特許第6833825号(P6833825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6833825画像内の物体間のギャップを識別する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833825
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】画像内の物体間のギャップを識別する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20210215BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20210215BHJP
   G06T 7/12 20170101ALI20210215BHJP
【FI】
   A61B6/03 360J
   A61B6/03 360D
   G06T7/00 612
   G06T7/12
【請求項の数】27
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-511759(P2018-511759)
(86)(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公表番号】特表2018-531653(P2018-531653A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】AU2016050834
(87)【国際公開番号】WO2017035602
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月5日
(31)【優先権主張番号】2015903625
(32)【優先日】2015年9月4日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】512062121
【氏名又は名称】ストラックスコープ ピーティワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】STRAXCORP PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー ゼバゼ
(72)【発明者】
【氏名】ユー ペン
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0086465(US,A1)
【文献】 特開2014−068985(JP,A)
【文献】 特開2006−325629(JP,A)
【文献】 特開2009−018065(JP,A)
【文献】 特表平10−509074(JP,A)
【文献】 特表2013−504341(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0232375(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0270434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/055
A61B 6/00 − 6/14
G06T 7/00 − 7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像内の物体間のギャップを識別するコンピュータ実施方法であって、前記方法は、
前記画像内又はその2値化画像内の前記物体の輪郭を検出するステップと、
前記画像内の、又は少なくとも前記物体のそれぞれの一部分を含む前記画像の一部分である交差領域内の、前記物体間の少なくとも1つのパス又はギャップを、
前記画像又は前記交差領域のそれぞれの1つ以上の行および列の代表的な減衰又は密度を決定するステップ、
代表的な減衰値または密度値が0である列内の画素である第1の画素及び代表的な減衰値または密度値が0である行内の画素である第2の画素を識別するステップ、
2つ以上の境界の各々の上の少なくとも1つの第1又は第2の画素を識別することによって2つ以上の境界の間にパス又はギャップが存在するかどうかを決定するステップ、及び
前記少なくとも2つの境界の間の1つ以上のパスを検出するステップによって、
位置決定するステップと、
前記1つ以上の検出したパスを示す結果を出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、更に、前記画像又は前記交差領域の細分割部内の前記物体間の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するステップを備え、前記細分割部は少なくとも1画素の幅及び高さを有し、前記細分割部内のそれぞれの行及び列の代表的な減衰又は密度を決定するステップを含む、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、
(i)前記画像のヒストグラムを均等化して均等化画像を生成するステップ、
(ii)前記画像又はその均等化画像を2値化して2値化画像を生成するステップ、
(iii)前記画像又はその2値化画像をフィルタ処理してエッジ情報を維持しながらノイズを除去するステップ、
(iv)侵食カーネルを前記画像又はその2値化画像に適用するステップ、
(v)2つ以上の最も長い輪郭で境界付けされる領域を決定するステップ、及び
(vi)前記画像をグレイスケール画像に変換するステップ、
のいずれか1つ以上を更に備える、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するステップは、前記画像内の、前記交差領域内の、任意の1つ以上の細分割部内の、前記細分割部の複数内の、又はすべての細分割部内の、少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定しようと試みるステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、それぞれのサイズの複数組の細分割部を規定するステップを備える、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法において、代表的な減衰値または密度値が0である列内の画素であって、代表的な減衰値または密度値が0である行内の画素でもある第3の画素を識別するステップを備える、方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記2つ以上の境界の各々の上の前記少なくとも1つの第1又は第2の画素を識別するステップは、前記画像又は前記交差領域の細分割部を解析するとき、前記第3の画素を考慮から除外する、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の方法において、前記代表的な減衰又は密度は平均減衰又は密度である、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の方法において、前記検出したパスから1つ以上の最適パスを検出するステップを備える、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の方法において、パス又はギャップが前記画像又は前記交差領域の複数の境界の間に存在する可能性があるかどうかを、背景画素を示す値を有する、前記2つ以上の境界上の画素を識別することによって決定するステップを含む、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法において、前記パス又はギャップが存在する可能性があるかどうかが決定されるまで、前記交差領域を逐次増加する閾値で繰り返し2値化するステップを含む、方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の方法において、結果を出力するステップは、物体間の、前記1つ以上の検出したパスを表示するステップを備える、方法。
【請求項13】
画像内の物体間のギャップを識別するシステムであって、前記システムは、
前記画像内又はその2値化画像内の前記物体の輪郭を検出する輪郭検出器と、
前記画像内の、又は少なくとも前記物体のそれぞれの一部分を含む前記画像の一部分である交差領域内の、前記物体間の少なくとも1つのパス又はギャップを、
前記画像又は前記交差領域のそれぞれの1つ以上の行および列の代表的な減衰又は密度を決定し、
代表的な減衰値または密度値が0である列内の画素である第1の画素及び代表的な減衰値または密度値が0である行内の画素である第2の画素を識別し、
2つ以上の境界の各々上の少なくとも1つの第1又は第2の画素を識別することによって2つ以上の境界の間にパス又はギャップが存在するかどうかを決定し、
前記少なくとも2つの境界の間の1つ以上のパスを検出することによって、
位置決定するように構成されたパス検出器と、
前記1以上の検出したパスを示す結果を出力するように構成された出力部と、
を備えるシステム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、前記パス検出器は更に、前記画像又は前記交差領域の細分割部内の前記物体間の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するよう構成され、前記細分割部は少なくとも1画素の幅及び高さを有し、前記細分割部内のそれぞれの1つ以上の行及び列の代表的な減衰又は密度を決定するように構成されている、システム。
【請求項15】
請求項13記載のシステムにおいて、
(i)前記画像のヒストグラムを均等化して均等化画像を生成するように構成された画像イコライザ、
(ii)前記画像又はその均等化画像を2値化して2値化画像を生成するよう構成された画像バイナライザ、
(iii)前記画像又はその2値化画像をフィルタ処理してエッジ情報を維持しながらノイズを除去するよう構成されたフィルタ、
(iv)侵食カーネルを前記画像又はその2値化画像に適用する侵食カーネルアプリケータ、
(v)2つ以上の最も長い輪郭で境界付けされる領域を決定するように構成された領域決定器、及び
(vi)前記画像をグレイスケール画像に変換するよう構成されたグレイスケール変換器、のいずれか1つ以上を更に備える、システム。
【請求項16】
請求項13記載のシステムにおいて、前記パス検出器は更に、前記交差領域内及び1つ以上の細分割部内又は前記細分割部の複数内の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するように構成されている、システム。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、前記パス検出器は更に、前記交差領域内及びすべての前記細分割部内の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するように構成されている、システム。
【請求項18】
請求項13乃至17のいずれかに記載のシステムにおいて、前記パス検出器は更に、それぞれのサイズの複数組の細分割部を決定するように構成されている、システム。
【請求項19】
請求項13乃至18のいずれかに記載のシステムにおいて、前記パス検出器は更に、代表的な減衰値または密度値が0である列内の画素であって、代表的な減衰値または密度値が0である行内の画素でもある第3の画素を識別するように構成されている、システム。
【請求項20】
請求項19記載のシステムにおいて、前記パス検出器は、前記2つ以上の境界の各々の上の前記少なくとも1つの第1又は第2の画素を識別するために細分割部を解析するとき、前記第3の画素を考慮から除外するように構成されている、システム。
【請求項21】
請求項13乃至20のいずれかに記載のシステムにおいて、前記代表的な減衰又は密度は平均減衰又は密度である、システム。
【請求項22】
請求項13乃至21のいずれかに記載のシステムにおいて、前記検出したパスから1つ以上の最適パスを検出するよう構成された最適パス検出器を更に備える、システム。
【請求項23】
請求項13乃至22のいずれかに記載のシステムにおいて、前記パス検出器は、パス又はギャップが前記画像又は前記交差領域の複数の境界の間に存在する可能性があるかどうかを、背景画素を示す値を有する、前記2つ以上の境界上の画素を識別することによって決定するように構成されている、システム。
【請求項24】
請求項15記載のシステムにおいて、前記画像バイナライザは、前記パス又はギャップが存在する可能性があるかどうかが決定されるまで、前記交差領域を逐次増加する閾値で繰り返し2値化するように構成されている、システム。
【請求項25】
請求項13乃至24のいずれかに記載のシステムは更に、物体間の、前記1つ以上の検出したパスを表示するように構成されている、システム。
【請求項26】
1つ以上のプロセッサで実行されるとき、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム。
【請求項27】
請求項26に記載のコンピュータプログラムを含むコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2015年9月4日に出願されたオーストラリア国特許出願2015903625号に基づき、該出願の出願日に利益を主張するものであり、その内容は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、画像内の2つの物体又は構造間のギャップ(間隙)を識別する又は2つの物体又は構造を「分離」する方法及びシステムに関し、特に生物組織の解析、例えば骨組織(インビボ等)画像の解析に適用されるが、これに限定されるものではない。特定の実施形態において、本発明は、2つの骨の断面を互いに分離し(即ちセグメント化)し、特性化することができるように、2つの骨の断面間のギャップを識別する。別の特定の実施形態において、本発明は物体又は構造の1つ以上の部分内のギャップの位置決定又は識別に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の技術による画像内の1つ以上の物体の識別及び分離はセグメンテーションを含み、ディジタル画像は同じ特性を共有する画素又はボクセルの複数のグループ、従って画像セグメント、にセグメント化される。セグメンテーションは、医学、マルチメディア、ロボット工学、組立てライン及び公共監視等の全てではないが多くの分野で画像解析に使用されている。
【0004】
画像セグメンテーション(閾値化、クラスタリング、エッジ検出、領域成長及び分割及び結合技術を含む)の多くの方法がある。それらはすべて極めて有用であるが、しばしば画像内の2つ以上の物体を正確に分離又はセグメント化するのに十分な方法は一つもない。従って、複数の方法の組み合わせがしばしば必要とされるが、その組み合わせは多くの場合2つの隣接する物体の分離をするには不十分である。セグメンテーション精度がコンピュータ解析プロシージャの最終的成否を決定する。しかしながら、重要な画像のセグメンテーションは画像解析の最も困難なタスクの一つである。その精度は常にノイズにより悪化され、異なる物体間のギャップが極めて小さいとき、より問題になる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の広範な態様によれば、画像内の物体間のギャップを識別するコンピュータ実施方法が提供され、前記方法は、
前記画像内又はその2値化画像内の前記物体の輪郭を検出するステップと、
前記画像内の、又は少なくとも前記物体のそれぞれの一部分を含む前記画像の一部分である交差領域(例えば、矩形の交差領域)内の、前記物体間の少なくとも1つのパス(通路)又はギャップ(間隙)を、
前記画像又は前記交差領域のそれぞれの1つ以上の行および列の代表的な減衰又は密度を決定し、
0の代表的な減衰又は密度を有する列内の画素である第1の画素及び0の代表的な減衰又は密度を有する行内の画素である第2の画素を識別し、
2つ以上の境界の各々の上の少なくとも1つの第1又は第2の画素を識別することによって2つ以上の境界の間にパス又はギャップが存在するかどうかを決定し、
前記少なくとも2つの境界の間の1つ以上のパスを検出することによって、
位置決定するステップと、
前記1つ以上の検出したパスを示す結果を出力するステップと、
を含む。
【0006】
従って、前記方法は、それぞれ物体又は物体の部分と背景を含む複数の領域の検出、これらの領域の間の交差部の識別、及び異なる部分を分離するパス又はギャップの識別を可能にする。よって、前記方法は多くの応用において物体(大きな物体内の構造であってもよい)の間のギャップの識別を可能にする。前記方法は、2つの物体が近接していても有効である。前記方法は、閾値化、エッジ検出、及び領域成長を使用するが、背景からの物体のセグメント化よりはむしろ、1つの物体と背景のみが存在する区域又は領域を識別する。これらの領域をセグメント化することによって、物体をより容易にセグメント化することができ、物体内のギャップを検出することができる。
【0007】
前記方法は、物体内の破砕、損傷、切れ目の識別に価値があり、特に骨の画像の解析に価値がある。
【0008】
前記方法は、更に、前記画像又は前記交差領域の細分割部内の前記物体間の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するステップを含むことができ、前記細分割部は少なくとも1画素の幅及び高さを有し、前記細分割部内のそれぞれの行及び列の代表的な減衰又は密度を決定するステップを含むことができる。
【0009】
前記方法は、更に、前記画像のヒストグラムを均等化して均等化画像を生成するステップを含むことができる。
【0010】
前記方法は、更に、前記画像又はその均等化画像を2値化して2値化画像を生成するステップを含むことができる。
【0011】
前記方法は、更に、前記画像又はその2値化画像をフィルタ処理してエッジ情報を維持しながらノイズを除去するステップを含むことができる。
【0012】
前記方法は、更に、侵食カーネルを前記画像又はその2値化画像に適用するステップを含むことができる。
【0013】
前記方法は、更に、2つ以上の最も長い輪郭で境界付けされる領域を決定するステップを含むことができる。
【0014】
一実施形態において、前記少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するステップは、前記交差領域内及び1つ以上の前記細分割部内、又は複数の前記細分割部内の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定しようと試みるステップを含むことができる。例えば、前記少なくとも1つのパス又はギャップの位置決定は、前記交差領域内及びすべての前記細分割部内の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定しようと試みるステップを含むことができる
【0015】
別の実施形態において、前記方法はそれぞれのサイズの複数組の細分割部を規定するステップを含む。
【0016】
一実施形態において、前記方法は、0の代表的な減衰又は密度を有する列内の画素であって、0の代表的な減衰又は密度を有する行内の画素でもある第3の画素を識別するステップを含む。前記2つ以上の境界の各々の上の前記少なくとも1つの第1又は第2の画素の識別は、前記再分割部を解析するとき、前記第3の画素を考慮から除外することができる。
【0017】
一実施形態において、前記代表的な減衰又は密度は平均減衰又は密度である。
【0018】
一実施形態において、前記検出したパスから1つ以上の最適パスを検出するステップを含む。
【0019】
別の実施形態において、前記方法は、パス又はギャップが前記画像又は前記交差領域の複数の境界の間に存在する可能性があるかどうかを、背景画素を示す値を有する、前記2つ以上の境界上の画素を識別することによって決定するステップを含む。一例では、前記方法は、前記パス又はギャップが存在する可能性があるかどうかが決定されるまで、前記交差領域を逐次増加する閾値で繰り返し2値化するステップを含む。
【0020】
一実施形態において、前記方法は前記画像をグレイスケール画像に変換するステップを含む。
【0021】
前記結果の出力は、前記1つ以上の検出した物体間のパスを表示するステップを含む。
【0022】
本発明の第2の広範な態様によれば、画像内の物体間のギャップを識別するシステムが提供され、前記システムは、
前記画像内又はその2値化画像内の前記物体の輪郭を検出する輪郭検出器と、
前記画像内の、又は前記物体の少なくともそれぞれの一部分を含む前記画像の一部分である交差領域内の、前記物体間の少なくとも1つのパス又はギャップを、
前記画像又は前記交差領域のそれぞれの1つ以上の行および列の代表的な減衰又は密度を決定し、
0の代表的な減衰又は密度を有する列内の画素である第1の画素及び0の代表的な減衰又は密度を有する行内の画素である第2の画素を識別し、
2つ以上の境界の各々上の少なくとも1つの第1又は第2の画素を識別することによって2つ以上の境界の間にパス又はギャップが存在するかどうかを決定し、
前記少なくとも2つの境界の間の1つ以上のパスを検出することによって、
位置決定することによって、
識別するように構成されたパス検出器と、
前記1以上の検出したパスを示す結果を出力するように構成された出力部と、
を備える。
【0023】
前記パス検出器は、更に、前記画像又は前記交差領域の細分割部内の前記物体間の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するよう構成され、前記細分割部は少なくとも1画素の幅及び高さを有し、前記細分割部内のそれぞれの1つ以上の行及び列の代表的な減衰又は密度を決定する手段を含む。
【0024】
前記システムは、更に、前記画像のヒストグラムを均等化して均等化画像を生成するよう構成された画像イコライザを備えることができる。
【0025】
前記システムは、更に、前記画像又はその均等化画像を2値化して2値化画像を生成するよう構成された画像バイナライザを備えることができる。
【0026】
前記システムは、更に、前記画像又はその2値化画像をフィルタ処理してエッジ情報を維持しながらノイズを除去するよう構成されたフィルタを備えることができる。
【0027】
前記システムは、更に、侵食カーネルを前記画像又はその2値化画像に加える適用するよう構成された浸食カーネルを備えることができる。
【0028】
前記システムは、更に、2つ以上の最も長い輪郭で境界付けされる領域を決定するよう構成された領域決定器を備えることができる。
【0029】
一実施形態において、前記パス検出器は更に、前記交差領域内及び前記細分割部の1つ以上内又は前記細分割部の複数内の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するよう構成される。一例では、前記パス検出器は更に、前記細分割部の1つ以上内及び前記細分割部のすべて内の少なくとも1つのパス又はギャップを位置決定するよう構成される。
【0030】
別の実施形態において、前記パス検出器は更に、それぞれのサイズの複数組の細分割部を決定するよう構成される。
【0031】
一実施形態において、前記パス検出器は更に、0の代表的な減衰又は密度を有する列内の画素であって、0の代表的な減衰又は密度を有する行内の画素でもある第3の画素を識別するよう構成される。
【0032】
一実施形態において、前記パス検出器は、前記2つ以上の境界の各々上の前記少なくとも1つの第1又は第2の画素を識別するために前記細分割部を解析するとき、前記第3の画素を考慮から除外するよう構成される。
【0033】
前記代表的な減衰又は密度は平均の減衰又は密度とすることができる。
【0034】
前記システムは更に、前記検出したパスから1つ以上の最適パスを検出するよう構成された最適パス検出器を備える。
【0035】
前記パス検出器は更に、パス又はギャップが前記画像又は前記交差領域の複数の境界の間に存在する可能性があるかどうかを、背景画素を示す値を有する、前記2つ以上の境界上の画素を識別することによって決定するよう構成される。例えば、前記画像バイナライザは、前記パス又はギャップが存在する可能性があるかどうかが決定されるまで、前記交差領域を逐次増加する閾値で繰り返し2値化するよう構成することができる。
【0036】
前記システムは更に、前記画像をグレイスケール画像に変換するよう構成されたグレイスケール変換器を備える。
【0037】
前記システムは更に、前記1つ以上の検出した物体間のパスを表示するよう構成される。
【0038】
本発明の第3の広範な態様によれば、1つ以上のプロセッサで実行されるとき、第1の広範な態様による方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムが提供される。この態様によれば、このようなコンピュータプログラムを含むコンピュータ可読媒体(例えば非トランジトリコンピュータ可読媒体)も提供される。
【0039】
本発明の上述した態様の各々の様々な個々の特徴の何れも、及び本明細書に記載の実施形態の様々な個々の特徴のいずれも、所望に応じ適当に組み合わせることができることに留意されたい。
【0040】
本発明のより明確な理解のために、例証として添付図面を参照していくつかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施形態による、画像内の2つ以上の物体又は構造間のギャップを識別するシステムの概略図である。
図2図1のシステムの画像プロセッサの概略図である。
図3図1のシステムの画像プロセッサの処理コントローラのメモリの概略図である。
図4図1のシステムの画像プロセッサのより詳細な概略図である。
図5A図1のシステムにより実行される画像処理方法(パス検出を含む)の流れ図である。
図5B図1のシステムにより実行される画像処理方法(パス検出を含む)の流れ図である。
図6A図1のシステムにより実行される画像処理方法に従って処理された画像の順次のバージョンである。
図6B図1のシステムにより実行される画像処理方法に従って処理された画像の順次のバージョンである。
図6C図1のシステムにより実行される画像処理方法に従って処理された画像の順次のバージョンである。
図6D図1のシステムにより実行される画像処理方法に従って処理された画像の順次のバージョンである。
図6E図1のシステムにより実行される画像処理方法に従って処理された画像の順次のバージョンである。
図6F図1のシステムにより実行される画像処理方法に従って処理された画像の順次のバージョンである。
図7A図6Aの画像の陰画版である。
図7B図6Bの画像の陰画版である。
図7C図6Cの画像の陰画版である。
図7D図6Dの画像の陰画版である。
図7E図6Eの画像の陰画版である。
図7F図6Fの画像の陰画版である。
図8A図1のシステムにより実行される画像処理方法による、第1及び第2の矩形X及びYの決定、及び解析のための交差矩形Zの抽出を示す。
図8B図1のシステムにより実行される画像処理方法による、第1及び第2の矩形X及びYの決定、及び解析のための交差矩形Zの抽出を示す。
図9図1のシステムにより実行される画像処理方法による、交差矩形Z内の物体間のギャップの決定を示す。
図10図1のシステムにより実行される画像処理方法による、2つの物体と境を接する領域の交差部を含む矩形Z内の2つの物体間のパスの検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の一実施形態によれば、画像(例えば、骨の一部分)内の2つ以上の物体(ここで、「物体」は物体の構造又は部分を含む)間のギャップを識別するシステムが提供され、図1に10で概略的に示されている。当該技術分野では、ギャップの「識別」は2つ以上の物体を「分離する」ことを意味し得る。従って、システム10は、例えば物体をより精密に識別又は位置決定する、又は一つの物体を別の物体と区別するのに有用であり得る。
【0043】
システム10は、CTスキャナ12、CT制御システム14及び画像プロセッサ16の形態の画像解析器を備える。画像プロセッサ16は、入力装置及び出力装置を備えるユーザインタフェース18を含む。入力装置は、画像プロセッサ16を制御するキーボード20の形態であり、出力装置は画像プロセッサ16による処理前及び処理後のCTスキャナ12からの画像を表示するディスプレイ22の形態である。CTスキャナ12は、CTスキャナ12の中央スキャンボリューム24内に置かれた試料のCTスキャンを実行し、ディジタル化したスキャンデータをCT制御システム14に出力するように構成され、CT制御システム14は、CTスキャナ12から受信したデータから画像データを生成し、これらの画像データを画像プロセッサ16に出力するように構成される。
【0044】
この実施形態では、画像データは試料のスライス画像を構成するが、他の実施形態では、他の断面(例えば、冠状断面、横断面又は斜断面)を使用することができる。
【0045】
システム10はオンライン及びオフラインモードで動作し得る。オンラインモードでは、画像プロセッサ16は(試料のスキャン中又は直後に)CT制御システム14から直接データを受信する。このような構成は臨床状況で、特に(例えば骨の)解析が緊急である場合に使用することができる。このオンラインモードでは、データは、(CT制御システム14及び画像プロセッサ16のそれぞれのUSBに接続された)データリンク又は(CT制御システム14及び画像プロセッサ16が接続される、例えばインターネットの形態の)通信ネットワークを介して、画像プロセッサ16に送信され、このリンク又はネットワークは図1に26で概略的に示されている。
【0046】
オフラインモードでは、画像プロセッサ16はCTスキャナ12及びCT制御システム14により事前に収集されたデータを受信する。このデータは通信リンク又はネットワーク26を介して、又は他の適切な手段(例えばCD−ROM、フラッシュカード等の携帯コンピュータ可読媒体)によって画像プロセッサ16に送ることができる。
【0047】
画像プロセッサ16は、入力装置及び出力装置とデータ通信可能な処理コントローラ28を含み、このコントローラ28は画像処理命令を処理手順(後述する)に従って処理し、処理結果(画像及び/又は検出結果を含み得る)をディスプレイ22に出力するように構成される。
【0048】
図2を参照するに、処理コントローラ28は、上述したように、処理命令を処理手順に従って処理し、処理結果をディスプレイ22に出力するディジタルプロセッサ30を備える。キーボード20及びディスプレイ22は一緒にユーザインタフェース32を構成する。通常、処理命令は処理コントローラ28のメモリ34にプログラムコードとして格納されるが、ハードワイヤードとしてもよい。本明細書では、「プロセッサ」という語は、処理命令を処理手順に従って処理し得る任意の装置、例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラムマブル論理装置又は他の計算装置、汎用コンピュータ(例えば、PC)又はサーバ等、を総称するために使用される。
【0049】
図3はメモリ34の主要コンポーネントのブロック図を示す。メモリ34はRAM36、EPROM38及びマスストレージデバイス40を含む。RAM36は一般的にプログラム及び関連データをプロセッサ30による実行のために一時的に保持する。EPROM38はブートROMデバイスであってもよく及び/又は関連コードを処理するある種のシステムを含んでもよい。マスストレージデバイス40は通常プログラムを処理するために使用される。
【0050】
図4は、図1のシステムのユーザインタフェース32及び処理コントローラ28の別の概略図であり、処理コントローラ28がより詳細に示されている。特に、処理コントローラ28のプロセッサ30はディスプレイ22を制御するディスプレイコントローラ42、ステージングエリア(通常はCT制御システム14)からのDICOM(「医用デジタルイメージング及び通信」)ファイルをポーリングするDICOMファイルポーラ44、DICOMファイルを表示用画像に変換するDICOMファイルコンバータ46、画像プロセッサ16により処理すべきファイルを選択するよう制御可能なファイルセレクタ48、選択したファイル内の画像をグレイスケールに変換するグレイスケールコンバータ50、グレイスケールに変換された画像のヒストグラムを(画像の輝度を正規化し、コントラストを増加するために)均等化する画像イコライザ52、均等化された画像を適切な閾値を用いて2値化する画像バイナライザ54、有益なエッジ情報を保持しながらノイズを除去する中央値画像フィルタ56、平滑化された画像に小さい侵食カーネルを適用する侵食カーネルアプリケータ58、輪郭を検出する輪郭検出器60、領域決定器62、パス検出器64、最適パス検出器66及び結果出力部68を含む。
【0051】
処理コントローラ28のメモリ34は、画像ストレージ70及び結果ファイルストレージ72を含む。
【0052】
処理手順を具現する処理命令は、上述のように、メモリ34に記憶されたプログラムコードの形態であり、以下に記載する処理手順を実行するよう処理コントローラ28を制御するよう構成される。画像プロセッサ16は、(本例では骨の試料からできればインビボ収集された)DICOMファイルをCT制御システム14のポーリングにより(オンラインモード又はオフラインモードで)受信し、そのファイルをメモリ34の画像ストレージ70に記憶する。受信ファイルは、本実施形態ではDICOMファイルであるが、他の実施形態では、JPEG又はTIFF等の異なる画像フォーマットであってもよい。いくつかのこのようなファイルは画像ストレージ70に記憶することができるため、ユーザはファイルセレクタを用いて所望の画像を選択しロードすることができる。
【0053】
画像処理のコア要素は図5A及び5Bの流れ図80で示すように行われる。主なステップの画像への効果は図6A−6Fに示され(又は同等に図7A〜7Fにも示され、これは図6A−6Fの陰画版である)、及び図8Aに示され(又は同等に図8Bにも示され、これは図8Aの陰画版である)。
【0054】
従って、ステップ82において、画像(又は選択された画像)はプロセッサ22にロードされる。ステップ84において、グレイスケールコンバータ50が画像をグレイスケール画像に変換する(ここで、「グレイスケール」は任意のモノトーンフォーマットを示すために使用される)、或いは他の方法で画像から導出されるグレイスケール画像を生成する(図6Aの例示的なグレイスケール画像を参照せよ)。
【0055】
ステップ86において、画像イコライザ52がグレイスケール画像のヒストグラムを均等化して均等化した画像を生成する(図6Bの例示的な均等化画像を参照せよ)。この処理は画像の輝度を正規化し、コントラストを増加する。この実施形態では、例えば、この処理は、
i)グレイスケール画像に対してヒストグラムを計算し、
ii)ヒストグラム瓶の和が所定の値、例えば255、になるようにヒストグラムを正規化し、
iii)ヒストグラムの和又は積分H’:
【数1】

を計算し、
iv)H'をルックアップテーブルとして用いて、
dst(x,y)=H(src(x,y))
となるように画像を変換する、
ことによって行うことができる。
【0056】
ステップ88において、画像バイナライザ54が均等化された画像を所定の閾値(例えば、比較可能試料から実験的に選択される)で2値化して2値化画像を生成する(図6Cの例示的な2値化画像を参照せよ)。骨のセグメンテーションの例では、骨物質は背景物質と比較して極めて高い強度値を有する。強度ヒストグラムの均等化後、高い閾値(例えば、250mgHA/cc、即ち1立方センチ当たり250ミリグラムのハイドロキシアパタイト)を用いて骨を背景から区別することができる。
【0057】
ステップ90において、画像の2値化後に、中央値画像フィルタ56が2値化画像に適用され、エッジ情報を維持しながらノイズを除去することができる(図6Dの例示的なノイズ除去画像を参照せよ)。ステップ92において、侵食カーネルアプリケータが侵食カーネル(この実施形態では、小さい侵食カーネル(例えば2×2、4×4、5×5、本例では3×3))を平滑化された2値化画像に加えることができる(図6Eの例示的な侵食画像を参照せよ)。このステップは2つの骨が互いに極めて接近している場合に対処するもので、「小さい」はこの状況において理解すべきである。
【0058】
ステップ94において、輪郭検出器60がステップ92で得られた2値化画像内の物体の輪郭を検出し、ステップ96において、領域決定器62がこれらの輪郭のうちの2つの最長の輪郭で境界された領域を(本例では矩形の形で)規定し、従って本例では最も長い輪郭及び2番目に長い輪郭とそれぞれ界接する矩形X,Yを規定する(図6A−6F及び図8Aを参照せよ)。このステップは、有界領域(即ち、矩形X,Y)の交差部を構成する原画像の交差領域又は選択領域Zを規定する効果を有し、選択領域Zのエッジの保持を可能とする。矩形の選択領域の例では、選択領域のエッジは、ここでは、便宜上、C及びDで示される2つの水平(又は上及び下)エッジ及びE及びFで示される2つの垂直(又は左及び右)エッジと称する。
【0059】
図6Aの画像から得られる矩形選択領域Zは図9に示されている。本例では解析中の画像から得られた矩形選択領域Zは2つの物体(A及びB)の部分を含むが、他の実施形態では、矩形選択領域は3つ以上、実際には多数の物体を含み得る。
【0060】
ステップ98において、画像バイナライザ54が2値化閾値を用いて矩形領域Zを2値化する。この例では、この2値化閾値はステップ88で設定された閾値と同じ閾値に最初に自動的に選択してよい。得られる2値化された矩形領域Zの画像は2つのカテゴリーの画素、(i)背景及び(ii)物体A及びB内の値と同等の値を有する画素、を含む。
【0061】
ステップ100において、パス検出器64が、物体Aと物体Bの間の分離を達成できるように、矩形Zの2つの境界(例えば、2つの対向する境界)間にパス又はギャップが存在する可能性があるかどうか決定する。便宜上、2値化された選択領域のエッジの画素はそれらが存在するエッジに従って命名される。従って、矩形の選択領域、矩形領域Z、の例では,エッジがC(下エッジ),D(上エッジ)、E(左エッジ)及びF(右エッジ)で示され、エッジ上の画素はそれぞれC画素,D画素,E画素及びF画素で示される。任意の2つの境界C,D,E及びFの間にパスが存在する可能性があるかどうかの決定は、それらの2つ(又はそれ以上)の境界上に背景を示す値を有する画素があるかを識別することを含む。
【0062】
従って、図5Aを参照するに、ステップ102において、パス検出器64は2つ以上の境界の上に背景画素が存在するかどうか決定する。存在しない場合、パス検出器64は2値化閾値を増加させるが、最初の処理がステップ104で継続し、パス検出器64は、このような事象に応答して2値化閾値が既に過度の回数インクリメントされたかどうかを決定し、パス検出器64はこれを、カウントm(最初は1)が検出すべき2値化閾値の最大回数を表す所定の最大値Mまでインクリメントされたかどうかを検査することによって実行する。インクリメントの最大回数は他の方法、例えば2値化閾値の最大許容値を規定することによって設定することができ、最大許容値自体は画素値の範囲に対して絶対項で、又は初期2値化閾値を超える割合で表すことができる。
【0063】
閾値が余り頻繁にインクレメントされなければ(即ち、m<M、閾値の最大回数の検査が行われなければ)、処理はステップ106で継続し、ここで、パス検出器64はステップ98における画像の2値化に使用される閾値を予め選択した又は予め決定した増分だけ増加し、このときmを1だけインクリメントする。背景画素の存在の欠如は、すべての背景が閾値によりキャプチャされ、背景を「示す」ことを意味し、2値化閾値は増加される。
【0064】
処理はその後ステップ98に戻り、画像は画像バイナライザ54によって、増加された閾値で2値化される。これは、2値化閾値が2つ以上の境界上の背景画素を提供するのに有効になるまで数回繰り返される。
【0065】
しかし、閾値のインクリメントの繰り返しがこの結果の達成に失敗する場合、即ちステップ104において、m≧Mである場合、矩形選択領域内の物体のエッジが矩形選択領域内の3つ以上のエッジに存在し、矩形選択の2つ以上のエッジを結ぶパスは存在しない可能性が高い。これはありそうもない結末あるが、これが起こった場合には、処理はステップ108で継続し、システム10はディスプレイ22にギャップは検出できなかったことを示すエラーメッセージを表示するとともに、手動チェックのために画像をディスプレイ22に表示する。
【0066】
ステップ102において、パス検出器64が2つ以上の境界上に背景画素が存在することを決定すると、処理はステップ110で継続し、カウントi及びi’が0に設定される。これらのカウントは、以下で説明するように、交差領域、本例では矩形Z、のiの垂直細分割及びi’の水平細分割への分割を制御するのに使用され、これらの細分割部はその後逐次解析され、この処理はそれぞれi=0及びi’=0からi=n及びi’=n’まで繰り返され、ここでnは垂直方向(E及びF)の画素の数及びn’は水平方向(D及びC)の画素の数である。細分割の最小数は0で、i又はi'=0に対応し、即ち、矩形Zは全体として解析される。何れの方向のこの細分割の最大数は、ギャップが見つからない場合にのみ達する。細分割が決定され判断される順序は臨界的でないことに留意されたい。物体間に1つのパスがあれば、そのパスが見つけ出されるように、且つ、好ましくは、2つ以上のパスがあれば最適なパスが見つけ出されるように、すべての値又は十分な値を処理するならば、カウントi及びi’は最初に任意の初期値(例えば、それぞれn及びn’)に設定することができる。
【0067】
従って、i及びi’の現在値において、パス検出器64はステップ112において瞬時細分割i,i’に従って細分割矩形Z'の数を決定する。この実施形態によれば、細分割i,i’に従う細分割矩形Z'の数は(i+1)×(i’+1)である。
【0068】
ステップ114において、パス検出器64は、再分割i,i’のそれぞれの行及び列の減衰値又は密度値を決定する。ステップ116において、パス検出器64は、再分割i,i’のそれぞれの行及び列の減衰値又は密度値の代表的な値を、本例では個々の値を平均化することによって決定し、得られた代表的な減衰値又は密度値が0である任意の列内の画素をj画素として識別し、得られた代表的な減衰値又は密度値が0である任意の行内の画素をk画素として識別する。ステップ118において、パス検出器64はj画素でもありk画素でもある画素(従って各々がj画素の列とk画素の行の交点位置する画素)をs画素として識別し、j画素でも、k画素でも、s画素でもない画素をh画素として識別する。
【0069】
他の実施形態では、画素j及びkの識別は行又は列方向の平均化によらずに、減算、乗算又は任意の他の適切な演算によって行うことができる。
【0070】
次に、パス検出器64は任意の2つ以上の境界(本例では、境界C,D,E及びF)の間にパス又はギャップが存在するかどうかを決定する。そのために、ステップ120において、パス検出器64は2つ以上の境界の各々の上に少なくとも1つのj画素又はk画素(CDi,j),(EF'i,k)画素)が存在するか決定する。(i,i’がともに0に等しいとき、j及びk画素の代わりにs画素であることに留意されたい)。そうであれば、これらの画素に対応する垂直及び/又は水平ラインはギャップをライン(CD0,jx)及び/又は(EF0,kx)で識別し、ここでxはDに沿うj画素の位置及び/又はEに沿うk画素の位置である。ギャップが検出されたとき、ステップ122において、パス検出器64は(後述するように)1つ以上のパスを検出し、ステップ124において最適パス検出器66が(後述するように)少なくとも1つの最適な有効パスを検出し、ステップ126において結果出力装置68が結果をディスプレイ22に表示する。結果は少なくとも1つの識別した(有効な)パスを示し、好ましくは1つ以上の最適パスを含む。結果はこのようなパスが描写された画像又はその処理画像を含むことができる。
【0071】
処理はその後終了する。
【0072】
ステップ120は、本例では、各再分割i,i’に対して、次の再分割がステップ112で検査される前に実行されることに留意されたい。しかし、代わりに、ステップ120は、計算的に最も効率的で迅速になるように、ステップ112−118がi,i’の所定の選択された値に対して、又はi,i’のすべての値に対して実行された時点でのみ実行することができる。
【0073】
ステップ120においてj及びkのような画素がない場合、処理はステップ128で継続し、パス検出器64が現在の再分割を事実上放棄し、i及び/又はi’をインクリメントして次の再分割に進む。この実施形態では、これは、i’を固定したまま、iを0からその最大値までインクリメントし、次にi’を1だけインクリメントし且つiを再び0からその最大値までインクリメントすることを繰り返すことによって行うことができる。しかしながら、他の実施形態では、i,i’のすべての値が連続的に選択されるならば、異なるインクリメント関数又はアルゴリズムを用いてi及び/又はi’をインクリメントすることができる。
【0074】
処理はその後i,i’の新たな値でステップ112に戻り、パス検出器64は上述のように画像を解析してj及びk画素を識別する。特定の再分割i,i’に対して多数の再分割矩形Z’が存在し得るので、j及びk画素の識別は、その一部のj及びk画素が境界C,D,E又はFの上に位置しないかもしれないので、物体A及びB間のギャップが見つかったことを意味しない。
【0075】
ステップ128において、パス検出器64は、i、i’をインクリメントする前に、i、i’が既に値n及びn’になっているかどうか(又は代替実施形態では、最後の再分割のインデックスであるかどうか)をチェックする。これは、再分割が1画素より小さい幅又は高さを有する再分割矩形Z’で規定されないことを保証するためである。(即ち、n,n’画素がそれぞれの境界に存在するので、境界はn,n’再分割より大きい数に分割すべきではない)。そうであれば、処理はステップ130に進み、エラーメッセージがディスプレイ22に表示され、パスは見つけられなかったこと及び処理を終了することを示す。
【0076】
上述したように、ステップ122において、パス検出器64は、j及びk画素が少なくとも2つの境界の上に存在することを決定した後に、1つ以上の適切なパスを検出する。これは、矩形Zのエッジ(C,D,E,F)をつなぐj及びk画素による連続パスが存在するかどかうかを決定することによって実行され、それによってギャップの存在を識別することができる。(このようなパスはj及びk画素を経由するのみであり、s画素(j画素でもありk画素でもある)はパスが方向を変化することを許し、j画素からk画素へ動くことを許す)。
【0077】
そのためには、パス検出器64は矩形Zの1つのエッジ上の任意の画素(Cjx;Djx;Ekx又はFkx)から出発することができ、ここでxは対応するエッジに沿った画素の位置である。
【0078】
この実施形態では、パス検出器64は画素Djx及びEkxライン、即ちエッジDで始まる垂直ライン及びエッジEで始まる水平ライン、で動作する。処理は、例えば、Dj10(存在するものとする)から始まる。Dj10が1つ以上のEjxとつながる場合、これらのつながる画素はs画素である。パス検出器64はその後Dj10から最も遠く離れたs画素(sx0として示す)まで下方に(垂直に)移動する。パス検出器64はその後、水平に移動すると垂直エッジ(E又はF)に到達し得るか決定する。そうであれば、ギャップは見つかり、エッジEに画素xで到達したと仮定すると、ギャップはジグザグラインDj10−Sxo−Eである。多くのギャップが見つかる可能性がある。最適パス検出器66が以下で説明するように最適パスを検出し、その結果を表示する。
【0079】
x0からの水平移動によってエッジに到達できず、且つ他のs画素が存在しない場合には、ギャップはDj10からの出発では見つけることができない。パス検出器はその後別のDjx、例えばDj15から全処理を繰り返す。
【0080】
しかしながら、依然としてDj10及びsx0から出発し、パス検出器64がEkxに沿って他のs画素を見つけた場合には、パス検出器64は水平に移動して水平方向に最も遠いs画素(例えばsx1)を識別する。パス検出器64はそこから垂直に移動して垂直方向に最も遠いs画素(例えばsx2)を識別する。パス検出器64は、別のエッジ(例えばC)に到達するまで、このように移動し、水平及び垂直移動を交互に繰り返す。こうして、解析はギャップが見つかるまで又はパス検出器64がもう進むことができなくなるまで垂直及び水平の間で進み、その後次の再分割部が解析される。
【0081】
水平及び垂直という語は便宜上使用され、代わりに他の互いに直交する方向を使用してもよく、また任意の他の適切な用語を使用してもよいことは理解されよう。
【0082】
図9の選択矩形Zに適用されたこの方法の一例は図10に示されている。この図において、最も濃い網掛け領域はj画素に、それより明るい領域はs画素に、更に明るい領域はk画素に、最も明るい陰影領域は現在(c)画素に、白画素は骨に、及び陰影画素(例えばbg)は背景に対応する。(背景はこのような画像では一般的に黒として現れるが、j画素と背景とをより明瞭に区別するために陰影が加えられている)。パスpはAとBとの間のジグザグラインである。
【0083】
得られるジグザグラインpはエッジCとDの間のパスであり、従ってギャップは物体AとBとを分離するギャップである。この段階で、最適パス検出器66はこのパスを以下で説明するように検証し、その結果をディスプレイ22に表示する。多くのパスが所定の解析において同時に検出される可能性があり、最適パス検出器66は説明されるように最適パスを検出し検証し、その結果は結果ファイルストレージ72に保存され、結果出力部68によってディスプレイ22に表示される。
【0084】
所定のインクリメントに対して、パス検出器64がギャップを検出できなければ、i及びi’が増加される。しかし、パス検出器64は、場合によっては、ギャップを検出することなく最大値n及びn’(垂直エッジ(E)及び水平エッジ(D)に対応する)にインクリメントすることがある。これは、画像の2値化に使用される域値が低い場合、即ち、その閾値は矩形のエッジ上の背景画素の識別を可能にするが、画像内の物体間のギャップを「開ける」ことができない場合に、起こる。このような場合には、閾値は予め選択した値だけ増加され、物体分離処理が繰り返される。閾値の追加のインクリメントはギャップが初めて検出されるまで実行される。
【0085】
ギャップが見つかると、パス検出器64はギャップの妥当性を検査する。それは所定の基準をチェックすることによって行う。これらの基準は、例えば検査中の試料の属性を参照することにより設定される。例えば、試料が骨を含む場合には、ギャップで分割される画像領域は一定量の骨組織を含み、骨対筋肉の比は所定のレベルに達する必要があり、パス検出器64はこのようなパラメータを所定の基準値と比較し、これらの閾値が満足される場合にのみパスとみなすことができる。
【0086】
多数の適切なパス又はギャップが見つかると、最適なパスは最適パス検出器66によって識別される。すべての候補から最良のパスを見つけるために、下記の最適化問題フォームを設定することができる。
f(x)を最小化
ただし、gi(x)≦bi, i=1,….,m
【0087】
ここで、ベクトルx=(xi,・・・.xn)はパス候補であり、関数fは目的関数であり、関数gi, i=1,・・・,mは制約関数であり、定数bi, i=1,….,mは制約である。パスzは、制約を満足するすべての候補のなかで最も小さい目的値を有する場合に最適とみなせ、即ちg1(x)≦b1, ... ,gm(x)≦bmを有する任意のzに対して、f(z)≧f(x)となる。
【0088】
この定式は、パスで分割された2つの領域内の前景(例えば骨)対(背景(例えば筋肉)の最大の比を達成する目的のために目的関数を使用する。この場合、最適パスはこの比を最大にするパスである。この目的をより妥当にするためにいくつかの制約を課すことができる。例えば、上記の目的関数を用いることによって、たった1つの背景画素が存在するとき、最大の比が達成されるかもしれないが、これは望ましいパスではないかもしれないので、背景は少なくとも所定の数(例えば30)の画素を含まなければならないという制約を決定することができる。
【0089】
一つの実施形態では、目的関数は領域間分散(パスが画像を領域に分割)、領域内分散、又は領域間エントロピー等、又はそれらの組み合わせとすることができる。ここで、領域はパスにより分割された画像部分である。分散又はエントロピーは、分割された領域の2値化画像又は原画像内で計算できる。分散は画素の集合がどのくらい散らばっているかの尺度である。エントロピーは生起する事象の不確かさの尺度である。「領域間エントロピー」を達成することは異なる領域間の中で最大の「差」を達成することに似ている。最大(又は最小)の分散又はエントロピーが達成されるとき、最適パスが得られる。制約関数及び制約は、(ギャップで)分離される物体又は領域の各々は物体A又は物体Bの十分な数の画素(30以上の前景画素)を含むべきであるとすることができる。
【0090】
上記の最適化は最適化問題を構成し、定義することに注意されたい。最大化問題は目的関数を否定することによって処理できる。
【0091】
本発明は、2つの物体、例えば2つの骨又は骨部分を分離する、一例では尺骨から橈骨を分離する、ギャップの識別に関連して説明されている。しかしながら、任意の2つの構造間のギャップ、又は構造内のギャップ、例えば(i)例えば骨を複数の部分に分離する骨折線(骨折の自動診断又は診断の補助を可能にする)、(ii)骨やコンクリートなどの物質内の割れ目、(iii)亀裂、又は(iv)皮質骨の腐食による皮質の切れ目又は軟骨の侵食による軟骨の切れ目(例えば、様々な形の関節炎で観察される)を識別するために使用することができる。
【0092】
本発明の別の重要な特徴及び応用は、パスが見つかったとき、ギャップの長さ、直径、形状および面積等の物理的特性を、画素の数を計数する又は画素の空間的構成を定量化することによって測定することができることにある。これは骨折線又は関節炎侵食等の特性化に有用な情報を提供する。本発明の範囲内において様々な変更が当業者によって容易に実施可能である。よって、本発明はこれより前に例示的に記載した特定の実施形態に限定されないと理解すべきである。
【0093】
添付の特許請求の範囲及び本発明の上記説明において、明示的文言又は必然的含意により文脈上別段に解する必要がある場合を除き、「備える(comprise)」という語又はその活用形(comprises or comprising)は、包括的意味で使用され、すなわち、記述した特徴の存在を明記するために使用されるが、本発明の種々の実施形態における他の特徴の存在又は付加を除外するためではない。
【0094】
さらに、本明細書での従来技術の言及には、こうした従来技術がどの国においても共通一般知識の一部を形成している又は形成していたことを意味する意図はない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図9
図10