本体130のボルト穴133は、形状が真円ではなく、切欠き部132の開放側の被覆部を芯金131の中心方向に寄せた状態で形成されているので、切欠き部132の開放側となるボルト穴133の内周面133aは、図中、二点鎖線で示すボルト135の直径よりもフランジの中心側に寄った状態になっている。
【0089】
図18(b)は、ガスケット本体130を装着したRF形フランジ1とGF形フランジ2の接合後の状態を示す要部拡大断面図である。RF形フランジ1とGF形フランジ2とを接合する際には、ガスケット本体130をRF形フランジ面20とGF形フランジ面21の間に装着し、下方側からGF形フランジ2、ガスケット本体130、RF形フランジ1の順にボルト135を挿通させる。ガスケット本体130のボルト穴133にボルト135を挿通させる際には、前述したように、切欠き部132の開放側となるボルト穴133の内周面133aは、ボルト135の直径よりもフランジの中心側に寄った状態になっているため、ボルト135を挿通させる際には、延伸取付部33をガスケット本体130の外周側に引き伸ばしてボルト穴133を拡径し、ボルト135を挿通させる必要がある。この結果、引き伸ばされた延伸取付部33は、
図17(c)に示すように、ゴムの収縮力によりボルト135をフランジの中心方向へ押しつける押付け力PFを発生する。これにより、ボルト135は、ボルト穴11のフランジ中心方向の壁面に押し付けられた状態で位置が固定される。また、ガスケット本体120のボルト穴133の内周側には、外周側と違って芯金131が設けられているため、引き伸ばされた延伸取付部33からボルト135を介してガスケット本体130に作用する押付け力は、ガスケット本体130をフランジの中心方向に押し付ける。
【0090】
この現象は、GF形フランジ2、ガスケット本体130、RF形フランジ1にボルト135を挿通させる毎に生じるため、フランジ1、2の全てのボルト穴11にボルト135の挿入が完了すると、全てのボルト135はボルト穴11のフランジ中心方向の壁面に押し付けられた状態で位置が固定され、ガスケット本体130をフランジの中心方向に押し付ける力は釣り合って、ガスケット本体130の中心とフランジの中心と一致した状態となる。このため、全てのボルトをRF形フランジ1、ガスケット本体130、GF形フランジ2に挿通させた後に、これらの芯出しなどの作業行う必要がなく、単にボルト135にナット136を締結するだけで、ガスケット本体130、RF形フランジ1、GF形フランジ2を調芯した状態で接合し、
図18(b)に示す接合状態とすることができる。
【0091】
また、前述したように、フランジ1、2のボルト穴11にボルト135を挿通すると、引き伸ばされた延伸取付部33は、ボルト135をフランジの中心方向へ押しつける押付け力を発生させ、ボルト135をボルト穴11のフランジ中心方向の壁面に押し付けた状態で固定するので、ナット136を締結する前であってもボルト135が落下することはなく、作業性が向上する。
【0092】
図19(a)においては、本発明における呼び径75のガスケット本体の第10実施形態を示している。
本図のガスケット本体140と
図13のガスケット本体120との相違は、ガスケット本体120の耳部50及びつまみ部121に設けられているのが表示部であるのに対し、ガスケット本体140の耳部50及びつまみ部121に設けられているのが凹状の切込み部である点にある。その他の部分は全く同一なので、以下においては、相違点であるガスケット本体140の耳部50及びつまみ部121に設けられている凹状の切込み部について説明する。
【0093】
図19(a)に示すように、延伸取付部33の外周縁が使用圧力1.0MPaのフランジ径であり、耳部50と延伸取付部33との境に設けられた凹状の切込み部141が使用圧力1.0MPaのフランジ面に一致する。耳部50における延伸取付部33よりも一段拡径した部分には、使用圧力1.6MPaのフランジ径を示す凹状の切込み部142が設けられ、この凹状の切込み部142が使用圧力1.6MPaのフランジ面に一致する。つまみ部121の凹状の切込み部142よりも拡径側には、使用圧力0.75MPaのフランジ径の凹状切込み部143が設けられ、この凹状の切込み部143が使用圧力0.75MPaのフランジ径に一致する。
【0094】
図19(b)及び
図20(a)に示すように、切込み部141、142、143は、ゴム等の弾性材料のみから形成された延伸取付部33の両面側から凹設されているため、延伸取付部33の肉厚よりも薄い部分を形成している。これにより、これらの切込み部141〜143よりも外側に位置する耳部50又はつまみ部121は、これらの切込み部141〜143に沿って簡単に手などで引きちぎることができる。
図20(a)に示すように切込み部141、142、143をガスケット140両面に設けると、どちら側のガスケット面からも切込み部を視認することができるが、
図20(b)に示すように、ガスケット面の片側からより深く切込み部144、145、146を設け、延伸取付部33の肉厚よりも薄い部分を形成するようにしても良い。
【0095】
従って、例えば、使用圧力1.0MPaのフランジをガスケット本体140を使用して接合する場合には、切込み部141よりも外周側に位置する耳部50がフランジ周りにはみ出すことになる。この耳部50がはみ出したフランジ周りに保温材や耐震補強金具を装着する必要がある場合には、これらとの干渉を防ぐため、はみ出した耳部50を切り取って除去する必要があるが、ガスケット本体140には切込み部141が形成されているので、単に切込み部141よりも外周側に位置する耳部50を切込み部141に沿って手で引きちぎることにより、はさみカッター等の道具を使用することなくはみ出した耳部50を切り取ることができる。また、使用圧力1.6MPaのフランジにガスケット本体140を使用した場合には、切込み部142によりはみ出した耳部50を、使用圧力0.75MPaのフランジにガスケット本体140を使用した場合には、切込み部143によりはみ出したつまみ部121を切り取って除去することができる。
【0096】
なお、切込み部は、必ずしも使用圧力1.0MPaのフランジ径、使用圧力1.6MPaのフランジ径、使用圧力0.75MPaのフランジ径に対応させ、
図19(a)に示すように3通り設ける必要はなく、最もフランジ径が小さい使用圧力1.0MPaのフランジに合わせた切込み部141を設けるのみでも、フランジ締結後にこの切込み部141から耳部50を切り取ることにより、全てのフランジ外径でガスケット140の構成部位がはみ出してフランジ周りに装着した保温材や耐震補強金具と干渉しない部分から耳部50を切り取るようにしても、
図19(a)に示すように、ガスケット140の環状シール部46や延伸取付部33に設けたボルト穴81には、何ら影響がない。
【0097】
以上のとおり、本発明におけるガスケットは、フランジの種類や大きさが異なる場合にも兼用可能であるだけでなく、接合するフランジに応じて芯出ししながら装着することができるので、ガスケットの装着作業を容易化する効果は大なるものであり、その利用価値は大きい。