特許第6833733号(P6833733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6833733互いに直接溶接することが不可能な金属系材料をスペーサーを使って溶接する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833733
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】互いに直接溶接することが不可能な金属系材料をスペーサーを使って溶接する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/20 20060101AFI20210215BHJP
   B23K 11/34 20060101ALI20210215BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20210215BHJP
   B23K 103/18 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
   B23K11/20
   B23K11/34
   B23K11/11 540
   B23K103:18
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-566203(P2017-566203)
(86)(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公表番号】特表2018-513788(P2018-513788A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】EP2016055259
(87)【国際公開番号】WO2016146511
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年1月15日
(31)【優先権主張番号】15158962.9
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591064047
【氏名又は名称】オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン リントナー
(72)【発明者】
【氏名】ヤスミンコ スクルレック
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102004016512(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012013014(DE,A1)
【文献】 特表2013−510727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/20
B23K 11/34
B23K 11/11
B23K 103/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗溶接で互いに直接溶接することが不可能な少なくとも2つの金属系材料を溶接するための方法であって、材料(5、11、21、22、31、41、42)の2つの表面のうちの少なくとも一方に、被溶接材料の2つの表面間の隙間ごとに、少なくとも1つのスペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)が溶接によって接合され、溶接された前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)は、前記金属系材料(5、11、21、31;7、13、22、35、44)間に溶接部を実現するために、抵抗溶接が前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)を持つ前記材料(5、11、31)の表面に集中されて、熱影響部に位置する少なくとも1つのスペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)を融解するように利用されるものとされ、シェフラー組織図に従って計算される前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)が、第1被溶接材料(5、11、21、31、41)の表面に溶接され、スペーサーとの間に結果として生じる合金が、高温割れ、低温割れ、粒成長および脆化が生じる領域とは異なる領域とされ、且つ、前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)によって規定される間隙(8、16)が前記被溶接材料(5、11、21、31;7、13、22、35、44)間に実現されるとともに、前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)において直径対高さの比率は少なくとも5であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)がアーク溶接によって溶接されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)がプラズマ溶接によって溶接されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)がガス金属アーク溶接によって溶接されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)がビーム溶接によって溶接されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)がレーザービーム溶接によって溶接されることを特徴とする、請求項1または5に記載の方法。
【請求項7】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)が電子ビーム溶接によって溶接されることを特徴とする、請求項1または5に記載の方法。
【請求項8】
前記抵抗溶接がスポット溶接によって実行されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抵抗溶接がローラーシーム溶接によって実行されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抵抗溶接がプロジェクション溶接によって実行されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抵抗溶接がウェルドボンドによって実行されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)が、0.25重量%を上回るC、3重量%を上回るMn、0.1重量%を上回るNおよび3重量%を上回るMoを含有する鋼材(5、11、21、22、31、41)の表面に溶接されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)が、0.65%を上回る炭素当量(CEV)を有する鋼材(5、11、21、22、31、41)の表面に溶接され、ここでCEVは、等式(重量%による元素含有量)
CEV=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5
を使って計算されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)がアルミニウム(5、11、21、22、31、41)の表面に溶接されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)が溶加材料でできていることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)がろう付け材料でできていることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記材料(5、11、21、31;7、13、35、44)および前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)の表面を被覆(15)することによって、前記被溶接材料(5、11、21、31;7、13、22、35、44)間で、割れ目条件が防止されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
腐食性物質が溶接領域に到達するための接着剤中の蒸気流路の生成が、抵抗溶接領域の領域(34)で接着材料(33)に取って代わる前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)によって防止されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記スペーサー(6、12、23、24、25、26、32、43)が溶接熱を制御して、望ましい方向を得ることを可能にすることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本来であれば抵抗溶接によって互いに溶接することが不可能な材料の接合に関して抵抗溶接を使用することを可能にする、溶接されたスペーサーを使用することによって金属系材料を溶接するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接は金属製造産業において最もよく使用される溶接施行方法の一つである。抵抗溶接は、例えば、白物家電、燃料タンク、車、鉄道またはトラックの車体構造を溶接するために、スポット溶接、ローラーシーム溶接、またはウェルドボンド溶接によって実行されうる。しかし、抵抗溶接プロセスのための溶接性を有さない、熱間成形マルテンサイト系ステンレス鋼または2つおよび3つの材料の組み合わせなどといった、数多くの材料がある。これらの材料については、材料上に機械的はんだまたはろう付け貯留部(brazing depots)を作製するためのアイデアがいくつかある。しかし、これらの機械的はんだまたはろう付け貯留部は、材料と機械的はんだまたはろう付け貯留部との間に良好な結合を得るために、材料の変形および/または切削を必要とする。材料が従来の抵抗溶接プロセスによってさらに処理される場合、溶接スポットは、典型的には、低温割れの結果として、脆性破壊挙動を有し、それゆえに低い強度レベルを有する。
【0003】
溶接プロセス前の機械的はんだまたはろう付け貯留部は、マルチ材料設計の過程では特に、使用することが難しい。さらに、機械的はんだまたはろう付け貯留部は、製造原価の増大を引き起こすことになる。
【0004】
特許文献1は、2つの硬質鋼板部品のスポット溶接のためのプロセスであって、小さなプレートレット、好ましくは低炭素鉄などの易溶接性金属のものが、板材の間の溶接点に並べられるプロセスに関する。スポット溶接前に、被溶接材料は、通常、ある位置から別の位置へと移送される。被溶接材料に固定されていないプレートレットを使用するので、移送中にプレートレットがそれぞれの望ましい位置から移動することになるという大きな危険がある。特許文献1は、この種の危険について何も示していない。
【0005】
特許文献2は、すべての接合面の間にシーラントを使って2つまたはそれ以上の成形金属部品を接合するためのプロセスを記載している。該シーラントは、制御された粒径を持つ金属製または他の材料製の独立した丸い粒を含有し、接合される2つの金属部品が、前もって選択された粒径によって決定される間隙を残して合体されることで、部品はシーラントによって、またはシーラントを介して、接合される。こうして、特許文献2では、2つの金属部品が従来のスポット溶接を使って一つに溶接されるが、金属部品がスポット溶接によって溶接されえないという事実は考慮していない。
【0006】
特許文献3は、溶融接合が可能である異種金属プレート間の各金属の固相接合により、インサートピースを介在させることによって両金属プレートの間にクリアランスを形成しつつ、異種金属プレートを接合固定するための方法に関する。特許文献3の方法は摩擦溶接のための回転具を使用する。この種のプロセスは、可塑化が可能なチタンおよびアルミニウムなどの材料に適し、ステンレス鋼またはより広く鋼材には適さない。
【0007】
とりわけステンレス鋼の溶接には、クロム当量(Creq)およびニッケル当量(Nieq)を使って鋼材における微細構造領域を規定するシェフラー組織図が、一般に使用される。この図では、CreqおよびNieqが、以下の等式に従って計算される。
【0008】
(式1)Creq=%Cr+%Mo+1.5×%Si+0.5×%Nb+0.5×%Ti
【0009】
(式2)Nieq=%Ni+30×(%C+%N)+0.5×%Mn
【0010】
シェフラー組織図は、さまざまなタイプの微細構造の溶接性に関する情報を、こうして、それらが含有する合金化元素の関数として与える。また、シェフラー組織図は溶接問題によって分類され、高温割れ、低温割れ、粒成長および脆化に関して異なる領域を有する。
【0011】
特許文献4は、シェフラー組織図に従ったスタッドの溶接を記載している。特許文献5も、鋳鉄卑金属上にめっきされた材料の溶接においてシェフラー組織図を使用している。特許文献6は、レーザービーム溶接によるTWIP鋼と炭素鋼との間の異材接合のためのシェフラー組織図の使用を記載している。しかしこれらの刊行物は、抵抗溶接については何も記載していない。
【0012】
後述の図7では、シェフラー組織図に、高温割れ領域、低温割れ領域、粒成長領域および脆化領域が図解されている。図7には溶接問題の一例も示されている。この例では、マルテンサイト系ステンレス鋼1.4304(鋼材1)と非合金炭素鋼(鋼材2)との間の抵抗スポット溶接が不可能である。なぜなら、抵抗溶接において生成する、結果として生じる合金(R)は、依然として低温割れ領域にあり、したがってこれらの鋼材間の溶接ナゲットは低温割れを起こし、したがって使用価値がないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 582 283号
【特許文献2】独国特許出願公開第2 541 963号
【特許文献3】特開昭59−229293号
【特許文献4】米国特許第4 959 518号
【特許文献5】米国特許第5 622 573号
【特許文献6】国際公開第2011/060432号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、先行技術のいくつかの短所を解消すること、および抵抗溶接で溶接することが不可能な金属系材料で、抵抗溶接を少なくとも1つのプロセスとして含む溶接方法を実現することである。抵抗溶接によって互いに直接溶接することが不可能な金属系材料間の連結は、抵抗溶接前に材料への溶接によって接合されるスペーサーを使って確立される。本特許出願の本質的特徴は添付の請求項に列挙される。
【0015】
本発明によれば、抵抗溶接で互いに直接溶接することが不可能な少なくとも2つの金属系材料を溶接するための方法は、抵抗溶接前に、溶接による少なくとも1つの接合プロセスを含む。金属系材料が2つだけで、どちらの材料も抵抗溶接によって互いに溶接することが不可能である場合、第1工程は、スペーサーを、好ましくは、第1被溶接材料として記載されるこれらの材料の一方に、接合することである。スペーサーを両方の材料に接合することも可能である。本発明による方法の第2工程では、抵抗溶接が第1被溶接材料中のスペーサーの表面および他方の被溶接材料の表面に集中されるように、スペーサーが利用される。こうして、抵抗溶接で互いに溶接することが直接的には不可能な2つの材料間で、溶接接合が実現される。材料のうちの一方が抵抗溶接によって溶接することが不可能である2つの金属系材料の場合、抵抗溶接によって溶接することが不可能な材料の表面に、スペーサーを溶接する。本発明の方法を利用する際に、抵抗溶接によって互いに直接溶接することが不可能な3つ以上の金属系材料がある場合は、抵抗溶接で互いに溶接することが直接的には不可能な2つの表面の少なくとも一方に、被溶接材料の2つの表面の間の隙間ごとに、少なくとも1つのスペーサーが溶接によって材料の表面に接合される。
【0016】
本発明によるスペーサーは、有利には、溶加材料またはろう付け材料で作製される。スペーサーと、接合された金属系材料との間に、良好な接触および高い強度を得るために、スペーサーの材料は、そのスペーサーが接合される表面を持つ材料に依存する。ろう付け材料をスペーサーとして使用すれば、被溶接材料の微細構造は、本発明の方法中に破壊されないであろう。加えて、抵抗溶接による加工の成功には、スペーサーにおける良好なプラグ破断が必要である。
【0017】
本発明によるスペーサーの形状は本質的に板状であることができる。しかし、本質的に板状の材料に突起部が設けられるように、本質的に板状の材料を基材として使用することが有利である。突起部は、突起部が互いに所定の距離だけ離れて間隔を空けて並ぶように、本質的に規則正しく配置される。スペーサーの構成は、少なくとも5の、スペーサーの直径対高さの比率を与える。さらに、本発明に従って溶接される材料間に望ましい間隙を実現するために、スペーサーの高さは、有利には、少なくとも0.5ミリメートルである。
【0018】
材料の所望の表面にスペーサーを接合した後、本来であれば抵抗溶接で互いに直接溶接することが不可能な材料を含む所望の構成を生産するための第1材料と他方の材料との間の溶接を実現するために、抵抗溶接は、有利には、第1材料中のスペーサーの表面および他方の材料の表面に集中される。ただし抵抗溶接にはバイパス効果を利用することも可能であり、その場合は抵抗溶接中の加熱が被溶接面上の熱影響部に物理的効果を引き起こす。この効果は熱影響部に位置するスペーサーを融解させる。それゆえに、抵抗溶接を、熱影響部に位置するスペーサー間の領域に集中させることが可能である。バイパス効果は隣接するスペーサーが融解される原因となるので、抵抗溶接が首尾よく実行される。被溶接材料に接合されたスペーサーの表面とは反対側にあるスペーサーの表面が抵抗溶接前に互いに接触するように、スペーサーが両方の材料に接合される場合にも、同じ効果が考えられる。
【0019】
スペーサーが一方の材料に接合され、次にスペーサーを持つその材料が、抵抗溶接で互いに直接溶接することが可能な2つ以上の材料と抵抗溶接されるように、本発明の方法を利用することも可能である。この場合、抵抗溶接で互いに直接溶接することが可能な2つ以上の材料は、抵抗溶接で互いに直接溶接することが不可能な材料の表面とは反対側に配置され、それらの表面の間にスペーサーが配置される。こうして抵抗溶接は、スペーサーを有する第1材料、スペーサーそのもの、および他の一つの材料と直接抵抗溶接される少なくとも1つの中間材料に集中される。この種の組み合わせでスペーサーを使用することは、溶接熱を制御して、望ましい方向を得ることを可能にする。溶接熱の制御を応用する一実施形態では、低い熱伝導度を持つスペーサーが薄い板材または高い熱伝導度を持つ材料に溶接される。この場合、中間材料は、スペーサーを持つ第1材料と比べて、厚い板材であるか、または低い熱伝導度を有する。スペーサーの使用に基づく他の一つの利点は、スペーサーが、オーステナイト鋼と他の板材の亜鉛被覆との間の抵抗スポット溶接部の液体金属脆化を回避できることである。スペーサーは、フェライト系溶加材金属で作ることができ、液体金属脆化を示さず、そして2つの板材の距離/間隙ゆえに、オーステナイト板材において液体金属脆化が回避される。この場合、スペーサーはまず亜鉛被覆板材に溶接されなければならない。
【0020】
本発明の方法における第1プロセスとしてのスペーサーの接合は、アーク溶接またはビーム溶接を用いる溶接によって有利に実行される。アーク溶接を用いるプロセスは、例えばプラズマ溶接、TIG(タングステン不活性ガス)溶接またはMIG(金属不活性ガス)溶接などのガス金属アーク溶接によって実行されうる。ビーム溶接を用いる工程は、レーザービーム溶接または電子ビーム溶接によって実行されうる。当然、抵抗溶接を除く他の溶接方法も、本発明によるスペーサーの接合において使用されうる。
【0021】
本発明による抵抗溶接プロセスは、スポット溶接、ローラーシーム溶接、プロジェクション溶接またはウェルドボンドなど、さまざまな種類の抵抗溶接によって実行されうる。ウェルドボンドは、従来の抵抗スポット溶接と接着結合との組み合わせである。抵抗溶接では結合が熱および圧力の結果であるのに対し、接着接合は両方の被接合面の間に適用された接着膜ストリップからなる。抵抗溶接の一変法であるプロジェクション溶接については、被溶接工作物の一方または両方にある隆起した突出部を使って、溶接部が局在化される。
【0022】
本発明によれば、異材接合材料間に接触腐食がない。スペーサーは2つの被溶接材料間の接触腐食を低減する。先行技術によれば、材料は互いに直接接触する。本スペーサーの構成により、2つの材料と接合箇所との間には所定の間隙がある。腐食問題を回避し、異なる電気化学電位を有する材料も使用することを可能にするために、スペーサーは特別に合金化されうる。
【0023】
本発明の方法を、記載した構成のスペーサーと共に使用することにより、溶接された材料間の所望の間隙、および割れ目条件(crevice conditions)での陰極浸漬被覆のより良い濡れが実現されるので、隙間腐食(crevice corrosion)または裂け目腐食(cranny corrosion)は存在しない。陰極浸漬被覆の代わりに、下地被覆(ground coating)、下塗被覆(priming coating)、アンダーコーティング(undercoating)、構造被覆(structure coating)および溶接プライマー被覆(welding primer coating)などといった、他の被覆方法または塗装方法を使用することができる。
【0024】
本発明の他の一つの可能な解決手段は管のための解決手段であり、ここでは、内管が外側でスペーサーと溶接され、次に第2の管がスペーサーと接触するように置かれ、さらに、その組み合わせが互いに抵抗溶接される。結果として、それらの管は、スペーサーゆえに、互いに所定の間隙を有する。スペーサーは、電気化学腐食電位の点で、管を分離するためにも使用されうる。スペーサーによって実現される間隙は、空気または流体媒体で冷却または加熱するためにも利用されうる。
【0025】
本発明の方法は、ウェルドボンドなどのハイブリッド接合プロセスとの組み合わせにおける良好な挙動ゆえに、例えば自動車産業において、そしてバス、トラックおよび鉄道車両に、利用されうる。ウェルドボンドでは、本発明に従ってスペーサーを使用した場合、接着剤における蒸気流路の生成が防止される。なぜなら、後続の抵抗溶接領域の領域では、スペーサーが接着材料に取って代わるからである。それゆえに、腐食性物質は本質的に溶接領域に到達することができない。
【0026】
以下では、図面を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の好ましい一実施形態の模式的な側面図である。
図2】本発明の別の好ましい一実施形態の模式的な側面図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態の模式的な側面図である。
図4】本発明の好ましい一実施形態の模式的な側面図である。
図5】本発明のさらにもう一つの好ましい実施形態の模式的な断面図である。
図6】本発明に従ってシェフラー組織図を使用するための一例を示す図である。
図7】本発明の先行技術において記載されるシェフラー組織図と先行技術における問題の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の方法において使用される、抵抗溶接で直接的には一つに溶接することが不可能な材料は、例えばシェフラー組織図からの鋼材であることができる。一般に、0.25重量%を上回るC、3重量%を上回るMn、0.1重量%を上回るNおよび3重量%を上回るMoを含有する鋼材は、シェフラー組織図からの鋼材である。さらにまた、図7に図解するように溶接問題によって分類されたシェフラー組織図の領域を回避することが、本発明では可能である。これらの問題を回避する方法は、一種の合金化元素としてスペーサーを使用することである。スペーサーをこのように使用することにより、シェフラー組織図でスペーサー用の材料を計算し、選択することが可能である。
【0029】
さらに、本発明の方法において同様に使用される材料は、0.65%を上回る炭素当量(CEV)を有する鋼材であり、ここでCEVは、下記の等式(重量%による元素含有量)を使って計算される。
【0030】
CEV=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5
【0031】
アルミニウムなどの他の金属材料も本発明に従って処理することができる。
【0032】
図1では、スペーサー6を備える溶接された第1材料5が、第2材料7に抵抗溶接によって溶接されている。スペーサー6が、溶接された材料5と溶接された材料7との間に間隙8を実現している。間隙8は、溶接された材料5と溶接された材料7との間の直接接触を妨げる。スペーサー6によって規定される間隙8に基づいて、溶接された材料5および溶接された材料7は、接触腐食を何も起こさずに、異なる電気化学電位を有することができる。
【0033】
図2は、本発明に関連する陰極浸漬被覆を図解している。スペーサー12を備える溶接された第1材料11は、第2材料13に抵抗溶接によって溶接されている。溶接された構造物14は、被覆プロセスにおいてさらに処理され、スペーサー12のおかげで、第1材料11の表面、スペーサー12の表面および第2材料13の表面に被覆層15を有する。なぜなら、スペーサー12が、溶接された材料11と溶接された材料13との間に、間隙16を実現するからである。
【0034】
本発明は、図3a、図3bおよび図3cに従って、ウェルドボンドに応用される。図3aにおいて、第1被溶接材料31は、スペーサー32とウェルドボンド用の接着材料33を備えている。図3aは第1被溶接材料とスペーサー32との間の溶接領域34も示している。図3bでは、第2被溶接材料35が接着材料33の上に加えられ、溶接電極36、37は、材料31と材料35の間の溶接を開始する準備が整っている。図3cは、ウェルドボンドの結果、スペーサーと、溶接された第2材料35との間の、ナゲット溶接部38を図解している。接着材料33は飛散していないので、材料31と材料35との間に蒸気流路はない。
【0035】
図4aは、スペーサー23、24が第1材料21に溶接され、スペーサー25、26が第2材料22に溶接される、一実施形態を図解している。図4bに図解するように、材料21、22は、スペーサー23、24とスペーサー25、26とを使って溶接ナゲット28を得るために、スポット溶接される。こうして、両材料21、22上のスペーサー23、25とスペーサー24、26とに基づいて、間隙27は、図1の実施形態の場合より大きく、それが、材料21と材料22との間の接触腐食の回避を改善する。
【0036】
図5は管に応用された本発明の抵抗溶接後を図解している。内管41には、まずスペーサー43が設けられ、次に外管42が内管41の周りに置かれる。内管41と外管42とが互いに抵抗溶接されて、溶接ナゲット45を実現する。こうして、スペーサー43によって生じる間隙44が内管41と外管42との間に形成される。
【0037】
図6は、本発明によるシェフラー組織図の使用に関する一例を図解している。この例では、先行技術の図7の場合と同じ鋼材、第1金属1としてのマルテンサイト系ステンレス鋼1.4034と第2金属2としての非合金炭素鋼とが、一つに溶接されることになる。スペーサー材料Sには、微細構造がオーステナイトと約20体積%のフェライトとからなるCrNi溶加材金属が選択される。スペーサー材料Sはアーク溶接によって金属1と溶接され、結果として生じる合金S1が第1金属1とスペーサーSとの間に実現される。次に、第2金属2をスペーサーSと抵抗溶接によって溶接すると、第2金属2とスペーサーSとの間の、結果として生じる最終合金S2は、抵抗溶接にとって問題となるすべての領域の外側にある。こうして望ましい溶接結果が実現される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7