特許第6833941号(P6833941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6833941
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20210215BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20210215BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   A01B69/00 303Z
   A01B69/00 301
   G05D1/02 H
   B62D6/00
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-163348(P2019-163348)
(22)【出願日】2019年9月6日
【審査請求日】2019年11月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】三崎 真志
(72)【発明者】
【氏名】角田 大
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−123803(JP,A)
【文献】 特開平10−234202(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0023229(US,A1)
【文献】 特開2018−113937(JP,A)
【文献】 特開2018−183101(JP,A)
【文献】 特開2016−095658(JP,A)
【文献】 特開2018−033344(JP,A)
【文献】 特開2018−183072(JP,A)
【文献】 特開2018−050632(JP,A)
【文献】 特開2010−210273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B62D 6/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルによる手動操舵と、前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記車体に設けられ且つ作業装置を着脱可能に連結する連結部と、
前記車体に設置された且つ設定画面を表示可能な表示装置と、
前記手動操舵により走行させた車体の位置に基づいて走行基準ラインを登録する基準登録部と、
操舵切換スイッチによって自動操舵の開始が指令された場合に走行基準ラインに基づいて、前記自動操舵における走行予定ラインを設定し且つ前記自動操舵の制御を開始し、前記操舵切換スイッチによって自動操舵の終了が指令された場合に前記自動操舵の制御を終了する自動操舵制御部と、
前記自動操舵に関する設定情報を、前記連結部に連結される作業装置に応じて登録する設定登録部と、
複数の設定情報を前記作業装置に対応づけて記憶する記憶装置と、
前記車体に設けられ且つ前記連結部に連結された作業装置の識別情報を送信可能な車載ネットワークと、
前記記憶装置に記憶された複数の設定情報うち、所定の設定情報を選択する設定選択部と、
を備え、
前記設定登録部は、前記設定情報の登録を行う際に、前記設定情報として設定済みの作業装置の前記識別情報及び前記設定済みの作業装置の設定値を前記設定画面に表示し、再設定ボタンが選択されたときに前記設定画面に複数の作業装置の識別情報を表示し且つ複数の作業装置の識別情報の中から所定の識別情報が選択された場合は、前記選択された所定の識別情報に対応する作業装置の設定値を操作部材の操作に応じて変更し、前記変更後の設定値と前記所定の識別情報とを対応づけて前記設定情報として前記記憶装置に記憶させ、
前記自動操舵制御部は、前記車載ネットワークに送信された識別情報に対応する作業装置である連結作業装置と、前記設定選択部から当該自動操舵制御部に出力された前記設定情報に含まれる識別情報に対応する作業装置である設定作業装置と、が一致しているか否かを判断し、一致していない場合は前記自動操舵の制御を実行せず、一致している場合で且つ前記操舵切換スイッチによって自動操舵の開始が指令された場合に前記走行基準ラインに基づいて前記自動操舵における走行予定ラインを設定し前記設定した走行予定ラインに基づいて前記自動操舵の制御を実行する作業車両。
【請求項2】
前記設定選択部は、前記表示装置に複数の作業装置の識別情報を表示可能な選択画面を表示し、且つ、前記選択画面に表示された複数の作業装置の識別情報の中から所定の作業装置の識別情報が選択された場合、前記選択された識別情報に対応する前記設定情報を前記記憶装置から抽出し、抽出した前記設定情報を前記自動操舵制御部に出力する請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記表示装置は、前記連結作業装置と前記設定作業装置とが一致していない場合に警告する警告部を備えている請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記操作部材は、前記設定画面において、操作によって複数の作業装置の中から所定の作業装置を選択し且つ選択した作業装置の設定値を変更し、さらに、前記選択画面において、操作によって複数の作業装置の中から所定の作業装置を選択する回動操作部材を含んでいる請求項1〜3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記表示装置は、運転席の前方に配置され且つ前記設定情報の他に運転情報を表示可能であり、
前記回動操作部材は、前記表示装置を装着するフロントカバーに設けられている請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記設定登録部は、前記設定情報として前記走行予定ラインの間隔を前記作業装置毎に登録する請求項1〜5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記設定登録部は、前記選択画面に表示された複数の作業装置の識別情報の中から所定の作業装置の識別情報が選択された場合、前記選択された作業装置の識別情報に応じて、前記操作部材の操作をしたときの前記設定値の増減量を変更する請求項1〜6のいずれかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業機として特許文献1が知られている。特許文献1の農作業機は、手動操舵による手動走行と、走行基準ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行とを切替自在な走行機体と、手動走行と自動走行とを切替自在な切替スイッチとを備えている。また、農作業機は、畝に沿って走行中に右指示ボタンを押した後、走行基準ラインの始点が設定され、走行中に左指示ボタンを押すことによって走行基準ラインの終点が設定される。即ち、自動操舵前に走行基準ラインの設定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−123803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の農作業機では、走行基準ラインを設定した後、走行基準ラインに平行な走行予定ラインを設定することにより、圃場において、走行予定ラインに沿って農作業機を走行させながら繰り返し直進走行を行うことができる。しかしながら、例えば、農作業機の後部等に装着される作業装置(インプルメント)は数多くあり、特許文献1の農作業機では作業装置に対応した設定が考慮されていないため、作業装置に対応した自動操舵の設定を行うことが難しく、圃場における作業が適正に行うことができない場合があるのが実情である。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、走行基準ラインに基づいて自動操舵を行うにあったって、自動操舵を行いながら作業を作業装置に対応して効率よく且つ簡単に行うことができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業車両は、ステアリングハンドルによる手動操舵と、前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、前記車体に設けられ且つ作業装置を着脱可能に連結する連結部と、前記車体に設置された且つ設定画面を表示可能な表示装置と、前記手動操舵により走行させた車体の位置に基づいて走行基準ラインを登録する基準登録部と、操舵切換スイッチによって自動操舵の開始が指令された場合に走行基準ラインに基づいて、前記自動操舵における走行予定ラインを設定し且つ前記自動操舵の制御を開始し、前記操舵切換スイッチによって自動操舵の終了が指令された場合に前記自動操舵の制御を終了する自動操舵制御部と、前記自動操舵に関する設定情報を、前記連結部に連結される作業装置に応じて登録する設定登録部と、数の設定情報を前記作業装置に対応づけて記憶する記憶装置と、
前記車体に設けられ且つ前記連結部に連結された作業装置の識別情報を送信可能な車載ネットワークと、を備え、前記設定登録部は、前記設定情報の登録を行う際に、前記設定情報として設定済みの作業装置の前記識別情報及び前記設定済みの作業装置の設定値を前記設定画面に表示し、再設定ボタンが選択されたときに前記設定画面に複数の作業装置の識別情報を表示し且つ複数の作業装置の識別情報の中から所定の識別情報が選択された場合は、前記選択された所定の識別情報に対応する作業装置の設定値を操作部材の操作に応じて変更し、前記変更後の設定値と前記所定の識別情報とを対応づけて前記設定情報として前記記憶装置に記憶させ、前記自動操舵制御部は、前記車載ネットワークに送信された識別情報に対応する作業装置である連結作業装置と、前記設定選択部から当該自動操舵制御部に出力された前記設定情報に含まれる識別情報に対応する作業装置である設定作業装置と、が一致しているか否かを判断し、一致していない場合は前記自動操舵の制御を実行せず、一致している場合で且つ前記操舵切換スイッチによって自動操舵の開始が指令された場合に前記走行基準ラインに基づいて前記自動操舵における走行予定ラインを設定し前記設定した走行予定ラインに基づいて前記自動操舵の制御を実行する
【0007】
作業車両は、記記憶装置に記憶された複数の設定情報うち、所定の設定情報を選択する設定選択部を備え、前記設定選択部は、前記表示装置に複数の作業装置の識別情報を表示可能な選択画面を表示し、且つ、前記選択画面に表示された複数の作業装置の識別情報の中から所定の作業装置の識別情報が選択された場合、前記選択された識別情報に対応する前記設定情報を前記記憶装置から抽出し、抽出した前記設定情報を前記自動操舵制御部に出力する
作業車両は、前記車体に設けられ且つ前記車体に連結された作業装置の識別情報を送信可能な車載ネットワークを備え、前記自動操舵制御部は、前記車載ネットワークに送信された識別情報に対応する作業装置である連結作業装置と、前記設定選択部から当該自動操舵制御部に出力された前記設定情報に含まれる識別情報に対応する作業装置である設定作業装置と、が一致しているか否かを判断し、一致していない場合は前記自動操舵の制御を実行せず、一致している場合は前記自動操舵の制御を実行する
前記表示装置は、前記連結作業装置と前記設定作業装置とが一致していない場合に警告する警告部を備えている。
【0009】
前記操作部材は、前記設定画面において、操作によって複数の作業装置の中から所定の作業装置を選択し且つ選択した作業装置の設定値を変更し、さらに、前記選択画面において、操作によって複数の作業装置の中から所定の作業装置を選択する回動操作部材を含んでいる
前記表示装置は、運転席の前方に配置され且つ前記設定情報の他に運転情報を表示可能であり、前記回動操作部材は、前記表示装置を装着するフロントカバーに設けられている
前記設定登録部は、前記設定情報として前記走行予定ラインの間隔を前記作業装置毎に登録する。
【0010】
前記設定登録部は、前記選択画面に表示された複数の作業装置の識別情報の中から所定の作業装置の識別情報が選択された場合、前記選択された作業装置の識別情報に応じて、前記操作部材の操作をしたときの前記設定値の増減量を変更する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動操舵を行いながら作業を作業装置に対応して効率よく且つ簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】トラクタの構成及び制御ブロック図を示す図である。
図2】自動操舵を説明する説明図である。
図3】自動操舵の動作を説明する説明図である。
図4】メイン画面M1、設定画面M2〜設定画面M4の一例を示す図である。
図5A】記憶装置に記憶されている作業装置の識別情報の一例を示す図である。
図5B】設定情報の一例を示す図である。
図5C】作業装置の設定を行う際の設定値の増減量の関係を示す図である。
図6】メイン画面M1、サブメニュー画面M6、選択画面M7の一例を示す図である。
図7】走行予定ラインL2の直進部と旋回部とを説明する説明図である。
図8】自動操舵の動作を示す図である。
図9A】ラップ幅が零である場合の走行予定ラインL2の間隔L10の設定を示す図である。
図9B】ラップ幅が零でない場合の走行予定ラインL2の間隔L10の設定を示す図である。
図10】回動操作部材の配置を示す図である。
図11】トラクタの全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図11は作業車両1の一実施形態を示す側面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、作業車両1は、トラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0014】
図11等を用いてトラクタ(作業車両)1について説明する。以下、トラクタ(作業車両)1の運転席10に着座した運転者の前側を前方、運転者の後側を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向を車体幅方向として説明する。
図11に示すように、トラクタ1は、車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3は走行装置7を有していて走行可能である。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
【0015】
原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3には運転席10が設けられている。
また、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部8が設けられている。連結部8には、作業装置2を着脱可能である。作業装置2を連結部8に連結することによって、車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、畝を立てる畝立装置等であり、圃場等の対地に対して作業(対地作業)を行う装置である。
【0016】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0017】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切換部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後進切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタ1の前進及び後進を切り換える。シャトル軸12は、後輪デフ装置20Rに接続されている。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0018】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
【0019】
前変速部5fは、第1クラッチ17と、第2クラッチ18とを有している。第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、推進軸5aからの動力が伝達可能であって、例えば、シャトル軸12の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1クラッチ17及び第2クラッチ18からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0020】
第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、油圧クラッチ等で構成されている。第1クラッチ17には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される第1作動弁25に接続されている。第1クラッチ17は、第1作動弁25の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2クラッチ18には油路が接続され、当該油路には第2作動弁26に接続されている。第2クラッチ18は、第2作動弁26の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第1作動弁25及び第2作動弁26は、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0021】
第1クラッチ17が切断状態で且つ第2クラッチ18が接続状態である場合、第2クラッチ18を通じてシャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪7F及び後輪7Rが動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪7Fと後輪7Rとの回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1クラッチ17が接続状態で且つ第2クラッチ18が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪7Fの回転速度が後輪7Rの回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態)。また、第1クラッチ17及び第2クラッチ18が切断状態である場合、シャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪7Rが動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
【0022】
トラクタ1は、測位装置40を備えている。測位装置40は、D−GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置40は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて位置(例えば、緯度、経度)を検出する。測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に車体3に取付けられている。この実施形態では、受信装置41は、キャビンのルーフの上方に支持部材を介して取付けられている。なお、受信装置41の取付箇所は、実施形態に限定されない。
【0023】
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置42によって、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、運転者の操作によって車体3の操舵を行う手動操舵と、運転者の操作によらずに自動的に車体3の操舵を行う自動操舵とを行うことが可能な装置である。
【0024】
操舵装置11は、ステアリングハンドル(ステアリングホイール)30と、ステアリングハンドル30を回転可能に支持するステアリングシャフト(回転軸)31とを有している。また、操舵装置11は、補助機構(パワーステアリング装置)32を有している。補助機構32は、油圧等によってステアリングシャフト31(ステアリングハンドル30)の回転を補助する。補助機構32は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁であり、ステアリングシャフト31の操舵方向(回転方向)に対応して切り換わる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続されている。
【0025】
したがって、運転者がステアリングハンドル30を把持して一方向又は他方向に操作すれば、当該ステアリングハンドル30の回転方向に対応して制御弁34の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁34の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。つまり、車体3は、ステアリングハンドル30の手動操舵によって、進行方向を左又は右に変更することができる。
【0026】
図2に示すように、自動操舵を行うに際しては、まず、自動操舵を行う前に走行基準ラインL1を設定する。走行基準ラインL1の設定後に、当該走行基準ラインL1に平行な走行予定ラインL2の設定を行うことによって自動操舵を行うことができる。自動操舵では、測位装置40によって測定された車体位置と走行予定ラインをL2とが一致するように、トラクタ1(車体3)の進行方向の操舵を自動的に行う。
【0027】
具体的には、自動操舵を行う前にトラクタ1(車体3)を圃場内の所定位置に移動させ(S1)、所定位置にて運転者がトラクタ1に設けられた操舵切換スイッチ(登録スイッチ)52の操作を行うと(S2)、測位装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の始点P10に設定される(S3)。また、トラクタ1(車体3)を走行基準ラインL1の始点P10から移動させ(S4)、所定の位置で運転者が操舵切換スイッチ(登録スイッチ)52の操作を行うと(S5)、測位装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の終点P11に設定される(S6)。したがって、始点P10と終点P11とを結ぶ直線が走行基準ラインL1として設定される。
【0028】
走行基準ラインL1の設定後(S6後)、例えば、トラクタ1(車体3)を、走行基準ラインL1を設定した場所とは異なる場所に移動させ(S7)、運転者が操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S8)、走行基準ラインL1に平行な直線である走行予定ラインL2が設定される(S9)。走行予定ラインL2の設定後、自動操舵が開始され、トラクタ1(車体3)の進行方向が走行予定ラインL2に沿うように変更される。例えば、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して左側にある場合には、前輪7Fが右に操舵され、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して右側にある場合には、前輪7Fが左に操舵される。なお、自動操舵中において、トラクタ1(車体3)の走行速度(車速)は、運転者が手動で当該トラクタ1に設けられたアクセル(アクセルペダル、アクセルレバー)210の操作量を変更したり、変速部材(変速レバー、変速スイッチ)211によって変速装置5の変速段を変更することにより変更することができる。
【0029】
また、自動操舵の開始後、運転者が任意の箇所で操舵切換スイッチ52の操作を行うと、自動操舵を終了することができる。即ち、走行予定ラインL2の終点は、操舵切換スイッチ52の操作による自動操舵の終了によって設定することができる。つまり、走行予定ラインL2の始点から終点までの長さは、走行基準ラインL1よりも長く設定したり、短く設定することができる。言い換えれば、走行予定ラインL2は、走行基準ラインL1の長さとは関連付けされておらず、走行予定ラインL2によって、走行基準ラインL1の長さよりも長い距離を自動操舵しながら走行させることができる。
【0030】
図1に示すように、操舵装置11は、自動操舵機構37を有している。自動操舵機構37は、車体3の自動操舵を行う機構であって、測位装置40で検出された車体3の位置(車体位置)に基づいて車体3を自動操舵する。自動操舵機構37は、ステアリングモータ38とギア機構39とを備えている。ステアリングモータ38は、車体位置に基づいて、回転方向、回転速度、回転角度等が制御可能なモータである。ギア機構39は、ステアリングシャフト31に設けられ且つ当該ステアリングシャフト31と供回りするギアと、ステアリングモータ38の回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含んでいる。ステアリングモータ38の回転軸が回転すると、ギア機構39を介して、ステアリングシャフト31が自動的に回転(回動)し、車体位置が走行予定ラインL2に一致するように、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。
【0031】
図1及び図10に示すように、トラクタ1は、表示装置(自動操舵モニタ)45を備えている。表示装置45は、トラクタ1に関する様々な情報を表示可能な装置であって、少なくともトラクタ1の運転情報を表示可能である。表示装置45は、運転席10の前方に設けられたフロントカバー(操縦台カバー)151に装着されている。フロントカバー151には、燃料、水温、エンジン回転数などの運転情報を表示するメータパネル46が設けられ、メータパネル46の前方に表示装置(自動操舵モニタ)45が配置されている。フロントカバー151には、回動操作部材50が設けられている。また、フロントカバー151には、回動操作部材50、設定スイッチ51、補正スイッチ53が横並びに配置されている。
【0032】
表示装置45には、回動操作部材50が接続されていて、回動操作部材50の操作によって表示装置45を操作することができる。回動操作部材50は、例えば、縦軸50aに回動可能に支持された回転体50bと、回転体50bに設けられたスイッチ50cとを含んでいる。回転体50bを回動することによって、表示装置45に表示されたカーソル、ポインタ等を移動させることができ、スイッチ50cをプッシュ(押圧)することによって決定、キャンセルを行うことができる。
【0033】
図1に示すように、設定スイッチ51は、少なくとも自動操舵の開始前の設定を行う設定モードに切り換えるスイッチである。設定モードは、自動操舵を開始する前に当該自動操舵に関する様々な設定を行うモードであり、例えば、走行基準ラインL1の始点、終点の設定等を行うモードである。
設定スイッチ51は、ON又はOFFに切換可能であり、ONである場合には設定モードが有効である信号を出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を出力する。また、設定スイッチ51は、ONである場合には設定モードが有効である信号を表示装置45に出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を表示装置45に出力する。
【0034】
操舵切換スイッチ52は、自動操舵の開始又は終了を切り換えるスイッチである。具体的には、操舵切換スイッチ52は、中立位置から上、下、前、後に切換可能であり、設定モードが有効である状態で中立位置から下方に切り換えられた場合には自動操舵の開始を出力し、設定モードが有効である状態で中立位置から上方に切り換えられた場合には自動操舵の終了を出力する。また、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から後に切り換えられた場合には、走行基準ラインL1の始点P10を設定することを出力し、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から前に切り換えられた場合には、走行基準ラインL1の終点P11を設定することを出力する。即ち、操舵切換スイッチ52は、走行基準ラインL1の開始位置(始点P10)及び終了位置(終点P11)を設定する登録スイッチと、自動操舵の開始又は終了を切り換えるスイッチとを兼用化している。
【0035】
図1に示すように、トラクタ1は、複数の制御装置60を備えている。複数の制御装置60は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算等を行う装置である。複数の制御装置60は、第1制御装置60A、第2制御装置60B及び第3制御装置60Cである。
第1制御装置60Aは、受信装置41が受信した衛星信号(受信情報)と、慣性計測装置42が測定した測定情報(加速度、角速度等)を受信し、受信情報及び測定情報に基づいて車体位置を求める。
【0036】
また、第1制御装置60Aは、基準登録部150を有している。基準登録部150は、第1制御装置60Aに設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。基準登録部150は、上述したように、走行基準ラインL1の登録、即ち、始点P10及び終点P11の設定を行う。基準登録部150は、設定モードにした状態で手動操舵によってトラクタ1を走行させた状況において、操舵切換スイッチ52を始点設定側に操作すると、車体位置を走行基準ラインL1の始点P10に設定し、操舵切換スイッチ52を終点設定側に操作すると、車体位置を走行基準ラインL1の終点P11に設定する。
【0037】
第2制御装置60Bは、自動操舵制御部200を有している。自動操舵制御部200は、第2制御装置60Bに設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。自動操舵制御部200は、車体3が走行予定ラインL2に沿って走行するように自動操舵機構37のステアリングモータ38を制御する。
図3に示すように、操舵切換スイッチ52を自動操舵の開始側に操作すると、自動操舵制御部200は、走行基準ラインL1に平行な走行予定ラインL2を設定する。自動操舵制御部200は、走行予定ラインL2の設定後、車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値未満である場合、自動操舵制御部200は、ステアリングモータ38の回転軸の回転角を維持する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差(位置偏差)が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して左側に位置している場合は、自動操舵制御部200は、トラクタ1の操舵方向が右方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。即ち、自動操舵制御部200は、位置偏差が零となるように、右方向の操舵角を設定する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して右側に位置している場合は、自動操舵制御部200は、トラクタ1の操舵方向が左方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。即ち、自動操舵制御部200は、位置偏差が零となるように、左方向の操舵角を設定する。
【0038】
なお、上述した実施形態では、車体位置と走行予定ラインL2との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更していたが、走行予定ラインL2の方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行予定ラインL2に対する車体方位F1の角度θgが閾値以上である場合、自動操舵制御部200は、角度θgが零になる(車体方位F1が走行予定ラインL2の方位に一致する)ように操舵角を設定してもよい。また、自動操舵制御部200は、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0039】
また、第2制御装置60Bは、自動操舵制御部200によって自動操舵が行われている場合に、アクセル210が操作されたときは、アクセル210の操作量に応じて、原動機4の回転数(原動機回転数)を変更する。また、第2制御装置60Bは、自動操舵制御部200によって自動操舵が行われている場合に、変速部材211が操作された場合は、変速装置5の変速段を変更する。
【0040】
第3制御装置60Cは、運転席10の周囲に設けられた操作部材の操作に応じて、連結部8を昇降させる。なお、第1制御装置60A、第2制御装置60B及び第3制御装置60Cは一体化されていてもよい。また、上述した走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算は限定されない。以上のように、制御装置60によって、トラクタ1(車体3)を自動操舵することができる。
【0041】
図1に示すように、トラクタ1は、設定登録部100と、記憶装置101とを備えている。設定登録部100は、自動操舵に関する設定情報を作業装置2に応じて登録する。設定登録部100は、第1制御装置60A、第2制御装置60B、第3制御装置60C、表示装置45のいずれかに設けられている。この実施形態では、設定登録部100は、表示装置45に設けられている。設定登録部100は、表示装置45に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。記憶装置101は、不揮発性のメモリ等から構成されている。
【0042】
図4に示すように、例えば、トラクタ1を始動すると、表示装置45にメイン画面M1が表示される。メイン画面M1において、設定アイコン120を選択すると、設定登録部100が起動して、設定登録部100は、表示装置45に設定画面M2を表示させる。設定登録部100は、設定画面M2に自動操舵における複数の設定項目K1、K2を表示する。複数の設定項目K1、K2は、自動操舵を行う際に必要な項目であり、設定項目K1は作業装置2の作業幅W1、設定項目K2は自動操舵で作業を行ったときのラップ幅W2である。設定項目K1、K2は一例であり、限定されない。なお、図4の設定画面M2では、現在設定されている作業装置2の名称と、作業幅W1及び設定項目K2が表示されている。
【0043】
設定画面M2において、再設定ボタン111を選択すると、図4に示すように、設定登録部100は、表示装置45の表示を設定画面M2から設定画面M3に推移させる。設定登録部100は、設定画面M3にトラクタ1に装着可能な複数の作業装置2、即ち、作業装置2の名称、型番、品番等の作業装置2が識別可能な識別情報を表示する。識別情報は、作業者、運転者等が識別できる文字、数字等であればよく限定されない。この実施形態として、識別情報として、ロータリ、代かき、あぜぬりが示されている。
【0044】
詳しくは、設定登録部100は、図5Aに示すように、記憶装置101に記憶されている作業装置2の識別情報を参照して、作業装置2の識別情報の一覧表を設定画面M3の一覧表示部112に表示させる。また、設定登録部100は、作業装置2の識別情報に並べて、どの作業装置2が選択されているかを示す選択部113を設定画面M3に表示する。なお、作業装置2の識別情報は、作業者、運転者等が表示装置45等を操作することによって、記憶装置101に記憶させることが可能である。
【0045】
図4に示すように、設定画面M3には、所定の識別情報を示す部分にカーソルK10が表示されていて、回動操作部材50の回転体50bを回動することによって、カーソルK10の位置を、他の識別情報(他の作業装置2)に移動させることができる。設定登録部100は、設定画面M3において、一覧表示部112に示された複数の作業装置2の中から所定の作業装置2にカーソルK10を合わせて、スイッチ50cを押すことにより、所定の作業装置2を選択する。例えば、図4に示すように、回転体50bを回動することによって、カーソルK10の位置をロータリからあぜぬりに移動したり、代かきに移動することができる。カーソルK10が代かきの位置でスイッチ50cが押された場合、設定登録部100は、現在、カーソルK10が位置する所定の作業装置、例えば、代かきを選択する。
【0046】
設定画面M3において、代かきなどの所定の作業装置2を選択すると、設定登録部100は、表示装置45の表示を設定画面M3から設定画面M4に推移させる。設定登録部100は、設定画面M4では、設定画面M3において選択した所定の作業装置2に対して、設定画面M2で選択された複数の設定項目K1、K2の設定値を設定する。
設定画面M4には、設定値を表示する設定表示部115が表示されている。設定登録部100は、回動操作部材50の回転体50bを一方向に回動することによって、設定表示部115に表示された設定値を減少させ、回転体50bを他方向に回動することによって、設定表示部115に表示された設定値を増加させる。なお、設定画面M4には、回転体50bを模したシンボルマーク116が表示され、回転体50bの方向に回転させたときの設定値の増減が文字等で示されている。また、設定画面M4には、設定値の上限値と下限値とを示す範囲表示部117が表示されていて、範囲表示部117を視認することによって上限値と下限値とを把握することができる。
【0047】
設定登録部100は、スイッチ50cが押されると、設定表示部115に表示された設定値を、所定の作業装置2の設定値として決定する。即ち、回動操作部材50は、設定画面M3,M3において、操作によって複数の作業装置2の中から所定の作業装置2を選択し且つ選択した作業装置2の設定値を変更することができる。例えば、設定画面M2において作業幅W1が選択され且つ設定画面M3において、代かきの作業装置2が選択した場合には、設定画面M4の設定値は、代かきの作業装置2の作業幅W1となる。
【0048】
設定登録部100は、設定画面M4において、所定の作業装置2の設定値を決定すると、図5Bに示すように、複数の設定項目K1、K2、所定の作業装置2(所定の識別情報)、設定値とを関連づけて、関連付けた情報を、設定情報として記憶装置101に記憶する。設定登録部100は、トラクタ1に設定情報の登録を行う。上述したように、複数の作業装置2において、複数の設定項目K1、K2の選択、設定値の設定又は変更を行うことによって、複数の作業装置毎に設定情報を登録することができる。
【0049】
なお、図5Cに示すように、設定登録部100は、所定の作業装置2の設定値を設定するときにおいて、回動操作部材50の回転体50bを回動したときの単位当たりの回動量に対する設定値の増減量は、作業装置2によって異ならせている。
図1に示すように、トラクタ1は、設定選択部102を備えている。設定選択部102は、記憶装置101に記憶された複数の設定情報うち所定の設定情報を選択する。設定選択部102は、第1制御装置60A、第2制御装置60B、第3制御装置60C、表示装置45のいずれかに設けられている。この実施形態では、設定選択部102は、表示装置45に設けられている。設定選択部102は、表示装置45に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。記憶装置101は、不揮発性のメモリ等から構成されている。
【0050】
図6に示すように、メイン画面M1において、開始アイコン121を選択すると、表示装置45はサブメニュー画面M6を表示する。サブメニュー画面M6には、複数の項目が表示される。複数の項目は、自動操舵を開始時の設定を示す初期項目(直線キープ設定)131、表示装置45の画面に関する設定を示す画面項目132、設定情報等のリセット等を示すメモリ項目133が含まれている。サブメニュー画面M6において、カーソルK10が表示され、回動操作部材50を操作することにより、項目の選択/決定を行うことができる。サブメニュー画面M6において、直線キープ設定131が選択されると、表示装置45は直線キープ設定M7が表示される。直線キープ設定M7でも、複数の項目が表示される。複数の項目は、作業機の選択を示す機種項目134、アシストを行う場合における画面の表示項目135、位置補正を行う場合の補正項目136が表示される。
【0051】
直線キープ設定M7において、機種項目134が選択されると、設定選択部102が起動して、設定選択部102は、表示装置45に選択画面M8を表示させる。設定選択部102は、記憶装置101を参照して、記憶装置101に記憶されている設定情報に示された作業装置2(識別情報)の一覧表を選択画面M8の一覧表示部140に表示する。即ち、設定選択部102は、設定登録部100において、設定値が設定されている作業装置2の識別情報を選択画面M8に表示する。選択画面M8には、所定の識別情報を示す部分にカーソルK10が表示されていて、設定画面M3と同様に、回動操作部材50の回転体50bを回動することによって、カーソルK10の位置を、他の識別情報(他の作業装置2)に移動させることができる。設定選択部102は、選択画面M8において、一覧表示部140に示された複数の作業装置2の中から所定の作業装置2にカーソルK10を合わせて、スイッチ50cを押すことにより、所定の作業装置2を選択する。例えば、図6に示すように、回転体50bを回動することによって、カーソルK10の位置を代かき、ロータリ、代かき、あぜぬりに移動することができ、カーソルK10があぜぬりの位置でスイッチ50cを押すことにより、あぜぬりの作業装置2を選択することができる。即ち、回動操作部材50は、選択画面M8において、操作によって複数の作業装置2の中から所定の作業装置2を選択することができる。選択画面M8において、所定の作業装置2が選択されると、設定選択部102は、所定の作業装置2に設定情報(識別情報、作業幅W1、ラップ幅W2)を、第2制御装置60B(自動操舵制御部200)に出力する。
【0052】
なお、選択画面M8を直線キープ設定M7から選択画面M8に切り換えた場合において、カーソルK10の位置は、現在、設定されている作業装置2に対応する識別情報の位置になる。例えば、現在、代かきの作業装置2が選択されている場合は、選択画面M8において、カーソルK10は代かきに対応する位置に表示される。これにより、運転者は、現在の自動操舵における作業装置2が代かきに設定している状態であることをカーソルK10の位置で把握することができる。
【0053】
さて、圃場H1において作業(対地作業)を行う場合、トラクタ1に作業に対応した作業装置2を連結して、作業装置2を連結したトラクタ1を圃場H1で走行させる。図7に示すように、例えば、圃場H1において、対地作業を行う場合は、走行予定ラインL2に示すように、直進と旋回とを繰り返しながら作業を行う。即ち、トラクタ1が畦際に近づいた場合に旋回をした後、直進し、反対側の畔際に近づくと再び旋回をした後、直進をすることになる。なお、旋回の際は、作業姿勢である作業装置2を上昇させ、旋回の部分は作業を行わない。
【0054】
このように、ターンを繰り返しながら作業を行うに際して、自動操舵は、走行予定ラインL2の直進部分SLn(n=1、2、3・・・)にて行われる。例えば、1本目の直進部分SL1において、運転者が操舵切換スイッチ52を操作することにより、開始位置ST1(STn:n=1)で自動操舵を開始した後、運転者は作業状態を見ながら操舵切換スイッチ52を操作することにより、終了位置EN1(ENn:n=1)で自動操舵を終了する。また、運転者は、1本目の直進部分SL1において自動操舵を行っている状況下に応じて補正スイッチ53を操作することにより、トラクタ1の車体位置の微調整を行ったり、作業状況に応じてアクセル210及び変速部材211を操作してトラクタ1の車速の調整を行う。
【0055】
また、運転者は、終了位置EN1で自動操舵を終了後にトラクタ1を手動操舵することで、旋回を行い、2本目の直進部分SL2において、操舵切換スイッチ52を操作することにより、開始位置ST2で自動操舵を開始し、操舵切換スイッチ52を操作することにより、終了位置EN2で自動操舵を終了する。即ち、圃場H1において、トラクタ1は、直進部分SLnで結ばれる旋回部分RLnを、手動操舵をしながら走行することになる。
【0056】
以上のように、開始位置STn(n=1、2、3・・・)、終了位置ENn(n=1、2、3・・・)において操舵切換スイッチ52を操作することにより、自動操舵及び手動操舵を繰り返しながら作業を行うことができる。
図8は、自動操舵における制御の流れを示している。図8に示すように、トラクタ1が駆動すると、第2制御装置60Bは、車載ネットワーク等を介してトラクタ1(車体3)に装着されている作業装置2の識別情報(名称、型番、品番等)を参照する(S1)。また、第2制御装置60Bは、設定選択部102から出力された設定情報、即ち、設定選択部102で選択された設定情報を参照する(S2)。第2制御装置60Bは、設定選択部102によって選択された設定情報に対応する作業装置(設定作業装置)2と、車体3に連結された作業装置(連結作業装置)2とが一致する場合(S3、Yes)に、警告を行わない。設定作業装置と連結作業装置とが一致しない場合(S3、No)、警告を行う(S4)。具体的には、第2制御装置60Bは、トラクタ1にも設けられた警告部141に警告を示す信号を出力する。警告部141は、例えば、表示装置45に設けられたLED等のランプ、音声又は音を発生するスピーカ等であり、ランプの点灯、点滅、スピーカからの音声又は音によって、設定作業装置と、連結作業装置とが異なることを運転者等に知らせる。
【0057】
第2制御装置60B(自動操舵制御部200)は、設定作業装置と連結作業装置とが一致し(S3、Yes)、自動操舵の開始の操作が行われると(S5、Yes)、設定作業装置の設定情報に応じて走行予定ラインL2の設定を行う(S6:ライン設定)。ライン設定S6では、走行基準ラインL1と略平行なラインを走行予定ラインL2に設定する。また、図9Aに示すように、ライン設定S5では、設定作業装置の設定情報に示されたラップ幅W2が零である場合、直進部分SLnの間隔L10を作業幅W1に設定する。図9Bに示すように、ライン設定S5では、設定作業装置の設定情報に示されたラップ幅W2が零でない場合、直進部分SLnの間隔L10を作業幅W1からラップ幅W2を除算した値に設定する。つまり、設定登録部100によって登録した設定情報によって走行予定ラインL2の間隔L10を作業装置2毎に登録することができる。
【0058】
作業車両1は、手動操舵と自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、手動操舵により走行させた車体3の位置に基づいて走行基準ラインL1を登録する基準登録部150と、走行基準ラインL1に基づいて、自動操舵における走行予定ラインL2を設定し且つ自動操舵の制御を行う自動操舵制御部200と、自動操舵に関する設定情報を、車体3に連結される作業装置2に応じて登録する設定登録部100と、を備えている。これによれば、自動操舵に関する設定情報を、車体3に連結される作業装置2に応じて登録することができるため、自動操舵を行いながら作業を作業装置2に対応して効率よく且つ簡単に行うことができる。
【0059】
作業車両1は、設定登録部100によって登録された複数の設定情報を作業装置2に対応づけて記憶する記憶装置101と、記憶装置101に記憶された複数の設定情報うち、所定の設定情報を選択する設定選択部102と、を備えている。これによれば、作業を行う前に、記憶装置101に記憶された複数の設定情報の中から、車体3に設けられた作業装置2に対応する設定情報を簡単に選択することで呼び出すことができ、作業装置2に対応した作業を行うことができる。
【0060】
作業車両1は、設定選択部102によって選択された設定情報に対応する作業装置2と、車体3に連結された作業装置2とが異なる場合に警告を行う警告部141を備えている。これによれば、作業開始前に、車体3に連結した作業装置2と、自動操舵を行う作業装置2とが異なっていることを簡単に気づくことができ、設定等の間違いによる無駄な作業を防止することができる。
【0061】
設定登録部100は、車体3に設置された表示装置45に設けられ、表示装置45は、複数の作業装置2と、複数の作業装置2毎の設定値を変更する設定画面M2〜M4を表示する。これによれば、設定画面M2〜M4によって、複数の作業装置2毎の設定値を簡単に変更することができる。例えば、ロータリ、代かき、畔ぬり等の作業装置2のそれぞれの設定値を簡単に変更することができる。
【0062】
設定選択部102は、車体3に設置された表示装置45に設けられ、表示装置45は、複数の作業装置2と、複数の作業装置2の中から所定の作業装置2を選択する選択画面M8を表示する。これによれば、作業を開始する前に、複数の作業装置2の中から、作業を実施する作業装置2に対応した設定情報を選択画面M8によって簡単に選択することができ、運転者による設定間違いなどを抑制することができる。言い換えれば、運転者による作業前の自動操舵の設定を簡素化することができ、作業効率を上げることができる。
【0063】
作業車両1は、設定画面M2〜M4において、操作によって複数の作業装置2の中から所定の作業装置2を選択し且つ選択した作業装置2の設定値を変更する回動操作部材50を備えている。これによれば、運転者が回動操作部材50を操作することによって、所定の作業装置2の選択と設定値の変更とを簡単に行うことができる。
作業車両1は、選択画面M8において、操作によって複数の作業装置2の中から所定の作業装置2を選択する回動操作部材50を備えている。これによれば、既に複数の作業装置2の設定情報の登録を行っている場合に、運転者が回動操作部材50を操作することによって、運転者が望む設定情報の呼び出し(選択)を簡単に行うことができ、安定した作業を行うことができる。
【0064】
設定登録部100は、設定として走行予定ラインL2の間隔を作業装置2毎に登録する。これによれば、図7に示すように、走行予定ラインL2の間隔L10の設定を作業装置2を選ぶだけで変更することができる。
設定登録部100は、作業装置2に応じて設定値の増減量を変更する。これによれば、複数の作業装置2の設定値を登録する場合に、作業装置2に応じて設定値の増減量が異なるため、設定値の設定時間の短縮を図ることができる。即ち、複数の作業装置2において、それぞれの設定値の増減量が同じである場合は、大きな設定値を設定する場合などは時間がかかるため、設定時間の短縮を図ることができる。加えて、増減量が異なることから作業装置2に対応して細かい設定も行うことができる。
【0065】
なお、前進の自動操舵において、自動操舵を開始した場合は、ブザー、音声等の報知装置によって前進の自動操舵を開始したことを報知してもよい。前進を開始したか否かの報知装置による報知を行うか否かは、ON/OFFスイッチ等で設定可能である。
また、トラクタ1は、走行予定ラインL2に沿って自動操舵しながら後進することが可能である。トラクタ1において、後進の自動操舵を行う場合には、表示装置45は、当該表示装置45の画面に「後方を見ながら作業してください」等の運転者が後ろを見ることを促す表示を行う。
【0066】
また、後進の自動操舵は、複数の作業装置2のうち、特定の作業装置2のみで実行してもよい。例えば、自動操舵制御部200は、後進の自動操舵を行う際、記憶装置101に記憶された作業装置2の識別情報を参照し、トラクタ1に連結された作業装置2が、後進の自動操舵を行ってもよい特定の作業装置2に指定されている場合に、後進の自動操舵を行う。これによれば、後進を想定していない作業装置2で自動操舵を行うことを防止することができる。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 :作業車両(トラクタ)
2 :作業装置
3 :車体
30 :ステアリングハンドル
45 :表示装置
50 :回動操作部材
100 :設定登録部
101 :記憶装置
102 :設定選択部
113 :選択部
141 :警告部
150 :基準登録部
200 :自動操舵制御部
L1 :走行基準ライン
L2 :走行予定ライン
M2 :設定画面
M3 :設定画面
M4 :設定画面
M7 :選択画面
M8 :選択画面
【要約】
【課題】自動操舵を行いながら作業を作業装置に対応して効率よく且つ簡単に行うことができる。
【解決手段】作業車両は、ステアリングハンドルによる手動操舵と、ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、手動操舵により走行させた車体の位置に基づいて走行基準ラインを登録する基準登録部と、走行基準ラインに基づいて、自動操舵における走行予定ラインを設定し且つ自動操舵の制御を行う自動操舵制御部と、自動操舵に関する設定情報を、車体に連結される作業装置に応じて登録する設定登録部と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11