特許第6833494号(P6833494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧

特許6833494燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法
<>
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000002
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000003
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000004
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000005
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000006
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000007
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000008
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000009
  • 特許6833494-燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833494
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/10 20060101AFI20210215BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20210215BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20210215BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   B01J35/10 301F
   B01J23/30 AZAB
   B01D53/86 222
   B01D53/90
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-243167(P2016-243167)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-94520(P2018-94520A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】野地 勝己
(72)【発明者】
【氏名】東野 耕次
(72)【発明者】
【氏名】増田 具承
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−130720(JP,A)
【文献】 特開平10−323570(JP,A)
【文献】 特開2011−207749(JP,A)
【文献】 特開2017−177075(JP,A)
【文献】 特開2013−056319(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037536(WO,A1)
【文献】 特開平05−096165(JP,A)
【文献】 特開昭63−130140(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0255021(US,A1)
【文献】 特開昭57−012832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/73,86−90,94−96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンの酸化物、モリブデンおよび/またはタングステンの酸化物、ならびにバナジウムの酸化物を含有して成り、
Ti元素に対するV元素の割合は、V25/TiO2の重量百分率として、2重量%以下であり、
細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が15%以上40%以下である、燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒。
【請求項2】
細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が10%以上45%以下である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
燃焼排ガスはNOx濃度が350ppm以下である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかひとつに記載の触媒に、アンモニアの存在下で、燃焼排ガスを接触させて、燃焼排ガスからNOxを除去することを含む方法。
【請求項5】
燃焼排ガスはNOx濃度が350ppm以下である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒および方法に関する。より詳細に、本発明は、シリカが堆積し難く、シリカの堆積量が増えても脱硝性能の低下がほとんどない、燃焼排ガス、好ましくは低NOx燃焼排ガス、からNOxを除去するための触媒および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭、バイオマスなどの燃料の燃焼により発生するNOxは、燃料中の窒素分の酸化によるフューエルNOxと空気中の窒素の酸化によるサーマルNOxに大別される。燃焼排ガスに含まれるNOxを減らすための燃焼方法(低NOx燃焼法)としては、低空気比燃焼法、空気多段燃焼法、燃料多段燃焼法、排ガス再循環燃焼法、希薄予混合燃焼法などが知られている。低NOx燃焼排ガスは、通常の燃焼排ガスに比べNOx含有量が少ないが、それでも環境負荷低減のために脱硝処理を施すことが望まれる。
【0003】
従来の脱硝触媒として、例えば、特許文献1は、チタンおよびモリブデンの酸化物を含有し、約1×103〜1×104Åの範囲に平均径を有する第一の細孔群と、約102〜103Åの範囲に平均径を有する第二の細孔群を有し、第一の細孔群が全細孔容積の10〜50%の範囲にあるアンモニア接触還元脱硝触媒を開示している。
【0004】
特許文献2は、酸化チタンを主成分として含有し、全細孔容積が0.20〜0.45ml/gであり、且つ直径1000Å以上の細孔が占める細孔容積が0.05〜0.2ml/gである排ガス中の窒素酸化物を還元無害化するための脱硝触媒を開示している。
【0005】
特許文献3は、平均細孔直径が10000Å以下で、全細孔容積に対する400〜5000Åの細孔直径を有する細孔の占める容積の割合が50%以上である酸化チタンに脱硝活性成分を担持して成るアンモニア接触還元脱硝触媒を開示している。
【0006】
特許文献4は、平均細孔径が5nm以下のメソ孔を有するメソポーラスシリカの二次凝集体によって形成される100〜10000nmのマクロ孔に、前記メソ孔の直径よりも大きい粒子径のチタニアゾルを含浸、担持したものに、さらに脱硝触媒成分を担持したことを特徴とする窒素酸化物除去用触媒を開示している。
【0007】
ところが、低NOx燃焼排ガスの脱硝処理を上記のような従来の脱硝触媒で行うと、触媒の表面にシリカ(ここで、「シリカ」はSiの状態全てを含む意味である。以下、同じ意味である。)が付着堆積して脱硝触媒の劣化を早めることがある。この劣化は、石炭などに含まれるSiが低NOx燃焼において十分に酸化されず、燃焼排ガス中にシロキサン類などの気体状シリカが多く含有していることが原因ではないかと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平5−66175号公報
【特許文献2】特開昭63−147547号公報
【特許文献3】特開平1−130720号公報
【特許文献4】特開2009−219980号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】松本ら「超低NOx石炭焚きM−PMバーナの開発」三菱重工技報 Vol.50 No.3 (2013) 発電技術特集 P18
【非特許文献2】内藤「超低NOxバーナーによる加熱炉の環境負荷低減」PETROTEC 第31巻 第9号 (2008)
【非特許文献3】渡邊「火力発電用石炭燃焼技術」ながれ31(2012)339−344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、シリカが堆積し難く、シリカの堆積量が増えても脱硝性能の低下がほとんどない、燃焼排ガス、特に低NOx燃焼排ガス、からNOxを除去するための触媒および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が15%以上40%以下である燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒。
〔2〕細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が10%以上45%以下である、〔1〕に記載の触媒。
〔3〕 チタンの酸化物、モリブデンおよび/またはタングステンの酸化物、ならびにバナジウムの酸化物を含有して成る、〔1〕または〔2〕に記載の触媒。
〔4〕 燃焼排ガスが低NOx燃焼排ガスである、〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載の触媒。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載の触媒に、アンモニアの存在下で、燃焼排ガスを接触させて、燃焼排ガスからNOxを除去することを含む方法。
〔6〕 燃焼排ガスが低NOx燃焼排ガスである、〔5〕に記載の方法。
【0012】
本発明は、より好ましい形態として以下のものを包含する。
〔7〕 細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径40Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が80%以上で、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が15%以上40%以下である燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒。
〔8〕 細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径3000Å以上の範囲の細孔容積の割合が10%以下で、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合が25%以上50%以下、全細孔容積に対する細孔径40Å以上の範囲の細孔容積の割合が90%以上である、燃焼排ガスからNOxを除去するための触媒。
〔9〕 細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が10%以上45%以下である、〔7〕または〔8〕に記載の触媒。
〔10〕 前記〔7〕〜〔9〕のいずれかひとつに記載の触媒に、アンモニアの存在下で、燃焼排ガスを接触させて、燃焼排ガスからNOxを除去することを含む方法。
〔11〕 燃焼排ガスが低NOx燃焼排ガスである、〔10〕に記載の方法。
〔12〕 燃焼排ガスは、NOx濃度が350ppm以下である、〔10〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の触媒は、触媒の表面にシリカが付着堆積しにくく、シリカが付着堆積しても脱硝性能がほとんど低下せず、シリカ堆積に対する耐性が高い。本発明の触媒は、低NOx燃焼排ガスからNOxを除去するためのアンモニア接触還元反応に好適である。
本発明の方法によれば、触媒の表面にシリカが付着堆積しても脱硝性能がほとんど低下しないので、触媒の交換頻度を減らすことができ、燃焼排ガス浄化に係る費用を低減できる。
500Å未満の細孔径は気体の平均自由行程よりも小さいため、気体は細孔の内壁に衝突しやすい。したがってシロキサン類など気体状シリカは、触媒細孔表面で反応し、シリカが生成、堆積するため、細孔径が小さい触媒は脱硝性能が低下すると考えられる。一方、500Å以上の細孔径は気体の平均自由行程に近い、またはそれよりも大きいため、ガス状分子は細孔内での衝突が相対的に少なく、シリカの堆積が少なくなり、脱硝性能の低下を抑えることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られた触媒(ハニカム成形体A)の細孔容積分布を示す図である。
図2】実施例2で得られた触媒(ハニカム成形体B)の細孔容積分布を示す図である。
図3】比較例1で得られた触媒(ハニカム成形体C)の細孔容積分布を示す図である。
図4】触媒表面に堆積したシリカ量と反応速度定数比k/koとの関係を示す図である。
図5】全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係を示す図である。
図6】全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係を示す図である。
図7】実施例4で得られた触媒(ハニカム成形体D)の細孔容積分布を示す図である。
図8】実施例5で得られた触媒(ハニカム成形体E)の細孔容積分布を示す図である。
図9】実施例6で得られた触媒(ハニカム成形体F)の細孔容積分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の触媒は、燃焼排ガスからNOxを除去するためのものである。
本発明の触媒は、以下に述べるような細孔容積分布を有する。
本発明の触媒は、細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径40Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。本発明の触媒は、細孔径3000Å超過の細孔および細孔径40Å未満の細孔をほとんど有しないことが好ましい。具体的に、細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径3000Å以上の範囲の細孔容積の割合が、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下であり、全細孔容積に対する細孔径40Å以上の範囲の細孔容積の割合、が好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上である。
【0016】
本発明の触媒は、細孔径105Å以下の範囲の細孔容積分布において、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が、好ましくは15%以上40%以下、より好ましくは19%以上39%以下である。
また、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合が、好ましくは25%以上50%以下、より好ましくは26%以上49%以下、さらに好ましくは23%以上45%以下である。
さらに、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が、好ましくは10%以上45%以下、より好ましくは11%以上42%以下、さらに好ましくは7.5%以上28%以下である。
このような新規な細孔容積分布を有する触媒は、触媒の表面に、シリカが堆積し難く、シリカが付着堆積しても脱硝性能がほとんど低下しない。
なお、本発明における細孔容積分布は水銀圧入法によって測定して得られたものである。
【0017】
本発明の触媒は、チタンの酸化物、モリブデンおよび/またはタングステンの酸化物、ならびにバナジウムの酸化物を含有して成るものが好ましい。本発明の好ましい態様の触媒としては、例えば、TiO2−V25−WO3、TiO2−V25−MoO3、TiO2−V25−WO3−MoO3等を挙げることができる。
Ti元素に対するV元素の割合は、V25/TiO2の重量百分率として、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。Ti元素に対するMo元素および/またはW元素の割合は、モリブデンの酸化物とタングステンの酸化物とを併用する場合(MoO3+WO3)/TiO2の重量百分率として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0018】
触媒の調製において、チタンの酸化物の原料として、酸化チタン粉末または酸化チタン前駆物質を用いることができる。酸化チタン前駆物質としては、酸化チタンスラリ、酸化チタンゾル;硫酸チタン、四塩化チタン、チタン酸塩などを挙げることができる。
本発明においては、チタンの酸化物の原料として、アナターゼ型酸化チタンを形成するものが好ましく用いられる。
バナジウムの酸化物の原料として、五酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸バナジル等のバナジウム化合物を用いることができる。
タングステンの酸化物の原料として、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、塩化タングステン等を用いることができる。
モリブデンの酸化物の原料として、モリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデンなどを用いることができる。
【0019】
本発明の触媒には、助触媒成分または添加物として、Pの酸化物、Sの酸化物、Alの酸化物(例えば、アルミナ)、Siの酸化物(例えば、ガラス繊維)、Zrの酸化物(例えば、ジルコニア)、石膏(例えば、二水石膏など)、ゼオライトなどが含まれていてもよい、これらは、粉末、ゾル、スラリ、繊維などの形態で、触媒調製時に用いることができる。
【0020】
本発明の触媒は、その形状によって制限されず、例えば、ペレット状、球状、円筒状、ハニカム状、板状、網目状、コルゲート状などの形状を成すことができる。
【0021】
本発明の触媒は、その製造方法によって特に制限されない。本発明の触媒は、本技術分野において知られる細孔容積分布の制御方法を用いて製造することができる。例えば、酸化チタン粉末または酸化チタン前駆物質を予焼成し、次いで、V、W、Moなどの触媒成分と必要に応じて助触媒成分または添加物を加えて成型後、本焼成することによって、または酸化チタン粉末または酸化チタン前駆物質にポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなどの有機高分子化合物とV、W、Moなどの触媒成分と必要に応じて助触媒成分または添加物を加えて成型後、本焼成することによって、得ることができる。
【0022】
本発明の方法は、本発明の触媒に、アンモニアの存在下で、燃焼排ガスを接触させて、燃焼排ガスからNOxを除去することを含む方法である。
燃焼排ガスは、低NOx燃焼排ガスであることが好ましく、NOx濃度が350ppm以下の燃焼排ガスであることがより好ましい。
【0023】
アンモニアは、本技術分野において知られる方法に従って、燃焼排ガスに添加することができる。アンモニアの量は、還元反応が円滑に進行する範囲であれば、特に限定されない。
本発明の触媒に、アンモニアの存在下で、燃焼排ガスを接触させると、例えば、式(1)で表される還元反応が進行して、窒素酸化物が毒性のない窒素と水に変換される。
NO+NH3+1/4O2 → N2+H2O (1)
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
実施例1
二酸化チタン820kgをニーダーに投入し、その後、メタバナジン酸アンモニウム8.9kgとパラタングステン酸アンモニウム69.6kgを溶解したモノエタノール水溶液を添加し、グラスファイバー46.7kg、活性白土46.7kgおよびポリエチレンオキシド9.3kgを添加し、ニーダーにてこれらを混練した。その後、微結晶セルロースを触媒乾燥重量基準で15重量%となるように添加し、水分調整を行いながら混練した。その後、混練物をハニカム押出ノズルを備えたスクリュー付き真空押出機によって押出成形してハニカム成形体を得た。ハニカム成形体を自然乾燥させ、次いで100℃通風下で5時間乾燥させた。その後、軸方向の両端を切り揃え、電気炉内にて600℃で焼成して、外径150mm×150mm、軸方向長さ800mm、セルピッチ7.4mm、内壁厚さ1.15mm、および図1に示す細孔容積分布を有するハニカム成形体Aを得た。全細孔容積に対する細孔径40Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が80%以上、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合が33%、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が24%、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が19%であった。
【0026】
ハニカム成形体Aを低NOx燃焼ボイラの脱硝装置に設置して、燃焼排ガス(NOx濃度200ppm)からのNOxの除去を5.6万時間行った。触媒表面に堆積したシリカ量および脱硝率を測定した。触媒表面に堆積したシリカ量と反応速度定数比k/koとの関係(×)を図4に示す。
【0027】
実施例2
微結晶セルロースの量を触媒乾燥重量基準で10重量%に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、外径150mm×150mm、軸方向長さ800mm、セルピッチ7.4mm、内壁厚さ1.15mm、および図2に示す細孔容積分布を有するハニカム成形体Bを得た。全細孔容積に対する細孔径40Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が80%以上、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が26%、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が18%、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が11%であった。
【0028】
ハニカム成形体Bを低NOx燃焼ボイラの脱硝装置に設置して、燃焼排ガス(NOx濃度350ppm)からのNOxの除去を1.5万時間行った。触媒表面に堆積したシリカ量および脱硝率を測定した。触媒表面に堆積したシリカ量と反応速度定数比k/koとの関係(◆)を図4に示す。
【0029】
比較例1
微結晶セルロースの量を触媒乾燥重量基準で0重量%にした以外は、実施例1と同じ方法で、外径150mm×150mm、軸方向長さ800mm、セルピッチ7.4mm、内壁厚さ1.15mm、および図3に示す細孔容積分布を有するハニカム成形体Cを得た。全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合が9%、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が4%、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が7%であった。
【0030】
ハニカム成形体Cを低NOx燃焼ボイラの脱硝装置に設置して、燃焼排ガス(NOx濃度270ppm)からのNOxの除去を3万時間行った。触媒表面に堆積したシリカ量および脱硝率を測定した。触媒表面に堆積したシリカ量と反応速度定数比k/koとの関係(■)を図4に示す。
【0031】
以上のことから、本発明の触媒を用いると、触媒の表面にシリカの堆積量が増えても脱硝性能の低下がほとんどなく、燃焼排ガス、好ましくは低NOx燃焼排ガス、からNOxを除去することができる。
【0032】
さらに、ラボ試験で一定時間シリカ処理し、反応速度定数比k/koを測定した。
【0033】
実施例3
ハニカム成形体Aをラボでシロキサンを含む模擬排ガスに曝露させた。その後、脱硝率を測定した。全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(×)を図5に示す。また、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(×)を図6に示す。
【0034】
実施例4
微結晶セルロースの量を触媒乾燥重量基準で18重量%に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、外径150mm×150mm、軸方向長さ800mm、セルピッチ7.4mm、内壁厚さ1.15mm、および図7に示す細孔容積分布を有するハニカム成形体Dを得た。全細孔容積に対する細孔径40Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が80%以上、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合が42%、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が38%、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が27%であった。
【0035】
ハニカム成形体Dをラボでシロキサンを含む模擬排ガスに曝露させた。その後、脱硝率を測定した。全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(●)を図5に示す。また、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(●)を図6に示す。
【0036】
実施例5
微結晶セルロースの量を触媒乾燥重量基準で16重量%に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、外径150mm×150mm、軸方向長さ800mm、セルピッチ7.4mm、内壁厚さ1.15mm、および図8に示す細孔容積分布を有するハニカム成形体Eを得た。全細孔容積に対する細孔径40Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が80%以上、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合が33%、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が30%、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割合が23%であった。
【0037】
ハニカム成形体Eをラボでシロキサンを含む模擬排ガスに曝露させた。その後、脱硝率を測定した。全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(〇)を図5に示す。また、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(〇)を図6に示す。
【0038】
実施例6
微結晶セルロースの量を触媒乾燥重量基準で20重量%に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、外径150mm×150mm、軸方向長さ800mm、セルピッチ7.4mm、内壁厚さ1.15mm、および図9に示す細孔容積分布を有するハニカム成形体Fを得た。全細孔容積に対する細孔径40Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が80%以上、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合が49%、全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合が39%、全細孔容積に対する細孔径1000Å以上の範囲の細孔容積の割が42%であった。
【0039】
ハニカム成形体Fをラボでシロキサンを含む模擬排ガスに曝露させた。その後、脱硝率を測定した。全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(◇)を図5に示す。また、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(◇)を図6に示す。
【0040】
比較例2
ハニカム成形体Cをラボでシロキサンを含む模擬排ガスに曝露させた。その後、触媒表面に堆積したシリカ量及び脱硝率を測定した。全細孔容積に対する細孔径500Å以上3000Å以下の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(■)を図5に示す。また、全細孔容積に対する細孔径500Å以上の範囲の細孔容積の割合と反応速度定数比k/koとの関係(■)を図6に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9