(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6833968
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 57/00 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
A01D57/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-237399(P2019-237399)
(22)【出願日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 宜泰
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 諒介
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−193117(JP,A)
【文献】
特開2017−158450(JP,A)
【文献】
実開昭57−187031(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2019/0000013(US,A1)
【文献】
米国特許第05813205(US,A)
【文献】
米国特許第03411615(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00 − 57/30
A01D 61/00 − 61/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈を機体横幅方向に移送する横送りオーガと、その横送りオーガにより移送されたのち後方に送り出された刈取穀稈を機体後方側に搬送するフィーダとが備えられ、
前記横送りオーガに、
外周部に穀稈移送用の螺旋羽根が設けられ、横軸芯周りで回転する円筒状のオーガドラムと、
前記オーガドラムの回転に伴って前記オーガドラムから出退しながら一体回転して刈取穀稈を前記フィーダに送り出す掻き込み体と、
前記オーガドラムに形成された開口に対応する位置に設けられ、前記掻き込み体が挿通する挿通孔が形成されるとともに、前記掻き込み体を前記オーガドラムから出退可能に摺動案内する摺動案内体と、
前記摺動案内体を前記オーガドラムに取り付けるためのステーと、が備えられ、
前記ステーが前記オーガドラムの内側に備えられ、
前記摺動案内体のうち前記挿通孔が形成される挿通孔形成部に、前記ステーよりも前記オーガドラムの径方向内方側に向けて突出する突出部が備えられており、
前記挿通孔は、径方向中途部に、前記横軸芯方向視で幅狭の幅狭部が形成されており、
当該幅狭部は、前記オーガドラムの外周部よりも径方向内方側に寄った位置に形成されている収穫機。
【請求項2】
前記幅狭部は、前記ステーよりも径方向外方側に寄った位置に形成されている請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記摺動案内体は、前記オーガドラムの周方向で前記挿通孔の両側に位置する箇所の夫々において、前記オーガドラムの径方向外方側から装着されるボルトにより、前記ステーと共に前記オーガドラムに固定され、
前記ボルトの径方向内方側端部と、前記突出部の径方向内方側端部とが隣り合う状態で設けられている請求項1又は2記載の収穫機。
【請求項4】
刈取穀稈を機体横幅方向に移送する横送りオーガと、その横送りオーガにより移送されたのち後方に送り出された刈取穀稈を機体後方側に搬送するフィーダとが備えられ、
前記横送りオーガに、
外周部に穀稈移送用の螺旋羽根が設けられ、横軸芯周りで回転する円筒状のオーガドラムと、
前記オーガドラムの回転に伴って前記オーガドラムから出退しながら一体回転して刈取穀稈を前記フィーダに送り出す掻き込み体と、
前記オーガドラムに形成された開口に対応する位置に設けられ、前記掻き込み体が挿通する挿通孔が形成されるとともに、前記掻き込み体を前記オーガドラムから出退可能に摺動案内する摺動案内体と、
前記摺動案内体を前記オーガドラムに取り付けるためのステーと、が備えられ、
前記ステーが前記オーガドラムの内側に備えられ、
前記摺動案内体のうち前記挿通孔が形成される挿通孔形成部に、前記ステーよりも前記オーガドラムの径方向内方側に向けて突出する突出部が備えられており、
前記ステーに、前記突出部を囲う囲み部が形成され、
前記囲み部における前記横軸芯方向の端部に径方向に沿って延びる立ち上がり部が形成されている収穫機。
【請求項5】
前記ステーに、前記オーガドラムの周方向に沿って折れ曲がる形状の平板部が備えられ、
前記平板部における一つの平面部に前記立ち上がり部が備えられている請求項4に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取作物を横送りオーガにより機体横幅方向に寄せ集めてフィーダにより後方側に搬送するように構成されている収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫機の一例である普通型コンバインにおいて、従来では、掻き込み体をオーガドラムから出退可能に摺動案内する摺動案内体が、オーガドラムの内周面側に位置して、内周側の側面が径方向内方側から固定具ユニットにおける板状の連結部材により挟まれる状態で取り付けられたものがあった。尚、摺動案内体は摩耗が少ない合成樹脂材にて構成され、連結部材は強固に支持するために金属材にて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−158450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、長期の使用に伴って横送りオーガにおける掻き込み体の先端が摩耗すると、掻き込み体が摺動案内体よりも径方向内方側にまで入り込み、摺動案内体との摺動状態から抜け外れてオーガドラムの内部に入り込んで抜けだせない状況になることがあり、横送りオーガによる良好な送り作用を継続することができなくなるおそれがあった。特に、掻き込み体に刈取穀稈の掻き込み作用時に作用する反力に起因して、掻き込み体が途中部において周方向に折れ曲がったような場合には、上述したような入り込みのおそれが大きくなっていた。
【0005】
そこで、横送りオーガによる良好な刈取穀稈の送り作用を長期にわたり継続することが可能となる収穫機が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る収穫機の特徴構成は、刈取穀稈を機体横幅方向に移送する横送りオーガと、その横送りオーガにより移送されたのち後方に送り出された刈取穀稈を機体後方側に搬送するフィーダとが備えられ、前記横送りオーガに、外周部に穀稈移送用の螺旋羽根が設けられ、横軸芯周りで回転する円筒状のオーガドラムと、前記オーガドラムの回転に伴って前記オーガドラムから出退しながら一体回転して刈取穀稈を前記フィーダに送り出す掻き込み体と、前記オーガドラムに形成された開口に対応する位置に設けられ、前記掻き込み体が挿通する挿通孔が形成されるとともに、前記掻き込み体を前記オーガドラムから出退可能に摺動案内する摺動案内体と、前記摺動案内体を前記オーガドラムに取り付けるためのステーと、が備えられ、前記ステーが前記オーガドラムの内側に備えられ、前記摺動案内体のうち前記挿通孔が形成される挿通孔形成部に、前記ステーよりも径方向内方側に向けて突出する突出部が備えられて
おり、前記挿通孔は、径方向中途部に、前記横軸芯方向視で幅狭の幅狭部が形成されており、当該幅狭部は、前記オーガドラムの外周部よりも径方向内方側に寄った位置に形成されている点にある。
【0007】
本発明によれば、掻き込み体は、摺動案内体に形成された挿通孔を通してオーガドラムから出退することになる。そのとき、摺動案内体のうち挿通孔が形成される挿通孔形成部に径方向内方側に向けて突出する突出部が備えられるので、掻き込み体を案内する挿通孔形成部の径方向の幅が大きくなる。
【0008】
その結果、掻き込み体の先端が摩耗したような場合であっても、掻き込み体が摺動案内体よりも径方向内方側にまで入り込むことを回避することが可能となり、横送りオーガによる良好な刈取穀稈の送り作用を長期にわたり継続することが可能となった。
【0010】
また、更に、本構成によれば、挿通孔の径方向中途部に幅狭部が形成されることにより、掻き込み体が挿通孔を抜け外れて径方向内方側に入り込むことを回避させ易いものにできる。
【0011】
本発明においては、前記幅狭部は、前記ステーよりも径方向外方側に寄った位置に形成されていると好適である。
【0012】
本構成によれば、掻き込み体に刈取穀稈による強い反力が作用して折れ曲がるようなことがあっても、ステーよりも径方向外方側に位置する幅狭部を起点に折れ曲がるので、ステーを起点に折れ曲がる場合に較べて、折れ曲がり箇所が径方向外方側に寄っており、そのことによっても、掻き込み体がオーガドラムの径方向内方側に入り込むおそれが少ないものになる。
【0013】
本発明においては、前記摺動案内体は、前記オーガドラムの周方向で前記挿通孔の両側に位置する箇所の夫々において、前記オーガドラムの径方向外方側から装着されるボルトにより、前記ステーと共に前記オーガドラムに固定され、前記ボルトの径方向内方側端部と、前記突出部の径方向内方側端部とが隣り合う状態で設けられていると好適である。
【0014】
本構成によれば、摺動案内体は、挿通孔の周方向の両側においてボルトによって安定的に強固に固定される。ボルトはオーガドラムの径方向に沿う状態で装着されるので、前後のボルトは径方向内方側端部が近づくように配置される。そして、ボルトと突出部とが干渉しない程度に近づけて設けられる。その結果、ボルトと干渉しない程度に突出部の突出長さを長くすることができ、掻き込み体が径方向内方側に入り込むことを回避させ易い。
【0015】
本発明に係る収穫機の特徴構成は、刈取穀稈を機体横幅方向に移送する横送りオーガと、その横送りオーガにより移送されたのち後方に送り出された刈取穀稈を機体後方側に搬送するフィーダとが備えられ、
前記横送りオーガに、
外周部に穀稈移送用の螺旋羽根が設けられ、横軸芯周りで回転する円筒状のオーガドラムと、
前記オーガドラムの回転に伴って前記オーガドラムから出退しながら一体回転して刈取穀稈を前記フィーダに送り出す掻き込み体と、
前記オーガドラムに形成された開口に対応する位置に設けられ、前記掻き込み体が挿通する挿通孔が形成されるとともに、前記掻き込み体を前記オーガドラムから出退可能に摺動案内する摺動案内体と、
前記摺動案内体を前記オーガドラムに取り付けるためのステーと、が備えられ、
前記ステーが前記オーガドラムの内側に備えられ、
前記摺動案内体のうち前記挿通孔が形成される挿通孔形成部に、前記ステーよりも前記オーガドラムの径方向内方側に向けて突出する突出部が備えられており、
前記ステーに、前記突出部を囲う囲み部が形成され、
前記囲み部における前記横軸芯方向の端部に径方向に沿って延びる立ち上がり部が形成されている
点にある。
【0016】
本構成によれば、オーガドラムの内側からステーを取り付ける場合、囲み部により摺動案内体の突出部を囲うように装着させて、ボルト等によってオーガドラムに取り付ける。そのとき、囲み部の横側端部に形成された立ち上がり部を持つことにより取り付け作業を行える。立ち上がり部は径方向に沿って延びるので、握り操作し易く作業が行い易いものになる。
【0017】
本発明においては、前記ステーに、前記オーガドラムの周方向に沿って折れ曲がる形状の平板部が備えられ、前記平板部における一つの平面部に前記立ち上がり部が備えられていると好適である。
【0018】
本構成によれば、平板状の部材を周方向に沿って折れ曲げ加工することにより、ステーの平板部を作製することができる。しかも、そのとき、平板部における一つの平面部に立ち上がり部が形成されるので、立ち上がり部は一つの平面部に連なる状態で備えられる。つまり、折れ曲げ加工の際に同時に折れ曲げることにより、加工の手間を増やすことなく、立ち上がり部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】
参考実施形態の横送りオーガの一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る収穫機の実施形態を収穫機の一例としての普通型コンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。この実施形態で、機体の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義する。すなわち、
図1に符号(F)で示す方向が機体前側、
図1に符号(B)で示す方向が機体後側である。
【0021】
図1に示すように、このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2に、軸流型の脱穀装置3と穀粒貯留用の穀粒タンク4が左右に並列して配備されるとともに、穀粒タンク4の前方に運転部5が配備されている。脱穀装置3の前部に横軸芯P1周りに上下揺動可能に刈取穀稈搬送用のフィーダ6が連結され、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取部7が連結されている。刈取部7の前部上方には、植立した作物を後方に掻き込む回転リール8が備えられている。機体後部には、穀粒タンク4に貯留されている穀粒を外部に排出する穀粒排出装置9が備えられている。運転部5の下方にはエンジン10が備えられ、このエンジン10の動力が、機体各部に伝達されて、機体を走行させながら刈取作業を行うことができる。
【0022】
図1,2,3に示すように、刈取部7は、角パイプや断面L字形のアングル材等を連結して構成される刈取部フレーム12に、背面を形成する背板13、底面を形成する搬送デッキ14、左右側面を形成する左右一対の側板15,16を連結して取付け固定した枠組み構造体を構成している。搬送デッキ14の前端に沿って左右の側板15,16に亘ってバリカン型の刈取装置17が配備され、左右の側板15,16に亘って、刈り取った穀稈を機体横幅方向中間側に向けて寄せ集め搬送する横送りオーガ18が架設されている。
【0023】
フィーダ6は、略角筒状に形成された搬送ケース19の内部に掻上げコンベア20を装備して構成されている。掻上げコンベア20は、横軸芯周りで回転する駆動回転体21と、従動回転体22と、それらにわたって巻回された左右一対の搬送チェーン23と、それら左右一対の搬送チェーン23に亘って横架連結された複数の搬送バー24とを備えており、横送りオーガ18にて横送りされて受け渡された作物が、搬送ケース19の底面に沿って掻き上げ搬送されて脱穀装置3の前端に投入されるようになっている。
【0024】
走行機体2における機体フレーム25の前部とフィーダ6の下部との間に油圧シリンダCが架設されている。刈取部7は、油圧シリンダCの伸縮作動によって刈取部7がフィーダ6と一体に横軸芯P1周りに揺動昇降可能に構成されている。
【0025】
横送りオーガ18について説明する。
横送りオーガ18は、外周部に穀稈移送用の螺旋羽根26が設けられ、横軸芯周りで回転する円筒状のオーガドラム27と、オーガドラム27の回転に伴ってオーガドラム27から出退しながら一体回転して刈取穀稈をフィーダ6に送り出す掻き込み体28とを備える。すなわち、
図2,3に示すように、大径のオーガドラム27の外周に、回転に伴ってフィーダ6の前端部に向けて横送り機能を発揮する左右一対の螺旋羽根26を備えるとともに、フィーダ6の前端入口6aに臨む横幅域でオーガドラム27から出退する丸棒状の掻き込み体28が周方向4箇所に左右2本ずつ備えられている。尚、右側の横送り域の途中箇所においても、オーガドラム27から出退する1本の掻き込み体28が備えられている。
【0026】
図2に示すように、オーガドラム27の左右両端近傍における内部には蓋板29,30が固設されるとともに、オーガドラム27の内部には間隔をあけて一対の中間支持板31,32が固設されている。右側の蓋板30と右側の中間支持板32により回転支軸33が支持され、回転支軸33にキー連結した連結フランジ34が右側の蓋板29にボルト連結され、回転支軸33がオーガドラム27に一体連結される構成となっている。
【0027】
左側の側板15には、回転支軸33と同軸芯上に位置する状態で固定支軸35が連結固定され、この固定支軸35は、ベアリング37を介してオーガドラム27における左側の蓋板29を回動可能に外嵌支持する構成となっている。
【0028】
固定支軸35に対してキー連結によって回転が固定される状態で偏芯支軸36が備えられ、この偏芯支軸36の外周部に取付けボス38を介して掻き込み体28が固定支軸35に沿う軸芯P3周りで回転可能に装着されている。複数の掻き込み体28は、夫々、オーガドラム27に備えられた摺動案内体39により、オーガドラム27を出退可能に摺動案内されるように構成されている。尚、偏芯支軸36は左右一対備えられるが、左右の偏芯支軸36は、右側の中間支持板31に回動可能に支持された中継軸40にて連結されている。
【0029】
横送りオーガ18は、回転支軸33が駆動回転されてオーガドラム27が回転支軸33の軸芯P3周りで反時計方向に回転すると、各掻き込み体28は追従して偏芯支軸36の軸芯P4周りに回動し、この時、偏芯支軸36と摺動案内体39との距離が回動位相によって変化することになり、各掻き込み体28は、オーガドラム27から出退しながら回動して、搬送デッキ14や背板13との干渉を回避しながら作物をフィーダ6に掻き込むことになる。
【0030】
図示はしていないが、オーガドラム27における掻き込み体28の装着位置に対応する箇所には、掻き込み体28等を組み付けたり取り外したりするために大きく開口した組付け孔が形成され、この組付け孔は脱着可能なカバーで閉塞するようになっている。このカバーは、複数のボルトによってオーガドラム27に取り外し可能に取り付けられている。
【0031】
次に、摺動案内体39について説明する。
摺動案内体39は、合成樹脂材にて一体的に形成されている。
図3,4,5に示すように、摺動案内体39は、オーガドラム27の軸芯方向に沿う幅が幅狭で周方向に沿う幅が幅広であり、周方向に沿って長尺状に形成されている。摺動案内体39は、オーガドラム27に形成された開口46に対応する位置に設けられている。
【0032】
摺動案内体39に、掻き込み体28がオーガドラム27を径方向に挿通するための挿通孔47が形成されている。摺動案内体39は、オーガドラム27の周方向で挿通孔47の両側に位置する箇所の夫々において、オーガドラム27の径方向外方側から装着されるボルト48により、オーガドラム27の内側に備えられるステー49と共にオーガドラム27に固定されている。説明を加えると、摺動案内体39は、径方向外方側箇所がオーガドラム27の内周面に接当する状態で、径方向内方側から当て付けたステー49と、オーガドラム27とによって挟まれた状態で、ステー49に溶接されたナット50とボルト48とを締結して固定されている。
【0033】
締結用のボルト48は、ボルト頭部48aがオーガドラム27の外周側に位置する状態でオーガドラム27を径方向に挿通するように装着される。又、ボルト頭部48aとオーガドラム27の外周面との間において、ボルト48の軸部に、オーガドラム27の外周面に接当する平座金51と、平座金51とボルト頭部48aとの間に位置するバネ座金52とが装着されている。
【0034】
オーガドラム27の外周面に接当する平座金51は、ボルト48の締め込みによって木材であっても埋まり込まないように平面部分が大きな面積を有する木用座金にて構成されている。このような座金を用いることにより、オーガドラム27の外周面との間で接触面積が大きくなり、ボルト48の押圧力が加わった場合であっても、例えば、座金の角部が接当して局所的な負荷がかかってオーガドラム27の外表面が損傷することを回避できる。
【0035】
摺動案内体39は、径方向外方側の側面のうち挿通孔47が形成される挿通孔形成部53を除く領域は、オーガドラム27の内周面に沿う滑らか円弧面に形成されている。径方向外方側の側面のうち挿通孔形成部53に対応する箇所は、オーガドラム27に形成された円形の開口46に嵌り合う円形の凸部54が形成されている。凸部54は、オーガドラム27の開口46に嵌り合った状態でオーガドラム27から径方向外方に突出しない程度の少ない突出量となっている。その結果、摺動案内体39は、オーガドラム27の外周面から径方向外方へ突出しないので、ワラ屑等が引っ掛かるおそれが少なく、しかも、凸部54が開口46に嵌り合うことでオーガドラム27に対して周方向に位置ズレすることを防止できる。
【0036】
摺動案内体39の挿通孔形成部53の周方向両側に位置する箇所には、ボルト48が挿通するボルト挿通孔55が径方向に貫通する状態で形成されている。摺動案内体39の径方向内方側の側面のうち挿通孔形成部53を除く領域には、オーガドラム27の内周面に沿う円弧面に形成されている。そして、この領域には、内方側に凹入する状態でステー49が嵌り込む嵌合部56が形成されている。ステー49が嵌合部56に嵌り込むことで、摺動案内体39に対するステー49の位置合わせを行うことができる。その結果、ステー49を嵌合部56に嵌め込んだ状態で、オーガドラム27の径方向外方側からボルト48を容易に装着することができる。
【0037】
摺動案内体39のうちの挿通孔形成部53における径方向内方側には、ステー49よりもオーガドラム27の径方向内方側に向けて突出する突出部57が備えられている。突出部57は、略円筒形状であり、摺動案内体39のうち挿通孔形成部53を除く領域の径方向に沿う幅と略同じ幅となるように、径方向内方側に向けて大きく突出する形状となっている。すなわち、挿通孔形成部53の径方向に沿う幅が、挿通孔形成部53を除く領域の径方向に沿う幅の略2倍程度の幅になるように、大きく突出している。
【0038】
ところで、摺動案内体39のうち挿通孔形成部53を除く領域についても、突出部57と同じように幅広に構成することも考えられるが、このような構成では、ボルト48による連結距離が長くなり、使用に伴って締結状態が緩くなるおそれがあり、良好な作業状態を継続することができないおそれがある。
【0039】
オーガドラム27は円筒状に形成されており、
図4に示すように、両側の連結用のボルト48は、径方向内方側端部同士が互いに近づくように斜め姿勢となる。そして、ボルト48の径方向内方側端部と、突出部57の径方向内方側端部とが隣り合う状態で設けられている。このように構成することで、両側のボルト48の間隔を変更することなく、突出部57をできるだけ内方に突出させるとともに、摺動案内に適した挿通孔47を形成することができる。
【0040】
摺動案内体39に形成される挿通孔47は、径方向中途部に、横軸芯方向視で幅狭の幅狭部58が形成されている。幅狭部58は、ステー49よりも径方向外方側に寄った位置に形成されている。幅狭部58の径方向外方側は、軸芯方向視で周方向に沿う幅が外方側ほど大となるように形成されている。幅狭部58の径方向内方側は、軸芯方向視で周方向に沿う幅が内方側ほど大となるように形成されている。挿通孔47のオーガドラム27の回転軸芯方向に沿う幅は全ての領域で略同じ幅であり、掻き込み体28の外形寸法よりも少しだけ大きい幅に設定されている。このように構成することで、掻き込み体28の軸芯方向に沿う姿勢変化を規制しながら、周方向に沿う相対的な姿勢変化を許容することができる。
【0041】
次に、ステー49について説明する。
図5に示すように、ステー49は、オーガドラム27の周方向に沿って折れ曲がる形状の平板部59と、平板部59に溶接される状態で連結用の2つのナット50とが備えられている。平板部59には、オーガドラム27の周方向に略沿うように屈曲する3つの平面部59A,59B,59Cが備えられている。そして、3つの平面部59A,59B,59Cのうちの周方向両側に位置する両側の平面部59A,59Cの内側にナット50が溶接されている。3つの平面部59A,59B,59Cのうちの周方向の中央に位置する一つの平面部59Bには、径方向に沿って延びる立ち上がり部60が形成されている。
【0042】
平板部59は、平板状の板体を折り曲げ加工する際に、同時に折れ曲げることにより、加工の手間を増やすことなく、3つの平面部59A,59B,59Cと立ち上がり部60とを一挙に成形することが可能である。
【0043】
ステー49に、摺動案内体39の突出部57を囲う囲み部61が形成され、囲み部61における横軸芯方向の端部に径方向に沿って延びる立ち上がり部60が形成されている。すなわち、3つの平面部59A,59B,59Cのうちの中央の平面部59Bを中心にして、両側の平面部59A,59Cにまでわたる大径の円形の開口62が形成されている。摺動案内体39の円筒形状の突出部57が開口62を挿通する状態で、ステー49が摺動案内体39の内周側に装着される。開口62の周囲によって囲み部61が構成され、周方向の中央に位置する一つの平面部59Bの軸芯方向の両側端部を略L字形に折り曲げて立ち上がり部60が形成されている。
【0044】
立ち上がり部60は、平板部59の平面部59Bに対して直交する姿勢で設けられるので、指による摘み作業が行い易い。従って、摺動案内体39をオーガドラム27に組み付ける際に、左右の立ち上がり部60を手で挟みながらステー49を容易に支持することができる。
【0045】
本願の権利範囲に含まれるものではないが、本願の参考形態を以下に示す。上記実施形態では、摺動案内体39がオーガドラム27の内周側に備えられる構成としたが、この構成に代えて、例えば、
図6に示すように、摺動案内体39がオーガドラム27の内周側に備えられる構成
が考えられる。
当該参考形態では、オーガドラム27の外周側に摺動案内体39が備えられ、オーガドラム27の内周側に上記実施形態と同じ構成のステー49が備えられる。そして、オーガドラム27の外方側から装着されるボルト48とステー49に溶接されているナット50とを締結することで摺動案内体39を固定する。摺動案内体39の突出部57は、オーガドラム27に形成された開口46を通してステー49よりもオーガドラム27の径方向内方側に向けて突出している。
【0046】
〔別実施形態〕
(
1)上記実施形態では、挿通孔47の径方向中途部に幅狭部58が形成され、幅狭部58がステー49よりも径方向外方側に寄った位置に形成される構成としたが、この構成に代えて、幅狭部58がステー49と同じ位置あるいはステー49よりも径方向内方側に寄った位置に形成される構成としてもよい。又、このような幅狭部を設けることなく、挿通孔が径方向に沿って同一径に構成してもよく、内端部あるいは外端部が最も小径となるように構成してもよい
。
【0047】
(
2)上記実施形態では、ステー49の平板部における一つの平面部に、軸芯方向の両側端部に立ち上がり部が備えられる構成としたが、この構成に代えて、複数の平面部にわたって
立ち上がり部が備えられる構成でもよく、軸芯方向の一端部に立ち上がり部が備えられる構成でもよい。また、立ち上がり部60が形成されていない構成としてもよい。
【0048】
(
3)上記実施形態では、収穫機の一例として普通型コンバインに適用したものを示したが、トウモロコシ収穫機等の他の種類の収穫機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、普通型コンバインやトウモロコシ収穫機等、刈取作物を横送りオーガにより機体横幅方向に寄せ集めたのち後方側に搬送するようにした収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
6 フィーダ
18 横送りオーガ
27 オーガドラム
28 掻き込み体
39 摺動案内体
48 ボルト
49 ステー
53 挿通孔形成部
57 突出部
58 幅狭部
59 平板部
59B 平面部
60 立ち上がり部
61 囲み部
【要約】 (修正有)
【課題】横送りオーガによる良好な刈取穀稈の送り作用を長期にわたり継続することが可能となる収穫機を提供する。
【解決手段】刈取穀稈を機体横幅方向に移送する横送りオーガ18に、横軸芯周りで回転する円筒状のオーガドラム27と、回転に伴ってオーガドラムから出退しながら一体回転して刈取穀稈を送り出す掻き込み体28と、掻き込み体が挿通する挿通孔47が形成されるとともに、掻き込み体を出退可能に摺動案内する摺動案内体39と、摺動案内体をオーガドラムに取り付けるためのステー49と、が備えられ、ステーがオーガドラムの内側に備えられ、摺動案内体のうち挿通孔47が形成される挿通孔形成部53に、ステーよりもオーガドラムの径方向内方側に向けて突出する突出部57が備えられている。
【選択図】
図4