【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素利用等先導研究開発事業/高効率水素製造技術の研究/高温水蒸気電解システムの研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る固体酸化物形電気化学システムを表すブロック図である。
固体酸化物形電気化学システムは、電気化学セルスタック10,クロム回収ユニット20、熱交換器30a、30b,外部電源40を有する。
【0010】
図2は、電気化学セルスタック10の構成を表す模式図である。
図3A,
図3Bはそれぞれ、電気化学セルスタック10のセルユニット11の詳細を表す平面図および分解断面図である。なお、
図3Aはセルユニット11中、後述のセパレータ16b、絶縁シート17、集電体18bを除外した状態を表している。
【0011】
固体酸化物形電気化学システムは、水素極ガスG10,酸素極ガスG20を用いて、発電または電気分解を行い、水素極廃ガスG11,酸素極廃ガスG21を排出する。セルユニット11は、これらのガスを通す貫通孔Hを有する。また、電気化学セルスタック10に水素極ガスG10,酸素極ガスG20をそれぞれ供給するために水素極ガス供給ライン,酸素極ガス供給ライン(配管)が用いられる。
【0012】
発電時には、水素極ガスG10,酸素極ガスG20に還元性ガス(水素もしくは炭化水素など)と酸化性ガス(酸素など)が用いられる。このとき、水素極廃ガスG11には未反応の還元性ガスおよび発電反応によって生成された水蒸気が含まれる。酸素極廃ガスG21には未反応の酸化性ガスが含まれる。
【0013】
電解時には、水素極ガスG10に水蒸気が用いられる。このとき、酸素極ガスG20を供給する必要は必ずしもないが、必要に応じて種々のガス(例えば、空気、酸素)が酸素極ガスG20として供給される。水素極廃ガスG11には未反応の水蒸気および電解によって生成された水素ガスが含まれる。酸素極廃ガスG21には電解によって生成された酸素ガスが含まれる。
【0014】
電気化学セルスタック10は、通常600〜1000℃前後の高温で動作することから、後述のように、水素極ガスG10,酸素極ガスG20は、加熱機構(熱交換器30a、30bなど)によって加熱されてから電気化学セルスタック10に供給される。そのため、高温の水素極ガスG10,酸素極ガスG20の供給ライン(配管)や加熱機構などの部材は、高温での耐酸化性に優れた金属材料(クロムを含む金属、例えば、ステンレス鋼)で形成されるのが通例である。部材の表面に一定厚のクロム酸化物層が形成され、それ以上の酸化(腐食)が防止される。
なお、判り易さのために、水素極ガスG10の加熱機構は図示を省略している。
【0015】
電気化学セルスタック10は、セルユニット11,ブスバー12a,12b,エンドプレート13a,13bを有する。複数のセルユニット11が積層され、その上下にブスバー12a,12b,エンドプレート13a,13bが配置されている。
【0016】
セルユニット11は、固体酸化物型電気化学セル(単セル)15,セパレータ16a,16b,絶縁シート17,集電体18a,18bを有し、発電、電気分解を行う。
【0017】
ブスバー12a,12bは、複数の固体酸化物型電気化学セル15から発電時に電力を取り出し、電解時に電流を供給するための導電性の端子である。
エンドプレート13a,13bは、複数の固体酸化物型電気化学セル15の上下にブスバー12a,12bを固定する。この結果、電気化学セルスタック10全体での電気的接続およびガスシールが確保される。
【0018】
固体酸化物型電気化学セル15は、SOFCまたはSOECとして機能する単位セルであり、高出力化のために複数が積層されて用いられる。固体酸化物型電気化学セル15は、水素極151,電解質層152,酸素極153を有する。固体酸化物の電解質層152の両側それぞれに酸素極153と水素極151が配置される。
固体酸化物型電気化学セル15の水素極151,酸素極153にそれぞれ還元ガス、酸化性ガスを供給することで、電気を生成する。あるいは、水素極151に水蒸気を供給して、電気分解する。
【0019】
水素極151は、水素極触媒金属の粒子および酸素イオン伝導性酸化物の粒子を含む。水素極触媒金属としては、例えば、ニッケル、銀、または白金などの金属や、酸化ニッケル、または酸化コバルトなどの金属酸化物が挙げられる。酸素イオン伝導性酸化物は、セラミックス、例えば、サマリア安定化セリア(SDC)、またはガドリニア安定化セリア(GDC)などのセリア系酸化物、またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのジルコニア系酸化物が挙げられる。酸素イオン伝導性酸化物には、後述の電解質層152の固体酸化物を用いてもよい。
【0020】
電解質層152は、電子絶縁性と酸素イオン伝導性を有する固体酸化物の層である。この固体酸化物には、例えば、安定化ジルコニア、ペロブスカイト型酸化物、またはセリア(CeO
2)系電解質固溶体が挙げられる。
安定化ジルコニアとは、安定化剤をジルコニア中に固溶させたジルコニアである。安定化剤としては、例えば、Y
2O
3、Sc
2O
3、Yb
2O
3、Gd
2O
3、Nd
2O
3、CaO、MgOなどが挙げられる。また、ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、LaSrGaMg酸化物、LaSrGaMgCo酸化物、およびLaSrGaMgCoFe酸化物などが挙げられる。また、セリア系電解質固溶体としては、CeO
2を含む材料に、Sm
2O
3、Gd
2O
3、Y
2O
3、またはLa
2O
3などを固溶させた固溶体が挙げられる。
【0021】
電解質層152は、例えば、600〜1000℃の温度範囲内で電子絶縁性と酸素イオン伝導性を有する。この温度範囲内で、酸素イオンは電解質層152を通過できる。
【0022】
酸素極153は、酸素を効率よく解離でき、電子伝導性を有する材料で構成される。この材料には、例えば、ランタン・ストロンチウム・マンガン(LaSrMn)系ペロブスカイト型酸化物(LSM)、LaSrCo酸化物(LSC)、LaSrCoFe酸化物(LSCF)、LaSrFe酸化物(LSF)、LaSrMnCo酸化物(LSMCo)、LaSrMnCr酸化物(LSMCr)、LaCoMn酸化物(LCM)、LaSrCu酸化物(LSC)、LaSrFeNi酸化物(LSFN)、LaNiFe酸化物(LNF)、LaBaCo酸化物(LBC)、LaNiCo酸化物(LNC)、LaSrAlFe酸化物(LSAF)、LaSrCoNiCu酸化物(LSCNC)、LaSrFeNiCu酸化物(LSFNC)、LaNi酸化物(LN)、GdSrCo酸化物(GSC)、GdSrMn酸化物(GSM)、PrCaMn酸化物(PCaM)、PrSrMn酸化物(PSM)、PrBaCo酸化物(PBC)、SmSrCo酸化物(SSC)、NdSmCo酸化物(NSC)、BiSrCaCu酸化物(BSCC)、BaLaFeCo酸化物(BLFC)、BaSrFeCo酸化物(BSFC)、YSrFeCo酸化物(YLFC)、YCuCoFe酸化物(YCCF)、またはYBaCu酸化物(YBC)が挙げられる。
酸素極153は、これらの酸化物の混合体でもよい。例えば、LSM−YSZ、LSCF−SDC、LSCF−GDC、LSCF−YDC、LSCF−LDC、LSCF−CDC、LSM−ScSZ、LSM−SDC、LSM−GDCなどで形成されてもよい。さらに、酸素極153に、例えばPt、Ru、Au、Ag、Pdなどの成分を添加してもよい。
【0023】
セパレータ16a,16bは、固体酸化物型電気化学セル15を外界から遮断するためのものであり、導電性および耐熱性を有する金属(例えば、ステンレス鋼)から構成される。
【0024】
セパレータ16aは、凹部161、溝162、貫通孔Hを有する。
凹部161に、固体酸化物型電気化学セル15を収容される。溝162は、凹部161内に複数配置され、
図3Aの上下方向に水素極ガスG10を流す。
セパレータ16bは、溝163を有する。溝163は、複数配置され、
図3Aの左右方向に酸素極ガスG20を流す。
【0025】
図3Aの上下の一対の貫通孔Hから溝162内に水素極ガスG10、水素極排ガスG11が流入、流出する。水素極ガスG10は、これらの貫通孔Hの一方から溝162を通って水素極151に供給される。反応した水素極ガス(水素極排ガス)G11は、溝162を通って他方の貫通孔Hから排出される。
【0026】
図3Aの左右の一対の貫通孔Hから溝163内に酸素極ガスG20、酸素極排ガスG21が流入、流出する。酸素極ガスG20は、これらの貫通孔Hの一方から溝163を通って酸素極153に供給される。反応した酸素極ガス(酸素極排ガス)G21は、溝163を通って他方の貫通孔Hから排出される。
【0027】
絶縁シート17は、セパレータ16a,16b間を電気的に絶縁する。
集電体18a,18bは、水素極151,酸素極153をそれぞれ対応するセパレータ16a,16bと電気的に接続する。
【0028】
既述のように、ガス供給ライン(配管)や加熱機構などの部材は、クロムを含む金属で形成され、クロム酸化物層によって高温下での腐食から保護される。
しかし、この酸化物が部材から離れ、酸素極ガスG20によって移動する可能性がある。すなわち、クロム酸化物の一部が昇華したり(気体状態)、微粉末状に砕けて飛散したりする(固体状態)。このようにして、部材から放出されたクロム酸化物が酸素極153に到達して、反応、析出し、酸素極153での反応を阻害する可能性がある。
【0029】
図4は、クロム回収ユニット20の一例を模式的に表す断面図である。
クロム回収ユニット20は、熱交換器30a(加熱部)と電気化学セルスタック10の間に配置され、酸素極ガスG20中のクロム酸化物を回収・固定する。
クロム回収ユニット20は、外殻21,ガス供給口22,ガス排出口23,隔壁24,絶縁層25,吸収層26,電極27を有する。
【0030】
外殻21,隔壁24は、導電性および耐熱性を有する材料(例えば、金属)から構成できる。
外殻21は、その内部を外界から遮断する。
ガス供給口22,ガス排出口23は、外殻21内に酸素極ガスG20を供給、排出するためのガスの出入り口である。
隔壁24は外殻21内を複数の区画に分割し、外殻21内の表面積(吸収層26の面積)を大きくする。隔壁24は所定の面を有する部材に対応する。
隔壁24は、隣接する区画を接続するための流路241(例えば、貫通孔)を有する。この結果、ガス供給口22から外殻21内に供給された酸化性ガスは、複数の区画を通過し、ガス排出口23から排出される。
【0031】
隔壁24の面上に、絶縁層25,吸収層26,電極27が形成されている。なお、外殻21の内部にも絶縁層25,吸収層26,電極27を形成できる。
絶縁層25は、吸収層26と隔壁24(および外殻21)の間を電気的に絶縁する。後述のように、吸収層26を負電位に保つことで、クロムの吸収を促進できる。
【0032】
吸収層26は、酸化極ガスG10中のクロム酸化物と反応して、酸化物C1を生成する物質Mの層である。酸化性ガス中のクロムが吸収層26の物質Mと反応し、安定な酸化物C1を生成することで、クロムが吸着、固定される。
【0033】
このとき、酸化物C1の蒸気圧P1は、酸化極ガスG10中のクロム酸化物が酸素極153と反応して形成される化合物C2の蒸気圧P2と同等以下である(P1≦P2)。蒸気圧がこのような関係であれば、ガスG10中のクロム酸化物は、吸収層26に蓄積されてゆく。仮にこのような関係が崩れると、ガスG10中のクロム酸化物は最終的に吸収層26に蓄積されず、電気化学セルスタック10の酸素極153に蓄積されることになる。
【0034】
この蒸気圧の大小関係は、生成される酸化物C1、化合物C2が異なり、同一温度での蒸気圧を比較した結果でも良いし、生成される酸化物C1、化合物C2が同一で、運転時の吸収層26の温度を酸素極153より低くすることで達成してもよい。
【0035】
物質Mとして、次の(1)、(2)の材料を利用できる。
(1)マンガンを含む金属もしくは金属酸化物
物質Mには、例えば、マンガン単体、マンガンクロム鋼、フェロマンガンマンガン鉄フェライトなどを用いることができる。
(2)酸素極153に用いられる酸化物材料
物質Mには、例えば、LSM、LSC、LSCF、LSF、LSMCo、LSMCr、LCM、LSC、LSFN、LNF、LBC、LNC、LSAF、LSCNC、LSFNC、LN、GSC、GSM、PCaM、PSM、PBC、SSC、NSC、BSCC、BLFC、BSFC、YLFC、YCCF、またはYBCを用いることができる。
この内、Mnを含む材料、LSM、LSMCo、LSMCr、LCM、GSM、PCaM、PSMが好ましく、LSMが特に好ましい。物質Mに含まれるマンガンがCrと反応することで、クロム析出を促進できる。
【0036】
酸素極153と吸収層26の構成材料は、同一でも、異なってもよい。同一材料の場合、後述のように、クロム回収ユニット20(酸素極153)と電気化学セルスタック10(吸収層26)に温度差(例えば、50〜100℃)を付ける必要性が高まる。なお、異種材料の場合でも、一般に、ある程度の温度差(例えば、50〜100℃)はあった方が好ましい。
【0037】
吸収層26を多孔質化し、酸素極ガスG20中のクロム酸化物(蒸気や微粉)との接触確率を高めてもよい。例えば、酸化物材料の粉末を塗布または成型することで、多孔質化した吸収層26を作成できる。
【0038】
電極27は、吸収層26上に配置される導体であり、吸収層26に外部電源40からの負電位を印加する。吸収層26を負電位とすることで、クロムの吸収を促進できる。電極27は、吸収層26と酸化性ガスを接触させるために、通気性を有する(例えば、メッシュ状、多孔質状)。
【0039】
図5は、クロム回収ユニット20aの他の一例を模式的に表す斜視図である。
クロム回収ユニット20aは、基体28,絶縁層25,吸収層26,電極27を有する。基体28は、導電性および耐熱性を有する材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)から構成され、複数の貫通孔29を有する。この貫通孔29中に絶縁層25,吸収層26,電極27が積層されている。
クロム回収ユニット20ではガスG20が蛇行して流れたのに対して、クロム回収ユニット20aではガスG20は直線状に流れる。
【0040】
ガスG20が貫通孔29内を通過するときに、ガスG20中のクロムが吸収層26に吸収されて、外部に排出される。
クロム回収ユニット20aでのクロムの吸収メカニズムは、クロム回収ユニット20と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0041】
熱交換器30aは、電気化学セルスタック10から排出される高温の排ガスG21を用いてガスG20を加熱し、クロム回収ユニット20に供給するものであり、供給ライン上に配置され、ガスを加熱する加熱部に対応する。
【0042】
このとき、加熱されたガスG20の温度は、電気化学セルスタック10内の温度よりもある程度低くなるようにする。吸収層26の温度をある程度低くする(例えば、酸素極153の動作温度より低くすることで、クロムの効果的な回収が可能となる。吸収層26の温度をある程度高くしないとクロムとの反応が進まない一方、温度が高すぎると、一旦は反応したクロムが離脱し、クロムの吸収が進まなくなる。
【0043】
クロム回収ユニット20(吸収層26)と電気化学セルスタック10(酸素極153)にある程度の温度差を付けることで、クロム回収ユニット20での効率的なクロムの回収と電気化学セルスタック10での効率的な発電(あるいは電解)の両立が容易となる。この温度差は、例えば、50〜100℃である。
【0044】
このとき、吸収層26(隔壁24の面上、貫通孔29の内面上)の平均的な温度が酸素極153の温度(固体酸化物型電気化学セル15の動作温度)より低ければよい。すなわち、吸収層26の一部の温度が酸素極153の温度と同等あるいは高いことは許容される。
【0045】
熱交換器30bは、クロム回収ユニット20から排出されるガスG20を加熱し、電気化学セルスタック10に供給する。熱交換器30bは、ガスG20の供給ライン上のクロム回収ユニット20と電気化学セル10の間に配置され、ガスG20を加熱する第2の加熱部として機能する。熱交換器30bを用いることで、クロム回収ユニット20と電気化学セルスタック10に適切な温度差を付けるのがより容易となる。
なお、この温度差をそれほど問題としない場合には、熱交換器30bを省略してもよい。
【0046】
以上では、熱交換器30a,30bは、排ガスG21を用いて、ガスG20を加熱している。排ガスG21に換えて、あるいは排ガスG21と共に、ガスG11を用いて、ガスG20を加熱してもよい。また、熱交換器30a,30bの一方または双方をヒータに換えて、電気でガスG20を加熱してもよい。
【0047】
外部電源40は、クロム回収ユニット20の電極27と隔壁24(および外殻21)の間に電圧を印加し、吸収層26を負電位とする。吸収層26によるクロムの吸収を促進できる。
【0048】
本実施形態では、酸素極ガスG20の配管や熱交換器30aの表面から発生するクロム酸化物の気体または微粉をクロム回収ユニット20が吸収する。この結果、電気化学セルスタック10の特性低下を抑制し、長期にわたり効率よく運転できる。
【0049】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る固体酸化物形電気化学システムを表すブロック図である。
第1の実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
第2の実施形態に係る固体酸化物形電気化学システムは、電気化学セルスタック10,クロム回収ユニット20a、熱交換器30a,加熱器50,制御器60を有する。
【0050】
クロム回収ユニット20aは、電気化学セルスタック10と対応する構成を有する。すなわち、クロム回収ユニット20aは、セルユニット11,ブスバー12a,12b,エンドプレート13a,13bを有する。セルユニット11は、固体酸化物型電気化学セル(単セル)15a,セパレータ16a,16b,絶縁シート17,集電体18a,18bを有する。固体酸化物型電気化学セル15aは、水素極151a,電解質層152a,酸素極153aを有する。
【0051】
酸素極ガスG20中のクロムは、クロム回収ユニット20aの酸素極153aに吸着・固定される。
酸素極153aは、酸素極153に用いられる酸化物材料、例えば、LSM、LSC、LSCF、LSF、LSMCo、LSMCr、LCM、LSC、LSFN、LNF、LBC、LNC、LSAF、LSCNC、LSFNC、LN、GSC、GSM、PCaM、PSM、PBC、SSC、NSC、BSCC、BLFC、BSFC、YLFC、YCCF、またはYBCを用いることができる。
この内、Mnを含む材料、LSM、LSMCo、LSMCr、LCM、GSM、PCaM、PSMが好ましく、LSMが特に好ましい。マンガンがCrと反応することで、クロムの吸収を促進できる。
【0052】
クロム回収ユニット20aには、使用済みの固体酸化物型電気化学セルスタックを用いてもよい。すなわち、SOFCまたはSOECでの特性が(クロム被毒以外の要因で)低下した固体酸化物型電気化学セルスタックをクロム回収ユニット20aとして用いることができる。
【0053】
ここで、クロム回収ユニット20aとして用いる電気化学セルスタックは、燃料電池として動作させた方が好ましい。発電に伴う電圧によって、ガスG20中のクロムの酸素極153aへの吸着を促進できる。
このため、クロム回収ユニット20aの水素極151aに、還元性ガス(ガスG10)が供給される。この結果、酸素極153aへの酸化性ガス(ガスG20)の供給と相俟って、クロム回収ユニット20aは発電する。
【0054】
制御器50は、クロム回収ユニット20aの発電反応における過電圧を制御する。すなわち、クロム回収ユニット20aで発生した電力を適宜に他の箇所に供給したり、消費したりする。クロム回収ユニット20aで発生した電力を適宜に消費することで、クロム回収ユニット20a(酸素極153a)での反応、ひいてはクロムの吸収を促進できる。クロム回収ユニット20aで発生した電力がクロム回収ユニット20a内に蓄積されると、クロム回収ユニット20aでの燃料電池反応が阻害されることになる。
【0055】
第1の実施形態と同様、熱交換器30aは、電気化学セルスタック10から排出される高温の排ガスG21を用いてガスG20を加熱し、クロム回収ユニット20に供給する。クロム回収ユニット20(酸素極153a)と電気化学セルスタック10(酸素極153)にある程度の温度差を付けることで、クロム回収ユニット20での効率的なクロムの回収と電気化学セルスタック10での効率的な発電(あるいは電解)の両立が容易となる。
【0056】
加熱器60は、クロム回収ユニット20aから排出されるガスG20を加熱し、電気化学セルスタック10に供給する。加熱器60を用いることで、クロム回収ユニット20aと電気化学セルスタック10に適切な温度差を付けるのがより容易となる。
なお、この温度差をそれほど問題としない場合には、加熱器60を省略してもよい。
本実施形態では、クロム回収ユニット20aで発電した電力が加熱器60でのガスG20の加熱に用いられ、システムの効率的な運用が可能となる。
【0057】
本実施形態によれば、酸素極ガスG20の配管や熱交換器30aの表面から発生するクロム酸化物の気体または微粉をクロム回収ユニット20aが吸収する。この結果、電気化学セルスタック10の特性低下を抑制し、長期にわたり効率よく運転できる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。