特許第6833654号(P6833654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833654
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】電動機駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210215BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20210215BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
   H02M7/493
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-209571(P2017-209571)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-83624(P2019-83624A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】青木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 順二
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−502835(JP,A)
【文献】 特開2011−036100(JP,A)
【文献】 特開平05−236784(JP,A)
【文献】 特開2003−284355(JP,A)
【文献】 特開2004−104976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/48,7/493,H02P21/00,27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
直流電源に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに接続され、電動機に交流電圧を出力する単相インバータと、
前記単相インバータに速度指令に応じた電流指令を出力する速度制御装置と、
前記直流電源から前記コンデンサ及び前記単相インバータに供給される入力電流を検出する入力電流検出器と、
前記単相インバータの出力電流を検出する出力電流検出器と、
前記電流指令に基づき前記単相インバータを制御する単相インバータ制御装置と、
で構成され、
前記単相インバータ制御装置は、
前記入力電流検出器の検出値から直流成分を検出する直流成分検出手段と、
前記入力電流検出器の検出値から前記直流成分検出手段の出力を減算する第1の減算回路と、
前記出力電流検出器の検出値と前記第1の減算回路の出力から、前記入力電流検出器の検出値に含まれる、前記出力電流の基本波の2倍の周波数の電流成分を算出する2倍周波数成分瞬時値算出手段と、
前記第1の減算回路の出力値から、前記2倍周波数成分瞬時値算出手段の出力を減算する第2の減算回路と、
前記第2の減算回路の出力を入力し、前記電流指令の補正信号を出力するダンピング制御部と、
前記電流指令から前記補正信号を減算する第3の減算回路と、
前記第3の減算回路の出力および、前記出力電流検出器の検出値をもとに、前記単相インバータを制御するPWMパルスを生成して出力する電流制御部と、
を備えたことを特徴とする電動機駆動装置。
【請求項2】
直流電源と、
直流電源に接続された複数のコンデンサと、
前記複数のコンデンサに各々接続され、多相巻線電動機の各相の巻線に交流電圧を出力する複数の単相インバータと、
前記複数の単相インバータに速度指令に応じた電流指令を出力する速度制御装置と、
前記直流電源から前記複数のコンデンサ及び単相インバータに供給される入力電流を各々検出する複数の入力電流検出器と、
前記複数の単相インバータの出力電流を各々検出する複数の出力電流検出器と、
前記電流指令に基づき前記複数の単相インバータを各々制御する複数の単相インバータ制御装置と、
で構成され、
前記複数の各単相インバータ制御装置は、
前記各入力電流検出器の検出値から直流成分を検出する直流成分検出手段と、
前記各入力電流検出器の検出値から前記直流成分検出手段の出力を減算する第1の減算回路と、
前記各出力電流検出器の検出値と前記第1の減算回路の出力から、前記各入力電流検出器の検出値に含まれる、前記各出力電流の基本波の2倍の周波数の電流成分を算出する2倍周波数成分瞬時値算出手段と、
前記第1の減算回路の出力値から、前記2倍周波数成分瞬時値算出手段の値を減算する第2の減算回路と、
前記第2の減算回路の出力を入力し、前記電流指令の補正信号を出力するダンピング制御部と、
前記電流指令から前記補正信号を減算する第3の減算回路と、
前記第3の減算回路の出力および、前記各出力電流検出器の検出値をもとに、前記各単相インバータを制御するPWMパルスを生成して出力する電流制御部と、
を備えたことを特徴とする電動機駆動装置。
【請求項3】
直流電源と、
直流電源に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに各々接続され、多相巻線電動機の各相の巻線に交流電圧を出力する複数の単相インバータと、
前記複数の単相インバータに速度指令に応じた電流指令を出力する速度制御装置と、
前記直流電源から前記コンデンサ及び前記複数の単相インバータに供給される入力電流を一括して検出する入力電流検出器と、
前記複数の単相インバータの出力電流を各々検出する複数の出力電流検出器と、
前記電流指令に基づき前記複数の単相インバータを各々制御する複数の単相インバータ制御装置と、
で構成され、
前記複数の各単相インバータ制御装置は、
前記入力電流検出器の検出値から直流成分を検出する直流成分検出手段と
前記入力電流検出器の検出値から前記直流成分検出手段の出力を減算する第1の減算回路と
前記各出力電流検出器の検出値と前記第1の減算回路の出力から、前記入力電流検出器の検出値に含まれる、前記各出力電流の基本波の2倍の周波数の電流成分を算出する2倍周波数成分瞬時値算出手段と、
前記第1の減算回路の出力値から、前記2倍周波数成分瞬時値算出手段の値を減算する第2の減算回路と、
前記第2の減算回路の出力を入力し、前記電流指令の補正信号を出力するダンピング制御部と、
前記電流指令から前記補正信号を減算する第3の減算回路と、
前記第3の減算回路の出力および、前記各出力電流検出器の検出値をもとに、前記各単相インバータを制御するPWMパルスを生成して出力する電流制御部と、
を備えたことを特徴とする電動機駆動装置。
【請求項4】
前記直流電源の電圧を検出する入力電圧検出器をさらに備え、
前記直流成分検出手段は、
前記入力電流検出器の出力値の平均値を算出する平均電流算出回路で構成され、
前記2倍周波数成分瞬時値算出手段は、
前記単相インバータの出力電圧実効値と前記出力電流の検出値から演算された出力電流実効値および演算された力率を乗算し、変換効率で除して算出された入力電力を、前記入力電圧検出器の出力で除算することにより入力電流実効値の計算値を算出する入力電流実効値算出部と、
前記平均電流算出回路の出力と、前記入力電流実効値算出部で算出された入力電流実効値および、電動機の機械角から変換された前記単相インバータの出力の電気角により演算されることを特徴とする請求項1から請求項3記載の電動機駆動装置。
【請求項5】
前記変換効率は、
あらかじめ定められたメモリテーブルに保存されており、前記出力電流検出器の出力に応じて選択されて使用されることを特徴とする請求項4記載の電動機駆動装置。
【請求項6】
前記ダンピング制御部は、
前記第2の減算回路の出力を微分する微分回路と、
前記微分回路から出力され信号を入力し、1次遅れ信号を出力する1次遅れ回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3記載の電動機駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数台の単相インバータで多相巻線電動機を可変速駆動する電動機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多相巻線電動機は、各巻線の相互間が電気的に絶縁されており、単相インバータを各巻線に接続して可変電圧可変周波数の交流電力を供給することで可変速駆動する。従来、多相巻線電動機を構成する直流電源を共通とする単相インバータにおいて、直流部の電源インピーダンス又は電源から単相インバータまでの配線、単相インバータのコンデンサ容量の条件によって、直流電源の電圧が不安定になり、振動が発生する場合がある。この直流電圧の振動が過大になると、直流過電流や直流過電圧により連続運転が不可能となるため、安定化制御が必要となる。
【0003】
図4は、従来の直流電気鉄道車両駆動装置の一例である。直流電気鉄道車両駆動システム200の誘導電動機240を制御するインバータ210が、ダンピング制御器220を備えた場合の一例である。 直流架線201からパンタグラフ202を介して取り込んだ直流電源は、フィルターリアクトル203及びコンデンサCfで高調波が取り除かれ、上記コンデンサCf両端の電圧は、インバータに供給される。
【0004】
図5は、図4に示すダンピング制御器220の伝達関数E(s)を表現した図である。
【0005】
上記コンデンサCf両端の電圧Vcは、ダンピング制御器220に入力される。
【0006】
ダンピング制御器220は、コンデンサ電圧Vcを検出して位相進み演算(微分)を行い、ダンピング制御における補正電流iqs_dampを算出する。
【0007】
ダンピング制御器220の伝達関数E(s)は、(Kds/(Tfs+1))となる。ここで、Kdは、ダンピング制御ゲインであり、Tfは高域のノイズカットのためのローパスフィルタ時定数である。
【0008】
トルク電流指令値に、トルク電流指令値の振動と逆位相となるように上記算出した補正電流iqs_dampを加える。すなわち、トルク電流指令値から補正電流iqs_dampを減算し、補正されたトルク電流指令信号を生成する。
【0009】
このようにして生成されたトルク電流指令信号は、ベクトル制御部230に入力される。
【0010】
ベクトル制御部230は、インバータ210の出力電流、パルスジェネレータPLGから出力された誘導電動機240の回転数及び上記算出された補正されたトルク電流指令信号を入力し、誘導電動機240に交流電圧を供給するためのPWM信号(PWM Signal)を生成して出力する。
【0011】
インバータ210は、ベクトル制御部230から入力したPWM信号により、誘導電動機240を駆動するための交流電圧を出力する。誘導電動機IMは、インバータから出力された交流電圧により駆動される。
【0012】
なお、直流を交流に変換する電力変換器と、この電力変換器に対して交流の出力電圧指令を与える電圧指令演算手段と、前記電力変換器の出力電圧を検出する電圧検出手段と、この電圧検出手段の検出結果を用いて前記出力電圧指令を補正する電圧指令補正手段を備えた電力変換装置において、前記電力変換器の直流入力電流を演算する直流入力電流演算手段と、ここで演算した直流入力電流値を用いて前記電圧指令演算手段の電圧指令を補正する補正演算手段を備えたことを特徴とする電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−208397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
直流入力回路に振動電流が発生した場合、高調波数の直流電圧共振現象を抑制するため、直流電圧検出を高速化する必要があるが、直流電圧では、コンデンサでリプルが平滑され、これに対応するため微分ゲインを大きくすると、制御が不安定になる場合や、耐ノイズ性能が悪化する等、インバータを安定に運転するために課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の電動機駆動装置は、直流電源と、直流電源に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに接続され、電動機に交流電圧を出力する単相インバータと、前記単相インバータに速度指令に応じた電流指令を出力する速度制御装置と、前記直流電源から前記コンデンサ及び前記単相インバータに供給される入力電流を検出する入力電流検出器と、前記単相インバータの出力電流を検出する出力電流検出器と、前記電流指令に基づき前記単相インバータを制御する単相インバータ制御装置と、で構成され、前記単相インバータ制御装置は、前記入力電流検出器の検出値から直流成分を検出する直流成分検出手段と、前記入力電流検出器の検出値から前記直流成分検出手段の出力を減算する第1の減算回路と、前記出力電流検出器の検出値と前記第1の減算回路の出力から、前記入力電流検出器の検出値に含まれる、前記出力電流の基本波の2倍の周波数の電流成分を算出する2倍周波数成分瞬時値算出手段と、前記第1の減算回路の出力値から、前記2倍周波数成分瞬時値算出手段の出力を減算する、第2の減算回路と、前記第2の減算回路の出力を入力し、前記電流指令の補正信号を出力するダンピング制御部と、前記前記電流指令から前記補正信号を減算する第3の減算回路と、前記第3の減算回路の出力および、前記出力電流検出器の検出値をもとに、前記単相インバータを制御するPWMパルスを生成して出力する電流制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、電動機を駆動する電動機駆動装置において、入力電流から直接振動分、高調波分を抽出してダンピング制御を行い、電流指令に逆位相で作用させることにより、直流入力回路に振動電流が発生した場合でも、インバータを安定に運転することができる電動機駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係る電動機駆動装置のブロック構成図。
図2】本発明の実施例1の各部の波形の例を示す図。
図3】本発明の実施例2に係る電動機駆動装置のブロック構成図。
図4】従来の直流電気鉄道車両駆動装置の一例。
図5図4に示すダンピング制御器の伝達関数を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施例1に係る電動機駆動装置の全体を示すブロック構成図である。図2は、本発明の実施例1の図1に示す回路図の各部の波形例である。図1のAからGで示すポイントの波形が図2の各波形AからGに相当する。以下、これらの図を参照して説明する。
【0020】
電動機駆動システム100は、直流電源1(直流電源供給手段)、入力電圧検出器2、入力電流検出器3−1,3−2,・・・3−n、コンデンサ4−1,4−2,・・・4−n、出力電流検出器5−1,5−2,・・・5−n、出力電圧検出器6−1,6−2,・・・6−n、速度制御装置9、単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−n、単相インバータ30−1,30−2,・・・30−n、及び負荷としてのn相の多相巻線電動機40(以下、単相の場合または多相と単相を特に区別する必要がない場合は電動機40と記す場合もある。)などを有して構成される。
【0021】
多相巻線電動機40は、各相を構成する複数個(n個)の巻線を備えており、各巻線の相互間が電気的に絶縁されている。これらの、各々の巻線に単相インバータ30−1、30−2、30−nの出力を接続して交流電力を供給することによって多相巻線電動機40が駆動される。
【0022】
共通に設けられた速度制御装置9は、図示されない上位制御装置から送信され、時間的に変化する速度指令に応じた回転速度となるように電流指令を各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに送る。そして各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nは、電流指令に応じた交流電流を多相巻線電動機40の巻線に流す様に各単相インバータ30−1、30−2、30−nにゲートパルスを出力する。
【0023】
多相巻線電動機40の軸に取り付けたられた回転角度検出器41は、多相巻線電動機40の機械角θMを検出し、速度制御装置9に入力する。この機械角θを速度検出回路91で微分することによって実速度を演算する。そして減算器92によって、速度指令と実速度との速度偏差を求め、速度制御器93に入力する。
【0024】
速度制御器93は、速度偏差が最小となるように比例積分制御などを行なって、電流指令を出力する。
【0025】
電気角演算回路94は、多相巻線電動機40の極数に応じて機械角θMから電気角θeを演算し、この電気角θeを各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0026】
入力電圧検出器2は、直流電源1の電圧を検出し、その検出値(入力電圧)を単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0027】
直流電源1から分岐されたn個の直流母線の直流電力は、n個の各入力電流検出器3−1,3−2,・・・3−nを経由し、さらにn個の各コンデンサ4−1,4−2,・・・4−nを経由して平滑化され、n個の各単相インバータ30−1、30−2、30−nに供給される。
【0028】
各入力電流検出器3−1,3−2,・・・3−nは、直流電源1から各コンデンサ4−1,4−2,・・・4−n及び各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nに供給される電流を検出し、その検出値である直流入力電流検出値Ii−1、Ii−2、・・・Ii−nを各々各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。なお、直流入力電流検出値Ii−1、Ii−2、・・・Ii−nには直流分と各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nが出力する交流電流の周波数の2倍の周波数成分(2f)が含まれる。
【0029】
各出力電流検出器5−1,5−2,・・・5−nは、各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nから出力される出力電圧を検出し、その検出値を各々各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0030】
各出力電圧検出器6−1,6−2,・・・6−nは、各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nから出力される出力電圧を検出し、その検出値を各々各単相インバータ制御装置10−1,10−2,・・・10−nに出力する。
【0031】
次に第1相用の単相インバータ制御装置10−1について説明する。
【0032】
<直流分抽出>
入力電流検出器3−1で検出された直流入力電流Ii(以下、入力電流と記す。図1のA、図2(1)の波形A参照)は、平均電流算出回路11及び減算回路12(第1の減算回路)に入力される。
【0033】
平均電流算出回路11(直流成分検出手段)は、入力電流検出器3−1から出力された入力電流Iiの平均値である入力平均電流Iiav(図1のB、図2(1)の波形B参照)を下式(1)により算出する。
【0034】
ここでTは、インバータの基本波出力周波数の周期より長い時間とする。すなわち、平均電流算出回路11は、直流成分検出手段である。
【0035】
<交流分検出>
減算回路12(第1の減算回路)は、入力電流検出器3−1で検出された入力電流Iiから平均電流算出回路11で算出された入力平均電流Iiavを減算する。この減算の結果、入力電流の交流分が検出される(図1のC、図2(2)の波形C参照)。
【0036】
<入力電流実効値算出>
入力電圧検出器2によって検出された入力電圧、出力電流検出器5−1によって検出されたインバータ出力電流及び出力電圧検出器6−1によって検出されたインバータ出力電圧は、入力電流実効値算出部14に入力される。
【0037】
入力電流実効値算出部14は、出力電圧検出器6−1の出力であるインバータ出力電圧検出値、及び出力電流検出器5−1のインバータ出力電流検出値から各々インバータ30Mの基本波の出力電圧実効値及び基本波の出力電流実効値を算出する。また、インバータ出力電圧検出値の基本波と、及びインバータ出力電流検出値の基本波の位相差からインバータ30−1の出力力率を算出する。また、効率選択回路27から出力される単相インバータ30−1の変換効率ηを選択し、下式(2)に示す演算を行い、入力電流実効値Iieを算出する。
【0038】
尚、上記では、入力電流実効値算出部14で使用するインバータ出力電圧として出力電圧検出器6−1によって検出された値を使用しているが、後述する電流制御部26内でPWMパルスを発生する時に使用する電圧指令を用いてもよい。
【0039】
<運転周波数の2f分抽出>
平均電流算出回路11から出力された入力平均電流Iiavを2乗回路13で2乗し、入力平均電流Iiavの2乗値を算出する。
【0040】
入力電流実効値算出部14から出力された入力電流の実効値Iieを2乗回路15で2乗し、入力電流実効値Iieの2乗値を算出する。
【0041】
減算回路16は、2乗回路15の出力である入力電流実効値Iieの2乗値から、2乗回路13の出力である入力平均電流Iiavの2乗値を減算する。
【0042】
平方根算出回路17は、減算回路16から出力された差分の平方根を算出し出力する。上記算出された差分には、単相インバータの出力の周波数の2倍の成分(2f成分)が含まれているので、上記差分の平方根は、入力電流検出器3−1を通過した電流に含まれる、単相インバータ30−1の出力周波数の2倍の成分(2f)の実効値(2f成の分実効値)が算出されたことになる。
【0043】
<正弦波ピーク値の算出>
乗算回路19は、平方根算出回路17から出力された値に、設定器18で設定された値である√2を乗算し出力する。この乗算によって乗算回路19は入力電流検出器3−1を通過した電流に含まれる、単相インバータ30−1の出力周波数の2倍の成分(2f)のピーク値相当を出力する。乗算回路19の出力は正弦演算回路21に入力される。
【0044】
<理想的な2f成分入力電流の算出>
速度制御装置9内の電気角演算回路94の出力である電気角θeは、単相インバータ制御装置10−1の位相調整回路2で調整位相を加算された後、正弦算出回路20及び電流制御26に入力される。
【0045】
位相調整回路2は、各々の単インバータ30−1,30−2・・・30―nが電動機40の異なる相の巻線に接続するので、同一機械角たいして、各相の巻線の電気角は異なる、よって、その相違を補正するために入力値に対して、例えば一定量をシフトする等により補正する回路である。
【0046】
正弦算出回路20は、位相調整回路2の出力した値の2倍の値を角度としてその正弦を出力する。即ち位相調整回路の出力をθ1とすると、正弦算出回路20の出力はsin(2θ1)である。
【0047】
乗算回路21は、乗算回路19の出力と正弦算出回路20の出力を乗算し減算回路22に出力する。乗算回路21の出力は、下式(3)に示すように入力電流に含まれる理想的な2f成分の電流の瞬時値を算出することになる。(図1のD、図2波形D参照)。
【0048】
ここでIieeは平方根算出回路17の出力である。
【0049】
以上のように、入力電流実効値算出部14、2乗回路13および15、減算回路16、平方根算出回路17、設定器18、乗算回路19および21、正弦算出回路20にて入力電流に含まれる、出力電流の基本波の2倍周波数成分瞬時値算出手段を構成している。
【0050】
<高調波電流分抽出>
減算回路22(第2の減算回路)は、減算回路12から出力された入力電流の交流分(図2(2)波形C参照)から、乗算回路22から出力された理想的な2f成分の入力電流(図2(3)波形D参照)を減算する。この減算の結果、入力電流に含まれる高調波電流分が抽出される(図2(4)波形E参照)。この高調波電流分には、上述した振動電流(リプル電流)が含まれており、ダンピング制御部の入力信号となる。
【0051】
<ダビング制御部>
ダンピング制御部は、微分回路23、1次遅れ回路24及び減算回路25などを有して構成される。
【0052】
微分回路23は、上記減算回路22から出力された高調波分を微分する。この微分によって進み位相の高調波分が生成される。
【0053】
1次遅れ回路24は、ローパスフィルタで構成され、微分回路23の出力信号に対して、設定された時定数を超える高域ノイズをカットして生成した進み位相の高調波分(補正信号)を減算回路25(第3の減算回路)の−側端子に入力する。
【0054】
減算回路25(第3の減算回路)の+側端子には速度制御装置9内の速度制御器93の出力である電流指令が入力される。
【0055】
減算回路25(第3の減算回路)は、+側端子に入力された電流指令から−側端子に入力された進み位相の差分を減算する。この減算により、電流指令に、上記振動電流の逆位相を加えて補正された電流指令が生成され、電流制御部26に入力される(図2(5)の波形F参照)。
【0056】
<電流制御部>
電流制御部26は、減算回路25から出力された補正された電流指令と、出力電流検出器5−1によって検出されたインバータ出力電流を入力し、単相インバータ30−1を制御するPWMパルスを生成して出力する。PWMパルスは例えば、補正された電流指令と検出されたインバータ出力電流に基づき、電圧指令を生成し、三角波キャリアとの比較により生成される。単相インバータ30−1は上記によって生成されたPWMパルスに基づきスイッチングを行う。
【0057】
このように構成することにより、上記振動電流が上昇したとき、電流指令を下げ、振動電流が減少したとき電流指令を上げた電流制御を行うことにより、安定化を保つことができる。この結果、インバータ出力電流は、図2(6)の波形Gに示すように、振動電流を抑制することができる。
【0058】
<変換効率ηについて>
上述した単相インバータ30−1の変換効率ηは、効率選択回路27内に推定変換効率として予めメモリテーブルとして保存されており、入力電流実効値算出部14で入力電流実効値を算出する際に、例えば単相インバータ30−1の出力電流に応じて選択され、使用される。尚、図1においては単相インバータ30−1の出力電流のみで変換効率ηを選択する図としているが、単相インバータ30−1の出力電流に加え、単相インバータ30−1の出力の基本波周波数(多相巻線電動機40の回転速度)も合わせて参照して変換効率ηを選択するようにしてもよい。変換効率ηを使用することにより、上記入力電流実効値の精度が向上する。
【0059】
以上、単相インバータ30−1及び単相インバータ制御装置10−1の動作について説明したが単相インバータ30−2,・・・30−n及び単相インバータ制御装置10−2,・・・10−nについても動作は同様であるので説明は省略する。
【0060】
以上の様に本発明の実施例1によれば直流入力回路に振動電流が発生した場合でも、インバータを安定に運転することができる電動機駆動装置を提供することができる。
【実施例2】
【0061】
図3は本発明の実施例2に係る電動機駆動装置の全体を示すブロック構成図である。この実施例2の各部について、図1の本発明の実施例1に係る電動機駆動装置の全体を示すブロック構成図の各部と同一部分は同一符号を示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は実施例1では主回路が一つの直流電源がn分岐し、n台の入力電流検出器を経由し各々コンデンサがnsetと単相インバータがn台接続されていたが、実施例2では主回路一つの直流電源に対し1台の入力電流検出器を経由し1setのコンデンサを経由し単相インバータがn台接続されている。そのため実施例2では単相インバータ制御装置は入力電検出器の検出値を1/nにするゲインを備えている。
【0062】
速度制御装置9及び入力電圧検出器2は、実施例1と同様にその出力を単相インバータ制御装置10A−1,10A−2,・・・10−nに出力する。
【0063】
直流電源1から供給された直流電力は、入力電流検出器3経由し、コンデンサ4を経由して平滑化され、n個の各単相インバータ30−1、30−2、30−nに供給される。
【0064】
電流検出器3は、直流電源1から、コンデンサ4及び各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nに供給される電流を検出し、その検出値である直流入力電流検出値Iiを各々各単相インバータ制御装置10A−1,10A−2,・・・10A−nに出力する。各出力電流検出器5−1,5−2,・・・5−nおよび各出力電圧検出器6−1,6−2,・・・6−nは、各単相インバータ30−1、30−2、・・・30−nから出力される出力電流及び出力電圧を検出し、その検出値を各々各単相インバータ制御装置10A−1,10A−2,・・・10A−nに出力する。
【0065】
次に第1相用の単相インバータ制御装置10A−1について説明する。
入力電流検出器3で検出された入力電流は単相インバータn台分の電流であるため、ゲイン回路28に入力され入力電流値を1/nの値に変換後、平均電流算出回路11及び減算回路12(第1の減算回路)に入力される。以降の動作は実施例1と同様なため説明は省略する。
【0066】
よって本発明の実施例2によれば直流入力回路に振動電流が発生した場合でも、インバータを安定に運転することができる多相巻線電動機駆動装置を提供することができる。
【0067】
以上、実施例1及び実施例2について説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0068】
本発明によれば直流入力回路に振動電流が発生した場合でも、インバータを安定に運転することができる多相巻線電動機駆動装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 電動機駆動システム
1 直流電源
2 入力電圧検出器
3,3−1,3−2,・・・3−n 入力電流検出器
4−1,4−2,・・・4−n コンデンサ
5−1,5−2,・・・5−n 出力電流検出器
6−1,6−2,・・・6−n 出力電圧検出器
9 速度制御装置
10−1,10−2,・・・10−n 単相インバータ制御装置
10A−1,10A−2,・・・10A−n 単相インバータ制御装置
11 平均電流算出回路
12、16、22、25 減算回路
13、15 2乗回路
14 入力電流実効値算出部
17 平方根算出回路
18 設定器
19、21 乗算回路
20 正弦算出回路
23 微分回路
24 一次遅れ回路
26 電流制御部
27 効率選択回路
30−1,30−2,・・・30−n 単相インバータ
40 電動機
41 回転角度検出器


図1
図2
図3
図4
図5