特許第6833462号(P6833462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833462
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】自然循環型植物油入変圧器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/00 20060101AFI20210215BHJP
   H01F 27/12 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
   H01F41/00 B
   !H01F27/12 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-219640(P2016-219640)
(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-78211(P2018-78211A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年11月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年5月12日に東北電力株式会社研究開発センター予稿集(平成28年度研究開発報告会)で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000242127
【氏名又は名称】北芝電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英
(72)【発明者】
【氏名】松井 順也
(72)【発明者】
【氏名】福田 仁
(72)【発明者】
【氏名】工藤 優一
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−135989(JP,A)
【文献】 特開昭56−136242(JP,A)
【文献】 特開平09−320856(JP,A)
【文献】 特開2012−182245(JP,A)
【文献】 特開平07−094334(JP,A)
【文献】 特開2008−124146(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0072964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/00
H01F 27/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然循環型鉱油入変圧器に基づいて設計される自然循環型植物油入変圧器の製造方法であって、
前記自然循環型鉱油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化に対する前記自然循環型植物油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化から、該自然循環型植物油入変圧器の期待寿命を算定する期待寿命算定工程と、
前記期待寿命算定工程により算定された期待寿命と、巻線最高温度との関係から巻線最高温度を設定する巻線温度設定工程と
前記巻線温度設定工程により設定された巻線最高温度と該巻線最高温度に対応した期待寿命とを充足するように、該自然循環型植物油入変圧器の外形形状を決定する外形決定工程と
を備え
前記期待寿命算定工程では、前記自然循環型鉱油入変圧器の鉱油中巻線絶縁紙と前記自然循環型植物油入変圧器の植物油中巻線絶縁紙との平均重合度の経時変化を、加速劣化試験により、平均重合度残率が所定値となるまでに到達する日数の、鉱油中巻線絶縁紙に対する植物油中巻線絶縁紙の倍率として前記期待寿命を算出し、
前記巻線温度設定工程では、巻線絶縁紙の寿命の6℃温度半減則から、前記期待寿命算定工程で算出した前記期待寿命の倍率を充足する巻線最高温度上昇(K)として設定する前記巻線最高温度を算出し、
前記外形決定工程では、前記巻線温度設定工程により設定された前記巻線最高温度上昇(K)と、当該自然循環型植物油入変圧器の内部で発生する損失に依存する油最高温度上昇(K)と、前記巻線内での損失に依存する差分(K)との関係を規定する次式により、油最高温度上昇(K)が設定されて、
巻線最高温度上昇(K)=油最高温度上昇(K)+差分(K)
当該油最高温度上昇(K)に応じた放熱器の形状が選定されると共に、前記自然循環型鉱油入変圧器の基礎固定位置と、端子位置と、制御配線位置とを当該自然循環型植物油入変圧器の基礎固定位置と、端子位置と、制御配線位置とに一致させて設計されることを特徴とする自然循環型植物油入変圧器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自然循環型鉱油入変圧器に基づいて同型の自然循環型植物油入変圧器を設計して製造する植物油入変圧器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自然循環型植物油入変圧器としては、下記特許文献1に示すように、本願発明者および本願出願人による菜種油入変圧器が知られている。
【0003】
かかる菜種油入変圧器によれば、変圧器タンクの密閉性を高め空気中の水分が絶縁油としての菜種油に吸収されることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5209581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本願発明者および出願人は、植物油入変圧器の実用化および普及を進めてきたパイオニアとして、植物油入変圧器に関して鋭意試験研究を繰り返す中で、巻線に使用している巻線絶縁紙に着目することで、既設の鉱油入変圧器との差異により設計上特徴的な優位性を示すとの知見に至った。
【0006】
特に、植物油は、粘性(動粘度特性)が鉱油に比して高いため、鉱油に比して自然循環に不向きであり、単に鉱油を植物油に変えただけでは対応できないところ、巻線絶縁紙に着目することで、逆に、既設の鉱油入変圧器との差異により植物油入変圧器において設計上特徴的な優位性を示すとの知見に至った。
【0007】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、自然循環型鉱油入変圧器との差異により植物油の特徴を最大限に生かすことができる自然循環型植物油入変圧器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の自然循環型植物油入変圧器の製造方法は、自然循環型鉱油入変圧器に基づいて設計される自然循環型植物油入変圧器の製造方法であって、
前記自然循環型鉱油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化に対する前記自然循環型植物油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化から、該自然循環型植物油入変圧器の期待寿命を算定する期待寿命算定工程と、
前記期待寿命算定工程により算定された期待寿命と、巻線最高温度との関係から巻線最高温度を設定する巻線温度設定工程と
前記巻線温度設定工程により設定された巻線最高温度と該巻線最高温度に対応した期待寿命とを充足するように、該自然循環型植物油入変圧器の外形形状を決定する外形決定工程と
を備え
前記期待寿命算定工程では、前記自然循環型鉱油入変圧器の鉱油中巻線絶縁紙と前記自然循環型植物油入変圧器の植物油中巻線絶縁紙との平均重合度の経時変化を、加速劣化試験により、平均重合度残率が所定値となるまでに到達する日数の、鉱油中巻線絶縁紙に対する植物油中巻線絶縁紙の倍率として前記期待寿命を算出し、
前記巻線温度設定工程では、巻線絶縁紙の寿命の6℃温度半減則から、前記期待寿命算定工程で算出した前記期待寿命の倍率を充足する巻線最高温度上昇(K)として設定する前記巻線最高温度を算出し、
前記外形決定工程では、前記巻線温度設定工程により設定された前記巻線最高温度上昇(K)と、当該自然循環型植物油入変圧器の内部で発生する損失に依存する油最高温度上昇(K)と、前記巻線内での損失に依存する差分(K)との関係を規定する次式により、油最高温度上昇(K)が設定されて、
巻線最高温度上昇(K)=油最高温度上昇(K)+差分(K)
当該油最高温度上昇(K)に応じた放熱器の形状が選定されると共に、前記自然循環型鉱油入変圧器の基礎固定位置と、端子位置と、制御配線位置とを当該自然循環型植物油入変圧器の基礎固定位置と、端子位置と、制御配線位置とに一致させて設計されることを特徴とする。
【0009】
上記知見に基づき、第1発明の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、自然循環型鉱油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化に対する自然循環型植物油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化を把握することで、自然循環型植物油入変圧器の期待寿命を算定することができる。そして、かかる期待寿命と巻線最高温度との関係から巻線最高温度を設定することができる。
【0010】
ここで設定された巻線最高温度を具体的に設定することで、所望の期待寿命となる自然循環型植物油入変圧器を具体的に実現することができ、植物油の特徴を最大限に生かして、鉱油入変圧器よりも期待寿命を延伸化する、または変圧器の体格の縮小化および軽量化を図る等、設計上の自由度を高めることができる。
【0011】
このように、第1発明の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、自然循環型鉱油入変圧器との差異により植物油の特徴を最大限に生かすことができる自然循環型植物油入変圧器を設計して製造することができる。
【0013】
また、発明の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、自然循環型植物油入変圧器の巻線最高温度と期待寿命との関係から巻線最高温度と期待寿命とが決定するところ、このとき、決定された巻線最高温度と期待寿命とを充足するように、当該自然循環型植物油入変圧器の外形形状を決定する。
【0014】
これにより、植物油の特徴を最大限に生かして、設計上の自由度を高めることができると共に変圧器全体のコンパクト化を図ることができる。特に、植物油入変圧器の期待寿命と巻線最高温度の関係より、鉱油入変圧器よりも期待寿命を延伸化する、または体格の縮小化および軽量化を図ることを制御できる設計工法を実現できる。
【0015】
このように、第発明の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、自然循環型鉱油入変圧器との差異により植物油の特徴を最大限に生かすことができる自然循環型植物油入変圧器を具体的に設計して製造することができる。
【0017】
さらに、第発明の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、既に運転している自然循環型鉱油入変圧器を、自然循環型植物油入変圧器に更新するときに、既に運転している自然循環型鉱油入変圧器の基礎固定位置、ブッシング端子位置および保護継電器や負荷時タップ切換器の制御配線の端子台位置に、新設する自然循環型植物油入変圧器の基礎固定位置、端子位置および保護継電器や負荷時タップ切換器の制御配線の端子台位置を合致させることで、機器入替を行う現地工事期間の短縮を図ることができる。また既に運転している自然循環型鉱油入変圧器よりも、変圧器の体格の縮小化および軽量化を図ることができることから、体格を縮小化する寸法的余力を、鉄心の断面積を大きくして鉄心内の磁束密度を低減したり、巻線に使用している銅線の断面積を大きくすることで低損失化を図ることが可能となる。
【0018】
このように、第発明の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、自然循環型鉱油入変圧器との差異により植物油の特徴を最大限に生かすことができる自然循環型植物油入変圧器を具体的に設計して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本実施形態の自然循環型植物油入変圧器の平面図。
図1B】本実施形態の自然循環型植物油入変圧器の正面図。
図2】本実施形態の自然循環型植物油入変圧器の製造方法における期待寿命算定工程の説明図。
図3】本実施形態の自然循環型植物油入変圧器の製造方法における巻線温度設定工程の説明図。
図4A】既設の自然循環型鉱油入変圧器の平面図。
図4B】既設の自然循環型鉱油入変圧器の正面図。
図5A】本実施形態の自然循環型植物油入変圧器と既設の自然循環型鉱油入変圧器とを重ね合わせた平面図。
図5B】本実施形態の自然循環型植物油入変圧器と既設の自然循環型鉱油入変圧器とを重ね合わせた正面図。
図6A】本実施形態の他の自然循環型植物油入変圧器の平面図。
図6B】本実施形態の他の自然循環型植物油入変圧器の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本実施形態の自然循環型植物油入変圧器1は、図1に模式的に示すように、変圧器タンク2内に複数の変圧器本体(図示省略)を収容し、内部に絶縁液体としての植物油を注入含浸した状態で密封された構造となっている。
【0021】
植物油としては、代表的には菜種油であるが、これに限定されるものではなく、例えば、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ベニバナ油、ホホバ油、レスケレラ油およびベロニア油等の一部または全部であってもよい。
【0022】
変圧器本体は、鉄心に一次、二次のコイルを巻装して構成され、変圧器タンク2内に収容されたタップ切換装置(図示省略)等により、一次、二次コイルに流れる電流を切り替え可能となっている。
【0023】
変圧器タンク2には、対向する側部に冷却用の放熱器3と、上部にコンサベータ4とが設けられている。また、変圧器タンク2には、残る対向する側部の一方に一次側接続端子51、他方に二次側接続端子52が設けられている。
【0024】
放熱器3は、変圧器タンク2の側壁の上下2箇所で該変圧器タンク2内と連通する連通管31,32と、連通管31,32から各々分岐した複数の放熱板33とを備える。変圧器タンク2内の植物油は、上下2箇所の連通管31,32と放熱板33とを介して循環することにより放熱板33で冷却される。なお、植物油の循環は、上下2箇所の連通管31,32の植物油の温度差による自然循環でもよく、または図示しない循環ポンプによる強制循環であってもよい。
【0025】
コンサベータ4は、変圧器タンク2内の植物油が流入する補助室であって、植物油が温度変化により膨脹した場合でもコンサベータにより膨脹油量を吸収し、変圧器タンク2内の植物油が直接空気と接触することを防止することができる。
【0026】
一次側接続端子51は、変圧器本体の一次コイルに接続される接続端子であり、二次側接続端子52は、変圧器本体の二次コイルに接続される接続端子である。
【0027】
以上が本実施形態の自然循環型植物油入変圧器1の概要である。
【0028】
次に、かかる自然循環型植物油入変圧器1の設計製造方法について図1図5を参照して説明する。
【0029】
本実施形態の自然循環型植物油入変圧器1の設計製造方法は、自然循環型鉱油入変圧器1´に基づいて同型の自然循環型植物油入変圧器1を設計して製造する自然循環型植物油入変圧器1の製造方法であって、期待寿命算定工程と、巻線温度設定工程と、外形決定工程とを備える。
【0030】
まず、期待寿命算定工程では、自然循環型鉱油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化に対する自然循環型植物油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化から、該自然循環型植物油入変圧器の期待寿命を算定する。
【0031】
図2に示すように、具体的に、期待寿命算定工程では、自然循環型鉱油入変圧器の鉱油中巻線絶縁紙と、自然循環型植物油入変圧器の植物油中巻線絶縁紙との巻線絶縁紙の劣化を定量的に把握できる平均重合度の経時変化を加速劣化試験により算定する。
【0032】
かかる加速劣化試験の結果によれば、加速劣化試験開始前の巻線絶縁紙の平均重合度残率が80%の場合の試験結果であるが、平均重合度残率が45%までに到達する日数は、鉱油中巻線絶縁紙に対して植物油(ナタネ油)中巻線絶縁紙は9倍であり、このことから巻線最高温度が同一の場合、変圧器運転の初期の巻線平均重合度残率が80%であれば、鉱油中巻線絶縁紙に対して植物油(ナタネ油)中巻線絶縁紙は9倍の期待寿命があると言える。
【0033】
すなわち変圧器に使用する絶縁油を植物油化することで、絶縁油として鉱油を使用した変圧器よりも期待寿命を延伸することができ、巻線最高温度を同一とした場合その延伸化は9倍となる。
【0034】
次に、巻線温度設定工程では、期待寿命算定工程により算定された期待寿命と、巻線最高温度との関係から巻線最高温度を設定する。
【0035】
具体的に、巻線温度設定工程では、巻線絶縁紙の寿命は「6℃温度半減則」すなわち、温度が6℃高くなると、寿命は半減(1/2)する法則から、巻線最高温度を設定する。
【0036】
すなわち、自然循環型鉱油入変圧器の巻線最高点温度に対して、自然循環型植物油入変圧器の巻線最高点温度を、19(K)高くした場合、自然循環型鉱油入変圧器と自然循環型植物油入変圧器の寿命は同一となる。
【0037】
また、自然循環型鉱油入変圧器の巻線最高点温度に対して、自然循環型植物油入変圧器の巻線最高点温度を、13(K)高くした場合、自然循環型鉱油入変圧器に対して自然循環型植物油入変圧器の寿命は2倍となる。
【0038】
このことから、自然循環型鉱油入変圧器の巻線最高点温度に対して、自然循環型植物油入変圧器の巻線最高点温度が13(K)高くなるよう、自然循環型植物油入変圧器の内部で発生する損失に応じた放熱器を選定して油最高温度上昇(K)を決定し、かつ、巻線内で発生する損失や巻線銅線サイズや油が流れる油道寸法を選定することで、巻線最高点温度上昇に対する油最高温度上昇に対する差分(K)を決定し、巻線最高点温度上昇(K)=油最高温度上昇(K)+巻線最高点温度上昇に対する油最高温度上昇に対する差分(K)であることから、巻線最高点温度上昇(K)を設定することができる。結果として、自然循環型鉱油入変圧器に対して2倍の寿命を有する自然循環型植物油入変圧器とすることができる。
【0039】
一方、自然循環型鉱油入変圧器の巻線最高点温度に対して、自然循環型植物油入変圧器の巻線最高点温度を、13(K)高くした場合、自然循環型鉱油入変圧器と自然循環型植物油入変圧器の寿命は2倍となるが、自然循環型鉱油入変圧器の巻線最高点温度に対して、自然循環型植物油入変圧器の巻線最高点温度を13(K)高くすることは、自然循環型植物油入変圧器の内部で発生する損失に応じた放熱器量を低減できることになり、放熱器本数や放熱器パネル枚数や放熱器高さを低減することができる。結果として、自然循環型鉱油入変圧器よりも、自然循環型植物油入変圧器は変圧器体格を低減することができる。
【0040】
ここで、巻線温度設定工程では、巻線最高温度を設定することで該巻線最高温度に対応した期待寿命が決定される。
【0041】
図3に示すように、例えば、等価周囲温度25℃とした場合の巻線最高温度と植物油入変圧器の期待寿命(年)の関係は、
y=39623065×exp(−0.1155×x)
となる。
【0042】
なお、図3において、巻線最高温度(K)を変数x、植物油入変圧器の期待寿命(年)を変数yとしている。
【0043】
かかる図3における巻線最高温度と期待寿命との関係から、巻線最高温度とこれに対応する期待寿命が具体的に決定される。
【0044】
外形決定工程では、以上の期待寿命算定工程と巻線温度設定工程とにより規定される各条件の下で、自然循環型植物油入変圧器の外形形状が決定される。
【0045】
具体的に、外形決定工程では、自然循環型鉱油入変圧器の基礎固定位置と、端子位置と、制御配線位置とを自然循環型植物油入変圧器の基礎固定位置と、端子位置と、制御配線位置とに一致させて設計される。
【0046】
かかる外形決定工程では、例えば、図4に従来の既設の自然循環型鉱油入変圧器1´を示し、図5に自然循環型植物油入変圧器1と既設の自然循環型鉱油入変圧器1´とを重ね合わせて示すように、以下のような植物油の特徴を最大限に生かした優位性を有する。なお、図4および図5において、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
まず、図4の既設の自然循環型鉱油入変圧器1´では、変圧器タンク2の容積が大きいばかりでなく、放熱器も変圧器タンク2の広範な対向する側面全体を覆うように大型の仕様となっているが、図1の本実施形態の自然循環型植物油入変圧器1では、変圧器タンク2の容積が小さく、放熱器も対応する変圧器タンクの側面の中央部を覆う小型の仕様となっている。
【0048】
一方で、図5に示すように、図4の既設の自然循環型鉱油入変圧器1´の一次側接続端子51および二次側接続端子52の位置と、図1の本実施形態の自然循環型植物油入変圧器1の一次側接続端子51および二次側接続端子52の位置とが一致している。また、同様に、基礎固定位置および制御配線位置も一致させることで、既設の自然循環型鉱油入変圧器と本実施形態の自然循環型植物油入変圧器を入れ替えた場合の工事作業を短期間で行うことが可能となる。
【0049】
以上詳しく説明したように、本実施形態の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、植物油の特徴を最大限に生かして、鉱油入変圧器よりも期待寿命を延伸化する、または変圧器の体格の縮小化および軽量化を図る等、設計上の自由度を高めることができる。
【0050】
このように、本実施形態の自然循環型植物油入変圧器の製造方法によれば、鉱油入変圧器との差異により植物油の特徴を最大限に生かすことができる自然循環型植物油入変圧器を設計して製造することができる。
【0051】
すなわち、植物油は、鉱油に比して自然循環型変圧器に対応させることが難しい。例えば、全く同一の変圧器構造とした場合、植物油は、粘性(動粘度特性)が鉱油に比して高いため、単に鉱油を植物油に変えただけでは、変圧器運転中の巻線内自然循環流速やタンク内および放熱器内自然循環流速は、鉱油中より植物油中の方が低くなる。
【0052】
その結果、油最高温度上昇、および巻線平均温度上昇、ならびに巻線最高温度上昇は、
絶縁油を鉱油とした場合よりも植物油の方が高くなり、規格に定めた温度上昇限度に対応することができなかった。
【0053】
このように、単に鉱油を植物油に変えただけでは自然循環型変圧器に対応できないところ、巻線絶縁紙に着目することで期待寿命を算定し、期待寿命と巻線最高温度との関係から以下のように、自然循環型植物油入変圧器において設計上特徴的な優位性を得ることができる。
【0054】
具体的には、自然自然循環型鉱油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化に対する自然循環型植物油入変圧器の巻線絶縁紙の平均重合度の経時変化から、該自然循環型植物油入変圧器の期待寿命を算定する期待寿命算定工程と、期待寿命算定工程により算定された期待寿命と、巻線最高温度との関係から巻線最高温度を設定する巻線温度設定工程により、巻線最高温度を上昇させることができると共に、これに応じた放熱器のパネル形状の変更など自然自然循環型植物油入変圧器の形状全体の最適化を、設計の自由度を担保して、実現することができる。
【0055】
なお、本実施形態の自然循環型植物油入変圧器は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、従来、低騒音50dB仕様、負荷時タップ切換仕様、公称電圧66kVから公称電圧6.6kVに降圧する変圧仕様、定格容量20MVA仕様クラスの変圧器においては、道路輸送条件の制約から全装可搬形が実現できなかったが、図6に示すように、自然循環型植物油入変圧器の設計製造方法によれば、図6Aおよび図6Bに示すように、植物油の動粘度特性に応じた放熱器配置にすることができ、変圧器の高さが3600mm以下であり、部品を分解することなく輸送が可能となる(全装可搬)。
【0056】
なお、図6において、図4および図5と同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【符号の説明】
【0057】
1…自然循環型植物油入変圧器、1´…自然循環型鉱油入変圧器、2…変圧器タンク、3…放熱器、4…コンサベータ、31,32…連通管、33…放熱板、51…一次側接続端子、52…二次側接続端子。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B