(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833596
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】山留め壁の変形測定装置、変形測定システム、および山留め構造
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
E02D17/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-77982(P2017-77982)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-178483(P2018-178483A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】堀場 勇太
(72)【発明者】
【氏名】相田 俊
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−037631(JP,U)
【文献】
特開平06−307869(JP,A)
【文献】
特開2006−022551(JP,A)
【文献】
特開平08−232265(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3159922(JP,U)
【文献】
特開2012−251827(JP,A)
【文献】
特開昭54−019776(JP,A)
【文献】
特開2002−016906(JP,A)
【文献】
特開2013−250189(JP,A)
【文献】
特開2016−180681(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0204512(US,A1)
【文献】
特開2011−220959(JP,A)
【文献】
特開昭52−15355(JP,A)
【文献】
実開平4−8916(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D5/00−5/20、
7/00−13/10、
17/00−17/20
G01B5/00−5/30
G01C1/00−1/14、
5/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山留め壁の変形を測定する装置であって、
山留め壁の水平方向両端部の頂部同士の間に張設されたピアノ線と、
前記山留め壁のうち当該ピアノ線の下方となる位置に設置された平板状またはシート状の計測部と、を備え、
当該計測部の上面には、当該計測部を設置した際の前記ピアノ線の位置である初期位置と、当該初期位置を挟んで両側に設けられた前記山留め壁の傾きの管理目標である管理領域と、当該管理領域を挟んで両側に設けられたオーバー領域と、が設けられ、
前記管理領域および前記オーバー領域は、目盛りおよび/または互いに異なる色で区分されていることを特徴とする山留め壁の変形測定装置。
【請求項2】
複数の請求項1に記載の山留め壁の変形測定装置と、当該変形測定装置の計測部を撮影する撮影機器と、当該撮影機器で撮影した画像を処理する画像処理装置と、を備え、
当該画像処理装置は、前記撮影機器で撮影した画像に基づいて、前記ピアノ線の前記計測部上の位置を計測し、前記ピアノ線が前記計測部上の所定の領域に位置した場合には、警報を発令することを特徴とする山留め壁の変形測定システム。
【請求項3】
山留め壁と、当該山留め壁の変形を測定する請求項2に記載の変形測定システムと、を備えることを特徴とする山留め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山留め壁の変形を測定する変形測定装置、この変形測定装置を備える変形測定システム、および、変形測定システムを備える山留め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山留め壁の傾きを計測する方法として、以下のような方法が知られている。
特許文献1には、地下連続壁を構築する際に、掘削溝内に建込むエレメントの鉛直精度を計測する鉛直精度計測装置が示されている。鉛直精度計測装置は、エレメントの鉛直軸と平行に中心軸を位置させてエレメントに取り付けられるものであり、最外周部に位置する保護管と、この保護管内に収納した縦溝を有するガイド管と、縦溝内を上下走行可能なロ−ラ−を有し保護管内に収納した傾斜計と、この傾斜計により計測したデ−タの処理部と、を備える。
【0003】
特許文献2には、複数枚の矢板に反射部を複数個設け、反射部に対向した位置に二機のレーザ角度検出ユニットを所定の間隔離れた形で設け、レーザ角度検出ユニットからレーザ光を、反射部に対して射出走査し、各レーザレーザ光の走査角度を検出し、これら走査角度に基づいて、反射部の位置を検出することで、各矢板の変位を計測検出する矢板変位測定方法が示されている。
【0004】
特許文献3には、山留め堀削工事の壁体の背面側に、壁体に沿って溝を形成し、この溝内に可撓性の袋体を設置し、この袋体内に流体を供給して、壁体の変位に追従して袋体を変形させて地盤変位を固定する、地盤変位抑制装置が示されている。
しかしながら、以上の特許文献1〜3の方法では、山留め壁の傾きを一目で確認できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−287732号公報
【特許文献2】特開平6−307869号公報
【特許文献3】特開平9−41381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡易な構成で山留め壁の傾きを一目で容易に確認できる山留め壁の変形測定装置、山留め壁の変形測定システム、および、山留め構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、山留め壁の変形測定方法として、山留め壁面に沿って張設されたピアノ線の下方に、山留め壁の倒れ度合いの管理目標である1次管理領域、2次管理領域、及び管理値オーバー領域によって色分け区分された計測板を設けることで、計測板上のピアノ線の位置によって山留め壁の倒れ度合いが可視化され、山留め壁の傾き度を一目で確認できる点に着眼して、本発明の山留め壁の変形測定装置と、変形測定システム、およびその変形測定システムを備える山留め構造を発明するに至った。
【0008】
第1の発明の山留め壁の変形測定装置(例えば、後述の変形測定装置20)は、山留め壁の変形を測定する装置であって、山留め壁(例えば、後述の山留め壁10)の水平方向両端部の頂部同士の間に張設されたピアノ線(例えば、後述のピアノ線21)と、前記山留め壁のうち当該ピアノ線の下方となる位置に設置された平板状またはシート状の計測部(例えば、後述の計測板23)と、を備え、当該計測部の上面には、当該計測部を設置した際の前記ピアノ線の位置である初期位置(例えば、後述の初期位置23A)と、当該初期位置を挟んで両側に設けられた前記山留め壁の傾きの管理目標である管理領域(例えば、後述の1次管理領域23B、2次管理領域23C)と、当該管理領域を挟んで両側に設けられたオーバー領域(例えば、後述のオーバー領域23D)と、が設けられ、前記管理領域および前記オーバー領域は、目盛りおよび/または互いに異なる色で区分されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、山留め壁の両端部同士の間にピアノ線を張設し、ピアノ線の下方に山留め壁の傾きを管理するための管理領域およびオーバー領域を設けた計測部を配置したので、計測部上のピアノ線の位置を読み取ることで、山留め壁の初期位置からの傾き量を一目で確認して管理できる。また、山留め壁の傾き度合いが予め設定した管理領域内の留まっているのか、あるいはオーバー領域まで達しているのか、についても、一目で確認して管理できる。
また、変形測定装置は、ピアノ線と平板状またはシート状の計測部とで構成された簡易な構造であり、低コストで簡単に製作できる。
【0010】
第2の発明の山留め壁の変形測定システム(例えば、後述の変形測定システム30)は、複数の上述の山留め壁の変形測定装置と、当該変形測定装置の計測部を撮影する撮影機器(例えば、後述の監視カメラ40)と、当該撮影機器で撮影した画像を処理する画像処理装置(例えば、後述のコンピュータ50)と、を備え、当該画像処理装置は、前記撮影機器で撮影した画像に基づいて、前記ピアノ線の前記計測部上の位置を計測し、前記ピアノ線が前記計測部上の所定の領域(例えば、後述の2次管理領域23C、オーバー領域23D)に位置した場合には、警報を発令することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ピアノ線が所定の管理領域(例えば、後述の1次管理領域23B、2次管理領域23C)から外れた場合、コンピュータが警報を発令する。ここで、管理領域とは、地下工事の精度や安全性を確保するために、山留め壁の変形を管理できる範囲である。例えば、1次管理領域は、山留め壁の変形を許容できる範囲であり、この1次管理領域内であれば、適切な処置を施すことによって山留め壁の変形を元に戻すことが可能である。また、2次管理領域は、山留め壁の変形を許容できる範囲であり、この2次管理領域内であれば、山留め壁の変形を元に戻すことはできないが、山留め壁を適宜補強することで維持することが可能である。オーバー領域は、山留め壁が倒壊する可能性が高いため、建設作業員に避難を指示すべき範囲である。よって、警報に従って適切な行動をとることで、山留め壁の過大な変形を防止して、山留め壁の自立性を確保できる。
また、コンピュータが警報を発令するため、作業員が各変形測定装置を巡回して目視で測定する必要がなく、山留め壁の管理に必要なコストを低減できる。
【0012】
第3の発明の山留め構造(例えば、後述の山留め構造1)は、山留め壁と、当該山留め壁の変形を測定する上述の変形測定システムと、を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、山留め壁の初期位置からの傾きを一目で確認して管理できる。また、警報に従って、ピアノ線が所定の管理領域内に収まるように適切な作業を行うことで、山留め壁の過大な変形を防止して、山留め壁の自立性を確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で山留め壁の傾きを一目で容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る山留め壁の平面図である
【
図4】
図2の破線Bおよび破線Cで囲んだ部分の拡大図である。
【
図5】前記山留め壁の計測板の平面図および断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る山留め構造の構成を示すブロック図である。
【
図8】前記山留め構造のコンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、山留め壁の変形測定方法として、山留め壁の倒れ度合いを管理するために、張設されたピアノ線の下方に計測板を備えた山留め壁の変形測定装置と、その変形測定装置の計測板上のピアノ線を管理カメラで撮影し、その撮影画像から読み取ったピアノ線の位置情報に基づき、山留め壁の倒れを管理して警報を発令する山留め壁の変形測定システム、およびこれらの装置を備えた山留め構造である。
具体的には、第1実施形態は、山留め壁の変形測定装置(
図1〜
図5)であり、第2実施形態は、山留め壁の変形測定システム(
図6〜
図8)である。
【0017】
以下、本発明の第1、第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態は、山留め壁の倒れ度合いを管理するために、張設されたピアノ線の下方に、目盛りとともに色分け区分された計測板を備えた山留め壁の変形測定装置である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る変形測定装置20が取り付けられた山留め壁10の平面図であり、
図2は、山留め壁10の縦断面図である。
図3は、
図1の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
図4は、
図2の破線Bおよび破線Cで囲んだ部分の拡大図である。
【0018】
山留め壁10は、SMW(Soil Mixing Wall)工法や親杭矢板工法により、地盤11に構築されている。この山留め壁10で囲まれた内側の地盤11は、床付面12まで掘削されている。山留め壁10には、H形鋼である芯材13が所定間隔おきに配置されている。
変形測定装置20は、
図1および
図2に示すように、山留め壁10の変形を測定する装置であり、山留め壁10の水平方向両端側の芯材13の頂部同士の間に張設されたピアノ線21と、山留め壁10の所定の芯材13の下端側に設けられたブラケット22と、ブラケット22の上面に設置されてピアノ線21の下方に位置する平板状の計測部としての計測板23と、を備える。
【0019】
図5は、計測板23の平面図および断面図である。
計測板23の上面には、この計測板23を設置した際のピアノ線21の平面上の位置である初期位置23Aと、初期位置23Aを挟んで両側に設けられて山留め壁10の傾きの1次管理目標である1次管理領域23Bと、1次管理領域23Bを挟んで両側に設けられて山留め壁10の傾きの2次管理目標である2次管理領域23Cと、2次管理領域23Cを挟んで両側に設けられたオーバー領域23Dと、が設けられている。1次管理領域23B、2次管理領域23C、およびオーバー領域23Dは、目盛りおよび互いに異なる色で区分されている。
【0020】
また、計測板23の上面には、計測位置を表わすピアノ線計測番号と、山留め壁の計測高さ位置を示す山留めCASE番号が示されており、これにより、計測位置を明確に表示する。
また、計測板23の下面には、磁石231が設けられており、この磁石231により、計測板23は、鋼製のブラケット22の上面に固定される。
例えば、地盤面から床付面までが10m程度の山留め壁では、山留め壁の掘削側への倒れ度合いの1次管理領域は10cm程度の幅であり、2次管理領域は2cm程度の幅であり、オーバー領域は初期位置から12cm以上離れた部分である。また、山留め壁の背面側への傾斜度合いの1次管理領域は10cm程度の幅であり、2次管理領域は10cm程度の幅であり、オーバー領域は初期位置から20cm以上離れた部分である。
【0021】
以上の変形測定装置20は、以下のようにして使用する。
まず、
図4に示すように、現場の作業員がピアノ線21を真上から見下ろすことで、ピアノ線21の計測板23上の位置を目視で確認し、このピアノ線21の計測板23上の位置を初期位置23Aとする。
その後、定期的に、現場の作業員がピアノ線21を真上から見下ろすことで、ピアノ線21の計測板23上の位置を目視で確認する。
【0022】
山留め壁10が変形すると、例えば、
図1および
図2中二点鎖線で示すように、平面視では、山留め壁10の中央部が内側(掘削側)に膨らんでくるとともに、立面視では、山留め壁10の上端部が内側(掘削側)に倒れてくる。この場合、ピアノ線21の位置は、初期位置23Aから、
図5の下方側に移動する。一方、山留め壁10の上端部が外側(背面側)に倒れてくる場合、ピアノ線21の位置は、初期位置23Aから、
図5の上方側に移動する。
このピアノ線21が所定の領域例えば2次管理領域23Cに位置した場合には、作業員は、警報を発令する。その後、この山留め壁10に適切な補強を行って、ピアノ線21がオーバー領域23Dまで到達するのを防止する。
【0023】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)山留め壁10の両端部同士の間にピアノ線21を張設し、ピアノ線21の下方に山留め壁10の傾きを管理するための1次管理領域23B、2次管理領域23C、およびオーバー領域23Dを設けた計測板23を配置したので、計測板23上のピアノ線21の位置を読み取ることで、山留め壁10の初期位置からの傾きを一目で確認して管理できる。また、変形測定装置20をピアノ線21と板材である計測板23とで構成したので、簡易な構造であり、変形測定装置20を低コストで簡単に製作できる。
【0024】
〔第2実施形態〕
本実施形態は、第1実施形態の変形測定装置におけるピアノ線の計測板上の位置を撮影し、この撮影画像に基づいて山留め壁の倒れを管理し、警報を発令する山留め壁の変形測定システムである。
図6は、本発明の第2実施形態に係る変形測定装置20が適用された山留め構造1の構成を示すブロック図である。
本実施形態では、変形測定装置20を作業員が目視で確認するのではなく、監視カメラ40で変形測定装置20を撮影し、この撮影した画像をコンピュータ50で処理する点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、山留め構造1は、山留め壁10と、この山留め壁10の変形を測定する複数の変形測定システム30と、を備える。
【0025】
変形測定システム30は、山留め壁10の変形を測定するための第1実施形態の変形測定装置20と、変形測定装置20を撮影する撮影機器としての監視カメラ40と、監視カメラ40に有線あるいは無線の通信回線31を介して接続された画像処理装置としてのコンピュータ50と、を備える。
例えば、監視カメラ40を、ワイヤレスネットワークカメラとすることで、監視カメラ40とコンピュータ50を有線ケーブルで接続する必要がなく、本実施形態の山留め壁の変形測定システム30を容易に構築できる。
【0026】
図7は、山留め壁10の縦断面図である。
監視カメラ40は、ブラケット41を介して芯材13の頂部に固定されている。この監視カメラ40は、計測板23の直上でかつピアノ線21の上方に配置されており、ピアノ線21の計測板23上の位置を撮影して、画像情報として送信するものである。
【0027】
図8は、コンピュータ50の構成を示すブロック図である。
コンピュータ50は、受信部51、表示部52、および演算処理部53、および記憶部54を備える。
受信部51は、監視カメラ40から送信される画像情報を受信するものである。
表示部52は、受信部51で受信した画像情報や演算処理部53から出力された情報を表示するものであり、例えば、モニタである。
【0028】
演算処理部53は、記憶部54に記憶されたプログラムを読み出して、動作制御を行うOS(Operating System)上に展開して実行するものである。
具体的には、演算処理部53は、監視カメラ40で撮影した画像情報に基づいて、ピアノ線21の計測板23上の位置を計測する計測部531と、ピアノ線21が計測板23上の所定の領域例えば2次管理領域23Cあるいはオーバー領域23Dに位置した場合には、警報を発令する警報発令部532と、を備える。
記憶部54は、種々の情報を記憶するものであり、例えばハードディスクである。この記憶部54は、ピアノ線21の計測板23上の位置を計測時刻とともに記憶する。
【0029】
以上の変形測定システム30は、以下のように動作する。
すなわち、常時、監視カメラ40により計測板23上のピアノ線21の位置を撮影し、コンピュータ50により、この画像情報を解析して、ピアノ線21上の計測板23上の位置を求めて、記憶部54に記憶する。また、コンピュータ50は、ピアノ線21が計測板23上の2次管理領域23Cあるいはオーバー領域23Dに位置した場合には、警報を発令する。
【0030】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(2)ピアノ線21が1次管理領域23Bから外れた場合、コンピュータ50が警報を発令する。よって、作業員が各変形測定装置を巡回して目視で測定する必要がなく、山留め壁10の管理に必要なコストを低減できる。また、この警報に従って、ピアノ線21が所定の管理領域内に収まるように適切な作業を行うことで、山留め壁10の過大な変形を防止して、山留め壁10の自立性を確保できる。
(3)ピアノ線21の計測板23上の位置をコンピュータ50の記憶部54に記録したので、山留め壁10の経時変化を容易に管理できる。
【0031】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第1実施形態では、作業員がピアノ線21の計測板23上の位置を目視で確認したが、これに限らず、ピアノ線と計測板との距離が離れており、ピアノ線の計測板上の位置を目視で確認することが難しい場合には、ピアノ線に下げ振りを取り付けて、下げ振りの下端がピアノ線の計測板上の位置を指すようにしてもよい。
【0032】
また、第2実施形態では、監視カメラ40とコンピュータ50とを通信回線31を介して、直接、接続したが、これに限らず、インターネット回線を介して接続してもよい。
また、第2実施形態では、監視カメラ40で撮影した画像に基づいて、コンピュータ50が山留め壁10を監視したが、これに限らない。すなわち、作業員が、コンピュータ50の表示部52に表示された画像を見ることで、山留め壁10を監視してもよいし、コンピュータ50と作業員とで二重に山留め壁を監視してもよい。
また、上述の各実施形態では、計測板23を山留め壁10の下端側に設置されたが、これに限らず、山留め壁の上端側に設けて、山留め壁の頂部の変形を測定してもよい。この場合、計測板を山留め壁の上端側の腹起し材の上面に設置してもよい(実施図は省略)。
また、上述の各実施形態では、計測部を平板状の計測板23としたが、これに限らず、計測部をシート状の計測シートとしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…山留め構造 10…山留め壁 11…地盤 12…床付面 13…芯材
20…変形測定装置 21…ピアノ線 22…ブラケット 23…計測板(計測部)
23A…初期位置 23B…1次管理領域 23C…2次管理領域
23D…オーバー領域
30…変形測定システム 31…通信回線 40…監視カメラ 41…ブラケット
50…コンピュータ 51…受信部 52…表示部 53…演算処理部
54…記憶部 231…磁石 531…計測部 532…警報発令部