(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記音響管は、前記音響発生部が発する音響を受けて振動し、耳珠、対珠、珠間切痕および耳甲介腔のうち少なくともいずれか1つを介して前記振動を鼓膜に固体伝搬させる、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の音響発生装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の音響発生装置を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の音響発生装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
図1に示すように、第1の実施形態の音響発生装置10は、人の耳介1に装着される。音響発生装置10は、音響管20と、音響発生部30と、を備える。なお、各図において符号2は耳珠、符号3は対珠、符号4は珠間切痕、符号5は耳甲介腔、符号6は外耳孔、符号7は耳垂を示している。
【0009】
音響管20は、耳介1の耳珠2と対珠3との間に保持されている。音響管20は、可撓性を有する材料により形成されている。音響管20を形成する材料としては、例えばシリコーンゴムを用いることができる。音響管20は、円筒状に形成されている。例えば、音響管20の長さは、外径に比して長くなっている。ただし、音響管20の長さと外径との比率は、特に限定されない。なお、音響管20の長さとは、音響管20の中心軸線方向における音響管20の寸法である。例えば、音響管20の外径は、耳珠2と対珠3との間隔の最小寸法よりも大きい。音響管20は、第1端部21に開口部23を有している。本実施形態では、開口部23は、音響管20の第1端部21の全体に形成されている。音響管20の第2端部22は、閉塞している。
【0010】
音響発生部30は、外部から受信した信号に基づいて音を発生させる。例えば、音響発生部30は、振動板を有するスピーカーである。音響発生部30は、音響管20の内部に配置されている。音響発生部30は、音響管20の内部のうち第1端部21よりも第2端部22寄りに配置されている。本実施形態では、音響発生部30は、音響管20の第2端部22の底壁に固定されている。音響発生部30は、音を開口部23に向けて放射するように配置されている。例えば、音響発生部30は、振動板を有するスピーカーの場合、振動板を第1端部21に向けた状態で配置される。なお、図示しないが、音響発生部30は、外部機器から発信された信号を受信する受信部や、受信部において受信した信号を増幅する信号増幅部等を備えている。
【0011】
音響発生装置10は、耳介1のうち耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のいずれかとの接触部に作用する力のみによって、耳介1に装着されている。本実施形態では、音響発生装置10は、音響管20が耳介1に圧接することで生じる摩擦力により、耳介1に装着される。音響管20は、例えば耳珠2および対珠3に圧接する。音響管20の外周面は、珠間切痕4に接触する。音響発生装置10は、音響管20が外耳孔6を塞がず、かつ開口部23が外耳孔6に臨む状態で、耳介1に装着される。音響発生装置10のうち少なくとも音響管20の全体は、耳介1の前方に配置されている。
【0012】
ここで、音響発生装置10の放射音の特性について説明する。
図2は、実施例の実験条件を示す図である。
図3は、比較例の実験条件を示す図である。なお、実施例の構成は、本実施形態の音響発生装置10であって、音響管20の長さが20mm、音響管20の内径が10mmである。また、比較例の構成は、上述した音響発生部30単独である。
図2および
図3に示すA軸は、音源から音響発生部30の振動板の法線方向に延びる軸である。
図2および
図3に示すB軸は、A軸に対して45°傾いて音源から延びる軸である。
図2および
図3に示すC軸は、A軸に直交して音源から延びる軸である。
【0013】
まず、放射音の減衰について説明する。
図4から
図6は、実施例および比較例それぞれの音源からの距離と音圧との関係を示すグラフである。
図4から
図6において、横軸は音源からの距離を示し、縦軸は音圧を示している。なお、実施例における音源からの距離は、音響管20の開口部23を起点としている。
図4は、
図2および
図3に示すA軸上での測定結果である。
図5は、
図2および
図3に示すB軸上での測定結果である。
図6は、
図2および
図3に示すC軸上での測定結果である。
【0014】
図4に示すように、実施例および比較例のいずれにおいても、音源からの距離が大きくなるに従い音圧が減衰している。さらに、実施例のほうが比較例よりも、音源からの距離が大きくなるに従い音圧が大きく減衰している。
図5および
図6に示す結果についても同様である。以上の結果から、音響発生部30を音響管20の内部に配置することで、音響管20の開口部23近傍における音圧の低下を抑制しつつ、周囲への音漏れを抑制できる。つまり、被装着者が聞き取れる音圧を低下の抑制、および周囲への音漏れの抑制を両立できる。
【0015】
次に、放射音の周波数特性について説明する。
図7は、実施例および比較例それぞれの放射音の周波数特性を示すグラフである。
図7において、横軸は周波数を示し、縦軸は音圧を示している。なお、
図7では、音響発生装置10の使用目的が音声指示の再生であるので、音声帯域(340Hz〜3.4kHz)をカバーする3.5kHzを上限周波数とした。
【0016】
図7に示すように、比較例では、800Hz近傍の音圧が支配的となっている。これに対して実施例では、音響管20の伝搬・開口部放射特性の振る舞いによって800Hz近傍の音圧が比較例よりも低下し、2500Hz近傍の音圧が支配的となっている。ただし、上述したように音響発生装置10の使用目的はオーディオ再生ではないので、音響発生装置10の被装着者が違和感を覚えることはない。2500Hz近傍の波長の短い音響は吸音反射もしやすくなり、周囲へ伝搬しにくくなる。さらに、以下で説明する音響管の放射伝搬の性質も相まって、音響管からの放射音は、管路がない場合に比べて減衰しやすくなる。
【0017】
上記実験結果は一例であるが、周波数変化は平面波伝搬帯域において音響管の管路長の影響を受けにくいことから、管路長が短くても効果がある。平面波伝搬帯域の上限周波数fは、f=音速×1.2/(2×口径)となる。上記実施例では上限周波数fは20.4kHzとなり、平面波伝搬帯域となる。よって、耳珠2と対珠3との間に保持されるサイズの音響管から放射される音は、その出口では点音源放射に近似される。その結果、音響管の外部では、点音源減衰特性、すなわち、音圧は距離に反比例して減衰する。したがって、数センチ先の外耳道入口(外耳孔)には音は伝わるが、その周囲空間では減衰し、耳元のみで再現を体感することができる。
【0018】
以上のような構成によれば、耳珠2と対珠3との間に保持された音響管20の内部に音響発生部30が配置されるので、被装着者が聞き取れる音圧を低下させることなく、周囲への音漏れを抑制できる。しかも、音響管20が耳珠2と対珠3との間に保持されるので、被装着者の外耳孔6が音響発生装置10によって塞がれず、被装着者に周囲の音を聞き取らせることができる。したがって、周囲への音漏れを抑制しつつ、周囲の音も聞き取ることが可能となる。
【0019】
また、音響管20が耳珠2と対珠3との間に保持されるので、メガネを着用したままでも音響発生装置10を使用することができる。
【0020】
また、音響管20の全体が耳介1の前方に配置されているので、音響管が耳介1の前方から後方に跨って延びる構成と比較して、音響発生装置10が小型化される。したがって、音響管が耳介1の前方から後方に跨って延びる構成と比較して、音響発生装置10の装着時の見栄えを向上させることができる。
【0021】
また、音響管20は、可撓性を有する。このため、音響管20は、耳介1の形状に追従するように弾性変形する。よって、音響管20を耳介1に係合させることができる。また、弾性変形した音響管20が弾性復帰する際の復元力によって、音響管20を耳介1に確実に圧接させることができる。以上により、音響発生装置10が耳介1から脱落することを抑制できる。
【0022】
さらに、音響管20が可撓性を有するので、被装着者に柔らかい感触を与えることができる。よって、長時間装着していても疲れにくい音響発生装置10を提供できる。
【0023】
また、音響管20は、第1端部21に開口部23を有する。このため、開口部23が外耳孔6を臨むように、音響管20を耳珠2と対珠3との間に保持させることで、開口部23を通じて放射される音を、外耳孔6を通じて鼓膜に効率よく空気伝搬させることができる。したがって、音響発生装置10が発する音を被装着者によって聞き取りやすくすることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、音響管20の第1端部21に開口部23が形成されているが、第1端部21および第2端部22の両方に開口部が形成されていてもよい。ただし、この場合には、第2端部22に形成された開口部は、音響発生部30によって閉塞されることが望ましい。これにより、第1端部21の開口部から音を効率よく放射させることができる。
【0025】
また、音響管20は、音響発生部30が発する音響を受けて振動し、耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のうち少なくともいずれか1つを介して振動を鼓膜に固体伝搬させてもよい。この構成によれば、音を空気伝搬させる場合よりも、音漏れを抑制することができる。また、耳介1を介して音を固体伝搬させるので、
図8に示すように、従来の外耳孔6を塞ぐイヤホン100との併用も可能となる。すなわち、被装着者は、イヤホン100において再生された音を聞きながら、音響発生装置10から固体伝搬された音を聞くことが可能となる。したがって、被装着者に2種類の異なった音響を聞き取らせることができる。
【0026】
また、本実施形態では、音響管20は、可撓性を有する材料により形成されているが、これに限定されない。音響管20は、硬質材料により形成されていてもよい。音響管20を形成する硬質材料としては、例えば塩化ビニルを用いることができる。この構成によれば、音響管20が可撓性を有する場合と比較して、音響管20自体が振動しやすいので、耳介1を介して音を鼓膜に効率よく固体伝搬させることができる。さらに、音響管20が可撓性を有する場合よりも低域の振動放射音を発生させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、音響管20の外周面が珠間切痕4に接触しているが、音響管20の全体が耳珠2と対珠3との間に収まっていてもよい。
【0028】
次に、
図9を参照し、第1の実施形態の変形例について説明する。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0029】
図9は、第1の実施形態の変形例の音響発生装置を示す斜視図である。
図9に示すように、変形例では、音響発生部130は、受信した信号に基づいた磁界を発生させる磁界発生部131と、磁界の変化に応じて振動する振動子132と、を備える部材である。磁界発生部131は、上述した音響発生部30と同様に、図示しないが、上述した受信部や信号増幅部等を備えている。振動子132は、例えば音響管20の内周面に固定されている。なお、振動子132は、音響管20に埋め込まれていてもよい。
【0030】
本変形例によれば、音響発生部130は、受信した信号に基づいて振動子132を振動させるので、振動板を有するスピーカーと同様に、音を発生させることができる。また、振動子132によって音響管20を振動させることができるので、耳介1を介して音を鼓膜に固体伝搬させることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、
図10を参照して、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、伸縮部140を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0032】
図10は、第2の実施形態の音響発生装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
図10に示すように、第2の実施形態の音響発生装置110は、音響管20と、音響発生部130と、一対の伸縮部140と、を備える。なお、音響発生装置110は、音響発生部130に代えて、上述した音響発生部30を備えていてもよい。
【0033】
一対の伸縮部140は、音響管20の第1端部21および第2端部22から突出している。伸縮部140は、先端に設けられた接触部141と、音響管20と接触部141とを連結する連結部142と、を備えている。接触部141は、滑らかな表面を有する。接触部141は、例えば楕円体状に形成されている。連結部142は、例えば接触部141と一体的に形成されている。連結部142は、弾性的に伸縮可能に形成されている。これにより、伸縮部140の全体は、弾性的に伸縮する。例えば、連結部142は、可撓性を有する音響管20と一体的に形成されることにより、弾性的に伸縮可能となっている。
【0034】
音響発生装置110は、耳介1のうち耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のいずれかとの接触部に作用する力のみによって、耳介1に装着されている。本実施形態では、音響発生装置110は、一対の伸縮部140が収縮した状態で、耳介1に装着される。音響発生装置110は、伸縮部140を収縮させた際に生じる復元力によって、耳介1に装着される。第1の伸縮部140は、耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のうち少なくともいずれか1つに接触部141を接触させる。第2の伸縮部140は、耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のうち、第1の伸縮部140の接触部141が接触する部位に対向する部位に、接触部141を接触させる。これにより、音響管20は、耳珠2と対珠3との間に保持されている。図示の例では、一対の伸縮部140の接触部141は、耳珠2および対珠3に接触している。
【0035】
以上のような構成によれば、伸縮部140を収縮させた際に生じる復元力によって音響発生装置110を耳介1に圧接させることができる。これにより、耳珠2と対珠3との間に音響管20を確実に保持させることができる。
【0036】
なお、伸縮部140は、1つだけ設けられていてもよい。この構成であっても、伸縮部140を収縮させた際に生じる復元力により、音響発生装置を耳介1に圧接させることができる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、
図11を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、撓み部240を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0038】
図11は、第3の実施形態の音響発生装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
図11に示すように、第3の実施形態の音響発生装置210は、音響管20と、音響発生部130と、一対の撓み部240と、を備える。なお、音響発生装置210は、音響発生部130に代えて、上述した音響発生部30を備えていてもよい。
【0039】
一対の撓み部240は、それぞれ音響管20の外周面から延びている。例えば、一対の撓み部240は、音響管20の中心軸線について線対称となるように設けられている。撓み部240は、弾性的に撓み変形する。撓み部240は、例えば全体において湾曲している。撓み部240は、中間部において最も小さい曲率で湾曲している。撓み部240は、中間部から先端部にかけて、音響管20の外周面と略平行に延びている。例えば、撓み部240は、可撓性を有する音響管20と一体的に形成されることにより、弾性的に撓み変形可能となっている。
【0040】
音響発生装置210は、耳介1のうち耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のいずれかとの接触部に作用する力のみによって、耳介1に装着されている。本実施形態では、音響発生装置210は、一対の撓み部240が撓んだ状態で、耳介1に装着される。音響発生装置210は、撓み部240を撓ませた際に生じる復元力により、耳介1に装着される。第1の撓み部240は、耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のうち少なくともいずれか1つに接触する。第2の撓み部240は、耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のうち、第1の撓み部240が接触する部位に対向する部位に接触する。これにより、音響管20は、耳珠2と対珠3との間に保持されている。図示の例では、一対の撓み部240は、耳珠2および対珠3に接触している。
【0041】
以上のような構成によれば、撓み部240を撓ませた際に生じる復元力によって音響発生装置210を耳介1に圧接させることができる。これにより、耳珠2と対珠3との間に音響管20を確実に保持させることができる。
【0042】
なお、撓み部240は、1つだけ設けられていてもよい。この構成であっても、撓み部240を撓ませた際に生じる復元力により、音響発生装置を耳介1に圧接させることができる。
【0043】
(第4の実施形態)
次に、
図12を参照して、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、装着支持部340を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0044】
図12は、第4の実施形態の音響発生装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
図12に示すように、第4の実施形態の音響発生装置310は、音響管20と、音響発生部30と、装着支持部340と、を備える。なお、音響発生装置310は、音響発生部30に代えて、上述した音響発生部130を備えていてもよい。
【0045】
装着支持部340は、例えばC字状に延びる部材である。装着支持部340は、弾性変形可能に形成されている。装着支持部340は、脆性破壊しない範囲で両端部が開かれ、両端部によって耳珠2および対珠3を互いに近付けるように押圧する。これにより、装着支持部340は、音響管20を耳珠2および対珠3に接触させ、耳珠2および対珠3を介して音響管20を挟持している。なお、装着支持部340は、音響管20に結合されていてもよいし、音響管20と別体の部材として設けられていてもよい。
【0046】
以上のような構成によれば、装着支持部340によって、耳珠2と対珠3との間に音響管20を確実に保持させることができる。
【0047】
(第5の実施形態)
次に、
図13を参照して、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、延出部440を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0048】
図13は、第5の実施形態の音響発生装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
図13に示すように、第5の実施形態の音響発生装置410は、音響管20と、音響発生部30と、延出部440と、を備える。なお、音響発生装置410は、音響発生部30に代えて、上述した音響発生部130を備えていてもよい。
【0049】
延出部440は、音響管20の外周面から音響管20の中心軸線に交差する方向に沿って延びている。本実施形態では、延出部440は、音響管20の外周面のうち、音響管20の中心軸線方向における中間部から延びている。また、本実施形態では、延出部440は、音響管20の中心軸線に直交する方向に沿って延びている。延出部440は、例えば円柱状や円筒状に形成されている。延出部440の長さは、例えば音響管20の長さと同程度である。
【0050】
音響発生装置410は、耳介1のうち耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のいずれかとの接触部に作用する力のみによって、耳介1に装着されている。本実施形態では、音響発生装置410は、音響管20と延出部440との接続部が珠間切痕4と係合し、かつ延出部440が耳垂7に接触した状態で、耳介1に装着される。
【0051】
以上のような構成によれば、延出部440によって音響管20を支えることができるので、音響管20がずれることを抑制できる。したがって、耳珠2と対珠3との間に音響管20を確実に保持させることができる。
【0052】
(第6の実施形態)
次に、
図14を参照して、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、突出部540を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0053】
図14は、第6の実施形態の音響発生装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
図14に示すように、第6の実施形態の音響発生装置510は、音響管20と、音響発生部30と、突出部540と、を備える。なお、音響発生装置510は、音響発生部30に代えて、上述した音響発生部130を備えていてもよい。
【0054】
突出部540は、音響管20の外周面から突出している。突出部540は、音響管20の中心軸線回りの周方向に沿って全周に延びている。これにより、突出部540は、円環状を呈している。突出部540の突出高さは、例えば音響管20の外径よりも十分に小さい。突出部540は、音響管20と一体的に形成されていてもよいし、音響管20とは別体で形成されていてもよい。
【0055】
音響発生装置510は、耳介1のうち耳珠2、対珠3、珠間切痕4および耳甲介腔5のいずれかとの接触部に作用する力のみによって、耳介1に装着されている。突出部540のうち任意の第1部分は、耳珠2、対珠3および珠間切痕4のいずれかに接触する。突出部540のうち前記第1部分とは異なる第2部分は、耳珠2、対珠3および珠間切痕4のうち前記第1部分が接触する部位に対向する部位に接触する。図示の例では、突出部540は、珠間切痕4に係合している。
【0056】
以上のような構成によれば、突出部540が音響管20の外周面から突出しているので、突出部540を耳珠2、対珠3および珠間切痕4のいずれかに係合させることができる。このため、突出部540が設けられていない場合と比較して、耳珠2と対珠3との間に音響管20を確実に保持させることができる。しかも、突出部540は、音響管20の周方向に沿って全周に延びているので、突出部が間欠的に延びている場合と比較して、音響発生装置510の装着時における音響管20の位置調整を容易にすることができる。
【0057】
(第7の実施形態)
次に、
図15を参照して、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、音響管20の第1端部21が閉塞されているとともに、周壁20aを貫通する開口部24を有する点で、第1の実施形態とは異なる。
【0058】
図15は、第7の実施形態の音響発生装置を示す斜視図である。
図15に示すように、第7の実施形態の音響発生装置610は、音響管20と、音響発生部30と、を備える。なお、音響発生装置610は、音響発生部30に代えて、上述した音響発生部130を備えていてもよい。音響管20の第1端部21および第2端部22は、閉塞されている。音響管20は、周壁20aを貫通する開口部24を有している。音響発生装置610は、開口部24が外耳孔6に臨む状態で、耳介1に装着される。
【0059】
以上のような構成によれば、外耳孔6を跨ぐように音響管20を配置しても、開口部24を外耳孔6近傍に位置させることができる。したがって、開口部が音響管の端部に形成されている場合と比較して、音響発生装置610の設置可能範囲を広げることができる。
【0060】
(第8の実施形態)
次に、
図16を参照して、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、音響発生部130が環状部材720に取り付けられている点で、第1の実施形態とは異なる。
【0061】
図16は、第8の実施形態の音響発生装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
図16に示すように、第8の実施形態の音響発生装置710は、環状部材720と、音響発生部130と、を備える。環状部材720は、円環状に形成されている。すなわち、環状部材720は、中心軸線方向における寸法が外径に対して十分に小さい円筒状に形成されている。環状部材720は、耳甲介腔5に保持される。環状部材720は、中央の貫通部を通じて外耳孔6を外部に開口する。音響発生部130の磁界発生部131および振動子132は、それぞれ環状部材720に固定されている。振動子132は、環状部材720に埋め込まれていてもよい。音響発生装置710は、環状部材720と耳甲介腔5との接触部に作用する力のみによって、耳介1に装着されている。本実施形態では、音響発生装置710は、環状部材720が耳甲介腔5に圧接することで生じる摩擦力により、耳介1に装着される。
【0062】
以上のような構成によれば、被装着者の外耳孔6を塞ぐことなく、外耳孔6の近傍に音響発生装置710を装着することができる。よって、被装着者に周囲の音を聞き取らせることができる。したがって、周囲への音漏れを抑制しつつ、周囲の音も聞き取ることが可能となる。
【0063】
上記各実施形態では、音響発生装置は、単体で耳介1に装着されているが、例えば被装着者の頭部を挟む部材によって音響管20を耳介1に押さえつけることで、耳介1への装着をサポートしてもよい。
【0064】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、耳珠と対珠との間に保持される音響管と、音響管の内部に配置された音響発生部と、を持つことにより、周囲への音漏れを抑制しつつ、周囲の音も聞き取ることが可能となる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。