(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833422
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20210215BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
B29C45/17
B22D17/20 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-183489(P2016-183489)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-47579(P2018-47579A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】特許業務法人オーパス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(74)【代理人】
【識別番号】100201248
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 克成
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−035747(JP,U)
【文献】
特開2007−196344(JP,A)
【文献】
特開2004−261852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
B29C 48/00−48/96
B29C 43/00−43/58
B22D 15/00−17/32
B23Q 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドドア構造を有する射出成形機であって、
前記スライドドア構造が、
排出口が形成されたベース部と、
前記排出口を上下方向に挟みかつ左右方向に延在するように前記ベース部に固定して取り付けられた上レールおよび下レールを有するレール部と、
前記レール部に左右方向にスライド移動可能に取り付けられたスライドドアと、を有し、
前記上レールおよび前記下レールが、それぞれの前記排出口寄りの端部が前記ベース部との間に前記スライドドアの上端部および下端部を収容するスリット状空間を形成するように折り曲げられた形状を有し、
前記下レールの断面形状が、2つの直角が交互に連なったクランク形状であり、
前記スライドドアが、前記排出口よりも大きい長方形状の板金から形成され、
前記スライドドアの下端が、前記ベース部に重なって前記排出口を塞ぐ当該スライドドアの中央部に対して、前記ベース部から離れる方向にずれて配置されていることを特徴とする射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドア構造およびこのスライドドア構造を有する産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の産業機械としての射出成形機が開示されている。この射出成形機では、成形品を金型から落下させて本体下部に設けられた排出口から取り出していた。そして、近年においては、成形品をロボットアームなどを用いて射出成形機の上方側から取り出す構成が比較的多く採用されており、排出口は、成形不良品や成形条件出し等のための試作品の取り出しなどに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−277338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような排出口が設けられた射出成形機では、当該排出口からの粉じんや湿気などの侵入を防ぐために排出口を開閉するドア構造が設けられる。その一例のスライドドア構造を
図6に示す。このスライドドア構造105では、
図6(a)に示すように、射出成形機の本体部(図示なし)に取り付けられる板状のベース部110と、ベース部110に設けられた排出口111を上下方向に挟みかつ左右方向に延在して設けられた上レール121および下レール122を有するレール部120と、レール部120に左右方向にスライド移動可能に取り付けられた平板状のスライドドア130と、を有している。
【0005】
レール部120の上レール121および下レール122は、は、
図6(b)に示すように、各レールにおける排出口111寄りの端部がベース部110との間にスリット状空間Kを形成するように断面略S字形状に形成されている。
図6(c)にC−C線に沿う下レール122付近の拡大断面図を示す。そして、スライドドア130の上端部および下端部がスリット状空間K内に収容されることにより、左右方向にスライド移動可能に支持されている。
【0006】
上レール121および下レール122は、板金を折り曲げ加工して形成されることから折り曲げ部分付近に曲面が形成され、この曲面とベース部110との間にくさび状の隙間Sが生じる。そして、スライドドア130は、振動防止などのためプラスチックなどに比べて重量のある板金を加工して形成されるところ、その厚さが比較的薄いので、上記くさび状の隙間Sにスライドドア130の下端部135がはまり込んでスライド移動が妨げられてしまい、スライドドア130の開閉に力を要するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、スライドドアのスライド移動が妨げられることを効果的に抑制できるスライドドア構造およびこのスライドドア構造を有する産業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の
射出成形機は
、スライドドア構造
を有する射出成形機であって、
前記スライドドア構造が、排出口が形成されたベース部と、前記排出口を上下方向に挟みかつ左右方向に延在するように前記ベース部に固定して取り付けられた上レールおよび下レールを有するレール部と、前記レール部に左右方向にスライド移動可能に取り付けられたスライドドアと、を有し、前記上レールおよび前記下レールが、それぞれの前記排出口寄りの端部が前記ベース部との間に前記スライドドアの上端部および下端部を収容するスリット状空間を形成するように折り曲げられた形状を有し、
前記下レールの断面形状が、2つの直角が交互に連なったクランク形状であり、前記スライドドアが、前記排出口よりも大きい長方形状の板金から形成され、前記スライドドアの下端が、前記ベース部に重なって前記排出口を塞ぐ当該スライドドアの中央部に対して、前記ベース部から離れる方向にずれて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レール部の下レールにおける排出口寄りの端部とベース部との間に形成されるスリット状空間に収容されるスライドドアの下端が、当該スライドドアの中央部に対してベース部から離れる方向にずれて配置されている。このようにしたことから、スライドドアの下端が、下レールとベース部との間に生じるくさび状の隙間からずれて位置づけられて当該隙間にはまり込むことを防ぐことができ、スライドドアのスライド移動が妨げられることを効果的に抑制できる。そのため、スライドドアの開閉に必要な力をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図2】
図1の射出成形機が有するスライドドア構造のベース部およびレール部を説明する図である。
【
図3】
図1の射出成形機が有するスライドドア構造のスライドドアを説明する図である。
【
図4】
図1のスライドドア構造における下レール付近の拡大断面図である。
【
図5】スライドドアの変形例の構成を示す拡大断面図である。
【
図6】従来のスライドドア構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るスライドドア構造を有する産業機械としての射出成形機について、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。
図2は、
図1の射出成形機が有するスライドドア構造のベース部およびレール部を説明する図であって、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)はA−A線に沿う下レール付近の拡大断面図である。
図3は、
図1の射出成形機が有するスライドドア構造のスライドドアを説明する図であって、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)はB−B線に沿う下端部付近の拡大断面図である。
図4は、
図1のスライドドア構造における下レール付近の拡大断面図である。
図5は、スライドドアの変形例の構成を示す拡大断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の射出成形機1は、表示操作部、射出成形部および金型開閉部等を有する本体部3と、本体部3のカバー3aに取り付けられたスライドドア構造5と、を有している。
【0016】
スライドドア構造5は、ベース部10と、レール部20と、スライドドア30とを有している。
【0017】
図2(a)に示すように、ベース部10は、長方形平板状の板金であって、正面から見て右寄りの箇所に長方形状の排出口11が形成されている。ベース部10は、周縁部に設けられた複数のねじ孔10aに挿通された図示しないねじ部材によって本体部3のカバー3aに固定して取り付けられる。
【0018】
レール部20は、上レール21および下レール22を有している。これら上レール21および下レール22は、ベース部10の排出口11を上下方向に挟みかつ左右方向に延在するようにベース部10に固定して取り付けられている。
図2(b)に示すように、上レール21および下レール22は、それぞれの排出口11寄りの端部がベース部10との間にスリット状空間Kを形成するように交互に折り曲げられた板金により構成されている。具体的には、各レール部は、帯板状の板金について幅方向に山折りと谷折りとを交互に設けることにより形成されている。これらスリット状空間Kには、後述するスライドドア30の上端部31cおよび下端部31eが収容される。
【0019】
本実施形態において、上レール21および下レール22は、断面形状が2つの直角が交互に連なるクランク形状になるように形成されている。ここで「直角」とは厳密な直角に加えて概ね直角(90度±10度程度)となる角度を含む。
図2(c)に示すように、下レール22は、ベース部10にスポット溶接などにより固定される鉛直方向に沿う取付部分22a、取付部分22aの上端に連接された水平方向に沿う段差部分22bおよび段差部分22bにおけるベース部10から離れた端に連接された鉛直方向に沿う支持部分22cを有している。上レール21も下レール22と同様の構成を有している。
【0020】
図3(a)に示すように、スライドドア30は、ドア本体部31と、取っ手部32と、ストッパ33と、を有している。
【0021】
ドア本体部31は、ベース部10の排出口11より大きい長方形状の板金を折り曲げて形成されている。ドア本体部31は、ベース部10に重ねられて排出口11を塞ぐ長方形平板状の中央部31aと、中央部31aの上端から斜め上方に延びる上段部31bと、上段部31bの上端から上方に延びる帯板状の上端部31cと、中央部31aの下端から斜め下方に延びる下段部31dと、下段部31dの下端から下方に延びる帯板状の下端部31eと、を有している。中央部31aは、排出口11よりひとまわり大きく形成されている。上端部31cおよび下端部31eは、上段部31bおよび下段部31dによって中央部31aに対して手前方向(すなわち、ベース部10から離れる方向であり、
図3(a)の紙面手前方向および
図3(b)、(c)の右方向)にずれて配置される。これにより、ドア本体部31の下端35も、中央部31aに対してベース部10から離れる方向に配置される。
【0022】
取っ手部32は、ドア本体部31の右端寄りの箇所にストッパ33とともにねじ部材34、34によって固定して取り付けられている。ストッパ33は、ベース部10の排出口11内に背面側に向けて突出して配置されており、スライドドア30を開閉する際に排出口11の右縁部11aおよび左縁部11bに突き当たることによりスライドドア30のスライド移動を規制する。
【0023】
本実施形態は、上記構成を有することから、
図4に示すように、スライドドア30の下端35が、下レール22における排出口11寄りの支持部分22c(すなわち、排出口11寄りの端部)とベース部10との間に形成されるスリット状空間Kに収容されている。そして、スライドドア30の下端35が、ベース部10に重なって排出口11を塞ぐ当該スライドドア30の中央部31aに対してベース部10から離れる方向にずれて配置されている。このようにしたことから、スライドドア30の下端35が下レール22とベース部10との間に生じるくさび状の隙間Sからずれて位置づけられて当該隙間Sにはまり込むことを防ぐことができる。そのため、スライドドア30のスライド移動が妨げられることを効果的に抑制でき、スライドドア30の開閉に必要な力をより小さくすることができる。
【0024】
また、下レール22が、断面形状が2つの直角を交互に連ねたクランク形状となるように形成されている。これにより、下レール22は、鉛直方向に沿う取付部分22a、水平方向に沿う段差部分22bおよび鉛直方向に沿う支持部分22cが順に連接されている。このようにしたことから、スライドドア30の下端35が段差部分22bに突き当たるので、スライドドア30の下端35が下レール22とベース部10の間に生じるくさび上の隙間Sにはまり込むことをより確実に防ぐことができる。
【0025】
上述した実施形態では、スライドドア30(具体的にはドア本体部31)が、中央部31aの下端から斜め下方に延びる下段部31dおよび下段部31dの下端から下方に延びる帯板状の下端部31eを有している構成であったが、これに限定されるものではない。このようなスライドドア30に代えて、例えば、
図5(a)に示すように、中央部31aの下端から斜め下方に延びる下端部31fを有するドア本体部31Aを備えたスライドドア30Aや、
図5(b)に示すように、中央部31aの下端に連接されたロール状の下端部31gを有するドア本体部31Bを備えたスライドドア30Bを採用した構成としてもよい。いずれの構成においても、スライドドア30Aの下端35Aおよびスライドドア30Bの下端35Bが、中央部31aに対してベース部10から離れる方向にずれて配置されている。
【0026】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1…射出成形機(産業機械)、3…本体部、3a…カバー、5…スライドドア構造、10…ベース部、10a…ねじ孔、11…排出口、11a…右縁部、11b…左縁部、20…レール部、21…上レール、22…下レール、22a…取付部分、22b…段差部分、22c…支持部分、30、30A、30B…スライドドア、31、31A、31B…ドア本体部、31a…中央部、31b…上段部、31c…上端部、31d…下段部、31e、31f、31g…下端部、32…取っ手部、33…ストッパ、34…ねじ部材、35、35A、35B…スライドドアの下端、K…スリット状空間、S…隙間。