特許第6833510号(P6833510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833510
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   G07F 9/10 20060101AFI20210215BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20210215BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   G07F9/10 101B
   G07F9/10 101A
   F28D20/02 D
   F25D23/12 M
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-256144(P2016-256144)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-109797(P2018-109797A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】515118014
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀俊
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−175585(JP,A)
【文献】 特開昭60−188782(JP,A)
【文献】 特開2009−122818(JP,A)
【文献】 特開平07−260325(JP,A)
【文献】 特開2001−041644(JP,A)
【文献】 特開平03−067959(JP,A)
【文献】 特開2009−103340(JP,A)
【文献】 特開2006−146751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 9/10
F25D 11/00−16/00,
23/10−23/12,
27/00−31/00
F28D 20/02
F25B 1/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、放熱器、膨張機構及び吸熱器を有する冷媒回路を備え、圧縮機の運転時に放熱器から放出された熱によって物品を収納する収納庫内を加熱する加熱装置であって、
収納庫内を加熱する空気を流通させる送風機と、
相変化時の潜熱を蓄えること可能な蓄熱材を有し、圧縮機の駆動によって圧縮機から吐出された冷媒が放出する熱を蓄えるとともに、圧縮機が停止した状態で蓄えた熱を放出させることによって収納庫内を加熱する蓄熱熱交換器と、を備え、
送風機によって流通する空気の流路には、圧縮機、放熱器及び蓄熱熱交換器が配置され、
蓄熱熱交換器は、圧縮機から放出された熱によっても加熱されるように圧縮機の近傍に配置されている
加熱装置。
【請求項2】
蓄熱熱交換器は、冷媒回路における圧縮機の冷媒吐出側と放熱器の冷媒流入側との間の冷媒流路に接続されている
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
放熱器は、送風機によって流通する空気の流路における蓄熱熱交換器の空気流通方向の上流側に配置されている
請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
蓄熱熱交換器は、外管と内管とを有し、内管内を冷媒が流通し、外管の内面と内管の外面との間に蓄熱材が充填されている
請求項1乃至3のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項5】
蓄熱熱交換器の外管は、圧縮機の外周側を螺旋状に延びるように形成されている
請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
蓄熱熱交換器は、螺旋形状の中心軸方向に隣り合う外管と外管との間に隙間を有している
請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
蓄熱材は、融点が65℃乃至75℃となる物質である
請求項1乃至6のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項8】
送風機によって流通する空気の流路には、収納庫内を冷却する際に用いられる熱交換器が配置されている
請求項1乃至7の何れかに記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビン、缶、ペットボトル等の容器入り飲料を加熱して販売する自動販売機等に用いられる加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱装置としては、圧縮機、放熱器、膨張機構及び吸熱器を有する冷媒回路を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させることで収納庫内の空気を加熱し、収納庫内に収納された商品を加熱するものが知られている。
【0003】
前記加熱装置では、圧縮機が電動モータの動力によって駆動される。このため、前記加熱装置では、収納庫内を目的の温度まで加熱すると共に目的の温度を維持するために、圧縮機の駆動時間が長時間となったり、圧縮機の駆動と駆動の停止との切り換えの頻度が多くなったりすると、電動モータの消費電力量が大きくなるという問題がある。
【0004】
そこで、加熱装置では、圧縮機の駆動によって圧縮機から吐出された冷媒が放出する熱を蓄熱材に蓄えるとともに、圧縮機を停止した状態で蓄えた熱を蓄熱材から放出させることによって収納庫内を加熱する蓄熱熱交換器を備えたものが考えられている(例えば、特許文献1参照)。蓄熱熱交換器を備えた加熱装置では、圧縮機の駆動を停止した状態における収納庫内の加熱を可能とすることで、圧縮機の駆動時間の低減及び圧縮機の駆動と駆動の停止の切り換えの頻度の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−206844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄熱熱交換器を備えた加熱装置では、蓄熱熱交換器に蓄えられた熱によって収納庫内を目的の温度まで加熱可能とするために、収納庫内の目的の温度よりも高い温度まで蓄熱材を加熱する必要がある。したがって、蓄熱熱交換器を備えた自動販売機では、蓄熱熱交換器における必要な蓄熱量を得るための圧縮機の駆動が、加熱負荷として大きな割合を占めることとなるため、消費電力量の低減の効果が小さい。
【0007】
本発明の目的とするところは、圧縮機を駆動するための消費電力量を低減するとともに、蓄熱熱交換器において必要な蓄熱量を得ることのできる加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、圧縮機、放熱器、膨張機構及び吸熱器を有する冷媒回路を備え、圧縮機の運転時に放熱器から放出された熱によって物品を収納する収納庫内を加熱する加熱装置であって、収納庫内を加熱する空気を流通させる送風機と、相変化時の潜熱を蓄えること可能な蓄熱材を有し、圧縮機の駆動によって圧縮機から吐出された冷媒が放出する熱を蓄えるとともに、圧縮機が停止した状態で蓄えた熱を放出させることによって収納庫内を加熱する蓄熱熱交換器と、を備え、送風機によって流通する空気の流路には、圧縮機、放熱器及び蓄熱熱交換器が配置され、蓄熱熱交換器は、圧縮機から放出された熱によっても加熱されるように圧縮機の近傍に配置されている。
【0009】
これにより、圧縮機の駆動によって圧縮機の表面から放出された熱が蓄熱材に伝えられることから、冷媒から放出される熱に加えて、圧縮機の表面から放出される熱によって蓄熱熱交換器が蓄熱される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷媒から放出される熱に加えて、圧縮機の表面から放出される熱によって蓄熱熱交換器に蓄熱させることができるので、商品を目的の温度まで加熱するとともに蓄熱熱交換器に必要な蓄熱量を蓄熱させる際の加熱負荷を低減することが可能となり、圧縮機の駆動に必要なエネルギーの消費量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示す自動販売機の全体斜視図である。
図2】外扉を開放した状態を示す自動販売機の全体斜視図である。
図3】自動販売機本体の側面断面図である。
図4】冷却加熱装置の概略構成図である。
図5】第1蓄熱熱交換器の全体斜視図である。
図6】第1蓄熱熱交換器の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図6は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明の加熱装置としての自動販売機1は、図1及び図2に示すように、前面に開口を有する自動販売機本体10と、自動販売機本体10の前面の開口を開閉する外扉20と、を備えている。
【0014】
自動販売機本体10は、金属板によって前面が開口された箱状に形成されている。自動販売機本体10の内部は、図3に示すように、上下方向における下側において、水平方向に延びる金属板11によって上下に仕切られている。自動販売機本体10の上側には、ビン、缶、ペットボトル等の商品としての容器入り飲料を収納するための収納庫としての商品収納庫30が形成されている。また、自動販売機本体10の下側には、商品収納庫30内に収納された商品を加熱または冷却するための機器の一部が設置される機械室40が形成されている。
【0015】
外扉20は、図1に示すように、サンプル展示部21、商品選択スイッチ22、硬貨投入口23、紙幣投入口24、返却レバー25、硬貨返却口26及び商品取出口27が前面に設けられている。外扉20は、図2に示すように、左右方向の一端側が自動販売機本体10の左右方向の一端側に回転自在に支持されている。
【0016】
商品収納庫30は、図3に示すように、上面側、背面側、底面側及び左右両側面側が断熱材31によって囲まれており、前面が開口された箱状に形成されている。また、商品収納庫30は、図2に示すように、上下方向及び前後方向に延びる断熱性の仕切板32によって左右に仕切られている。本実施形態において、商品収納庫30は、自動販売機1の正面に向かって右側に設けられた第1収納庫30aと、中央側に設けられた第2収納庫30bと、左側に設けられた第3収納庫30cと、から構成されている。
【0017】
また、商品収納庫30の前面の開口は、図2に示すように、断熱性の下側内扉33及び上側内扉34によって開閉される。下側内扉33は、左右方向の一端側が商品収納庫30の左右方向の一端側に回転自在に支持されている。下側内扉33の下側には、商品収納庫30内と商品取出口27とを連通する商品搬出口33aが設けられている。商品搬出口33aには、上縁部が回転自在に支持され、商品搬出口33aを開閉する搬出扉33bが設けられている。上側内扉34は、外扉20の裏面に取り付けられており、外扉20が自動販売機本体10の前面の開口を開閉する際に、商品収納庫30の前面の開口の上側を開閉する。
【0018】
第1〜第3収納庫30a,30b,30c(以降、30a〜cと記載する)のそれぞれには、図3に示すように、複数の商品を上下に積み重ねた状態で収納して下端側に位置する商品を1つずつ搬出可能な複数の商品収納コラム35が前後方向に並べて吊り下げられている。
【0019】
第1〜第3収納庫30a〜cのそれぞれの下側には、図3に示すように、板状部材からなり、前面側に向かって下り傾斜となるデリバリシュート36が設けられている。デリバリシュート36は、商品収納コラム35の下方に位置し、商品収納コラム35から搬出された商品を商品搬出口33aに向かって案内する。
【0020】
第1〜第3収納庫30a〜cの底面とデリバリシュート36との間には、図3に示すように、庫内の上部側の空気を自動販売機本体10の背面側から前面側に向かって流通させるための通風路37が形成されている。通風路37は、第1〜第3収納庫30a〜cの背面側においてデリバリシュート36の上面よりも上方に延びるダクト37aを有し、ダクト37aの上端部に空気の流入口37bが設けられている。また、通風路37を形成するデリバリシュート36の前面側には、例えばスリット状に開口することで空気の流出口37cが形成されている。
【0021】
また、自動販売機1は、図4に示すように、商品収納庫30内の空気を冷却または加熱することで、商品収納庫30に収納された商品を冷却または加熱するための冷却加熱装置50を備えている。
【0022】
本実施形態において、第1収納庫30a及び第2収納庫30bは、収納された商品の冷却と商品の加熱との切り換えが可能な冷温切換収納庫である。また、第3収納庫30cは、収納された商品の冷却のみが可能な冷却専用収納庫である。
【0023】
冷却加熱装置50は、第1収納庫30a、第2収納庫30b及び第3収納庫30cの全てを冷却する場合に用いる冷却専用冷媒回路60と、第1収納庫30a及び第2収納庫30bの一方または両方を加熱し、それ以外を冷却する場合に用いる冷媒回路としての冷却加熱用冷媒回路70と、を備えている。冷却専用冷媒回路60及び冷却加熱用冷媒回路70では、冷媒として二酸化炭素が用いられる。
【0024】
冷却専用冷媒回路60は、冷却専用圧縮機61と、冷却専用庫外熱交換器62、第1〜第3膨張弁63a,63b,63c(以降63a〜cと記載する)、第1〜第3冷却専用庫内熱交換器64a,64b,64c(以降、64a〜64cと記載する)、を有し、それぞれ銅管によって接続されている。ここで、冷却専用圧縮機61は、電動モータによって駆動される。また、第1〜第3膨張弁63a〜cは、弁開度が全閉から全開の間で調整可能な電子膨張弁である。
【0025】
冷却専用冷媒回路60において、冷却専用圧縮機61の冷媒吐出側は、冷却専用庫外熱交換器62の冷媒流入側に接続されている。冷却専用庫外熱交換器62の冷媒流出側は、第1〜第3膨張弁63a〜cを介して第1〜第3冷却専用庫内熱交換器64a〜cの冷媒流入側のそれぞれに並列に接続されている。第1〜第3冷却専用庫内熱交換器64a〜cのそれぞれの冷媒流出側は、冷却専用圧縮機61の冷媒吸入側に接続されている。
【0026】
冷却専用冷媒回路60は、商品収納庫30内と機械室40内とにわたって設けられている。冷却専用圧縮機61及び冷却専用庫外熱交換器62は、機械室40内に配置されている。第1冷却専用庫内熱交換器64aは、第1収納庫30aの通風路37に配置されている。第2冷却専用庫内熱交換器64bは、第2収納庫30bの通風路37に配置されている。第3冷却専用庫内熱交換器64cは、第3収納庫30cの通風路37に配置されている。
【0027】
冷却加熱用冷媒回路70は、圧縮機としての冷却加熱用圧縮機71、蓄熱熱交換器としての第1及び第2蓄熱熱交換器72a,72b、放熱器としての第1及び第2加熱用庫内熱交換器73a,73b、膨張機構としての第1〜第3膨張弁74a,74b,74c(以降、74a〜cと記載する)、吸熱器としての冷却加熱用庫外熱交換器75、吸熱器としての第1及び第2冷却用庫内熱交換器76a,76b、第1〜第3開閉弁77a,77b,77c(以降、77a〜cと記載する)、第1及び第2逆止弁78a,78bを有し、それぞれ銅管によって接続されている。ここで、第1〜第3膨張弁74a〜cは、弁開度が全閉から全開の間で調整可能な電子膨張弁である。
【0028】
冷却加熱用冷媒回路70において、冷却加熱用圧縮機71の冷媒吐出側は、第1及び第2開閉弁77a,77bを介して第1及び第2蓄熱熱交換器72a,72bの冷媒流入側のそれぞれに並列に接続されている。第1及び第2蓄熱熱交換器72a,72bの冷媒流出側は、それぞれ第1及び第2加熱用庫内熱交換器73a,73bの冷媒流入側に接続されている。第1及び第2加熱用庫内熱交換器73a,73bの冷媒流出側は、第1及び第2逆止弁78a,78bと第1膨張弁74aを介して冷却加熱用庫外熱交換器75の冷媒流入側に接続されている。冷却加熱用庫外熱交換器75の冷媒流出側は、冷却加熱用圧縮機71の冷媒吸入側と、第2膨張弁74bを介して第1冷却用庫内熱交換器76aの冷媒流入側と、第3膨張弁74cを介して第2冷却用庫内熱交換器76bの冷媒流入側と、のそれぞれに並列に接続されている。第1及び第2冷却用庫内熱交換器76a,76bのそれぞれの冷媒流出側は、冷却加熱用圧縮機71の冷媒吸入側に並列に接続されている。
【0029】
冷却加熱用冷媒回路70は、商品収納庫30内と機械室40内とにわたって設けられている。冷却加熱用圧縮機71、第1蓄熱熱交換器72a及び第1加熱用庫内熱交換器73aは、第1収納庫30aの通風路37に配置されている。第2蓄熱熱交換器72b、第2加熱用庫内熱交換器73b及び第1冷却用庫内熱交換器76aは、第2収納庫30bの通風路37に配置されている。第2冷却用庫内熱交換器76bは、第3収納庫30cの通風路37に配置されている。
【0030】
また、第1収納庫30a、第2収納庫30b及び第3収納庫30cのそれぞれの通風路37には、庫内の空気を循環させるための第1庫内送風機80a、第2庫内送風機80b及び第3庫内送風機80cが設けられている。また、機械室40には、機械室外の空気を流入させて排出するための庫外送風機81が設けられている。
【0031】
ここで、第1収納庫30aの通風路37における機器の配置を詳細に説明する。
【0032】
図3に示すように、通風路37の背面側には、空気を送る方向を前方に向けて第1庫内送風機80aが配置されている。第1庫内送風機80aの前方には、第1加熱用庫内熱交換器73aが配置されている。第1加熱用庫内熱交換器73aの前方には、冷却加熱用圧縮機71及び第1蓄熱熱交換器72aが配置されている。冷却加熱用圧縮機71及び第1蓄熱熱交換器72aの前方には、第1冷却専用庫内熱交換器64aが配置されている。
【0033】
次に、冷却加熱用圧縮機71及び第1蓄熱熱交換器72aのそれぞれの構成及び配置について説明する。
【0034】
冷却加熱用圧縮機71は、略球形状または上下方向に延びる円柱形状の密閉型の圧縮機であり、電動モータによって駆動される。
【0035】
第1蓄熱熱交換器72aは、図5及び図6に示すように、円筒状の外管72a1と、外管72a1の内側に配置された内管72a2と、を有する二重管式熱交換器である。内管72a2内には、冷却加熱用冷媒回路70を流通する冷媒が流通し、外管72a1の内面と内管72a2の外面との間の空間には、蓄熱材72a3が充填されている。
【0036】
蓄熱材72a3は、例えば、パラフィン系の潜熱蓄熱材であり、液体の状態から凝固する際に放出する潜熱を主に利用して第1収納庫30a内に収納された商品を目的の温度である約55℃まで加熱する。蓄熱材72a3は、融点が商品の目的の温度よりも高い65℃乃至75℃の特性を有する。
【0037】
また、第1蓄熱熱交換器72aは、図5に示すように、冷却加熱用圧縮機71の近傍において外周部を囲むように、外管72a1を所定間隔をおいて屈曲することで四角形の螺旋状に形成されている。第1蓄熱熱交換器72aの外管72a1は、螺旋形状の中心軸方向に隣り合う外管72a1との間に隙間を有している。
【0038】
以上のように構成された自動販売機1において、第1〜第3収納庫30a〜cのうちの一部を加熱してその他を冷却する例として、第1収納庫30aを加熱し、第2収納庫30b及び第3収納庫30cを冷却する場合について説明する。
【0039】
まず、冷却専用冷媒回路60は、第1収納庫30aを加熱する場合において使用されることはないため、冷却専用圧縮機61は停止した状態とする。
【0040】
また、冷却加熱用冷媒回路70において、第1〜第3収納庫30a〜cが目標温度まで加熱または冷却されていない状態では、第1開閉弁77aを開放して、第2及び第3開閉弁77b,77cを閉鎖し、第1膨張弁74aを全開とし、第2及び第3膨張弁74b,74cをコントローラからの出力信号に基づいて弁開度を制御する状態とし、冷却加熱用圧縮機71、第1〜第3庫内送風機80a〜c及び庫外送風機81を駆動させる庫内吸熱加熱蓄熱運転を行う。
【0041】
庫内吸熱加熱蓄熱運転において、冷却加熱用圧縮機71から吐出された冷媒は、図4における矢印で示すように、第1蓄熱熱交換器72a、第1加熱用庫内熱交換器73a、第1膨張弁74a、冷却加熱用庫外熱交換器75の順に流通する。冷却加熱用庫外熱交換器75を流出した冷媒の一部は、第1冷却用庫内熱交換器76aを流通して冷却加熱用圧縮機71に吸入される。また、冷却加熱用庫外熱交換器75を流出したその他の冷媒は、第2冷却用庫内熱交換器76bを流通して冷却加熱用圧縮機71に吸入される。ここで、第1膨張弁74aは、弁開度が全開の状態となっている。このため、第1加熱用庫内熱交換器73aから流出した冷媒は、第1膨張弁74aにおいて減圧されることなく冷却加熱用庫外熱交換器75に流入する。
【0042】
これにより、冷却加熱用圧縮機71から吐出された冷媒は、第1蓄熱熱交換器72a、第1加熱用庫内熱交換器73a及び冷却加熱用庫外熱交換器75において放熱し、第1及び第2冷却用庫内熱交換器76a,76bにおいて吸熱する。
【0043】
庫内吸熱加熱蓄熱運転における第1蓄熱熱交換器72aでは、冷却加熱用圧縮機71から吐出された高温(例えば、100℃以上)の冷媒と蓄熱材72a3とが熱交換する。蓄熱材72a3は、前述したように、融点が65℃乃至75℃であるため、冷媒との熱交換によって融解時の潜熱を蓄える。蓄熱材72a3の蓄熱が完了したか否かの判定は、蓄熱時における蓄熱材72a3の温度を監視することによって行う。具体的には、第1蓄熱熱交換器72cにおいて、蓄熱材72a3の温度が融点からさらに上昇を開始した時点で、蓄熱材72a3の蓄熱が完了したと判定する。
【0044】
また、庫内吸熱加熱蓄熱運転において、駆動時の冷却加熱用圧縮機71は、表面温度が高温(例えば、110℃)となる。第1蓄熱熱交換器72aは、冷却加熱用圧縮機71の近傍において外周部を囲むように設けられている。このため、第1蓄熱熱交換器72aでは、蓄熱材72a3が冷却加熱用圧縮機71から放出された熱によっても加熱され、融解時の潜熱を蓄える。
【0045】
さらに、庫内吸熱加熱蓄熱運転における第1加熱用庫内熱交換器73aでは、蓄熱材72a3との熱交換によって放熱した後の60℃乃至70℃の温度となった冷媒と通風路37を流通する空気とが熱交換する。これにより、第1加熱用庫内熱交換器73aにおいては、第1収納庫30a内の商品を目的の温度である約55℃まで加熱することが可能な温度の冷媒が熱交換に利用される。
【0046】
また、庫内吸熱加熱蓄熱運転において、流入口37bを介して通風路37に流入した空気は、第1加熱用庫内熱交換器73aで冷媒と熱交換した後に、第1蓄熱熱交換器72aの外管72a1に接触する。したがって、第1収納庫30a内の商品を加熱した後の低温の空気は、第1加熱用庫内熱交換器73aにおいて商品を目的の温度である約55℃とすることが可能な温度まで加熱された後に、第1蓄熱熱交換器72aに接触することになる。このため、第1蓄熱熱交換器72aの蓄熱時において、通風路37を流通する空気が、蓄熱材72a3の蓄熱を妨げることはない。
【0047】
庫内吸熱加熱蓄熱運転によって第1蓄熱熱交換器72aにおいて蓄熱材72a3の蓄熱が完了するとともに、第2収納庫30b及び第3収納庫30cの温度が目的の温度まで冷却された場合には、冷却加熱用圧縮機71、第2庫内送風機80b及び第3庫内送風機80cの駆動を停止し、第1庫内送風機80aの駆動のみを継続する蓄熱利用運転を行う。
【0048】
蓄熱利用運転では、通風路37において、流入口37bから流入した空気が、第1蓄熱熱交換器72aの外管72a1と接触することで蓄熱材72a3と熱交換し、蓄熱材72a3が放出する熱によって加熱されて流出口37cから流出する。このように、冷却加熱用圧縮機71を停止した場合においても、第1収納庫30aに収納された商品は、蓄熱材72a3が放出する熱によって目的の温度である約55℃まで加熱される。
【0049】
また、蓄熱利用運転において、通風路37を流通する空気は、冷却専用冷媒回路60に接続された第1冷却専用庫内熱交換器64aにも接触する。第1冷却専用庫内熱交換器64aは、庫内吸熱加熱蓄熱運転によって加熱された状態となっているため、第1冷却専用庫内熱交換器64aに蓄えられた熱が、蓄熱利用運転における商品の加熱に利用される。
【0050】
このように、本実施形態の加熱装置によれば、第1蓄熱熱交換器72aは、通風路37における冷却加熱用圧縮機71の近傍に配置されている。
【0051】
これにより、冷媒から放出される熱に加えて、冷却加熱用圧縮機71の表面から放出される熱によって第1蓄熱熱交換器72aに蓄熱させることができるので、商品を目的の温度まで加熱するとともに第1蓄熱熱交換器72aに必要な蓄熱量を蓄熱させる際の加熱負荷を低減することが可能となり、冷却加熱用圧縮機71の駆動に必要なエネルギーの消費量を低減することが可能となる。
【0052】
また、第1蓄熱熱交換器72aは、冷却加熱用冷媒回路70における冷却加熱用圧縮機71の冷媒吐出側と第1加熱用庫内熱交換器73aの冷媒流入側との間の冷媒流路に接続されている。
【0053】
これにより、第1加熱用庫内熱交換器73aにおいて放熱する前の高温の冷媒によって第1蓄熱熱交換器72aの蓄熱を行うことができるので、蓄熱利用運転時において、第1収納庫30aに収納された商品を確実に目的の温度まで加熱することが可能となる。
【0054】
また、第1加熱用庫内熱交換器73aは、第1庫内送風機80aによって流通する通風路37における第1蓄熱熱交換器72aの空気流通方向の上流側に配置されている。
【0055】
これにより、庫内吸熱加熱蓄熱運転において、通風路37に流入した空気が、第1加熱用庫内熱交換器73aで冷媒と熱交換させた後に、第1蓄熱熱交換器72aの外管72a1に接触することになるため、第1収納庫30a内の商品を加熱した後の低温の空気によって、蓄熱材72a3の蓄熱が妨げられることはない。
【0056】
また、第1蓄熱熱交換器72aは、外管72a1と内管72a2とを有し、内管72a2内を冷媒が流通し、外管72a1の内面と内管72a2の外面との間に蓄熱材72a3が充填されている。
【0057】
これにより、第1蓄熱熱交換器72aを簡単な構造とすることができるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0058】
また、第1蓄熱熱交換器72aの外管72a1は、冷却加熱用圧縮機71の外周側を螺旋状に延びるように形成されている。
【0059】
これにより、通風路37において第1蓄熱熱交換器72aを設置するための専用のスペースを必要とすることなく、冷却加熱用圧縮機71の設置スペースをやや大きく確保することで第1蓄熱熱交換器72aを設置することが可能となり、通風路37における機器の配置に要するスペースの省スペース化を図ることが可能となる。
【0060】
また、第1蓄熱熱交換器72aは、螺旋形状の中心軸方向に隣り合う外管72a1と外管72a1との間に隙間を有している。
【0061】
これにより、通風路37を流通する空気を、外管72a1と外管72a1との間の隙間を通って冷却加熱用圧縮機71の外面に接触させることが可能となり、冷却加熱用圧縮機71の温度を最適な状態に保持することが可能となる。
【0062】
また、蓄熱材72a3は、融点が65℃乃至75℃となる物質である。
【0063】
これにより、蓄熱利用運転時において、蓄熱材72a3が凝固する際に放出する潜熱によって商品を目的の温度である約55℃まで確実に加熱することが可能となる。また、蓄熱材72a3の融点が75℃以下であるため、融点が商品の目的の温度よりも過度に高い場合(例えば、融点が80℃以上の場合)のように、蓄熱材72a3の潜熱によって商品が目的の温度よりも過度に高い温度まで加熱されることによる商品(飲料)の劣化を防止することが可能となる。さらに、蓄熱材の融点が65℃以上であるため、融点が商品の目的の温度に近い場合(例えば、融点が55℃乃至60℃の場合)のように、蓄熱材72a3の蓄えた潜熱が十分に利用されることなく庫内吸熱加熱蓄熱運転が再開されるといった効率の悪い運転を防止することが可能となる。
【0064】
また、通風路37には、第1収納庫30a内を冷却する際に用いられる第1冷却専用庫内熱交換器64aが配置されている。
【0065】
これにより、庫内吸熱加熱蓄熱運転において、使用されない第1冷却専用庫内熱交換器64aが加熱され、蓄熱利用運転時において、加熱された第1冷却専用庫内熱交換器64aから放出される熱を、第1収納庫30a内の商品の加熱に利用することができるので、冷却加熱用圧縮機71の駆動時における消費電力の一層の低減を図ることが可能となる。
【0066】
尚、前記実施形態では、加熱装置として容器入り飲料を加熱して販売する自動販売機1を示したが、これに限られるものではない。物品を収納する収納庫を有し、圧縮機、放熱器、膨張機構及び吸熱器を有する冷媒回路によって収納庫内の空気を加熱するものであれば、自動販売機1以外の物品を加熱して保存する装置に適用可能である。
【0067】
また、前記実施形態では、第1蓄熱熱交換器72aを、二重管式の熱交換器から構成したものを示したが、これに限られるものではない。冷却加熱用圧縮機71を駆動させて第1蓄熱熱交換器72aの蓄熱材72a3に蓄熱させ、冷却加熱用圧縮機71を停止させた状態で、蓄熱材72a3が蓄えた熱によって通風路37を流通する空気を加熱することが可能であれば、例えば、冷媒が流通する複数の冷媒チューブと、蓄熱材が充填された複数の蓄熱材チューブと、を交互に積層した蓄熱熱交換器であってもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、二重管式の熱交換器からなる第1蓄熱熱交換器72aを冷却加熱用圧縮機71の外周側を囲むように螺旋状に形成したものを示したが、これに限られるものではない。蓄熱熱交換器は、冷却加熱用圧縮機71の外周部の少なくとも一部の近傍に配置されるものであればよく、例えば、圧縮機の空気流通方向下流側の近傍のみに蛇行するように配置されているものであっても前記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0069】
また、前記実施形態では、第1蓄熱熱交換器72aを、冷却加熱用圧縮機71の近傍において外周部を囲むように、外管72a1を所定間隔をおいて屈曲することで四角形の螺旋状に形成したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、外管を圧縮機の外周部の形状に合わせて円形状の螺旋状に形成してもよい。また、蓄熱熱交換器は、圧縮機の外面に接触するものや、圧縮機の外周部と一体に形成されていても、前記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0070】
また、前記実施形態では、第1蓄熱熱交換器72aの外管72a1を円筒形状に形成したものを示したがこれに限られるものではない。例えば、蓄熱熱交換器の外管を、断面多角形状に形成したり、円筒状の外管の外周部にフィンを形成したりすることで、蓄熱材と通風路37を流通する空気との熱交換を促進するようにしてもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、加熱の対象となる商品の目的の温度を約55℃とし、蓄熱材72a3の融点を65℃乃至75℃としたものを示している。加熱の対象となる商品の目的の温度が55℃よりも低い場合には、蓄熱材の融点は65℃乃至75℃よりも低くてもよい。また、加熱の対象となる商品の目的の温度が55℃よりも高い場合には、蓄熱材の融点は65℃乃至75℃の範囲よりも高いことが望ましい。
【0072】
また、前記実施形態では、冷却加熱用圧縮機71、第1蓄熱熱交換器72a及び第1加熱用庫内熱交換器73aが配置される通風路37を、第1収納庫30a内に形成したものを示したが、これに限られるものではない。冷却加熱用圧縮機71、第1蓄熱熱交換器72a及び第1加熱用庫内熱交換器73aが配置される通風路は、第1収納庫30aに連通するものであれば、例えば、機械室40内に形成されていても前記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。ただし、前記実施形態に示すように、第1収納庫30a内に通風路37が形成されている場合には、冷却加熱用圧縮機71が第1収納庫30a内の空気によって加熱され、第1蓄熱熱交換器72aが第1収納庫30a内の空気に対して直に放熱することになる。これにより、前記実施形態に示す冷却加熱用圧縮機71では、駆動を停止している状態においても第1収納庫30a内の空気によって保温され、駆動を再開した場合に速やかに効率の高い運転が可能となる、という利点がある。また、第1蓄熱熱交換器72aでは、熱損失を最小限とすることができ、蓄熱材72a3から放出される熱の大部分を、第1収納庫30a内の商品の加熱に利用できる、という利点がある。
【符号の説明】
【0073】
1…自動販売機、30…商品収納庫、30a…第1収納庫、37…通風路、64a…第1冷却専用庫内熱交換器、70…冷却加熱用冷媒回路、71…冷却加熱用圧縮機、72a…第1蓄熱熱交換器、72a1…外管、72a2…内管、72a3…蓄熱材、73a…第1加熱用庫内熱交換器、74a〜c…第1〜第3膨張弁、75…冷却加熱用庫外熱交換器、76a,76b…第1及び第2冷却用庫内熱交換器、80a…第1庫内送風機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6