特許第6833484号(P6833484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6833484渦流燃焼器およびこれを用いた可搬式発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833484
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】渦流燃焼器およびこれを用いた可搬式発電装置
(51)【国際特許分類】
   F23Q 3/00 20060101AFI20210215BHJP
   F23C 3/00 20060101ALI20210215BHJP
   F23D 14/02 20060101ALI20210215BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   F23Q3/00 102B
   F23C3/00 301
   F23D14/02 M
   H02N11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-235613(P2016-235613)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-91558(P2018-91558A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−133510(JP,U)
【文献】 実開昭49−085636(JP,U)
【文献】 実開昭50−124637(JP,U)
【文献】 特開2007−232311(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0709386(KR,B1)
【文献】 特開平04−306410(JP,A)
【文献】 特開2009−027876(JP,A)
【文献】 特開平01−312307(JP,A)
【文献】 特開平05−133510(JP,A)
【文献】 特開2018−046594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00−14/84
F23Q 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器本体の内部に、筒状の燃焼室と、前記燃焼室の内面の接線方向に向けて燃焼用ガスを導入する燃焼用ガス導入部と、を備え、前記燃焼室内に渦流火炎を形成する渦流燃焼器であって、燃焼用ガスに点火する点火装置が、渦流火炎の先端よりも下流に配置されており、
前記燃焼器本体は、前記燃焼室の下流端が開口する開口部を備え、前記点火装置は、前記開口部から前記燃焼室内に挿入されており、
前記燃焼器本体は、前記燃焼室で発生した燃焼排ガスが流通する燃焼排ガス流路をさらに備え、前記点火装置により前記開口部が閉塞されていることを特徴とする渦流燃焼器。
【請求項2】
前記点火装置は、火花放電を行う放電電極を備え、前記放電電極は、中心軸が燃焼室の軸線と重なるように配置され、その先端は前記燃焼室の内面に向かって傾斜していることを特徴とする請求項記載の渦流燃焼器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の渦流燃焼器と、前記渦流燃焼器に燃料ガスを供給する燃料供給部と、記渦流燃焼器に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給部と、前記渦流燃焼器によって高温側が加熱される熱電発電モジュールと、前記熱電発電モジュールの低温側を冷却する冷却部と、を備えることを特徴とする可搬式発電装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の渦流燃焼器と、前記渦流燃焼器に燃料ガスを供給する燃料供給部と、前記渦流燃焼器に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給部と、前記渦流燃焼器によって高温側が加熱される熱電発電モジュールと、前記熱電発電モジュールの低温側を冷却する冷却部と、を備え、前記燃焼器本体の外周面に前記熱電発電モジュールが取り付けられていることを特徴とする可搬式発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流燃焼器および可搬式発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の燃焼室を備え、この燃焼室の内面の接線方向に向けて燃料ガスと空気、またはその予混合気を導入して旋回流を発生させ、この旋回流に点火することで燃焼室内に渦状の火炎を形成する渦流燃焼器が知られている(例えば特許文献1)。この渦流燃焼器は、高速の旋回流によって安定した火炎が燃焼室内に形成されるので、燃焼火炎の温度のバラツキが小さく、局所的な高温領域が形成されにくいため、NOxの発生を抑えることが可能となる。加えて、渦流火炎は燃焼室内にのみ存在するため、燃焼器の小型化も達成することができる。
【0003】
また、近年においては、屋外や災害時などに使用することのできる、持ち運び可能な可搬式の電源として、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電モジュールを用いた発電装置が提案されている(例えば特許文献2)。この熱電発電モジュールは、低温部と高温部との温度差により起電力を発生するものであって、温度差が大きいほど大きな起電力を得ることができるため、高温部を加熱する加熱源が必要である。特許文献2では、この加熱源として触媒燃焼器を用いているが、加熱源として渦流燃焼器を用いることで、発電効率の高い発電装置を小型に構成することが可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−93118号公報
【特許文献2】特開2009−27876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、渦流燃焼器は、燃焼室内に高速の旋回流を発生させることにより安定燃焼を行うことができるものであり、この旋回流に乱れが生じると、燃焼状態の悪化や失火を引き起こしてしまう。そのため、燃焼室内の火炎を形成する部分には、旋回流を乱す原因となるものを極力配置しない構成とすることが望ましく、例えば特許文献1では、点火装置が、燃料ガスを導入するノズルよりも燃焼室の後端側に設けられている。
【0006】
このように構成することで、点火装置が旋回流に乱れを発生させる原因となることはないが、燃焼室の後端側には点火装置を配置するためのスペースが必要となる。そして、良好な点火を行うためには、燃料ガスを導入するノズルとの間に、燃料ガスと空気とを混合して予混合気を生成するための十分な距離が必要であるため、燃焼器を小型に構成することが難しくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、小型でかつ着火性に優れた渦流燃焼器およびこれを用いた可搬式発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃焼器本体の内部に、筒状の燃焼室と、前記燃焼室の内面の接線方向に向けて燃焼用ガスを導入する燃焼用ガス導入部と、を備え、前記燃焼室内に渦流火炎を形成する渦流燃焼器であって、燃焼用ガスに点火する点火装置が、渦流火炎の先端よりも下流に配置されており、
前記燃焼器本体は、前記燃焼室の下流端が開口する開口部を備え、前記点火装置は、前記開口部から前記燃焼室内に挿入されており、
前記燃焼器本体は、前記燃焼室で発生した燃焼排ガスが流通する燃焼排ガス流路をさらに備え、前記点火装置により前記開口部が閉塞されていることを特徴とする渦流燃焼器である。
【0012】
また、前記点火装置は、火花放電を行う放電電極を備え、前記放電電極は、中心軸が燃焼室の軸線と重なるように配置され、その先端は前記燃焼室の内面に向かって傾斜していることを特徴とする請求項記載の渦流燃焼器である。
【0013】
また、請求項1または2に記載の渦流燃焼器と、前記渦流燃焼器に燃料ガスを供給する燃料供給部と、記渦流燃焼器に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給部と、前記渦流燃焼器によって高温側が加熱される熱電発電モジュールと、前記熱電発電モジュールの低温側を冷却する冷却部と、を備えることを特徴とする可搬式発電装置である。
【0014】
また、請求項1または2に記載の渦流燃焼器と、前記渦流燃焼器に燃料ガスを供給する燃料供給部と、前記渦流燃焼器に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給部と、前記渦流燃焼器によって高温側が加熱される熱電発電モジュールと、前記熱電発電モジュールの低温側を冷却する冷却部と、を備え、前記燃焼器本体の外周面に前記熱電発電モジュールが取り付けられていることを特徴とする可搬式発電装置である。
【発明の効果】
【0015】
上述のように構成することにより、小型でかつ着火性に優れた渦流燃焼器およびこれを用いた可搬式発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態における渦流燃焼器の一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態における渦流燃焼器の他の一例を示す構成図である。
図3】(a)は本発明の実施形態における渦流燃焼器のさらに他の一例を示す断面構成図、(b)は(a)に示す渦流燃焼器のA−A‘断面図である。
図4】本発明の実施形態における発電装置の一例を示す構成図である。
図5】本発明の実施形態における発電装置の一例を示す部分断面図である。
図6】本発明の実施形態における発電装置の一例を示す部分断面図である。略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0018】
本発明は、燃焼室内に渦状の火炎を形成する渦流燃焼器であって、渦流火炎の先端よりも燃焼室の下流に点火装置を配置した。つまり、点火装置は燃焼が完結して渦流火炎が消滅した後の燃焼排ガス中に配置されるため、燃焼用ガスの旋回流を乱すことがないので、安定燃焼を継続することができ、従来のように点火装置を配置するためのスペースを設ける必要がないため、燃焼室を小型に構成することができる。また、燃焼室内に導入された燃焼用ガスは、点火装置に到達するまでの間に燃焼室内を旋回することで十分に混合されるため、着火性にも優れることとなる。
【0019】
また、渦流燃焼器を、燃焼器本体の内部に燃焼室と、燃焼用ガス導入部が形成されている構成とすることで、燃焼室の小型化および着火性向上といった効果に加え、渦流火炎の熱が燃焼室を介して燃焼器本体に素早く熱伝達されるため、渦流燃焼器を熱源として有効に活用することができる。さらに、燃焼用ガスは燃焼用ガス導入部を通過する間に燃焼器本体と熱交換により加熱され温度が上昇するので、燃焼反応時間が短縮され、これにより燃焼反応が促進されて不完全燃焼が低減される。
【0020】
また、燃焼室の下流端を燃焼器本体に開口し、この開口から点火装置を挿入することで、点火装置を容易に燃焼室の内部に取り付けることができ、また、渦流火炎が消滅した位置に確実に配置することができる。
【0021】
また、燃焼器本体に燃焼排ガスが流通する燃料排ガス流路を設けることで、燃焼器本体は燃焼排ガスからの熱によっても加熱されるので、渦流燃焼器を熱源として有効に利用することができる。なお、その際、燃焼室の開口は点火装置で閉塞するため、燃焼排ガスは開口から漏れることなく燃焼排ガス流路に確実に流入し、また、点火装置の位置決めを容易に行うことができる。
【0022】
また、点火装置は、放電電極の先端を燃焼室の内面に向かって傾斜させることで、燃焼用ガスが確実に存在する方に向かって放電させて、確実に着火することができる。さらに、放電電極の中心軸が燃焼室の軸線と重なるように配置することで、燃焼室内面と放電電極の先端との距離は、点火装置の取り付け向きによらず一定となり、安定した着火が可能となる。
【0023】
また、熱電発電モジュールを備えた発電装置において、熱電発電モジュールを加熱するための熱源として上述の渦流燃焼器を用いることにより、小型かつ安定して発電を行うことのできる発電装置を構成することができる。
【0024】
また、熱電発電モジュールを燃焼器本体の外周面に取り付けることで、渦流燃焼器が発する熱を効率よく熱電発電モジュールに伝達して、発電効率の高い発電装置を構成することができる。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例について図を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態における渦流燃焼器の一例を示す断面図である。
【0026】
本実施形態の渦流燃焼器1は、筒状の燃焼室11と、この燃焼室11の内面の接線方向に向けて燃料ガスと燃焼用空気との予混合ガス(燃焼用ガス)を導入する燃焼用ガス導入部である予混合ガス導入経路12と、予混合ガスに点火する点火装置20を備えている。点火装置20は、先端が燃焼室11の内部に臨むよう、燃焼室11の壁面を貫通して配置されている。なお、点火装置20としては、火花放電を行う点火プラグ、やヒータの熱により点火する点火ヒータなど、種々の方式のものを用いることができる。
【0027】
燃焼室11内には、渦流火炎Fが形成される。渦流火炎Fは、燃焼室11内で完全燃焼し、燃焼が完結すると消滅する。図1においては、渦流火炎Fの先端位置を一点鎖線で示しており、点火装置20は、この渦流火炎Fの先端位置よりも燃焼室11の下流に配置される。
【0028】
上述の構成において、予混合ガス導入経路12から燃焼室11内の接線方向に向けて予混合ガスを導入することで、燃焼室11内に高速の旋回流を発生させる。この予混合ガスの旋回流は燃焼室11の下流に向かって進み、点火装置20によって点火されると燃焼室11内に渦流火炎Fが形成される。ここで、点火装置20は、渦流火炎Fの先端位置よりも燃焼室11の下流に配置されているため、予混合ガスの旋回流を乱すことがないので、安定燃焼を継続することができる。また、点火装置20の周囲ではすでに火炎が消滅していて火炎に曝されないため、点火装置20の劣化や煤の発生等を抑えることがきる。さらには、燃焼室11内に導入された予混合ガスは、点火装置20に到達するまでの間に燃焼室11内を旋回することで混合され、点火装置20ではこの十分に混合された予混合ガスに点火するため、着火性にも優れている。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の渦流燃焼器における他の実施形態について、図2を用いて説明する。
【0030】
図2は、本実施形態における渦流燃焼器の他の一例を示す概略構成図であり、渦流燃焼器1は、略直方体形状の燃焼器本体10と、この燃焼器本体10に取り付けられた点火装置20を備えている。
【0031】
燃焼器本体10は内部に、筒状の燃焼室11と、燃焼室11の内面の接線方向に向けて燃料ガスと燃焼用空気との予混合ガス(燃焼用ガス)を導入する燃焼用ガス導入部である予混合ガス導入経路12を備えている。そして燃焼器本体10の表面には、燃焼室11の下流端が開口する開口部13が形成されており、点火装置20は、この開口部13から燃焼室11の内部に挿入されて、燃焼器本体10に取り付けられている。
【0032】
燃焼室11は、燃焼器本体10の内部に形成されているため、点火装置20を燃焼室11の下流端の開口部13から挿入することで、容易に燃焼室11の内部に取り付けることができ、また、確実に渦流火炎Fが消滅した位置に配置することができる。
【0033】
そして、この点火装置20は、火花放電を行う放電電極21と、放電電極21を囲繞する碍子部22を備えて構成され、放電電極21の先端は燃焼室11の内面に向かって傾斜している。
【0034】
燃焼室11内には、渦流火炎Fが形成される。渦流火炎Fは、燃焼室11内で完全燃焼し、燃焼が完結すると消滅する。図2においては、渦流火炎Fの先端位置を一点鎖線で示しており、点火装置20は、この渦流火炎Fの先端位置よりも燃焼室11の下流に配置される。
【0035】
上述の構成において、予混合ガス導入経路12から燃焼室11内の接線方向に向けて予混合ガスを導入することで、燃焼室11内に高速の旋回流を発生させる。この予混合ガスの旋回流は燃焼室11の開口部13に向かって進み、点火装置20の放電によって点火されると燃焼室11内に渦流火炎Fが形成される。点火装置20は、渦流火炎Fの先端位置よりも燃焼室11の下流に配置されているため、予混合ガスの旋回流を乱すことがないので、安定燃焼を継続することができる。また、点火装置20の周囲ではすでに火炎が消滅していて火炎に曝されないため、点火装置20の劣化や煤の発生等を抑えることができる。さらには、燃焼室11内に導入された予混合ガスは、点火装置20に到達するまでの間に燃焼室11内を旋回することで混合され、点火装置20ではこの十分に混合された予混合ガスに点火するため、着火性にも優れている。
【0036】
また、燃焼室11内の予混合ガスは、燃焼室11の内面に沿った旋回流として存在しているため、点火装置20の放電電極21の先端を、燃焼室11の内面に向かって傾斜させることで、予混合ガスが確実に存在する方に向かって放電させ、確実に着火することができる。
【0037】
このようにして燃焼室11に火炎が形成されると、渦流火炎Fの熱および渦流火炎Fの燃焼によって生じた燃焼排ガスの熱により燃焼器本体10が加熱される。燃焼器本体10が加熱されると、予混合ガスは、予混合ガス導入経路12を通過する間に燃焼器本体10からの熱伝導により加熱されて温度が上昇する。予混合ガスの温度が上昇すると、燃焼速度が速くなり、この燃焼速度の向上により燃焼反応時間が短縮されて燃焼反応が促進されるため、不完全燃焼が低減されて、燃焼状態を良好に維持することができる。
【0038】
また、燃焼により発生した熱は、燃焼器本体10を効率よく加熱するので、渦流燃焼器1を熱源として利用することができる。
【実施例3】
【0039】
次に、本発明の渦流燃焼器1における他の実施形態について、図3を用いて説明する。なお、実施例2と同じ構成部品については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図3(a)は、渦流燃焼器の一例を示す断面構成図であって、断面には現れない構成を破線で示している。また、図3(b)は、図3(a)に示す渦流燃焼器のA−A‘断面図である。そして、図中の黒矢印は予混合ガスを示し、白矢印は燃焼排ガスを示している。
【0041】
本実施形態の渦流燃焼器1は、実施例2の構成に加え、燃焼器本体10の内部に、燃焼室11から排出された燃焼排ガスが流通する燃焼排ガス流路14を備えている。また、燃焼器本体10の表面には、燃焼排ガス流路14の下流端と連通し、燃焼排ガスを燃焼器本体10の外に排出する燃焼排ガス出口15が設けられている。
【0042】
点火装置20は、火花放電を行う放電電極21と、放電電極21を囲繞する碍子部22を備えて構成され、放電電極21の中心軸が、燃焼室11の軸線Lと重なるように配置され、その先端は燃焼室11の内面に向かって傾斜している。
【0043】
また、この点火装置20は、燃焼室11の開口部13から燃焼室11の内部に挿入されて取り付けられ、碍子部22によって開口部13が閉塞されている。そのため、燃焼によって発生した燃焼排ガスは、燃焼室11から燃焼排ガス流路14に流入する。
【0044】
燃焼室11内には、渦流火炎Fが形成される。渦流火炎Fは、燃焼室11内で完全燃焼し、燃焼が完結すると消滅する。図3においては、渦流火炎Fの先端位置を一点鎖線で示しており、点火装置20は、この渦流火炎Fの先端位置よりも燃焼室11の下流に配置される。
【0045】
上述の構成において、予混合ガス導入経路12から燃焼室11内の接線方向に向けて予混合ガスを導入することで、燃焼室11内に高速の旋回流を発生させる。この予混合ガスの旋回流は燃焼室11の開口部13に向かって進み、点火装置20の放電によって点火されると燃焼室11内に渦流火炎Fが形成される。点火装置20は、渦流火炎Fの先端位置よりも燃焼室11の下流に配置されているため、予混合ガスの旋回流を乱すことがないので、安定燃焼を継続することができる。また、点火装置20の周囲ではすでに火炎が消滅していて火炎に曝されないため、点火装置20劣化や煤の発生等を抑えることがきる。さらには、燃焼室11内に導入された予混合ガスは、点火装置20に到達するまでの間に燃焼室11内を旋回することで混合され、点火装置20ではこの十分に混合された予混合ガスに点火するため、着火性にも優れている。
【0046】
また、燃焼室11内の予混合ガスは、燃焼室11の内面に沿った旋回流として存在している。点火装置20の放電電極21の先端を、燃焼室11の内面に向かって傾斜させることで、予混合ガスが確実に存在する方に向かって放電させ、確実に着火することができる。さらに、放電電極21の中心軸は燃焼室の軸線Lと一致しているので、燃焼室11の内面と放電電極21の先端との距離は、点火装置20の取り付け方向によらず一定となり、安定した着火が可能となる。
【0047】
このようにして燃焼室11に火炎が形成されると、高温の燃焼排ガスが発生する。この燃焼排ガスは、燃焼室11の下流端で折り返し、燃焼排ガス流路14に流入する。燃焼排ガス流路14は、燃焼器本体10内を長手方向に向かって燃焼室11と平行に延びており、燃焼排ガスはこの燃焼排ガス流路14を通過する間に燃焼器本体10との熱交換により燃焼器本体10を加熱する。また、燃焼器本体10は、燃焼室11に形成される渦流火炎Fによっても加熱される。
【0048】
このように燃焼器本体10は、渦流火炎Fと燃焼排ガスによって加熱されるので、放熱による熱の損失が抑えられ、燃焼器本体10を高温に保つことができる。
【実施例4】
【0049】
本発明の発電装置について、図4図6を用いて説明する。図4は、本発明の実施形態における発電装置の一例を示す構成図であって、図5および図6は、本発明の実施形態における発電装置の一例を示す部分断面図である。
【0050】
本実施形態の発電装置31は、外装ケース32内に、熱電発電モジュール33と、熱電発電モジュール33の高温側に設けられた渦流燃焼器1と、熱電発電モジュール33の低温側に設けられた冷却部35と、冷却部35に送風する送風機40と、燃料ガスを供給する燃料供給部36と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給部37と、燃料ガスと燃焼用空気を混合し予混合ガスを生成する予混合部38と、電池部39と、を収納して構成されている。また、外装ケース32には、熱電発電モジュール33で発生した電力を外部へ供給する出力部(図示せず)が形成されている。
【0051】
熱電発電モジュール33は、ゼーベック効果を利用して熱起電力を発生するゼーベック素子(半導体素子)を用いている。このようなゼーベック素子は、n型半導体とp型半導体を貼り合わせて形成されており、加熱されると異種半導体の境界間でキャリア移動が行われ、起電力を生じる。このとき、高温部と低温部の温度差が大きいほど生成される起電力は大きくなるため、渦流燃焼器1の燃焼によって高温側を加熱し、冷却部35によって低温側を冷却することで温度差を発生させている。
【0052】
渦流燃焼器1は、燃料供給部36から供給される燃料ガスと燃焼用空気供給部37から供給される燃焼用空気との予混合ガス(燃焼用ガス)を燃焼させ、熱電発電モジュール33の高温側を加熱する。本実施形態では、例えば図3に示す渦流燃焼器を用いて構成される。
【0053】
燃焼器本体10は、燃焼により発生した熱を、熱電発電モジュール33に伝達するため、熱伝導率の高い金属部材(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)で構成され、熱電発電モジュール33はこの燃焼器本体10の外周面に密接して設けられる。なお、燃焼器本体10の形状は、直方体形状に限らず、立方体形状であってもよいし、円筒形状であってもよい。また、本実例では、熱電発電モジュール33は、燃焼器本体10の外周面のうち、最も面積の大きい2面に配置しているが、熱電発電モジュール33の数や配置はこれに限らない。さらにはその形状も燃焼器本体10と密接させることができるものであればよく、平板状に限らない。
【0054】
冷却部35は、熱電発電モジュール33の低温側に設けられ、送風機40の回転により外装ケース32内に取り入れた空気を通過させることで、熱電発電モジュール33から熱を奪い冷却する。送風機40と対向する一端側が冷却風入口42、他端側が冷却風出口43となる。冷却部35は、たとえば長手方向に沿って立設する複数のフィン41を備え、冷却風入口42から冷却部35に取り入れられた空気は、これら複数枚のフィン41の間を通過することでフィン41から熱を奪い、熱電発電モジュール33を効率よく冷却し、冷却風出口43から排出される。
【0055】
2つの冷却部35の冷却風入口42の間には、防風板44が設けられており、送風機40から送風される空気が渦流燃焼器1に流れこむことを防いでいる。これにより、渦流燃焼器1が冷却されてしまうことが防止される。
【0056】
燃料供給部36は、渦流燃焼器1に可燃性の燃料ガスを供給するものであって、圧縮された液化ガスが収容されたガスボンベ36aが接続される。燃料供給部36は、本実施例のように外装ケース32内にガスボンベ36aを収容して構成してもよいし、外装ケース32外のガスボンベと接続するようにしてもよい。
【0057】
燃焼用空気供給部37は、例えば送風機により構成され、渦流燃焼器1に燃焼用の空気を供給する。渦流燃焼器1は内部の圧力損失が大きいため、燃料ガスが噴出する際に発生するエゼクタ効果だけでは燃焼に必要な空気を供給することができない。また、燃焼室11内に高速の旋回流を発生させるためには燃焼用空気供給部37による空気の供給が必要となる。そのため、本発明の発電装置31には、燃焼用空気供給部37が設けられ、渦流燃焼器1に強制的に空気を供給する。
【0058】
予混合部38は、燃料供給部36から供給される燃料ガスと、燃焼用空気供給部37から供給される空気とを混合して予混合ガス(燃焼用ガス)を生成する。この予混合ガスは渦流燃焼器1の予混合ガス導入経路12に導入される。
【0059】
電池部39は、熱電発電モジュール33が発電を開始するまでの間、電力を必要とする燃焼用空気供給部37および点火装置20に電力を供給して駆動させる。電池部39は乾電池等の一次電池、リチウムイオン電池等の二次電池のいずれでもよいが、二次電池とすることで熱電発電モジュール33が発電を開始した際には、熱電発電モジュール33からの出力によって消費した分の電力を充電することができる。
【0060】
次に、上述の構成における発電装置31の動作について説明する。この発電装置31では、発電開始の指示があると、まず渦流燃焼器1での燃焼を行わせるため、燃料ガスと燃焼用空気の供給を開始する。燃焼用空気を供給するためには、燃焼用空気供給部37を駆動させなければならないが、まだ熱電発電モジュール33は発電を開始していない。そのため、燃焼用空気供給部37は、電池部39から電力が供給されて駆動される。一方、燃料供給部36は、ガスボンベ36aの圧力によって燃料を供給するため、電池部39からの電力供給は不要である。
【0061】
燃焼用空気供給部37の駆動が開始されると、燃料供給部36から供給される燃料ガスと、燃焼用空気供給部37から供給される燃焼用空気が、予混合部38で混合されて予混合ガスとなり、渦流燃焼器1の予混合ガス導入経路12に流入する。この予混合ガスは、予混合ガス導入経路12を通って燃焼室11内の接線方向に導入されることで高速の旋回流となり、点火装置20によって点火することで燃焼室11に渦流火炎が形成される。点火装置20は、電池部39から供給される電力によって駆動される。
【0062】
ここで、予混合ガスの点火時には、理論空気比に対して予混合ガスが燃料過濃状態となるよう燃焼用空気供給部37から供給される空気量が制御される。これにより、予混合ガスの着火精度が向上し、着火ミスを防止することができる。
【0063】
また、予混合ガスに着火し、燃焼開始が検知されると、理論空気比に対して予混合ガスが燃料希薄状態となるよう燃焼用空気供給部37から供給される空気量が変更される。これにより、燃焼排ガス中に含まれる一酸化炭素濃度を低減することができる。燃焼中は、予混合ガスの濃度が一定に保たれるよう燃焼用空気が供給されて安定燃焼を継続する。
【0064】
渦流燃焼器1では、火炎は燃焼室11内にのみ存在するため、燃焼器本体10を小型に構成することができる。これにより発電装置31を小型に構成することができる。さらには、渦流火炎の高速な周方向回転速度によって火炎の熱が燃焼室11を介して燃焼器本体10全体に素早く熱伝達されるため、熱電発電モジュール33が均等に加熱されるので、高い発電効率を得ることができる。
【0065】
燃焼器本体10の熱が熱電発電モジュール33に伝達され、熱電発電モジュール33の高温側が加熱されると、低温側との温度差によって起電力が発生し発電開始となる。この熱電発電モジュール33の出力が安定し所定値以上となると、燃焼用空気供給部37の駆動源がこれまでの電池部39から熱電発電モジュール33の出力に切り替えられ、また、熱電発電モジュール33から供給される電力によって送風機40が駆動される。
【0066】
送風機40が駆動されると、外装ケース32内に空気が取り入れられ、冷却風入口42から冷却部35に流入する。冷却部35に流入した空気は、フィン41の間を通過することでフィン41から熱を奪い、熱電発電モジュール33の低温側を冷却し、冷却風出口43から排出される。これにより、熱電発電モジュール33の低温側と高温側の温度差が大きくなり、熱電発電モジュール33の出力が上昇する。そして、発電装置31の駆動に必要な電力を差し引いた余剰の電力が出力部へ供給される。
【0067】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 渦流燃焼器
10 燃焼器本体
11 燃焼室
12 予混合ガス導入経路(燃焼用ガス導入部)
13 開口部
14 燃焼排ガス流路
20 点火装置
21 放電電極
33 熱電発電モジュール
35 冷却部
36 燃料供給部
37 燃焼用空気供給部
F 渦流火炎
図1
図2
図3
図4
図5
図6