特許第6833566号(P6833566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833566
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/06 20060101AFI20210215BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20210215BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   B05B13/06
   B05B7/14
   B05D7/22 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-42606(P2017-42606)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-143971(P2018-143971A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 広布
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−110365(JP,A)
【文献】 特開平07−016526(JP,A)
【文献】 特開2007−289945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 3/18
7/00− 9/08
B05B12/00−12/14
13/00−13/06
B05C 7/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体塗料および珪砂の混合物が加熱されて溶融し、その後硬化することにより、管体の内面を塗装する塗装装置であって、前記塗装装置が、
前記管体の内腔に挿入される挿入管と、
前記挿入管の先端側に取り付けられ、前記混合物を吐出する吐出ノズルとを備え、
前記挿入管が、
前記粉体塗料を供給する粉体塗料供給管と、
前記珪砂を供給する珪砂供給管と、
前記粉体塗料供給管から排出される粉体塗料と、前記珪砂供給管から排出される珪砂とが混合される混合管とを備え、
前記混合管は、前記粉体塗料供給管の第1の排出口および前記珪砂供給管の第2の排出口と、前記吐出ノズルとの間に設けられ、前記混合管の内腔が、前記第1の排出口と前記第2の排出口とが合流する混合室を構成している塗装装置。
【請求項2】
前記粉体塗料供給管と、前記珪砂供給管とが、互いに略平行に配置され、
前記珪砂供給管が、前記粉体塗料供給管の上方側に配置されている請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記珪砂供給管の内径が、前記粉体塗料供給管の内径よりも大きい請求項1または2記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に関する。さらに詳しくは、粉体塗料および珪砂の混合物により管体の内面を塗装する塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属管、特に上下水道に用いられる鋳鉄管においては、防食性と環境への配慮の両面から、近年エポキシ樹脂粉体塗料による塗膜を管内面に形成することが一般に行われている。このエポキシ樹脂粉体塗料によるエポキシ塗膜の形成方法の1つとして、加熱された回転する管の内面にエポキシ樹脂粉体塗料を吹き付けなどにより塗布し、溶融・硬化させる方法がある。
【0003】
エポキシ樹脂粉体塗料は、溶剤を用いることなく防食性を担保することができるため、環境への負荷が少なく非常に優れたものである。しかし、エポキシ樹脂自体の価格が高く、ある程度の厚さの塗膜を得るためには、そのコストが問題となることがある。そのため、特許文献1に示されるように、管の内面に噴射されたエポキシ樹脂に別途珪砂を加えて、塗料の層の厚みを確保する場合がある。
【0004】
特許文献1では、エポキシ樹脂は、樹脂輸送管によってタンクから供給され、噴射ノズルによって管の内面に吹き付けられる。珪砂は、珪砂を輸送する別の輸送管により供給され、噴射ノズルと隣接して配置された投下口から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−101041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1のように、エポキシ樹脂と珪砂とが異なるノズルや投下口から噴射または排出される場合、たとえば、口径が50mm程度の小さい管の場合に、エポキシ樹脂用のノズルおよび珪砂の投下口などが管内に入らないという問題や、管の内面を塗装しにくいという問題が生じることがある。そのため、エポキシ樹脂と珪砂との両方を吐出して塗装する際に、小口径の管であっても、大口径の管であっても、管の内面の塗装が容易な塗装装置が求められている。また、エポキシ樹脂と珪砂との混合物を塗装する場合に、エポキシ樹脂と珪砂とが良好に混合された状態で管の内面に吐出されることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、小口径の管および大口径の管の両方に適用が可能であり、エポキシ樹脂と珪砂とが良好に混合された状態の混合物を管の内面に吐出可能な塗装装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗装装置は、粉体塗料および珪砂の混合物により、管体の内面を塗装する塗装装置であって、前記塗装装置が、前記管体の内腔に挿入される挿入管と、前記挿入管の先端側に取り付けられ、前記混合物を吐出する吐出ノズルとを備え、前記挿入管が、前記粉体塗料を供給する粉体塗料供給管と、前記珪砂を供給する珪砂供給管と、前記粉体塗料供給管から排出される粉体塗料と、前記珪砂供給管から排出される珪砂とが混合される混合管とを備え、前記混合管は、前記粉体塗料供給管の第1の排出口および前記珪砂供給管の第2の排出口と、前記吐出ノズルとの間に設けられ、前記混合管の内腔が、前記第1の排出口と前記第2の排出口とが合流する混合室を構成している。
【0009】
また、前記粉体塗料供給管と、前記珪砂供給管とが、互いに略平行に配置され、前記珪砂供給管が、前記粉体塗料供給管の上方側に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記珪砂供給管の内径が、前記粉体塗料供給管の内径よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗装装置によれば、小口径の管および大口径の管の両方に適用が可能であり、エポキシ樹脂と珪砂とが良好に混合された状態の混合物を管の内面に吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の塗装装置を示す概略全体図である。
図2図1の塗装装置に用いられる、挿入管と混合管とを示す図である。
図3図2のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、本発明の一実施形態の塗装装置を説明する。なお、以下で説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の塗装装置は以下の実施形態に限定されない。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態の塗装装置1は、管体Pの内腔P1に挿入される挿入管2と、挿入管2の先端側に取り付けられ、粉体塗料および珪砂の混合物を吐出する吐出ノズル3とを備えている。
【0015】
塗装装置1は、図1に示されるように、粉体塗料および珪砂の混合物により、管体Pの内面P2を塗装する。塗装装置1により塗装される管体Pの種類は特に限定されない。本実施形態では、管体Pは受口、挿口、および受口と挿口との間の直部とを有する鋳鉄管である。管体Pは、管体Pを支持する管体支持体Sにより支持されている。本実施形態では、管体支持体Sは、移動式の管体支持装置であり、挿入管2および吐出ノズル3に対して管体Pを移動させることにより、管体Pの内面P2を軸方向に塗装する。また、管体支持体Sは、支持された管体Pを軸周りに回転させる回転ローラRを有している。回転ローラRは、管体Pの外周の周方向に一対設けられ、その一対の回転ローラRが、管体Pの軸方向に離間して、少なくとも2セット設けられている。
【0016】
なお、本実施形態では、管体Pを支持する管体支持体Sが挿入管2および吐出ノズル3に対して移動するように構成されているが、挿入管2および吐出ノズル3が管体Pに対して移動するように構成してもよい。また、管体Pと、挿入管2および吐出ノズル3との両方を移動させても構わない。
【0017】
吐出ノズル3は、上述したように、粉体塗料および珪砂の混合物を吐出する。吐出ノズル3は、粉体塗料および珪砂の混合物を吐出することが可能であれば、その構造は特に限定されない。
【0018】
粉体塗料は、管体Pに吐出された後、熱により溶融し、その後硬化されるものであれば特に限定されない。たとえば、粉体塗料として、水道用のダクタイル鋳鉄管の場合、規格に適合したエポキシ粉体樹脂塗料を用いることができる。
【0019】
また、用いられる珪砂の種類は特に限定されない。たとえば、珪砂は、モード径約0.1〜0.2mm程度、かつ粒度分布が0.05〜0.3mmの範囲にあるもので一般に7号珪砂、8号珪砂として市販されているものを用いることが好ましい。
【0020】
挿入管2は、挿入管2に取り付けられた吐出ノズル3により、管体Pの内面P2を塗装するために、管体Pに挿入される。挿入管2は、管体Pの内面P2を軸方向に塗装することが可能な長さを有している。たとえば、挿入管2は、管体Pとほぼ同じか、管体Pよりも長い長さを有することが好ましい。本実施形態では、挿入管2自体は上述したように移動せず、管体Pが移動することにより、挿入管2が管体Pに対して相対的に移動して、管体Pの内面P2を吐出ノズル3により塗装する。より具体的には、本実施形態では、管体Pの受口側から挿入された挿入管2は、管体Pが移動しながら回転することにより、受口側から挿口側に向かって管体Pの内面P2の塗装を行う。塗装は、受口側から挿口側まで行われた後(往路)、挿入管2が管体Pから引き抜かれるように管体Pが逆方向に移動することにより、挿口側から受口側まで再度行われる(復路)。なお、本実施形態では、塗装の初期において、受口側から挿口側に向かって塗装が行なわれているが、挿口側から受口側に向かって塗装が行なわれてもよい。
【0021】
挿入管2は、本実施形態では、図2に示されるように、粉体塗料を供給する粉体塗料供給管21と、珪砂を供給する珪砂供給管22と、粉体塗料供給管21から排出される粉体塗料と、珪砂供給管22から排出される珪砂とが混合される混合管23とを備えている。なお、図2においては図示されていないが、混合管3の左側には吐出ノズル3が設けられている。本実施形態では、粉体塗料供給管21と珪砂供給管22とは、外筒24により覆われている。外筒24は、たとえば金属など、所定の剛性を有する材料により形成され、粉体塗料供給管21および珪砂供給管22を保護している。なお、外筒24は、本発明においては任意の構成であり、必ずしも設ける必要はない。
【0022】
粉体塗料供給管21は、粉体塗料が供給される管である。紛体塗料供給管21は、粉体塗料が貯留されたタンクから、粉体塗料搬送装置4a(図1参照)により搬送される。粉体塗料搬送装置4aは、粉体塗料を粉体塗料供給管21を通って吐出ノズル3側に搬送することができる装置であれば特に限定されない。粉体塗料搬送装置4aとしては、たとえば、コンプレッサー等、所定のエア圧により粉体塗料を搬送する装置を用いることができる。粉体塗料供給管21の材料は特に限定されない。紛体塗料供給管21は、たとえば、安価で取り替えが容易な樹脂製チューブを用いることができる。
【0023】
珪砂供給管22は、珪砂が供給される管である。珪砂供給管22は、珪砂が貯留されたタンクから、珪砂搬送装置4b(図1参照)により搬送される。珪砂搬送装置4bは、珪砂を珪砂供給管22を通って吐出ノズル3側に搬送することができる装置であれば特に限定されない。珪砂搬送装置4bとしては、たとえば、コンプレッサー等、所定のエア圧により珪砂を搬送する装置を用いることができる。珪砂供給管22の材料は特に限定されない。紛体塗料供給管22は、たとえば、安価で取り替えが容易な樹脂製チューブを用いることができる。
【0024】
粉体塗料供給管21と、珪砂供給管22との位置関係は特に限定されないが、本実施形態では、粉体塗料供給管21および珪砂供給管22は、互いに略平行に配置されている。また、本実施形態では、図2に示されるように、珪砂供給管22は、粉体塗料供給管21の上方側に配置されている。より具体的には、粉体塗料供給管21および珪砂供給管22は、図2に示されるように、外筒24の内部で、略平行に並列して上下に配置されている。
【0025】
混合管23は、粉体塗料供給管21から排出される粉体塗料と、珪砂供給管22から排出される珪砂とが混合され、粉体塗料と珪砂との混合物を吐出ノズル3に向けて搬送する管である。混合管23は、粉体塗料供給管21の吐出ノズル3側の開口(第1の排出口21a)および珪砂供給管22の吐出ノズル3側の開口(第2の排出口22a)と、吐出ノズル3との間に設けられている。また、混合管23の内腔は、第1の排出口21aと第2の排出口22aとが合流する混合室を構成している。これにより、粉体塗料供給管21の第1の排出口21aから排出された粉体塗料と、珪砂供給管22の第2の排出口22aから排出された珪砂とが、混合管23の混合室内(内腔)で混合されながら搬送される。なお、混合管23の軸方向の長さは特に限定されない。混合管23の軸方向の長さは、たとえば、粉体塗料と珪砂との混合比率や、粉体塗料と珪砂との搬送エア圧等の条件に応じて適宜変更することができる。
【0026】
また、混合管23と、粉体塗料供給管21および珪砂供給管22とは、軸方向に接続されているが、その接続方法は特に限定されない。図2に示されるように、混合管23と、粉体塗料供給管21および珪砂供給管22とが、接続部材5によって間接的に接続されていてもよいし、直接接続されていてもよい。
【0027】
本実施形態では、粉体塗料供給管21と珪砂供給管22とを通って供給される粉体塗料および珪砂は、混合管23内で混合され、粉体塗料と珪砂との混合物が1つの吐出ノズル3により管体Pの内面P2に吐出される。したがって、粉体塗料と珪砂とのそれぞれに吐出ノズル3を設ける必要がない。そのため、たとえば、口径が50mm程度の小口径の管体Pであっても、管体P内に容易に吐出ノズル3を挿入することができ、管体Pの内面P2を粉体塗料と珪砂との混合物により容易に塗装することができる。さらに、粉体塗料と珪砂とは、吐出ノズル3の直前に位置する混合管23内で混合されるので、吐出ノズル3から吐出される混合物は、安定した混合状態で吐出される。すなわち、予め粉体塗料と珪砂とを混合してから供給管で搬送する場合のように、搬送中に硅砂が沈降したりすることがない。よって、管体Pの内面P2に形成される塗膜の品質(たとえば、混合物における粉体塗料と珪砂との混合比率、塗膜の外観、内面P2のざらつきなど)が管体Pの軸方向および周方向で安定する。
【0028】
本実施形態では、粉体塗料供給管21の第1の排出口21aと、珪砂供給管22の第2の排出口22aとは、挿入管2の軸方向の位置が揃うように配置されている。これにより、ほぼ同時に排出された粉体塗料と珪砂とが、吐出ノズル3まで移動する間に所望の混合比での混合が容易になる。
【0029】
なお、混合管23は、筒状の部材であれば特に限定されない。混合管23が筒状であり、外部から閉鎖されていることにより、第1の排出口21aおよび第2の排出口22aから排出された粉体塗料や珪砂が、外部環境により影響されない。そのため、管体Pの内腔P1内での空気の流れなどにより、粉体塗料や珪砂が混合前に飛ばされることがない。
【0030】
また、本実施形態では、上述したように、珪砂供給管22が粉体塗料供給管21の上方側に配置されている。そのため、混合管23の第1および第2の排出口21a、22aの近傍においては、粉体塗料が下方から、珪砂が上方から排出される。混合管23内の粉体塗料および珪砂の混合物が混合管23内で搬送され、吐出ノズル3に到達するまでに、比重が大きい珪砂(約2.5)が、比重の小さい粉体塗料(約1.6)中で徐々に沈み込む。これにより、混合管23内を移動する混合物は、搬送中に良好な混合状態となり、その後吐出ノズル3により吐出される。
【0031】
また、本実施形態では、図3に示されるように、珪砂供給管22の内径は、粉体塗料供給管21の内径よりも大きい。これにより、粉体塗料の粒度(たとえば220μm以下)よりも粒度が大きい珪砂(たとえば300μm以下)の供給を円滑にすることができる。これにより、混合管23に供給される粉体塗料と珪砂との比率の変化を抑制し、安定した粉体塗料と珪砂の混合物を供給することができ、塗膜の品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 塗装装置
2 挿入管
21 粉体塗料供給管
21a 第1の排出口
22 珪砂供給管
22a 第2の排出口
23 混合管
24 外筒
3 吐出ノズル
4a 粉体塗料搬送装置
4b 珪砂搬送装置
5 接続部材
P 管体
P1 管体の内腔
P2 管体の内面
R 回転ローラ
S 管体支持体
図1
図2
図3