(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス導入管から排出された生成ガスの流速が過大な場合、生成ガスに含まれたチャー等の粉塵が、集塵管の表面の保護被膜を摩耗させる。ろ過材が金属である場合、集塵管の摩耗は、集塵管の腐食を引き起こす原因となる。特にガス導入管の近傍では、生成ガスに含まれる粉塵濃度が高く、生成ガスの噴流が速いため、粉塵が集塵管に当たったときの衝撃により摩耗が発生しやすく、集塵管が損傷するおそれがある。
【0007】
上記特許文献1では、ガス導入管の出口部分にディフューザを設置したり、ディフューザの開口部に対向する管板に流量分散部を設置したりして、集塵管に対する粉塵を含む生成ガスの衝突流速を低減することが開示されている。
【0008】
ところで、プラント規模や運転条件によって、ガス導入管を流通する生成ガスの流量が異なるため、集塵装置において、集塵管に対する粉塵を含む生成ガスの衝突流速を簡易な構成で低減することが求められている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、集塵管に対する粉塵を含む生成ガスの衝突流速を簡易な構成で低減することが可能な集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の集塵装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1態様に係る集塵装置は、容器と、前記容器内に
水平となるように設置され、前記容器内を二つの空間に分割する壁部と、上端部が前記壁部に設けられた筒状である集塵管と、前記壁部の下方に設けられ、粉塵が含まれたガスを前記容器内に供給するガス導入管とを備え、前記ガス導入管の開口部は、前記壁部に対向しており、前記ガス導入管の前記開口部の直径は、前記開口部における前記ガスの断面平均流速が5m/s以上15m/s以下の範囲となるように設定され、前記開口部と前記壁部の間の距離Hと、前記開口部の直径Dとの比であるH/Dは、0.5以上1.5以下の範囲であり、前記開口部の中心と前記開口部から最も近い前記集塵管の中心の間の距離Lと、前記開口部の直径Dとの比であるL/Dは、0.5以上1.0以下の範囲である。
【0011】
この構成によれば、開口部におけるガスの断面平均流速が5m/s以上であるため、開口部から噴出したガスを集塵管に向けて広げることができ、断面平均流速が15m/s以下であるため、集塵管に対するガスの衝突流速を低減して粉塵による摩耗又は損傷を防止できる。
また、開口部と壁部の間の距離Hと、開口部の直径Dとの比であるH/Dは、0.5以上であるため、開口部から噴出したガスを集塵管に向けて広げることができ、H/Dは、1.5以下であるため、集塵管に対するガスの衝突流速を低減して粉塵による摩耗又は損傷を防止できる。
さらに、開口部の中心と開口部から最も近い集塵管の中心の間の距離Lと、開口部の直径Dとの比であるL/Dは、0.5以上であるため、運転中にガス導入管と集塵管との干渉を防止できる。また、開口部の中心と開口部から最も近い集塵管の中心の間の距離Lが大きいため、集塵管に対するガスの衝突流速が低減される。L/Dは、1.0以下であるため、容器が大きくなりすぎることがない。
【0012】
上記第1態様において、前記ガス導入管は、複数の前記集塵管の中心に設置されてもよい。
この構成によれば、ガス導入管から容器内に供給されたガスは、複数の集塵管の中心に設置されたガス導入管から、ガス導入管の周囲に配置された集塵管に向かって流れる。また、ガスが、ガス導入管から周囲の方向に放射状に流れるため、開口部の中心と開口部から最も近い集塵管の中心の間の距離Lが大きくなると、集塵管に対するガスの衝突流速が低減される。
【0013】
上記第1態様において、前記壁部は、板部と、前記板部の前記ガス導入管側に設置された耐火材とを有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集塵管に対する粉塵を含む生成ガスの衝突流速を簡易な構成で低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る集塵設備51が適用される石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)10は、空気を酸化剤として用いており、ガス化炉設備14において、燃料から可燃性ガス(生成ガス)を生成する空気燃焼方式を採用している。そして、石炭ガス化複合発電設備10は、ガス化炉設備14で生成した生成ガスを、ガス精製設備16で精製して燃料ガスとした後、ガスタービン17に供給して発電を行っている。すなわち、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備となっている。ガス化炉設備14に供給する燃料としては、例えば、石炭等の炭素含有固体燃料が用いられる。
【0017】
石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電装置)10は、
図1に示すように、給炭設備11と、ガス化炉設備14と、チャー回収設備15と、ガス精製設備16と、ガスタービン17と、蒸気タービン18と、発電機19と、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20とを備えている。
【0018】
給炭設備11は、原炭として炭素含有固体燃料である石炭が供給され、石炭を石炭ミル(図示略)などで粉砕することで、細かい粒子状に粉砕した微粉炭を製造する。給炭設備11で製造された微粉炭は、給炭ライン11a出口で後述する空気分離設備42にから供給される搬送用イナートガスとしての窒素ガスによって加圧されて、ガス化炉設備14へ向けて供給される。イナートガスとは、酸素含有率が約5体積%以下の不活性ガスであり、窒素ガスや二酸化炭素ガスやアルゴンガスなどが代表例であるが、必ずしも約5%以下に制限されるものではない。
【0019】
ガス化炉設備14は、給炭設備11で製造された微粉炭が供給されるとともに、チャー回収設備15で回収されたチャー(石炭の未反応分と灰分)が戻されて再利用可能に供給されている。
【0020】
また、ガス化炉設備14には、ガスタービン17(圧縮機61)からの圧縮空気供給ライン41が接続されており、ガスタービン17で圧縮された圧縮空気の一部が昇圧機68で所定圧力に昇圧されてガス化炉設備14に供給可能となっている。空気分離設備42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43によって空気分離設備42とガス化炉設備14とが接続されている。そして、この第1窒素供給ライン43には、給炭設備11からの給炭ライン11aが接続されている。また、第1窒素供給ライン43から分岐する第2窒素供給ライン45もガス化炉設備14に接続されており、この第2窒素供給ライン45には、チャー回収設備15からのチャー戻しライン46が接続されている。さらに、空気分離設備42は、酸素供給ライン47によって、圧縮空気供給ライン41と接続されている。そして、空気分離設備42によって分離された窒素は、第1窒素供給ライン43及び第2窒素供給ライン45を流通することで、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用される。また、空気分離設備42によって分離された酸素は、酸素供給ライン47及び圧縮空気供給ライン41を流通することで、ガス化炉設備14において酸化剤として利用される。
【0021】
ガス化炉設備14は、例えば、2段噴流床形式のガス化炉を備えている。ガス化炉設備14は、内部に供給された石炭(微粉炭)及びチャーを酸化剤(空気、酸素)により部分燃焼させることでガス化させ生成ガスとする。なお、ガス化炉設備14は、微粉炭に混入した異物(スラグ)を除去する異物除去設備48が設けられている。そして、このガス化炉設備14には、チャー回収設備15に向けて生成ガスを供給するガス生成ライン(配管部)49が接続されており、チャーを含む生成ガスが排出可能となっている。
【0022】
チャー回収設備15は、集塵設備51と供給ホッパ52とを備えている。この場合、集塵設備51は、ガス化炉設備14で生成された生成ガスに含有するチャーを分離することができる。本実施形態に係る集塵設備51の詳細については後述する。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備16に送られる。供給ホッパ52は、集塵設備51で生成ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵設備51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0023】
ガス精製設備16は、チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製設備16は、生成ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン17に供給する。なお、チャーが分離された生成ガス中にはまだ硫黄分(H
2Sなど)が含まれているため、このガス精製設備16では、アミン吸収液などによって硫黄分を除去回収して、有効利用する。
【0024】
ガスタービン17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を備えており、圧縮機61とタービン63とは、回転軸64により連結されている。燃焼器62には、圧縮機61からの圧縮空気供給ライン65が接続されるとともに、ガス精製設備16からの燃料ガス供給ライン66が接続され、また、タービン63に向かって延びる燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン17は、圧縮機61からガス化炉設備14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。したがって、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気の一部とガス精製設備16から供給された燃料ガスの少なくとも一部とを混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、発生させた燃焼ガスをタービン63へ向けて供給する。そして、タービン63は、供給された燃焼ガスにより回転軸64を回転駆動させることで発電機19を回転駆動させる。
【0025】
蒸気タービン18は、ガスタービン17の回転軸64に連結されるタービン69を備えており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17(タービン63)からの排ガスライン70が接続されており、給水とタービン63の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そして、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられるとともに蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。したがって、蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が回転駆動し、回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0026】
そして、排熱回収ボイラ20の出口から煙突75までには、ガス浄化設備74を備えている。
【0027】
ここで、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
【0028】
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭設備11に原炭(石炭)が供給されると、石炭は、給炭設備11において細かい粒子状に粉砕されることで微粉炭となる。給炭設備11で製造された微粉炭は、空気分離設備42から供給される窒素により第1窒素供給ライン43を流通してガス化炉設備14に供給される。また、後述するチャー回収設備15で回収されたチャーが、空気分離設備42から供給される窒素により第2窒素供給ライン45を流通してガス化炉設備14に供給される。さらに、後述するガスタービン17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離設備42から供給される酸素とともに圧縮空気供給ライン41を通してガス化炉設備14に供給される。
【0029】
ガス化炉設備14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、生成ガスを生成する。
【0030】
このチャー回収設備15にて、生成ガスは、まず、集塵設備51に供給されることで、生成ガスに含有する微粒のチャー(粉塵)が分離される。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備16に送られる。一方、生成ガスから分離した微粒のチャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通ってガス化炉設備14に戻されてリサイクルされる。
【0031】
チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスは、ガス精製設備16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給する。この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製設備16から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスによりタービン63を回転駆動することで、回転軸64を介して圧縮機61及び発電機19を回転駆動する。このようにして、ガスタービン17は発電を行うことができる。
【0032】
そして、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17におけるタービン63から排出された排ガスと給水とで熱交換を行うことにより蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン18に供給する。蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を回転駆動することで、回転軸64を介して発電機19を回転駆動し、発電を行うことができる。
なお、ガスタービン17と蒸気タービン18は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動しても良い。
【0033】
その後、ガス浄化設備74では排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排気ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0034】
以下、
図2を参照して、本実施形態に係る集塵設備51について説明する。
集塵設備51は、集塵装置の一例であり、容器1と、容器1内に設けられた管板2と、上端部が管板2に設置された集塵管3と、ガス化炉設備14からのチャー(粉塵)が含まれた生成ガスが流通し容器1の内部に生成ガスを供給するガス導入管4等を備える。
【0035】
容器1は、中間部1Aが円筒形状を有し、円筒軸方向が鉛直方向となるように設置される。容器1の中間部1Aの下端部には、円錐状の円錐部1Bが設置され、円錐部1Bの下端部には、チャー払い出し口1aが形成されている。チャー払い出し口1aは、チャーが供給ホッパ52へ排出される開口である。また、容器1の中間部1Aの上端部には、例えば半球状のカバー部1Cが設置され、カバー部1Cの上端部には、生成ガス出口1bが形成されている。生成ガス出口1bは、生成ガスが排出される開口であり、集塵管3を通過してチャーが除去された生成ガスが排出される。
【0036】
管板2は、壁部の一例であり、円板状部材であり、容器1の内部において、例えば中間部1Aとカバー部1Cとの境界付近に板面が水平となるように設置される。管板2には、集塵管3が設置される位置に複数の貫通孔2aが形成されている。貫通孔2aには、集塵管3の上端部が接続され、集塵管3を通過した生成ガスが流通する。
【0037】
複数の貫通孔2aは、管板2において、例えば放射状に設けられ、複数の集塵管3も管板2において放射状に設けられる。
【0038】
管板2によって、容器1の内部は、ガス導入室6とガス排出室7に分けられる。なお、管板2におけるガス導入管4側には、耐火材(図示せず。)が設置されてもよい。この場合、管板2は、板部の一例であり、管板2と耐火材によって壁部が構成される。
【0039】
集塵管3は、ろ過材が円筒状に形成されたものであり、ろ過材はサポート材によって円筒形状に保持されている。ろ過材は、例えば金属、又は、セラミックス等の焼結体から構成される。集塵管3は、上端部が管板2に接続され、円筒軸方向が鉛直方向となるように管板2の下方に吊り下げられている。チャーを集塵するとき、生成ガスは、集塵管3の外側から内側へろ過材を通過し、チャーが集塵管3の外周面に捕集される。チャーが除去された生成ガスは、集塵管3の内側から貫通孔2aを通過して、ガス排出室7へ導入される。
【0040】
集塵管3の外周面にはチャーが堆積されることから、所定時間毎に逆洗ガスによって払い落とされる。逆洗処理をするとき、逆洗ガスは、ガス排出室7から供給され、集塵管3の内側から外側へろ過材を通過し、集塵管3の外周面に堆積したチャーを払い落とす。払い落されたチャーはチャー払い出し口1aを通過し供給ホッパ52に収容される。
【0041】
ガス導入管4は、容器1の側面を貫通して設置され、容器1の外部から内部へ生成ガスを供給する。ガス導入管4は、例えば容器1の側面において水平に設けられ、容器1の内部のほぼ中間部で垂直方向に屈曲して、軸方向が鉛直方向に設置される。ガス導入管4の鉛直部分は、管板2の中心、複数の集塵管3の中心に位置する。ガス導入管4の開口部4aは、管板2に対向している。ガス導入管4の開口部4aから、チャーを含む生成ガスが吹き出され、生成ガスは管板2に向かって流れた後、放射状に配置された複数の集塵管3へ向かって広がって流れる。
【0042】
ガス導入管4の開口部4aは、円筒形状の直管のままでもよいし、下流側に向かって広がる円錐台形状に形成されてもよい。
【0043】
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る集塵設備51におけるガス導入管4、集塵管3及び管板2の関係について説明する。
【0044】
ガス導入管4の開口部4aの直径D(
図3参照)は、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が5m/s以上15m/s以下の範囲となるように設定される。
【0045】
ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が5m/s未満である場合、開口部4aから噴出した生成ガスが、外周側の集塵管3に届かず、均一に捕集できない。これに対し、本実施形態では、ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が5m/s以上であるため、開口部4aから噴出した生成ガスを集塵管3に向けて広げることができ、外周側に設置された集塵管3にも生成ガスが到達する。
【0046】
ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が15m/sを超える場合、集塵管3に対する生成ガスの衝突流速が速いため、チャーが集塵管3に当たったときの衝撃によって集塵管3の摩耗が発生しやすい。これに対し、本実施形態では、ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が15m/s以下であるため、集塵管3上部の局所流速を低減できる。その結果、集塵管3に対する生成ガスに含まれたチャーの衝突流速が低減され、チャーによる摩耗や損傷を防止できる。
【0047】
開口部4aと管板2の間の距離Hと、開口部4aの直径Dとの比であるH/Dは、0.5以上1.5以下の範囲である。
【0048】
また、開口部4aと管板2の間の距離Hと、開口部4aの直径Dとの比であるH/Dは、0.5未満である場合、集塵管3に対する生成ガスの衝突流速が速いため、チャーが集塵管3に当たったときの衝撃によって集塵管3の摩耗が発生しやすい。これに対し、本実施形態では、H/Dは、0.5以上であるため、
図4に示すように、半径方向に広がるにつれて生成ガスの流速が低減される。その結果、集塵管3に対する生成ガスに含まれたチャーの衝突流速が低減され、チャーによる摩耗や損傷を防止できる。
【0049】
開口部4aと管板2の間の距離Hと、開口部4aの直径Dとの比であるH/Dは、1.5を超える場合、開口部4aから噴出した生成ガスが、外周側の集塵管3に届かず、均一に捕集できない。これに対し、本実施形態では、H/Dは、1.5以下であるため、開口部4aから噴出した生成ガスを集塵管3に供給することができ、外周側に設置された集塵管3にも生成ガスが到達する。
【0050】
開口部4aの中心と開口部4aから最も近い集塵管3の中心の間の距離Lと、開口部4aの直径Dとの比であるL/Dは、0.5以上1.0以下の範囲である。
【0051】
開口部4aの中心と開口部4aから最も近い集塵管3の中心の間の距離Lと、開口部4aの直径Dとの比であるL/Dは、0.5未満である場合、集塵設備51の運転時において集塵管3が揺動したとき、ガス導入管4と集塵管3が接触するおそれがある。これに対し、本実施形態では、L/Dは、0.5以上であるため、集塵設備51の運転中におけるガス導入管4と集塵管3との干渉を防止できる。また、
図4に示すように、生成ガスが管板2の半径方向に広がるにつれて集塵管3上部の局所流速が減衰する。また、ガスは、ガス導入管4から周囲の方向に放射状に流れるため、開口部4aの中心と開口部4aから最も近い集塵管3の中心の間の距離Lが大きくなると、集塵管3に対する生成ガスの衝突流速が低減される。その結果、集塵管3に対する生成ガスに含まれたチャーの衝突流速が低減され、チャーによる摩耗や損傷を防止できる。
【0052】
また、開口部4aの中心と開口部4aから最も近い集塵管3の中心の間の距離Lと、開口部4aの直径Dとの比であるL/Dは、1.0を超える場合、各集塵管3の設置位置も管板2の中心から離れた位置になることから、容器1の大きさが大きくなる。これに対し、本実施形態では、L/Dは、1.0以下であるため、容器1が大きくなりすぎることがない。
【0053】
次に、
図5及び
図6のグラフを参照して、ガス導入管4から最も近い集塵管3における流速について、従来との比較を行う。
【0054】
図5に示すように、ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が5m/sである場合において、H/Dが0.5であるとき(マーカー:菱形)、及び、H/Dが1.5であるとき(マーカー:正方形)のいずれの場合も、L/Dが、0.5以上1.0以下の範囲において、ガス導入管4から最も近い集塵管3における流速は、従来比が1.0未満であり、従来に比べて低減している。
【0055】
図6に示すように、ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が15m/sである場合において、H/Dが0.5であるとき(マーカー:丸形)、L/Dが、0.9以上1.0以下の範囲において、ガス導入管4から最も近い集塵管3における流速は、従来比が1.0未満であり、従来に比べて低減している。また、ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が15m/sである場合において、H/Dが0.5であるとき(マーカー:三角形)、L/Dが、0.55以上1.0以下の範囲において、ガス導入管4から最も近い集塵管3における流速は、従来比が1.0未満であり、従来に比べて低減している。
【0056】
L/Dが、0.9以上1.0以下の範囲では、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が5m/s以上15m/s以下の範囲であり、かつ、H/Dが0.5以上1.5以下の範囲であるとき、ガス導入管4から最も近い集塵管3における流速は、従来に比べて必ず低減可能である。
【0057】
なお、ガス導入管4の開口部4aの直径Dの設定によって、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が15m/sであり、かつ、H/Dが0.5である場合において、L/Dが0.5であっても、ガス導入管4から最も近い集塵管3における流速は、従来に比べて2倍未満である。比較対象としたガス導入管4から最も近い集塵管3における従来の流速(絶対値)が、チャーが集塵管3に当たったときの衝撃により摩耗が発生しにくい流速であれば、ガス導入管4の開口部4aの直径Dが、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が5m/s以上15m/s以下の範囲となるように設定され、H/Dは、0.5以上1.5以下の範囲であり、かつ、L/Dは、0.5以上1.0以下の範囲である場合において、チャーが集塵管3に当たったときの衝撃による摩耗が発生しにくい。
【0058】
以上、本実施形態において、ガス導入管4の開口部4aの直径Dが、開口部4aにおける生成ガスの断面平均流速が5m/s以上15m/s以下の範囲となるように設定され、H/Dは、0.5以上1.5以下の範囲であり、かつ、L/Dは、0.5以上1.0以下の範囲とすれば、チャーが集塵管3に当たったときの衝撃による摩耗が発生しにくい。すなわち、ガス導入管4の開口部4aの直径D、開口部4aと管板2の間の距離H、及び、開口部4aの中心と開口部4aから最も近い集塵管3の中心の間の距離Lを設定することによって、集塵管3に対するチャーを含む生成ガスの衝突流速を簡易に低減できる。
【0059】
したがって、集塵設備51に対して付加的な設備や部品を設置することなく、簡易な構成、かつ、低コストで集塵管3の摩耗や損傷を低減できる。
【0060】
なお、上記実施形態では、集塵設備51を通過した生成ガスを石炭ガス化複合発電設備10に用いる場合について説明したが、ガス化炉設備14で生成され集塵設備51を通過した生成ガスは、合成ガスの原料として合成ガス製造プラントに用いられてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、燃料として石炭を使用したが、高品位炭や低品位炭であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【0062】
なお、本実施形態はガス化炉として、タワー型ガス化炉について図示したが、ガス化炉はクロスオーバー型ガス化炉でも、同様に実施が可能である。