(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833889
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス用の織物パッドテープの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20210215BHJP
D03D 27/10 20060101ALI20210215BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20210215BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
H02G3/04
D03D27/10
C09J7/21
C09J201/00
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-61817(P2019-61817)
(22)【出願日】2019年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-221128(P2019-221128A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0071168
(32)【優先日】2018年6月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519110249
【氏名又は名称】チェ,ミョン シク
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ミョン シク
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−529092(JP,A)
【文献】
特開2011−001399(JP,A)
【文献】
特開2012−036516(JP,A)
【文献】
特開昭61−126192(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0597843(KR,B1)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0004031(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
C09J 7/21
C09J 201/00
D03D 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地(10)と、前記表地(10)よりも密度が細かい裏地(20)及び前記表地(1
0)と裏地(20)との間を連続して繰り返して交差するループ(31)により表地(1
0)と裏地(20)との間に一体に形成されるクッション層(30)をそれぞれ5本のポ
リエステル糸の撚糸で一緒に編織する織物パッド(A)の編織工程と、
前記織物パッド(A)を、所望の色の染料と、調剤薬品と、難燃剤及び水を染色機に投
入し混合して加熱した120〜150℃の染色水に浸漬して50〜70分間染色処理を施
した後、70〜90℃において約20〜30分間後処理して染色し、薬品と難燃剤を固着
化させ、取り出して脱水し且つ乾燥させる染色工程と、
前記裏地(20)の下面に接着剤(40)を塗布して、離型紙(50)を織物パッド(
A)の下面に貼着する貼着工程と、
を含んでなることを特徴とするワイヤーハーネス用の織物パッドテープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用の織物パッドテープ及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、緩衝と吸音及び燃焼防止の効果などはもとより、生産性と商品性を極大化させるワイヤーハーネス用の織物パッドテープ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織物地層の下部に、接着剤層と、スポンジ層と、接着剤層及び離型紙層をこの順に設けて作製されて、自動車の走行に際して高い温度に保たれるエンジンルームに取り付けられる、各種の電気装置及び電子装置に用いられるワイヤーハーネスの周りに巻き取り、ワイヤーハーネスを高熱から保護することはもとより、ワイヤーハーネスの振動による騒音などを防止するワイヤーハーネス用の織物パッドテープの製造方法(特許文献1)が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法により製造されるワイヤーハーネス用の織物パッドテープは、その用途からみて、振動を吸収して騒音を防止するスポンジ層の厚さを増やすことができないのに対し、スポンジ層の上面は接着剤層により織地層の下部に接着され、スポンジ層の下面には接着剤層で離型紙層を接着してなるものであるため、接着剤の一部が薄肉のスポンジの接着個所に吸着・硬化してしまうという現象が生じ、スポンジ層のクッションが弱くなって、振動及び騒音防止機能が半減されてしまうなどの不具合があった。
【0004】
また、二重の接着剤層により作業性及び生産性の低下が招かれるなどの不具合はもとより、接着剤の吸着されたスポンジが容易に変質したり壊れたりするなどの現象が生じ、その結果、寿命の短縮が招かれてしまうという不具合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0553949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の上記のような諸事情に鑑みて案出されたものであり、その目的は、緩衝と吸音及び燃焼防止の効果などはもとより、生産性及び商品性を極大化させることにより、ワイヤーハーネス用に加えて、玩具用や帽子用の生地又は床面紙や壁紙などの様々な用途にも使うことのできるワイヤーハーネス用の織物パッドテープ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、表地と、裏地及び前記表地と裏地との間を連続して繰り返し交差するループにより形成されるクッション層が一体となるようにそれぞれ5本のポリエステル糸の撚糸で一緒に編織する織物パッドの編織工程と、所望の色の染料と、調剤薬品と、難燃剤及び水を染色機に投入して混合し、加熱した120〜150℃の染色水に前記織物パッドを浸漬して50〜70分間染色処理を施した後、70〜90℃で約20〜30分間後処理して染色及び薬品と難燃剤を固着化させ、取り出して脱水及び乾燥させて行われる染色工程及び前記裏地の下面に接着剤を塗布して離型紙を織物パッドの下面に貼着する塗布及び貼着工程を含んでなり、緩衝と吸音及び燃焼防止はもとより、生産性と商品性を極大化させるとともに、様々な用途に使うことのできるワイヤーハーネス用の織物パッドテープ及びその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明に係る製造方法により製造されるワイヤーハーネス用の織物パッドテープは、それぞれ5本のポリエステル糸の撚糸により、表地と裏地及びクッション層が一体に編織されてなるものであり、しかも、裏地の下面にのみ接着剤を塗布して離型紙を貼着する作業も一緒に行われることから、生産性の極大化が図られ、生産コストが大幅に節減されるとともに、緩衝及び吸音の効果なども極大化される。
【0009】
また、染色の間に表地と裏地及びクッション層がいずれも難燃処理されることから、難燃効果が大幅に向上したワイヤーハーネス用のテープを提供することが可能になる。
【0010】
さらに、離型紙を剥がし、屋内の床面や壁などに貼着して緩衝材又は吸音材などとしても使うことができ、しかも、接着剤で離型紙を貼着しなかった状態では、玩具用や帽子用の生地又は床面紙や壁紙などの様々な用途にも使うことが可能になるなどの効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る製造方法により製造されたワイヤーハーネス用の織物パッドテープの一部を抜粋し拡大して示す側面図。
【
図2a】本発明に係るワイヤーハーネス用の織物パッドテープの製造方法の工程手順図。
【
図2b】本発明に係るワイヤーハーネス用の織物パッドテープの製造方法の工程手順図。
【
図2c】本発明に係るワイヤーハーネス用の織物パッドテープの製造方法の工程手順図。
【
図2d】本発明に係るワイヤーハーネス用の織物パッドテープの製造方法の工程手順図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係るワイヤーハーネス用の織物パッドテープ及びその製造方法について詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る製造方法により製造されたワイヤーハーネス用の織物パッドテープの一部を抜粋して拡大して示す側面図である。
【0014】
図1に示すワイヤーハーネス用の織物パッドテープは、ポリエステル糸の撚糸により編織される表地10と、前記表地から所定の間隔だけ離れるようにポリエステル糸の撚糸により編織される裏地20と、前記表地と裏地との間を連続して繰り返し交差しながらポリエステル糸の撚糸により編織されるループ31により前記表地と裏地との間に一体に形成されるクッション層30と、前記裏地の下面に塗布される接着剤40及び前記接着剤により裏地の下面に貼着される離型紙50を備えてなる。
【0015】
ループ31は、各上下の端部が表地10及び裏地20の縦糸又は横糸に係止されて結束されるように編織され、長さは、表地と裏地との間隔に対応するように形成される。
【0016】
表地10と裏地20及びクッション層30は、通常の編織機で、それぞれ5本のポリエステル糸の撚糸を用いて一体に編織され、編織後には、所望の色の染料に各種の調剤薬品及び難燃剤を投入し混合した高温の染色水に浸漬して染色を行った後に乾燥させる。
【0017】
こうすれば、表地10と裏地20及びクッション層30が所望の色に染められるとともに、難燃剤により火に燃え難いように加工されることにより、火災の防止効果が得られる。
【0018】
また、染色の間に染色水の温度によりループ31が縮まってその長さが短くなりながら互いに撚り合わせられ、これにより、クッション層30の厚さはわずかに薄くなるのに対し、クッション力は増大されるので、相対的に緩衝力及び吸音力なども大幅に向上する。
【0019】
一方、表地10及び裏地20の密度は、同じくしてもよく、必要に応じては、異なってもよい。
【0020】
すなわち、裏地20の下面に接着剤40を塗布して離型紙50を貼着するときには、前記裏地の密度を接着剤が透過しない程度に細かくすることで、塗布される接着剤が裏地を透過してクッション層30に吸着・凝固されることが防がれて、前記接着剤によりクッション力が弱くなるという現象が全く生じないようにする。
【0021】
いうまでもなく、裏地20の密度を接着剤40が透過しない程度に細かくするときには、表地10の密度は前記裏地よりも細かくなくてもよい。
【0022】
図2a〜
図2dは、本発明に係るワイヤーハーネス用の織物パッドテープ製造方法の工程手順図である。
【0023】
図2aは、本発明に係る製造方法のうち編織工程により形成された織物パッドAを示すものであり、前記織物パッドは、通常の編織機で、それぞれ5本のポリエステル糸の撚糸を用いて、表地10と、裏地20及び前記表地と裏地との間を連続して繰り返し交差するように編織されるループ31により前記表地と裏地との間に一体に形成されるクッション層30を有するように形成される。
【0024】
このようにして編織された織物パッドAは、クッション層30を形成するループ31の各上下の端部が表地10と裏地20の縦糸又は横糸に係止されて結束されるように編織され、これにより、ループの長さは、前記表地と裏地との間隔に対応するように形成される。
【0025】
図2bは、編織された後に染色工程を経た織物パッドAを示すものであり、この染色工程は、所望の色の染料と、各種の調剤薬品と、難燃剤など及び水を染色機に投入し混合して加熱した120〜150℃の染色水に前記織物パッドを浸漬して50〜70分間染色処理を施したあと、70〜90℃において約20〜30分間後処理して染色し、薬品と難燃剤を固着化させ、取り出して脱水及び乾燥させることにより行われる。
【0026】
このように、120〜150℃の染色水において染色及び難燃処理が行われる間に、クッション層30を形成するループ31は、高温の染色水により縮まって長さが短くなりながら互いに撚り合わせられる。
【0027】
これにより、クッション層30の厚さはわずかに薄くなるのに対し、ループ31が互いに撚り合わせられながら団結して塊状化するという現象が生じるので、クッション力がさらに増大されるため、緩衝力も大幅に向上する。
【0028】
また、表地10と裏地20との間には、撚り合わせられながら団結した塊状のループ31により微気孔が無数に形成されることにより、吸音効果も極大化される。
【0029】
図2c及び
図2dは、染色工程を経た織物パッドAの裏地20の下面に接着剤40を塗布し、離型紙50を貼着する工程を通して下面に前記接着剤が塗布された織物パッド及び接着剤により離型紙が貼着されて完成された織物パッドテープBを示すものである。
【0030】
このとき、塗布及び貼着工程は、それぞれ別々に順番に行ってもよいが、染色工程を経てロール状に巻かれた織物パッドAが繰り出されてその下面に接着剤40が塗布されながら搬送されるようにすると同時に、ロール状に巻かれた離型紙50を繰り出して搬送して前記織物パッドの下面に離型紙が貼着されてロール状に巻かれるようにする装置を用いて自動的に一緒に行われるようにすることが好ましい。
【0031】
このようにして製造される織物パッドテープBを使うときには、所要の長さに切断した後、離型紙50を剥がし、接着剤40を用いて貼着されるようにテーピングを行えばよい。
【0032】
このような本発明に係る製造方法により製造される織物パッドテープBは、接着剤40が裏地20を透過してクッション層30に吸着・硬化されるという現象が全く生じないため、長期間が経過しても可撓性がそのまま保たれるので、いつでも手軽にテーピングを行うことが可能になるという特徴がある。
【0033】
また、織物パッドAは、いうまでもなく、ポリエステル糸の撚糸を用いて、表地10と裏地20及びクッション層30を一体に編織して形成するものであり、前記裏地の下面に接着剤40で離型紙50を貼着する作業もまた自動的に一緒に行われるので、生産性が極大化され、しかも、生産コストが大幅に節減されるというメリットもある。
【0034】
さらに、織物パッドAを染色する間に、表地10と裏地20及びクッション層30がいずれも難燃処理されるので、難燃効果が大幅に向上したワイヤーハーネス用のテープを提供することが可能になるという特徴もある。
【0035】
一方、織物パッドテープBは、いうまでもなく、離型紙50を剥がし、接着剤40を用いて屋内の床面や壁などに貼着して緩衝材又は吸音材などとしても使うことができ、前記接着剤が塗布されておらず、且つ、離型紙が貼着されていない織物パッドAは、玩具用や帽子用の生地又は床面紙や壁紙などの様々な用途にも使うことができ、この場合もまた本発明の範囲に属するということはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
10:表地
20:裏地
30:クッション層
31:ループ
40:接着剤
50:離型紙