【実施例】
【0075】
6-実施例
実施例1:大腸菌でのCPS1コンジュゲートの合成
本発明の一実施形態の目標は、大腸菌でCPS 1型抗原性多糖を生成させることである。上記で論じた通り、本発明者らは、新規な様式で、肺炎連鎖球菌CPSクラスターの生合成機構を発現する大腸菌の能力を利用した。
【0076】
CPSクラスターDNA(dexBとaliAとの間のDNA配列により定義される)を
図2に示し、肺炎連鎖球菌1型の反復単位構造を
図3に示す。反復単位は、D-FucNAc4Nから始まり、それにα1-3グリコシド結合で連結された2つのD-GalA残基が続く(-4-a-D-GalA-1,3-a-D-GalA-1,3-a-D-FucNAc4N-)。さらに、RUは非化学量論的にO-アセチル化される(Bentley SD, Aanensen DM, Mavroidi A, Saunders D, Rabbinowitsch E, Collins M, Donohoe K, Harris D, Murphy L, Quail MA et al: Genetic analysis of the capsular biosynthetic locus from all 90 pneumococcal serotypes. PLoS genetics 2006, 2(3):e31)。DNA配列は、以下のものに対するタンパク質をコードする推定遺伝子を含む:
【0077】
(i)輸送/調節(Wzg、Wzh、Wzd、Wze)、
(ii)相同性探索から結論付けた場合に、2つのGalA残基の転移を担っていることが最も確からしい2種類のグリコシルトランスフェラーゼ(WchBD)、
(iii)推定アセチルトランスフェラーゼWchC、
(iv)細胞質膜の外葉上での反復単位の重合(ポリマー化)のための、ポリメラーゼwzy、
(v)細胞質膜の内葉から外葉へと単一反復単位をフリップさせるための、フリッパーゼwzx、
(vi)ヌクレオチド活性化型D-GalAの合成を担う2種類のタンパク質(すなわち、GlaおよびUgd)。ハウスキーピングUDP-GlcからのGlaおよびUgdによるUDP-D-GalA合成が示された(Munoz R, Lopez R, de Frutos M, Garcia E: First molecular characterization of a uridine diphosphate galacturonate 4-epimerase: an enzyme required for capsular biosynthesis in Streptococcus pneumoniae type 1. Mol Microbiol 1999, 31(2):703-713)、
(vii) TDP-L-ラムノースを生成することが知られている4種類のタンパク質RmlACBD。これらの遺伝子は不可解(cryptic)であり、おそらくCPS生成に対して必要ではない。
【0078】
考え合わせると、これは、1型CPSの生成のためのすべての必須遺伝子が、以下のものを除いて、このクラスター中にコードされていることを意味する:
(a)開始因子糖UDP-D-FucNAc4Nの合成のためのタンパク質をコードする生合成遺伝子;
(b)脂質担体Und-Pへとホスホ-D-FucNAc4Nを付加するためのホスホル糖トランスフェラーゼ(phosphorsugar transferase)をコードする遺伝子。改変されたLPS生合成経路によってCPS 1型を合成するために、CPS 1型クラスターの付加により、肺炎球菌LPS莢膜を合成することができる様式で、大腸菌宿主菌株中に(a)および(b)を提供することが必要である。大腸菌株は、一般的に、そのような酵素をコードしていない。注目すべきことに、FucNAc4Nを合成し、これを多糖に組み込む公知の微生物は、わずかしかない:肺炎連鎖球菌CP1株、ソンネ赤痢菌、プレシオモナス・シゲロイデスO17、およびバクテロイデス・フラジリス(Bacterioides fragilis)。
【0079】
つまり、本発明者らは、前記機能性(functionalites)を提供する遺伝子クラスターを見出すことが必要であると推論した。本発明者らは、ソンネ赤痢菌またはシュードモナス・シゲロイデス(Pseudomonas shigelloides)O17 O抗原の合成のための生合成機構の遺伝子エレメントを用いることにより、これを実現した。これらの生物の両方が、同一の構造を有するO抗原を合成する。このO抗原は、二糖反復単位-4-a-L-AltNAcA-1,3-a-D-FucNAc4N-1-から構成される直鎖ポリマーにより構成される真性のグラム陰性O抗原である(
図4)(Batta G, Liptak A, Schneerson R, Pozsgay V: Conformational stabilization of the altruronic acid residue in the O-specific polysaccharide of Shigella sonnei/Plesiomonas shigelloides. Carbohydr Res 1997, 305(1):93-99)。開始糖は、D-FucNAc4Nであることが示された (Kubler-Kielb J, Vinogradov E, Ben-Menachem G, Pozsgay V, Robbins JB, Schneerson R: Saccharide/protein conjugate vaccines for Bordetella species: preparation of saccharide, development of new conjugation procedures, and physico-chemical and immunological characterization of the conjugates. Vaccine 2008, 26(29-30):3587-3593)。生合成に必要とされる遺伝子クラスター(
図5)は、P.シゲロイデスのゲノム中、およびソンネ赤痢菌の病原性プラスミド上にコードされる(Kopecko DJ, Washington O, Formal SB: Genetic and physical evidence for plasmid control of Shigella sonnei form I cell surface antigen. Infection and immunity 1980, 29(1):207-214)。遺伝子機能は、相同性解析により推定的に公知である(Xu DQ, Cisar JO, Ambulos Jr N, Jr., Burr DH, Kopecko DJ: Molecular cloning and characterization of genes for Shigella sonnei form I O polysaccharide: proposed biosynthetic pathway and stable expression in a live salmonella vaccine vector. Infect Immun 2002, 70(8):4414-4423)。
【0080】
つまり、大腸菌でのCPS 1型生成のための生合成機構を組み立てる戦略は、以下の通りであった:
第1に、本発明者らは、Und-PP-D-FucNAc4N生成経路を再構築することを目指した。これを達成するために、本発明者らは、大腸菌でP.シゲロイデスO抗原クラスターを組み換え的に発現させた。
第2に、本発明者らは、P.シゲロイデスO17クラスターからL-AltNAcAグリコシルトランスフェラーゼを欠失させ、これはUnd-PP-D-FucNAc4N切断型脂質前駆体を生じさせる。
第3に、本発明者らは、プラスミド上にCPS 1型クラスターを付加した。このプラスミド中にコードされる酵素は、P.シゲロイデス系により生成されるUnd-PP-D-FucNAc4N前駆体を伸長させて、CPS 1型RUを完成させ、かつRUを重合(ポリマー化)して、改変型LPSを生成すると考えられた。
【0081】
技術的には、これは以下のように行なわれた:
第1ステップでは、本発明者らは、P.シゲロイデスO抗原遺伝子クラスター(rfbP.シゲロイデスO17)を、ドナープラスミドpDOC-Cへとクローニングした(Lee DJ, Bingle LE, Heurlier K, Pallen MJ, Penn CW, Busby SJ, Hobman JL: Gene doctoring: a method for recombineering in laboratory and pathogenic Escherichia coli strains. BMC Microbiol 2009, 9:252)。このドナープラスミドと、リコンビナーゼおよびエンドヌクレアーゼをコードするヘルパープラスミド(Kuhlman TE, Cox EC: Site-specific chromosomal integration of large synthetic constructs. Nucleic acids research 2010, 38(6):e92)を用いることにより、本発明者らは、W3110 ΔwecAwzzECA ΔwaaL大腸菌株のrfbクラスターを、相同組み換えにより該プラスミドから、P.シゲロイデスクラスター(wzz〜wbgZ、
図5)に交換した。例えば、国際出願第PCT/EP2013/071328号を参照されたい(この文献は、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる)。結果として得られる染色体組み込み型菌株は、ウエスタンブロットにて、抗ソンネ赤痢菌タイピング血清に対して反応性である組み換えO抗原を生成する。
【0082】
この組み込まれたP.シゲロイデスクラスター内にコードされるwbgW遺伝子を、DatsenkoおよびWannerの方法に従って、相同組み換えにより染色体から欠失させた(Datsenko KA, Wanner BL: One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products. Proc Natl Acad Sci U S A 2000, 97(12):6640-6645)。得られた菌株は、いずれの抗ソンネ赤痢菌特異的脂質連結型多糖ももはや生成せず、このことは、最もあり得ることとしては、該菌株が、完全な二糖反復単位を生成できないことに起因した。
【0083】
次に、wzgからugd(
図2)までのCPS 1クラスターを、人工プロモーター(J23103、http://partsregistry.org/Part:BBa_J23103)および大腸菌で活性な最適リボソーム結合部位の後ろにクローニングした。
【0084】
脂質連結型オリゴ糖生合成の分析のための振盪フラスコ培養での記載された遺伝子系の発現は、抗CPS 1型特異的抗血清を用いたウエスタンブロットで、ラダー様バンドパターンを生じた(
図6)。このことは、改変型LPS生合成経路が、肺炎連鎖球菌の1型CPSの組み換え発現で協働したことを示す。
【0085】
生成された反応性のプロテアーゼ抵抗性物質が実際にウンデカプレニルピロリン酸に連結されたCPS 1型であることの証拠をさらに提供するために、酸感受性試験を
図6からのサンプルに適用した。TFAによる弱酸処理は、抗CPS 1型シグナルを無効にし、これは、多糖とウンデカペニル(undecapenyl)とを連結するピロリン酸結合の存在を示した(
図7)。本発明者らは、トランスポーター遺伝子wzg〜wzdの存在下で改変型O抗原を生成することは可能であることを見出した。これらの遺伝子が直接的な影響を有したかを調べるために、本発明者らは、相同組み換えによりCPS 1型プラスミドから4つのトランスポーター遺伝子を欠失させた(Bloor AE, Cranenburgh RM: An efficient method of selectable marker gene excision by Xer recombination for gene replacement in bacterial chromosomes. Applied and environmental microbiology 2006, 72(4):2520-2525)。改変型プラスミドの共発現は、驚くべきことに、抗CPS 1型シグナルの欠損を生じさせる(
図8)。このことは、改変型O抗原の効率的な生成に、トランスポーター遺伝子が必要であることを示す。
【0086】
組み換えCPS 1型を、タンパク質のグリコシル化のために、つまりタンパク質-炭水化物コンジュゲートの形成のために用いることができることを示すために、本発明者らは、好適な組み換え大腸菌株でのコンジュゲート生成の能力に関して、細菌タンパク質グリコシル化機構(Wacker M, Linton D, Hitchen PG, Nita-Lazar M, Haslam SM, North SJ, Panico M, Morris HR, Dell A, Wren BW et al: N-linked glycosylation in Campylobacter jejuni and its functional transfer into E. coli. Science 2002, 298(5599):1790-1793)を試験した。
【0087】
実験は、以下の文献に文書化されたN-グリコシル化システムを用いて行なった(Feldman MF, Wacker M, Hernandez M, Hitchen PG, Marolda CL, Kowarik M, Morris HR, Dell A, Valvano MA, Aebi M: Engineering N-linked protein glycosylation with diverse O antigen lipopolysaccharide structures in Escherichia coli. Proc Natl Acad Sci U S A 2005, 102(8):3016-3021;Kowarik M, Young NM, Numao S, Schulz BL, Hug I, Callewaert N, Mills DC, Watson DC, Hernandez M, Kelly JF et al: Definition of the bacterial N-glycosylation site consensus sequence. The EMBO journal 2006, 25(9):1957-1966;Wacker M, Linton D, Hitchen PG, Nita-Lazar M, Haslam SM, North SJ, Panico M, Morris HR, Dell A, Wren BW et al: N-linked glycosylation in Campylobacter jejuni and its functional transfer into E. coli. Science 2002, 298(5599):1790-1793;Ihssen J, Kowarik M, Dilettoso S, Tanner C, Wacker M, Thony-Meyer L: Production of glycoprotein vaccines in Escherichia coli. Microbial cell factories 2010, 9:61)。CPS 1型脂質連結型オリゴ糖を発現する組み換え大腸菌を、2つの誘導性プラスミドを用いて形質転換した。一方のプラスミドは、PglB酵素をコードし、これは一般的にアクセプタータンパク質をN-グリコシル化することが繰り返し示されている(-D/E-x-N-x-S/T-型(xはプロリンではあり得ない)のコンセンサスアミノ酸配列をコードする)。第2のプラスミド上には、担体タンパク質EPAがコードされ、これは2つの挿入されたN-グリコシル化コンセンサス配列およびNiアフィニティークロマトグラフィー精製のためのHisタグを含む。グリコシル化実験の後、EPAタンパク質を精製し、抗Hisタグ抗血清(
図9、パネルA)および抗CPS 1型抗血清(
図9、パネルB)を用いてプローブし、溶出画分ではっきりと検出した。このことは、組み換えCPS 1型発現系と組み合わせたPglB系が、抗肺炎球菌ワクチン候補として用いることができるタンパク質コンジュゲートの効率的生成を可能にすることを証明する。
【0088】
実施例2:大腸菌でのCPS4コンジュゲートの合成
活性なコンジュゲートワクチンを生成するためにタンパク質グリコシル化を用いることができることをさらに示すために、本発明者らは、CPS1と同様に、トランスポーター遺伝子の存在下でCPS 4型コンジュゲートを生成させることを目指した。
【0089】
CPS4は、還元末端でGalNAcを含む反復単位構造を有する(
図10)。完全な構造は:
-1,4-(2,3 S pyr)-a-D-Gal-1,3-a-D-ManNAc-1,3-a-L-FucNAc-1,3-a-D-GalNAc
である。
【0090】
CPS1の遺伝子クラスターとは異なり、肺炎連鎖球菌由来のCPS 4型をコードするクラスターは、CPS4を合成するためのすべての必須酵素をコードする(
図11)。UDP-D-FucNAcおよびUDP-D-ManNAcは、タンパク質MnaA、FnlA、B、およびCにより生成される。様々なグリコシルトランスフェラーゼの機能が、公知の特異性を有する他のグリコシルトランスフェラーゼに対するそれらの相同性に基づいて予測されている。WciIは、予測上のグリコシル-リン酸トランスフェラーゼであり、つまり、Und-PP-D-GalNAc合成を担い、WciJ、K、およびLはD-ManNAc、L-FucNAc、およびD-Galトランスフェラーゼであり、WciMはピルビン酸トランスフェラーゼのホモログである(Jiang SM, Wang L, Reeves PR: Molecular characterization of Streptococcus pneumoniae type 4, 6B, 8, and 18C capsular polysaccharide gene clusters. Infect Immun 2001, 69(3):1244-1255)。
【0091】
大腸菌でCPS4改変型経路を再構築するために、本発明者らはまず、CPS4遺伝子クラスター(aliAとdexBとの間の遺伝子)を、大腸菌での発現のためのプラスミドへとクローニングし、これによりpGVXN803を生じた。第2のセットアップでは、本発明者らは、wzg、wzh、wzd、およびwzeの影響、ならびにwciI欠失の影響を明確に分析するために、トランスポーター遺伝子の下流の遺伝子(すなわち、wciJ〜fnlC)のみを含めた(pGVXN753を生じた)。WciIは、バイオインフォマティクス解析に従えば、ホスホル-糖トランスフェラーゼ(phosphor-sugar transferase)ホモログである。類似の活性が大腸菌で存在し、具体的には腸内細菌一般抗原(ECA)クラスター中にコードされるwecA遺伝子である。pGVXN753には、本発明者らは、挿入された遺伝子の転写を確実にするために、マルチクローニング部位の上流に人工プロモーター配列を含めた。
【0092】
大腸菌での発現に対する上述のプラスミドの影響を分析するために、本発明者らは、W3110 ΔwaaL細胞を、pGVXN753およびpGVXN803を用いて形質転換した。W3110 ΔwaaLはWecAタンパク質をコードし、このタンパク質はUnd-PP-D-GlcNAcの合成を担うが、Und-PP-D-GalNAcを生成することができない。後者の脂質連結型単糖は、CPS4 RUを完成させるはずであるCPS4クラスターの酵素に対する予測上の基質である。つまり、本発明者らは、CPS4クラスタープラスミドに加えて、2種類の異なるD-GlcNAc→D-GalNAcエピメラーゼであるZ3206(Rush JS, Alaimo C, Robbiani R, Wacker M, Waechter CJ: A novel epimerase that converts GlcNAc-P-P-undecaprenyl to GalNAc-P-P-undecaprenyl in Escherichia coli O157. J Biol Chem 2010, 285(3):1671-1680)およびGalE(Linton D, Dorrell N, Hitchen PG, Amber S, Karlyshev AV, Morris HR, Dell A, Valvano MA, Aebi M, Wren BW: Functional analysis of the Campylobacter jejuni N-linked protein glycosylation pathway. Mol Microbiol 2005, 55(6):1695-1703)を提供した。両方の遺伝子が、in vivoでD-GalNAc合成を可能にするタンパク質をコードし、前者は脂質連結型D-GlcNAcのエピマー化により(Und-PP-D-GlcNAc←→Und-PP-D-GalNAc)、後者は基質としてのヌクレオチド活性化型糖を用いることによる(UDP-D-GlcNAc←→UDP-D-GalNAc)。
【0093】
図12は、分析の結果を示す。細胞を増殖させ、エピメラーゼ発現を誘導し、プロテアーゼ抵抗性バイオマスをSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜への糖脂質の転写後に免疫検出により分析した。結果は、細胞中にpGVXN803が存在する場合はいつでも、抗CPS4抗血清によりラダー様シグナルが検出されたことを示す。pGVXN753もまたシグナルを生じさせたが、トランスポーター遺伝子およびwciIを含む構築物よりもかなり弱かった。エピメラーゼの誘導および性質は、シグナル強度にわずかに影響した。最も強い反応性は、pGVXN803およびヌクレオチド活性化型糖に特異的なエピメラーゼを用いて得られ、このことから、WciIがD-GalNAc-リン酸トランスフェラーゼであることが示唆された。したがって、驚くべきことに、CPS1と同様に、トランスポーター遺伝子が大腸菌でのCPS4改変型LPSの効率的な生成のために重要である。トランスポーター遺伝子とwciIとの影響を詳細に分析するために、pGVX753の存在下でのwciIの共発現を用いることができる。最もあり得そうなこととしては、wciI単独では、トランスポーター遺伝子の存在下で(すなわち、pGVX803を含むW3110 ΔwaaL中で)得られるレベルまではCPS4発現を増強させることができない。
【0094】
大腸菌で生成されるCPS4をさらに特性決定するために、本発明者らは、大腸菌SCM6でpGVXN803を発現させ(Schwarz F, Huang W, Li C, Schulz BL, Lizak C, Palumbo A, Numao S, Neri D, Aebi M, Wang LX: A combined method for producing homogeneous glycoproteins with eukaryotic N-glycosylation. Nat Chem Biol 2010;SCM6がwecA、ECA、waaLを欠失している)、2-AB標識化およびMS/MS分析により糖脂質を分析した。2-AB標識化は、多糖およびオリゴ糖を単離し、加水分解し、修飾し、かつそれらをHPLCおよびMS/MSにより分析するために開発された方法である。細胞を一晩増殖させ、確立された手順に従って調製および処理した(米国特許出願公開第2011/0274720号)。
【0095】
簡潔には、糖脂質を有機溶媒によりバイオマスから抽出し(クロロホルム:メタノール:水 10:10:3)、C18カートリッジに対して精製し;溶出液を、ピロリン酸結合を加水分解してUnd-PP-グリカンからグリカン部分を放出させるために、水/イソプロパノール中でTFAを用いて処理した。得られた溶液を、脂質を除去するために別のC18カートリッジに通した。フロースルーを乾燥させ、グリカンを、還元末端で2-アミノベンズアミドを用いて標識した。得られた標識済みグリカンを、gylcosepN順相カラムを用いてHPLCにより分離し、蛍光により検出した(米国特許出願公開第2011/0274720 A1号)。
【0096】
得られたクロマトグラムを
図13に示す(パネルA)。pGVXN803を含むかまたは欠損しているSCM6細胞から取得したクロマトグラムの比較は、前者には存在するが後者には存在しない数箇所のピークを示す。これらの一部を、グリカンが何であるかおよび配列の特定のために、MS/MSにより分析した。数箇所のピークに関して、予想されるCPS4 RUおよびポリマー構造と一致するMS/MSパターンを特定することが可能であった(矢印により示される)。
図13のパネルBは、53.8分で溶出されるピークからのMALDI-MS/MSスペクトルを示す。一連の断片化イオン(Fragmentation ion series)は、非還元性ヘキソースでピルベートにより修飾されたCPS4 RUと一致する。
【0097】
本発明者らは、ピルベートの非化学量論的存在による不均一性を観察し、このことは、ピルベートによるCPS4反復単位の非定量的修飾またはサンプル調製の間の加水分解のいずれかを示唆した。本発明者らは、データから、本発明者らがUnd-PP上にCPS4グリカンを生成する改変型LPS生合成経路を作製できたことを結論付けた。
【0098】
CSP4糖脂質をさらに分析するために、本発明者らは、CSP4を発現する大腸菌SCM3株(Faridmoayer A, Fentabil MA, Mills DC, Klassen JS, Feldman MF: Functional characterization of bacterial oligosaccharyltransferases involved in O-linked protein glycosylation. JOURNAL OF BACTERIOLOGY 2007, 189(22):8088-8098)から糖脂質を抽出し、それらを上記の通りに分析するか(
図14)、またはin vitroグリコシル化のために糖脂質を直接用いた。この実験では、糖脂質、Nグリコシル化コンセンサス配列を含むアクセプターペプチド、およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBの精製調製物を混合する(Jervis AJ, Butler JA, Lawson AJ, Langdon R, Wren BW, Linton D: Characterization of the structurally diverse N-linked glycans of Campylobacter species. JOURNAL OF BACTERIOLOGY 2012, 194(9):2355-2362)。グリカンの配列決定のために、HILICクロマトグラフィー(
図15、パネルAおよびB)およびそれに続くESI-MS/MSにより分析することができる糖ペプチドが形成される。そのような実験からの生成物が分析された場合、ペプチドに連結された、排他的にピルビン酸化された(exclusively pyruvylated)グリカンが特定された(
図15、パネルCおよびD)。つまり、
図13および
図14で観察される非化学量論的ピルビン酸化(pyruvylation)は、最もあり得そうなことには、CPS4 RUの非定量的修飾ではなく、サンプル調製中のグリカンからのピルベートの加水分解に起因した。つまり、本発明者らは、改変型LPS生合成経路により、活性かつ化学的コンジュゲートと比較しておそらく良好であるコンジュゲートの合成を可能にする、ネイティブ条件下でのCPSの生成が可能であることを主張する。
【0099】
この仮説を試すために、本発明者らは、前臨床アッセイで糖コンジュゲートを試験することを目指した。第1ステップでは、本発明者らは、一般的担体タンパク質である遺伝学的に無毒化された緑膿菌の外毒素A(EPA、米国特許出願公開第2011/0274720 A1号)へとコンジュゲートされたCPS4を生成するために、微生物発酵を用いた。大腸菌W3110 ΔwaaLを、pGVXN539(2つのNグリコシル化コンセンサス配列をコードするEPA担体タンパク質を発現し(米国特許出願公開第2011/0274720 A1号およびdyx)、pACT3にクローニングされており(GenBank:U51556.1)、ここで、clmRカセットはカナマイシン耐性カセット(kanR)に置き換えられた);pGVXN114(PglBの誘導可能な発現、米国特許出願公開第2011/0274720 A1号)、pGVXN207(GalEの誘導可能な発現、(Rush JS, Alaimo C, Robbiani R, Wacker M, Waechter CJ: A novel epimerase that converts GlcNAc-P-P-undecaprenyl to GalNAc-P-P-undecaprenyl in Escherichia coli O157. J Biol Chem 2010, 285(3):1671-1680))およびpGVXN803(CPS4クラスターをコードする)を用いて形質転換した。細胞をTB培地中で増殖させ、好適なODで誘導し、産生を一晩行なった。Hisタグ付けEPAを、リゾチームおよびそれに続くIMACを用いたペリプラズム抽出により調製されたペリプラズム抽出物から精製した。溶出画分の分析的アッセイを、
図16に示す。SDS-PAGEおよびクーマシー染色は、70kDaおよび70kDa超で非グリコシル化EPAおよびグリコシル化EPAを示し、後者はラダー様パターンで存在し、これはRUにより構成される(改変型)O抗原グリカンを示す(
図16、パネルA)。同じ画分のニトロセルロース膜への電気的トランスファー後の抗His(
図16、パネルB)および抗CPS4(
図16、パネルC)による免疫検出により、物質中のCPS4およびEPAの存在が確認された。
【0100】
非グリコシル化EPAおよびグリコシル化EPAの分離のために、アニオン交換クロマトグラフィーにより糖コンジュゲートをさらに精製し;続いて糖タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製した。得られた糖タンパク質調製物を、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン(PMP、Lv L, Yang X, Zhao Y, Ruan Y, Yang Y, Wang Z: Separation and quantification of component monosaccharides of the tea polysaccharides from Gynostemma pentaphyllum by HPLC with indirect UV detection. Food Chemistry 2009, 112:742-746)による誘導体化を用いて単糖組成について分析し、これにより、組み換え糖コンジュゲートのグリカン組成が肺炎連鎖球菌から単離されたCPS4と同一であることが実証された(
図17)。
【0101】
糖コンジュゲートのワクチン活性を試験するために、免疫化研究およびオプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)を行なった。OPAは、肺炎連鎖球菌細胞を排除するための抗体の機能性を扱うための一般的に認識されたアッセイであり、保護に対する代用である。本発明者らは、様々な用量のEPA-CPS4コンジュゲートを用いてウサギを免疫した。対照として、本発明者らはプレベナー13(小児肺炎球菌疾患の予防のために広く用いられる、認可済み市販製品)を用いた。得られた抗血清を、標準化されたプロトコールに従って、免疫原性に関するドットブロット(
図18)および機能性に関するOPAによる分析に供した(Romero-Steiner S, Frasch CE, Carlone G, Fleck RA, Goldblatt D, Nahm MH: Use of opsonophagocytosis for serological evaluation of pneumococcal vaccines. Clin Vaccine Immunol 2006, 13(2):165-169)。
【0102】
表1は、得られた関連するオプソニン力価を示す。結果は、大腸菌で組み換え的に生成された糖コンジュゲートが、オプソニン化貪食作用アッセイで活性な抗血清を生起する能力に関して、認可ワクチン比較物と同等に良好であり、一部の場合には優れてさえいることを示す。
【0103】
実施例3:大腸菌でのCPS14コンジュゲートの合成
CPSコンジュゲートの生成のために大腸菌を用いることができることをさらに示すために、本発明者らは、CPS14コンジュゲートを生成させることを目指した。CPS14多糖は、CPS1およびCPS4と類似の構造で、CPS14クラスター(
図19)によりコードされる。CPS14は、以下の構造を有する重合(ポリマー化)されたRUからなる(
図20):-1,6-(b-D-Gal-1,4)-b-D-GlcNAc-1,3-b-D-Gal-1,4-b-D-Glc-。
【0104】
CPS14の生合成は、WchAの活性によるウンデカプレニルリン酸(Und-P)へのホスホ-D-Glcの付加から開始される。WchAは、コラン酸クラスター中の遺伝子によりコードされる大腸菌WcaJタンパク質と同じ活性を有するホスホ-グルコーストランスフェラーゼであることが生化学的に示された。D-Glcのさらなる伸長は、クラスター中に存在する他のグリコシルトランスフェラーゼの酵素作用により達成される(Kolkman MA, van der Zeijst BA, Nuijten PJ: Functional analysis of glycosyltransferases encoded by the capsular polysaccharide biosynthesis locus of Streptococcus pneumoniae serotype 14. J Biol Chem 1997, 272(31):19502-19508)。CPS14クラスター中の様々なORFの詳細な機能は、wzg、wzh、wzd、wze(調節因子、および3種類の輸送関連遺伝子)、WchJK(D-Galトランスフェラーゼ)、WchL(D-GlcNAcトランスフェラーゼ)、WchM(D-Galトランスフェラーゼ)、Wzy(ポリメラーゼ)、Wzx(フリッパーゼ)について予測されている。WciYは、CPS14形成にとって必要ではないが、wchN欠失はCPS14収量に負の影響を与える(Kolkman MA, Wakarchuk W, Nuijten PJ, van der Zeijst BA: Capsular polysaccharide synthesis in Streptococcus pneumoniae serotype 14: molecular analysis of the complete cps locus and identification of genes encoding glycosyltransferases required for the biosynthesis of the tetrasaccharide subunit. Mol Microbiol 1997, 26(1):197-208)。CPS14クラスターは、CPS14生合成に最小限必要な機能よりも多くの機能がコードされているという意味で、特殊である。最も確からしいことには、指定されていない機能を有するタンパク質の一部は、莢膜の生合成を補助する補助酵素である。
【0105】
大腸菌でのCPS14多糖の生成を試験するために、wchAからwciYまでのひと続きの部分(ストレッチ)からなるCPS14遺伝子クラスターを、pDOCドナープラスミド(Lee DJ, Bingle LE, Heurlier K, Pallen MJ, Penn CW, Busby SJ, Hobman JL: Gene doctoring: a method for recombineering in laboratory and pathogenic Escherichia coli strains. BMC Microbiol 2009, 9:252)へとクローニングし、これはO16抗原クラスターへのCPS14の組み込みのために指定されており(pGVXN615)、大腸菌株GVXN1128(W3110ΔwaaL)へと形質転換した。pGVXN615を保有する、プロテイナーゼK消化された大腸菌細胞の免疫ブロット分析は、ラダー様パターンを示し、これは臨床的CPS14分離株の莢膜血清型決定のために用いられるCPS14抗血清を用いて検出された(
図21、パネルAの挿入図)。さらに、単一反復単位を集めるために、CPS14クラスターのポリメラーゼであるwzyを、トランスポゾン突然変異誘発によりpGVXN615中で欠失させ、pGVXN643を生じさせた。pGVXN643を用いて形質転換した大腸菌細胞から糖脂質を抽出し、上記の通りの加水分解および蛍光標識後のNP-HPLCにより分析した。特異的ピークは、glycosepNカラムから、57.4分で溶出した(
図21、パネルA)。このピークのMSおよびMS/MS分析は、CPS14の単一反復単位の予測される質量および断片化パターンと合致した(
図21、パネルB)。このことにより、O抗原プロモーターの制御下での部分的CPS14遺伝子クラスターの発現が、一般的な大腸菌宿主細胞での組み換えLPS生合成CPS14オリゴ糖生成をもたらし得ることが確認される。
【0106】
大腸菌でのCPS14多糖の生合成を改善および安定化するために、wchAからwciYまでのひと続きの部分(ストレッチ)を含むCPS14クラスターの一部分をpDOC-C置換プラスミドへとクローニングし(Lee DJ, Bingle LE, Heurlier K, Pallen MJ, Penn CW, Busby SJ, Hobman JL: Gene doctoring: a method for recombineering in laboratory and pathogenic Escherichia coli strains. BMC Microbiol 2009, 9:252)、これは大腸菌コラン酸クラスターへのCPS14の組み込みのために指定された(pGVXN710)。CPS14の組み込みは、上記の通り、GVXN1052(W3110)、GVXN1128(W3110 ΔwaaL)およびGVXN1716(W3110 ΔwaaLΔwecA-wzzE)を含む数種類の大腸菌株中で達成された。コラン酸遺伝子は正常条件下では大腸菌で発現されず、それらの発現は調節因子の複雑なネットワークにより制御されていることが示されている。コラン酸の転写には、RcsAという正の調節因子が必要とされることが特定された(Ebel W, Trempy JE. J Bacteriol. 1999;181(2):577-84)。RcsAの発現のためのプラスミド(pGVX688)を保有し、コラン酸クラスターがCPS14クラスターにより置き換えられた、プロテイナーゼK消化大腸菌株の免疫ブロット分析は、臨床的CPS14分離株の血清型決定のために用いられるCPS14抗血清により検出されるラダー様パターンを示し;このパターンは、RcsAの非存在下では検出できなかった(
図22を参照されたい)。この結果は、コラン酸が、多糖生合成経路を組み込むために好適な標的位置であること、および異種多糖の発現が大腸菌RcsAタンパク質により厳重に制御されることを実証する。
【0107】
大腸菌により生成されるCPS14をさらに特性決定するために、GVX6129(W3110ΔwaaL CA::CPS14)を、pGVXN688(rcsA)と共に大腸菌に形質転換した。糖脂質を、上記の通りに2-AB標識化およびMS/MS分析により分析した。MS/MS分析は、それぞれ95.9分および115.3分で溶出されるCPS14の2個および3個のサブユニットを特定した(
図24を参照されたい)。
【0108】
大腸菌でのCPS14多糖の生成に対するトランスポーター遺伝子の発現の影響を試験するために、トランスポーター遺伝子を含む肺炎連鎖球菌CPS14クラスターのwzg〜wzeを、IPTG誘導性プロモーターを有する低コピー数プラスミド(pGVX72)へとクローニングして、pGVX1497を形成させた。プラスミドを大腸菌株GVX6126(大腸菌W3110 CA::CPS14)へと形質転換し、該プラスミドからCPS14クラスターのwchA〜wciY部分がコラン酸大腸菌へと組み込まれた。GVX6126を、pGVX72またはpGVX1497を用いて形質転換し、0.01mM IPTGを用いるトランスポーター遺伝子発現の誘導を伴って培養した。一晩のインキュベーションの後、大腸菌細胞を回収し、プロテイナーゼKを用いて消化し、プロテアーゼ抵抗性バイオマスをSDS-PAGEにより分離して、ニトロセルロース膜への糖脂質のトランスファー後に免疫検出により分析した。結果は、pGVXN1497(wzg-wzh-wzd-wzeを発現する)の存在下で、高分子量ラダー様シグナルが抗CPS14抗血清により検出されたこと(
図23を参照されたい。レーン3)、およびpGVXN1497が空ベクター(pGVX72)で置き換えられた場合には、ラダーサイズは著しく低下したこと(
図23を参照されたい。レーン2)を示す。このことは、CPSの生成に対するトランスポーター遺伝子の支持要件(supporting requirement)を実証する。
【0109】
gtrABSオペロンは、CPS14(wchAにより合成される)にとってネイティブな開始ステップであるUnd-PPと非常に似通った細胞性化合物であるUnd-P上でのグルコースの合成に関与する。gtrABSオペロンは、細胞質中でのUnd-P上でのグルコースの組み立て、ペリプラズムへの糖脂質のフリップに関与する酵素、およびUnd-P-グルコースをドナーとして用いてグルコース残基を大腸菌W3110中のO16サブユニットの還元末端GlcNAcへと転移させるグルコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含む。
【0110】
D-Glcを含む2種類の脂質前駆体の生成を回避するために、かつUnd-PP-CPS14のみを生成させてUnd-P-CPS14を生成させないために、Und-PP-グルコースのみを開始因子グルコースとしてつくり出す酵素を用いることができる。さらに、Und-P-グルコース生成経路を欠失させることができる。このように、すべてのCPSがピロリン酸結合によりUndへと連結され、したがってグリコシル化のために利用可能である。
【0111】
大腸菌でのCPS14の生合成経路をさらに解明しかつ最適化するために、CPS14経路の開始因子グルコシルトランスフェラーゼ活性を強化することができる。これは、wchAおよびwcaJの欠失、および同じ遺伝子を用いるプラスミド媒介過剰発現戦略によりそれらを補完すること、および糖脂質生成に対する影響を分析することにより、調査された。
【0112】
wcaJ遺伝子を含むプラスミドを、CPS14を含むがWchAおよびWcaJを有しない大腸菌株(例えば、W3110 ΔwaaL ΔrfbO16::CPS14-clmR ΔwchA ΔgtrABS)へとうまく形質転換することができる。確立された方法を用いて、これらの菌株で糖生成を分析することができる。これらの結果に基づいて、Und-PPに連結されたCPS14の最大量の生成のための遺伝子の最適な組み合わせを決定し、これを用いて大腸菌を形質転換して最適生成菌株を作製することができるであろう。確かに、優れた糖生成を伴うこの新規大腸菌株は、Nグリコシル化およびOグリコシル化の両方のグリコシル化タンパク質の生成を富化するために理想的であり得るであろう。さらに、この新規に遺伝子操作された菌株を、追加的である場合には異なる糖コンジュゲートを生成するために用いることができ;還元末端でGlcを含むいずれかの糖コンジュゲートの産生株には、多様なタンパク質担体が含められる。
【表1】
【0113】
表1:「ニュージーランドホワイト」種ウサギを、皮下経路を介して、示した糖コンジュゲートワクチン(注:記載の量(μg)は、多糖の量/注入を指す)を用いて、0日目、21日目および42日目に免疫化した。糖コンジュゲートワクチンを、3回すべての免疫化に対して0.12%Al
3+を用いるか、またはプライミング免疫化(d0)に対してはフロイントの完全アジュバント(FCA)を用いて、2回のブースト免疫化(d21およびd42)に対してはフロイントの不完全アジュバント(FIA)を用いるかのいずれかでアジュバント添加した。プレベナー13(Prevnar-13)は、製造業者の取扱説明書に従って用い、ヒト1回用量(2.2μg CPS4多糖に相当する)を1回の免疫化ごとに注入した。56日目に動物を屠殺し、得られた血清をオプソニン化貪食殺作用アッセイ(OPK)で中和活性について分析した。「オプソニン指数」は、細菌のうちの50%を死滅させる血清の希釈率として定義される(肺炎球菌血清型4)。
【0114】
等価物:
本明細書中に開示された方法、宿主細胞、および組成物は、本明細書中に記載された具体的な実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際には、記載のものに加えて、方法、宿主細胞、および組成物の様々な改変が、上記の説明および添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
本発明は以下の実施形態を包含する:
1.多糖の生成のための、遺伝子操作されたグラム陰性細菌であって、グラム陽性細菌の莢膜多糖遺伝子クラスターの調節遺伝子を含む、上記グラム陰性細菌。
2.前記莢膜多糖遺伝子クラスターのオープンリーディングフレームのうち、少なくとも25%、50%、75%、85%、90%、または少なくとも95%を含む、実施形態1に記載のグラム陰性細菌。
3.完全な前記莢膜多糖遺伝子クラスターを含む、実施形態1に記載のグラム陰性細菌。4.前記多糖が、前記莢膜多糖のエピトープを含む、実施形態1に記載のグラム陰性細菌。
5.エシェリキア属の種、大腸菌、シゲラ属の種、クレブシエラ属の種、サルモネラ属の種、イェルシニア属の種、ナイセリア属の種、ビブリオ属の種およびシュードモナス属の種からなる群より選択される、実施形態1に記載のグラム陰性細菌。
6.大腸菌である、実施形態5に記載のグラム陰性細菌。
7.前記調節遺伝子が肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)調節遺伝子である、実施形態1〜6のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
8.前記肺炎連鎖球菌調節遺伝子が、肺炎連鎖球菌1型に由来する、実施形態7に記載のグラム陰性細菌。
9.前記肺炎連鎖球菌調節遺伝子が、肺炎連鎖球菌4型に由来する、実施形態7に記載のグラム陰性細菌。
10.前記調節遺伝子が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)調節遺伝子である、実施形態1〜9のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
11.前記調節遺伝子が、B群溶血性連鎖球菌(Staphylococcus agalactiae)調節遺伝子である、実施形態1〜10のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
12.前記調節遺伝子が、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)調節遺伝子である、実施形態1〜11のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
13.オリゴサッカリルトランスフェラーゼをさらに含む、実施形態1〜12のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
14.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、前記グラム陰性細菌にとって異種である、実施形態13に記載のグラム陰性細菌。
15.少なくとも1種の異種グリコシルトランスフェラーゼをさらに含む、実施形態1〜14のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
16.前記異種グリコシルトランスフェラーゼが原核生物グリコシルトランスフェラーゼである、実施形態15に記載のグラム陰性細菌。
17.前記グリコシルトランスフェラーゼが、前記調節遺伝子と同じグラム陽性細菌から取得される、実施形態16に記載のグラム陰性細菌。
18.前記グラム陰性細菌にとってネイティブの1種以上の遺伝子が欠失されているか、または不活性化されている、実施形態1〜17のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
19.前記1種以上の欠失された遺伝子が、waaL遺伝子を含む、実施形態18に記載のグラム陰性細菌。
20.前記1種以上の欠失された遺伝子が、前記グラム陰性細菌でのO抗原生合成に関連するすべての遺伝子を含む、実施形態18に記載のグラム陰性細菌。
21.前記調節遺伝子が、wzg、wzh、wzd、wze、capA、capB、またはcapCである、実施形態1〜20のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
22.グリコシル化のためのコンセンサス配列を含む担体タンパク質をコードする核酸をさらに含む、実施形態1〜21のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
23.前記担体タンパク質をコードする核酸が、前記グラム陰性細菌にとって異種である、実施形態22に記載のグラム陰性細菌。
24.前記担体タンパク質が、緑膿菌(P. aeruginosa)由来の無毒化型外毒素A、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化型溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌易熱性エンテロトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシンの無毒化型変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化型変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン(passenger domain)、C.ジェジュニ(C. jejuni)AcrA、C.ジェジュニ天然糖タンパク質、肺炎連鎖球菌ニューモリシン、肺炎連鎖球菌NOX、肺炎連鎖球菌PspA、肺炎連鎖球菌PcpA、肺炎連鎖球菌PhtD、肺炎連鎖球菌PhtE、肺炎連鎖球菌Ply、または肺炎連鎖球菌LytBである、実施形態22に記載のグラム陰性細菌。
25.前記担体タンパク質が肺炎連鎖球菌タンパク質である、実施形態22に記載のグラム陰性細菌。
26.前記担体タンパク質が、オリゴサッカリルトランスフェラーゼにより多糖にコンジュゲートされる、実施形態22または24に記載のグラム陰性細菌。
27.前記莢膜多糖が、肺炎連鎖球菌CPS1、CPS2、CPS3、CP4、CPS5、CPS6(AおよびB)、CPS7(A、B、C)、CPS8、CPS9(A、L、N、V)、CPS10(A、B、C、F)、CPS11(A、B、C、D、F)、CPS12(A、B、F)、CPS13、CPS14、CPS15(A、B、C、F)、CPS16(A、F)、CPS17(A、F)、CPS18(A、B、C、F)、CPS19(A、B、C、F)、CPS20、CPS21、CPS22(A、F)、CPS23(A、B、F)、CPS24(A、B、F)、CPS25(A、F)、CPS26、CPS27、CPS28(A、F)、CPS29、CPS31、CPS32(A、F)、CPS33(A、B、C、D、F)、CPS34、CPS35(A、B、C、D、F)、CPS36、CPS37、CPS38、CPS39、CPS40、CPS41(A、F)、CPS42、CPS43、CPS44、CPS45、CPS46、CPS47(A、F)、もしくはCPS48;または黄色ブドウ球菌CPS5、もしくはCPS8;B群溶血性連鎖球菌(B群、GBS)CPSIa、CPSIb、CPSII、CPSIII、CPSIV、CPSV、CPSVI、CPSVII、もしくはCPSVIII;またはエンテロコッカス・フェカリスCPSA、CPSB、CPSC、もしくはCPSDである、実施形態1〜26のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
28.グラム陰性細菌で複製可能なベクターであって、グラム陽性細菌での莢膜多糖生合成と関連する調節遺伝子を含む、上記ベクター。
29.UDP-グルコース:ウンデカプレニルリン酸グルコース-リン酸トランスフェラーゼ活性の発現および活性が増大している、実施形態1〜27のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
30.腸内一般細菌(例えば、大腸菌W3110)のコラン酸wcaオペロンによりコードされるWcaJを発現する、実施形態1〜27のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
31.多糖の生成のための、遺伝子操作されたグラム陰性細菌であって、該グラム陰性細菌のGtr酵素をコードする遺伝子が機能的に不活性化されている、上記グラム陰性細菌。32.Gtr酵素をコードする遺伝子の機能的不活性化が、Und-P連結型グルコースの除去をもたらす、実施形態31に記載のグラム陰性細菌。
33.前記グラム陰性細菌のGtr酵素をコードする遺伝子が欠失されている、実施形態31に記載のグラム陰性細菌。
34.GtrA、GtrBおよび/またはGtrSをコードする遺伝子が機能的に不活性化されている、実施形態31または33に記載のグラム陰性細菌。
35.GtrA、GtrBおよび/またはGtrSをコードする遺伝子が欠失されている、実施形態34に記載のグラム陰性細菌。
36.前記グラム陰性細菌のGtr酵素をコードする遺伝子が機能的に不活性化されている、実施形態1〜27のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
37.前記グラム陰性細菌のGtr酵素をコードする遺伝子が欠失されている、実施形態36に記載のグラム陰性細菌。
38.GtrA、GtrBおよび/またはGtrSをコードする遺伝子が機能的に不活性化されている、実施形態36または37に記載のグラム陰性細菌。
39.GtrA、GtrBおよび/またはGtrSをコードする遺伝子が欠失されている、実施形態38に記載のグラム陰性細菌。
40.エシェリキア属の種、大腸菌、シゲラ属の種、クレブシエラ属の種、サルモネラ属の種、イェルシニア属の種、およびシュードモナス属の種からなる群より選択される、実施形態31に記載のグラム陰性細菌。
41.オリゴサッカリルトランスフェラーゼをさらに含む、実施形態31〜40のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
42.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、前記グラム陰性細菌にとって異種である、実施形態41に記載のグラム陰性細菌。
43.前記グラム陰性細菌にとって異種である少なくとも1種のグリコシルトランスフェラーゼをさらに含む、実施形態31〜40のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
44.前記グリコシルトランスフェラーゼが原核生物グリコシルトランスフェラーゼである、実施形態43に記載のグラム陰性細菌。
45.グリコシル化のためのコンセンサス配列を含む担体タンパク質をコードする核酸をさらに含む、実施形態31〜40のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
46.前記担体タンパク質をコードする核酸が、前記グラム陰性細菌にとって異種である、実施形態45に記載のグラム陰性細菌。
47.前記担体タンパク質が、緑膿菌(P. auruginosa)由来の無毒化型外毒素A、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化型溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌易熱性エンテロトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシンの無毒化型変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化型変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニAcrA、およびC.ジェジュニ天然糖タンパク質である、実施形態45に記載のグラム陰性細菌。
48.前記担体タンパク質が、オリゴサッカリルトランスフェラーゼにより多糖にコンジュゲートされる、実施形態45に記載のグラム陰性細菌。
49.前記多糖が肺炎連鎖球菌の莢膜多糖である、実施形態31に記載のグラム陰性細菌。50.前記多糖が、大腸菌O抗原(O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、O187)、サルモネラ属の種(S.エンテリカ亜種エンテリカ(S. enterica subsp. Enterica)、S.エンテリカ亜種サラマエ(S. enterica subsp. Salamae)、S.エンテリカ亜種アリゾナエ(S. enterica subsp. arizonae)、S.エンテリカ亜種ジアリゾナエ(S. enterica subsp. Diarizonae)、S.エンテリカ亜種ホウテナエ(S. enterica subsp. Houtenae)、S.ボンゴリ(S. bongori)、およびS.エンテリカ亜種インディカ(S. enterica subsp. Indica)、およびO 1〜67型、シュードモナス属の種(緑膿菌O血清型1〜20)、クレブシエラ属の種(特に、K.ニューモニエ(K. pneumonia)血清型O1、O2(および下位血清型)、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12)、アシネトバクター属O抗原(特に、A.バウマンニイ(A. baumannii)O抗原)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)O抗原(血清型A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L1、L2、L3)、コレラ菌(Vibrio cholera)O抗原O1〜155、リステリア属の種、特にL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)1型、2型、3型、4型およびそれらの下位血清型、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清型1〜15 O抗原、ボルデテラ・パラペルツッシス(Bordetella parapertussis)O抗原、ブルクホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)およびシュードマレイ(pseudomallei)O抗原、野兎病菌(Francisella tularensis)、カンピロバクター属の種(C.ジェジュニ);クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)(血清型A、G、H、K、S1、S4、D、Cd-5、およびウェルシュ菌(C. perfringens)血清型A、B、C、DおよびE)の莢膜多糖、黄色ブドウ球菌5型および8型、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes)(B群連鎖球菌莢膜血清型多糖)、大腸菌、B群溶血性連鎖球菌(Streptococcus agalacticae)(A群連鎖球菌莢膜多糖)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(血清型A、B、C、W、Y、X)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、エンテロコッカス・フェカリス莢膜多糖I〜V型;ならびに他の表面多糖構造、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)糖脂質)、髄膜炎菌ピリン(pilin)Oグリカンおよびリポオリゴ糖(lipooligosaccharide)(LOS)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)LOS、リューシュマニア属主要リポホスホグリカン(Leishmania major lipophosphoglycan)、腫瘍関連炭水化物抗原、マラリアグリコシルホスファチジルイノシトール(malaria glycosyl phosphatidylinositol)、またはヒト型結核菌(mycobacterium tuberculosis)アラビノマンナンである、実施形態31〜48のいずれかに記載のグラム陰性細菌。
51.実施形態1〜27および29〜50のいずれかに記載のグラム陰性細菌により生成される組み換え糖タンパク質。
52.タンパク質の産生に好適な条件下で実施形態1〜27および29〜50のいずれかに記載のグラム陰性細菌を培養するステップを含む、組み換え糖タンパク質の生成方法。
53.前記組み換え糖タンパク質を精製するステップをさらに含む、実施形態52に記載の方法。
54.プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)O抗原遺伝子クラスターを含む遺伝子操作された大腸菌細胞であって、該O抗原遺伝子クラスターのwbgW遺伝子が不活性化されており、該大腸菌細胞がUnd-PP-D-FucNAc4Nを生成する、上記大腸菌細胞。
55.ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)またはプレシオモナス・シゲロイデスO17 O抗原遺伝子クラスターを含む遺伝子操作された大腸菌細胞であって、該O抗原遺伝子クラスターのwbgW遺伝子が不活性化されており、該大腸菌細胞がUnd-PP-D-FucNAc4Nを生成する、上記大腸菌細胞。
【0115】
種々の刊行物、特許および特許出願が本明細書中に引用され、これらの開示はその全体で参照により組み入れられる。