(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.第1の実施形態]
[1−1.構成]
以下では、
図1及び
図2を参照しつつ、本実施形態に係る監視システムの構成について説明する。
【0010】
本実施形態に係る監視システムは、電気設備内の機器の発する音波を検出し、その音波の波形に基づいて、当該機器の劣化又は異常を診断するシステムである。本監視システムは、電気設備内の機器の発する音波を検出するセンサと、その検出した音波に基づいて、電気設備内の機器の劣化又は異常を診断する監視装置本体とを備える。
【0011】
監視装置本体は、単一のコンピュータ又はネットワーク接続された複数のコンピュータ及び表示装置を含み構成されている。監視装置本体は、プログラム及びデータベースをHDDやSSD等に記憶しており、RAMに適宜展開し、CPUで処理することにより、後述する音波の波形の比較及び判定など、必要な演算を行う。監視装置は、電気設備に設けても良いし、中央監視装置のような外部装置に設けても良い。
【0012】
監視システムについて、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る監視装置の機能ブロック図である。
図1に示すように、本監視システムは、音響センサ21と、送信装置22と、受信装置23と、記憶部24と、比較判定部25と、警報部26と、周波数分析部27と、振幅判定部28と、異常機器判別部29と、送信装置30とを備えている。
【0013】
本実施形態では、音響センサ21及び送信装置22は、電気設備に設けられ、それ以外の構成23〜30については、監視装置本体を構成し、電気設備とは離隔した場所に設けられるものとして説明する。但し、監視装置本体の各構成すべてを電気設備に設けるようにしても良い。
【0014】
音響センサ21は、音波を検出するセンサである。音響センサ21としては、例えば小型マイクロフォンを用いることができる。音響センサ21は、電気設備内に設けられ、電気設備内の機器の発する音波を検出する。音響センサ21は、電気設備内に1つ設けても良いし、複数設けても良い。音響センサ21を複数設ける場合には、電気設備内の機器の種類毎或いは機器毎に設けても良い。
【0015】
電気設備としては、受変電設備や無停電電源装置(UPS)が挙げられる。その他、停電させることが好ましくない設備や、非常に多くの用品で構成され、その劣化又は異常の診断が目視で行えない設備に対して本実施形態を適用することができる。
【0016】
図2は、音響センサ21の取付位置を説明するための図である。電気設備が受変電設備である場合、
図2(a)に示すように、音響センサ21は、受変電設備の変圧器の鉄心11又はその近傍に音響センサ21の受音部を鉄心11に向けて設ける。変圧器の鉄心11が変圧器の励磁音の発生源であるからである。また、電気設備が無停電電源装置である場合、
図2(b)に示すように、インバータ12又はその近傍に音響センサ21の受音部をインバータ12に向けて設ける。インバータ12が無停電電源装置の音の発生源であるからである。
【0017】
送信装置22は、電気設備に設けられ、音響センサ21が検出した音の情報を監視装置本体に送信する。送信装置22は、検出した音の情報を常時監視装置本体に送信しても良いし、電気設備が稼働していない場合には送信しないようにしても良い。また、送信装置22は、音響センサ21で検出した音の音圧レベルが一定以上である場合に送信するようにしても良い。受信装置23は、監視装置本体に設けられ、送信装置22から音響センサ21が検出した音の情報を受信する。送信装置22及び受信装置23は、有線又は無線で構成することができる。なお、監視装置を電気設備に設ける場合には、送信装置22及び受信装置23を省略することができる。
【0018】
記憶部24には、電気設備の通常運転時の音波の波形が予め記憶されている。この音波の波形は、電気設備内の機器の劣化や異常の診断を行う基準波形である。すなわち、当該音波の波形は、音響センサ21により検出された音波に機器の劣化又は異常が見られるかを判断する基準となる波形である。記憶部24は、定期的に通常運転時の音波の検出を行い、基準波形の追加或いは更新がされるようにしても良い。例えば、音響センサ21により通常運転時の音波の検出を行い、送信装置22及び受信装置23を介して当該音波の情報を記憶部24に記憶させることができる。
【0019】
また、記憶部24には、電気設備内の機器毎に、その種類と、異常が発生する周波数との対応関係が予め記憶されている。この対応関係には、当該機器が配置されている場所も含めると良い。劣化又は異常の発生した機器が特定でき、ピンポイントで整備ポイントを把握できるようにするためである。その他、記憶部24には、各種の閾値が予め記憶されている。
【0020】
比較判定部25は、音響センサ21により検出した電気設備の音波の波形と、記憶部24に記憶された通常時の音波の波形とを比較する。そして、比較判定部25は、検出した音波の波形が通常時の音波の波形に対して所定の幅を超えて異なるかを判定する。この所定の幅は、適宜設計変更可能である。例えば、機器の劣化を示す幅と異常を示す幅とは異なる幅にすることができる。比較判定部25は、当該所定の幅を超えて検出した音波の波形が通常時の音波の波形と異なると判定した場合は、警報部26に警報を発報する指令を出力する。また、比較判定部25は、各機器の劣化を示す波形と異常を示す波形とをパターンとして記憶部24に予め記憶させておき、パターンマッチングにより、劣化の進行度や異常を特定するようにしても良い。
【0021】
警報部26は、比較判定部25が、検出した音波の波形が通常時の音波の波形に対して所定の幅を超えて異なると判定した場合に、警報を発報する。警報の態様は、音によって監視員に伝達しても良いし、監視装置の表示装置に点滅や文字表示等により伝達しても良い。また、遠隔にあるスピーカに信号を出力し、当該スピーカを通じて電気設備から離れた場所にいる監視員に知らせるようにしても良い。警報の態様は、公知となっているあらゆる態様を採用することができる。
【0022】
周波数分析部27は、音響センサ21により検出した電気設備の音波の波形をスペクトル解析により周波数分析し、周波数毎に振幅を求める。具体的には、比較判定部25で所定の幅を超えていると判定された音波部分を抽出し、当該部分についてスペクトル解析を行う。
【0023】
振幅判定部28は、周波数毎に周波数分析部27により求めた振幅が、予め設定された所定の閾値を超えるかを判定する。
【0024】
異常機器判別部29は、振幅判定部28により振幅が所定の閾値を超えると判定された場合に、当該閾値を超えたときの周波数を異常が発生する周波数とし、記憶部24に記憶された対応関係に基づいて、異常が発生した機器を判別する。異常機器判別部29は、異常が発生した機器の判別後、当該機器に異常が発生した旨を監視装置本体の表示装置に表示する。
【0025】
送信装置30は、比較判定部25が所定の幅を超えて異なると判定した場合に、その音波の情報を外部装置に送信する。異常があった機器の音の情報を外部に送信するのは、異常があった機器の異常の検証を行うためである。外部装置とは、例えば中央監視装置である。
【0026】
[1−2.動作]
本監視装置の動作について、
図3および
図4を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る監視装置の動作フローチャートである。この動作順序は一例であり、これに限定されない。
【0027】
図3に示すように、まず、音響センサ21により、電気設備の運転音の検出を行い(ステップS01)、送信装置22及び受信装置23を介して、検出した音波の情報を比較判定部25に入力する。比較判定部25は、記憶部24から通常運転時の音波の波形を取得し、
図4(a)に示すように、当該波形と入力された音波の波形とを比較し、所定の幅を超えて異なっているかを判定する(ステップS02)。
【0028】
所定の幅を超えていない場合には、比較判定部25は運転音に異常がなく、電気設備の機器に劣化又は異常が発生していないと判定し(ステップS02のNo)、ステップS01に戻る。一方、所定の幅を超えている場合は、比較判定部25は電気設備の機器に劣化又は異常が発生していると判定し(ステップS02のYes)、警報を発報する指令を警報部26に出力する。警報部26は当該指令を受けて警報を発報する(ステップS03)。
【0029】
また、所定の幅を超えていると比較判定部25が判定する場合、周波数分析部27により、検出した音波に異常が見られる箇所を抽出し、当該波形部分の周波数分析を行う(ステップS04)。すなわち、当該波形部分のスペクトル解析を行い、周波数毎に振幅を求める。そして、振幅判定部28により、記憶部24から予め設定された閾値を取得し、
図4(b)に示すように、周波数毎に求めた振幅が当該閾値を超えるかを判定する(ステップS05)。当該閾値を超えないと判定した場合(ステップS05のNo)、その周波数についてはその後の処理を終了する。
【0030】
一方、当該閾値を超えると判定した場合(ステップS05のYes)、異常機器判別部29により、異常が発生した当該閾値を超える周波数と、記憶部24に予め記憶された機器の種類とその機器の異常が発生する周波数との対応関係に基づいて、異常が発生した機器を判別する(ステップS06)。そして、異常機器判別部29によって、判別した機器を監視装置本体の表示装置に表示させて監視員に異常が発生した機器を通知する(ステップS07)。また、比較判定部25が、検出した音波の波形が通常時の音波の波形と所定の幅を超えて異なる場合に、その音波の情報を送信装置30により外部装置に送信し(ステップS08)、終了する。
【0031】
[1−3.効果]
(1)本実施形態の監視装置は、電気設備内に取り付けられ、電気設備の機器の発する音波を検出する音響センサ21と、電気設備の通常運転時の音波の波形が予め記憶された記憶部24と、音響センサ21により検出した電気設備の音波の波形と、通常時の音波の波形とを比較し、検出した音波の波形が通常時の音波の波形に対して所定の幅を超えて異なるかを判定する比較判定部25と、比較判定部25が所定の幅を超えて異なると判定した場合に、警報を発報する警報部26と、を備えるようにした。
【0032】
これにより、電気設備内の機器の状態を音で常時監視することができ、電気設備を停止させることなく、電気設備内の機器の劣化や異常を検知することができる。特に、電気設備が受変電設備である場合、通常、受変電設備は活線状態にあるため、点検等を行う場合には停電させた上で行う必要があり、定期点検を頻繁に行うことは難しかったが、本実施形態によれば、常時監視することができるので、停電させることなく点検を行うことができる。その結果、電気設備内の機器の劣化や異常を早期に検知することができ、当該機器の更新の必要性を迅速に判断することができる。
【0033】
(2)記憶部24には、電気設備内の機器毎に、その種類と、異常が発生する周波数との対応関係を記憶するようにし、本実施形態の監視装置は、検出した音波の波形から異常が発生した部分を抽出して当該部分を周波数分析し、周波数毎に振幅を求める周波数分析部27と、周波数毎に求めた振幅が予め設定された所定の閾値を超えるかを判定する振幅判定部28と、振幅判定部28が周波数毎の所定の閾値を超えると判定した場合に、当該周波数を異常が発生する周波数とし、対応関係に基づいて、異常が発生した機器を判別する異常機器判別部29と、を備えるようにした。
【0034】
これにより、電気設備内において異常が発生した機器を判別することができる。すなわち、検出した音波の波形が通常時の音波の波形と異なる箇所は、電気設備の機器の異常が反映されたと推定される箇所であり、当該部分を抽出し、異常が見られる周波数を振幅判定部28により特定するようにしている。また、機器の種類に応じて、異常が発生する周波数が決まっているため、異常機器判別部29により、異常が発生した当該閾値を超える周波数と、記憶部24に予め記憶された機器の種類とその機器の異常が発生する周波数との対応関係に基づいて、異常が発生した機器を判別することができる。そのため、異常が発生していることが判明したものの、どの機器に異常が発生したかが分からないといった事態を防止でき、点検員による対象機器の点検などの対処をしやすくすることができる。例えば、受変電設備や無停電電源装置は、非常の多くの機器から構成されており、異常が発生した機器が特定できるので、迅速に交換などの対応をすることができる。
【0035】
(3)本実施形態では、音響センサ21で検出した音波の情報を監視装置本体に送信する送信装置22と、送信装置22により送信された音波の情報を受信する受信装置23と、を備えるようにした。これにより、検出した音の情報を入手できるので、点検員が現地まで赴くことなく、電気設備内の機器の劣化や異常を検知することができる。また、点検員が現地まで赴く必要もないので、電気設備の運転を停止させることなく、機器の劣化や異常を検知することができる。
【0036】
(4)比較判定部25が所定の幅を超えて異なると判定した場合に、その音波の情報を外部装置に送信する送信装置30を備えるようにした。これにより、監視装置自体が異常のあった音波の情報を分析する構成を有していない場合であっても、外部装置にその分析を委託することができる。
【0037】
[2.第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態の基本構成と同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0038】
第2の実施形態では、警報部26は、音響センサ21により検出した音波の波形が前記通常時の音波の波形に対して所定の幅を超える場合に、その超えた時間が所定時間以内であれば、警報の発報をしない。具体的には、第1の実施形態では、比較判定部25が、検出した音波の波形が通常時の音波の波形に対して所定の幅を超えると判定する場合には、比較判定部25により警報部26に警報を発報させる信号を出力するようにしたが、その超えた時間が所定時間以内であれば、当該信号を出力しないようにする。所定時間とは、例えば、数msとすることができるが、これに限定されず、秒単位、分単位などとしても良い。
【0039】
本実施形態によれば、電気設備の外部要因による振動を除外して、機器の劣化又は異常を検知しやすくすることができる。すなわち、検出した音波の波形が通常時の音波の波形に対して所定幅を超える場合であっても、短い時間であれば、偶発的に生じた変動によるものと考えられる。換言すれば、電気設備内の機器の劣化や異常は、短い時間ではなく長期にわたって音波の波形に現れると考えられることから、短い時間内の変動は電気設備の外部要因による変動であると推定できる。このような場合に警報の発報をしないようにしたので、外部要因による誤報を防止することができる。
【0040】
[3.第3の実施形態]
第3の実施形態について、
図5を用いて説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態の基本構成と同じである。以下では、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
図5は、第3の実施形態に係る監視装置の機能ブロック図である。第3の実施形態では、電気設備内に設けられている遮断器の開閉状態信号の入力を受ける入力部31と、入力部31で入力を受けた前後で検出した音波の波形に変化があるかを判定する波形変化判定部32と、波形変化判定部32が、変化ありと判定する場合に、検出した音波の波形から、その変化前後の所定時間分を除く加工をする波形加工部33と、を備える。
【0042】
遮断器の開閉状態の変化は、入力部31に遮断器の開閉状態信号の入力があったことをもって判断できる。例えば、通常運転中、遮断器は閉状態にあるので、当該信号の入力があれば、閉状態へ変化すると分かる。変化前後の所定時間は、例えば10秒とし、適宜設計変更可能である。
【0043】
入力部31は、遮断器の開閉状態信号の入力があった場合は、その旨の信号を波形変化判定部32に出力する。波形変化判定部32は、入力部31からの信号を受けて、検出した音波の波形の変化の有無を判定する。波形変化判定部32は、変化ありと判定する場合には、波形加工部33に加工を要求する信号を出力し、変化なしと判定する場合には、警報部26に警報の発報を要求する信号を出力する。
【0044】
比較判定部25は、波形加工部33により加工された音波の波形を用いて、第1の実施形態と同様の比較を行う。すなわち、比較判定部25は、波形加工部33により加工された音波の波形と、通常運転時の音波の波形とを比較する。
【0045】
なお、入力部31が遮断器の開閉状態信号の入力を受けていないときは、波形変化判定部32及び波形加工部33は動作せず、比較判定部25は、第1の実施形態と同様に比較及び判定を行う。
【0046】
警報部26は、波形変化判定部32が、入力部31が入力を受けた前後で検出した音波の波形に変化がないと判定した場合に、警報を発報する。
【0047】
本実施形態によれば、遮断器の動作に伴う音を除外することができる。すなわち、遮断器の動作時には、その遮断器の接点を開閉させる駆動機構が動作し、その動作音が大きく、他の機器の異音が埋もれてしまう場合があり得るが、そうした事態を防止することができる。
【0048】
また、警報部26は、波形変化判定部32が変化なしと判定する場合に、警報を発報するようにした。これにより、遮断器の駆動機構に異常があるかどうかを判定することができる。例えば、通常運転中、遮断器は閉状態にあるので、入力部31に遮断器の開閉状態信号の入力があったことをもって、遮断器の駆動機構が動作したこと、すなわち、遮断器が開状態になったと推定できる。ところが、波形変化判定部32が、遮断器からの開閉状態信号の入力があったにも関わらず、検出した音波の波形に変化が無い場合には、遮断器の駆動機構が動作せず、遮断器の駆動機構の動作音を検出していないと判断できる。このように本実施形態によれば、遮断器の駆動機構の異常があったと判断することができる。
【0049】
[4.その他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0050】
(1)第1乃至第3の実施形態では、振幅判定部28により、異常があったと判定される周波数に基づいて、異常のある機器を判別するようにしたが、異常があったと判定される周波数に複数の機器の種類が該当する場合もありうる。その場合は、異常の現れる周波数、機器の種類、及び当該周波数における振幅の大きさの対応関係を予め記憶部24に記憶させておき、当該対応関係に基づいて、異常のある機器を判別するようにしても良い。すなわち、機器の種類によって、異常の現れる周波数が同じであっても、その程度である振幅レベルは異なると考えられることから、異常機器判別部29は、この性質を利用して異常のある機器を判別するようにしても良い。
【0051】
(2)第2の実施形態では、警報部26は、検出した音波の波形が通常時の音波の波形に対して所定の幅を超える場合に、その超えた時間が所定時間以内であれば、警報の発報をしないようにしたが、これを実現する構成として、例えば、検出した音波の波形が通常時の音波の波形に対して所定の幅を超える場合、当該部分を除外する加工を行い、その加工を行った音波の波形を比較判定部25での比較に用いるようにしても良い。このようにすることで、波形が異なる部分は比較されないので、外部要因によって警報が発報されることを防止することができる。