(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記判定部により前記操作体の前記操作面に対する近接が検出されている間は、前記第1検出モードと前記第2検出モードを交互に動作させることを特徴とする請求項3に記載のタッチセンサ式電子デバイス。
前記制御部は、前記判定部により前記操作体の前記操作面に対する近接が検出されていない間は、近接を検出するための第1の基準値を更新し、前記操作体の前記操作面に対する近接が検出されたときに、前記第1の基準値の更新を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチセンサ式電子デバイス。
前記制御部は、前記判定部により前記操作体の前記操作面に対する近接が検出されていない間は、近接を検出するための第1の基準値を更新し、前記操作体の前記操作面に対する近接が検出されたときに、前記第1の基準値の更新を停止して、前記第2の基準値を更新することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチセンサ式電子デバイス。
前記制御部は、前記判定部により前記操作体の前記操作面に対する接触のリリースが検出されたときは、前記センサ部の近接検出動作を再開することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチセンサ式電子デバイス。
前記制御部は、前記判定部により前記操作体の前記操作面に対する近接のリリースが検出されたときは、前記センサ部の接触検出動作を停止することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチセンサ式電子デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した公知の構成では、タッチ検出用のセンサとは別に、近接状態または非接触位置を検出するための手段が設けられており、構成が複雑かつコストが高くなる。一般に、同一のセンサで近接状態とタッチ状態を検出する場合、1回のセンス時間を時分割して、近接センスとタッチセンスを交互に行うことが考えられる。この場合、駆動及びセンシングのサイクルごとに近接状態の検出動作とタッチ状態の検出動作が交互に行われる。このような時分割方式では、信号対雑音比(S/N比)が悪化しやすい近接センスの回数が限られ、検出精度を高く維持することが難しい。
【0005】
本発明は、同一のセンサ手段で近接状態とタッチ状態を検出し、近接状態とタッチ状態の双方を精度良く検出することのできるタッチセンサ式電子デバイスとその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、操作区間の遷移に従って近接センスとタッチセンスの各々の動作状態を切り替え、単位時間あたりの近接センスの回数とタッチセンスの回数を増加させる。
【0007】
本発明の第1の態様では、タッチセンサ式電子デバイスは、
操作体の操作面に対する接触または近接に応じて変動する静電容量を検出するセンサ部と、
前記静電容量の変化量の算出基準となる基準値と、接触及び近接の検出に用いられる閾値を記憶する記憶部と、
前記基準値に基づいて算出された静電容量の変化量と前記閾値を比較して、前記操作面に対する接触または近接の状態を判定する判定部と、
前記判定部により前記操作体の前記操作面に対する近接が検出されていない間は、前記センサ部の接触検出動作を停止し、前記操作体の前記操作面に対する接触が検出されている間は、前記センサ部の近接検出動作を停止する制御部と、
を備える。
【0008】
本発明の第2の態様では、タッチセンサ式電子デバイスは、
操作体の操作面に対する接触または近接に応じて変動する静電容量を検出するセンサ部と、
前記静電容量の変化量の算出基準となる基準値と、接触及び近接の検出に用いられる閾値を記憶する記憶部と、
前記基準値に基づいて算出された静電容量の変化量と前記閾値を比較して、前記操作面に対する接触または近接の状態を判定する判定部と、
前記判定部により前記操作体の前記操作面に対する近接が検出されている間は、前記センサ部の接触検出動作と近接検出動作を行い、前記操作体の前記操作面に対する接触が検出されている間は、前記センサ部の近接検出動作を停止する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成により、同一のセンサ手段で近接状態とタッチ状態を検出するときに、近接状態とタッチ状態の双方を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態のタッチセンサ式電子デバイスの基本的な動作を説明する図である。ユーザは指90などの操作体を用いて、操作面111から入力動作を行う。操作面111は、スマートフォンやタブレット等の携帯端末、車載ナビゲーション装置、ATM、家電などに用いられるタッチパネルの表面である。タッチパネルはタッチセンサ方式のユーザインターフェースであり、抵抗膜方式、赤外線方式、超音波方式など種々の方式があるが、実施形態では静電容量方式のタッチセンサを用いる。静電容量方式のセンサは、操作体の接触または近接による静電容量の変化に基づいて接触位置または近接位置を検出するものである。
【0012】
図2は、静電容量方式のセンサにおける静電容量の変化を説明する図である。X方向に延びる電極Lxと、Y方向に延びる電極Lyの交差点において、電極Lxと電極Lyの間に静電容量Csが生成され、容量性のセンサ素子12が形成される。互いに直交する複数の電極Lxと複数の電極Lyを用いる場合、複数のセンサ素子がマトリクス状に形成される。一方の電極、たとえば電極Lxを駆動電極として用い、他方の電極、たとえば電極Lyを検出電極として用いることができる。電極Lxに周期的に変化する電圧を印加することでセンサ素子12の電位が変化し、充放電が起きる。電極Lyで電荷量を検出することでセンサ素子12における静電容量が検出される。
【0013】
図2(a)は、操作パネル11の近傍に操作体が存在せず、タッチも近接状態も検出されていない状態を示す。操作体が近接しておらずタッチも近接も検出されない区間を、実施例では「非検出区間」と呼ぶ。非検出区間での静電容量Csは容量変化を算出するための基準となるが、環境の変化に応じて静電容量Cs自体が変動する。そのため、静電容量様式のセンサの駆動及びセンシングのサイクルで各センサ素子12の静電容量Csが検出され、検出値に基づいて基準値が更新される。この基準値は「ベースライン」とも呼ばれる。
【0014】
図2(b)のように、指90が操作パネル11の操作面111に接触している状態を「タッチ」と呼ぶ。指90と電極Lyとの間の容量結合により、センサ素子12の静電容量Csが大きく変化(増大)する。これに対し、
図2(c)では指90は操作パネル11の操作面111に近接しているが接触していない。以下の実施形態では、指90などの操作体が操作パネル11に近接して浮遊している状態を「ホバー(hover)」と呼ぶ。本明細書及び特許請求の範囲で「近接」というときは、「ホバー」状態を指すものとする。ホバーのときも、指90と電極Lyの間の容量結合によりセンサ素子12の静電容量Csが変化する。ホバー時には空気層が介在するので、その静電容量の変化量はタッチの静電容量の変化量と比較して小さい。したがって、異なるレベルの閾値を設定することで、同じセンサマトリクスを用いてホバーとタッチを検出することができる。
【0015】
図1に戻って、タッチセンサ式電子デバイスの立ち上げ時、あるいは電源投入時に静電容量方式のセンサを駆動して、ホバーの検出とタッチの検出を交互に行い、各センサ素子で基準値(ベースライン)の更新を行っておく。ホバーとタッチの各々について駆動及びセンシングのサイクルを所定回数繰り返して静電容量の基準値を現在の値に設定した後、タッチ検出動作をオフにする。
【0016】
<区間A>
区間Aは、ホバーもタッチも検出されない「非検出区間」である。実施形態の特徴として、区間Aで静電容量の変化量がホバー検出の閾値Th1に達するまでは、もっぱらホバーの検出動作が行われ、タッチ検出の動作は停止されている。区間Aで、ホバーの駆動/センス動作のたびにホバー用の基準値は更新され、更新後の基準値を用いて各センサ素子の静電容量の変化量が計算される。ホバー用の基準値は、「特許請求の範囲」に記載される「第1の基準値」に対応し、操作体がタッチ検出区間にもホバー検出区間にもないときの静電容量を指す。この間、タッチ検出の動作は停止されており、タッチ用の基準値はセンサの立ち上げ時に設定された値に固定されている。1つのサイクル内でホバー検出だけが行われているので、単位時間当たりのホバー検出の回数を増やすことができ、ホバーの検出精度を上げることができる。特に、1サイクル内でホバーの検出データを平均化することができるので、ホバー検出のS/N比を上げて検出距離を伸ばすことができる。1つのサイクルをホバー検出だけに使用できるので、ホバーの検出タイミングを早めることができる。
【0017】
<区間B>
静電容量の変化量が閾値Th1に達したら、「ホバー」の検出が出力されるとともに、タッチ検出の動作がオンになる。ホバー検出後、タッチが検出されるまでの区間Bを「ホバー検出区間」とする。タッチ検出の動作がオンにされたことで、タッチ用の基準値の更新が開始される。タッチ用の基準値は、「特許請求の範囲」に記載される「第2の基準値」に対応し、操作体が操作面111に触れていないがホバー検出領域にあるときの静電容量を指す。タッチ用の基準値がタッチ検出の閾値Th2に達したら、「タッチ」の検出が出力される。ホバーの検出により、ホバー用の基準値の更新は停止されるが、ホバー検出の動作は継続される。基準値の更新を停止することで、指90などの操作体が同じ位置にあるにもかかわらず基準値が変わって別の検出結果が出力されることを防止できる。
【0018】
区間Bでは、タッチ動作とホバー動作の両方が行われている。区間Bでは、操作体が速やかに操作面111まで移動する場合と、操作体がタッチに至らない状態で操作面111の近傍をさまよう場合があり得る。後者は、ユーザがアイコン等の所望の入力項目を探している、あるいはどの入力項目を選択するか迷っている等の場合である。このため、ホバー検出動作とタッチ検出動作の両方をオンにし、正確なタッチ検出のためにタッチ用の基準値を更新する。タッチ検出が必要になった時点で、初期設定で固定されていた基準値から今回の駆動/センスサイクルのための基準値に更新され、動作切り替えのための特別な処理は不要である。
【0019】
<区間C>
静電容量の変化量が、閾値Th1よりも大きい閾値Th2に達したら、「タッチ」の検出が出力されるとともに、ホバー動作が停止される。タッチの検出からタッチリリースの検出までの区間Cは、もっぱらタッチが検出される「タッチ検出区間」である。タッチが検出されたことにより、タッチ用の基準値の更新が停止される。ホバー用の基準値はホバー検出直後の値に固定されたままである。これにより、タッチ中に基準値が変動することによる誤検出を防止する。区間Cでは、ホバー検出が実施されず1サイクルをタッチの検出だけに用いることができるので、細かいタイミングでタッチ検出を行うことができる。
【0020】
<区間D>
タッチ検出後、静電容量の変化量がタッチリリース検出用の閾値Th3よりも小さくなったら、「タッチリリース」が出力される。これと同時に、ホバー検出動作がオンになり、かつタッチ用の基準値の更新が再開される。ここで、「タッチリリース」とは、指等の操作体がいったん操作面111に接触したあとに、接触面から離れることを意味し、「特許請求の範囲」に記載される「接触のリリース」と同義である。タッチリリースの検出からホバーリリースの検出までの区間Dは、ホバー状態が検出されている「ホバー検出区間」である。ホバー動作に関して基準値の変動による誤検出がなされることを防止するため、ホバー用の基準値は固定されている。
【0021】
タッチリリース検出用の閾値Th3は、タッチ検出の閾値Th2よりも小さく、ホバー検出の閾値Th1よりも大きい。区間Dでは指90などの操作体がそのまま操作面111から離れていく場合と、操作面111に戻る場合があり得えるので、1つの駆動/センスサイクル内でタッチ検出動作とホバー検出動作が行われる。今回のサイクルでのタッチ検出のためにタッチ用の基準値は更新され、動作切り替えのための特別な処理は不要である。
【0022】
<区間E>
静電容量の変化量が、ホバーリリース検出のための閾値Th4よりも小さくなったら、「ホバーリリース」を出力するとともに、タッチ検出動作をオフにして、ホバー用の基準値の更新を再開する。タッチ検出動作のオフにともなって、タッチ用の基準時の更新も停止される。「ホバーリリース」とは、ホバー検出領域内に存在していた操作体が、ホバー検出領域の外部に離れることを意味し、「特許請求の範囲」に記載される「近接のリリース」と同義である。ホバーリリースの検出後は、指90などの操作体は操作面111に近接しておらず、区間Eは「非検出区間」となる。
【0023】
ホバーリリース検出用の閾値Th4は、タッチリリース検出量の閾値Th3よりも小さく、かつ、ホバー検出用の閾値Th1よりも小さい。静電容量の変化量が次に閾値Th1よりも大きくなるまでは「非検出区間」が続き、区間Eでは、もっぱらホバー検出が行われる。1つのサイクル内でホバー検出だけが行われているので、単位時間当たりのホバー検出動作の回数が増え、ホバーの検出精度を上げることができる。特に、検出データを平均化することで、ホバー検出のS/N比を上げて検出距離を伸ばすことができる。また、1つのサイクルをホバー検出だけに使用できるので、ホバーの検出タイミングを早めることができる。
【0024】
図3は、
図1の動作の前提となるタッチとホバーの検出方式を説明する図である。
図3(A)はタッチ検出動作時のデータ収集方式、
図3(B)はホバー検出動作時のデータ収集方式である。静電容量方式のセンサを用いた操作パネル11で、検出点15はマトリクス状に配置されている。マトリクス状の検出点15は、
図2のX方向に延びる複数の電極Lxと、Y方向に延びる複数の電極Lyの交点に対応し、各検出点15に容量性のセンサ素子12が形成される。
図3(A)のタッチ検出モードでは、各検出点15で独立してデータが採取される。この例では12×16点でデータ、すなわち静電容量が採取される。各検出点での静電容量の変化量を求めるための基準値は、非検出の状態で各検出点に設定された基準値である。
【0025】
図3(B)のホバー検出モードでは、複数の検出点15をまとめて所定の面積の領域17を形成し、領域17ごとに駆動及びセンシングを行う。この構成例によると、4×3点のデータを採取するだけでよく、ホバー検出モードでの駆動/センス回数は、タッチ検出モードでの駆動/センス回数の1/16になる。ホバー状態では、ユーザの指先または操作体は操作パネルの表面から一定の範囲内で離隔しているため、指先でカバーされる領域が広くなり、
図3(B)のような一括検出が有効である。
【0026】
ホバー検出での静電容量の変化量の算出の基準となる基準値は、領域17ごとに設定される。領域17の数は、検出点15の数と比較して格段に少なくなり、操作面の全面を駆動/センスする速度、換言すると単位時間あたりの検出レートが大幅に向上する。各領域17の検出値としては、領域17に含まれる検出点(センサ素子)の検出値の平均値を用いてもよい。ホバーの検出レートが上がることで平滑化処理が可能になり、S/N比を改善して検出距離を伸ばすことができる。また、領域17ごとにホバー状態を検出することで、操作パネル上でユーザが狙いとするポイントを絞り込むことができる。
【0027】
図1でホバー検出動作が行われるときは
図3(B)の方式で駆動と検出が行われ、タッチ検出動作が行われるときは
図3(A)の方式で駆動と検出が行われる。特に、区間Aと区間Eでは、もっぱらホバー検出動作が行われ、1サイクルの時間全体をホバー検出で占有して検出レートを上げることができる。区間Cは、もっぱらタッチ検出動作が行われ、1サイクルの時間全体をタッチ検出で占有することができる。操作画面全体のタッチ検出にかかる時間が短縮され、細かいタイミングでタッチ位置を検出することができる。区間Bと区間Dでは、ホバー検出動作とタッチ検出動作が交互に(たとえば時分割で)行われるが、ホバー検出のサイクルがタッチ検出のサイクルと比較して格段に短く、ホバー検出の回数を増やすことができる。
【0028】
図4は、実施形態の静電センサの動作を、一般的な時分割方式の切り替えと比較して示す図である。ユーザの操作に基づくセンシングの区分けは、
図1と同じく「非検出区間」、「ホバー検出区間」、及び「タッチ検出区間」のいずれかで規定される区間A〜区間Eである。一般的な時分割方式では、センサの動作中、駆動/センスサイクルごとにホバー検出動作とタッチ検出動作が交互に行われる。そのため、区間A〜区間Eにわたって、ホバー検出動作とタッチ検出動作の双方がオンになっている。非検出区間A及びEでは、ホバー用の基準値が更新され、それ以外の区間B〜Dでは、ホバー用の基準値は固定される。タッチ用の基準値は、非検出区間とホバー検出区間(区間A〜B、及び区間D〜E)で更新され、タッチ検出区間(区間C)においてだけ固定される。
【0029】
これに対し、本発明の動作では、非検出区間である区間Aと区間Eは、もっぱらホバー検出の動作が行われ、タッチ検出動作は停止されている。一方、タッチ検出区間Cでは、もっぱらタッチ検出の動作が行われ、ホバー検出動作は停止されている。1サイクル内でホバー検出とタッチ検出の両方が行われるのは、ホバー検出区間(区間BとD)だけである。1サイクルの中でタッチ検出に使用する時間とホバー検出に使用する時間の分割比は適宜設計することができる。分割比を1:1とする場合は、
図3のように操作面全体をカバーするホバーの検出点数が少ないため、ホバー検出の回数を増やして細かいタイミングで検出することができる。検出データを平滑化することでS/N比を向上し、タッチと比較して静電容量の変化が少ないホバー状態をより正確に検出することができる。
【0030】
また、非検出区間では、ホバー用の基準値だけが更新され、タッチ用の基準値は固定にされているので、演算処理量を低減し、ホバー用の基準値更新の計算速度を上げることができる。区間全体を通して、必要な区間で必要な動作だけが行われるので、消費電力を低減することができる。また、ホバー検出のS/Nが十分高い場合、ホバー検出頻度を減らすことによっても消費電力の削減を行うことができる。
【0031】
図5は、
図4の一般的な時分割方式における出力状態を示す図である。区間Aと区間Eの非検出区間では、ホバーもタッチも検出されないので、検出結果の出力はない。区間B〜区間Dのホバー検出区間とタッチ検出区間を通して、ホバーの検出を示す情報が出力され続ける。タッチ検出区間ではホバー検出値は常に閾値Th1を超えるからである。区間Cではタッチの検出が出力されるが、この区間で、タッチ検出の出力とホバー検出の出力が重複する。区間Cでの入力検知処理で必要なのはタッチの検出結果だけであり、ホバーの検出情報は無駄になる。
【0032】
これに対し、実施形態の方法では、タッチ検出区間(区間C)ではホバーの検出動作は停止されているので、不要なホバー検出情報は出力されない。これにより、処理負荷と消費電力を低減することができる。
【0033】
図6は、実施形態のタッチセンサ式電子デバイス1の構成例を示す。タッチセンサ式電子デバイス1は、センサ部10、処理部20、記憶部30、及びインターフェース部40を有する。タッチセンサ式電子デバイス1は、ユーザ入力インターフェースとしてタッチパネルを有する任意の機器に適用可能である。
【0034】
インターフェース部40は、タッチセンサ式電子デバイス1と他の制御装置(たとえばタッチセンサ式電子デバイス1を組み込んだ機器の制御ICなど)の間でデータの送受信を行う回路である。記憶部30に記憶された情報の一部または全部が、処理部20によりインターフェース部40を介して他の制御装置へ出力されてもよい。
【0035】
センサ部10は、操作パネル11と、検出データ生成部13と、駆動部14を有する。操作パネル11は、入力用のユーザインターフェースとして使用される。操作パネル11は、第1方向(たとえばX方向)に延設置される複数の電極Lxと、第1方向と直交する第2方向(たとえばY方向)に延設される複数の電極Lyを有する。電極Lxと電極Lyは互いに絶縁された状態で交差し、交差点の近傍に容量性のセンサ素子12が形成されている。電極LxとLyはストライプ状の形状に限定されず、ダイヤモンドパターン(菱形パターン)など、交差点をとることのできる任意の形状を用いることができる。
【0036】
駆動部14は、各センサ素子12に駆動電圧を印加する。駆動部14は、たとえば処理部20の制御にしたがって、複数の電極Lxを順次選択して、選択した電極Lxに周期的に変化する電圧を印加する。電極Lyは、対応する行の各交点での電荷を検出データ生成部13に供給する。検出データ生成部13は交点ごとに電荷量に応じた検出データを生成する。検出データは、たとえば各交点の静電容量に応じた電圧値をデジタルサンプリングしたデジタルデータである。検出データは、処理部20へ供給される。
【0037】
処理部20は、センサ制御部21、2次元データ生成部22、ホバー/タッチ検出動作制御部23、基準値更新部24、及び判定部25を有する。
【0038】
センサ制御部21は、操作パネル11の各検出位置(容量性のセンサ素子が形成される交点)で、ホバー及びタッチの駆動と検出が周期的に行われるようにセンサ部10を制御する。この制御には、駆動部14による電極Lxへの電圧印加のタイミングと電圧レベルの制御、及び検出データ生成部13による電極Lyからの検出データの読み取りタイミングの制御が含まれる。
【0039】
2次元データ生成部22は、センサ部10から出力される検出データに基づいて、操作パネル11の各検出位置の静電容量変化量を含む行列形式の2次元データ31を生成し、記憶部30に保存する。静電容量の変化量は、記憶部30に記憶された基準値に基づいて算出される。基準値は、タッチセンサ式電子デバイス1の立ち上げのたびに、センサ部10の駆動及びセンシングにより前回値から更新され、座標・閾値・基準値データ32の一部として記憶部30に書き込まれる。座標・閾値・基準値データ32に含まれる閾値として、ホバー検出用の閾値Th1、タッチ検出用の閾値Th2、タッチリリース検出用の閾値Th3、ホバーリリース検出用の閾値Th4などがある。
【0040】
基準値更新部24は、ホバーもタッチも検出されない非検出区間にホバー用の基準値を更新し、ホバー検出区間にタッチ用の基準値を更新する。ホバー検出区間とは、ホバーの検出からタッチの検出までの区間、及びタッチリリースの検出からホバーリリースの検出までの区間を指す。更新された基準値は、座標・閾値・基準値データ32として記憶部30に記憶される。
【0041】
判定部25は、2次元データ生成部22により生成された今回のサイクルの各点の静電容量の変化量を、記憶部30に記憶されている閾値と比較して、ホバーの検出の有無、タッチの検出の有無、タッチリリースの検出の有無、及びホバーリリースの検出の有無を判定する。
【0042】
ホバー/タッチ検出動作制御部23は、判定部25の判定結果に基づき、非検出区間ではタッチ検出動作を停止してもっぱらホバー検出動作を行わせる。ホバー検出動作では、
図3(B)に示すように、複数の検出点をまとめた領域17ごとに静電容量の変化が検出され(第1検出モード)、検出サイクルを早めることができる。判定部25の判定結果によりホバーが検出されたときは、ホバー/タッチ検出動作制御部23はタッチ検出動作をオンにして、タッチ検出動作とホバー検出動作の両方を行わせる。さらに、判定部25の判定結果によりタッチが検出されたときは、ホバー検出動作を停止して、もっぱらタッチ検出動作を行わせる。タッチ検出動作では、
図3(A)に示すように、操作パネル11の検出点ごとに静電容量の変化が検出されるが(第2検出モード)、1サイクルをタッチ検出だけに使うことができるので、検出サイクルを早めることができる。
【0043】
判定部25の判定結果によりタッチリリースが検出されたときは、ホバー/タッチ検出動作制御部23は、ホバー検出動作をオンにして、タッチ検出動作とホバー検出動作の両方を行わせる。判定部25の判定結果によりホバーリリースが検出されたときは、タッチ検出動作を停止して、もっぱらホバー検出動作を行わせる。
また、非検出区間でもっぱらホバー検出を行う中で、頻度を少なくしたタッチ検出を行い、タッチ検出基準値の更新を、温度変化等の環境変化に伴う基準値変化を補う程度に適宜行うことができる。
【0044】
記憶部30は、2次元データ31と座標・閾値・基準値データ32の他に、処理部20の処理に使用される定数データや変数データを記憶する。処理部20の動作がコンピュータプログラムによって実現される場合は、センサ制御プログラムが記憶部30に記憶されてもよい。記憶部30は、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリななどの不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SDD)などの補助記憶装置を含んでもよい。
【0045】
図6の構成により、タッチセンサ式電子デバイス1の処理量と消費電力を抑制し、精度良くホバーとタッチを検出することができる。
【0046】
図7は、実施形態のセンサ制御方法のフローチャートである。この制御フローは、タッチセンサ式電子デバイス1の処理部20で行われ、タッチセンサ式電子デバイス1の動作期間は繰り返し行われるので、ループになっている。まず、タッチセンサ式電子デバイス1の立ち上げ時(または電源投入時)、センサ部10の駆動と検出を所定期間繰り返して、ホバー用とタッチ用の基準値を最後に保存された値から更新する(S10)。
【0047】
基準値が現在の値に更新されたなら、タッチ検出動作を停止して、所定のサイクルでホバーの検出を行う(S11)。ホバーが検出されるまでの間(非検出区間)、各センサ素子の静電容量の変化量が閾値Th1を超えたか否かが判断される(S12)。静電容量の変化量が閾値Th1を超えない場合は(S12でNO)、各センサ素子での検出結果に基づいてホバー用の基準値を更新する(S13)。その後ステップS12に戻り、変化量が閾値Th1を超えるまでS12とS13を繰り返す。
【0048】
静電容量の変化量が閾値Th1を超えたならば(S12でYES)、ホバーが検出されたことを示す情報を出力し、タッチ検出動作をオンにし、ホバー用の基準値を固定にする(S14)。タッチ検出動作を開始し(S15)、各センサ素子での静電容量の変化量が閾値Th2を超えたか否かが判断される(S16)。静電容量の変化量が閾値Th2を超えない場合は(S16でNO)、ステップS25に進んで、静電容量の変化量が閾値Th4よりも小さくなったか否かが判断される。静電容量の変化量が閾値Th4以上の場合は(S25でNO)、各センサ素子での検出結果に基づいてタッチ用の基準値を更新する(S17)。その後ステップS16に戻る。この場合は、ホバー検出区間になるので変化量が閾値Th2を超えるまでS16、S25、及びS17のループを繰り返す。
【0049】
ステップS25で静電容量の変化量が閾値Th4を超えた場合は(S25でYES)、ステップS23に飛んで、ホバーリリースの検出を出力する(矢印A参照)。このホバー検出は、いったんホバーが検出された後に指が操作面111から遠ざかったことを示す。この場合は、ホバーリリースを出力して非検出区間での動作となる。すなわち、タッチ検出動作をオフにしてタッチ用の基準値を固定し、ホバー用の基準値を更新する(S23)。
【0050】
ステップS16で静電容量の変化量が閾値Th2を超えたならば(S16でYES)、タッチが検出されたことを示す情報を出力し、ホバー検出動作を停止し、ホバー用の基準値と同じくタッチ用の基準値も固定にする(S18)。その後、各センサ素子での静電容量の変化量が閾値Th3よりも小さくなったか否かを判断する(S19)。S19の処理は、静電容量の変化量が閾値Th3よりも小さくなるまで繰り返される。静電容量の変化量が閾値Th3よりも小さくなったときは(S19でYES)、タッチリリースが検出されたことを示す情報を出力し、ホバー検出動作をオンにし、タッチ用の基準値の更新を再開する(S20)。その後、静電容量の変化量が閾値Th4よりも小さくなったか否かを判断する(S21)。
【0051】
静電容量の変化量が閾値Th4以上であれば(S21でNO)、ステップS26に進んで静電容量の変化量が閾値Th2よりも大きくなったか否かを判断する。静電容量の変化量が閾値Th2を超えた場合は(S26でYES)、ステップS18に戻って、タッチの検出を出力する(矢印B参照)。このタッチの検出はタッチリリース後の再度のタッチ検出である。この場合は、指が再度操作面111に触れたことを示し、S18以降の処理が行われる。静電容量の変化量がTh2を超えない場合は、タッチ用の基準値を更新して(S22)、変化量が閾値Th4よりも小さくなるまで、ステップS21、S26、及びS22のループを繰り返す。静電容量の変化量が閾値Th4よりも小さくなったときは(S21でYES)、ホバーリリースが検出されたことを示す情報を出力して、タッチ検出動作を停止するとともに、ホバー用の基準値の更新を再開する(S22)。その後、S12へ戻って、非検出区間でのホバー検出動作を行う。
【0052】
図7のセンサ制御方法によると、ホバーの検出とタッチの検出にそれぞれ非動作期間を設け、一方が非動作のときに他方の単位時間あたりのセンス回数を増やすことができるので、ホバー、タッチともに検出精度が向上する。ホバー検出とタッチ検出の両方を行う区間では、ホバー検出の検出点数がタッチ検出の検出点数よりも少なくなる動作方法を採用することで、ホバー検出の回数を増やしてS/N比を向上することができる。
【0053】
この出願は、2017年4月20日に日本国特許庁に出願された特許出願第2017−083946号に基づき、その全内容を含むものである。