特許第6833518号(P6833518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6833518少なくとも1種のカソード添加剤を含む電気化学セル用カソード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833518
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】少なくとも1種のカソード添加剤を含む電気化学セル用カソード
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20210215BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20210215BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20210215BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20210215BHJP
   H01M 4/54 20060101ALI20210215BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20210215BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20210215BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20210215BHJP
   H01M 4/32 20060101ALI20210215BHJP
   H01M 4/34 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   H01M4/62 C
   H01M4/62 Z
   H01M4/48
   H01M4/50
   H01M4/52
   H01M4/54
   H01M4/06 E
   H01M4/06 L
   H01M4/13
   H01M4/24 Z
   H01M4/32
   H01M4/34
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-568963(P2016-568963)
(86)(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公表番号】特表2017-517113(P2017-517113A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】US2015031333
(87)【国際公開番号】WO2015183607
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/004,926
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】315014051
【氏名又は名称】デュラセル、ユーエス、オペレーションズ、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、ボリス、シェルキン
(72)【発明者】
【氏名】フレディー、アーサー、バーナバス
【審査官】 佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/009284(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/035827(WO,A1)
【文献】 特開2013−089345(JP,A)
【文献】 特開平10−083810(JP,A)
【文献】 特開2003−045433(JP,A)
【文献】 特開昭62−140367(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0221610(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0136950(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0094480(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0038630(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/063907(WO,A1)
【文献】 特開平09−120817(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/036260(WO,A1)
【文献】 特開2003−263988(JP,A)
【文献】 特開2012−151123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的に活性なカソード材料と、
少なくとも1種のカソード添加剤を含み、前記少なくとも1種のカソード添加剤が、ボロン酸、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、またはスルタインであり、
前記少なくとも1種のカソード添加剤が、前記ボロン酸のホウ素原子、前記アミンオキシドの窒素原子、前記ホスフィンオキシドのリン原子、前記スルホキシドの硫黄原子、前記スルホンの硫黄原子、または前記スルタインの窒素原子に結合している少なくとも1つの炭化水素基を含んでなり、
前記電気化学的に活性なカソード材料が、酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、ラムダ二酸化マンガン、ガンマ二酸化マンガン、ベータ二酸化マンガン、酸化銀、酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、酸化ビスマス、四価のニッケル化合物、またはそれらの混合物を含んでなることを特徴とする、カソード(12)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記炭化水素基が、炭素原子4個〜炭素原子10個を含んでなる、請求項1に記載のカソード(12)。
【請求項3】
前記少なくとも1種のカソード添加剤が、ブチルボロン酸、ペンチルボロン酸、ヘキシルボロン酸、イソブチルボロン酸、オクチルジメチルアミンオキシド、N,N−ジメチルノナン−1−アミンオキシド、ヘキシルジメチルホスフィンオキシド、オクチルジメチルホスフィンオキシド、デシルジメチルホスフィンオキシド、ブチルメチルスルホン、ジブチルスルホン、メチルペンチルスルホン、ブチルメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、およびメチルペンチルスルホキシド、およびそれらの混合物からなる群から選ばれたものである、請求項1または2に記載のカソード(12)。
【請求項4】
前記少なくとも1種のカソード添加剤が、前記カソードの0.15重量パーセント未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカソード(12)。
【請求項5】
前記少なくとも1種のカソード添加剤が、前記カソードの0.03重量パーセント〜前記カソードの0.12重量パーセントである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカソード(12)。
【請求項6】
前記少なくとも1種のカソード添加剤が、前記カソードの0.0048重量パーセント〜前記カソードの0.065重量パーセントである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカソード(12)。
【請求項7】
膨張黒鉛、天然黒鉛、グラフェン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、またはそれらの混合物を含んでなる少なくとも1種の炭素添加剤をさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカソード(12)。
【請求項8】
前記少なくとも1種のカソード添加剤が、ボロン酸である、請求項1に記載のカソード(12)。
【請求項9】
前記少なくとも1種のカソード添加剤が、アミンオキシドである、請求項1に記載のカソード(12)。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のカソード(12)、アノード、前記カソードと前記アノードの間のセパレータ、および電解質を含んでなる、電池(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル用カソードに関し、より具体的には、少なくとも1種のカソード添加剤を含む電気化学セル用カソードに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルまたは電池は、電気エネルギー源として広く使用されている。電池は、一般的にアノードと呼ばれる負極、および一般的にカソードと呼ばれる正極を含む。アノードは、酸化され得る活物質を含む。カソードは、還元され得る活物質を含む。アノード活物質は、カソード活物質を還元できる。セパレータは、アノードとカソードの間に配置されている。これらの要素は、一般的に金属から出来ている缶またはハウジング内に配置されている。
【0003】
電池を電子デバイスで電気エネルギー源として使用する場合、アノードとカソードを電気的に接触させ、電子がデバイスを貫流するようにし、それぞれで酸化反応と還元反応を引き起こして電子デバイスへ電力を供給する。電解質は、アノードとカソードに接触している。電解質はアノードとカソードの間のセパレータを貫流するイオンを含み、放電中電池全体の電荷のバランスを維持する。
【0004】
玩具、リモートコントロール、オーディオ装置、懐中電灯、デジタルカメラおよび写真撮影周辺装置、コンピューターゲーム、歯ブラシ、ラジオ、ならびに時計などの現代の電子デバイスに電力を供給するのにより適した電池を製造するニーズが高まっている。これらのニーズを満たすために、電池は、高充填量のアノード活物質およびカソード活物質を含むことにより、用量を増大し、有効寿命を延ばし得る。しかしながら、電池は、サイズが、電池サイズAA、AAA、AAAA、C、およびDなど、共通でもあるため、外形寸法が固定され、内部容積が制限されている。従って、性能が優れた電池を得るために活物質の充填量だけを増やす能力には限界がある。
【0005】
電池に添加剤または添加剤の組み合わせを含めることは、評価されてきた他の設計特性である。例えば、界面活性剤などの添加剤は、例えば電池の放電性能を高めるように、電池に含められてきた。しかしながら、電池に添加剤を含めることには、問題がないわけではない。電池の電解質中での添加剤の溶解性が低いので、電池の放電性能を高めるために、かなり高い重量パーセントで添加剤を加えることがある。添加剤は、電解質の表面張力と粘性を高め、カソードの固体構造中に電解質が拡散することを妨げ得る。さらに、添加剤は、電解質のイオン導伝率を低下させるなど、電解質のバルク特性に好ましくない変化を与え得る。さらに、添加剤は、カソード活物質の表面上で吸収することにより、放電時の電池の駆動(running)電位を下げ得る。
【0006】
強アルカリ性電解質溶液を含む電解質溶液中で溶解性が高く、電解質の表面張力を低減し、カソード中への電解質の取り込みを改善し、電池の電解質中での物質移動を改善する、電池のカソード中で使用するための少なくとも1種の添加剤を提供するニーズが存在している。少なくとも1種のこのような添加剤を含む電池は、電源能力および有効寿命を含む電池の放電性能全体が高められていることを示すであろう。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態において、本発明は、カソードに関する。カソードは、電気化学的に活性なカソード材料および少なくとも1種のカソード添加剤を含む。少なくとも1種のカソード添加剤は、頭部基および少なくとも1つの炭化水素尾部基を含む。頭部基は、第2のp元素原子と結合している少なくとも1つのp元素原子を含む。少なくとも1つのp元素原子は、電気陰性度を有し、第2のp元素原子は、電気陰性度を有す。少なくとも1つのp元素原子の電気陰性度は、第2のp元素原子の電気陰性度とは異なる。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、電池に関する。電池は、ハウジング、アノード、カソード、アノードとカソードの間のセパレータ、および電解質を含む。カソードは、電気化学的に活性なカソード材料および少なくとも1種のカソード添加剤を含む。少なくとも1種のカソード添加剤は、頭部基および少なくとも1つの炭化水素尾部基を含む。頭部基は、第2のp元素原子と結合している少なくとも1つのp元素原子を含む。少なくとも1つのp元素原子は、電気陰性度を有し、第2のp元素原子は、電気陰性度を有す。少なくとも1つのp元素原子の電気陰性度は、第2のp元素原子の電気陰性度とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書は、本発明を形成するものとしてみなされる、主題を具体的に提示し明瞭に主張する特許請求の範囲で締めくくるが、添付の図面と合わせられる以下の説明から本発明をより良く理解することができると考えられる。
【0010】
図1図1は、本発明のアルカリ一次電池の横断面である。
図2図2は、電圧表示器を含む本発明のアルカリ一次電池の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
電気化学セルまたは電池は、一次または二次であり得る。一次電池は、例えば消耗するまで、一度だけ放電して、その後廃棄されるように意図されている。一次電池は、例えばDavid Linden, Handbook of Batteries (McGraw−Hill, 4th ed. 2011)に記載されている。二次電池は、再充電されるように意図されている。二次電池は、何度も、例えば、50回、100回、またはそれ以上を超えて、放電および再充電され得る。二次電池は、例えばDavid Linden, Handbook of Batteries (McGraw−Hill, 4th ed. 2011)に記載されている。従って、電池は様々な電対と電解質の組み合わせを含み得る。本明細書で与えられる説明と例は、概して、一次アルカリ電気化学セルまたは電池に関するものであるが、本発明は、水系または非水系の一次電池と二次電池の両方に適用され得ることが理解されるべきである。従って、水系または非水系の一次電池と二次電池の両方が、本出願の範囲内であり、本発明はあらゆる特定の実施形態に限定されない。
【0012】
図1を参照すると、カソード12、アノード14、セパレータ16、およびハウジング18を含む一次アルカリ電気化学セルまたは電池10が示されている。電池10は、集電体20、シール22、およびエンドキャップ24も含む。エンドキャップ24は、電池10の負端子として機能する。セルの正端子として機能する正極ピップ(positive pip)26は、電池10のエンドキャップ24とは反対の端にある。電解質溶液は、電池10全体に分散している。カソード12、アノード14、セパレータ16、電解質、集電体20、およびシール22は、ハウジング18内に含まれている。電池10は、例えば、AA、AAA、AAAA、C、またはDアルカリ電池であり得る。
【0013】
ハウジング18は、アルカリ一次電池で一般に使用されている粒来型の任意のハウジングであり得、例えば冷延鋼板またはニッケルめっきを施した冷延鋼板といった任意の適当な材料で作られていることができる。ハウジング18は、円筒形状であっても良く、または任意のその他の適当な非円筒形状、例えば、長方形または四角形などの少なくとも2つの平行板を含む形状といった角柱形状であっても良い。例えば、ハウジング18は、冷延鋼板またはニッケルめっき鋼板などの基材のシートから深絞り加工されていても良い。例えば、ハウジング18は、円筒形状に絞り加工されていても良い。完成したハウジング18は、少なくとも1つの開口端を有しても良い。完成したハウジング18は、閉端および開口端とそれらの間の側壁を有しても良い。ハウジング18の内側側壁は、ハウジング18の内側側壁と例えばカソード12との間の電気接触抵抗が小さくなる材料で処理されていても良い。ハウジング18の内側側壁とカソード12の間の接触抵抗を減少させるように、ハウジング18の内壁は、例えばニッケル、コバルトでメッキされていてもよく、および/または、炭素を添加した塗料を塗布されていても良い。
【0014】
カソード12は、1種以上の電気化学的に活性なカソード材料を含む。電気化学的に活性なカソード材料は、酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、ハイパワー電解二酸化マンガン(HP EMD)、ラムダ二酸化マンガン、ガンマ二酸化マンガン、ベータ二酸化マンガン、およびそれらの混合物を含み得る。その他の電気化学的に活性なカソード材料は、酸化銀、酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、ヨウ素酸銅などの銅塩、酸化ビスマス、高原子価のニッケル化合物、高原子価の鉄化合物、酸素、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定はされない。酸化ニッケルは、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたオキシ水酸化ニッケル、脱リチウム化層状リチウムニッケル酸化物、部分的脱リチウム化層状酸化ニッケル、およびそれらの混合物を含み得る。水酸化ニッケルまたはオキシ水酸化ニッケルは、ベータオキシ水酸化ニッケル、ガンマオキシ水酸化ニッケル、および/またはベータオキシ水酸化ニッケルおよび/またはガンマオキシ水酸化ニッケルの連晶を含み得る。オキシ水酸化コバルトでコーティングされたオキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたベータオキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたガンマオキシ水酸化ニッケル、および/またはベータオキシ水酸化ニッケルおよびガンマオキシ水酸化ニッケルのオキシ水酸化コバルトでコーティングされた連晶を含み得る。高原子価のニッケル化合物は、例えば、四価のニッケルを含み得る。高原子価の鉄化合物は、例えば、六価の鉄を含み得る。
【0015】
カソード12は、炭素粒子などの導電性添加剤、およびバインダーを含み得る。炭素粒子をカソード中に含めて、電子がカソードを貫流するようにする。炭素粒子は、膨張黒鉛および天然黒鉛などの黒鉛、グラフェン、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、およびそれらの混合物であっても良い。カソード中の炭素粒子の量は、比較的少ないことが好ましく、例えば、約10%未満、約7.0%未満、または約3.75%未満が好ましく、または、約2.0%〜約3.5%など約3.5%未満でも好ましい。炭素レベルが低いことは、カソード12の容積を増加させることもなく、(セル内で気体が生成するときに内圧が上昇しすぎることを防ぐため、特定のレベルで、または特定のレベル以上で維持されなければならない)完成した電池10の空隙容量を減少させることもなく、カソード12中に電気化学的に活性な材料を高充填で含めることを可能にする。適当な膨張黒鉛は、例えば、ティムカルカーボンアンドグラファイト(TIMCAL Carbon & Graphite)(スイスのボディオ(Bodio))から入手可能なBNB−90グラファイトであり得る。
【0016】
カソード12で使用しても良いバインダーの例として、ポリエチレン、ポリアクリル酸、またはPVDFもしくはPTFEなどのフッ化炭素樹脂が挙げられる。ポリエチレンバインダーの一例は、商標名COATHYLENE HA−1681(ヘキスト(Hoechst)またはデュポン(DuPont)から入手可能)で売られている。その他のカソード添加剤の例は、例えば、米国特許第5,698,315号、第5,919,598号、第5,997,775号、および第7,351,499号に記載されている。
【0017】
カソード12中の電気化学的に活性なカソード材料の量は、カソード充填量と呼ばれ得る。カソード12の充填量は、電池10中で使用される電気化学的に活性なカソード材料、および電池10のセルサイズに依存して変わり得る。例えば、電気化学的に活性なカソード材料であるEMDを有するAA電池は、カソード充填量が少なくとも約9.0グラムのEMDであっても良い。カソード充填量は、例えば、少なくとも約9.5グラムのEMDであっても良い。カソード充填量は、例えば、約9.7グラム〜約11.5グラムのEMDであっても良い。カソード充填量は、約9.7グラム〜約11.0グラムのEMDであっても良い。カソード充填量は、約9.8グラム〜約11.2グラムのEMDであっても良い。カソード充填量は、約9.9グラム〜約11.5グラムのEMDであっても良い。カソード充填量は、約10.4グラム〜約11.5グラムのEMDであっても良い。AAA電池では、カソード充填量は、約4.0グラム〜約6.0グラムのEMDであっても良い。AAAA電池では、カソード充填量は、約2.0グラム〜約3.0グラムのEMDであっても良い。C電池では、カソード充填量は、約25.0グラム〜約29.0グラムのEMDであっても良い。D電池では、カソード充填量は、約54.0グラム〜約70.0グラムのEMDであっても良い。
【0018】
電気化学的に活性なカソード材料、炭素粒子、およびバインダーなどのカソード成分を、水酸化カリウム水成電解質などの液体と組み合わせ、混合し、電池製品の製造に使用するために圧縮してペレットにしても良い。最適なカソードペレット加工のために、カソード材料は、水分レベルが約2.5%〜約5%の範囲であることが一般的に好ましく、約2.8%〜約4.6%の範囲であることがより好ましい。ペレットを電池製造プロセスでハウジング内に配置した後、通常再び圧縮して均一なカソードを形成する。
【0019】
カソード12は非膨張黒鉛を実質的に含まないことが一般的に好ましい。非膨張黒鉛粒子は、カソードペレット形成装置に潤滑性を与え得る。しかしながら、非膨張黒鉛は、膨張黒鉛より導電性が著しく低く、膨張黒鉛を含むカソードと同じカソード導伝率を得るために、よりたくさんの非膨張黒鉛を使用する必要があり得る。好ましくはないが、カソードは、低いレベルの非膨張黒鉛を含み得るが、このことにより、特定のカソード導電率を維持する限りは、黒鉛濃度を低減できないであろう。
【0020】
カソード12は、カソード製造時に計算され得る多孔度を有し得る。電池10中のカソード12の多孔度は、カソードの電解質湿潤と電池の放電に伴うカソードの膨張にとりわけ起因して経時的に変化するので、カソードの多孔度は、製造時に、例えば、カソードペレット加工後に計算し得る。カソードの多孔度は、以下のように計算し得る。各固形カソード成分の真の密度は、Lange’s Handbook of Chemistry (16th ed. 2005)などの参考書から引用され得る。各カソード成分の固形分重量は、電池設計により規定されている。各カソード成分の固形分重量を各カソード成分の真の密度で割ることにより、カソード固形分容積を求め得る。電池中でカソードが占める容積もまた電池設計により規定されている。カソードが占める容積は、コンピューター援用設計(CAD)プログラムにより計算され得る。多孔度は、以下の式により求め得る。
カソード多孔度=[1−(カソード固形分容積÷カソード容積)]×100
【0021】
例えば、AA電池のカソード12は、約10.90グラムの二酸化マンガンおよび約0.401グラムの黒鉛(BNB−90)をカソード12中に固形分として含み得る。二酸化マンガンおよび黒鉛の真の密度は、それぞれ、約4,45g/cm、および約2.15g/cmであり得る。固形分の重量をそれぞれの真の密度で割ることにより、二酸化マンガンが占める容積が約2.45cm、黒鉛が占める容積が約0.19cmと求められる。全固形分容積は、約2.64cmである。設計者は、カソード12が占める容積を約3.473cmに選択できる。上記式[1−(2.64cm÷3.473cm)]によりカソード多孔度を計算することにより、カソード多孔度は約0.24または24%と求められる。カソード多孔度は、約15%〜約45%であり得、約22%〜約35%であることが好ましい。
【0022】
アノード14は、少なくとも1種の電気化学的に活性なアノード材料、ゲル化剤、および有機および/または無機ガス発生防止剤などの少量のアノード添加剤から形成され得る。電気化学的に活性なアノード材料は、亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、カドミウム、鉄、それらの合金、およびそれらの混合物を含み得る。
【0023】
アノード14中の電気化学的に活性なアノード材料の量は、アノード充填量と呼ばれ得る。アノード14の充填量は、電池中で使用される電気化学的に活性なアノード材料、および電池のセルサイズに依存して変わり得る。例えば、電気化学的に活性なアノード材料である亜鉛を有するAA電池は、アノード充填量が少なくとも約3.3グラムの亜鉛であっても良い。アノード充填量は、例えば、少なくとも約4.0グラム、約4.3グラム、約4.6グラム、約5.0グラム、または約5.5グラムの亜鉛であっても良い。アノード充填量は、約4.0グラム〜約5.0グラムの亜鉛であっても良い。アノード充填量は、約4.2グラム〜約5.2グラムの亜鉛であっても良い。例えば、電気化学的に活性なアノード材料である亜鉛を有するAAA電池は、アノード充填量が少なくとも約1.9グラムの亜鉛であっても良い。例えば、アノード充填量は、約2.0グラム〜約2.1グラムの亜鉛であっても良い。例えば、電気化学的に活性なアノード材料である亜鉛を有するAAAA電池は、アノード充填量が少なくとも約0.6グラムの亜鉛であっても良い。例えば、アノード充填量は、約0.7〜約1.0グラムの亜鉛であっても良い。例えば、電気化学的に活性なアノード材料である亜鉛を有するC電池は、アノード充填量が少なくとも約9.5グラムの亜鉛であっても良い。例えば、アノード充填量は、約10.0〜約15.0グラムの亜鉛であっても良い。例えば、電気化学的に活性なアノード材料である亜鉛を有するD電池は、アノード充填量が少なくとも約19.5グラムの亜鉛であっても良い。例えば、アノード充填量は、約20.0〜約30.0グラムの亜鉛であっても良い。
【0024】
使用しても良いゲル化剤の例として、ポリアクリル酸、カーボポール(Carbopol)などのジビニルグリコールのポリアルケニルエーテルで架橋されたポリアクリル酸、グラフト化デンプン物質、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、またはそれらの混合物が挙げられる。アノードは、ビスマス、スズ、またはインジウムなどの無機物を含み得るガス発生防止剤を含んでも良い。ガス発生防止剤は、リン酸エステルなどの有機化合物、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤も含み得る。
【0025】
電解質は、カソード12、アノード14、およびセパレータ16中に分散していても良い。電解質は、水溶液中でイオン導電性の成分を含む。イオン導電性成分は、水酸化物であっても良い。水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、およびそれらの混合物であっても良い。イオン導電性成分は、塩も含み得る。塩は、例えば、塩化亜鉛、塩化アンモニウム、過塩素酸マグネシウム、臭化マグネシウム、およびそれらの混合物であっても良い。イオン導電性成分の濃度は、電池設計と電池の所望の性能に応じて選択され得る。アルカリ性水成電解質は、水溶液中でイオン導電性成分として水酸化物を含み得る。電解質中の水酸化物の濃度は、電池10中の全電解質の重量基準で約0.25〜約0.40、または約25%〜約40%であっても良い。例えば、電解質の水酸化物の濃度は、電池10中の全電解質の重量基準で約0.25〜約0.32、または約25%〜約32%であっても良い。アルカリ性水成電解質は、電解質中に溶解した酸化亜鉛(ZnO)も含み得る。ZnOは、アノード中で亜鉛腐食を抑制するように機能し得る。電解質中に含まれるZnOの濃度は、電池10中の全電解質の約3重量%未満であっても良い。ZnOの濃度は、例えば、電池10中の全電解質の約1重量%〜約3重量%であっても良い。
【0026】
AAアルカリ性電池中のアルカリ性水成電解質の全重量は、例えば、約3.0グラム〜約4.0グラムであっても良い。AA電池中の電解質の全重量は、例えば、約3.3グラム〜約3.8グラムであっても良い。AA電池中の電解質の全重量は、例えば、約3.4グラム〜約3.65グラムであっても良い。AAAアルカリ電池中のアルカリ性水成電解質の全重量は、例えば、約1.0グラム〜約2.0グラムであっても良い。AAA電池中の電解質の全重量は、例えば、約1.2グラム〜約1.8グラムであっても良い。AAA電池中の電解質の全重量は、例えば、約1.4グラム〜約1.6グラムであっても良い。
【0027】
カソード12は、少なくとも1種のカソード添加剤を含み得る。少なくとも1種のカソード添加剤は、4〜10個の炭素原子を有する炭化水素尾部基に結合している頭部基を有する化合物であり得る。頭部基は、第2のp元素原子と結合している少なくとも1つのp元素原子を含み得る。少なくとも1つのp元素原子は、電気陰性度を有し、第2のp元素原子は、電気陰性度を有す。少なくとも1つのp元素原子の電気陰性度は、第2のp元素原子の電気陰性度とは異なり得る。p元素は、p軌道に少なくとも1つの電子を有する元素であり、例えば、ホウ素(B)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、炭素(C)、および酸素(O)である。少なくとも1種のカソード添加剤は、ブレンステッド−ローリー酸である化合物であっても良い。少なくとも1種のカソード添加剤は、ルイス酸である化合物であっても良い。
【0028】
少なくとも1種のカソード添加剤は、4〜10個の炭素原子を有する炭化水素尾部基(疎水性基)に結合しているルイス酸頭部基(親水性基)を有する化合物であっても良い。本明細書で使用される場合、「ルイス酸」頭部基は、(1)完全に典型的なルイス酸である、および/または(2)電子不足に起因するルイス部位を含む。酸塩基反応のルイス理論において、塩基は電子対を与え、酸は電子対を受け取る。従って、ルイス酸は、非結合電子対を受け取ることができるH+イオンなどのあらゆる実在物である。言い換えると、完全に典型的なルイス酸は、電子対受容体である。一部の分子は、ルイス部位と呼ばれる電子不足結合を有する。分子の価電子が少なすぎるときにルイス部位が生じて安定なオクテット構造を形成する。電子不足の化合物の例は、ボランであり、ボランは三中心二電子結合を有する化合物としてよく記載されている。このような種はルイス塩基(すなわち、孤立電子対源)と容易に反応し、安定な付加物が生じる。
【0029】
任意の適当な炭化水素尾部基がここで使用され得る(例えば、アルカン炭化水素)。炭化水素尾部基は、4〜10個の炭素原子を含んでも良い。炭化水素尾部基は、4〜8個の炭素原子または4〜6個の炭素原子を含んでも良い。炭化水素尾部基は、アルキル基、またはアリール基であり得る。アルキル基は、直鎖状または分岐状であっても良い。少なくとも1種のカソード添加剤のアルキル鎖は、ジアルキル、イソアルキル、アルケン、またはそれらの任意の組み合わせであっても良い。炭化水素尾部基は、ペルフルオロアルキル基などのフルオロカーボン基であっても良い。炭化水素尾部基は、植物由来または石油系油由来であっても良い。
【0030】
電気陰性度は、分子内で電子を引きつける原子の能力である。(Linus Pauling, “The Nature of the Chemical Bond,” Third Edition (1960), p. 88)ポーリングの電気陰性度は、M. James and M.P. Lord in Macmillan’s Chemical and Physical Data, Macmillan, London, UK, 1992などの一般的な科学の参考書で見られ、本明細書で論じられるポーリングの電気陰性度は、この参考文献に基づいている。頭部基の第1の原子は、ポーリングの電気陰性度が2〜4の原子であっても良い。ポーリングの電気陰性度が2〜4の原子は、B、N、P、S、Cl、As、Se、Br、Te、I、Po、At、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、およびAuからなる群から選択され得る。あるいは、ポーリングの電気陰性度が2〜4の原子は、B、N、P、S、Cl、Se、Br、およびIからなる群から選択され得る。
【0031】
ルイス酸頭部基の第1の原子と尾部基の最も近い主鎖原子との間の化学結合は、濃アルカリ溶液中で非加水分解性である。この結合は、(供与共有結合または配位結合としても知られる)双極性結合(dipolar bond)であり、2つの電子が同じ原子に由来する二中心二電子共有結合の一種である。(この場合では尾部基からの)ルイス塩基がルイス酸(頭部基)に電子対を与えるときに、双極性結合(dipolar bond)が形成される。対照的に、標準的な共有結合の各原子は、電子1つに寄与する。
【0032】
少なくとも1種のカソード添加剤は、ボロン酸であっても良い。ボロン酸は、例えば、以下の構造(1)により表され得る。構造(1)は、ホウ素(B)を含むルイス酸頭部基と、4〜8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基Rとを含む。ホウ素は、2つのヒドロキシル(OH)化合物と結合していても良い。また、構造(1)のホウ素−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(ホウ素)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(ホウ素)の電気陰性度は、第2のp元素原子(酸素)の電気陰性度とは異なる。ボロン酸の非限定的な例として、ブチルボロン酸、ペンチルボロン酸、ヘキシルボロン酸、およびイソブチルボロン酸が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
少なくとも1種のカソード添加剤は、アミンオキシドであっても良い。アミンオキシドは、例えば、以下の構造(2)により表され得る。構造(2)は、水素原子R1およびR3と結合している窒素(N)と、4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基R2とを含む。また、構造(2)の窒素−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(窒素)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(窒素)の電気陰性度は、第2のp元素原子(ホウ素)の電気陰性度とは異なる。アミンオキシドの非限定的な例として、オクチルジメチルアミンオキシド、およびN,N−ジメチルノナン−1−アミンオキシドが挙げられる。
【0035】
【化2】
【0036】
少なくとも1種のカソード添加剤は、ホスフィンオキシドであっても良い。ホスフィンオキシドは、例えば、以下の構造(3)により表され得る。構造(3)は、酸素(O)原子と結合しているリン(P)原子、水素原子R1およびR3、ならびに4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基R2を含む。また、構造(3)のリン−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(リン)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(リン)の電気陰性度は、第2のp元素原子(ホウ素)の電気陰性度とは異なる。ホスフィンオキシドの非限定的な例として、ヘキシルジメチルホスフィンオキシド、オクチルジメチルホスフィンオキシド、およびデシルジメチルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0037】
【化3】
【0038】
少なくとも1種のカソード添加剤は、スルホン酸であっても良い。スルホン酸は、例えば、以下の構造(4)により表され得る。構造(4)は、2つの酸素(O)原子と結合している硫黄(S)原子、ヒドロキシル(OH)化合物、および4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基Rを含む。S(=O)2OH基は、水酸化スルホニルである。また、構造(4)の硫黄−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の電気陰性度は、第2のp元素原子(酸素)の電気陰性度とは異なる。スルホン酸の非限定的な例として、オクチルスルホン酸、およびデシルスルホン酸が挙げられる。
【0039】
【化4】
【0040】
少なくとも1種のカソード添加剤は、スルホキシドであっても良い。スルホキシドは、例えば、以下の構造(5)により表され得る。構造(5)は、酸素(O)原子と結合している硫黄(S)原子、ならびに4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基RおよびR’を含む。S(=O)基は、スルフィニルオキシドである。また、構造(5)の硫黄−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の電気陰性度は、第2のp元素原子(酸素)の電気陰性度とは異なる。スルホキシドの非限定的な例として、ブチルメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、およびメチルペンチルスルホキシドが挙げられる。
【0041】
【化5】
【0042】
少なくとも1種のカソード添加剤は、スルホンであっても良い。スルホンは、例えば、以下の構造(6)により表され得る。構造(6)は、2つの酸素(O)原子と結合している硫黄(S)原子、ならびに4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基RおよびR’を含む。また、構造(6)の硫黄−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の電気陰性度は、第2のp元素原子(酸素)の電気陰性度とは異なる。スルホンの非限定的な例として、ブチルメチルスルホン、ジブチルスルホン、およびメチルペンチルスルホンが挙げられる。
【0043】
【化6】
【0044】
少なくとも1種のカソード添加剤は、スルタイン(sultaine)であっても良い。スルタイン(sultaine)は、例えば、以下の構造(7)により表され得る。構造(7)は、3つの酸素(O)原子と結合している硫黄(S)原子、および4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基R’を含む。構造(7)は、4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖またはアリール鎖であり得る炭化水素尾部基R1と結合している窒素(N)原子も含む。また、構造(7)の硫黄−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(硫黄)の電気陰性度は、第2のp元素原子(酸素)の電気陰性度とは異なる。スルタイン(sultaine)の非限定的な例として、アルキルヒドロキシプロピルスルタイン(sultaine)が挙げられる。
【0045】
【化7】
【0046】
少なくとも1種のカソード添加剤は、カルボン酸であっても良い。カルボン酸は、例えば、以下の構造(8)により表され得る。構造(8)は、酸素(O)原子と結合している炭素(C)原子、ヒドロキシル(OH)化合物、および一価の官能基であり得る炭化水素尾部基Rを含む。また、構造(8)の炭素−酸素頭部基は、第2のp元素原子(酸素)と結合している少なくとも1つのp元素原子(炭素)の一例である。少なくとも1つのp元素原子(炭素)の電気陰性度は、第2のp元素原子(酸素)の電気陰性度とは異なる。カルボン酸の非限定的な例として、ヘキシルカルボン酸、およびオクチルカルボン酸が挙げられる。
【0047】
【化8】
【0048】
2種以上のカソード添加剤の混合物もカソード12中に含まれていても良い。2種のカソード添加剤の重量比は、例えば、1対1、2対1、または3対1であっても良い。例えば、オクチルジメチルアミンオキシドとボロン酸は、両方ともカソード12に加えられても良い。オクチルジメチルアミンオキシド対ボロン酸の重量比は、例えば、3対1であっても良い。
【0049】
電池設計者は、空隙容量などの容積の制約を考慮に入れて、電池10中の電気化学的に活性な材料の量、または電気化学反応に活発に寄与する材料の量の最大化を試みる。少なくとも1種のカソード添加剤は、電池のハウジング中の活物質に利用可能な容積を占有するであろう。カソード12中で使用される少なくとも1種のカソード添加剤の量は、電池の組み立て後または放電時に電池10に相乗効果を与えるのに十分でなければならない。しかしながら、カソード添加剤を、二酸化マンガンなどの活物質の含有に好ましくない影響を与えるレベルでカソード12中に含めることはできない。設計の検討事項を考慮すると、カソード添加剤は、濃度がカソード12の重量の約0.15重量パーセント未満であり得る。例えば、少なくとも1種のカソード添加剤の濃度は、カソード12の重量の約0.01重量パーセント〜カソード12の重量の約0.12重量パーセントであっても良い。少なくとも1種のカソード添加剤の濃度は、カソード12の重量の約0.04重量パーセント〜カソード12の重量の約0.06重量パーセントであっても良い。
【0050】
上述したように、カソード活物質、カソード導電助剤、およびバインダーを含み得るカソード12は、多孔性構造であっても良い。電解質は、電池が効率的に放電するように、カソード12の多孔性構造に効率的に浸透できなければならない。電解質は、カソード12の固体成分に接触し、固体/液体の境界を形成しなければならない。カソード12の多孔性構造に効率的に浸透する電解質の能力に影響を与え得る要素は、電解質の表面張力である。約70mN/mを超える表面張力など高すぎる表面張力を有する電解質は、カソード12の多孔性構造に十分に浸透して電気化学的に活性なカソード材料の効率的な放電をもたらすことができないことがある。カソード12の多孔性構造中に拡散する電解質の能力は、濡れ性と呼ばれることがある。カソード構造中への電解質の移動を促進しにくいカソードの多孔性構造は、濡れ性が低いと言われる。逆に、カソード構造中への電解質の移動を促進しやすい多孔性構造は、濡れ得る(wettable)と言われる。
【0051】
理論に拘束されることを望むものではないが、電解質がカソード12の多孔性構造中に拡散するように、カソード12中に組み込まれたカソード添加剤は、様々な電池の放電条件下、および様々な電池放電状態下で電解質の表面張力を低め得る。アルカリ一次電池中で起こる反応を論じて、この点をさらに説明することが有益である。
【0052】
電気化学的に活性なカソード材料は、還元反応を経る。例えば、二酸化マンガン(MnO)が、カソード12中の少なくとも1種の電気化学的に活性な材料であっても良い。二酸化マンガンは、電池10の放電中に一連の2つの還元反応を経得る。カソード還元反応は、以下の反応IおよびIIにより表され得る。二酸化マンガンは、従来のように、反応I中でMnOとして示されているが、二酸化マンガンは不定比性であり、二酸化マンガンの実際の化学式は、例えばおよそMnO1.96であることが当業者によく理解されている。従って、この反応に関与する電子の実際の数は、およそ0.92である。反応Iは、第一電子放出ステップ(1−electron discharge step)と一般に呼ばれる。反応IIは、第二電子放出ステップ(2nd−electron discharge step)と一般に呼ばれる。
MnO+HO+e→MnOOH+OH (I)
3MnOOH+e→Mn+OH+HO (II)
【0053】
反応Iは、電池放電の最初の段階の間に通常起きる。反応IIは、電池10の対応する低い開路電圧から明らかであるように電池10が顕著な程度に放電されているときに起きる。反応IIは、反応Iと比べて、電池10の放電能力全体への寄与が相対的に小さい。
【0054】
電気化学的に活性なアノード材料は、酸化反応を経る。例えば、亜鉛が、アノード14中の少なくとも1種の電気化学的に活性な材料であっても良い。亜鉛は、電池10の放電中に一連の3つのアノード反応を経得る。アノード反応は、以下の反応III、IV、およびVにより表され得る。
Zn+4OH→Zn(OH)2−+2e (III)
Zn+2OH→Zn(OH)+2e (IV)
Zn(OH)→ZnO+HO (V)
【0055】
反応IIIは、放電の最初の段階の間に通常起きる。電池10の放電にしたがって、電池10のアノード14中の電解質は反応IIIにより生じている亜鉛酸塩[Zn(OH)2−]で飽和するようになる。反応IVは、電解質中での亜鉛酸塩の飽和時点の辺りで始まり得る。電池10が放電を続けると、アノード14中で利用可能な水が枯渇するようになる。反応Vは、水の枯渇時点の辺りで始まり得る。結果的に、水酸化亜鉛[Zn(OH)]は、脱水して酸化亜鉛(ZnO)となり得る。
【0056】
反応Iでは、二酸化マンガンの還元が、水(HO)を消費する。水の源は、電池10中の電解質である。ヒドロキシルイオン(OH)の放出は、還元反応からもたらされ得る。カソード12中でヒドロキシルイオンの濃度が上昇すると、ヒドロキシルイオンは、アノード14へ拡散するようになる。ヒドロキシルイオンは、アノード14で反応IIIまたは反応IVを介して亜鉛(Zn)と反応して、亜鉛酸塩[Zn(OH)2−]または水酸化亜鉛[Zn(OH)]のいずれかを形成し得る。
【0057】
電池10中で起きる反応全体は、第一電子放出ステップ(1−electron discharge step)または第二電子放出ステップ(2nd−electron step discharge)がカソード12中で起きているかどうかに依存し得る。第一電子放出ステップ(1−electron discharge step)の間、反応全体は、以下の反応VIにより表され得る。第二電子放出ステップ(2nd−electron discharge step)の間、反応全体は、以下の反応VIIにより表され得る。
2MnO+Zn+2HO→2MnOOH+Zn(OH) (VI)
3MnO+2Zn→Mn+2ZnO (VII)
【0058】
反応全体を起こさせるには、十分な量の水が存在しなければならないことが、反応IおよびVIから分かる。アルカリ性水成電解質は、放電前の電池10中の水の源である。放電前の電解質中の水酸化物の濃度は、反応IおよびVIを支持するのに十分でなければならない。また、電解質中の水酸化物の濃度は、電池10の放電に伴い変化し得る。カソード12の多孔性構造中などの電解質の物質移動は、動的であり、電池10の放電率などの様々な要因に依存している。
【0059】
カソード12の放電中に生じるヒドロキシルイオンが電解質溶液に入り、濃度勾配を生み、電池10のアノード14へ拡散し移動するように、電解質はカソード12の二酸化マンガンと接触していなければならない。放電前に、電解質の表面張力は、電解質がカソード12の多孔性構造に効果的に浸透できるような表面張力であり得る。しかしながら、電解質の表面張力は、電池10の放電中に変化し得る。放電中の含水量またはヒドロキシルイオン濃度の変化は、例えば、電解質の表面張力を増加させ得る。電解質は、例えば、カソード12の多孔性構造を通って移動することが困難であり得る。電気化学的に活性なカソード材料の表面は、十分に濡れていないことがある。アノード14へと電解質中を拡散および/または移動するヒドロキシルイオンの能力は、例えば、低減され得る。放電時の電池10の性能低下がもたらされ得る。
【0060】
少なくとも1種のカソード添加剤は、例えば含水水酸化カリウムなどの共アルカリ性電解質といった電解質中で溶解性であり得る。電解質中で高溶解性の少なくとも1種のカソード添加剤は、電解質がカソード12の固形成分と接触して直ぐに電解質に溶解可能であり得る。結果的に、電解質の表面張力は、より迅速に低下させられ得、電解質は、より素早く効率的にカソード固形分を濡らし得、放電性能の向上がもたらされ得る。少なくとも1種のカソード添加剤は、EMDなどの酸化剤およびその他の電気化学的に活性なカソード材料の存在下でアルカリ性溶液中で安定であり得る。酸化剤の存在下で強アルカリ性溶液中で安定な添加剤は、より長い時間に亘って電解質の表面張力を低下させる能力を保持し得る。
【0061】
水酸化カリウム水成電解質などの液体の動的表面張力は、張力計を使用して測定し得る。張力計は泡圧法により液体の動的表面張力を測定し得る。泡圧法は、空気などの気体を分析する液体に注入することを含む。気体は、液体中に浸された細管を通って液体に入る。気体と液体の間の圧力差が、いくつかの気体流速で記録される。気泡形成に必要な各流速での圧力の差は、以下に再現されるように、ヤング−ラプラスの式により液体の表面張力に比例する。
【0062】
【数1】
【0063】
式中、Δpは、立方メートル当りのニュートン(N/m)で表した、液体中での気泡の内側の圧力と気泡の外側の圧力との間の圧力差であり、dは、メートル(m)で表した細管の直径であり、σは、メートル当りのニュートン(N/m)で表した液体の表面張力である。液体の動的表面張力は、各流速についてヤング−ラプラスの式を使用して、各気体流について計算される。気泡寿命は、各気泡の形成の間に経過した時間に等しく、各流速について記録される。計算した動的表面張力値は、気泡寿命に対してプロットされる。
【0064】
液体の動的表面張力を測定する方法は、一般に以下のステップ:(1)張力計の校正;(2)張力計の細管の洗浄;および(3)液体の動的表面張力と気泡寿命の張力計を用いた測定を含み得る。液体の動的表面張力の張力計を用いた測定方法は、例えば、米国材料試験協会規格ASTM D3825−09に一般に従い得る。
【0065】
SITA Messetechnik GmbH(ドイツのドレスデン)より入手可能なSITA science line t60張力計を使用して、電解質溶液などの液体の動的表面張力を測定し得る。SITA Messetechnikの指示書に従って、張力計を校正モード(Calibration Mode)にして、t60張力計を校正し得る。SITA science line t60 Manual, p. 4, Section 12.1を参照されたい。50mLビーカーなどのガラス容器に入れた約25mLの脱イオン化した(DI)水中に張力計の細管の先端を配置することによって校正が完了する。細管の先端は、張力計の温度プローブにあるマークにより示されている製造業者が推奨する深さまで溶液中に延びているべきである。DI水の温度は、約20℃〜約30℃であるべきである。
【0066】
次に、SITA Messetechnikの指示書に従って、張力計を洗浄モード(Cleaning Mode)にして、t60張力計を洗浄し得る。Id., p. 20, Section 12.4を参照されたい。まず、細管をDI水でリンスし得る。50mLビーカーなどのガラス容器に入れた約25mLの脱イオン化した(DI)水中に張力計の細管の先端を配置することによって洗浄が完了する。細管の先端は、張力計の温度プローブにあるマークにより示されている製造業者が推奨する深さまで溶液中に延びているべきである。DI水の温度は、約20℃〜約30℃であるべきである。空気は、約2分間で張力計の細管を通って直ぐに気泡となる。
【0067】
次に、t60張力計を使用して、分析する溶液の動的表面張力を得ることができる。SITA Messetechnikの指示書に従って、張力計を自動測定モード(Auto-Measurement Mode)にして、データを得ることができる。Id., p. 18, Section 12.3を参照されたい。50mLビーカーなどのガラス容器に入れた約25mLの溶液中に張力計の細管の先端を配置することによって自動測定が完了する。細管の先端は、張力計の温度プローブにあるマークにより示されている製造業者が推奨する深さまで溶液中に延びているべきである。分析する溶液の温度は、約20℃〜約30℃であるべきである。自動測定は、約三十(30)ミリ秒〜約十(10)秒の気泡寿命の範囲をカバーし得る。次に、気泡寿命の範囲に亘って分析する溶液の動的表面張力が記録され得る。
【0068】
電解質溶液の動的表面張力は、上記の方法により測定し得る。含水水酸化カリウムなどの電解質の動的表面張力は、例えば、約10秒の気泡寿命で約80mN/m〜約95mN/mであり得る。少なくとも1種のカソード添加剤は、電解質の表面張力を約10秒の気泡寿命で約35mN/m未満に低減し得る。例えば、少なくとも1種のカソード添加剤は、電解質の表面張力を約10mN/m〜約28mN/m、例えば約25mN/mに低減し得る。10秒の気泡時間内に電解質の表面張力を低減する少なくとも1種のカソード添加剤は、中率および低率放電試験下で電池性能を改善し得る。少なくとも1種のカソード添加剤は、放電前および放電中に電解質の表面張力を低下させ得る。
【0069】
含水水酸化カリウムなどの電解質の表面張力は、例えば、約0.1秒の気泡寿命で約80mN/m〜約95mN/mであり得る。少なくとも1種のカソード添加剤は、電解質の表面張力を約0.1秒の気泡寿命で約40mN/m未満に低減し得る。例えば、少なくとも1種のカソード添加剤は、電解質の表面張力を約10mN/m〜約47mN/m、例えば約40mN/mに低減し得る。0.1秒の気泡時間内に電解質の表面張力を低減する少なくとも1種のカソード添加剤は、高率、中率、および低率放電試験下で電池性能を改善し得る。理論に拘束されることを望むものではないが、より短い期間、例えばより短い気泡寿命で電解質の表面張力を低下させるカソード添加剤の能力により、電解質の表面張力を相対的に短い期間で低減し、それに続いて、放電中のカソード12の多孔性構造への電解質の物質移動をより速くすることが可能になり得る。
【0070】
セパレータ16は、電解質で濡れ得る、または濡れている材料を含む。液体と表面の間の接触角が90°未満であるとき、または液体が表面に自発的に広がる傾向があるときに、材料は、液体で濡れていると言われ、この条件の両方が通常共存する。セパレータ16は、織紙、不織紙、または織物を含み得る。セパレータ16は、不織材料の層と組み合わされたセロファンなどの層を含み得る。セパレータ16は、追加の不織材料の層も含み得る。また、セパレータ16は、電池10中にそのまま形成されても良い。例えば、米国特許第6,514,637号が、このようなセパレータ材料、およびセパレータ材料の潜在的に適当な適用方法を開示している。セパレータ材料は薄くても良い。セパレータ16は、例えば、乾燥材料の厚さが、250マイクロメートル(ミクロン)未満であっても良い。セパレータ16は、例えば、乾燥材料の厚さが、100ミクロン未満であっても良い。セパレータ16は乾燥材料の厚さが約70ミクロン〜約90ミクロンであることが好ましく、約70ミクロン〜約75ミクロンであることがより好ましい。セパレータ16は、坪量が40g/m以下である。セパレータ16は、坪量が約15g/m〜約40g/mであることが好ましく、約20g/m〜約30g/mであることがより好ましい。セパレータ16は、透気度を有し得る。セパレータ16は、国際標準化機構(ISO)規格2965に定義されている透気度を有し得る。セパレータ16の透気度は、1kPaで約2000cm/cm〜1kPaで約5000cm/cmであっても良い。セパレータ16の透気度は、1kPaで約3000cm/cm〜1kPaで約4000cm/cmであっても良い。セパレータ16の透気度は、1kPaで約3500cm/cm〜1kPaで約3800cm/cmであっても良い。
【0071】
集電体20は、当業で公知の任意の方法により、特定の電池設計に適する任意の形状へと作製され得る。集電体20は、例えば、爪様形状であっても良い。集電体20は、円柱状本体、および円柱状本体の一端に位置する頭部を有しても良い。集電体20は、亜鉛、銅、黄銅、銀、またはその他の適当な材料などの金属から作られていても良い。集電体20は、スズ、亜鉛、ビスマス、インジウム、または、集電体20と例えばアノード14との間の電気接触抵抗が小さく、気体形成を抑制する能力を呈するその他の適当な材料で所望によりメッキされていても良い。
【0072】
シール22は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタンなどのポリマー、ポリマー複合材料、およびそれらの混合物を所定の寸法を有する形状に射出成形することにより製造され得る。シール22は、例えば、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタン、コポリマー、ならびにそれらの複合材料および混合物から作られていても良い。射出成形法の例として、コールドランナー法とホットランナー法の両方が挙げられる。シール22は、可塑剤、結晶核剤、抗酸化剤、離型剤、潤滑剤、および帯電防止剤などのその他の公知の機能材料を含んでも良い。また、シール22は、シーラントでコーティングされていても良い。シール22は、電池10中で使用前に湿らされていても良い。シール22は、例えば、シール材料に依存して、含水率が約1.0重量パーセント〜約9.0重量パーセントであっても良い。集電体20は、シール22の中へ挿通されていても良い。
【0073】
エンドキャップ24は、それぞれの電池を閉じるのに十分な任意の形状で形成され得る。エンドキャップ24は、例えば、円筒形状または角柱形状であっても良い。エンドキャップ24は、適当な寸法の所望の形状に材料を圧縮することにより形成され得る。エンドキャップ24は、電池10の放電中に電子を伝導し得る任意の適当な材料から作られていても良い。エンドキャップ24は、例えば、ニッケルめっき鋼板またはスズめっき鋼板から作られていても良い。エンドキャップ24は、集電体20と電気的に接続されていても良い。エンドキャップ24は、例えば、集電体20に溶接されることによって、集電体20と電気的に接続しても良い。エンドキャップ24は、電池10中のガス発生事象の間、例えば、孔の破裂をもたらし得る装置内での電池の重放電または転極の間にエンドキャップ24の下で増大され得る気体の圧力を抜くための穴などの1つ以上の開口(図示せず)も含んでもよい。
【0074】
シールされた電池10は、固定された内部容積を有するようになる。カソード12、アノード14、セパレータ16、電解質、集電体20、およびシール22は、電池10がシールされた後、電池10の内部容積のかなりの部分を占めるようになる。しかしながら、電池10の全内部容積は、これらの材料により占められることにはなり得ない。カソードとアノードの半電池反応、例えば反応Iならびに反応III、IV、およびVの生成物は、それぞれの反応の反応物よりも大きな容積を占め得る。例えば、酸化亜鉛(ZnO)は密度が5.607g/cmであり、一方で、亜鉛は密度が7.14g/cmである。従って、1グラムの酸化亜鉛は、1グラムの亜鉛よりもおよそ27%大きなスペースを占める。電池設計者は、通常、放電の前の反応物と放電完了後の生成物により占められる容積を測定して、容積変化を測定し得る。電池設計者は、通常、放電後の電池10中に空隙容量と呼ばれるある程度の非占有容積を選択し得る。非占有容積は、とりわけ、放電後に電池10に働く内部応力を低め、放電後の漏れおよび/または電池が装置内の空隙に詰まるようになる可能性を緩和するのに役立ち得る。
【0075】
ここで図2を参照すると、ラベル34を含む電池10が示されており、ラベル34は、電池10の電圧、容量、充電状態、および/または電力を例えば測定する、ラベル中に組み込まれた表示器またはテスター36を有す。ラベル34は、ラベルの図および文字列を有する透明層または半透明層を有する積層多層フィルムであっても良い。ラベル34は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、およびその他の類似のポリマー材料から作られていても良い。テスター36は、例えば、サーモクロミック表示器またはエレクトロクロミック表示器を含み得る。サーモクロミック電池テスターにおいて、表示器は、ハウジングと電池のエンドキャップとに電気的に接触して配置され得る。消費者は、サーモクロミックテスターに含まれる電気回路中に位置するスイッチを手動で押下することにより表示器を起動させる。スイッチを押下すると、消費者は、エンドキャップを介した電池のアノードを、ハウジングを介した電池のカソードと、サーモクロミックテスターにより接続させたことになる。サーモクロミックテスターは、可変幅を有するため抵抗が長さに応じて変化もする銀導体を含み得る。電流が銀導体を通り抜けるときに、電流は、銀導体を覆っているサーモクロミックインクディスプレイの色を変える熱を生成させる。サーモクロミックインクディスプレイは、電池の相対容量を例えば示すゲージとして配置されていても良い。電流が大きいほど、より多くの熱が生成し、ゲージがより変化して電池が良好であることを示すようになる。
【実施例】
【0076】
組み立てたAAアルカリ一次電池の性能試験
以下の表1で対照と呼ばれる従来電池を組み立てて、本発明の効果を電池放電性能について比較する。電池はアノードを含む。アノードは、4.85グラムの亜鉛、0.027グラムのポリアクリル酸ゲル化剤、および0.006グラムの腐食防止剤を含む。電池はカソードを含む。カソードは、10.90グラムのEMDおよび0.401グラムのTIMCAL BNB−90グラファイトを含む。セパレータを、アノードとカソードの間に挿入する。アノード、カソード、およびセパレータを、円筒形状のAAサイズのハウジングに挿入する。水成アルカリ性水酸化カリウム(KOH)電解質を、酸化亜鉛(ZnO)添加剤と共に、ハウジング中のアノード、カソード、およびセパレータ中に分散させる。電解質のKOHの全重量は、1.107グラムである。電解質の水の全重量は、2.450グラムである。電解質のZnOの全重量は、0.054グラムである。次に、ハウジングをシールして電池の組み立てプロセスを完了させる。
【0077】
以下の表1で電池Aと呼ばれる例示電池を組み立てて、本発明の効果を電池放電性能について比較する。電池はアノードを含む。アノードは、4.86グラムの亜鉛、0.027グラムのポリアクリル酸ゲル化剤、および0.005グラムの腐食防止剤を含む。電池はカソードを含む。カソードは、0.008グラムの4つの炭素原子を有するボロン酸(BA4)カソード添加剤、10.93グラムのEMD、および0.400グラムのTIMCAL BNB−90グラファイトを含む。セパレータを、アノードとカソードの間に挿入する。アノード、カソード、およびセパレータを、円筒形状のAAサイズのハウジングに挿入する。水成アルカリ性水酸化カリウム(KOH)電解質を、酸化亜鉛(ZnO)添加剤と共に、ハウジング中のアノード、カソード、およびセパレータ中に分散させる。電解質のKOHの全重量は、1.108グラムである。電解質の水の全重量は、2.447グラムである。電解質のZnOの全重量は、0.053グラムである。次に、ハウジングをシールして電池の組み立てプロセスを完了させる。
【0078】
以下の表1で電池Bと呼ばれる例示電池を組み立てて、本発明の効果を電池放電性能について比較する。電池はアノードを含む。アノードは、4.84グラムの亜鉛、0.026グラムのポリアクリル酸ゲル化剤、および0.005グラムの腐食防止剤を含む。電池はカソードを含む。カソードは、0.008グラムの8つの炭素原子を有するN,N−ジメチルノナン−1−アミンオキシド(AO8)カソード添加剤、10.97グラムのEMD、および0.405グラムのTIMCAL BNB−90グラファイトを含む。セパレータを、アノードとカソードの間に挿入する。アノード、カソード、およびセパレータを、円筒形状のAAサイズのハウジングに挿入する。水成アルカリ性水酸化カリウム(KOH)電解質を、酸化亜鉛(ZnO)添加剤と共に、ハウジング中のアノード、カソード、およびセパレータ中に分散させる。電解質のKOHの全重量は、1.105グラムである。電解質の水の全重量は、2.445グラムである。電解質のZnOの全重量は、0.053グラムである。次に、ハウジングをシールして電池の組み立てプロセスを完了させる。
【0079】
【表1】
【0080】
性能試験は、ANSI/IEC電動式玩具試験(玩具試験)と呼ばれ得る放電性能試験を含む。玩具試験プロトコルは、1時間に3.9オームの定荷重を適用することを含む。次に、電池は、23時間の期間休止する。0.8ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、このサイクルを繰り返す。次に、達成された実動時間を記録する。玩具試験は、中率放電試験である。
【0081】
性能試験は、ANSI/IEC CDプレーヤーおよびコンピューターゲーム試験(CDプレーヤー試験)と呼ばれ得る放電性能試験も含む。CDプレーヤー試験プロトコルは、1時間に0.25アンペアの定荷重を電池に適用し、次に電池を23時間の期間休止させることを含む。0.9ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、このサイクルを繰り返す。次に、達成された実動時間を記録する。CDプレーヤー試験は、中率放電試験である。
【0082】
性能試験は、ANSI/IECオーディオ試験(オーディオ試験)と呼ばれ得る放電性能試験も含む。オーディオ試験プロトコルは、1時間に0.100アンペアの定荷重を適用し、次に電池を23時間の期間休止させることを含む。0.9ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、このサイクルを繰り返す。次に、達成された実動時間を記録する。オーディオ試験は、低率放電試験である。
【0083】
性能試験は、ANSI/IECデジタルカメラ試験(デジカメ)と呼ばれ得る放電性能試験も含む。デジカメ試験プロトコルは、2秒間に1500mW、その直後の28秒間に650mWの定荷重を含む、電池に30秒間のパルスを適用することを含む。放電サイクルを5分間繰り返し、次に、電池は55分間休止する。1.05ボルトのカットオフ電圧に到達するまで、全サイクルを繰り返す。次に、達成されたパルスの全数を記録する。デジカメ試験は、高率放電試験である。
【0084】
放電性能試験の前に、電池を温度調節条件にさらす。温度調節条件下では、電池は、14日間に亘る温度変化にさらされる。電池は、24時間の単一期間に亘る1サイクルと呼ばれ得る条件にさらされる。サイクルは、六時間半(6.5時間)に亘って約28℃から約25℃に下げられる温度に電池をさらすことからなる。次に、電池を、四時間半(4.5時間)に亘って約25℃から約34℃に上げられる温度にさらす。次に、電池を、二時間(2時間)に亘って約34℃から約43℃に上げられる温度にさらす。次に、電池を、一時間(1時間)に亘って約43℃から約48℃に上げられる温度にさらす。次に、電池を、一時間(1時間)に亘って約48℃から約55℃に上げられる温度にさらす。次に、電池を、一時間(1時間)に亘って約55℃から約48℃に下げられる温度にさらす。次に、電池を、一時間(1時間)に亘って約48℃から約43℃に下げられる温度にさらす。次に、電池を、三時間(3時間)に亘って約43℃から約32℃に下げられる温度にさらす。最後に、電池を、四時間(4時間)に亘って約32℃から約28℃に下げられる温度にさらす。14日間に亘ってサイクルを繰り返し、次に、電池は、上記の放電性能試験を受ける。
【0085】
性能試験の結果
電池A、電池B、および対照は、全て、玩具、CDプレーヤー、オーディオ、およびデジカメ性能試験を受ける。以下の表2は、性能試験の結果を要約している。表2の%差の列は、対照に対する電池Aまたは電池Bの性能に関する差のパーセンテージを含む。
【0086】
BA4カソード添加剤を含む電池Aは、従来設計の電池である対照の性能と比較して、全ての放電試験でより優れた性能を与える。AO8カソード添加剤を含む電池Bは、従来設計の電池である対照の性能と比較して、全ての放電試験でより優れた性能を与える。特に、電池Bは、対照と比較した場合、デジカメ放電性能で14%という顕著な増加を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
本明細書に開示される寸法および値は、記載されている正確な数値に厳しく限定されるものとして理解されるべきではない。むしろ、特に断りがない限り、このような寸法はそれぞれ、記載されている値と機能的に同等なその値の近辺の範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」と開示されている寸法は、「約40mm」を意味することが意図されている。
【0089】
本明細書に引用されている各文書は、相互参照または関連の特許または出願と、本明細書がその優先権または権利を主張する特許出願または特許とを含み、明示的に除外されていない限り、またはその反対に明示的に限定されていない限り、ここにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。いかなる文書の引用も、前記文書が本明細書に開示または主張されている発明に関して先行技術であること、または前記文書が、単独で、または他の参考文献との組み合わせで、前記発明のいずれかを教示、示唆、または開示することを承認するものではない。さらに、本文書中の用語の意味または定義が、参照によって組み込まれる文書中の同一の用語のいずれかの意味または定義と矛盾する限りにおいて、本文書中の前記用語に割り当てられた前記意味または定義が優先するものとする。
【0090】
本発明の特定の実施形態が図示され記載されているが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々なその他の変更および修正がなされ得ることが当業者には明らかであろう。従って、本発明の範囲内にあるこのような変更および修正の全てを、添付の特許請求の範囲において包含することが意図されている。
図1
図2