【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施例1に係る電動機駆動装置の全体を示すブロック構成図である。
図2は、本発明の実施例1の
図1に示す回路図の各部の波形例である。
図1のAからGで示すポイントの波形が
図2の各波形AからGに相当する。以下、これらの図を参照して説明する。
【0020】
電動機駆動システム100は、直流電源1(直流電源供給手段)、入力電圧検出器2、入力電流検出器3−1,3−2,・・・3−n、コンデンサ4−1,4−2,・・・4−n、出力電流検出器5−1,5−2,・・・5−n、出力電圧検出器6−1,6−2,・・・6−n、速度制御装置9、単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−n、単相インバータ30−1,30−2,・・・30−n、及び負荷としてのn相の多相巻線電動機40
(以下、単相の場合または多相と単相を特に区別する必要がない場合は電動機40と記す場合もある。)などを有して構成される。
【0021】
多相巻線電動機40は、各相を構成する複数個(n個)の巻線を備えており、各巻線の相互間が電気的に絶縁されている。これらの、各々の巻線に単相インバータ30−1、30−2、30−nの出力を接続して交流電力を供給することによって多相巻線電動機40が駆動される。
【0022】
共通に設けられた速度制御装置9は、図示されない上位制御装置から送信され、時間的に変化する速度指令に応じた回転速度となるように電流指令を各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに送る。そして各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nは、電流指令に応じた交流電流を多相巻線電動機40の巻線に流す様に各単相インバータ30−1、30−2、30−nにゲートパルスを出力する。
【0023】
多相巻線電動機40の軸に取り付けたられた回転角度検出器41は、多相巻線電動機40の機械角θMを検出し、速度制御装置9に入力する。この機械角θ
Mを速度検出回路91で微分することによって実速度を演算する。そして減算器92によって、速度指令と実速度との速度偏差を求め、速度制御器93に入力する。
【0024】
速度制御器93は、速度偏差が最小となるように比例積分制御などを行なって、電流指令を出力する。
【0025】
電気角演算回路94は、多相巻線電動機
40の極数に応じて機械角θMから電気角θeを演算し、この電気角θeを各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0026】
入力電圧検出器2は、直流電源1の電圧を検出し、その検出値(入力電圧)を単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0027】
直流電源1から分岐されたn個の直流母線の直流電力は、n個の各入力電流検出器3−1,3−2,・・・3−nを経由し、さらにn個の各コンデンサ4−1,4−2,・・・4−nを経由して平滑化され、n個の各単相インバータ30−1、30−2、30−nに供給される。
【0028】
各入力電流検出器3−1,3−2,・・・3−nは、直流電源1から各コンデンサ4−1,4−2,・・・4−n及び各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nに供給される電流を検出し、その検出値である直流入力電流検出値Ii−1、Ii−2、・・・Ii−nを各々各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。なお、直流入力電流検出値Ii−1、Ii−2、・・・Ii−nには直流分と各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nが出力する交流電流の周波数の2倍の周波数成分(2f)が含まれる。
【0029】
各出力電流検出器5−1,5−2,・・・5−nは、各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nから出力される出力電圧を検出し、その検出値を各々各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0030】
各出力電圧検出器6−1,6−2,・・・6−nは、各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nから出力される出力電圧を検出し、その検出値を各々各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0031】
次に第1相用の単相インバータ制御装置10−1について説明する。
【0032】
<直流分抽出>
入力電流検出器3−1で検出された直流入力電流Ii(以下、入力電流と記す。
図1のA、
図2(1)の波形A参照)は、平均電流算出回路11及び減算回路12(第1の減算回路)に入力される。
【0033】
平均電流算出回路11(直流成分検出手段)は、入力電流検出器3−1から出力された入力電流Iiの平均値である入力平均電流Iiav(
図1のB、
図2(1)の波形B参照)を下式(1)により算出する。
【0034】
ここでTは、インバータの基本波出力周波数の周期より長い時間とする。すなわち、平均電流算出回路11は、直流成分検出手段である。
【0035】
<交流分検出>
減算回路12(第1の減算回路)は、入力電流検出器3−1で検出された入力電流Iiから平均電流算出回路11で算出された入力平均電流Iiavを減算する。この減算の結果、入力電流の交流分が検出される(
図1のC、
図2(2)の波形C参照)。
【0036】
<入力電流実効値算出>
入力電圧検出器2によって検出された入力電圧、出力電流検出器5−1によって検出されたインバータ出力電流及び出力電圧検出器6−1によって検出されたインバータ出力電圧は、入力電流実効値算出部14に入力される。
【0037】
入力電流実効値算出部14は、出力電圧検出器6−1の出力であるインバータ出力電圧検出値、及び出力電流検出器5−1のインバータ出力電流検出値から各々インバータ30Mの基本波の出力電圧実効値及び基本波の出力電流実効値を算出する。また、インバータ出力電圧検出値の基本波と、及びインバータ出力電流検出値の基本波の位相差からインバータ30−1の出力力率を算出する。また、効率選択回路27から出力される単相インバータ30−1の変換効率ηを選択し、下式(2)に示す演算を行い、入力電流実効値Iieを算出する。
【0038】
尚、上記では、入力電流実効値算出部14で使用するインバータ出力電圧として出力電圧検出器6−1によって検出された値を使用しているが、後述する電流制御部26内でPWMパルスを発生する時に使用する電圧指令を用いてもよい。
【0039】
<運転周波数の2f分抽出>
平均電流算出回路11から出力された入力平均電流Iiavを2乗回路13で2乗し、入力平均電流Iiavの2乗値を算出する。
【0040】
入力電流実効値算出部14から出力された入力電流の実効値Iieを2乗回路15で2乗し、入力電流実効値Iieの2乗値を算出する。
【0041】
減算回路16は、2乗回路15の出力である入力電流実効値Iieの2乗値から、2乗回路13の出力である入力平均電流Iiavの2乗値を減算する。
【0042】
平方根算出回路17は、減算回路16から出力された差分の平方根を算出し出力する。上記算出された差分には、単相インバータの出力の周波数の2倍の成分(2f成分)が含まれているので、上記差分の平方根は、入力電流検出器3−1を通過した電流に含まれる、単相インバータ30−1の出力周波数の2倍の成分(2f)の実効値(2f成の分実効値)が算出されたことになる。
【0043】
<正弦波ピーク値の算出>
乗算回路19は、平方根算出回路17から出力された値に、設定器18で設定された値である√2を乗算し出力する。この乗算によって乗算回路19は入力電流検出器3−1を通過した電流に含まれる、単相インバータ30−1の出力周波数の2倍の成分(2f)のピーク値相当を出力する。乗算回路19の出力は正弦演算回路21に入力される。
【0044】
<理想的な2f成分入力電流の算出>
速度制御装置9内の電気角演算回路94の出力である電気角θeは、
単相インバータ
制御装置10−1の位相調整回路2
9で調整位相を加算された後、正弦算出回路20及び電流制御
部26に入力される。
【0045】
位相調整回路2
9は、各々の単
相インバータ30−1,30−2・・・30―nが電動機40の異なる相の巻線に接続するので、同一機械角たいして、各相の巻線の電気角は異なる、よって、その相違を補正するために入力値に対して、例えば一定量をシフトする等により補正する回路である。
【0046】
正弦算出回路20は、位相調整回路2
9の出力した値の2倍の値を角度としてその正弦を出力する。即ち
位相調整回路2
9の出力をθ1とすると、正弦算出回路20の出力はsin(2θ1)である。
【0047】
乗算回路21は、乗算回路19の出力と正弦算出回路20の出力を乗算し減算回路22に出力する。乗算回路21の出力は、下式(3)に示すように入力電流に含まれる理想的な2f成分の電流の瞬時値を算出することになる。(
図1のD、
図2波形D参照)。
【0048】
ここでIieeは平方根算出回路17の出力である。
【0049】
以上のように、入力電流実効値算出部14、2乗回路13および15、減算回路16、平方根算出回路17、設定器18、乗算回路19および21、正弦算出回路20にて入力電流に含まれる、出力電流の基本波の2倍周波数成分瞬時値算出手段を構成している。
【0050】
<高調波電流分抽出>
減算回路22(第2の減算回路)は、減算回路12から出力された入力電流の交流分(
図2(2)波形C参照)から、乗算回路22から出力された理想的な2f成分の入力電流(
図2(3)波形D参照)を減算する。この減算の結果、入力電流に含まれる高調波電流分が抽出される(
図2(4)波形E参照)。この高調波電流分には、上述した振動電流(リプル電流)が含まれており、ダンピング制御部の入力信号となる。
【0051】
<ダビング制御部>
ダンピング制御部は、微分回路23、1次遅れ回路24及び減算回路25などを有して構成される。
【0052】
微分回路23は、上記減算回路22から出力された高調波分を微分する。この微分によって進み位相の高調波分が生成される。
【0053】
1次遅れ回路24は、ローパスフィルタで構成され、微分回路23の出力信号に対して、設定された時定数を超える高域ノイズをカットして生成した進み位相の高調波分
(補正信号)を減算回路25(第3の減算回路)の−側端子に入力する。
【0054】
減算回路25(第3の減算回路)の+側端子には速度制御装置9内の速度制御器93の出力である電流指令が入力される。
【0055】
減算回路25(第3の減算回路)は、+側端子に入力された電流指令から−側端子に入力された進み位相の差分を減算する。この減算により、電流指令に、上記振動電流の逆位相を加えて補正された電流指令が生成され、電流制御部26に入力される(
図2(5)の波形F参照)。
【0056】
<電流制御部>
電流制御部26は、減算回路25から出力された補正された電流指令と、出力電流検出器5−1によって検出されたインバータ出力電流を入力し、単相インバータ30−1を制御するPWMパルスを生成して出力する。PWMパルスは例えば、補正された電流指令と検出されたインバータ出力電流に基づき、電圧指令を生成し、三角波キャリアとの比較により生成される。単相インバータ30−1は上記によって生成されたPWMパルスに基づきスイッチングを行う。
【0057】
このように構成することにより、上記振動電流が上昇したとき、電流指令を下げ、振動電流が減少したとき電流指令を上げた電流制御を行うことにより、安定化を保つことができる。この結果、インバータ出力電流は、
図2(6)の波形Gに示すように、振動電流を抑制することができる。
【0058】
<変換効率ηについて>
上述した単相インバータ30−1の変換効率ηは、効率選択回路27内に推定変換効率として予めメモリテーブルとして保存されており、入力電流実効値算出部14で入力電流実効値を算出する際に、例えば単相インバータ30−1の出力電流に応じて選択され、使用される。尚、
図1においては単相インバータ30−1の出力電流のみで変換効率ηを選択する図としているが、単相インバータ30−1の出力電流に加え、単相インバータ30−1の出力の基本波周波数(多相巻線電動機40の回転速度)も合わせて参照して変換効率ηを選択するようにしてもよい。変換効率ηを使用することにより、上記入力電流実効値の精度が向上する。
【0059】
以上、単相インバータ30−1及び単相インバータ制御装置10−1の動作について説明したが単相インバータ30−2,・・・30−n及び単相インバータ制御装置10−2,・・・10−nについても動作は同様であるので説明は省略する。
【0060】
以上の様に本発明の実施例1によれば直流入力回路に振動電流が発生した場合でも、インバータを安定に運転することができる電動機駆動装置を提供することができる。
【実施例2】
【0061】
図3は本発明の実施例2に係る電動機駆動装置の全体を示すブロック構成図である。この実施例2の各部について、
図1の本発明の実施例1に係る電動機駆動装置の全体を示すブロック構成図の各部と同一部分は同一符号を示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は実施例1では主回路が一つの直流電源がn分岐し、n台の入力電流検出器を経由し各々コンデンサが
nsetと単相インバータがn台接続されていたが、実施例2では主回路一つの直流電源に対し1台の入力電流検出器を経由し1setのコンデンサを経由し単相インバータがn台接続されている。そのため実施例2では単相インバータ制御装置は入力電検出器の検出値を1/nにするゲインを備えている。
【0062】
速度制御装置9及び入力電圧検出器2は、実施例1と同様にその出力を単相インバータ制御装置10A−1,10A−2,・・・10−nに出力する。
【0063】
直流電源1から供給された直流電力は、入力電流検出器3経由し、コンデンサ4を経由して平滑化され、n個の各単相インバータ30−1、30−2、30−nに供給される。
【0064】
電流検出器3は、直流電源1から、コンデンサ4及び各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nに供給される電流を検出し、その検出値である直流入力電流検出値Iiを各々各単相インバータ制御装置10A−1,10A−2,・・・10A−nに出力する。各出力電流検出器5−1,5−2,・・・5−nおよび各出力電圧検出器6−1,6−2,・・・6−nは、各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nから出力される出力電流及び出力電圧を検出し、その検出値を各々各単相インバータ制御装置10A−1,10A−2,・・・10A−nに出力する。
【0065】
次に第1相用の単相インバータ制御装置10A−1について説明する。
入力電流検出器3で検出された入力電流は単相インバータn台分の電流であるため、ゲイン回路28に入力され入力電流値を1/nの値に変換後、平均電流算出回路11及び減算回路12(第1の減算回路)に入力される。以降の動作は実施例1と同様なため説明は省略する。
【0066】
よって本発明の実施例2によれば直流入力回路に振動電流が発生した場合でも、インバータを安定に運転することができる多相巻線電動機駆動装置を提供することができる。
【0067】
以上、実施例1及び実施例2について説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0068】
本発明によれば直流入力回路に振動電流が発生した場合でも、インバータを安定に運転することができる多相巻線電動機駆動装置を提供することができる。