特許第6833489号(P6833489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6833489光学素子用成形型、光学素子の成形装置および光学素子の成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833489
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】光学素子用成形型、光学素子の成形装置および光学素子の成形方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 11/08 20060101AFI20210215BHJP
   C03B 11/12 20060101ALI20210215BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C03B11/08
   C03B11/12
   G02B3/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-239433(P2016-239433)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-95493(P2018-95493A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木島 亨宜
(72)【発明者】
【氏名】平田 大吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 紀明
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−045136(JP,A)
【文献】 特開2004−351740(JP,A)
【文献】 特開平08−034627(JP,A)
【文献】 特開2011−162386(JP,A)
【文献】 特開平03−218932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 11/00−11/16
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱軟化された成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより光学素子を成形する光学素子用成形型であって、
前記成形素材に凹面を転写するための凸状の第1の転写面を有する第1の金型と、
前記第1の金型と対向して配置された、前記第1の金型と対をなす第2の金型と、
前記第1の金型とは別体で構成され、前記成形素材に前記凹面の外側の端面を転写するための転写面を有する外周転写部材と、
を備え、
前記外周転写部材は、前記転写面上に配置され前記第2の金型の方向に突出する凸部から構成され、前記成形素材にアンカー面を転写するアンカー部を備え、
前記外周転写部材は、押圧後の前記成形素材を冷却する際に、前記第1の金型との熱膨張差によって前記第1の転写面と前記凹面との間に隙間を形成することを特徴とする光学素子用成形型。
【請求項2】
前記アンカー部は、前記転写面上に周状に、かつ連続的または間欠的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光学素子用成形型。
【請求項3】
前記外周転写部材の熱膨張係数は、前記第1の金型の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子用成形型。
【請求項4】
前記外周転写部材を前記第1の金型に固定する円筒状の固定部材を備え、
前記固定部材は、前記第1の金型の外周に固定されており、
前記固定部材は、前記外周転写部材の軸方向の移動を規制し、かつ前記外周転写部材の径方向の移動を許容するように、前記外周転写部材の外周を保持していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学素子用成形型。
【請求項5】
前記凸部の前記転写面からの突出量は、前記第1の転写面の前記転写面からの突出量よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学素子用成形型。
【請求項6】
加熱軟化された成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより光学素子を成形する光学素子用成形型であって、
前記成形素材に凹面を転写するための凸状の第1の転写面を有する第1の金型と、
前記第1の金型と対向して配置された、前記第1の金型と対をなす第2の金型と、
前記第1の金型とは別体で構成され、前記成形素材に前記凹面の外側の端面を転写するための転写面を有する外周転写部材と、
を備え、
前記外周転写部材は、前記転写面上に周状に、かつ連続的または間欠的に形成され、前記成形素材にアンカー面を転写するアンカー部を備え、
前記外周転写部材は、押圧後の前記成形素材を冷却する際に、前記第1の金型との熱膨張差によって前記第1の転写面と前記凹面との間に隙間を形成し、
前記外周転写部材を前記第1の金型に固定する円筒状の固定部材を備え、
前記固定部材は、前記第1の金型の外周に固定されており、
前記固定部材は、前記外周転写部材の軸方向の移動を規制し、かつ前記外周転写部材の径方向の移動を許容するように、前記外周転写部材の外周を保持していることを特徴とする光学素子用成形型。
【請求項7】
加熱軟化された成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより光学素子を成形する光学素子用成形型であって、
前記成形素材に凹面を転写するための凸状の第1の転写面を有する第1の金型と、
前記第1の金型と対向して配置された、前記第1の金型と対をなす第2の金型と、
前記第1の金型とは別体で構成され、前記成形素材に前記凹面の外側の端面を転写するための転写面を有する外周転写部材と、
を備え、
前記外周転写部材は、前記転写面上に周状に、かつ連続的または間欠的に形成され、前記成形素材にアンカー面を転写するアンカー部を備え、
前記外周転写部材は、押圧後の前記成形素材を冷却する際に、前記第1の金型との熱膨張差によって前記第1の転写面と前記凹面との間に隙間を形成し、
前記外周転写部材の熱膨張係数は、前記第1の金型の熱膨張係数よりも小さく、
前記外周転写部材を前記第1の金型に固定する円筒状の固定部材を備え、
前記固定部材は、前記第1の金型の外周に固定されており、
前記固定部材は、前記外周転写部材の軸方向の移動を規制し、かつ前記外周転写部材の径方向の移動を許容するように、前記外周転写部材の外周を保持していることを特徴とする光学素子用成形型。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光学素子用成形型と、
押圧後の成形素材を冷却する際に、前記光学素子用成形型の外周転写部材を加熱することにより、前記外周転写部材に形成されたアンカー部を介して、前記成形素材の前記凹面を径方向外側に押し広げる加熱手段と、
を備えることを特徴とする光学素子の成形装置。
【請求項9】
加熱軟化された成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより光学素子を成形する光学素子の成形方法であって、
第1の金型および第2の金型の間に前記成形素材を配置し、前記成形素材を加熱して軟化させる加熱工程と、
前記第1の金型および前記第2の金型によって前記成形素材をプレスすることにより、前記第1の金型の第1の転写面によって前記成形素材に凹面を転写し、前記第1の金型とは別体で構成された外周転写部材の転写面によって前記成形素材に前記凹面の外側の端面を転写し、前記転写面上に配置され前記第2の金型の方向に突出する凸部から構成されたアンカー部によって前記成形素材にアンカー面を転写するプレス転写工程と、
前記成形素材を冷却し、その際に、前記外周転写部材と前記第1の金型との熱膨張差によって前記第1の転写面と前記凹面との間に隙間を形成し、成形後の前記光学素子を離型する冷却離型工程と、
を含むことを特徴とする光学素子の成形方法。
【請求項10】
前記アンカー部は、前記転写面上に周状に、かつ連続的または間欠的に形成されることを特徴とする請求項9に記載の光学素子の成形方法。
【請求項11】
前記冷却離型工程において、少なくとも成形後の前記光学素子を離型する前に、前記外周転写部材を加熱することにより、前記アンカー部を介して、前記成形素材の前記凹面を径方向外側に押し広げることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の光学素子の成形方法。
【請求項12】
加熱軟化された成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより光学素子を成形する光学素子の成形方法であって、
第1の金型および第2の金型の間に前記成形素材を配置し、前記成形素材を加熱して軟化させる加熱工程と、
前記第1の金型および前記第2の金型によって前記成形素材をプレスすることにより、前記第1の金型の第1の転写面によって前記成形素材に凹面を転写し、前記第1の金型とは別体で構成された外周転写部材の転写面によって前記成形素材に前記凹面の外側の端面を転写し、前記転写面上に周状に、かつ連続的または間欠的に形成されたアンカー部によって前記成形素材にアンカー面を転写するプレス転写工程と、
前記成形素材を冷却し、その際に、前記外周転写部材と前記第1の金型との熱膨張差によって前記第1の転写面と前記凹面との間に隙間を形成し、成形後の前記光学素子を離型する冷却離型工程と、
を含み、
前記冷却離型工程において、少なくとも成形後の前記光学素子を離型する前に、前記外周転写部材を加熱することにより、前記アンカー部を介して、前記成形素材の前記凹面を径方向外側に押し広げることを特徴とする光学素子の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子用成形型、光学素子の成形装置および光学素子の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ(光学素子)の成形方法として、ガラス素材(成形素材)を配置した一対の金型を加熱し、加熱軟化させたガラス素材を金型によってプレスした後、ガラス素材の転移温度近傍まで冷却したレンズを金型から取り出すレンズの成形方法が知られている。
【0003】
このようなレンズの成形方法において、通常、金型の成形面は鏡面加工等によって高度に平坦化されているため、成形直後はレンズの表面(光学機能面)と金型の成形面とが密着した状態となっている。そのため、金型からレンズが剥離せず、容易に取り出せない場合がある。特に、凹レンズの成形では、凸状の成形面を有する上型によりガラス素材に凹面を形成するため、冷却工程で冷却されたガラス素材が熱収縮し、成形後のレンズの凹面が上型の凸状の成形面に張り付いてしまう現象が発生する。
【0004】
そこで、このような張り付き不具合を防止するために、例えば特許文献1では、レンズの外周部を規制する外周規制部材を金型とは別体で設け、その外周規制部材の内周に異径部を設けることにより、温度変化に応じて、ガラス素材の外周部との干渉状態を変化させ、レンズを上型から確実に取り出せるようにした成形方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−143771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案された成形方法では、レンズのレンズ径が小さい場合は効果を発揮しない可能性がある。すなわち、成形するレンズ径が小さい場合、用いる金型や外周規制部材も小さくなるため、熱膨張および熱収縮の変化量も小さくなる。また、成形するレンズ径が小さい場合、外周規制部材の内周に設ける異径部も小さくなってしまう。従って、特許文献1で提案された成形方法では、金型と外周規制部材との熱膨張差を利用した離型の促進が十分に行われず、ガラス素材の上型への張り付きを防止できなくなり、レンズの取り出しが困難となる場合がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レンズ径に関わらず、プレス成形後の光学素子の金型への張り付きを防止し、光学素子を容易に取り出すことができる光学素子用成形型、光学素子の成形装置および光学素子の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光学素子用成形型は、加熱軟化された成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより光学素子を成形する光学素子用成形型であって、前記成形素材に凹面を転写するための凸状の第1の転写面を有する第1の金型と、前記第1の金型と対向して配置された、前記第1の金型と対をなす第2の金型と、前記第1の金型とは別体で構成され、前記成形素材に前記凹面の外側の端面を転写するための転写面を有する外周転写部材と、を備え、前記外周転写部材は、前記転写面上に周状に、かつ連続的または間欠的に形成され、前記成形素材にアンカー面を転写するアンカー部を備え、前記外周転写部材は、押圧後の前記成形素材を冷却する際に、前記第1の金型との熱膨張差によって前記第1の転写面と前記凹面との間に隙間を形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る光学素子用成形型は、上記発明において、前記外周転写部材の熱膨張係数は、前記第1の金型の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光学素子用成形型は、上記発明において、前記外周転写部材を前記第1の金型に固定する円筒状の固定部材を備え、前記固定部材は、前記第1の金型の外周に固定されており、前記固定部材は、前記外周転写部材の軸方向の移動を規制し、かつ前記外周転写部材の径方向の移動を許容するように、前記外周転写部材の外周を保持していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光学素子用成形型は、上記発明において、前記アンカー部は、前記外周転写部材の前記転写面から前記第2の金型の方向に突出した凸部であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光学素子用成形型は、上記発明において、前記凸部の前記転写面からの突出量は、前記第1の転写面の前記転写面からの突出量よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光学素子用成形型は、上記発明において、前記アンカー部は、前記外周転写部材の前記転写面から前記第1の金型の方向に窪んだ凹部であることを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光学素子の成形装置は、上記発明における光学素子用成形型と、押圧後の成形素材を冷却する際に、前記光学素子用成形型の外周転写部材を加熱することにより、前記外周転写部材に形成されたアンカー部を介して、前記成形素材の前記凹面を径方向外側に押し広げる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光学素子の成形方法は、加熱軟化された成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより光学素子を成形する光学素子の成形方法であって、第1の金型および第2の金型の間に前記成形素材を配置し、前記成形素材を加熱して軟化させる加熱工程と、前記第1の金型および前記第2の金型によって前記成形素材をプレスすることにより、前記第1の金型の第1の転写面によって前記成形素材に凹面を転写し、前記第1の金型とは別体で構成された外周転写部材の転写面によって前記成形素材に前記凹面の外側の端面を転写し、前記転写面上に周状に、かつ連続的または間欠的に形成されたアンカー部によって前記成形素材にアンカー面を転写するプレス転写工程と、前記成形素材を冷却し、その際に、前記外周転写部材と前記第1の金型との熱膨張差によって前記第1の転写面と前記凹面との間に隙間を形成し、成形後の前記光学素子を離型する冷却離型工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光学素子の成形方法は、上記発明において、前記冷却離型工程において、少なくとも成形後の前記光学素子を離型する前に、前記外周転写部材を加熱することにより、前記アンカー部を介して、前記成形素材の前記凹面を径方向外側に押し広げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、押圧後の成形素材を冷却する際に、外周転写部材のアンカー部によって、成形素材の径方向の熱収縮を阻害し、かつ上型転写面と凹面との間に隙間を形成することができるため、レンズ径に関わらず、プレス成形後の光学素子の張り付きを防止し、光学素子を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る光学素子用成形型の構成を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る光学素子用成形型における外周転写部材のアンカー部の一例を示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る光学素子用成形型における外周転写部材のアンカー部の別の一例を示す平面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る光学素子の成形方法を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る光学素子の成形方法のプレス転写工程を説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る光学素子の成形方法のプレス転写工程を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る光学素子の成形方法の冷却離型工程を説明するための図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る光学素子の成形方法の冷却離型工程を説明するための図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る光学素子の成形方法の再加熱工程を説明するための図である。
図10図10は、本発明の実施の形態に係る光学素子用成形型の第1の変形例の構成を示す断面図である。
図11図11は、本発明の実施の形態に係る光学素子用成形型の第2の変形例の構成を示す断面図である。
図12図12は、本発明の実施の形態に係る光学素子用成形型の第3の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光学素子用成形型、光学素子の成形装置および光学素子の成形方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
【0020】
[光学素子用成形型]
本実施の形態に係る光学素子用成形型について、図1図3を参照しながら説明する。光学素子成形型(以下、「成形型」という)1は、図示しないプレス機に設置され、加熱軟化されたガラス素材等の成形素材を一対の金型によって押圧成形することにより、ガラスレンズ等の光学素子を成形するためのものである。
【0021】
成形型1は、図1に示すように、上型(第1の金型)11と、上型11と対をなす下型(第2の金型)12と、外周規制部材20と、外周転写部材30と、固定部材40と、を備えている。なお、本実施の形態では、両凹レンズ成形用の成形型1を一例として説明する。
【0022】
上型11および下型12は、それぞれ段付きの円柱形状(凸状)に形成されており、例えば超硬合金材料によって構成されている。上型11には、成形素材に凹面を転写するための凸状の上型転写面(第1の転写面)11aが、下型12には、成形素材に凹面を転写するための凸状の下型転写面(第2の転写面)12aが形成されている。また、上型11および下型12は、それぞれの転写面(上型転写面11a、下型転写面12a)の中心が中心軸C上で一致するように、対向して配置されている。
【0023】
なお、上型11および下型12の近傍には、後記する光学素子の成形方法の加熱工程および冷却離型工程において、上型11および下型12を加熱および冷却するための加熱手段(例えばヒータ)が設けられている。
【0024】
外周規制部材20は、後記する光学素子の成形方法のプレス転写工程において、上型11によって押し広げられた成形素材の径方向(中心軸Cと直交する方向)への流動を規制するためのものである。外周規制部材20は、円筒状に形成されている。また、外周規制部材20は、下型12とは別体で構成されており、当該下型12の外周側に形成された段差部分に嵌合・固定されている。
【0025】
外周転写部材30は、後記する光学素子の成形方法の冷却離型工程において、押圧後の成形素材を冷却する際に、成形素材の径方向の熱収縮を阻害し、かつ上型11との熱膨張差によって上型転写面11aと成形素材の凹面との間に隙間(後記する図7参照)を形成するためのものである。
【0026】
外周転写部材30は、中心に開口部31が形成された略円盤状に形成されており、例えばセラミックス材料によって構成されている。また、外周転写部材30は、上型11とは別体で構成されており、当該上型11の外周側に形成された段差部分に設置されている。また、外周転写部材30は、後記する固定部材40によって、中心軸C方向への移動が不可能で、かつ径方向への移動が可能なように、上型11に対して固定された状態となっている。
【0027】
外周転写部材30は、後記する光学素子の成形方法のプレス転写工程において、成形素材に凹面の外側の端面を転写するための転写面32を有する。そして、外周転写部材30は、この転写面32上に、成形素材Mにアンカー面33aを転写するためのアンカー部33を備えている。このアンカー部33は、後記する光学素子の成形方法の冷却離型工程において、成形素材の径方向の熱収縮を阻害するためのものである。以下、アンカー部33の詳細について説明する。
【0028】
アンカー部33は、図1に示すように、外周転写部材30の転写面32から下型12の方向に突出した凸部から構成されている。このアンカー部33を構成する凸部の転写面32からの突出量は、少なくとも上型転写面11aの転写面32からの突出量よりも小さくなるように設定される。
【0029】
アンカー部33を構成する凸部の転写面32からの具体的な突出量は、光学素子のレンズ有効径との関係で適宜決定することができる。すなわち、アンカー部33が図1に示すような凸部で構成されている場合、後記する図8に示すように、成形後の光学素子Oの上面には、それに対応する凹部Mbが形成される。そして、この凹部Mbの深さ(許容深さ)は、予め設定される光学素子Oのレンズ有効径によって決定されるため、凸部の具体的な突出量も、同様にレンズ有効径に依存することになる。
【0030】
なお、後記する図8に示すように、成形後の光学素子Oでは、レンズ有効径よりも外側の部分は心取り加工によって除去されるため、アンカー部33によって形成される光学素子Oの凹部Mbが光学素子Oの光学的機能面に影響を与えることはない。また、前記した「レンズ有効径」とは、具体的には図8に示すように、光学素子Oが有する2つの面において、凹面Maの有効径d1と、凹面Maの反対側の面の有効径d2とのことを意味している。
【0031】
図2は、外周転写部材30を下型12側から見た平面図である。アンカー部33は、同図に示すように、転写面32の上において、中心軸C周りに周状に、かつ連続的に形成されている。すなわち、アンカー部33は、リング状(円環状)の突起部により構成されている。また、アンカー部33は、同図に示すように、転写面32の径方向において、外周転写部材30の開口部31と外周転写部材30の外周との間の位置に形成されている。
【0032】
アンカー部33の径や配置は、当該アンカー部33のアンカー面33aが成形素材に転写可能な径や配置であればよく、成形後の光学素子との関係に基づいて適宜決定することができる。例えば成形型1では、図2に示したアンカー部33を有する外周転写部材30に代えて、図3に示すようなアンカー部33Aを有する外周転写部材30Aを用いてもよい。このアンカー部33Aは、同図に示すように、転写面32上において、中心軸C周りに周状に、かつ間欠的に形成されている。すなわち、アンカー部33Aは、ドーム状の突起部により構成されており、転写面32上に複数配置されている。なお、同図では、合計8個のアンカー部33Aが転写面32上に周状に配置されている例を示しているが、アンカー部33Aは、転写面32上において中心軸Cに対して回転対称の位置に配置されていればよく、同図に示した個数や配置に限定されない。
【0033】
本実施の形態に係る成形型1は、前記したようなアンカー部33(あるいはアンカー部33A)が形成された外周転写部材30(あるいは外周転写部材30A)を備えることにより、後記する光学素子の成形方法の冷却離型工程において、アンカー部33のアンカー面33aによって冷却中の成形素材を係止し、冷却中の成形素材が中心軸Cに向かって径方向に形状変化する熱収縮を阻害することができる。その結果、上型11への光学素子の張り付き(抱き付き)を防止し、成形型1から光学素子を容易に取り出せるようにすることができる。
【0034】
なお、外周転写部材30は、上型11を構成する材料の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する材料によって構成することが好ましい。例えば、上型11を構成する材料(超硬合金材料)の熱膨張係数が5.0[×10−6/K]である場合、外周転写部材30は、それよりも小さい熱膨張係数を有するセラミックス材料(熱膨張係数:4.0[×10−6/K])等で構成することが好ましい。
【0035】
このように、外周転写部材30の熱膨張係数を上型11の熱膨張係数よりも小さくすることにより、後記する光学素子の成形方法の冷却離型工程において、外周転写部材30の熱収縮量を上型11の熱収縮量よりも小さくすることができる。その結果、外周転写部材30と上型11との間の熱膨張差により、上型転写面11aと成形素材の凹面との間に隙間(後記する図7参照)を形成することが可能となる。
【0036】
固定部材40は、外周転写部材30を上型11に固定するためのものである。固定部材40は、円筒状に形成されており、上型11、下型12、外周規制部材20および外周転写部材30の周囲を覆うように配置されている。
【0037】
固定部材40には、ネジ孔41が形成され、外周転写部材30には、ネジ孔41と同軸上に貫通孔34が形成されている。そして、このネジ孔41および貫通孔34にネジ部材42が挿入されている。このネジ部材42は、頭部側にネジ部42aを有し、先端側に円柱部(非ネジ部)42bを有している。そして、ネジ部材42のネジ部42aが固定部材40のネジ孔41に挿入され、ネジ部材42の円柱部42bが外周転写部材30の貫通孔34に挿入されている。
【0038】
これにより、上型11の外周は、固定部材40によって締め付けられた状態となる。すなわち、固定部材40は、上型11の外周に固定された状態となる。一方、外周転写部材30は、ネジ部材42の円柱部42bが貫通孔34に載置された状態となる。すなわち、外周転写部材30は、中心軸C方向への移動が不可能で、かつ径方向への移動が可能なように、上型11に対して固定された状態となる。
【0039】
このように、成形型1は、固定部材40によって、外周転写部材30の軸方向の移動を規制し、かつ外周転写部材30の径方向の移動を許容するように、外周転写部材30の外周を保持することにより、後記する光学素子の成形方法のプレス転写工程および冷却離型工程において、外周転写部材30を熱膨張および熱収縮を阻害しないように構成されている。
【0040】
[光学素子の成形方法]
成形型1を利用した光学素子の成形方法について、図4図9を参照しながら説明する。なお、以下で説明する図4図9では、図1で示した固定部材40は図示を省略している。
【0041】
(加熱工程)
加熱工程では、成形素材を加熱軟化させる(ステップS1)。加熱工程では、具体的には、上型11および下型12の間に成形素材を配置し、上型11および下型12を図示しない加熱手段によって加熱することにより、成形素材を軟化点近傍まで加熱して軟化させる。
【0042】
(プレス転写工程)
プレス転写工程では、成形素材をプレスし、凹面および端面を転写する(ステップS2)。プレス転写工程では、具体的には図5および図6に示すように、上型11および下型12によって成形素材Mをプレスすることにより、上型11の上型転写面11aによって成形素材Mに凹面Maを転写し、上型11とは別体で構成された外周転写部材30の転写面32によって成形素材Mに凹面Maの外側の端面を転写し、さらに、外周転写部材30のアンカー部33によって成形素材Mにアンカー面33aを転写する。
【0043】
プレス転写工程では、上型11および下型12のいずれか一方を相対的に昇降させることにより、下型12の下型転写面12a上に配置された成形素材Mを所定の圧力でプレスする。これにより、軟化した成形素材Mは、図5の白抜き矢印に示すように、径方向に押し広げられ、外周規制部材20と接触する。また、成形素材Mは、図6の白抜き矢印に示すように、外周規制部材20によって径方向への流動が規制され、中心軸C方向へと流動の方向を変える。そして、成形素材Mは、外周転写部材30のアンカー部33に転写される。これにより、成形素材Mには、凸部状のアンカー部33に対応する凹部Mbが形成される。
【0044】
(冷却離型工程)
冷却離型工程では、成形素材Mを冷却し、光学素子を離型する(ステップS3)。冷却離型工程では、具体的には、上型11および下型12を図示しない加熱手段によって冷却することにより、成形素材Mを転移点近傍まで冷却する。これにより、図7に示すように、上型11、外周転写部材30および成形素材Mは、冷却によって中心軸Cに向かって熱収縮する。その際、外周転写部材30のアンカー部33のアンカー面33aによって冷却中の成形素材Mを係止し、冷却中の成形素材Mが中心軸Cに向かって径方向に形状変化する熱収縮を阻害する。従って、同図の白抜き矢印に示すように、冷却中は上型11および外周転写部材30のみが中心軸Cに向かって熱収縮することになる。
【0045】
さらに、外周転写部材30の熱膨張係数は、上型11の熱膨張係数よりも小さく構成されている。そのため、外周転写部材30と上型11との熱膨張差、すなわち両者の熱収縮量の差により、図7に示すように、上型11の上型転写面11aと成形素材Mの凹面Maとの間に、隙間Sが形成される。すなわち、上型11の上型転写面11aの外径が、外周転写部材30の開口部31の径よりも小さくなり、上型11に対する成形素材Mの張り付きが解除される。
【0046】
そして、冷却が完了した後、図8に示すように、成形後の光学素子Oを上型11および下型12(図示省略)から離型する。なお、離型後の光学素子Oは、後段の心取り工程において、同図に示すように、レンズ有効径から外側の部分、すなわち光学素子Oの最終形状で不要となる部分Aが研削される。
【0047】
(再加熱工程)
ここで、前記した冷却離型工程の中で、少なくとも成形後の光学素子Oを離型する前に再加熱工程を行ってもよい。この再加熱工程を行う場合、例えば図9に示すように、成形型1の周囲にビームヒータ(加熱手段)50を設けた成形装置(光学素子の成形装置)100を用いる。なお、同図では図示を省略したが、前記した図1に示す成形型1にビームヒータ50を設ける場合、例えば固定部材40においてビームヒータ50が照射される部分に開口部を形成し、その開口部を通じて各部材の加熱を行う。
【0048】
再加熱工程では、ビームヒータ50によって、外周転写部材30を加熱する。この場合、例えば図9に示すように、成形型1の周囲に配置されているビームヒータ50のうち、外周転写部材30の近傍に設置されているビームヒータ50のみをONとし、外周転写部材30の近傍以外に設置されているビームヒータ50を全てOFFとする。そして、ビームヒータ50を成形素材Mの転移点以下の温度で昇温し、外周転写部材30に熱エネルギーを集光させる。
【0049】
これにより、外周転写部材30のみが局所加熱され、外周転写部材30が径方向へと熱膨張する。同時に、図9の白抜き矢印に示すように、外周転写部材30のアンカー部33を介して、成形素材Mの凹面Maが径方向外側に押し広げられる。従って、再加熱工程を行わない場合(図7参照)と比較して、上型11の上型転写面11aと成形素材Mの凹面Maとの間の隙間Sをさらに拡大することができる。
【0050】
なお、図9に示すように、ビームヒータ50によって外周転写部材30を局所加熱した場合であっても、上型11に多少の熱は伝熱するが、再加熱工程を行わない場合と比較して、外周転写部材30と上型11との間に熱膨張差を設けることができるため、隙間Sを拡大することができる。また、同図では、加熱手段の一例としてビームヒータ50を示したが、外周転写部材30を局所加熱できるものであれば、別の加熱手段を用いてもよい。
【0051】
以上説明したような成形方法によれば、押圧後の成形素材Mを冷却する際に、外周転写部材30のアンカー部33によって、成形素材Mの径方向の熱収縮を阻害し、かつ上型転写面11aと成形素材Mの凹面Maとの間に隙間Sを形成することができるため、レンズ径に関わらず、プレス成形後の光学素子Oの張り付きを防止し、光学素子Oを容易に取り出すことができる。
【0052】
以上、本発明に係る光学素子用成形型、光学素子の成形装置および光学素子の成形方法について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0053】
例えば本発明に係る光学素子用成形型として、前記した外周転写部材30を備える成形型1(図2参照)に代えて、例えば図10図12に示すような外周転写部材30B,30C,30Dを備える成形型1B,1C,1Dを用いてもよい。
【0054】
図10に示した成形型1Bでは、外周転写部材30Bのアンカー部33Bが、外周転写部材30Bの転写面32から下型12の方向に突出した凸部によって構成されている。そして、このアンカー部33Bは、転写面32上において、外周転写部材30Bの開口部31の近傍、すなわち上型11の上型転写面11aの近傍の位置に形成されている。
【0055】
図11に示した成形型1Cでは、外周転写部材30Cのアンカー部33Cが、外周転写部材30Cの転写面32から上型11の方向に窪んだ凹部によって構成されている。そして、このアンカー部33Cは、転写面32上において、外周転写部材30の開口部31と外周転写部材30Cの外周との間の位置に形成されている。なお、アンカー部33Cが凹部で構成されている場合、成形後の成形素材Mの上面には、それに対応する凸部Mcが形成される。
【0056】
図12に示した成形型1Dでは、外周転写部材30Dのアンカー部33Dが、外周転写部材30Dの転写面32から上型11の方向に窪んだ切欠き部によって構成されている。そして、このアンカー部33Dは、転写面32上において、外周転写部材30Dの外周の位置に形成されている。
【0057】
このような成形型1B,1C,1Dによっても、成形型1と同様に、プレス成形後の光学素子Oの張り付きを防止することが可能である。なお、図10図12に示したアンカー部33B,33C,33Dは、図2のように、転写面32の上において中心軸C周りに周状に、かつ連続的(リング状)に形成してもよく、あるいは、図3のように、転写面32上において中心軸C周りに周状に、かつ間欠的(ドーム状)に形成してもよい。
【0058】
また、図2および図10に示したアンカー部33,33Bは、断面形状が逆台形状に形成されていたが、例えばその他の多角形状または球面状に形成されていてもよい。また、図11に示したアンカー部33Cは、断面形状が台形状に形成されていたが、例えばその他の多角形状または球面状に形成されていてもよい。また、図12に示したアンカー部33Dは、台形状に切り欠かれた形状であったが、例えばその他の多角形状または球面状に切り欠かれた形状であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,1B,1C,1D 成形型(光学素子用成形型)
11 上型(第1の金型)
11a 上型転写面(第1の転写面)
12 下型(第2の金型)
12a 下型転写面(第2の転写面)
20 外周規制部材
30,30A,30B,30C,30D 外周転写部材
31 開口部
32 転写面
33,33A,33B,33C,33D アンカー部
33a アンカー面
34 貫通孔
40 固定部材
41 ネジ孔
42 ネジ部材
42a ネジ部
42b 円柱部(非ネジ部)
50 ビームヒータ(加熱手段)
100 成形装置(光学素子の成形装置)
C 中心軸
M 成形素材
Ma 凹面
Mb 凹部
Mc 凸部
O 光学素子
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12