特許第6833765号(P6833765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833765
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】バッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/20 20210101AFI20210215BHJP
【FI】
   H01M2/10 S
   H01M2/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-130929(P2018-130929)
(22)【出願日】2018年7月10日
(65)【公開番号】特開2019-87526(P2019-87526A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2018年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-215785(P2017-215785)
(32)【優先日】2017年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆也
(72)【発明者】
【氏名】日野 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 忠
(72)【発明者】
【氏名】相川 真哉
(72)【発明者】
【氏名】浅井 洋昭
(72)【発明者】
【氏名】江副 知憲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠二
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/058587(WO,A1)
【文献】 特開2007−317579(JP,A)
【文献】 特開2009−266403(JP,A)
【文献】 特開2003−040703(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/081173(WO,A1)
【文献】 特表2017−539070(JP,A)
【文献】 特開2019−008937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が密閉された矩形箱形のバッテリケースと、
前記バッテリケース内に収納され、複数の電池セルの集合体である電池モジュールと、
前記バッテリケースと前記電池モジュールとの間に、前記バッテリケースの内壁面の側
面全体を覆う状態で配置された筒状の耐熱シートと、
を具備し、
前記耐熱シートは、前記バッテリケースの内部に空気が侵入することを防止する空気侵入防止シートを構成し、
前記バッテリケースは、
上面が開口され、前記電池モジュールが収容された矩形箱形の下ケースと、
下面が開口され、前記下ケースの上面開口部を閉塞する状態で、前記下ケースと接合された矩形箱形の上ケースと、を有し、
前記耐熱シートは、少なくとも、接合部分及び縦辺の部分を覆う状態で配置され、前記接合部分は、前記バッテリケースの前記下ケースと前記上ケースとの間を接合する横辺の接合部分であり、前記縦辺の部分は、前記バッテリケースの隣接する側面間の縦辺の部分であり、
前記耐熱シートは、1枚のシート本体をL字状に屈曲させた4枚のL字状部材を互いに一部重なる部分を設けた状態で、矩形枠状に組み合わせたものであり、隣接する2つの前記L字状部材の重なる部分は互いに移動可能である、
バッテリ。
【請求項2】
前記耐熱シートは、ポリイミド樹脂、またはテフロン(登録商標)樹脂で形成される、
請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
前記耐熱シートは、前記バッテリケースに対して移動可能に取り付けられている
請求項1に記載のバッテリ。
【請求項4】
前記耐熱シートは、前記電池モジュールの周囲に移動可能に取り付けられている
請求項1に記載のバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バッテリパックなどのバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの矩形箱形のバッテリケース内には、複数の電池セルの集合体である電池モジュールが収容されている。このバッテリは、落下や、圧壊等が生じた場合、バッテリケースや、バッテリケースの内部の電池セルが破損し、バッテリケース内に収納されている電池セルの内部で短絡が発生する。これにより、電池セルの電解液が高温の可燃性ガスとなって吹き出す。そして、その吹き出した可燃性ガスに、バッテリケース内の短絡により生じた火花が引火して発火に至ることがある。このような発火を防止することが、バッテリの安全上必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−235728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリに、落下や、圧壊などの外乱が加わる場合、角型のバッテリケースの角部に応力集中が生じ、それに沿ってバッテリケースの破断、亀裂が進展する。一般的には、角型のバッテリケースの隣接する側面間の接合部などの縦辺や、上ケースと下ケースとの接合部などの横辺にクラック(亀裂)が生じる。
【0005】
図11A図11B図11C、及び図11Dは、バッテリ11Aのバッテリケース11の割れ方を説明するための説明図である。図11Aは、バッテリ11Aに上下方向から押圧する方向の力F1、F2が加わった状態を示す。図11Bは、図11Aの力によりバッテリケース11が圧潰された状態を示す。また、図11Cは、鉛直方向に立設された壁3にバッテリ11Aを押し付ける状態に横方向から押圧する方向の力F3が加わった状態を示す。図11Dは、図11Cの力によりバッテリケース11が圧潰された状態を示す。
【0006】
図11Bでは、バッテリケース11の隣接する側壁部2c間の接合部分2dなどの縦辺や、上ケース12と下ケース13との接合部分2eなどの横辺にクラック(亀裂)が生じ、大きな割れ目2fが発生する。図11Dでも同様に、バッテリケース11の隣接する側壁部2c間の接合部分2dなどの縦辺や、上ケース12と下ケース13との接合部分2eなどの横辺にクラック(亀裂)が生じ、大きな割れ目2fが発生する。
【0007】
上述したバッテリケース11の割れ目2fからは外部の空気がバッテリケース11の内部に侵入する可能性がある。そして、セルの内部から気体となって吹き出した可燃性ガスは、バッテリケース11内の短絡によって生じる火花と、外部から侵入する空気中の酸素の3条件が整うことによって、発火に至る可能性がある。
【0008】
実施形態は、落下や圧壊等で、バッテリケース、内部のセルが破損し、セルの内部から可燃性ガスが気体となって吹き出した場合に、発火を防止することができるバッテリを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、バッテリは、内部が密閉された矩形箱形のバッテリケースと、前記バッテリケース内に収納され、複数の電池セルの集合体である電池モジュールと、前記バッテリケースと前記電池モジュールとの間に、前記バッテリケースの内壁面の側面全体を覆う状態で配置された筒状の耐熱シートと、を備える。前記耐熱シートは、前記バッテリケースの内部に空気が侵入することを防止する空気侵入防止シートを構成する。
前記バッテリケースは、上面が開口され、前記電池モジュールが収容された矩形箱形の下ケースと、下面が開口され、前記下ケースの上面開口部を閉塞する状態で、前記下ケースと接合された矩形箱形の上ケースと、を有する。
前記耐熱シートは、少なくとも、接合部分及び縦辺の部分を覆う状態で配置される。前記接合部分は、前記バッテリケースの前記下ケースと前記上ケースとの間を接合する横辺の接合部分である。前記縦辺の部分は、前記バッテリケースの隣接する側面間の縦辺の部分である。前記耐熱シートは、1枚のシート本体をL字状に屈曲させた4枚のL字状部材を互いに一部重なる部分を設けた状態で、矩形枠状に組み合わせたものであり、隣接する2つの前記L字状部材の重なる部分は互いに移動可能である。

【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態のバッテリ全体の概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1のバッテリの内部構造を示す縦断面図である。
図3図3は、図1のバッテリの分解斜視図である。
図4図4は、図1のバッテリ内に組み込まれた耐熱シートの装着状態を示す横断面図である。
図5図5は、図4のバッテリ内のバッテリモジュールが膨張した状態を示す横断面図である。
図6A図6Aは、バッテリケースに耐熱シートを装着する装着構造の変形例を示す斜視図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す装着構造を拡大して示す斜視図である。
図6C図6Cは、図6Bに示すF6C−F6C線断面に沿ってバッテリを切断した状態を示す断面図である。
図7図7は、耐熱シートの第1の変形例を示す斜視図である。
図8図8は、耐熱シートの第2の変形例を示す斜視図である。
図9図9は、耐熱シートの第3の変形例を示す斜視図である。
図10図10は、第2の実施形態のバッテリの要部構成を示す斜視図である。
図11A図11Aは、バッテリのバッテリケースの割れ方を説明するための説明図である。
図11B図11Bは、バッテリのバッテリケースの割れ方を説明するための説明図である。
図11C図11Cは、バッテリのバッテリケースの割れ方を説明するための説明図である。
図11D図11Dは、バッテリのバッテリケースの割れ方を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図5は、第1の実施形態を示す。図1は、第1の実施形態のバッテリ全体の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1のバッテリの内部構造を示す縦断面図である。図3は、図1のバッテリの分解斜視図である。図4は、図1のバッテリ内に組み込まれた耐熱シートの装着状態を示す横断面図である。図5は、図4のバッテリ内のバッテリモジュールが膨張した状態を示す横断面図である。
【0012】
本実施形態のバッテリ11Aのバッテリケース11は、上ケース12と、下ケース13と、圧力リリーフ部16とを有する。図2に示すように下ケース13は、上面開口部13aが形成された矩形箱形の筺体である。この下ケース13は、矩形平板状の底板13bと、前後左右の4面を構成する側壁部13c、13d、13e、13fとを有する。
【0013】
下ケース13の内部には、図3に示すように、複数の電池セル14の集合体である電池モジュール15が収容されている。電池セル14は、セル缶またはラミネート膜などに、例えば渦巻き状に巻回している電極本体(コイル)や、電解液などが収容されている。電池モジュール15の上面側には、制御基板17、バスバ、その他の構造材などが配置されている。
【0014】
上ケース12は、下面開口部12aが形成された矩形箱形の筺体である。この上ケース12は、上面板12bと、前後左右の4面を構成する側壁部12c、12d、12e、12fとを有する。そして、下ケース13の上端部、換言すると上面開口部13a側の端部と、上ケース12の下端部、換言すると下面開口部12a側の端部と、を当接させた状態で、上ケース12と下ケース13とが、ねじで固定される。これにより、上ケース12と下ケース13とが接合される。このとき、下ケース13と上ケース12との間は、図示しないパッキンによって密閉され、バッテリケース11の内部が密閉される。
【0015】
上ケース12には、上面に正極端子18と、負極端子19と、圧力リリーフ部16などが設けられている。図2に示すように正極端子18は、電池モジュール15の正極タブ20に接続されている。負極端子19は、電池モジュール15の負極タブ21に接続されている。
【0016】
圧力リリーフ部16は、バッテリケース11の内部の防水性を保持しながら、バッテリケース11の内外気を通気させる防水通気フィルタによって形成される。この防水通気フィルタは、例えば、多孔質PTFE膜を有する。そして、圧力リリーフ部16は、周囲大気の気圧変化や、温度上昇などによるバッテリケース11の内部圧力の変化に対しては、防水性を保持しながら、内外気を通気させて、換言すると入れ替えて、バッテリケース11の内外に気圧差をかけない構造になっている。
【0017】
また、本実施形態では、バッテリケース11と電池モジュール15との間に耐熱シート22が配置されている。この耐熱シート22は、例えばポリイミド樹脂、またはテフロン(登録商標)樹脂で形成される。耐熱シート22は、バッテリケース11の内部に外部から空気が侵入することを防止する空気侵入防止シートを構成する。
【0018】
耐熱シート22は、図3に示すように1枚のシート本体22aをL字状に屈曲させた4枚のL字状部材23を互いに一部重なる部分を設けた状態で、矩形枠状に組み合わせたものである。換言すると、耐熱シート22の周方向に隣接する2つのL字状部材23のそれぞれの一部が、互いに重なる。本実施形態では、矩形枠状に組み合わせた4枚のL字状部材23は、バッテリケース11の内壁面の側面全体を覆う状態で配置されている。
【0019】
なお、ここで言う側面とは、バッテリ11Aの内部空間を構成する内壁面のうち、側壁部13c、13d、13e、13fと、側壁部12c、12d、12e、12fと、により構成された面である。
【0020】
本実施形態では、各L字状部材23の表面の複数個所には、粘着力が比較的弱い例えば両面テープ24の一面側が貼着される。これらの両面テープ24の他面側がバッテリケース11の内壁面に貼着される。これにより、耐熱シート22は、バッテリケース11の内壁面に比較的弱い力で固定される。
【0021】
なお、図4に示すように隣接するL字状部材23の重なり部分25は、互いに接合されず、互いに自由に移動可能な状態で保持されている。換言すると、互いに対向する2つの部分25の互いに対向する面には両面テープ24は貼着されていない。
【0022】
さらに、耐熱シート22は、少なくともバッテリケース11の下ケース13と上ケース12との間を接合する横辺の接合部分と、バッテリケース11の隣接する側面間を接合する縦辺の接合部分とを覆う状態で配置されている。なお、横辺の接合部分とは、本実施形態では、上ケース12の下端面と下ケース13の上端面とにより構成された、互いに接触する面である。
【0023】
次に、バッテリ11Aのバッテリケース11の割れ方を、図11A、11B、11C、11Dを用いて説明する。なお、図11A、11B、11C、11Dは、バッテリ11Aのバッテリケース11の割れ方を説明するための説明図である。なお、図11A乃至図11Dでは、上ケース12及び下ケース13は、その概略が示されており、圧力リリーフ部16と、正極端子18と、負極端子19と、は、省略されている。
【0024】
図11Aは、バッテリ11Aに上下方向から押圧する方向の力F1、F2が加わった状態を示す。図11Bは、図11Aに示された力F1,F2によりバッテリケース11が一部破壊された状態を示す。
【0025】
図11Cは、バッテリ11Aが鉛直方向に立設された壁3に横方向から押し付けられ、かつ、バッテリ11Aに、横方向から押圧する力F3が加わった状態を示す。図11Dは、図11Cに示された力F3により、バッテリケース11が一部破壊された状態を示す。
【0026】
図11Bに示すように、バッテリ11Aに力F1及び力F2が作用することにより、バッテリケース11の4つの側壁部2cの、周方向に隣接する2つの側壁部2cの接合部分2dなどの縦辺や、上ケース2aと下ケース2bとの接合部分2eなどの横辺にクラック(亀裂)が生じ、大きな割れ目2fが発生する。
【0027】
なお、バッテリケース11の4つの側壁部2cの1つは、上ケース12の側壁部12c、及び下ケース13の側壁部13cにより構成される。他の1つの側壁部2cは、側壁部12d、及び側壁部13dにより構成される。他の1つの側壁部2cは、側壁部12e、及び側壁部13eにより構成される。他の1つの側壁部2cは、側壁部12f、及び側壁部13fにより構成される。
【0028】
図11Dも同様に、バッテリケース11の隣接する側壁部2c間の接合部分2dなどの縦辺や、上ケース12と下ケース13との接合部分2eなどの横辺にクラック(亀裂)が生じ、大きな割れ目2fが発生する。なお、接合部分2dは、隣接する2つの側壁部2c間の角部である。
【0029】
次に、上記構成の本実施形態のバッテリ11Aの作用について説明する。本実施形態のバッテリ11Aに、落下や、圧壊などにより外乱が加わった場合、角型のバッテリケース11の角部に応力が集中し、バッテリケース11の破断、亀裂が伸展する場合がある。具体的には、図11B及び図11Dに示すように、角型のバッテリケース11の隣接する側壁部2c間の接合部分2dなどの縦辺や、上ケース12と下ケース13との接合部分などの横辺にクラック(亀裂)が生じる。
【0030】
例えば、図11Aに示すように、バッテリ11Aに上下方向からの押圧力F1、F2が加わったり、図11Cに示すように、バッテリ11Aに、当該バッテリ11Aを壁3に押し付ける横方向からの押圧力F3が加わる場合がある。このような場合は、バッテリケース11の隣接する側壁部2c間の接合部分2dなどの縦辺や、上ケース12と下ケース13との接合部分2eなどの横辺にクラック(亀裂)が生じ、大きな割れ目2fが発生する可能性がある。
【0031】
このとき、バッテリケース11の内部では、電池セル14のコイルが破断し、電池セル14の内部短絡が発生する可能性がある。これにより、電池セル14の電解液が気体となり可燃性ガスとして吹き出す。そのため、図5に示すように電池モジュール15全体が、膨張する現象が生じる。
【0032】
また、電池セル14内の可燃性ガスは、電池セル14の図示しない安全弁から電池セル14の外部に吹き出す。このため、バッテリケース11の内圧が高まり、この圧力により、耐熱シート22は、バッテリケース11の内面に押し付けられた状態で保持される。
【0033】
さらに、耐熱シート22は、バッテリケース11の内壁面に両面テープ24により比較的弱い力で固定されている。そのため、仮に、図11B及び図11Dに示すように、バッテリケース11に割れ目2fが発生しても、バッテリケース11に対して図5中に矢印で示すように耐熱シート22が滑る、あるいは耐熱シート22自体が伸びる。
【0034】
これにより、耐熱シート22がバッテリケース11の割れ目2fの発生と一緒に破れることを防止できるので、バッテリケース11の割れ目2fを耐熱シート22によって塞ぐことができる。
【0035】
このように、上記構成の本実施形態のバッテリ11Aでは、バッテリケース11に割れ目2fが発生した場合にバッテリケース11の割れ目2fを塞ぐ耐熱シート22によって、バッテリケース11の割れ目2fからバッテリケース11の内部へ空気が侵入することを防止できる。
【0036】
そのため、バッテリケース11の割れ目2fからバッテリケース11の内部へ侵入する外部空気中の酸素と、電池セル14の内部から気体となって吹き出した可燃性ガスと、バッテリケース11の電池セル14内の短絡によって生じる火花と、がそろうことを防止できる。その結果、バッテリケース11に割れ目2fが発生した場合であってもバッテリ11Aの発火を防止することができる。
【0037】
また、本実施形態のバッテリ11Aでは、耐熱シート22は、バッテリケース11の内壁面に固定する構成にしたので、電池モジュール15とバッテリケース11とを組み付ける前に、耐熱シート22をバッテリケース11の内壁面に固定する作業を行うことができる。
【0038】
そのため、バッテリ11Aの製造時に、電池モジュール15とバッテリケース11とを組み付ける作業時に同時にバッテリケース11と電池モジュール15との間に耐熱シート22を装着する場合に比べて、耐熱シート22の装着作業を容易に行うことができる。
【0039】
図6Aは、第1の実施形態のバッテリ11Aのバッテリケース11に耐熱シート22を装着する装着構造の変形例を示す斜視図である。なお、図6A中で、図1乃至図5と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
第1の実施形態では、バッテリケース11の内壁面に両面テープ24により耐熱シート22を比較的弱い力で固定する構成を示した。これに対し、本変形例では、例えば、下ケース13の内壁面にフック部31を形成し、耐熱シート22のL字状部材23に、このフック部31と図5に示すようにバッテリケース11の膨張に伴いスライド可能な状態で緩く係合する係合部32を設けたものである。
【0041】
図6Bは、フック部31が係合部32に係合した状態を拡大して示す斜視図である。図6Bでは、フック部31が係合される前の係合部32を2点鎖線で示している。図6Cは、図6Bに示すF6C−F6C線断面に沿って切断した状態を示す、バッテリ11Aの断面図である。
【0042】
フック部31は、図6B及び図6Cに示すように、下ケース13の内壁面から内側に向かって延出した例えば板状の第1の部分31a、及び第1の部分31aから上方に延出した例えば板状の第2の部分31bを有している。このように構成されたフック部31は、一例として、一枚の板部材を折り曲げることにより構成することが可能である。
【0043】
係合部32は、耐熱シート22との間に、図第2の部分31bの一部を配置し、かつ第2の部分31bを係合部32に対して移動可とする隙間Sを有している。
【0044】
なお、ここでいう移動方向は、バッテリケース11の、図5図11B、または、図11Dに示すような変形に伴う移動方向であり、左右方向、及び上下方向を含む。左右方向は、側壁部2cの並ぶ方向である。
【0045】
第2の部分31bと係合部32とが、互いに左右方向に移動可能となるので、バッテリケース11に対して耐熱シート22が左右方向に移動可能となる。係合部32は、例えば、左右両端部32aを耐熱シート22が固定され、かつ、これら両端部32aの間の部分32bと耐熱シート22との間に隙間Sを設けた構成を有している。部分32bの左右方向の長さは、第2の部分31bの左右方向の長さより長い。
【0046】
本変形例でも、第1の実施形態と同様に、仮に、図11B及び図11Dに示すようにバッテリケース11に割れ目2fが発生しても、バッテリケース11に対して図5中に矢印で示すように下ケース13のフック部31と、耐熱シート22の係合部32との間で左右方向に耐熱シート22を滑らせることができる。これにより、図11B及び図11Dに示すように耐熱シート22がバッテリケース11の割れ目2fの発生と一緒に破れることが防止できるので、バッテリケース11の割れ目2fを耐熱シート22によって塞ぐことができる。
【0047】
図7は、第1の実施形態のバッテリ11Aの耐熱シート22の第1の変形例を示す斜視図である。第1の実施形態では、4枚のL字状部材23を互いに一部重なる部分を設けた状態で、矩形状に組み合わせた構成を示した。これに対し、本変形例の耐熱シート41は、1枚のシート本体41aを筒状に折り曲げて成形したものである。本変形例でも、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本変形例では、耐熱シート41の製造を容易に行うことができ、コスト低下を図ることができる。
【0048】
図8は、第1の実施形態のバッテリ11Aの耐熱シート22の第2の変形例を示す斜視図である。本変形例の耐熱シート51は、1枚のシート本体51aを電池モジュール15の周囲に複数回巻き付けたものである。本変形例でも、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本変形例では、耐熱シート51の製造および電池モジュール15への組み付け作業を容易に行うことができ、コスト低下を図ることができる。
【0049】
図9は、耐熱シート22の他の変形例を示す平面図である。本変形例は、図7に示す第1の変形例の耐熱シート41のシート本体41a全体をほぼ波型形状、あるいは不連続な凹凸形状の皺加工した皺加工部42を設けて柔軟性を持たせたものである。本変形例でも、第1の変形例の耐熱シート41と同様の効果が得られる。
【0050】
図10は、第2の実施形態のバッテリの要部構成を示す斜視図である。なお、図10中で、図1乃至図5と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態は、電池モジュール15の前後左右の4面にそれぞれ複数の係合ピン61を設けている。係合ピン61は、本実施形態では、電池モジュール15の1面に例えば2つ設けられている。1面に形成される2つの係合ピン61は、上下方向に並んでいる。
【0051】
各係合ピン61は、軸部61aと、抜け止め部61bと、を有している。軸部61aの軸方向の長さは、耐熱シート22の2枚分の厚みよりも長い。
【0052】
抜け止め部61bは、軸部61aの頭部に形成されている。抜け止め部61bは、軸部61aに対して、軸部61aの軸方向に直交する方向に突出する形状を有している。本実施形態では、軸部61a及び抜け止め部61bは、それぞれ、同軸上に配置された円柱状に形成されている。そして、抜け止め部61bの外径は、軸部61aの外径よりも大きい。
【0053】
さらに、本実施形態では、第1の実施形態と同様の4つのL字状部材23を互いに一部重なる部分を設けた状態で、矩形状に組み合わせたものが使用される。この耐熱シート22には、電池モジュール15の係合ピン61と係脱可能に係合する係合穴部62が設けられている。本実施機体では、電池モジュール15の1つの面に2つの係合ピン61が設けられることから、耐熱シート22の2片のそれぞれに、2つの係合穴部62が形成されている。
【0054】
この係合穴部62には、係合ピン61の抜け止め部61bを挿通可能な挿通部62bと、この挿通部62bに連通する細溝部62aとが形成されている。細溝部62aは、係合ピン61の軸部61aが挿通可能であり、かつ、抜け止め部61dが挿通不可能に構成されている。細溝部62aは、挿通部62bの上端に連通している。
【0055】
細溝部62aは、図5図11B、または図11Dに示すようにバッテリケース11が変形したときに、当該バッテリケース11の変形に伴って電池モジュール15に対して耐熱シート22が移動可能な長さを有している。
【0056】
細溝部62aは、本実施形態では一例として、挿通部62bの上端から左右方向延出している。この為、係合穴部62は、略T字状に構成されている。
【0057】
そして、耐熱シート22の隣接する2つの耐熱シート22のそれぞれの挿通部62bに係合ピン61の抜け止め部61bを挿通させる。挿通部62b内に抜け止め部61bを挿通させると、2つの耐熱シート22が自重により係合ピン61に対して下がる。2枚の耐熱シート22が係合ピン61に対して下がることにより、係合ピン61の軸部61aが、細溝部62a内に移動可能となる。
【0058】
このように、複数の係合ピン61のそれぞれの軸部61aが、2つの耐熱シート22のそれぞれの1つの係合穴部62の細溝部62a内に移動可能となる。このように、4枚の耐熱シート22が電池モジュール15の周囲に移動可能に取り付けられる。なお、図10中、2点鎖線で、電池モジュール15に取り付けられた4枚のうち2枚のL字状部材23を示す。
【0059】
なお、本変形例では、耐熱シート22は、2片のそれぞれの2つの係合穴部62のそれぞれに係合ピン61を挿通可能とする為、電池モジュール15への取り付け作業の際に曲げることが可能に構成されている。
【0060】
その後、耐熱シート22は、予め電池モジュール15の前後左右の4面に貼り付けた状態で、電池モジュール15と一体的に下ケース13内に収納される。これにより、バッテリケース11と電池モジュール15との間の隙間に耐熱シート22が配置される。なお、耐熱シート22は、バッテリケース11と電池モジュール15との間の隙間に、バッテリケース11と電池モジュール15との間で移動可能な状態でセットされる。ここでいう移動可能な状態とは、上述したように、電池モジュール15の係合ピン61の軸部61aが、2つの耐熱シート22のそれぞれの1つの係合穴部62の細溝部62a内に配置された状態、または、細溝部62aの間に配置される状態である。この状態では、軸部61aが細溝部62aに沿って移動可能となるので、2つの耐熱シート22が、それぞれ、電池モジュール15に対して移動可能となる。
【0061】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、仮に、図11B及び図11Dに示すようにバッテリケース11に割れ目2fが発生した場合であっても、バッテリケース11に対して図5中に矢印で示すように下ケース13と耐熱シート22との間で耐熱シート22を滑らせることができる。これにより、耐熱シート22がバッテリケース11の割れ目2fの発生と一緒に破れることが防止できるので、バッテリケース11の割れ目2fを耐熱シート22によって塞ぐことができる。
【0062】
したがって、バッテリケース11に割れ目2fが発生した場合であってもバッテリ11Aの発火を防止することができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
内部が密閉された矩形箱形のバッテリケースと、
前記バッテリケース内に収納され、複数の電池セルの集合体である電池モジュールと、
前記バッテリケースと前記電池モジュールとの間に、前記バッテリケースの内壁面の側面全体を覆う状態で配置された筒状の耐熱シートと、
を具備するバッテリ。
[2]
前記バッテリケースは、
上面が開口され、前記電池モジュールが収容された矩形箱形の下ケースと、
下面が開口され、前記下ケースの上面開口部を閉塞する状態で、前記下ケースと接合された矩形箱形の上ケースと、を有し、
前記耐熱シートは、少なくとも、接合部分及び縦辺の部分を覆う状態で配置されている、前記接合部分は、前記バッテリケースの前記下ケースと前記上ケースとの間を接合する横辺の接合部分である、前記縦辺の部分は、前記バッテリケースの隣接する側面間の縦辺の部分である、
[1]に記載のバッテリ。
[3]
前記耐熱シートは、ポリイミド樹脂、またはテフロン樹脂で形成され、
前記バッテリケースの内部に空気が侵入することを防止する空気侵入防止シートである
[1]に記載のバッテリ。
[4]
前記耐熱シートは、前記バッテリケースに対して移動可能に取り付けられている
[1]に記載のバッテリ。
[5]
前記耐熱シートは、1枚のシート本体を筒状に折り曲げて成形したものである
[1]に記載のバッテリ。
[6]
前記耐熱シートは、シート本体全体を皺加工して柔軟性を持たせたものである[5]に記載のバッテリ。
[7]
前記耐熱シートは、1枚のシート本体をL字状に屈曲させた4枚のL字状部材を互いに一部重なる部分を設けた状態で、矩形枠状に組み合わせたものである[1]に記載のバッテリ。
[8]
前記耐熱シートは、前記電池モジュールの周囲に複数回巻き付けたものである[1]に記載のバッテリ。
[9]
前記耐熱シートは、前記電池モジュールの周囲に移動可能に取り付けられている
[1]に記載のバッテリ。
【符号の説明】
【0064】
2d…接合部分、2e…接合部分、2f…割れ目、3…壁、11…バッテリケース、11A…バッテリ、11a…ケース本体、12…上ケース、12a…下面開口部、12b…上面板、12c…側壁部、12d…側壁部、12e…側壁部、12f…側壁部、13…下ケース、13a…上面開口部、13b…底板、13c…側壁部、13d…側壁部、13e…側壁部、13f…側壁部、14…電池セル、15…電池モジュール、16…圧力リリーフ部、17…制御基板、18…正極端子、19…負極端子、20…正極タブ、21…負極タブ、22…耐熱シート、22a…シート本体、23…L字状部材、24…両面テープ、25…重なり部分、31…フック部、32…係合部、41…耐熱シート、41a…シート本体、42…皺加工部、51…耐熱シート、51a…シート本体、61…係合ピン、61a…軸部、61b…抜け止め部、62…係合穴部、62a…細溝部、62b…挿通部、F1、F2、F3…押圧力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D