(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、第1加熱コイルにおける複数の加熱コイルの加熱出力をそれぞれ調整することにより、鍋の底面部において、集中的に加熱されるところと、そうでないところとを作りだして、対流を発生させている。しかしながら、第1加熱コイルの上方には、第2加熱コイルが配設されており、当該第2加熱コイルは、鍋収容部の外周面を周回する円環状の加熱コイルであるので、鍋の側面部を周方向に均一に加熱するように作用する。したがって、第1加熱コイルにおける複数の加熱コイルによる対流が鍋の底面部で発生しても、当該対流が、鍋の底面部及びその近傍という狭い範囲に限定される小さな対流になってしまうため、大きな撹拌効果が得られない。
【0005】
したがって、この発明の解決すべき技術的課題は、広い範囲での大きな対流が鍋内で起こり、大きな撹拌効果が得られる加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、この発明によれば、以下の加熱調理器が提供される。
【0007】
すなわち、この発明に係る加熱調理器は、
鍋を収容する鍋収容部と、
前記鍋を部分的に加熱する部分加熱部とを備え、
前記部分加熱部が、前記鍋収容部の底面部から側面部にかけて延在するように配設された複数の加熱要素を有することを特徴とする。
【0008】
この発明では、部分加熱部の各加熱要素が、鍋収容部の底面部から側面部にかけて延在するように配設されていることにより、鍋の底面部から側面部にかけての上下方向(縦方向)の領域が部分的に加熱される。その結果、上下方向の大きな対流が鍋内で起こり、大きな撹拌効果が得られ、被調理物に含まれる旨み成分を引き出すことができる。
【0009】
前記複数の加熱要素が、渦巻き状の加熱コイルであることが好ましい。このようにすれば、高出力で、加熱効率が高くて、出力制御の応答性の優れた加熱を行うことができる。
【0010】
前記複数の加熱要素のそれぞれが、前記鍋収容部の周方向において離間して配設されていることが好ましい。このようにすれば、部分的な加熱による広い範囲での上下方向の対流が、鍋内で周方向に離間して生じさせることができ、大きな撹拌効果が得られる。
【0011】
前記複数の加熱要素のうち、或る加熱要素に通電しているときは、当該或る加熱要素以外の加熱要素を非通電にするように制御する制御部を備えることが好ましい。このようにすれば、通電による部分的な加熱領域と、非通電による非加熱領域との間での温度差が大きくなり、大きな撹拌効果が得られる。
【0012】
前記複数の加熱要素のうち、或る加熱要素に通電したあと、前記或る加熱要素の隣りに位置する他の加熱要素に通電するとともに前記他の加熱要素以外を非通電にすることを順次行うように制御する、又は、前記複数の加熱要素のうち、或る加熱要素と当該或る加熱要素の片隣り又は両隣りに位置する加熱要素とから構成される加熱要素群に通電したあと、前記加熱要素群の一側端の加熱要素の隣りに位置する加熱要素に通電するとともに前記加熱要素群の他側端の加熱要素を非通電にすることを順次行うように制御する制御部を備えることが好ましい。このようにすれば、部分的な加熱による上下方向の大きな対流が、周方向において順次移動して、上下方向の対流及び周方向の対流が複合化した対流を鍋内で生じさせることができ、さらに大きな撹拌効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の加熱調理器では、部分加熱部の各加熱要素が、鍋収容部の底面部から側面部にかけて延在するように配設されていることにより、鍋の底面部から側面部にかけての上下方向(縦方向)の領域が部分的に加熱される。その結果、上下方向の大きな対流が鍋内で起こり、大きな撹拌効果が得られ、被調理物に含まれる旨み成分を引き出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明の一実施形態に係る炊飯器1について、
図1から
図6を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、加熱調理器としての炊飯器1を示し、蓋体11を閉じた状態を示す斜視図である。
図2は、炊飯器1の横方向の要部断面図である。
【0017】
図1において、炊飯器1は、飯米(被調理物)を加熱する有底筒状の鍋3を着脱可能に収容する炊飯器本体(調理器本体)10と、該炊飯器本体10に対して回動可能に配設された蓋体11とを備えている。
【0018】
蓋体11は、炊飯器本体10のヒンジ接続部に回動可能に取り付けられ、炊飯器本体10に対して閉じられたとき、炊飯器本体10の開口部を閉塞する。上パネル14及び外側部材25は、蓋体11の外装体を形成している。蓋体11は、その前方側において、操作表示部15及び開放操作部16を有する。操作表示部15は、複数の入力スイッチと、動作状況や操作状況を表示する表示パネルとを備える。開放操作部16は、ロック機構(不図示)によって閉鎖状態が維持されている蓋体11を開放するためのボタンである。蓋体11は、その後方側において、排気通路の出口である蒸気排出口17を有する。
【0019】
円筒形状をなす胴体12と、該胴体12の下端開口を閉塞する底体21とは、炊飯器本体10の外装体を形成している。胴体12の側面には、ハンドルが取り付けられている。
【0020】
図2に示すように、蓋体11は、閉塞状態で鍋3の側に位置する内側部材26と、内側部材26の上部外側を覆う外側部材25とを有する。内側部材26には、放熱板18と、蓋加熱部33(
図6に図示)と、内蓋30とが配設されている。内蓋30は、鍋3の上端開口4の内周部に密着して上端開口4を閉塞するシール部材35を有する。内蓋30は、蓋体11に対して着脱可能に取り付けられる。なお、内蓋30は、蓋体11に対して離脱不可である構成であってもよい。
【0021】
蓋体11の内側部材26は、炊飯器本体10の後方側に形成されたヒンジ接続部に回転可能に装着されている。内側部材26における鍋3への対向位置には放熱板18が配設される。放熱板18の上側には、鍋3の蓋側を加熱する蓋加熱部33(
図6に図示)と、鍋3の蓋側温度を検出する蓋温度検出部53(
図6に図示)が配設されている。
【0022】
炊飯器本体10は、胴体12の上端開口を覆うように取り付ける肩体32を有する。肩体32は、図示しない肩カバーや胴飾り体で覆われている。肩体32の後方側には、蓋体11を回動可能に装着するためのヒンジ接続部が設けられている。肩体32の前方側には、蓋体11のロック爪(フック)と係合する係合穴が設けられている。肩体32の下部には、鍋3を収容する内胴50及び鍋収容部40が配設されている。内胴50は、円筒状をした金属材料からなる。内胴50の外周面には、鍋3の上側部分を加熱する胴加熱部51が配設されている。
【0023】
鍋収容部40は、保護枠とも呼ばれており、非導電性材料(例えば合成樹脂材料)からなる。鍋収容部40の外周面には、鍋3を底面部41から側面部42にかけて部分的に加熱する部分加熱部24の加熱要素(例えば、加熱コイル22)が配設されている。誘導加熱によって鍋3を加熱するときには、後述する加熱コイル22からの磁束を収束させるためのフェライトコアが配設される。
【0024】
鍋収容部40は、底面部41と側面部42とコーナ部43とを有する有底筒形状をしている。底面部41は、左右方向に略平坦に延在する円形状をしている。側面部42は、上下方向に且つ外方に延在する略円筒形状をしている。コーナ部43は、底面部41と側面部42とをつなぐ曲面形状をしている。
【0025】
図3に示すように、鍋収容部40の上側周縁部には、複数のブラケット部44が設けられている。ブラケット部44は、肩体32に対してネジ止めで固定するために使用される。また、鍋収容部40には、センサ取付部46が設けられている。センサ取付部46は、収容された鍋3の温度を検出する鍋温度検出部54(
図6に図示)を配置するために使用される。さらに、鍋収容部40の底面中央には、中央支持部45が設けられている。中央支持部45は、略円筒状をなして下方に突出して、対向する底体21に当接して支持する。
【0026】
図4及び5に示すように、鍋収容部40の外面48には、部分加熱部24を構成する複数の加熱要素が密着して取り付けられている。例えば、鍋収容部40の外面48側に配設されるフェライトコア(不図示)により鍋収容部40で挟持することによって、部分加熱部24の各加熱要素が鍋収容部40の外面48に固定される。部分加熱部24の各加熱要素を鍋収容部40の外面48に取り付けることにより、鍋収容部40に対する部分加熱部24の各加熱要素の装着が容易になり、加熱効率を高めることができる。部分加熱部24の各加熱要素は、鍋収容部40の底面部41からコーナ部43を経て側面部42まで延在している。
【0027】
部分加熱部24は、複数の加熱要素から構成されている。この実施形態では、部分加熱部24は、第1部分加熱部24aと第2部分加熱部24bと第3部分加熱部24cという3つの加熱要素から構成されている。当該部分加熱部24a,24b,24cのそれぞれは、鍋収容部40の周方向において離間して配設されている。各部分加熱部24a,24b,24cは、渦巻き状の加熱コイル22と、2つの接続端部23とを有する。各接続端部23を通じて、高周波電流が各部分加熱部24a,24b,24cに通電される。各部分加熱部24a,24b,24cの各加熱コイル22は、高周波電流が通電されることにより電磁波を発生し、鍋収容部40を介して鍋3を誘導加熱する。
【0028】
各部分加熱部24a,24b,24cの各加熱コイル22は、鍋収容部40の底面部41から曲面形状のコーナ部43を経て側面部42まで延在する。各部分加熱部24a,24b,24cの各加熱コイル22が、曲面形状のコーナ部43に対してより密着するため、加熱効率を高めることができる。
【0029】
鍋収容部40において、底体21と対向する外面48には、フェライトコアを位置決めして係着するためのフェライト係着部47が設けられている。フェライトコアと底体21との間には、シールド板(不図示)が配設されている。シールド板は、鍋3とは逆方向であって加熱コイル22の下側から生じた電磁波の漏洩を防止するために、鍋3よりも電気抵抗値が低い銅又はアルミニウムからなる。
【0030】
鍋収容部40と胴体12との間の空間には、回路基板(不図示)が配設されている。回路基板は、各部分加熱部24a,24b,24cの各加熱コイル22に高周波電流を通電して誘導加熱を行わせる回路素子を有する。回路基板は、図示しないファンによって冷却される。
【0031】
マイコン5(制御部)は、各部分加熱部24a,24b,24cの各加熱コイル22に対して適切なタイミングで高周波電流を通電するように制御する。
【0032】
例えば、第1部分加熱部24aだけに高周波電流を通電すると、第1部分加熱部24aに対応する、鍋3の底面部41から側面部42にかけての上下方向(縦方向)の広い領域が部分的に誘導加熱される。当該加熱領域が集中的に加熱されることにより、鍋3内の当該加熱領域において上下方向の大きな対流が起こる。上下方向の大きな対流によって大きな撹拌効果が得られ、炊飯中において、飯米(被調理物)に含まれる旨み成分(溶出糖分など)を引き出すことができる。なお、当該加熱領域を集中的に加熱するためには、加熱コイル22の加熱出力に依存するが、少なくとも0.5秒程度の部分加熱時間にわたって通電することが好ましい。例えば、0.5秒から30秒の部分加熱時間にわたって、第1部分加熱部24aだけに通電される。
【0033】
同様に、第2部分加熱部24bだけに高周波電流を上記部分加熱時間にわたって通電すると、第2部分加熱部24bに対応する、鍋3の底面部41から側面部42にかけての上下方向(縦方向)の広い領域が部分的に誘導加熱されて、鍋3内の当該加熱領域において上下方向の大きな対流が起こる。また、第3部分加熱部24cだけに高周波電流を上記部分加熱時間にわたって通電すると、第3部分加熱部24cに対応する、鍋3の底面部41から側面部42にかけての上下方向(縦方向)の広い領域が部分的に誘導加熱されて、鍋3内の当該加熱領域において上下方向の大きな対流が起こる。
【0034】
このように、例えば第1部分加熱部24aだけに通電して他の部分加熱部24b,24cを非通電にすると、通電された第1部分加熱部24aに対応する、鍋3の底面部41から側面部42にかけての上下方向(縦方向)の広い領域が部分的に誘導加熱されて、鍋3内の当該加熱領域において上下方向の大きな対流が起こる。すなわち、通電による部分的な加熱領域と、非通電による非加熱領域との間での温度差が大きくなり、大きな対流が起こるので、大きな撹拌効果が得られる。
【0035】
次に、第1部分加熱部24aの隣りに位置する第2部分加熱部24bだけに通電して他の部分加熱部24c,24aを非通電にすると、通電された第2部分加熱部24bに対応する、鍋3の底面部41から側面部42にかけての上下方向(縦方向)の広い領域が部分的に誘導加熱されて、鍋3内の当該加熱領域において上下方向の大きな対流が起こる。さらに、第2部分加熱部24bの隣りに位置する第3部分加熱部24cだけに通電して他の部分加熱部24a,24bを非通電にすると、通電された第3部分加熱部24cに対応する、鍋3の底面部41から側面部42にかけての上下方向(縦方向)の広い領域が部分的に誘導加熱されて、鍋3内の当該加熱領域において上下方向の大きな対流が起こる。
【0036】
したがって、マイコン5(制御部)により、複数の部分加熱部のうち、或る部分加熱部に通電したあと、或る部分加熱部の隣りに位置する他の部分加熱部に通電するとともに他の部分加熱部以外を非通電にすることを順次行うように制御できる。当該制御によれば、部分的な加熱による上下方向の大きな対流が、鍋3の周方向において順次移動して、上下方向の対流及び周方向の対流が複合化した対流を鍋3内で生じさせることができる。複合化した対流により、炊飯中において、飯米に含まれる旨み成分(溶出糖分など)をさらに引き出すことができる。
【0037】
なお、この発明の理解を容易にするために、具体的な構成や数字を用いて説明したが、この発明は、上述した各実施形態の具体的な構成や数字に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲で考えられる各種の変形例を含むことができる。
【0038】
例えば、鍋収容部40の外面48に固定される渦巻き状の加熱コイル22は、平面視で大略円形をしているが、平面視で上下方向に長軸を有する大略楕円形状であってもよい。
【0039】
通電によって加熱される加熱要素は、或る1つの加熱要素だけに限られず、或る1つの加熱要素と当該或る1つの加熱要素の片隣り又は両隣りに位置する加熱要素とから構成される加熱要素群としてもよい。マイコン5(制御部)により、或る加熱要素と当該或る加熱要素の片隣り又は両隣りに位置する加熱要素とから構成される加熱要素群に通電したあと、前記加熱要素群の一側端の加熱要素の隣りに位置する加熱要素に通電するとともに前記加熱要素群の他側端の加熱要素を非通電にすることを順次行うように制御してもよい。
【0040】
部分加熱部24は、上述した3つに限られず、2つ、4つ、5つ、6つなどの複数の加熱要素から構成してもよい。この場合、上述したように、或る加熱要素に通電したあと、或る加熱要素の隣りに位置する他の加熱要素に順次通電するように制御してもよいが、対流がより大きくなるのであれば、例えば、或る対向する対の加熱要素に同時に通電したあと、或る対の加熱要素の隣りに位置する他の対向する対の加熱要素に同時に通電するとともに他の対の加熱要素以外を同時に非通電にすることを順次行うように制御してもよい。また、対向位置及び隣り位置にある複数の加熱要素を加熱要素群として同時に通電して加熱するように制御してもよい。このように、マイコン5(制御部)によって、部分加熱部を構成する複数の加熱要素のうちの或る加熱要素及びそれ以外の加熱要素に対する通電の順番やタイミングなどを任意に設定することができる。
【0041】
部分加熱部24の加熱要素は、上述した加熱コイル22に限られず、高い加熱出力を有する複数の電熱ヒータから構成することもできる。また、部分加熱部24の加熱要素は、複数の小型の加熱部材(コイルや電熱ヒータ)が鍋収容部40の底面部41から側面部42にかけて上下方向に隣接して配設されることによって、単体の加熱要素と同様の機能を発揮するような構成とすることもできる。
【0042】
また、この発明の加熱調理器は、飯米を炊飯する炊飯器を例に挙げて説明されているが、他の被調理物(例えば、ビーフシチューやクリームシチューのような煮込み物)を加熱して調理する加熱調理器にも適用可能であり、同様の作用及び効果を奏することができる。