(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833963
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】屋内塵性ダニ忌避剤
(51)【国際特許分類】
A01N 31/04 20060101AFI20210215BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20210215BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
A01N31/04
A01N25/10
A01P17/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-226138(P2019-226138)
(22)【出願日】2019年12月16日
(62)【分割の表示】特願2016-28470(P2016-28470)の分割
【原出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2020-40991(P2020-40991A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157107
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 健司
(72)【発明者】
【氏名】田丸 友裕
(72)【発明者】
【氏名】七呂 陽子
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−136685(JP,A)
【文献】
特開2015−117231(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0305135(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第1997380(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 31/04
A01N 25/10
A01P 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールを含有するダニ忌避組成物を水性ゲルビーズに保持し、
前記水性ゲルビーズは吸水性ポリマーから形成されており、
前記吸水性ポリマーがアクリル酸系吸水性ポリマーであること特徴とする屋内塵性ダニ忌避剤。
【請求項2】
前記アクリル酸系吸水性ポリマーが、
アクリル酸/アクリル酸塩共重合体、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、アクリルアミド/アクリル酸塩共重合体から選択される共重合体であること特徴とする請求項1に記載の屋内塵性ダニ忌避剤。
【請求項3】
前記アクリル酸/アクリル酸塩共重合体が、
アクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体またはアクリル酸/アクリル酸カリウム塩共重合体であること特徴とする請求項2に記載の屋内塵性ダニ忌避剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
屋内塵性ダニ忌避剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イガ類、カツオブシムシ類やシミ類等の衣料害虫から繊維製品を保護するため、主に、タンス、引き出し、クローゼットや衣類収納箱用として、様々な防虫剤が実用化されている。その有効成分としては、古くはp−ジクロロベンゼンやナフタレン等の昇華性防虫成分が使用されたが、安全性の問題や強い刺激臭が指摘され、エムペントリンやプロフルトリン等の常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分が主流となっている。後者のピレスロイド系殺虫成分は、無臭で衣料害虫に対して微量で高い殺虫効力を奏し、しかも安全性にも優れ有用性の高い有効成分である。
近年、消費者のニーズが多様化し、無臭よりも幾分かの芳香性を有する防虫剤を使用して、処理空間や衣類への賦香を積極的に行う傾向も見られるようになっている。
【0003】
このような状況を背景として、防虫効果と芳香性を兼ね備える天然精油や香料成分を防虫成分として用いる提案がいくつかなされている。
例えば、特開昭50−24436号では、リナロール、アネトール、メントール、シンナミックアルデヒド、チモール、オイゲノールが、特公昭57−5761号にはアネトール、オイゲノール、アニスアルデヒドジメチルアセタール、p−イソプロピルアニソール、イソカベビトール、1,4−ジエトキシベンゼンが、特開平7−112907号では、リナロール、ゲラニオール、ボルネオール、ネロリドール、ネロール、α−テルピネオール、ペリラアルデヒド、シトラール、樟脳、α−ヨノン、1,8−シネオール、リナロールオキサイドまたはシトラールジエチルアセタールを防虫剤の有効成分として使用することが記載されている。また、特許第4311773号公報では、衣料害虫の孵化抑制剤に着目し、卵から幼虫への移行を抑制すれば衣料害虫による食害を防止できると考え、卵孵化抑制剤として、リナロ−ル、ゲラニオ−ル、シトロネラ−ル、ヘプタン酸アリル、酢酸ネリル等、数多くのテルペン化合物が提案されている。
また、一方で衣料用防虫剤について従来の機能に付加価値を付けて、より多機能な効果を有する衣料用防虫剤の開発が試みられている。
例えば衣料用防虫剤に防カビ成分を付与したものや(特開2014−136685号公報)、消臭効果を付与したものなどがあげられる。このような背景の下で、1つの製品で、衣料害虫に対する効果だけでなく、防ダニ効果として屋内のダニに対する忌避効果も付与できれば、生活の場で利便性が大きいと考えた。
ただし衣料害虫に対する有効成分とダニに対する忌避成分を混ぜ合わせるだけでは、製造コストや得られる製剤の香調のバランスに問題が残り、さらには防虫効果にもダニ忌避効果についても満足するものは未だ認められていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50−24436号公報
【特許文献2】特公昭57−5761号公報
【特許文献3】特開平7−112907公報
【特許文献4】特許第4311773号公報
【特許文献5】特開2014−136685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は
、ダニ忌避効果
を備えた、
屋内塵性ダニ忌避剤について、衣類の保管に適した香りを付与できる香料成分を含有する
屋内塵性ダニ忌避剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、各種香料成分を検討したところ、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールが単一成分であっても
、ダニ忌避効果
を備えていることを見出した。さらには、この3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールに、本来ダニ忌避効果を有さないカルボン酸アリルエステル化合物を併用することにより、ダニ忌避効果が高まることを見出したものであり、以下の構成を有する。
(1)3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールを含有す
るダニ忌避組成物を水性ゲルビーズに保持し
、水性ゲルビーズは吸水性ポリマーから形成されており、吸水性ポリマーがアクリル酸系吸水性ポリマーであること特徴とする
屋内塵性ダニ忌避剤。
(
2)前記アクリル酸系吸水性ポリマーが、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、アクリルアミド/アクリル酸塩共重合体から選択される共重合体であること特徴とする(
1)に記載の
屋内塵性ダニ忌避剤。
(
3)前記アクリル酸/アクリル酸塩共重合体が、アクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体またはアクリル酸/アクリル酸カリウム塩共重合体であること特徴とする(
2)に記載の
屋内塵性ダニ忌避剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤の成分である3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールは、衣料害虫に対する活性を持つ香料成分としては公知であるが(特開2014−136685号公報)
、ダニ忌避活性を有することは知られていない。さらには、本来ダニ忌避効果を有さないカルボン酸アリルエステル化合物を3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールと併用することにより、ダニ忌避効果が高まるという新たな知見が得られたことから、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤は、有効成分として3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールを含有す
るダニ忌避組成物を水性ゲルビーズに保持したことを特徴とする。
【0009】
本発明者らは種々の香料成分
をダニ忌避についてスクリーニングした結果、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノール
がダニに対する忌避活性
を認めたことから、ダニ忌避活
性の成分として使用できることを新たに見出したものである。
【0010】
なお、本発明で言
うダニ忌避活性とは、ダニを衣料等へ近づけさせず、侵入、定着を阻止する効果をも含めた総合的な効果を包摂するものとする。
【0011】
本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤には、上記3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールほかに、本3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールのダニ忌避活性増強成分としてカルボン酸アリルエステル化合物を含有することを特徴とする。
本3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールのダニ忌避活性増強成分としての本カルボン酸アリルエステル化合物は、衣料害虫に対して防虫活性を有し、それ単独ではダニ忌避活性を認めないものの、本発明の3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールと併用することにより、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールのダニ忌避活性を高めるものである。
カルボン酸アリルエステル化合物としては具体的には、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸アリル、オクタン酸アリルが挙げられるが、中でもヘキサン酸アリル、ヘプタン酸アリル、オクタン酸アリルが好ましい。
また本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤には、常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分や別の防虫活性のある香料成分を配合し、防虫効果を高めると共に、香りの調香に供することもできる。
常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分としては、エンペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン等が挙げられる。
そして、別の防虫活性のある香料成分としては、テルピネオール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、メントール、ボルネオール、イソボルネオール等のテルペン系アルコール、シトロネラール、シトラール、ジメチルオクタナール等のテルペン系アルデヒド、カルボン、ジヒドロカルボン、プレゴン、メントン等のテルペン系ケトン等があげられるが、これらに限定されない。また、これらの成分を含有する植物精油、例えば、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、ラベンダー油、オレンジ油、グレープフルーツ油、シダーウッド油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、ハッカ油等を配合してもよい。
【0012】
本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤は必要に応じて、2−フェニルフェノール(OPP)や4−イソプロピル−3−メチルフェノール(IPMP)等の防黴成分を適宜配合してもよい。また、抗菌成分、除菌成分、消臭成分、BHT等の安定化剤、pH調整剤、着色剤などを適宜配合してもよく、あるいは、例えば、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加して、収納を開けた時などに、リラックス効果を付与することもできる。
【0013】
本発明では、
屋内塵性ダニ忌避剤原液を調製し、使用場面のニーズに合わせて、液状、ゲル状、ビーズ状、固形状、シート状等の種々形態として製剤化できる。
液状の
屋内塵性ダニ忌避剤を調製するにあたっては、水のほか、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶剤、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールのようなグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等の各種溶剤や、界面活性剤(可溶化剤)などが適宜用いられる。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤などを例示できる。
更に、ゲル状体の調製に用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ゼラチン、オクチル酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸などがあげられる。
またビーズ状体としては、特定の吸水性ポリマーによるゲルビーズに、液状の
屋内塵性ダニ忌避成分を保持させ調整できる。
水性ゲルビーズを形成する吸水性ポリマーには、アクリル酸系吸水性ポリマーが好ましく使用される。アクリル酸系吸水性ポリマーは、吸水性に優れており、自重の100倍以上の水を吸収することができる。粒径約2mm程度のアクリル酸系吸水性ポリマーであれば、含浸液を吸収した後も略透明な状態を維持しつつ、粒径約10mm程度にまで膨張し得る。アクリル酸系吸水性ポリマーとしては、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体(アクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体やアクリル酸/アクリル酸カリウム塩共重合体等)やアクリルアミド/アクリル酸又はその塩の共重合体が挙げられる。
【0014】
上記液状やゲル状、ビーズ状の形状に加えて、本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤成分を固形担体に含浸又は保持させた場合は、通気性ケースもしくは袋に収納して製することができる。そして、かかる防虫剤を、タンス、引き出し、クローゼットや衣類収納箱用に設置し、固形担体から有効成分を揮散させればよい。固形担体としては、パルプ、リンター、レーヨン等の繊維質担体、セルロース(再生セルロース)製ビーズもしくは発泡体、ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等の無機多孔質担体、トリオキサン、アダマンタン等の昇華性担体等があげられる。繊維質担体では厚さが1〜3mm程度のマットもしくはシート状のものが使い易く、一方、セルロース製ビーズの場合、これに炭を配合することによって消臭効果を付与することもできる。
【0015】
その際の通気性ケースとしては、例えば、開孔部を有するプラスチック製容器等があげられ、通気性袋としては、不織布袋、綿袋、ネットケース等を例示できる。後者の不織布袋の場合、不織布の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリ乳酸、レーヨン等があげられ、これらは単一の繊維であってもよいし、あるいは紙を積層したポリエステルやポリプロピレン/レーヨンのような積層品(有効成分を一部吸着してその揮散量を二次的に調節可能)や混紡品を用いても構わない。また、不織布袋の形状や構成も適宜決定することができ、例えば、両面を前記材質の通気性不織布で構成してもよいし、あるいは、片面が前記材質の通気性不織布で、他面が小孔を多数有してもよいプラスチックフィルムを貼り合わせたものであってもよい。
【0016】
本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤全体量に対する
屋内塵性ダニ忌避剤成分の配合量は、製剤の形態によっても異なるが、
屋内塵性ダニ忌避剤一個当たり0.01mg〜1g程度に設定するのが適当である。例えば、タンスやクローゼットの場合、
屋内塵性ダニ忌避剤を1ないし3個施用とするのが使いやすく、引き出しや衣類収納箱のような場合も、必要に応じて適宜施用個数を設定すればよい。前記配合量の下限値未満であると所望の防虫効果が不足する可能性があり、一方、必要以上に配合した場合、ベタつき感が出るなどの支障を生じ実用的でない。
【0017】
このようにして得られた
屋内塵性ダニ忌避剤は、タンス、引き出し、クローゼットや衣類収納箱のような密閉に近い空間に設置すれば、各種含浸担体から有効成分が揮散し、イガ、コイガ、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、シミ類等の衣料害虫に加えて、コナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ等の屋内塵性ダニ類に対して実用的な忌避効果を奏するものであり、実用性は極めて高い。
【0018】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の
屋内塵性ダニ忌避剤について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
(衣料害虫防虫効力試験)
10×10cmの濾紙に、表1記載の各々の香料成分をエタノールで10倍希釈したものを1mL分注して含浸させた後、エタノールは風乾し供試濾紙とした。
容量約6Lのガラス瓶の底に供試濾紙を置き、その5cm上方に、30日令、平均体重30〜35mg/頭のイガ幼虫10頭と、羊毛試験布(2cm×2cm、40〜45mg)を入れたカゴを固定した。次に、ガラス瓶を密閉し、27℃、湿度65%の恒温恒湿室内に7日間放置した後、羊毛試験布を取り出して食害率(食害量/元の重量×100)を測定するとともに、死虫率を求めた。
評価は以下の基準で示した。
◎:食害がなく、死虫率が100%のもの。○:食害がなく、死虫率が50〜99%のもの。△:食害はないものの、死虫率が1〜50%のもの。×:食害があるもの、あるいは食害がないものの死虫率が0%のもの。
【0020】
(ダニ忌避効力試験)
10×10cmの濾紙に、表1記載の各々の香料成分をエタノールで100倍希釈したものを1mL分注して含浸させた後、エタノールは風乾し供試濾紙とした。
容量約6Lのガラス瓶の内部に誘引源としてダニ用飼育培地50mgを配置し、ガラス瓶の周囲にヤケヒョウヒダニを含むダニ培地を撒いて静置した。
24時間後、ガラス瓶の内部に誘引された侵入ダニ数を計数した。
同時に香料を用いない無処理対照区を設けて試験を行い、次式により侵入阻止率を算出した。
侵入阻止率(%)=[無処理区の侵入ダニ数−処理区の侵入ダニ数]/無処理区の侵入ダニ数×100
そして、得られた侵入阻止率から、さらに以下の基準で各香料成分のダニ忌避効果の評価を行った。
◎:侵入阻止率90〜100%、○:侵入阻止率70〜90%、△:侵入阻止率50〜70%、×:侵入阻止率<50%
【0021】
衣料害虫防虫効力試験およびダニ忌避効力試験の結果を表1に示した。
【表1】
【0022】
試験の結果、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールは単独の成分で衣料害虫に対して致死効果を示し、加えて屋内塵性ダニに対しても忌避効果を示した(実施例1)。
3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールのダニに対する忌避活性は、単独ではダニ剤に対する忌避活性評価の低いカルボン酸アリルエステル化合物(比較例3〜5)を加えることにより顕著に増加することが明らかになった(実施例2〜4)。
このカルボン酸アリルエステル化合物によるダニ忌避活性増強作用は、他の香料成分であるエチルベンゾエートやゲラニオールとの併用では効果が認められず(比較例7〜10)、また末端が環状であるシクロヘキシルプロピオン酸アリルを用いた場合では3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノールのダニ忌避活性増強作用は認められなかった(実施例5)。
【実施例2】
【0023】
衣料用防虫成分の3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノール20質量%、及びオクタン酸アリル10質量%、を配合した
屋内塵性ダニ忌避組成物を調製した。
次に、この
屋内塵性ダニ忌避組成物10gに、界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル5.0g、ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油2.0g、及びラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド1.8gを加え、さらに溶剤としてエタノール20g、消臭成分として緑茶抽出物1.5g、安定剤としてBHT1.9g、微量のイソチアゾリン系防腐剤、微量の苦味剤(ビトレックス)、及び適量の水を配合し、全体を386gとして含浸液を調製した。
【0024】
上面に総面積24cm
2の開口部を有し、容量が500mLの円筒状のプラスチック容器(φ:8cm、高さ:10cm)に、吸水性ポリマーとして、粒径が約2mmのアクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体14gを入れた。これに上記含浸液を注ぎ込んだところ、吸水性ポリマーが膨潤し、粒径が約10mmの本発明の水性ゲルビーズタイプの
屋内塵性ダニ忌避剤が得られた。
【0025】
この水性ゲルビーズタイプの
屋内塵性ダニ忌避剤をクローゼット内に置いて使用したところ、約1年間に亘って衣類に虫による害が発生せず、実用的な防虫効果が確認された。またクローゼット内には、ダニの寄り付きも認められなかった。この水性ゲルビーズは、時間の経過とともに徐々に縮小したが、変質や離液を伴うことがなくゲル安定性に優れ、使用の終点も明確に視認できた。また、クローゼット内には初期香調のままの芳香が漂い、快適な爽やかさを周囲に提供することができ、極めて実用性の高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、
屋内塵性ダニ忌避剤としてだけでなく、広範な害虫防虫剤としても利用可能である。