(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のモータのうちの少なくとも一方が発電機の機能を有し、前記一対のモータのうちの少なくとも一方が、その車輪に対して逆回転トルクを与えることができ、且つ、発電機の機能により前記三輪車両の走行エネルギーを回収して前記モータドライバを経由して前記バッテリに電力を供給することができるようになっている、請求項3〜6の何れか一項に記載の三輪車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような前輪部における右側の車輪と左側の車輪が同一の回転力を有する三輪の前輪二輪式車両は、カーブでの旋回時において、姿勢変化に対して安定性を向上させることができる。しかし、特許文献1のような三輪の前輪二輪式車両を含む前輪二輪式或いは後輪二輪式車両は、高速時において旋回する場合のハンドルの操舵性、急に旋回する場合の車両の姿勢安定性、車両の重心が急激に変化する場合の車両制御の追随性、車両の傾斜に対する緩和性が充分ではない、という問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、前輪部と後輪部のうちの少なくとも一方に左右一対の車輪の各々の回転力を互いに独立に制御する一対のモータを備え、更に懸架機構を介して一対の車輪を取り付けることによって、旋回時や路面変化等の走行状態に応じた姿勢制御を行って、姿勢変化に対して安定性を確保する、運転者の作動力によって車輪を回転させて推進することができる車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、前輪部と後輪部のうちの少なくとも一方が左右一対の車輪から構成された、運転者の作動力によって推進することができるようになっている車両が、車両の状態の検知を行い、検知に応答して一対の車輪の各々の回転力を互いに独立に制御できるようになっており、一対の車輪が、懸架機構を介して車両に取り付けられている。
【0008】
本発明の一具体例によれば、車両において、一対の車輪が、懸架機構によって車両に対して傾斜できるようになっている。
【0009】
本発明の一具体例によれば、車両において、一対の車輪が、懸架機構によって車両の高さ方向に対して互いに独立に動作できるようになっている。
【0010】
本発明の一具体例によれば、車両は、バッテリと、バッテリに接続され、一対の車輪のうちの一方の回転力を制御するためのモータ、及び一対の車輪のうちの他方の回転力を制御するためのモータから構成された一対のモータと、状態の検知を行い、検知に基づく状態信号を送信するセンサと、状態信号を演算処理して一対のモータを制御するための制御信号を送信する車体コントローラと、車体コントローラから送信された制御信号に基づいてバッテリと一対のモータとの間の電力供給を制御するモータドライバとを備え、モータドライバによって一対のモータの各々の出力を互いに独立に制御して、一対の車輪の各々の回転力を互いに独立に制御できるようになっている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、車両において、センサが、車両の鉛直方向に対する傾斜の検知を行う傾斜センサを含み、車体コントローラが、状態を補正するようにセンサから送信された状態信号を演算処理して制御信号を送信できるようになっている。
【0012】
本発明の一具体例によれば、車両において、センサが、車両の運転者による作動力の検知を行う作動力センサを更に含み、車体コントローラが、状態を補正するようにセンサから送信された状態信号を演算処理して制御信号を送信できるようになっている。
【0013】
本発明の一具体例によれば、車両において、センサが、車両の速度の検知を行う速度センサを更に含み、車体コントローラが、状態を補正するようにセンサから送信された状態信号を演算処理して制御信号を送信できるようになっている。
【0014】
本発明の一具体例によれば、車両において、一対のモータのうちの少なくとも一方を発電機の機能を有し、一対のモータのうちの少なくとも一方が、その車輪に対して逆回転トルクを与えることができ、且つ、発電機の機能により車両の走行エネルギーを回収してモータドライバを経由してバッテリに電力を供給することができるようになっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一対の車輪の各々にモータを配置し、一対のモータの各々の出力を互いに独立に制御して一対の車輪の各々の回転力を互いに独立に制御させ、更に懸架機構を介して一対の車輪を取り付けることによって、旋回時、路面変化、等による車両の傾斜を補正することで、ふらつきを抑えて走行状態に応じた姿勢制御を行うことができる。また、センサによって車両の状態の検知を行い、その検知結果に基づいて演算処理することによって一対の車輪の各々に対して最適な互いに独立した回転力を発生させることができる。更に、姿勢制御を行う場合において、モータを発電機として作動させて車両の走行エネルギーを回収し、バッテリに対して電力を供給することができる。そして、一対のモータの各々の出力を互いに独立に制御できることから、一方のモータがその車輪に対して正回転トルクを与えるためにバッテリからそのモータに対して電力を供給する一方で、他方のモータを発電機として作動させてその車輪に対して逆回転トルクを与えるとともにそのモータからバッテリに対して電力を供給することもできる。
【0016】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
図1、
図2A、及び
図2Bに本発明の一実施形態である車両100を示す。ここでいう車両とは、前輪部と後輪部のうち少なくとも一方が左右一対の車輪から構成された、その運転者の作動力によって前輪部と後輪部のうちの少なくとも一方にある車輪を回転させて推進することができるようになっている車両である。そのような車両として、例えば、運転者が作動力である踏力をペダルに与えることによって車輪を回転させて推進することができる自転車がある。以下の実施例では車両のうち、特に自転車について示すが、自転車以外の運転者の作動力によって推進することができる車両にも適用させることができる。車両100は、前輪部と後輪部のうちの前輪部が左右一対の車輪から構成された前輪二輪式自転車であって、前輪部に配置された運転者から見て右側に位置する第1の車輪101、及び運転者から見て左側に位置する第2の車輪102を有する左右一対の車輪と、後輪部に配置された一輪の第3の車輪103を備えている。この場合、後輪部に一輪以上の車輪を備えてもよい。
【0020】
車両100は、バッテリ109と、第1の車輪101のハブに配置され、第1の車輪101の回転力を制御するための第1のモータ104、及び第2の車輪102のハブに配置され、第2の車輪102の回転力を制御するための第2のモータ105から構成された一対のモータとを備えている。一対のモータ104、105は、バッテリ109に接続されている。なお、
図1、
図2A、及び
図2Bの車両100は、前輪部が左右一対の車輪から構成された前輪二輪式三輪自転車であるが、後輪部が左右一対の車輪から構成された後輪二輪式車両であってもよい。後輪二輪式車両のうち、例えば後輪二輪式自転車の場合には、後輪においてディファレンシャル・ギヤ(差動歯車)を採用することによって左右の車輪に回転差を与えられるようにして、更に左右の車輪の各々のハブにモータを配置する。
【0021】
車両100は、懸架機構113を備え、第1の車輪101、及び第2の車輪102は懸架機構113を介して車両100に取り付けられている。
図2A、及び
図2Bの車両100の懸架機構113は、リンク機構であって、
図2Aに示すように、車両100が鉛直方向に対して傾斜していない場合には懸架機構113は略長方形の形状であるが、
図2Bに示すように、車両100が鉛直方向に対して傾斜した場合にはその傾斜の角度に応じて懸架機構113は略平行四辺形の形状に瞬時に傾斜する。懸架機構113が傾斜することによって、懸架機構113を介して車両100に取り付けられた第1の車輪101、及び第2の車輪102は、懸架機構113の傾斜、すなわち車両100の鉛直方向に対する傾斜と同一の角度で車両100に対して傾斜することができる、すなわち第1の車輪101、及び第2の車輪102の車両100の高さ方向に対するそれぞれの位置を、車両100の鉛直方向に対する傾斜に合わせるように相違させることができるようになっているために、車両100が鉛直方向に対して傾斜している場合においても第1の車輪101、及び第2の車輪102は路面に接地することができ、車両100の姿勢が機構的に応答性よく安定化する。なお、車両100が走行している路面が傾斜している場合や、段差がある場合にも、同様に懸架機構113は略平行四辺形の形状に瞬時に傾斜し、第1の車輪101、及び第2の車輪102は、懸架機構113の傾斜と同一の角度で車両100に対して傾斜できるようになっているために、車両100が走行している路面が傾斜している場合や、段差がある場合においても、第1の車輪101、及び第2の車輪102は路面に接地することができ、車両100の姿勢が機構的に応答性よく安定化する。
【0022】
図2C〜
図2Fに本発明の別の実施形態である車両100を示し、別の実施形態である車両100の懸架機構113と第1のモータ104、及び第2のモータ105との関係を
図2Gに示す。
図2C〜
図2Fの本発明の別の実施形態である車両100は、
図2A、及び
図2Bの本発明の一実施形態である車両100と比較して、懸架機構113のみが相違する。
図2Gに示すように、懸架機構113は、懸架シャフト122、第1の車輪101のハブに配置された第1のモータ104、第2の車輪102のハブに配置された第2のモータ105、懸架シャフト122と第1のモータ104とを接続するための第1のアーム123、及び懸架シャフト122と第2のモータ105とを接続するための第2のアーム124を備え、第1のアーム123、及び第2のアーム124はそれぞれ、互いに独立に懸架シャフト122に対して矢印のように回転可能に取り付けられており、第1のアーム123、及び第2のアーム124の回転によって、第1のモータ104、及び第2のモータ105が車両100の高さ方向に対して互いに独立に動作し、それに応じて、第1の車輪101、及び第2の車輪102も車両100の高さ方向に対して互いに独立に動作できるようになっている。
図2Cに示すように、車両100が水平な路面を走行している場合には、第1のアーム123、及び第2のアーム124は互いに対して平行であるが、
図2Dに示すように、車両100が段差のある路面を走行している場合には、一方のアーム(
図2Dでは第2のアーム124)が瞬時に回転して、そのアームに接続するモータ、及び車輪(
図2Dでは第2のモータ105、及び第2の車輪102)が上方に動作できるようになっているために、第1の車輪101、及び第2の車輪102は共に路面に接地し、車両100の姿勢が機構的に応答性よく安定化する。
図2Eに示すように、車両100が傾斜のある路面を走行している場合には、第1のアーム123、及び第2のアーム124がそれぞれ逆方向に瞬時に回転して、各アームに接続するモータ、及び車輪が上方又は下方(
図2Eでは第1のモータ104、及び第1の車輪101が下方、第2のモータ105、及び第2の車輪102が上方)に動作できるようになっているために、第1の車輪101、及び第2の車輪102は共に路面に接地し、車両100の姿勢が機構的に応答性よく安定化する。
図2Fに示すように、車両100が鉛直方向に対して傾斜した場合には、第1のアーム123、及び第2のアーム124がそれぞれ逆方向に瞬時に回転して、各アームに接続するモータ、及び車輪が上方又は下方(
図2Fでは第1のモータ104、及び第1の車輪101が下方、第2のモータ105、及び第2の車輪102が上方)に動作できるようになっているために、第1の車輪101、及び第2の車輪102は共に路面に接地し、車両100の姿勢が機構的に応答性よく安定化する。
【0023】
また、
図2A、及び
図2Bの懸架機構113としてのリンク機構に、
図2C〜
図2Gのような懸架機構113を適用して、リンク機構に第1のアーム123、及び第2のアーム124を接続し、第1のアーム123、及び第2のアーム124を介して、リンク機構にそれぞれ第1のモータ104、及び第2のモータ105を接続してもよい。第1のアーム123、及び第2のアーム124はそれぞれ、互いに独立にリンク機構に対して回転可能に取り付けられており、第1のアーム123、及び第2のアーム124の回転によって、第1のモータ104、及び第2のモータ105が車両100の高さ方向に対して互いに独立に動作し、それに応じて、第1の車輪101、及び第2の車輪102も車両100の高さ方向に対して互いに独立に動作できるようになっていてもよい。
【0024】
また車両100は、車両100の状態の検知を行い、その検知に基づく状態信号を送信するセンサ群を備えている。
図1に示すように、車両100の状態としては、例えば、車両100の鉛直方向に対する傾斜、車両100の運転者による作動力、車両100の速度、等があり、それぞれが傾斜センサ106、作動力センサ107、速度センサ108、等によって検知される。
【0025】
図3、及び
図4に、前輪部と後輪部のうちの少なくとも一方が、第1の車輪101である右側の車輪、及び第2の車輪102である左側の車輪を有する左右一対の車輪により構成された車両100に使用される制御装置117を示す。制御装置117は、バッテリ109、バッテリ109に接続され、第1の車輪101である右側の車輪の回転力を制御する第1のモータ104、及び第2の車輪102である左側の車輪の回転力を制御する第2のモータ105から構成された一対のモータと、傾斜センサ106、作動力センサ107、及び速度センサ108を含み、車両100の状態の検知を行い、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を送信するセンサ群と、状態信号118〜120を受信して演算処理し、第1のモータ104と第2のモータ105の出力を制御するための制御信号121を送信する車体コントローラ114と、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109と第1のモータ104との間の電力供給を制御する第1のモータドライバ115、及びバッテリ109と第2のモータ105との間の電力供給を制御する第2のモータドライバ116を備えている。このようにして、制御信号121を受信した第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116はそれぞれ、あるタイミングではバッテリ109から第1のモータ104、及び第2のモータ105に電力を供給し、あるタイミングでは第1のモータ104、及び第2のモータ105からバッテリ109に電力を供給して、第1のモータ104の出力、及び第2のモータ105の出力を互いに独立に制御できるようになっている。
【0026】
なお、第1のモータドライバ115、第2のモータドライバ116は、一体化されたモータドライバであってもよいし、更に、車体コントローラ114、第1のモータドライバ115、第2のモータドライバ116は、一体化されたコントローラであってもよい。また、車体コントローラ114、第1のモータドライバ115、第2のモータドライバ116は、車両100の運転者の把持部分であるハンドル112に配置されてもよいし、車両100が自転車の場合には、サドル111の下に配置されてもよい。
図3、及び
図4においては、制御信号121は、車体コントローラ114から第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116に対してそれぞれ1本の信号線で送信されているが、制御信号121に第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116の各々のための認証コードを持たせることによって、1本の信号線で送信されてもよく、また、有線式であっても無線式であってもよい。
【0027】
センサ群の傾斜センサ106は、バッテリ109からの電力により作動し、車両100(車両100の高さ方向)の鉛直方向に対する傾斜を検知する。傾斜センサ106を含むことにより、車両の旋回時、路面変化、等による左右に対して交互に傾斜するふらつきを検知することができる。傾斜センサ106としては、例えば、傾斜角センサ、ジャイロセンサ、等がある。
図1に示すように車両100が自転車である場合には、傾斜角センサ、ジャイロセンサ、等は、サドル111の下に配置されてもよい。
図2Bに示すように、車両100が鉛直方向に対して運転者から見て左側に傾斜すると、傾斜角センサによって傾斜角θが検知され、或いは、ジャイロセンサによって傾斜角θに対する角速度が検知されることによって、車両100の傾斜を検知する。また、傾斜センサ106としては、例えば、トルクセンサがあり、第1の車輪101、及び第2の車輪102の各々にトルクセンサを配置し、各トルクセンサから検知される各車輪のトルクの差を使用することによっても車両100の傾斜を検知することができる。また、傾斜センサ106としては、例えば、操舵角センサがあり、運運転者の把持部分であるハンドル112に操舵角センサを配置し、操舵角センサから検知される操舵角を使用することによっても車両100の傾斜を検知することができる。なお、傾斜センサ106は、車両100が走行している路面が、
図1、
図2A、
図2Bのような水平な路面であっても、上り坂や下り坂という傾きがある路面であっても、車両100の鉛直方向に対する傾斜を検知することができるようになっている。
【0028】
傾斜センサ106は、検知された傾斜を含む状態信号(傾斜信号118)を生成して車体コントローラ114に送信する。車体コントローラ114は、状態信号(傾斜信号118)を受信して車両100の傾斜の方向を判定し、車両100の傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すように状態信号(傾斜信号118)を演算処理する。第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116はそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109と第1のモータ104、及び第2のモータ105との間の電力供給を制御する。第1のモータ104の出力、及び第2のモータ105の出力はそれぞれ、第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116によって、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109と第1のモータ104、及び第2のモータ105との間の電力供給を制御されて、互いに独立に制御されることができるようになっている。互いに独立に制御された第1のモータ104の出力、及び第2のモータ105の出力がそれぞれ、第1の車輪101の回転力、及び第2の車輪102の回転力を互いに独立に制御することによって、車両100の傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻す。この場合、第1のモータ104、及び第2のモータ105は、一対の車輪のうちのその傾斜に対して同じ側に位置する車輪の回転力を増加でき、或いは、その傾斜に対して反対側に位置する車輪の回転力を減少できるようになっている。
【0029】
センサ群の作動力センサ107は、バッテリ109からの電力により作動し、車両100の運転者による車両100を推進させるための作動力を検知する。車両100が自転車である場合には、作動力センサ107として、トルクセンサがある。
図1に示すようにトルクセンサを左右一対のペダル110を接続しているシャフトに配置し、車両100の運転者がペダル110を踏むことによって回転するシャフトのトルクを検知して、運転者による作動力であるペダル踏力を検知する。なお、作動力センサ107は、車両100の運転者によって掛けられている作動力を検知できるものであればどのようなセンサであってもよい。
【0030】
作動力センサ107は、検知された作動力を含む状態信号(作動力信号119)を生成して車体コントローラ114に送信する。車体コントローラ114は、状態信号(傾斜信号118、作動力信号119)を受信して、車両100の傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すように状態信号(傾斜信号118、作動力信号119)を演算処理する。第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116はそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109と第1のモータ104、及び第2のモータ105との間の電力供給を制御し、バッテリ109から第1のモータ104、及び第2のモータ105に電力を供給し、或いは、第1のモータ104、及び第2のモータ105からバッテリ109に電力を供給する。電力供給を制御された第1のモータ104の出力、及び第2のモータ105の出力は、上記と同様に互いに独立に制御され、第1の車輪101の回転力、及び第2の車輪102の回転力を互いに独立に制御して、車両100の傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻す。
【0031】
センサ群の速度センサ108は、バッテリ109からの電力により作動し、
図1に示すように後輪である第3の車輪103に配置され、第3の車輪103の回転速度から車両100の速度を検知する。なお、速度センサ108は、車両100の速度を検知できるものであればどのようなセンサであってもよい。また、速度センサ108は、第1の車輪101、第2の車輪102のいずれかに配置されてもよい。
【0032】
速度センサ108は、検知された速度を含む状態信号(速度信号120)を生成して車体コントローラ114に送信する。車体コントローラ114は、状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を受信して、傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すように状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を演算処理する。第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116はそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109と第1のモータ104、及び第2のモータ105との間の電力供給を制御し、バッテリ109から第1のモータ104、及び第2のモータ105に電力を供給し、或いは、第1のモータ104、及び第2のモータ105からバッテリ109に電力を供給する。電力供給を制御された第1のモータ104の出力、及び第2のモータ105の出力は、上記と同様に互いに独立に制御され、第1の車輪101の回転力、及び第2の車輪102の回転力を互いに独立に制御して、車両100の傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻す。
【0033】
詳細に説明すると、車両100がふらついて、傾斜センサ106によって傾斜が検知されている場合、車体コントローラ114が、第1のモータ104、及び第2のモータ105のうちの少なくとも1つを制御できるように、傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)を演算処理し、第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116がそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109と第1のモータ104、及び第2のモータ105との間の電力供給を制御して、バッテリ109から第1のモータ104、及び第2のモータ105に電力を供給することによって、又は、第1のモータ104、及び第2のモータ105からバッテリ109に電力を供給することによって、傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。なお、第1のモータ104、及び第2のモータ105はそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102に必要とされるトルク量やトルクを掛ける時間を制御するようにして、第1の車輪101、及び第2の車輪102に互い独立に回転トルクを与えることできる。「回転トルクを与える」ことのうちの「正回転トルクを与える」とは、車両100の進行方向への車輪の回転に対して同じ方向にトルクを与えて車輪の回転力を増加させることであって、「逆回転トルクを与える」とは、車両100の進行方向への車輪の回転に対して逆の方向にトルクを与えて車輪の回転力を減少させることである。車輪の回転速度が0であってもモータは車輪に対して回転トルクを与えることができる。
【0034】
具体的には、
図2Bのように運転者から見て左側に傾斜した場合には(
図2Bの場合の傾斜角θ)、傾斜センサ106は、車両100が左側に傾斜していることを検知し、その検知(左側の傾斜)に基づく状態信号(傾斜信号118)を送信し、車体コントローラ114が、左側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)を演算処理し、第2のモータドライバ116が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109から第2のモータ105に電力を供給し、第2のモータ105が左側の第2の車輪102に対して正回転トルクを与えて第2の車輪102の回転力を増加させることによって、或いは、第1のモータドライバ115が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109から第1のモータ104に電力を供給し、第1のモータ104が右側の第1の車輪101に対して逆回転トルクを与えて第1の車輪101の回転力を減少させることによって、第1の車輪101、及び第2の車輪102の各々の回転力を互いに独立に制御して、左側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする(
図2Aの場合の傾斜角0)。なお、第1の車輪101に逆回転トルクを与えてその回転力を減少させる場合には、第1のモータドライバ115によって第1のモータ104を発電機(ジェネレータ)として作動させて第1の車輪101を回生制動させることによって、第1のモータ104からバッテリ109に電力を供給できるようにしてもよい。また、運転者から見て右側に傾斜した場合には、傾斜センサ106は、車両100が右側に傾斜していることを検知し、その検知(右側の傾斜)に基づく状態信号(傾斜信号118)を送信し、車体コントローラ114が、右側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)を演算処理し、第1のモータドライバ115が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109から第1のモータ104に電力を供給し、第1のモータ104が右側の第1の車輪101に対して正回転トルクを与えて第1の車輪の回転力を増加させることによって、或いは、第2のモータドライバ116が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109から第2のモータ105に電力を供給し、第2のモータ105が左側の第2の車輪102に対して逆回転トルクを与えて第2の車輪102の回転力を減少させることによって、第1の車輪101、及び第2の車輪102の各々の回転力を互いに独立に制御して、右側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。なお、第2の車輪102に逆回転トルクを与えてその回転力を減少させる場合には、第2のモータドライバ116によって第2のモータ105を発電機として作動させて第2の車輪102を回生制動させることによって、第2のモータ105からバッテリ109に電力を供給できるようにしてもよい。
【0035】
車輪に逆回転トルクを与える場合において、短時間に車輪の回転力を大きく減少させる必要がある場合には、そのモータを電動機として作動させてもよい。例えば、車両100が左側に傾斜している場合の車両100の傾斜補正において、第1のモータ104を発電機として作動させて第1の車輪101を回生制動させても車両100の傾斜補正が追いつかない場合には、第1のモータ104を電動機として作動させて第1のモータ104が第1の車輪101に対して大きな逆回転トルクを与えられるようにして第1の車輪101の回転力を大きく減少させてもよい。このように車輪に逆回転トルクを与える場合には、モータを、発電機或いは電動機として作動させる、発電機として作動させた後に電動機として作動させる、等、モータに対して必要に応じた最適の作動方法を選択することができる。
【0036】
車両100が電動アシスト付き自転車である場合においては、車両100の速度によってアシストすることができる範囲が法定等により決められていることがあるため、車両100の速度に応じて第1のモータ104、及び第2のモータ105を制御する方法は相違してもよい。速度センサ108によって検知された車両100の速度が所定の速度(例えば、24km/h)以上である場合においては、アシストすることができないため、傾斜センサ106によって検知された傾斜に対して反対側に位置する車輪の回転力を減少させるために、その車輪に対してそのモータが逆回転トルクを与えることによってその傾斜を補正する。
【0037】
具体的には、車両100の速度が所定の速度以上である場合において、車両100が右側に傾斜している場合には、傾斜センサ106、及び速度センサ108が、車両100が右側に傾斜していること、及び車両100が所定の速度以上であることを検知し、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、速度信号120)を送信し、車体コントローラ114が、右側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)、及び速度に基づく状態信号(速度信号120)を演算処理し、第2のモータドライバ116が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109から第2のモータ105に電力を供給し、第2のモータ105が左側の第2の車輪102に対して逆回転トルクを与えて第2の車輪102の回転力を減少させることによって、右側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。この場合、第1のモータ104、及び第2のモータ105が共にそれぞれ第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して逆回転トルクを与えるが、第2のモータ105の逆回転トルクを第1のモータ104の逆回転トルクよりも大きくなるようにして、右側への傾斜を補正してもよい。また、車両100が左側に傾斜している場合には、傾斜センサ106、及び速度センサ108が、車両100が左側に傾斜していること、及び車両100が所定の速度以上であることを検知し、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、速度信号120)を送信し、車体コントローラ114が、左側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)、及び速度に基づく状態信号(速度信号120)を演算処理し、第1のモータドライバ115が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109から第1のモータ104に電力を供給し、第1のモータ104が右側の第1の車輪101に対して逆回転トルクを与えて第1の車輪101の回転力を減少させることによって、左側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。この場合、第1のモータ104、及び第2のモータ105が共にそれぞれ第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して逆回転トルクを与えるが、第1のモータ104の逆回転トルクを第2のモータ105の逆回転トルクよりも大きくなるようにして、右側への傾斜を補正してもよい。
【0038】
また、車両100が上り坂を上っている場合又は下り坂を下っている場合のように、傾斜センサ106、及び速度センサ108が、車両100の鉛直方向に対する前後の傾斜を検知していること、及び車両100の速度が減少していること又は増加していることを検知している場合には、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、速度信号120)を送信し、車体コントローラ114が、前後の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)、及び増減する速度に基づく状態信号(速度信号120)を演算処理し、第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116がそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109と第1のモータ104、及び第2のモータ105との間の電力供給を制御し、車両100の速度が減少している場合には第1のモータ104、及び第2のモータ105がそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して正回転トルクを与えてその回転力を増加させて車両100の速度を増加させることができ、また、車両100の速度が増加している場合には第1のモータ104、及び第2のモータ105がそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して逆回転トルクを与えてその車輪102の回転力を減少させて車両100の速度を減少させることができてもよい。
【0039】
通常、第1のモータ104、及び第2のモータ105は、それぞれ電動機として作動して、バッテリ109から供給された電気エネルギー(電力)を運動エネルギー(車両100の走行エネルギー)に変換できるようにして、第1の車輪101、及び第2の車輪102を制御するが、第1のモータ104、及び第2のモータ105はそれぞれ発電機として作動することもできる。発電機として作動する第1のモータ104、及び第2のモータ105はそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102を回生制動させることによって、第1の車輪101、及び第2の車輪102に逆回転トルクを与えてその回転力を減少させる一方で、運動エネルギー(車両100の走行エネルギー)を電気エネルギー(電力)に変換してバッテリ109に回収することができる。例えば、傾斜方向が右側であって、車両100の速度が所定値以上であると判定された場合には、第2のモータドライバ116が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて第2のモータ105を発電機として作動させ、第2のモータ105は、左側の第2の車輪102を回生制動させることによって、第2の車輪102に逆回転トルクを与えて第2の車輪102の回転力を減少させる一方で、車両100の走行エネルギーを電力に変換し、第2のモータ105からバッテリ109に電流が流れて第2のモータ105からバッテリ109に対して電力を戻す(供給する)ようにして車両100の走行エネルギーを回収できるようにしてもよい。
【0040】
車両100が電動アシスト付き自転車である場合においては、車両100の運転者が作動力であるペダル踏力を掛けている場合にアシストすることができるため、作動力に応じて第1のモータ104、及び第2のモータ105を制御する方法は相違してもよい。速度センサ108によって車両100の速度が所定の速度未満である場合において、作動力センサ107によって作動力が検知されている場合にはアシストすることができるため、傾斜センサ106によって検知された傾斜に対して同じ側に位置する車輪の回転力を制御し、その車輪に対してそのモータが正回転トルクを与えることよってその傾斜を補正する。
【0041】
具体的には、車両100の速度が所定の速度未満である場合であって作動力が検知されている場合において、車両100が右側に傾斜している場合には、傾斜センサ106、作動力センサ107、及び速度センサ108が、車両100が右側に傾斜していること、運転者による作動力があること、及び車両100が所定の速度未満であることを検知し、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を送信し、車体コントローラ114が、右側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)、作動力に基づく状態信号(作動力信号119)、及び速度に基づく状態信号(速度信号120)を演算処理し、第1のモータドライバ115が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109と第1のモータ104との間の電力供給を制御し、第1のモータ104が右側の第1の車輪101に対して正回転トルクを与えて第1の車輪101の回転力を増加させることによって、右側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。この場合、第1のモータ104、及び第2のモータ105が共にそれぞれ第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して正回転トルクを与えるが、第1のモータ104の正回転トルクを第2のモータ105の正回転トルクよりも大きくなるようにして、右側への傾斜を補正してもよい。また、車両100が左側に傾斜している場合には、傾斜センサ106、作動力センサ107、及び速度センサ108が、車両100が左側に傾斜していること、運転者による作動力があること、及び車両100が所定の速度未満であることを検知し、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を送信し、車体コントローラ114が、左側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)、作動力に基づく状態信号(作動力信号119)、及び速度に基づく状態信号(速度信号120)を演算処理し、第2のモータドライバ116が車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいてバッテリ109と第2のモータ105との間の電力供給を制御し、第2のモータ105が左側の第2の車輪102に対して正回転トルクを与えて第2の車輪102の回転力を増加させることによって、左側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。この場合、第1のモータ104、及び第2のモータ105が共にそれぞれ第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して正回転トルクを与えるが、第2のモータ105の正回転トルクを第1のモータ104の正回転トルクよりも大きくなるようにして、左側への傾斜を補正してもよい。
【0042】
なお、この場合、正回転トルクを与えているモータに対してバッテリ109から電力が供給される。例えば、傾斜方向が右側であって、車両100の速度が所定値未満であって、作動力ありの場合には、右側の第1の車輪101の回転力を増加させるために、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて第1のモータドライバ115によって、バッテリ109から第1の車輪101の回転力を増加させるモータ、すなわち、第1のモータ104に電流が流れてバッテリ109から第1のモータ104に対して電力を供給して、第1のモータ104が第1の車輪101に対して正回転トルクを与えるようにする。
【0043】
速度センサ108によって車両100の速度が所定の速度未満である場合において、作動力センサ107によって作動力が検知されていない場合にはアシストすることができないため、傾斜センサ106によって検知された傾斜に対して反対側に位置する車輪の回転力を制御するモータがその車輪に対して逆回転トルクを与えることによってその傾斜を補正する。具体的な傾斜の補正の方法は、上記の車両100の速度が所定の速度以上である場合における方法と同様である。
【0044】
なお、この場合、車輪に対して逆回転トルクを与えているモータを発電機として作動させてその車輪を回生制動させることによって、そのモータにより車両100の走行エネルギーを回収してバッテリ109に対して電力を戻す(供給する)ようにしてもよい。例えば、傾斜方向が右側であって、車両100の速度が所定値未満であって、作動力なしと判定された場合には、第2のモータドライバ116が、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、左側の第2の車輪102の回転力を減少させるモータ、すなわち、第2のモータ105を発電機として作動させて第2の車輪を回生制動させることによって、車両100の走行エネルギーを回収し、第2のモータ105からバッテリ109に電流が流れて第2のモータ105からバッテリ109に対して電力を戻す(供給する)ようにする一方で、発電機として作動する第2のモータ105が第2の車輪102に対して逆回転トルクを与えてもよい。
【0045】
また、傾斜センサ106によって傾斜が検知されておらず、車両100がふらついていない場合、速度センサ108によって検知された車両100の速度が所定の速度未満であって、作動力センサ107によって作動力が検知されている場合にはアシストすることができるため、車体コントローラ114は状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を演算処理し、第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116はそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109から供給される電力を制御し、第1のモータ104、及び第2のモータ105に電力を供給して、第1のモータ104の出力、及び第2のモータ105の出力を互いに独立に制御することによって、第1のモータ104、及び第2のモータ105がそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して正回転トルクを与えて、第1の車輪101、及び第2の車輪102の回転力を増加させるようにする。
【0046】
運転者が車両100の運転を開始する際も、車両100の姿勢は不安定になりやすい。そこで、運転者による車両100の運転開始時において、第1のモータ104、及び第2のモータ105がそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して微小に回転トルクを与えて車両100の姿勢を安定化させるようにしてもよい。この場合、作動力センサ107、及び速度センサ108を使用することによって車両100の運転開始時であるか否かの判定を行い、傾斜センサ106によって傾斜が検知された場合には、その検知に応じて第1のモータ104、及び第2のモータ105がそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して微小に回転トルクを与えてもよい。
【0047】
具体的には、車両100が停止しており、また、運転者は作動力を掛けていない場合において、車両100が右側に傾斜している場合には、傾斜センサ106、作動力センサ107、及び速度センサ108が、車両100が右側に傾斜していること、運転者による作動力がないこと、及び車両100が停止していることの検知を行って、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を送信し、車体コントローラ114が、右側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)、作動力に基づく状態信号(作動力信号119)、及び速度に基づく状態信号(速度信号120)を演算処理して車両100の運転開始時であることを判定し、第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116がそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109から供給される電力を制御して、第1のモータ104、及び第2のモータ105に電力を供給する。そして、右側の第1の車輪101の回転力を制御する第1のモータ104が第1の車輪101に対して微小に正回転トルクを与えて第1の車輪101を車両100の進行方向と同じ方向に対して微小に回転させ、左側の第2の車輪102の回転力を制御する第2のモータ105が第2の車輪102に対して微小に逆回転トルクを与えて第2の車輪102を車両100の進行方向と逆の方向に対して微小に回転させることによって、右側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。この場合、第1のモータ104が第1の車輪101に対して微小に正回転トルクを与えるか、第2のモータ105が第2の車輪102に対して微小に逆回転トルクを与えるか、どちらか一方の制御でもよい。また、車両100が左側に傾斜している場合には、傾斜センサ106、作動力センサ107、及び速度センサ108が、車両100が左側に傾斜していること、運転者による作動力がないこと、及び車両100が停止していることの検知を行って、その検知に基づく状態信号(傾斜信号118、作動力信号119、速度信号120)を送信し、車体コントローラ114が、左側の傾斜に基づく状態信号(傾斜信号118)、作動力に基づく状態信号(作動力信号119)、及び速度に基づく状態信号(速度信号120)を演算処理して車両100の運転開始時であることを判定し、第1のモータドライバ115、及び第2のモータドライバ116がそれぞれ、車体コントローラ114から送信された制御信号121に基づいて、バッテリ109から供給される電力を制御して、第1のモータ104、及び第2のモータ105に電力を供給する。そして、左側の第2の車輪102の回転力を制御する第2のモータ105が第2の車輪102に対して微小に正回転トルクを与えて第2の車輪102を車両100の進行方向と同じ方向に対して微小に回転させ、右側の第1の車輪101の回転力を制御する第1のモータ104が第1の車輪101に対して微小に逆回転トルクを与えて第1の車輪101を車両100の進行方向と逆の方向に対して微小に回転させることによって、左側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。この場合、第2のモータ105が第2の車輪102に対して微小に正回転トルクを与えるか、第1のモータ104が第1の車輪101に対して微小に逆回転トルクを与えるか、どちらか一方の制御でもよい。なお、車両100が自転車である場合には、サドル111の下にロードセル等のセンサを更に設置し、ロードセル等のセンサによる荷重の検知に基づいて運転者が車両100に乗車したか否か、すなわち、車両100の運転開始時であるか否かの判定を行い、傾斜センサ106によって傾斜が検知された場合には、上記のように第1のモータ104、及び第2のモータ105がそれぞれ、第1の車輪101、及び第2の車輪102に対して微小に回転トルクを与えてもよい。
【0048】
続いて、前輪部と後輪部のうちの少なくとも一方が、第1の車輪101である右側の車輪、及び第2の車輪102である左側の車輪を有する一対の車輪から構成された、運転者の作動力によって推進することができる車両100を制御する方法について説明する。その方法は、車両100の状態の検知を行うステップと、その検知に応答して一対の車輪101、102の回転力を互い独立に制御するステップとを含む。
【0049】
一対の車輪の各々に配置された、右側にある第1のモータ104と左側にある第2のモータ105から構成された一対のモータを備えている車両100を制御する方法を、
図5に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。STEP100において、車両100が備える傾斜センサ106、作動力センサ107、速度センサ108による検知結果を読み込む。次にSTEP101において、傾斜センサ106からの検知結果により車両100の傾斜の有無を判定する。傾斜なしと判定された場合には、STEP102において、速度センサ108からの検知結果により車両100の速度が所定の速度より高速か低速かを判定する。低速であると判定された場合には、STEP103において、作動力センサ107からの検知結果により運転者による作動力の有無を判定する。作動力ありと判定された場合には、STEP104において、右側のモータ、及び左側のモータがそれぞれ、右側の車輪、及び左側の車輪に対して正回転トルクを付与する。
【0050】
STEP101において、傾斜ありと判定された場合には、STEP105において、車両100が運転開始時か否かを判定する。運転開始時か否かは、作動力センサ107、及び速度センサ108による検知結果に基づいて判定してもよい。
【0051】
STEP105において、運転開始時でないと判定された場合には、STEP106において、車両100の傾斜方向を判定する。なお、車両100の左折・右折時においても車両100は鉛直方向に対して傾斜するが、ふらつき時ではなく左折・右折時であると判定された場合には、以降に示されるSTEP107〜116までのステップは行われないように設定されている。
【0052】
STEP106において、傾斜が左側であると判定された場合には、左側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにするが、車両100の速度、作動力によって右側のモータ、及び左側のモータの制御方法は相違する。STEP107において、速度センサ108からの検知結果により車両100の速度が所定の速度より高速か低速かを判定し、高速であると判定された場合には、STEP108において、右側のモータが右側の車輪に対して逆回転トルクを付与して右側の車輪の回転力を減少させることによって、左側への傾斜を補正する。この場合、右側のモータ、及び左側のモータが共にそれぞれ右側の車輪、及び左側の車輪に対して逆回転トルクを付与するが、右側のモータの逆回転トルクを左側のモータの逆回転トルクよりも大きくなるようにして、左側への傾斜を補正してもよい。なお逆回転トルクを付与する場合にはモータを発電機として作動させてその車輪を回生制動させてもよい。STEP107において、低速であると判定された場合には、STEP109において、作動力センサ107からの検知結果により運転者による作動力の有無を判定する。作動力なしと判定された場合には、STEP110において、右側のモータが右側の車輪に対して逆回転トルクを付与して右側の車輪の回転力を減少させることによって、左側への傾斜を補正する。この場合、右側のモータ、及び左側のモータは共にそれぞれ右側の車輪、及び左側の車輪に対して逆回転トルクを付与するが、右側のモータの逆回転トルクを左側のモータの逆回転トルクよりも大きくなるようにして、左側への傾斜を補正してもよい。なお逆回転トルクを付与する場合にはモータを発電機として作動させてその車輪を回生制動させてもよい。また、左側のモータが左側の車輪に対して微小に正回転トルクを付与して、左側の車輪の回転力を微小に増加させてもよい。STEP109において、作動力ありと判定された場合には、STEP111において、左側のモータが左側の車輪に対して正回転トルクを付与して左側の車輪の回転力を増加させることによって、その左側への傾斜を補正する。この場合、右側のモータ、及び左側のモータが共にそれぞれ右側の車輪、及び左側の車輪に対して正回転トルクを付与するが、左側のモータの正回転トルクを右側のモータの正回転トルクよりも大きくなるようにして、左側への傾斜を補正してもよい。
【0053】
STEP106において、傾斜が右側であると判定された場合には、右側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにするが、車両100の速度、作動力によって右側のモータ、及び左側のモータの制御方法は相違する。STEP112において、速度センサ108からの検知結果により車両100の速度が所定の速度より高速か低速かを判定し、高速であると判定された場合には、STEP113において、左側のモータが左側の車輪に対して逆回転トルクを付与して左側の車輪の回転力を減少させることによって、右側への傾斜を補正する。この場合、右側のモータ、及び左側のモータが共にそれぞれ右側の車輪、及び左側の車輪に対して逆回転トルクを付与するが、左側のモータの逆回転トルクを右側のモータの逆回転トルクよりも大きくなるようにして、右側への傾斜を補正してもよい。なお逆回転トルクを付与する場合にはモータを発電機として作動させてその車輪を回生制動させてもよい。STEP112において、低速であると判定された場合には、STEP114において、作動力センサ107からの検知結果により運転者による作動力の有無を判定する。作動力なしと判定された場合には、STEP115において、左側のモータが左側の車輪に対して逆回転トルクを付与して左側の車輪の回転力を減少させることによって、右側への傾斜を補正する。この場合、右側のモータ、及び左側のモータが共にそれぞれ右側の車輪、及び左側の車輪に対して逆回転トルクを付与するが、左側のモータの逆回転トルクを右側のモータの逆回転トルクよりも大きくなるようにして、右側への傾斜を補正してもよい。なお逆回転トルクを付与する場合にはモータを発電機として作動させてその車輪を回生制動させてもよい。また、右側のモータが右側の車輪に対して微小に正回転トルクを付与して、右側の車輪の回転力を微小に増加させてもよい。STEP114において、作動力ありと判定された場合には、STEP116において、右側のモータが右側の車輪に対して正回転トルクを付与して右側の車輪の回転力を増加させることによって、その右側への傾斜を補正する。この場合、右側のモータ、及び左側のモータが共にそれぞれ右側の車輪、及び左側の車輪に対して正回転トルクを付与するが、右側のモータの正回転トルクを左側のモータの正回転トルクよりも大きくなるようにして、右側への傾斜を補正してもよい。
【0054】
STEP105において、車両100が運転開始時であると判定された場合には、STEP117において、車両100の傾斜方向を判定する。STEP117において、傾斜が左側であると判定された場合には、STEP118において、右側のモータが右側の車輪に対して微小に逆回転トルクを付与して右側の車輪を車両100の進行方向と逆の方向に対して微小に回転させ、及び/又は、左側のモータが左側の車輪に対して微小に正回転トルクを付与して左側の車輪を車両100の進行方向と同じ方向に対して微小に回転させることによって、左側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。また、STEP117において、傾斜が右側であると判定された場合には、STEP119において、左側のモータが左側の車輪に対して微小に逆回転トルクを付与して左側の車輪を車両100の進行方向と逆の方向に対して微小に回転させ、及び/又は、右側のモータが右側の車輪に対して微小に正回転トルクを付与して右側の車輪を車両100の進行方向と同じ方向に対して微小に回転させることによって、右側への傾斜を補正して鉛直方向に姿勢を戻すようにする。
【0055】
前輪部と後輪部のうちの少なくとも一方が左右一対の車輪から構成された、運転者の作動力によって車輪を回転させて推進することができる車両には、3輪以上の自転車の他に、車椅子、手押し車、等が含まれる。
【0056】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。