特許第6833993号(P6833993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6833993流体組成物及びそれを含むマイクロ流体送達カートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6833993
(24)【登録日】2021年2月5日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】流体組成物及びそれを含むマイクロ流体送達カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/03 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   A61L9/03
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-524206(P2019-524206)
(86)(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公表番号】特表2019-534095(P2019-534095A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】US2017060099
(87)【国際公開番号】WO2018097952
(87)【国際公開日】20180531
【審査請求日】2019年5月9日
(31)【優先権主張番号】15/358,171
(32)【優先日】2016年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ、キム・リン
(72)【発明者】
【氏名】グリュエンバッハー、デイナ・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホレンジアク、スティーブン・アントニー
(72)【発明者】
【氏名】マホニー、ウィリアム・ポール・ザ・サード
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−019592(JP,A)
【文献】 特開平09−323407(JP,A)
【文献】 特表2015−535697(JP,A)
【文献】 特表2002−536173(JP,A)
【文献】 特表2004−536632(JP,A)
【文献】 特開2006−015120(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0367356(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/114735(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1244554(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/02
A61L 9/03
A61M 11/00
B05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを含むマイクロ流体ダイと、前記マイクロ流体ダイと流体連通する流体組成物と、を備える、カートリッジであって、前記流体組成物が、
組成物全体の重量基準で50重量%超の香料混合物であって2.9以下のモル加重平均ClogPを有する、香料混合物と、
ポリオール、グリコールエーテル、ポリエーテル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、酸素化溶媒と、
組成物全体の重量基準で0.25重量%〜9.5重量%の水と、を含む、カートリッジ。
【請求項2】
前記香料混合物のモル加重平均沸点が、250℃未満である、請求項1記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記香料混合物が、2.5以下のモル加重平均ClogPを有する、請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記組成物全体の重量基準で0.25重量%〜7.0重量%の水を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記流体組成物が、懸濁固体を実質的に含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記酸素化溶媒が、ポリオールである、請求項15のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記酸素化溶媒が、グリコールエーテルである、請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記酸素化溶媒が、前記組成物全体の重量基準で0.01重量%〜20重量%のレベルで存在する、請求項17のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記マイクロ流体ダイが、加熱器を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
マイクロ流体ダイから流体組成物を分配する方法であって、
ハウジング、ハウジングと接続可能なカートリッジを接続する工程を含み、前記カートリッジが、リザーバと、流体輸送部材と、流体組成物と、ノズルを含むマイクロ流体ダイと、を含み、前記流体組成物は前記マイクロ流体ダイと流体連通し、
前記流体組成物が、
成物全体の重量基準で5重量超の香料混合物であって、2.9以下モル加重平均ClogPを有する、香料混合物と、
ポリオール、グリコールエーテル、ポリエーテル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、酸素化溶媒と、
成物全体の重量基準で0.25重量%〜9.5重量%の水と、を含む、方法。
【請求項11】
前記香料混合物のモル加重平均沸点が、250℃未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記香料混合物が、2.5以下のモル加重平均ClogPを有する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物全体の重量基準で0.25重量%〜7.0重量%の水を含む、請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸素化溶媒が、前記組成物全体の重量基準で0.01重量%〜20重量%のレベルで存在する、請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改善された流体組成物、及びこの流体組成物を分配するためのマイクロ流体送達カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体送達システムを使用して、香料混合物を含む流体組成物などの流体組成物を、空気中又は基材上に送達するための試みが最近なされてきた。このようなマイクロ流体送達システムは、流体組成物を分配するための複数のノズルを有するマイクロ流体ダイを含み得る。マイクロ流体ダイの1つの問題が、マイクロ流体送達システムの繰り返し使用後のノズルの詰まりである。詰まりは、流体組成物中の不純物に起因して、又は流体組成物の成分に起因して起こり得る。ノズルが詰まると、ユーザが閉塞物を取り除くのが困難又は不可能となる可能性がある。結果として、マイクロ流体送達システムから流出する流量が時間と共に低下し、流体組成物の流量が分配されるか、又はより低い流量を補うために動作時間が増加することになる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、マイクロ流体ダイのノズルの詰まりを最小限に抑える流体組成物の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
A.マイクロ流体ダイと、マイクロ流体ダイと流体連通する流体組成物と、を備える、カートリッジであって、流体組成物が、
組成物全体の重量基準で約50重量%〜約100重量%の香料混合物であって、約2.9以下のモル加重平均ClogPを有する、香料混合物と、
ポリオール、グリコールエーテル、ポリエーテル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、酸素化溶媒と、
組成物全体の重量基準で約0.25重量%〜約9.5重量%の水と、を含む、カートリッジ。
B.香料混合物のモル加重平均沸点が、250℃未満である、段落Aに記載のカートリッジ。
C.香料混合物が、約2.5以下のモル加重平均ClogPを有する、段落A又は段落Bに記載のカートリッジ。
D.組成物全体の重量基準で約0.25重量%〜約7.0重量%の水を含む、段落A〜Cのいずれか一段落に記載のカートリッジ。
E.流体組成物が、懸濁固体を実質的に含まない、段落A〜Dのいずれか一段落に記載のカートリッジ。
F.酸素化溶媒が、ポリオールである、段落A〜Eのいずれか一段落に記載のカートリッジ。
G.酸素化溶媒が、グリコールエーテルである、段落Fに記載のカートリッジ。
H.酸素化溶媒が、組成物全体の重量基準で約0.01重量%〜約20重量%のレベルで存在する、段落A〜Gのいずれか一段落に記載のカートリッジ。
I.マイクロ流体ダイが、加熱器を含む、段落A〜Hのいずれか一段落に記載のカートリッジ。
J.マイクロ流体ダイから流体組成物を分配する方法であって、
ハウジングと、ハウジングと接続可能なカートリッジと、を含む工程を含み、カートリッジが、リザーバと、流体輸送部材と、流体組成物と、マイクロ流体ダイと、を含み、流体組成物が、
流体組成物の重量基準で約50%〜約100%の香料混合物であって、約2.9未満の平均ClogPを有する、香料混合物と、
ポリオール、グリコールエーテル、ポリエーテル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、酸素化溶媒と、
流体組成物の重量基準で約0.25重量%〜約7重量%の水と、を含む、方法。
K.香料混合物のモル加重平均沸点が、250℃未満である、段落Jに記載の方法。
L.香料混合物が、約2.5以下のモル加重平均ClogPを有する、段落J又は段落Kに記載の方法。
M.組成物全体の重量基準で約0.25重量%〜約7.0重量の水を含む、段落J〜Lのいずれか一段落に記載の方法。
N.酸素化溶媒が、組成物全体の重量基準で約0.01重量%〜約20重量%のレベルで存在する、段落J〜Mのいずれか一段落に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】マイクロ流体送達部材と、それと接続された剛性PCBと、を有する、リザーバを含む、カートリッジの斜視図である。
図2】線2−2に沿って見た、図1の断面図である。
図3】外側キャップを有するカートリッジの斜視図である。
図4】剛性PCBを有するマイクロ流体送達部材の上面斜視図である。
図5】剛性PCBを有するマイクロ流体送達部材の底面斜視図である。
図6】マイクロ流体送達部材のための半可撓性PCBの斜視図である。
図7】マイクロ流体送達部材のための半可撓性PCBの側面図である。
図8】マイクロ流体送達部材の分解図である。
図9】マイクロ流体送達部材のダイの上面斜視図である。
図10】ダイの流体チャンバを示すためにノズルプレートを除去した、ダイの上面斜視図である。
図11】ダイの誘電体層を示すためにダイの層を除去した、ダイの上面斜視図である。
図12】線12−12に沿って見た、図9の断面図である。
図13図12から取った部分13の拡大図である。
図14】線14−14に沿って見た、図9の断面図である。
図15】線15−15に沿って見た、図9の断面図である。
図16】内部に配設されたカートリッジと、マイクロ流体送達システムに電力を供給するために用いられる充電式電池を再充電するための充電器とを有するハウジングを含む、マイクロ流体送達システムの斜視図である。
図17】充電器又はそれに接続されたカートリッジを有しない、図16のマイクロ流体送達システムのハウジングの斜視図である。
図18】内部に配設されたカートリッジを有し、ハウジングの内部にアクセスするためのドアを備えるハウジングの概略斜視図である。
図19】マイクロ流体ダイの電気信号の波形及びパルスタイミングの図である。
図20】香料混合物の沸点及び水のレベルが初期噴霧速度に及ぼす効果を示すプロットである。
図21】香料混合物を含む組成物の噴霧速度に水が及ぼす効果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、香料混合物と水とを含む流体組成物に関する。流体組成物はまた、酸素化溶媒を含み得る。本開示の流体組成物は、マイクロ流体ダイを含むカートリッジと共に使用され得る。流体組成物は、流体組成物の重量基準で約0.25重量%〜約9.5重量%の水、代替的に約0.25重量%〜約7.0重量%の水を含み得る。流体組成物は、流体組成物の重量基準で少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも75%、又は少なくとも85%の香料混合物を含み得る。流体組成物の重量基準で約0.25重量%〜約9.5重量%の水、代替的に約0.25重量%〜約7.0重量%を、香料混合物と組み合わせて含む、本開示の流体組成物により、マイクロ流体送達カートリッジからの分配が改善されることが見出された。例えば、流体組成物の重量基準で約0.25重量%〜約9.5重量%の水、代替的に約0.25重量%〜約7.0重量%の水を香料混合物と組み合わせて有する流体組成物は、水の不在下で香料混合物を含む流体組成物と比較して、マイクロ流体ダイのノズルの目詰まりの低減及び/又は流量の増加をもたらす。流体組成物が、水に混和性でない高レベルの香料混合物を含有するため、水がマイクロ流体ダイからの流体組成物の分配を改善することは予想されなかった。
【0007】
カートリッジは、流体組成物を収容するためのリザーバと、マイクロ流体送達部材と、リザーバ内に配設され、流体組成物をリザーバ内からマイクロ流体送達部材に送達するように構成された流体輸送部材とを備え得る。マイクロ流体送達部材は、流体組成物を空気中に分配するように構成され得る。
【0008】
カートリッジは、マイクロ流体送達システムを形成するように、ハウジングと接続可能であり得る。カートリッジは、ハウジングに固定され得、ハウジングに取り外し可能に接続され得、及び/又は交換可能であり得、かつ少なくとも部分的にハウジング内に配設され得る。カートリッジは、ハウジングと電気的に接続可能である。
【0009】
マイクロ流体ダイは、少なくとも1つの加熱器又は圧電性結晶を含み得る。
【0010】
カートリッジ、ハウジング、及びマイクロ流体送達システムは、以下の説明に記載される又は図面に示される構成及び配置に限定されないことを理解されたい。本開示のマイクロ流体送達システム、カートリッジ、及びハウジングは、他の構成に対しても適用可能であるか、又は様々な方法で実施若しくは実行され得る。例えば、ハウジングの構成要素は、カートリッジ上に位置していてもよく、その逆であってもよい。更に、ハウジング及びカートリッジは、以下の説明において説明されるように、ハウジングから分離可能であるカートリッジを構築するのとは反対に、単一のユニットとして構成されてもよい。加えて、カートリッジは、流体組成物を空気中又は標的表面上に送達するための様々なデバイスと併用され得る。
【0011】
カートリッジ
図1及び図2を参照すると、カートリッジ26は、流体組成物52を収容するためのリザーバ50を含み得る。カートリッジ26は、ダイ92及び流体輸送部材80を含み得る。流体輸送部材80は、流体組成物をリザーバ50からダイ92まで送達するように構成され得る。ダイ92は、流体組成物を空気中又は標的表面上に分配するように構成され得る。
【0012】
流体組成物
マイクロ流体送達システム内で十分に動作するように、流体組成物の多くの特性が考慮される。いくつかの要因としては、マイクロ流体送達部材から放出するのに最適な粘度を有する流体組成物を配合すること、マイクロ流体送達部材を詰まらせる懸濁固体を制限された量有する、又は全く有しない流体組成物を配合すること、乾燥してマイクロ流体送達部材を詰まらせないように、十分に安定した流体組成物を配合すること、引火性でない流体組成物を配合することなどが挙げられる。マイクロ流体ダイから適切な分配を行うために、空気を清涼化する又は悪臭を低減する組成物の適切な霧化及び効果的な分配が、流体組成物の設計において考慮され得る。香料混合物と、ポリオールと、水と、を含む、流体組成物が、清涼化又は悪臭低減組成物を空気中に送達するための、満足のいく霧化及び目詰まり低減をもたらすことが見出された。好ましくは、流体組成物は、流体組成物の重量基準で約50%〜約100%の香料混合物と、ポリオールと、流体組成物の重量基準で約0.25重量%〜約9.5重量%の水、代替的に約0.25重量%〜約7.0重量%の水と、を含む。理論に束縛されるものではないが、香料混合物を含む流体組成物に水に添加することにより、流体組成物の沸点が低下し、流体組成物を霧化するために必要なエネルギー又は熱が低減されると考えられる。ダイの加熱器上での発射温度が低下する結果、加熱器上に蓄積する流体組成物、及び流体組成物の分解生成物がより少なくなると考えられる。更に、水が、各発射時にノズル内により多くの流体組成物を分配することによって噴霧速度を増加させ、これにより、ダイの各ノズルからの発射回数が少なくなり、又は所望の噴霧速度のために必要なノズルの数が低減されて、ノズルの寿命が増加すると考えられる。水の取り込みを促進するために、香料混合物は、約2.9未満のモル加重平均ClogPを有し得る。
【0013】
流体組成物は、20センチポアズ(「cps」)未満、代替的に18cps未満、代替的に16cps未満、代替的に約5cps〜約16cps、代替的に約8cps〜約15cpsの粘度を示し得る。また、流体組成物は、約35、代替的に約20〜約30ダイン/cmの表面張力を有し得る。粘度は、TA Instrument Rheometer:Model AR−G2(Discovery HR−2)を使用して、以下の条件下で、単一間隙ステンレス鋼カップ及びボブを用いて定量されたcps単位のものである。
【0014】
設定:
温度25℃
持続時間60.0s
ひずみ% 2%
角周波数10rad/s
ジオメトリ:40mm平行プレート(ペルチエプレートスチール)
【0015】
実行手順情報:
コンディショニング
温度25C
予備剪断なし
平衡化2分
定常流量
ランプ1−100 1/s
モード−log
5点/桁
サンプル期間10秒
許容誤差内で3回連続する許容誤差5%
【0016】
流体組成物は、粒子状物質が液体マトリックス内に分散された混合物中に存在する懸濁固体又は固体粒子を実質的に含まなくてもよい。流体組成物は、5重量%未満の懸濁固体、代替的に4重量%未満の懸濁固体、代替的に3重量%未満のサスペンド、代替的に2重量%未満の懸濁固体、代替的に1重量%未満の懸濁固体、代替的に0.5重量%未満の懸濁固体を有してもよく、又は懸濁固体を含まなくてもよい。懸濁固体は、いくつかの香料物質の特性である溶解物質と区別される。
【0017】
液体組成物は、香料混合物に加えて、又はその代用として、他の揮発性材料を含む場合もあり得ると想到され、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:揮発性染料;殺虫剤として機能する組成物;環境を条件付けし、改造し、又は他の方法で変更する(例えば、睡眠を補助するため、眼を覚まさせるため、呼吸を助けるため、等の条件付けをする)精油又は材料;消臭剤又は悪臭抑制組成物(例えば、反応性アルデヒド類などの臭気中和材(米国特許出願公開第2005/0124512号に開示されているように)、臭気遮断材、臭気マスキング材、又はイオノン類などの感覚改質材(同様に、米国特許出願公開第2005/0124512号にも開示されている))。
【0018】
香料混合物
流体組成物は、流体組成物の重量基準で約50%超、代替的に約60%超、代替的に約70%超、代替的に約75%超、代替的に約80%超、代替的に約50%〜約100%、代替的に約60%〜約100%、代替的に約70%〜約100%、代替的に約80%〜約100%、代替的に約90%〜約100%の量で存在する香料混合物を含む。流体組成物は、全て香料混合物(すなわち100重量%)からなってもよい。
【0019】
香料混合物は、1つ以上の香料原材料を含有し得る。香料原材料は、材料の沸点(「B.P.」)に基づいて選択される。本明細書において言及するB.P.は、760mmHgの通常の標準圧力下の沸点である。標準760mm Hgにおける多くの香料成分のB.P.は、Steffen Arctanderにより書かれ、1969年に出版された「Perfume and Flavor Chemicals(Aroma Chemicals)」に見出すことができる。個々の成分の実験的に測定された沸点が利用可能ではない場合、値は、ACD/Labs(Toronto,Ontario,Canada)から入手可能な沸点PhysChemモデルによって推定することができる。
【0020】
香料混合物は、約2.9未満、代替的に約2.5未満、代替的に約2.0.未満のオクタノール−水分配係数(「ClogP」)のモル加重平均logを有し得る。個々の成分の実験的に測定されたlogPが利用できない場合、値は、ACD/Labs(Toronto,Ontario,Canada)から入手可能な沸点PhysChemモデルによって推定することができる。
【0021】
香料混合物は、250℃未満、代替的に225℃未満、代替的に200℃未満、代替的に約150℃未満、又は代替的に約150℃〜約250℃のモル加重平均B.P.を有し得る。
【0022】
代替的に、約3重量%〜約25重量%の香料混合物が200℃未満のモル加重平均B.P.を有してもよく、代替的に約5重量%〜約25重量%の香料混合物が200℃未満のモル加重平均B.P.を有する。
【0023】
本開示の目的のために、香料混合物の沸点は、当該香料混合物を構成する個々の香料原材料のモル加重平均沸点によって決定される。個々の香料物質の沸点が公開された実験データから既知ではない場合、ACD/Labsから入手可能な沸点PhysChemモデルによって決定される。
【0024】
表1は、香料混合物に好適ないくつかの非限定的、例示的な個々の香料物質を一覧表にしたものである。
【0025】
【表1】
【0026】
表2は、200℃未満の総モル加重平均B.P.(「モル加重平均沸点」)を有する例示的な香料混合物を示す。モル加重平均沸点を計算する際には、表2に例示されるように、決定するのが困難な香料原材料の沸点は、それらの原材料が香料混合物全体の重量基準で15%未満を構成する場合、無視することができる。
【0027】
【表2】
【0028】

流体組成物は、水を含む。流体組成物は、流体組成物の重量基準で約0.25重量%〜約9.5重量%の量の水、代替的に約0.25重量%〜約7.0重量%の水、代替的に約1%〜約5%の水、代替的に約1%〜約3%の水、代替的に約1%〜約2%の量の水を含み得る。理論に束縛されるものではないが、約2.5未満のモル加重平均ClogPを有するように香料混合物を配合することによって、組成物全体の重量基準で約0.25重量%〜約9.5重量%、代替的に約0.25重量%〜約7.0重量%のレベルで、水を流体組成物内に取り入れ得ることが見出された。
【0029】
酸素化溶媒
流体組成物は、ポリオール(2つ以上のヒドロキシル官能基を含む構成成分)、グリコールエーテル、又はポリエーテルなどの1つ以上の酸素化溶媒を含有し得る。
【0030】
ポリオールを含む例示的な酸素化溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び/又はグリセリンが挙げられる。本発明の清涼化組成物に使用されるポリオールは、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールとすることができる。
【0031】
ポリエーテルを含む例示的な酸素化溶媒は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。
【0032】
グリコールエーテルを含む例示的な酸素化溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、他のグリコールエーテル、又はこれらの混合物である。酸素化溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はそれらの混合物であり得る。使用されるグリコールは、ジエチレングリコールとすることができる。
【0033】
組成物に酸素化溶媒を、組成物の重量基準で約0.01重量%〜約20重量%、代替的に約0.05重量%〜約10重量%、代替的に組成物全体の重量基準で約0.1重量%〜約5重量%のレベルで添加し得る。
【0034】
機能性香料成分
流体組成物は、機能性香料成分(「FPC」)を含んでもよい。FPCは、従来の有機溶媒又は揮発性有機化合物(「VOC」)に類似する蒸発特性を有する香料原料の種類である。本明細書で使用するとき、「VOC」は、20℃で測定される蒸気圧が0.2mm Hg超であり、香料の蒸発を助ける揮発性有機化合物を意味する。例示的なVOCとしては、以下の有機溶媒、すなわち、ジプロピレングリコールメチルエーテル(「DPM」)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(「MMB」)、揮発性シリコーン油、及びジプロピレングリコールのメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、又は商標名Dowanol(商標)のグリコールエーテルの任意のVOCが挙げられる。VOCは、通常、香料の蒸発を補助するために流体組成物中で20%超の濃度で使用される。
【0035】
FPCは、香料物質の蒸発を補助し、快楽的芳香効果を提供し得る。FPCは、組成物全体としての香料の性質に負の影響を与えずに比較的高濃度で用いることができる。したがって、流体組成物はVOCを実質的に含まなくてもよく、これは、流体組成物が、組成物の重量基準で18%以下、代替的に6%以下、代替的に5%以下、代替的に1%以下、代替的に0.5%以下のVOCを有することを意味する。流体組成物は、VOCを含まなくてもよい。
【0036】
FPCとして好適な香料物質は、上で定義されるように、約800〜約1500、代替的に約900〜約1200、代替的に約1000〜約1100、代替的に約1000のKIを有し得る。
【0037】
FPCとしての使用に好適な香料物質はまた、所定の香料特性の香気を留めておくために、臭気検出閾値(「ODT」)及び非極性香気特性を用いて定義することができる。ODTは、炎イオン及び嗅ぎ口を装備する商用GCを用いて測定され得る。GCを較正して、シリンジにより注入される正確な物質体積、正確なスプリット比、並びに既知の濃度及び鎖長分布の炭化水素標準物質を用いた炭化水素反応を決定する。空気流量を正確に測定し、ヒトの吸息の時間が12秒間持続すると仮定して、サンプリングした体積を計算する。任意の時点における検出器での正確な濃度は既知であるので、吸入された体積当たりの質量も既知であり、物質の濃度を計算することができる。物質が50ppb未満の閾値を有するかどうかを決定するために、逆算された濃度で溶液を嗅ぎ口に送達させる。官能試験員は、GC溶出液の匂いを嗅ぎ、臭気が認められる保持時間を定量する。全官能試験員の平均から感知能の閾値を決定する。必要量の検体をカラムに注入して、検出器における濃度を50ppbにする。ODTを求めるための典型的なGCパラメータを以下に記載する。機器に関連付けられている指針に従って試験を実施する。
【0038】
装置:
GC:FID検出器を備える5890シリーズ(Agilent Technologies,Ind.,Palo Alto,California,USA);
7673オートサンプラー(Agilent Technologies,Ind.,Palo Alto,California,USA);
カラム:DB−1(Agilent Technologies,Ind.(Palo Alto,California,USA))
長さ30メートル、ID 0.25mm、フィルム厚1マイクロメートル(分離させるための選択的分割を提供する毛細管の内壁上のポリマー層)。
【0039】
方法のパラメータ:
スプリット注入:17/1スプリット比
オートサンプラー:1.13マイクロリットル/注入
カラム流量:1.10mL/分
空気流:345mL/分
入口温度:245℃
検出器温度:285℃
【0040】
温度情報:
初期温度:50℃
速度:5℃/分
最終温度:280℃
最終時間:6分
有力な仮定:(i)臭い嗅ぎ1回当たり12秒
(ii)GCの空気が試料の希釈に加わる。
【0041】
FPCは、約1.0十億分率(「ppb」)超、代替的に約5.0ppb超、代替的に約10.0ppb超、代替的に約20.0ppb超、代替的に約30.0ppb超、代替的に約0.1百万分率超のODTを有し得る。
【0042】
流体組成物中のFPCは、約900〜約1400、代替的に約1000〜約1300の範囲のKIを有し得る。これらのFPCは、エーテル、アルコール、アルデヒド、アセテート、ケトン、又はこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0043】
FPCは、揮発性で低B.P.の香料物質であり得る。例示的なFPCとして、イソノニルアセテート、ジヒドロミルセノール(3−メチレン−7−メチルオクタン−7−オール)、リナロール(3−ヒドロキシ−3,7−ジメチル−1,6オクタジエン)、ゲラニオール(3,7ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール)、d−リモネン(1−メチル−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセン)、ベンジルアセテート、イソプロピルミリステート、及びこれらの混合物が挙げられる。表3は、特定のFPCの例示的な特性のおおよその報告値を列挙する。
【0044】
【表3】
【0045】
香料混合物中のFPCの総量は、香料混合物の約50重量%超、代替的に約60重量%超、代替的に約70重量%超、代替的に約75重量%超、代替的に約80重量%超、代替的に約50重量%〜約100重量%、代替的に約60重量%〜約100重量%、代替的に約70重量%〜約100重量%、代替的に約75重量%〜約100重量%、代替的に約80重量%〜約100重量%、代替的に約85重量%〜約100重量%、代替的に約90重量%〜約100重量%、代替的に約100重量%であり得る。香料混合物は、全てがFPC(すなわち100重量%)からなってもよい。
【0046】
表4は、FPCを含む非限定的、例示的な流体組成物、並びにそれらの公表されたKI及びB.P.の概算値を一覧表にしたものである。
【0047】
【表4】
【0048】
流体組成物を配合するとき、溶媒、希釈剤、増量剤、固定剤、増粘剤等も含んでもよい。これらの材料の非限定的な例は、エチルアルコール、カルビトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、イソプロピルミリステート、エチルセルロース、及びベンジルベンゾエートである。
【0049】
リザーバ
図1及び図2を参照すると、カートリッジ26は、流体組成物を収容するためのリザーバ50を含む。リザーバ50は、約5ミリリットル(mL)〜約100mL、代替的に約10mL〜約50mL、代替的に約15mL〜約30mLの流体組成物を収容するように構成され得る。カートリッジ26を、複数のリザーバを有して、各リザーバが同じ又は異なる流体組成物を含むように構成されてもよい。リザーバは、ガラス、プラスチック、金属などの流体組成物を収容するのに好適な任意の材料から製造され得る。
【0050】
リザーバ50は、上面部分51と、上面部分51に対向するベース部分53と、上面部分51及びベース部分53と接続されて上面部分51とベース部分53との間に延在する少なくとも1つの側壁61とからなり得る。リザーバ50は、内部59及び外部57を画定し得る。リザーバ50は、エアベント93を含み得る。リザーバ50は、上面部分51、ベース部分53、及び少なくとも1つの側壁61を有するものとして示されているが、リザーバ50は、様々な異なる方式で構成されてもよいことを理解されたい。
【0051】
上面部分51、ベース部分53、及び側壁(複数可)61を含むリザーバ50は、単一の構成要素として構成されてもよく、又は共に接合された別個の要素として構成されてもよい。例えば、上面部分51又はベース部分53は、リザーバ50の残部とは別個の要素として構成されてもよい。例えば、リザーバ50は、共に接合された2つの要素からなってもよい。ベース部分53及び側壁(複数可)61は1つの要素であってもよく、上面部分51は別個の要素であってもよい。上面部分51は、側壁(複数可)61と機械的に接続された蓋54として構成されてもよい。蓋54は、リザーバ50を実質的に包囲するために、側壁(複数可)61に解除可能に又は固定して接続されてもよい。蓋54はリザーバ50の側壁(複数可)61に螺着されてもよく、又はリザーバ50の側壁(複数可)61に溶接、糊剤接着などされてもよい。
【0052】
図2を参照すると、リザーバ50は、リザーバ50の内部59から延在する接続部材86を含み得る。接続部材86は、流体輸送部材80の第2の端部84の一部を受容するためのチャンバ88を画定し得る。チャンバ88は、接続部材86と流体輸送部材80との間に実質的に封止されて、リザーバ50からの空気がチャンバ88に侵入するのを防止することができる。
【0053】
リザーバ50の上面部分51が蓋54を含む例示的構成では、接続部材86は、蓋54から延在し得る。リザーバの蓋54は、外表面58及び内表面60によって画定され得る。蓋54は、内表面60から延在する接続部材86を含み得る。
【0054】
リザーバは、透明、半透明、若しくは不透明、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。例えば、リザーバ内の流体組成物のレベルの透明表示器を用いた場合、リザーバは不透明であってもよい。
【0055】
図3に示すように、カートリッジ26は、リザーバ50と機械的に接続された外側カバー40を含み得る。外側カバー40は、ダイ92を少なくとも部分的に露出させるオリフィス42を含み得る。オリフィス42はダイ92に隣接してもよく、また、ダイ92と少なくとも部分的に位置合わせされてもよい。空気流路は、リザーバ50と外側カバー40との間の間隙内に形成され得る。外側カバー40が存在するときには、ファンによって生成された空気圧によって、空気が空気流路を通って移動してオリフィス42から流出し、ダイ92から分配された流体組成物52が、オリフィス42を出る空気と混合し、流体組成物52が空気中に分配されて部屋又は空間を十分に満たすのに役立つ。
【0056】
流体輸送部材
カートリッジ26は、リザーバ50の内部59に配設された流体輸送部材80を含み得る。流体輸送部材80は、第1の端部82、第2の端部84、及び中央部分83によって画定され得る。第1の端部82はリザーバ50内で流体組成物52と流体連通し、第2の端部84はリザーバ50の接続部材86と動作可能に接続されている。流体輸送部材80の第2の端部84は、マイクロ流体送達部材64の下方に位置決めされる。流体輸送部材80は、流体組成物をリザーバ50からマイクロ流体送達部材64まで送達する。流体組成物は、ウィッキング、拡散、吸引、サイフォン吸い上げ、真空吸い上げ、又は他の重力に逆らう機構によって移動することができる。流体組成物は、当該技術分野において既知の重力送りシステムによってマイクロ流体送達部材64まで輸送され得る。
【0057】
流体輸送部材80は、毛細管又はウィッキング材料の形態のものを含む様々な方式で構成されてよい。ウィッキング材料は、流体組成物をリザーバからマイクロ流体送達部材まで引き上げる毛管路を形成する複数の相互接続した連続気泡を含む、金属若しくは織物メッシュ、スポンジ、又は繊維質若しくは多孔質ウィックの形態であってもよい。流体輸送部材に好適な組成物の非限定的な例には、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(polyethelene)、ナイロン6、ポリプロピレン、ポリエステル繊維、エチルビニルアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリビニリデンフルオリド、及びポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。多くの従来式のインクジェットカートリッジは、時間と共に(例えば、2か月又は3か月後に)香料混合物と不相溶になり得、かつ分解し得る連続気泡ポリウレタン発泡体を使用する。流体輸送部材80は、ポリウレタン発泡体を含まなくてよい。
【0058】
流体輸送部材80は、香料混合物の香気を封じ込めるのに役立つような高密度のウィック組成物であってもよい。流体輸送部材は、高密度ポリエチレン又はポリエステル繊維から選択されるプラスチック材料から製造され得る。本明細書で使用するとき、高密度ウィック組成物には、約20マイクロメートル〜約200マイクロメートル、代替的に約30マイクロメートル〜約150マイクロメートル、代替的に約30マイクロメートル〜約125マイクロメートル、代替的に約40マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲の孔半径又は相当する孔半径(例えば、繊維系ウィックの場合)を有する、任意の従来のウィック材料が挙げられる。
【0059】
製造材料にかかわらず、ウィッキング材料が使用される場合、流体輸送部材80は、約10マイクロメートル〜約500マイクロメートル、代替的に約50マイクロメートル〜約150マイクロメートル、代替的に約70マイクロメートルの平均孔径を示し得る。流体輸送部材のうちの構造組成物によって占められていない割合として表されるウィックの平均孔容積は、約15%〜約85%、代替的に約25%〜約50%である。ウィックが約38%の平均細孔容積を有する良好な結果が得られている。
【0060】
流体輸送部材80は、リザーバ50からマイクロ流体送達部材64に流体組成物を送達することが可能となる任意の形状であってよい。流体輸送部材80は、リザーバ50よりも著しく小さい直径などの幅寸法を有しているが、流体輸送部材80の直径はより大きくてもよく、実質的にリザーバ50を満たしてもよいことを理解されたい。流体輸送部材80はまた、例えば、約1mm〜約100mm、又は約5mm〜約75mm、又は約10mm〜約50mmなどの様々な長さであってもよい。
【0061】
マイクロ流体送達部材
カートリッジ26は、ドロップオンデマンドインクジェット印刷ヘッドシステムの態様、より詳細には、サーマル式又はピエゾ式インクジェット印刷ヘッドの態様を利用するマイクロ流体送達部材64を含み得る。マイクロ流体送達部材64は、カートリッジ26のリザーバ50の上面部分51及び/又は側壁61と接続され得る。
【0062】
「ドロップオンデマンド」インクジェット印刷プロセスでは、流体組成物は、急速圧力インパルスにより微小液滴の形態で、直径が一般に約5〜50マイクロメートル又は約10〜約40マイクロメートルの極小オリフィスを通して排出される。急速圧力インパルスは、典型的に、高周波で振動する圧電結晶の伸張、又は急速加熱サイクルによるインク内での揮発性組成物(例えば、溶媒、水、噴射剤)の揮発のいずれかにより、印刷ヘッドで生成される。サーマル式インクジェットプリンタは、印刷ヘッド内の加熱要素を使用して、オリフィスノズルを介して流体組成物の第2の部分を押し出す組成物の一部を揮発させ、加熱要素のオン/オフサイクル数に比例して液滴を形成する。この流体組成物は、必要なときにノズルから押し出される。従来のインクジェットプリンタは、米国特許第3,465,350号及び同第3,465,351号により具体的に記載されている。
【0063】
マイクロ流体送達部材64は、電源と電気導通してもよく、また、プリント回路基板(「PCB」)106、及び流体輸送部材80と流体連通するダイ92を含み得る。
【0064】
PCB106は、剛性の平面回路基板、可撓性PCB、又は半可撓性PCBであってもよい。半可撓性PCBは、PCB106の一部が曲がることを可能にする一部において部分的に粉砕されたガラス繊維−エポキシ複合物を含み得る。PCB106は、従来の構造からなってもよい。これは、セラミック基材を備え得る。これは、ガラス繊維−エポキシ複合材料基材、並びに上面及び底面上に導電性金属、通常は銅からなる層を備え得る。導電層は、エッチングプロセスによって導電路に配置される。導電路は、はんだマスク層と称されることが多い光硬化性ポリマー層によって、基板の大部分の領域で機械的損傷及び他の環境影響から保護される。液体流路及びワイヤボンド取付けパッドなどの選択された領域では、導電性銅経路は、金などの不活性金属層によって保護される。他の材料の選択肢は、スズ、銀、又は他の低反応性で高導電性の金属であり得る。
【0065】
PCB106は、全ての電気的接続、すなわち接点74、トレース75、及び接触パッド112を含み得る。接点74及び接触パッド112はPCB106の同じ面上に配設されてもよく、又はPCBの異なる面上に配設されてもよい。
【0066】
図4図9を参照すると、PCB106は、第1の端部にある電気接点74と、ダイ92に近接した第2の端部にある接触パッド112を含む。図6を参照すると、接触パッド112から電気接点に至る電気トレース75は基板上に形成されており、はんだマスク又は別の誘電体によって被覆され得る。ダイ92からPCB106に至る電気接続は、ワイヤボンディングプロセスによって確立されてもよく、ここで、金又はアルミニウムからなり得る細いワイヤが、ケイ素ダイ上の接着パッドに、そして基板上の対応する接着パッドに熱着される。繊細な接続部を機械的損傷及び他の環境影響から保護するために、カプセル材料116、通常はエポキシ化合物がワイヤ接着領域に塗布される。
【0067】
PCB106は、ダイ92を担持し得る。ダイ92は、薄膜蒸着、表面不活性化、エッチング、紡糸、スパッタリング、マスキング、エピタキシ成長、ウェハ/ウェハボンディング、微細薄膜積層、硬化、ダイシングなどの半導体マイクロ加工プロセスを用いて製造された流体射出システムを備える。これらのプロセスは、当該技術分野において、MEMデバイスを製造するものとして知られている。ダイ92は、ケイ素、ガラス、又はこれらの混合物から製造され得る。ダイ92は、複数のマイクロ流体チャンバを備え、その各々が、対応する作動要素、つまり加熱要素又は電気機械式アクチュエータを含む。このように、ダイの流体射出システムは、マイクロ熱核生成(例えば加熱要素)又はマイクロ機械作動(例えば薄膜圧電性)式となり得る。マイクロ流体送達部材のためのダイの1種は、STMicroelectronics S.R.I.(Geneva,Switzerland)に付与された米国特許出願第2010/0154790号に記載されるMEM技術により得られるノズル集積膜である。薄膜ピエゾの場合、圧電材料(例えばチタン酸鉛ジルコニウム)は、典型的にはスピニングプロセス及び/又はスパッタリングプロセスによって適用される。半導体マイクロ加工プロセスによって、1つ又は数千のMEMSデバイスを1つのバッチプロセス(バッチプロセスは複数のマスク層を含む)で同時に製造することが可能となる。
【0068】
ダイ92は、開口部78の上方でPCB106の上面68に固定され得る。ダイ92は、半導体ダイを基板上に保持するように構成された任意の接着材料によって、PCB106の上面に固定され得る。接着剤は、フィルタ96をマイクロ流体送達部材64に固定するのに用いられる接着剤と同じであっても、異なってもよい。
【0069】
ダイ92は、ケイ素基材、導電性層、及びポリマー層を備えてもよい。ケイ素基材は、他の層のための支持構造体を形成し、これはダイの底部から上層に流体組成物を送達するためのチャネルを含む。導電性層は、ケイ素基材上に配設されて、高い導電性を有する電気トレース及びより低い導電性を有する加熱器を形成する。ポリマー層は、流路、チャンバ、及び液滴生成の幾何学的形状を画定するノズル130を形成する。ダイ92は、中間層109のうちの1つから回路PCB106上の接触パッド112へと下方に延在する複数の電気接続リード110を含む。
【0070】
フィルタ96は、リザーバ50内の流体組成物によって容易に劣化されない接着剤を用いて、PCBに取り付けられ得る。接着剤は、熱的に又は紫外線で活性化されてもよい。フィルタ96は、チャンバ88とダイ92との間に配置される。フィルタ96は、機械的スペーサ98によってマイクロ流体送達部材64の底面から分離される。機械的スペーサ98は、マイクロ流体送達部材64の底面70と、開口部78に近接したフィルタ96との間に間隙を生じさせる。
【0071】
図9図12は、ダイ92の更なる詳細を含む。ダイ92は、基材107、複数の中間層109、及びノズルプレート132を含む。ノズルプレート132は、表面積の範囲を定める外表面133を含む。複数の中間層109は、基材とノズルプレート132との間に配置される誘電体層及びチャンバ層148を含む。ノズルプレート132は、約12マイクロメートル厚であり得る。
【0072】
ダイ92は、中間層109のうちの1つから回路PCB106上の接触パッド112へと下方に延在する複数の電気接続リード110を含む。少なくとも1つのリードが、単一の接触パッド112に結合する。ダイ92の左及び右側の開口部150は、リード110が結合されている中間層109へのアクセスをもたらす。開口部150は、ノズルプレート132及びチャンバ層148を通過して、中間誘電体層上に形成された接触パッド152を露出させる。ダイ92の一方の側にのみ配置された1つの開口部150が存在し得、その結果、ダイから延在するリードが全て一方の側から延在し、他方の側は、リードによって妨げられないままである。
【0073】
ノズルプレート132は、約4〜100個のノズル130、約6〜80個のノズル、又は約8〜64個のノズルを含み得る。例示のみを目的として、ノズルプレート132を通して示される18個のノズル130が存在し、中心線の各側上に9個のノズルがある。各ノズル130は、電気発射パルスごとに、約0.5〜約20ピコリットル、又は約1〜約10ピコリットル、又は約2〜約6ピコリットルの流体組成物を送達し得る。各ノズルから電気発射パルスごとに送達される流体組成物の容量は、画像を基に、ストロボ照明が液滴の生成に合わせて調整される液滴分析を用いて分析することができるが、その一例は、ImageXpert,INc.(Nashua,NH)から入手可能なJetXpertシステムであり、ここでは、液滴は、ダイ上面から1〜3mmの距離で測定される。ノズル130は、約60um〜約110μmの間隔で配置してよい。20個のノズル130が3mmの領域内に存在し得る。ノズル130は、約5μm〜約40μm、又は10μm〜約30μm、又は約20μm〜約30μm、又は約13μm〜約25μmの直径を有してもよい。図10は、チャンバ層148が露出されるようにノズルプレート132を取り除いた、ダイ92を上から見下ろした等角図である。
【0074】
一般的に、ノズル130は、図12及び図13に示すように、ダイ92を通る流体供給チャネルに沿って位置付けられる。ノズル130は、上部開口部が下部開口部よりも小さくなるように、先細りの側壁を含んでもよい。加熱器は、ある長さの辺を有する正方形であってよい。一例では、上部の直径は、約13μm〜約18μmであり、下部の直径は、約15μm〜約20μmである。上部の直径が13μmであり、下部の直径が18μmであると、これにより、132.67μmの上部領域及び176.63μmの下部領域がもたらされる。下部の直径と上部の直径との比は、約1.3対1となる。加えて、加熱器の領域と上部の開口部の領域との比は、5対1超又は14対1超などの高いものとなる。
【0075】
各ノズル130は、流体経路によってリザーバ50内の流体組成物と流体連通する。図2及び図8図15を参照すると、リザーバ50からの流体経路は、流体輸送部材80の第1の端部82を含み、輸送部材を通って輸送部材の第2の端部84に至り、チャンバ88を通り、第1の貫通孔90を通り、PCB106の開口部78を通り、ダイ92の入口94を通り、続いてチャネル126を通り、続いてチャンバ128を通り、ダイのノズル130から出る。
【0076】
各ノズルチャンバ128に近接して、ダイ92の接触パッド152のうちの1つによって提供される電気信号に電気的に結合され、この電気信号によって作動される加熱要素134(図11及び図14を参照)がある。図11を参照すると、各加熱要素134は、第1の接点154及び第2の接点156に結合されている。第1の接点154は、導電性トレース155によって、ダイ上の接触パッド152のうちの対応する1つに結合される。第2の接点156は、グランド線158に結合され、グランド線158は、ダイの片面上で第2の接点156の各々と共有されている。ダイの両側上で接点によって共有される単一のグランド線のみが存在していてもよい。図11は、特徴の全てが単一層上にあるかのように図示されているが、これらは、いくつかの積み重ねられた誘電性及び導電性材料の層上に形成され得る。更に、図示される実施形態は、作動要素として加熱要素134を示しているが、ダイ92は、流体組成物をダイから分配するために、各チャンバ128内に圧電アクチュエータを備えてもよい。
【0077】
使用中、チャンバ128の各々の中の流体組成物が加熱要素134によって加熱されると、流体組成物は、気化して気泡を生成する。気泡を生成する膨張により流体組成物がノズル130から排出され、1つ以上の液滴のプルームを形成する。
【0078】
図9及び図10を参照すると、基材107は、個々のチャンバ128と流体連通して流体経路の一部を形成するチャネル126に連結された入口経路94を含む。チャンバ128の上方には、複数のノズル130を含むノズルプレート132がある。各ノズル130は、チャンバ128のうちの対応する1つの上方にある。ダイ92は、1つのチャンバ及びノズルを含む任意の数のチャンバ及びノズルを有してよい。例示のみを目的として、ダイは、各々がそれぞれのノズルに関連付けられる18個のチャンバを含むものとして示される。代替的に、ダイは、10個のノズルと、5つのノズルの群に流体組成物を提供する2つのチャンバとを有してもよい。チャンバとノズルとの間に1対1の対応を有する必要はない。
【0079】
図10に最も良く示されるように、チャンバ層148は、流体組成物をチャネル126からチャンバ128内に供給する角度付きの漏斗経路160を画定する。チャンバ層148は、中間層109の上面上に配置されている。チャンバ層は、チャネルと、各ノズル130に関連付けられる複数のチャンバ128との境界を画定する。チャンバ層は、金型内で個別に形成されてから基材に取り付けられてもよい。チャンバ層は、基材の上面上に層を蒸着、マスキング、及びエッチングすることによって形成されてもよい。
【0080】
中間層109は、第1の誘電体層162と、第2の誘電体層164と、を含む。第1及び第2の誘電体層は、ノズルプレートと基材との間にある。第1の誘電体層162は、基材上に形成された複数の第1及び第2の接点154、156を被覆し、各チャンバと関連付けられる加熱器134を被覆する。第2の誘電体層164は、導電性トレース155を被覆する。
【0081】
図11を参照すると、第1及び第2の接点154、156は、基材107上に形成される。加熱器134は、それぞれの加熱器組立体の第1及び第2の接点154、156と重なり合うように形成される。接点154、156は、第1の金属層又は他の導電性材料から形成され得る。加熱器134は、第2の金属層又は他の導電性材料から形成され得る。加熱器134は、第1の接点154と第2の接点156とを横方向に接続する薄膜抵抗器である。接点の上面上に直接形成される代わりに、加熱器134は、ビアを介して接点154、156に結合されてもよく、又は接点の下方に形成されてもよい。
【0082】
加熱器134は、20ナノメートル厚のタンタルアルミニウム層であってもよい。加熱器134は、各々が異なる百分率のクロム及びケイ素を有し、各々が10ナノメートル厚であるクロムケイ素フィルムを含んでもよい。加熱器134のための他の材料としては、タンタル窒化ケイ素及びタングステン窒化ケイ素が挙げられ得る。加熱器134はまた、30ナノメートルの窒化ケイ素のキャップを含んでもよい。加熱器134は、複数の薄膜層を連続して堆積させることによって形成されてもよい。薄膜層の積層体は、個々の層の基本的特性を組み合わせる。
【0083】
加熱器134の面積とノズル130の面積との比は、7対1よりも大きくてもよい。加熱器134は、各辺が長さ147を有する正方形であってもよい。長さは、47マイクロメートルであっても、51マイクロメートルであっても、又は71マイクロメートルであってもよい。これは、それぞれ2209、2601、又は5041平方マイクロメートルの面積を有することになる。ノズル直径が20マイクロメートルである場合、第2の端部における面積は314平方マイクロメートルとなり、それぞれおよそ7対1、8対1、又は16対1の比がもたらされる。
【0084】
図15を参照すると、第1の接点154の長さを入口94に隣接して見ることができる。ビア151が、第1の接点154を、第1の誘電体層162上に形成されたトレース155に結合する。第2の誘電体層164は、トレース155上にある。ビア149が第2の誘電体層164を通して形成され、トレース155を接触パッド152に結合する。グランド線158の一部が、ダイの縁部163に向かってビア149と縁部163との間で視認可能である。
【0085】
この断面図で見て取れるように、ダイ92は、比較的単純であり、複雑な集積回路を含まなくてもよい。このダイ92は、外部マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサによって制御及び駆動される。外部マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサは、ハウジング内に設けられてもよい。これにより、PCB106及びダイ92が単純化されることが可能になり、費用対効率が高まる。基材上に形成される2つの金属又は導電性レベルが存在し得る。これらの導電性レベルは、接点154と、トレース155と、を含む。これらの特徴は全て、単一の金属レベル上に形成され得る。これにより、ダイの製造が簡単になり、また、加熱器とチャンバとの間の誘電体層の数が最小化される。
【0086】
使用中、チャンバの各々の中の流体組成物が加熱要素によって加熱されると、流体組成物は、気化して気泡を生成する。気泡を生成する膨張により流体組成物がノズル130から排出され、1つ以上の液滴のプルームを形成する。
【0087】
センサ
送達システムは、空気中の光、騒音、動き、及び/又は臭気レベルなどの環境的刺激に応答する市販のセンサを含み得る。例えば、送達システムは、光を検知したときに電源が入り、及び/又は光を検知しないときに電源が切れるようにプログラムされ得る。別の例では、送達システムは、センサがセンサの近くに移動する人を感知したときに電源を入れることができる。センサはまた、空気中の臭気レベルを監視するために使用され得る。臭気センサを使用して、必要なときに、送達システムの電源を入れる、熱若しくはファンの速度を増加させる、及び/又は送達システムからの流体組成物の送達を増大させることができる。
【0088】
隣接する又は遠隔のデバイスからの香料の強度を測定し、動作条件を変更して他の香料デバイスと相助作用的に働くようにするために、VOCセンサを使用してもよい。例えば、遠隔センサは、放出デバイスからの距離及び香料強度を検知し、続いて、室内充填を最大化するためにデバイスをどこに配置すべきかに関するフィードバックをデバイスに供給し、かつ/又は、室内における「望ましい」強度をユーザに提供し得る。
【0089】
デバイスは、他の香料デバイスと相助作用的に働くために相互に通信し、動作を調整し得る。
【0090】
センサは、リザーバ中の流体組成物レベルを測定するか、又は加熱要素の発射回数を計数して、カートリッジが枯渇する前にその寿命末期を示すためにも使用され得る。このような場合、LED光が点灯し、リザーバの充填又は新しいリザーバとの交換が必要なことを知らせてもよい。
【0091】
センサは、送達システムのハウジングと一体であってもよく、又はリモートコンピュータ若しくは携帯スマートデバイス/電話などの遠隔位置にあってもよい(すなわち送達システムのハウジングとは物理的に離れていてもよい)。センサは、低エネルギーのBluetooth(登録商標)、6LoWPAN無線、又は任意の他のデバイス及び/若しくはコントローラ(例えば、スマートフォン若しくはコンピュータ)との無線通信手段を介して、送達システムと遠隔通信してもよい。
【0092】
ユーザは、低エネルギーのblue tooth又は他の手段によって、遠隔でデバイスの動作条件を変更してもよい。
【0093】
スマートチップ
カートリッジ26は、最適な動作条件をデバイスに送信するためのメモリを含んでもよい。
【0094】
マイクロ流体ダイの作動条件
駆動回路は、外部電源から約4〜約24ボルト、又は約4〜約16ボルトの電力を供給される。加熱要素134は、デバイス又はカートリッジの一部であり得て、加熱要素の発射時間、発射シーケンス、及び周波数などの、加熱要素134の動作を制御するようにプログラムされたソフトウェアを含むマイクロプロセッサに電気的に接続されている。加熱要素134がソフトウェアの指示に従って起動されると、流体組成物がノズル130.から放出する。
【0095】
図19を参照すると、マイクロプロセッサは、発射時間(tFIREで示される)を有する発射パルスを加熱要素134に供給する。図19に示されるようないくつかの実施形態では、複数の個々の加熱要素が、バーストと称されるシーケンスにおいて、介在する遅延時間(tDELAYで示される)で順次(1、2、3、4、など)発射される。バーストは、発射期間(tONで示される)中に、約100〜約8000ヘルツ、又は約100〜約6000ヘルツ、又は約1000〜約6000ヘルツ、又は約1000〜約5000ヘルツ、又は約2000〜5000ヘルツ、又は約1000〜約2500ヘルツのバースト周波数(fBURSTで示される)で発生する。加熱要素134が順次発射されるように構成されている実施形態では、バースト周波数(fBURST)は、個々のノズルの発射周波数と同等である。
【0096】
発射周波数が、液滴の大きさ、並びに付着を回避するために重要である、液滴がどのくらい遠く上方に放出されるかに影響することが見出された。より高い速度(例えば、5000ヘルツ)では、液滴は5000回/秒で発射され、これにより次の液滴のためのより多くの運動量が提供されるので、液滴がより遠くに放出され、周囲表面上への付着を低減するのに役立ち得る。加えて、5000ヘルツでは、液滴は、レフィル制限モードとして上記に定義された、チャンバを完全に充填するのに不十分な時間に起因して、所定のチャンバサイズに対してより小さい。
【0097】
発射期間(tON)は、約0.25秒〜約10秒、又は約0.5秒〜約2秒、又は約0.25秒〜約1秒の持続時間を有し得る。加熱要素134に発射パルスが供給されない非発射期間(tOFFで示される)は、約9秒〜約200秒の持続時間を有し得る。連続繰り返しモードにあるとき、tON及びtOFFは、所望のmg/時間の速度の流体を送達するために、長時間にわたって連続的に繰り返される。例えば、5000ヘルツのバースト周波数及び0.5秒の発射期間(tON)では、各ノズルは、そのシーケンス中に2500回発射する。tOFFが10秒である場合、シーケンスは10.5秒ごと、すなわち約6回/分繰り返され、各ノズルの合計発射回数は、2500掛ける約6回/分、すなわち約15,000発射回数/分になるであろう。表1に従い、20個のノズルがこの送達速度で発射すると、約90mg/時間の流体組成物が空気中に送達されるであろう。
【0098】
5000Hzでの連続繰り返しモードの別の例では、5mg/時間の流体組成物を送達するために、加熱要素134は、.3%のデューティサイクル(例えば、0.5秒発射及び160秒非発射)を含む発射期間(tON)及び非発射期間(tOFF)を有し得る。57mg/時間を送達するために、加熱要素は、2.4%のデューティサイクル(例えば、0.5秒発射及び20秒非発射)を含む発射期間及び非発射期間を有し得る。作動要素として電気機械アクチュエータの場合、記述された加熱要素は圧電素子であってもよい。図19は、レベル1〜レベル10(又は5〜90mg/時間)の強度レベルを達成するために、1〜2マイクロ秒のパルスが以下の速度で繰り返される、加熱要素134の発射パターンを示す。
【0099】
ハウジング
図1〜3を参照すると、マイクロ流体送達システム10はハウジング12を含み得る。ハウジング12は、単一の構成要素から構築されてもよく、又は組み合わせてハウジング12を形成する複数の構成要素を有してもよい。ハウジング12は、内部21及び外部23によって画定され得る。ハウジング12は、上側部分14、下側部分16、及び上側部分14と下側部分16との間に延在してこれらを接続する本体部分18からなり得る。
【0100】
ハウジング12は、ハウジング12の上側部分14の開口部20と、ハウジング12内にカートリッジ26を受容して保持するためのホルダ24とを含み得る。カートリッジ26は、ハウジング12の上側部分14内に受容され得る。
【0101】
マイクロ流体送達システム10は、室内充満運転を支援するための、及び/又は表面を損傷し得る大きな液滴がデバイスの周囲表面上に付着するのを回避するのに役立つ、ファンを備え得る。
【0102】
マイクロ流体送達システム10は、電源と電気導通し得る。使い捨て式電池又は充電式電池などの電源は、ハウジング12の内部21内に位置決めされ得る。あるいは、電源は、ハウジング12に接続された電源コード39に接続された電気コンセントなどの外部電源であってもよい。ハウジング12は、電気コンセントと接続可能な電気プラグを含み得る。マイクロ流体送達システムは、コンパクトで、容易に携帯できるように構成され得る。したがって、電源は充電式又は使い捨て式電池を含み得る。マイクロ流体送達システムは、9ボルト電池、「A」、「AA」、「AAA」、「C」、及び「D」電池などの従来式の乾電池、ボタン電池、時計用電池、太陽電池、並びに再充電ベース部を備える充電式電池などの電源と併用することが可能であり得る。
【0103】
図16を参照すると、マイクロ流体送達システム10は、ハウジングに接続された充電式電池によって電力を供給され得る。充電式電池は、充電器38を用いて充電され得る。充電器38は、電気コンセント又は電池端子などの外部電源と接続する電源連結部39を含み得る。充電器38は、電池を充電するためにハウジング12を受容し得る。ハウジングの内部21上に配設された電気接点48は、内部又は外部電源と結合し、又はカートリッジのマイクロ流体送達部材上の電気接点と結合して、ダイに電力を供給する。ハウジング12は、ハウジング12の外部23上に電源スイッチを含み得る。
【0104】
開口部20は、ハウジング12の様々な位置に配設され得る。図17を参照すると、開口部20は、ハウジング12の上部14内に配設され得る。図18を参照すると、開口部20は、ハウジング12の本体部分18内に配設され得る。ハウジング12は、開口部20を被覆するためのドア30又は構造体を含み得る。カートリッジ26は、ハウジング12の本体部分18内の開口部から滑り込み得る。ハウジング12は、ハウジング12の外部23上の環境をハウジング12の内部21と流体連通させる空気出口28を含み得る。ドア30は回転して、空気出口28へのアクセスを提供し得る。しかしながら、ドア又は被覆は、多様な異なる方式で構成されてもよいことを理解されたい。ドア30は、ハウジング12の内部21内の加圧空気がドア30とハウジングとの間のいかなる間隙からも漏れ出さないように、ハウジング12の残部との実質的に気密性の接続を形成してよい。
【0105】
ダイ92が流体組成物の一部を空気中に分配するときに、ファン32が、空気流路46を通る空気を指向して、流体組成物52を外側カバー40のオリフィス42を通って流出させ得る。ファン32からの空気流が、分配された流体組成物52を空気中に運ぶための更なる力を供給し得、これにより、室内充満を増加し、及び/又は付着を低減し、及び/又は流体組成物を所望の標的に指向することができる。
【0106】
手法
組成物の調製:香料及びプロピレングリコールを含有する組成物
250mlのガラスビーカーを入手し、香料を、実施例で指定された重量で添加する。磁気撹拌棒をビーカーに挿入し、ビーカーを磁気撹拌プレート上に置く。磁気撹拌プレートを十分な速度(例えば、500rpm)で作動させて、過剰な泡を伴わずに渦混合を確実にする。プロピレングリコールを、実施例で指定された重量で、透明になるまでゆっくり渦に添加する。10〜30分間混合する。
【0107】
組成物の調製:香料、プロピレングリコール、及び蒸留水を含有する組成物
250mlのガラスビーカーを入手し、プロピレングリコールを、実施例で指定された重量で添加し、蒸留水を、実施例で指定された重量で添加する。香料を、実施例で指定された重量で、別個の250mlガラスビーカーガラス(glass beaker glass)に添加する。磁気撹拌棒を、香料を収容したビーカーに挿入し、ビーカーを磁気撹拌プレート上に置く。磁気撹拌プレートを十分な速度(例えば、500rpm)で作動させて、過剰な泡を伴わずに渦混合を確実にする。プロピレングリコールと水との混合物を、透明になるまでゆっくり渦に添加する。10〜30分間混合する。
【0108】
噴霧速度法
以下の寸法を有するダイを入手する。
・ノズル数:20、各ノズルが個々のチャンバに関連付けられている
・チャンバ面積=40マイクロメートル×40マイクロメートル
・各チャンバの高さ=10マイクロメートル
・各ノズルのオリフィス直径=25マイクロメートル
【0109】
デバイスがオンにされるとき、作動条件は、以下のとおりである。
・電力=14ボルト
・バースト周波数=3000Hz
・発射時間=2.1マイクロ秒
・ON時間=0.5秒(「発射期間」)(30000.520の合計=バースト当たり発射される液滴数)
・発射期間の間のOFF時間=10秒
【0110】
計量されたレフィルをデバイス内に定置する。デバイスがオンにされた開始時間を記録する。ある期間(最低2時間)後、レフィルを除去し、次いで、再度計量し、停止時間を記録する。最終重量から初期重量を減算して、分配された量を決定する。分配された量を、測定間の時間の長さで除算して、その期間にわたる平均mg/時間を計算する。
【実施例】
【0111】
実施例で使用された芳香剤組成物の特性
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
実施例A〜E:cLogP及び水安定性
表4の以下の実施例は、水と共に透明で安定した混合物を形成する組成物の能力に及ぼす芳香剤組成物のClogPの効果を実証する。
【0118】
【表10】
【0119】
実施例A〜Eから、cLogP<2.5を有する芳香剤組成物は、2.0重量%の水と混合したときに透明な溶液を示す一方、clogP>3.0を有する芳香剤組成物は、2.0重量%の水と組み合わせたときに艶びけした、又は相分離した混合物を示すことに留意されたい。約2.5〜3.0のcLogPを有する芳香剤組成物は、2.0重量%の水と組み合わせたときに、艶びけした組成物及び透明な組成物のいずれかを形成する。
【0120】
表5及び図20に示すように、実施例1〜9は、総合すると、水を添加し、約250C未満のB.P.を有すると、マイクロ流体ダイ系送達システムからの噴霧速度が増加することを示す。
【0121】
【表11】
【0122】
表6及び図21に示すように、実施例10〜16は、水を0.1重量%〜2.0重量%のレベルで芳香剤組成物に添加することにより、マイクロ流体染料(microfluidic dye)からの噴霧性能が有益に増加することを示している。
【0123】
【表12】
【0124】
表7に示すように、実施例17〜21は、最大7重量%のレベルで水を芳香剤組成物に添加することにより、マイクロ流体染料(microfluidic dye)からの噴霧性能が有益に増加することを実証する。
【0125】
【表13】
【0126】
本明細書全体を通じて、単数で言及される構成成分は、単数又は複数両方の当該構成成分について言及されると理解されるべきである。
【0127】
本明細書に記述される全ての百分率は、特に指定のない限り、重量による。
【0128】
本明細書全体を通じて記載されるあらゆる数値範囲には、こうしたより広い数値範囲内に入るそれよりも狭いあらゆる数値範囲が、こうしたそれよりも狭い数値範囲が全て本明細書に明確に記載されているかのように、包含される。例えば、「1〜10」の範囲の指定は、最小値1と最大値10とを含むこれらの間の任意の及び全ての部分範囲、すなわち、最小値が1以上で始まり、最大値が10以下で終わる全ての部分範囲、例えば、1〜6.1、3.5〜7.8、5.5〜10など、を含むと見なされるべきである。
【0129】
更に、本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。むしろ、特に指示がない限り、そのような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図される。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0130】
あらゆる相互参照又は関連特許若しくは関連出願を含む、本明細書に引用される全ての文献は、明確に除外ないしは別の方法で限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのような発明全てを教示、示唆、又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0131】
本発明の特定の実施形態が記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図15
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