(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性は、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流係数をβとし、前記動作時の閾値電圧をVthとし、前記初期閾値電圧をVth0とし、前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流をIdとし、前記初期第1電極電流をId0としたときに、Vth=Vth0+β(Id−Ido)の関係を満たす特性式で表されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング素子制御回路。
前記初期閾値電圧、及び、前記初期第1電極電流を含む情報、並びに、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性に関する情報は、あらかじめ前記記憶部に記憶されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング素子制御回路。
前記スイッチング素子制御回路は、前記スイッチング素子の前記初期閾値電圧を測定する初期閾値電圧測定モードと、前記スイッチング素子のオン/オフ動作を制御する制御モードとを実施するスイッチング素子制御回路であって、
前記スイッチング素子の前記第1電極に閾値電圧測定用電流を供給する閾値電圧測定用電源と、
前記スイッチング素子のオン/オフ状態を判定するオン/オフ状態判定部とをさらに備え、
前記初期閾値電圧測定モードにおいては、
前記第3電極電圧制御部は、前記第3電極電圧が段階的に高くなるように前記第3電極電圧を制御し、
前記オン/オフ状態判定部は、前記第1電極電流検出部で検出された前記第1電極電流に基づいて前記スイッチング素子がオンしたか否かを判定し、
前記記憶部は、前記オン/オフ状態判定部によって前記スイッチング素子がオン状態になったことを判定したときに、前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流を前記初期第1電極電流として記憶するとともに、前記第3電極に印加した前記第3電極電圧を前記スイッチング素子の前記初期閾値電圧として記憶することを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング素子制御回路。
前記スイッチング素子制御回路は、前記制御モードを所定時間実施した後に、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を測定する第1電極電流特性測定モードをさらに実施するスイッチング素子制御回路であって、
前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出する第1電極電流特性算出部をさらに備え、
前記第1電極電流特性測定モードにおいては、
前記第3電極電圧制御部は、前記第3電極電圧が段階的に高くなるように前記第3電極電圧を制御し、
前記オン/オフ状態判定部は、前記第1電極電流検出部で検出された前記第1電極電流に基づいて前記スイッチング素子がオンしたか否かを判定し、
前記記憶部は、前記オン/オフ状態判定部によって前記スイッチング素子がオン状態になったことを判定したときに、前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流を記憶するとともに、前記第3電極に印加した第3電極電圧を前記スイッチング素子の第1電極電流特性測定時閾値電圧として記憶し、
前記第1電極電流特性算出部は、前記初期閾値電圧、前記初期第1電極電流、前記第1電極電流特性測定モードにおいて前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流、及び、前記第1電極電流特性測定時閾値電圧を含む情報に基づいて前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出することを特徴とする請求項4に記載のスイッチング素子制御回路。
前記第3電極電圧制御部は、前記初期閾値電圧測定モードにおいては、前記第3電極電圧が時間経過に伴って階段状に高くなるように前記第3電極電圧を制御することを特徴とする請求項4又は5に記載のスイッチング素子制御回路。
前記第3電極電圧制御部は、前記初期閾値電圧測定モードにおいては、前記第3電極電圧が時間経過に伴って振幅の大きなパルスとなるパルス状の電圧になるように、前記第3電極電圧を制御することを特徴とする請求項4又は5に記載のスイッチング素子制御回路。
前記スイッチング素子制御回路は、前記スイッチング素子のオン/オフ動作を制御する制御モードを所定時間実施した後に、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を測定する第1電極電流特性測定モードを実施するスイッチング素子制御回路であって、
前記スイッチング素子の前記第1電極に閾値電圧測定用電流を供給する閾値電圧測定用電源と、
前記スイッチング素子のオン/オフ状態を判定するオン/オフ状態判定部と、
前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出する第1電極電流特性算出部とをさらに備え、
前記第1電極電流特性測定モードにおいては、
前記第3電極電圧制御部は、前記第3電極電圧が段階的に高くなるように前記第3電極電圧を制御し、
前記オン/オフ状態判定部は、前記第1電極電流検出部で検出された前記第1電極電流に基づいて前記スイッチング素子がオンしたか否かを判定し、
前記記憶部は、前記オン/オフ状態判定部によって前記スイッチング素子がオン状態になったことを判定したときに、前記スイッチング素子を流れる前記第1電極電流を記憶し、かつ、前記第3電極に印加した前記第3電極電圧を前記スイッチング素子の第1電極電流特性測定時閾値電圧として記憶し、
前記第1電極電流特性算出部は、前記初期閾値電圧、前記初期第1電極電流、前記第1電極電流特性測定モードにおいて前記スイッチング素子を流れる前記第1電極電流、及び、前記第1電極電流特性測定時閾値電圧を含む情報に基づいて前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング素子制御回路。
前記第3電極電圧制御部は、前記第1電極電流特性測定モードにおいては、前記第3電極電圧が時間経過に伴って階段状に高くなるように前記第3電極電圧を制御することを特徴とする請求項8に記載のスイッチング素子制御回路。
前記第3電極電圧制御部は、前記第1電極電流特性測定モードにおいては、前記第3電極電圧が、時間経過に伴って振幅の大きなパルスとなるパルス状の電圧になるように、前記第3電極電圧を制御することを特徴とする請求項8に記載のスイッチング素子制御回路。
前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性に関する情報は、前記第1電極電流と前記第1電極電流に対応する閾値電圧とが組となったデータを含むことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング素子制御回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、スイッチング速度を速くすることによりスイッチング損失を小さくすることが可能なスイッチング素子制御回路が求められている。これを実現するための方法の一つとして、閾値電圧をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加してターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることにより、スイッチング速度を速くし、スイッチング損失を小さくすることが考えられる(
図3参照。)。
【0007】
しかしながら、スイッチング素子の動作時に比較的大きな電流をスイッチング素子に流すと閾値電圧が初期閾値電圧(出荷時の閾値電圧)から変動するため(
図4参照。)、動作時の閾値電圧をわずかに超える電圧をゲート電極に印加してターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることが難しく、スイッチング損失を小さくすることが難しい、という問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、動作時の閾値電圧が初期閾値電圧から変動する場合でも、スイッチング損失を小さくすることが可能なスイッチング素子制御回路を提供することを目的とする。また、このようなスイッチング素子制御回路を備えるパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明のスイッチング素子制御回路は、第1電極と、第2電極と、第3電極とを備えるスイッチング素子のオン/オフ動作を制御するスイッチング素子制御回路であって、
前記スイッチング素子のオン/オフ動作を制御するために第3電極電圧を制御する第3電極電圧制御部と、前記スイッチング素子を流れる第1電極電流を検出する第1電極電流検出部と、前記スイッチング素子の初期閾値電圧、及び、前記初期閾値電圧を測定したときに前記スイッチング素子を流れる初期第1電極電流を含む情報、並びに、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性に関する情報を記憶する記憶部と、前記初期閾値電圧、前記初期第1電極電流、及び、前記第1電極電流検出部によって検出された第1電極電流を含む情報、並びに、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性に関する情報に基づいて前記スイッチング素子の動作時の閾値電圧を算出する閾値電圧算出部とを備え、前記第3電極電圧制御部は、前記スイッチング素子をオン状態とするときに、前記閾値電圧算出部によって算出された前記動作時の閾値電圧Vthに基づいて前記第3電極電圧を制御することを特徴とする。
【0010】
[2]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性は、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流係数をβとし、前記動作時の閾値電圧をVthとし、前記初期閾値電圧をVth
0とし
、前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流をIdとし、前記初期第1電極電流をId
0としたときに、Vth=Vth
0+β(Id−Id
o)の関係を満たす特性式で表されることが好ましい。
【0011】
[3]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記初期閾値電圧、及び、前記初期第1電極電流を含む情報、並びに、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性に関する情報は、あらかじめ前記記憶部に記憶されていることが好ましい。
【0012】
[4]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記スイッチング素子制御回路は、前記スイッチング素子の前記初期閾値電圧を測定する初期閾値電圧測定モードと、前記スイッチング素子のオン/オフ動作を制御する制御モードとを実施するスイッチング素子制御回路であって、前記スイッチング素子の前記第1電極に閾値電圧測定用電流を供給する閾値電圧測定用電源と、前記スイッチング素子のオン/オフ状態を判定するオン/オフ状態判定部とをさらに備え、前記初期閾値電圧測定モードにおいては、前記第3電極電圧制御部は、前記第3電極電圧が段階的に高くなるように前記第3電極電圧を制御し、前記オン/オフ状態判定部は、前記第1電極電流検出部で検出された前記第1電極電流に基づいて前記スイッチング素子がオンしたか否かを判定し、前記記憶部は、前記オン/オフ状態判定部によって前記スイッチング素子がオン状態になったことを判定したときに、前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流を前記初期第1電極電流として記憶するとともに、前記第3電極に印加した前記第3電極電圧を前記スイッチング素子の前記初期閾値電圧として記憶することが好ましい。
【0013】
[5]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記スイッチング素子制御回路は、前記制御モードを所定時間実施した後に、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を測定する第1電極電流特性測定モードをさらに実施するスイッチング素子制御回路であって、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出する第1電極電流特性算出部をさらに備え、前記第1電極電流特性測定モードにおいては、前記第3電極電圧制御部は、前記第3電極電圧が段階的に高くなるように前記第3電極電圧を制御し、前記オン/オフ状態判定部は、前記第1電極電流検出部で検出された前記第1電極電流に基づいて前記スイッチング素子がオンしたか否かを判定し、前記記憶部は、前記オン/オフ状態判定部によって前記スイッチング素子がオン状態になったことを判定したときに、前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流を記憶するとともに、前記第3電極に印加した第3電極電圧を前記スイッチング素子の第1電極電流特性測定時閾値電圧として記憶し、前記第1電極電流特性算出部は、前記初期閾値電圧、前記初期第1電極電流、前記第1電極電流特性測定モードにおいて前記第1電極電流検出部によって検出された前記第1電極電流、及び、前記第1電極電流特性測定時閾値電圧を含む情報に基づいて前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出することが好ましい。
【0014】
[6]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記第3電極電圧制御部は、前記初期閾値電圧測定モードにおいては、前記第3電極電圧が時間経過に伴って階段状に高くなるように前記第3電極電圧を制御することが好ましい。
【0015】
[7]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記第3電極電圧制御部は、前記初期閾値電圧測定モードにおいては、前記第3電極電圧が時間経過に伴って振幅の大きなパルスとなるパルス状の電圧になるように、前記第3電極電圧を制御することが好ましい。
【0016】
[8]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記スイッチング素子制御回路は、前記スイッチング素子のオン/オフ動作を制御する制御モードを所定時間実施した後に、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を測定する第1電極電流特性測定モードを実施するスイッチング素子制御回路であって、前記スイッチング素子の前記第1電極に閾値電圧測定用電流を供給する閾値電圧測定用電源と、前記スイッチング素子のオン/オフ状態を判定するオン/オフ状態判定部と、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出する第1電極電流特性算出部とをさらに備え、前記第1電極電流特性測定モードにおいては、前記第3電極電圧制御部は、前記第3電極電圧が段階的に高くなるように前記第3電極電圧を制御し、前記オン/オフ状態判定部は、前記第1電極電流検出部で検出された前記第1電極電流に基づいて前記スイッチング素子がオンしたか否かを判定し、前記記憶部は、前記オン/オフ状態判定部によって前記スイッチング素子がオン状態になったことを判定したときに、前記スイッチング素子を流れる前記第1電極電流を記憶し、かつ、前記第3電極に印加した前記第3電極電圧を前記スイッチング素子の第1電極電流特性測定時閾値電圧として記憶し、前記第1電極電流特性算出部は、前記初期閾値電圧、前記初期第1電極電流、前記第1電極電流特性測定モードにおいて前記スイッチング素子を流れる前記第1電極電流、及び、前記第1電極電流特性測定時閾値電圧を含む情報に基づいて前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性を算出することが好ましい。
【0017】
[9]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記第3電極電圧制御部は、前記第1電極電流特性測定モードにおいては、前記第3電極電圧が時間経過に伴って階段状に高くなるように前記第3電極電圧を制御することが好ましい。
【0018】
[10]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記第3電極電圧制御部は、前記第1電極電流特性測定モードにおいては、前記第3電極電圧が、時間経過に伴って振幅の大きなパルスとなるパルス状の電圧になるように、前記第3電極電圧を制御することが好ましい。
【0019】
[11]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記スイッチング素子における閾値電圧の第1電極電流特性に関する情報は、前記第1電極電流と前記第1電極電流に対応する閾値電圧とが組となったデータを含むことが好ましい。
【0020】
[12]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記スイッチング素子は、MOSFET、IGBT又はHEMTであることが好ましい。
【0021】
[13]本発明のスイッチング素子制御回路においては、前記スイッチング素子は、GaN、SiC又はGa
2O
3を含む材料により形成されたものであることが好ましい。
【0022】
[14]本発明のパワーモジュールは、第1電極と、第2電極と、第3電極とを備えるスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオン/オフ動作を制御する、[1]〜[13]のいずれかに記載のスイッチング素子制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスイッチング素子制御回路及びパワーモジュールによれば、閾値電圧算出部は、第1電極電流検出部によって検出された第1電極電流を含む情報に基づいてスイッチング素子の動作時の閾値電圧を算出し、第3電極電圧制御部は、スイッチング素子をオン状態とするときに、閾値電圧算出部によって算出された動作時の閾値電圧に基づいて第3電極電圧を制御するため、動作時に比較的大きな電流をスイッチング素子に流して閾値電圧が初期閾値電圧から変動する場合でも(
図4参照。)、動作時の閾値電圧をわずかに超える電圧を第3電極に印加することができる(
図3(b)参照。)。従って、ターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることができ、その結果、スイッチング損失を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のスイッチング素子制御回路及びパワーモジュールについて、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の回路構成やグラフを厳密に反映したものではない。
【0026】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るパワーモジュール1及びスイッチング素子制御回路100の構成
実施形態1に係るパワーモジュール1は、
図1に示すように、スイッチング素子200と、スイッチング素子200のオン/オフ動作を制御する実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100とを備える。実施形態1に係るパワーモジュール1は、高耐熱性・高絶縁性の樹脂やセラミックス等により形成されたパッケージで覆われている。実施形態1に係るパワーモジュール1には、直流の電源電圧V
DDを入力する(+)側入力端子T1、接地側の(−)側入力端子T2、(+)側出力端子T3、接地側の(−)側出力端子T4、及び、駆動信号(例えば、ゲートパルス)Pgを入力する制御端子T5が設けられている。
【0027】
(+)側入力端子T1と(−)側入力端子T2との間には、電源電圧V
DDを印加するためのゲートドライブ用電源300が接続されている。ゲートドライブ用電源300は、ゲート電圧制御部10を介してスイッチング素子200のゲート電極と接続されており、ゲート電極に電圧を供給する。(+)側出力端子T3及び(−)側出力端子T4には、負荷回路400が接続されている。負荷回路400は、例えば、負荷抵抗410及び直流の駆動電源420を有し、これらが(+)側出力端子T3と(−)側出力端子T4との間に直列に接続されている。なお、(−)側出力端子T4は接地されている。
【0028】
スイッチング素子200は、ソース電極(第2電極)、ドレイン電極(第1電極)及びゲート電極(第3電極)を備えるMOSFETである。スイッチング素子200は、ゲート電極に閾値電圧を超えるゲート電圧(第3電極電圧)を印加するとオン状態となり、ゲート電圧が閾値電圧を下回るとオフ状態となる。ゲート電圧は、電源電圧V
DDから供給され、後述するゲート電圧制御部10(第3電極電圧制御部)によって制御される。なお、スイッチング素子200は、GaNを含む材料により形成されたものである。この場合、ゲート電極の絶対最大定格電圧と閾値電圧との差が小さくなる。
【0029】
スイッチング素子200のドレイン電極は、(+)側出力端子T3を介して負荷回路400と接続されている。スイッチング素子200のゲート電極は、ゲート電圧制御部10と接続されている。スイッチング素子200のソース電極は抵抗を介して(−)側出力端子T4と接続されている。
【0030】
実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100は、ゲート電圧制御部10(第3電極電圧制御部)と、ドレイン電流検出部20(第1電極電流検出部)と、記憶部30と、閾値電圧算出部40とを備える(
図1参照。)。
ゲート電圧制御部10は、閾値電圧算出部40と接続されている。ゲート電圧制御部10は、入力された駆動信号(例えば、ゲートパルス)Pgに基づいてスイッチング素子200のオン/オフを制御するためにゲート電圧を制御する。
ドレイン電流検出部20は、ドレイン電流検出素子を有し、閾値電圧算出部40と接続されている。ドレイン電流検出素子としては、抵抗やロゴスキーコイル等適宜の電流検出素子を用いることができる。
記憶部30は、閾値電圧算出部40と接続されている。記憶部30においては、スイッチング素子200の初期閾値電圧Vth
0(あらかじめ設定した、使用するスイッチング素子200の閾値電圧の下限値)、及び、初期閾値電圧Vth
0を測定したときにスイッチング素子200を流れる初期ドレイン電流Id
0(初期第1電極電流)を含む情報、並びにスイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流特性(第1電極電流特性)に関する情報が、あらかじめ記憶されている。このため、スイッチング素子200をスイッチング素子制御回路100に組み込んだ後に初期閾値電圧Vth
0、及び、初期ドレイン電流Id
0を計測する必要がない。
【0031】
スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流特性は、
図4に示すように、ドレイン電流が大きくなるに従って閾値電圧が大きくなる。実施形態1においては、スイッチング素子における閾値電圧のドレイン電流特性は、スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流係数(第1電極電流係数)をβとし、動作時の閾値電圧をVthとし、初期閾値電圧をVth
0とし
、ドレイン電流検出部20によって検出されたドレイン電流をIdとし、初期閾値電圧Vth
0を測定したときにスイッチング素子200を流れるドレイン電流をId
0としたときに、Vth=Vth
0+β(Id−Id
o)の関係を満たす特性式で表される(
図4の点線で表される直線参照。)。すなわち、スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流特性を、傾きが正の1次関数に近似している。
【0032】
実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100は、スイッチング素子200をオン状態とするとき、ゲート電極に印加するゲート電圧を以下のようにして決定する(
図2参照。)。
まず、ドレイン電流検出部20によってスイッチング素子200を流れるドレイン電流Idを検出する。
次に、閾値電圧算出部40は、記憶部30から、スイッチング素子200の初期閾値電圧Vth
0(あらかじめ設定した、使用するスイッチング素子200の閾値電圧の下限値)、及び、初期ドレイン電流Id
0を含む情報、並びに、スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流特性に関する情報を読み取るとともに、ドレイン電流検出部20からスイッチング素子200を流れるドレイン電流Idを読み取り、Vth=Vth
0+β(Id−Id
o)の特性式に代入し、動作時の閾値電圧Vthを算出する(
図4参照。)。
次に、ゲート電圧制御部10は、閾値電圧算出部40で算出された動作時の閾値電圧Vthに基づいて(
図3(b)参照。)、当該閾値電圧Vthをわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加する。このようにして、ゲート電極に印加するゲート電圧を決定する。
【0033】
なお、実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100においては、常にスイッチング素子200のドレイン電流に追従してゲート電圧を制御してもよいし、所定時間ごとにスイッチング素子200のドレイン電流を検出して動作時の閾値電圧を算出し、当該動作時の閾値電圧に基づいてゲート電圧を制御してもよい。
【0034】
2.実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100及びパワーモジュール1の効果
実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100及びパワーモジュール1によれば、閾値電圧算出部40は、ドレイン電流検出部20によって検出されたドレイン電流を含む情報に基づいてスイッチング素子200の動作時の閾値電圧Vthを算出し、ゲート電圧制御部10は、スイッチング素子200をオン状態とするときに、閾値電圧算出部40によって算出された動作時の閾値電圧Vthに基づいてゲート電圧を制御するため、動作時に比較的大きな電流をスイッチング素子200に流して閾値電圧Vthが初期閾値電圧Vth
0から変動する場合でも(
図4参照。)、動作時の閾値電圧をわずかに超える電圧をゲート電極に印加することができる(
図3(b)参照。)。従って、ターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることができ、その結果、スイッチング損失を小さくすることができる。
【0035】
実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100によれば、スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流特性は、スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流係数をβとし、動作時の閾値電圧をVthとし、初期閾値電圧をVth
0とし
、ドレイン電流検出部20によって検出されたドレイン電流をIdとし、初期ドレイン電流をId
0としたときに、Vth=Vth
0+β(Id−Id
o)の関係を満たす特性式で表されるため、比較的容易にスイッチング素子200の動作時の閾値電圧Vthを算出することができる。
【0036】
実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100によれば、GaNを含む材料により形成されたスイッチング素子のようにゲート電極の絶対最大定格電圧と閾値電圧との差が小さい場合であっても、動作時の閾値電圧Vthをわずかに超える電圧をゲート電極に印加することができる。従って、ターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることができ、その結果、スイッチング損失を小さくすることができる。また、閾値電圧(設計上の閾値電圧)をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加してもスイッチング素子200がオン状態にならない現象が発生することを防ぐことができ、その結果、スイッチング素子200のオン/オフ動作を確実に制御することができる。
【0037】
また、実施形態1に係るパワーモジュール1によれば、スイッチング素子200がGaNを含む材料により形成されたものであるため、スイッチング素子200のオン抵抗が低くなり、導通損失が小さいパワーモジュールとすることができる。
【0038】
[実施形態2]
実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102は、基本的には実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100と同様の構成を有するが、閾値電圧測定用電源及びオン/オフ状態判定部をさらに備える点で実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102は、スイッチング素子200の初期閾値電圧Vth
0を測定する初期閾値電圧測定モードと、スイッチング素子200のオン/オフ動作を制御する制御モードとを切り替えて実施するスイッチング素子制御回路である(
図5参照。)。
【0039】
閾値電圧測定用電源50は、スイッチング素子200のドレイン電極と接続されており、初期閾値電圧測定モードにおいては、閾値電圧測定用スイッチ52をオンすることにより、スイッチング素子200のドレイン電極(第1電極)に閾値電圧測定用電流を供給する。
閾値電圧測定用スイッチ52としては、適宜のスイッチを用いることができ、例えば、フォトカプラを用いることができる。
オン/オフ状態判定部60は、初期閾値電圧測定モードにおいて、ドレイン電流検出部20から受信した検出結果に基づいてスイッチング素子200のオン/オフ状態を判定する。オン/オフ状態判定部60は、ドレイン電流検出部20及びゲート電圧制御部10と接続されている。
記憶部30は、閾値電圧算出部40だけでなく、ゲート電圧制御部10及びドレイン電流検出部20とも接続されている。
【0040】
実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102は、以下のような動作を行う。
【0041】
(1)初期閾値電圧測定モードについて
初期閾値電圧測定モードは、スイッチング素子制御回路102に接続されたスイッチング素子200の初期閾値電圧Vth
0を測定するモードである。このモードは、スイッチング素子制御回路102及びスイッチング素子200を駆動させる前に行う。
【0042】
まず、駆動電源420から電流供給をしない状態で閾値電圧測定用電源50からスイッチング素子200のドレイン電極に閾値電圧測定用電流を供給する(
図6参照。)。
次に、ゲート電圧制御部10は、想定されている初期閾値電圧よりも低い電圧をゲート電極に印加するようにゲート電圧を制御する。このとき、ドレイン電流検出部20によってドレイン電流は検出されない(ドレイン電流の値が0である)ため、オン/オフ状態判定部60は、スイッチング素子200がオフ状態であると判定する。オン/オフ状態判定部60によってスイッチング素子200がオフ状態であると判定すると、ゲート電圧制御部10は、ゲート電圧が一段階高くなるようにゲート電圧を制御する(
図7参照。)。
これを繰り返してゲート電圧を段階的に高くしていき(具体的には階段状に高くしていき)、ドレイン電流検出部20によってドレイン電流が検出されたとき(ドレイン電流の値が0でなくなったとき)、オン/オフ状態判定部60は、スイッチング素子200がオン状態であると判定する。このとき、ドレイン電流検出部20によって検出されたスイッチング素子200を流れるドレイン電流を記憶部30へ送信するとともに、ゲート電圧制御部10は、ゲート電極に印加したゲート電圧Vgsを記憶部30へ送信する。そして、記憶部30では、当該ドレイン電流を初期ドレイン電流Id
0として記憶するとともに当該ゲート電圧Vgsを初期閾値電圧Vth
0として記憶する。
【0043】
(2)制御モードについて
制御モードにおいては、スイッチング素子200をオン状態とするときに、初期閾値電圧測定モードにおいて測定された初期閾値電圧Vth
0及び初期ドレイン電流Id
0、ドレイン電流検出部20によって検出されたスイッチング素子200を流れるドレイン電流Id、及び、あらかじめ記憶部30に記憶されているスイッチング素子における閾値電圧のドレイン電流特性に関する情報(ドレイン電流係数β)に基づいて(Vth=Vth
0+β(Id−Id
0)の特性式に代入して)動作時の閾値電圧Vthを算出し(
図4参照。)。、ゲート電圧制御部10は、閾値電圧算出部40で算出された動作時の閾値電圧Vthをわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加する。
【0044】
このように、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102は、閾値電圧測定用電源及びオン/オフ状態判定部をさらに備える点で実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100の場合とは異なるが、実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100の場合と同様に、閾値電圧算出部40は、ドレイン電流検出部20によって検出されたドレイン電流を含む情報に基づいてスイッチング素子200の動作時の閾値電圧Vthを算出し、ゲート電圧制御部10は、スイッチング素子200をオン状態とするときに、閾値電圧算出部40によって算出された動作時の閾値電圧Vthに基づいてゲート電圧を制御するため、動作時に比較的大きな電流をスイッチング素子200に流して閾値電圧Vthが初期閾値電圧Vth
0から変動する場合でも(
図4参照。)、動作時の閾値電圧をわずかに超える電圧をゲート電極に印加することができる(
図3(b)参照。)。従って、ターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることができ、その結果、スイッチング損失を小さくすることができる。
【0045】
また、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102及びパワーモジュール2によれば、初期閾値電圧測定モードにおいて、スイッチング素子制御回路102に実際に接続されたスイッチング素子200の実際の閾値電圧を測定することができるため、実際の閾値電圧がスイッチング素子200の製造バラツキによって設計上の閾値電圧から変動していた場合でも、スイッチング素子200をオン状態とするときに、実際の閾値電圧に基づいて実際の閾値電圧をわずかに超えるゲート電圧をスイッチング素子200のゲート電極に印加することができる。従って、スイッチング素子200のオン/オフ動作を確実に制御するために閾値電圧を大きく超えるゲート電圧をスイッチング素子200のゲート電極に印加する場合(比較例。
図3(a)参照。)と比較して、ターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることができるため、スイッチング速度を速くすることができ、その結果、スイッチング損失を小さくすることができる。
【0046】
また、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102及びパワーモジュール2によれば、上記したようにスイッチング素子200をオン状態とするときに、実際の閾値電圧に基づいて実際の閾値電圧をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加することができるため、実際の閾値電圧がスイッチング素子200の製造バラツキによって設計上の閾値電圧よりも高くなる方向に変動していた場合であっても、実際の閾値電圧をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加することができる。従って、閾値電圧(設計上の閾値電圧)をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加してもスイッチング素子200がオン状態にならない現象が発生することを防ぐことができ、その結果、スイッチング素子200のオン/オフ動作を確実に制御することができる。
特に、スイッチング素子200が(GaNを含む場合のように)ゲート電極の絶対最大定格電圧と閾値電圧との差が小さい場合であっても、実際の閾値電圧をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加することができるため、閾値電圧(設計上の閾値電圧)をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加してもスイッチング素子200がオン状態にならない現象が発生することを防ぐことができ、その結果、スイッチング素子200のオン/オフ動作を確実に制御することができる。
【0047】
また、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102及びパワーモジュール2によれば、初期閾値電圧測定モードにおいて、実際の閾値電圧を測定することができ、制御モードにおいては、スイッチング素子をオン状態とするときに、実際の閾値電圧を含む情報に基づいてゲート電極に印加するゲート電圧を制御することができるため、スイッチング素子200を大量生産したとしても、スイッチング素子制御回路102にスイッチング素子200を接続する前に、製造されたスイッチング素子それぞれの閾値電圧を測定する必要がない。従って、作業が煩雑にならず、生産性を高くすることが容易となる。
【0048】
また、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102によれば、ゲート電圧制御部10は、初期閾値電圧測定モードにおいては、ゲート電圧が時間経過に伴って階段状に高くなるようにゲート電圧を制御するため、スイッチング素子200の閾値電圧を効率的に、かつ、確実に測定することができる。
【0049】
なお、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102は、閾値電圧測定用電源及びオン/オフ状態判定部をさらに備える点以外の点においては実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100と同様の構成を有するため、実施形態1に係るスイッチング素子制御回路100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0050】
[実施形態3]
実施形態3に係るスイッチング素子制御回路は、基本的には実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102と同様の構成を有するが、ドレイン電流特性算出部(第1電極電流特性算出部)をさらに備える点で実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係るスイッチング素子制御回路は、制御モードを所定時間実施した後に、スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流特性を測定するドレイン電流特性測定モード(第1電極電流特性測定モード)を実施するスイッチング素子制御回路である。
【0051】
ドレイン電流特性算出部70は、記憶部30と接続されており(
図8参照。)、スイッチング素子200における閾値電圧のドレイン電流特性を算出する。
【0052】
ドレイン電流特性測定モードにおいては、以下のような動作を行う。
制御モードを所定時間実施した後に、駆動電源420から電流供給をしない状態で閾値電圧測定用電源50からスイッチング素子200のドレイン電極に閾値電圧測定用電流を供給する(
図8参照。)。
次に、ゲート電圧制御部10は、想定されている(動作時の)閾値電圧よりも低い電圧をゲート電極に印加するようにゲート電圧を制御する。このとき、ドレイン電流検出部20によってドレイン電流は検出されない(ドレイン電流の値が0である)ため、オン/オフ状態判定部60は、スイッチング素子200がオフ状態であると判定する。オン/オフ状態判定部60によってスイッチング素子200がオフ状態であると判定すると、ゲート電圧制御部10は、ゲート電圧が一段階高くなるようにゲート電圧を制御する(
図7参照。)。
これを繰り返してゲート電圧が段階的に高くなるように(具体的には階段状に高くなるように)していき、ドレイン電流検出部20によってドレイン電流が検出されたとき(ドレイン電流の値が0でなくなったとき)、オン/オフ状態判定部60は、スイッチング素子200がオン状態であると判定する。また、ゲート電圧制御部10は、ゲート電極に印加したゲート電圧Vgsをドレイン電流特性測定時閾値電圧Vth
1(第1電極電流特性測定時閾値電圧)として記憶部30へ送信し、記憶部30は、当該ゲート電圧Vgsをドレイン電流特性測定時閾値電圧Vth
1として記憶する。
【0053】
次に、ドレイン電流特性算出部70は、記憶部30から、初期閾値電圧Vth
0、初期ドレイン電流Id
0、及び、ドレイン電流特性測定時閾値電圧Vth
1を含む情報を読み取るとともに、ドレイン電流特性測定モードにおいてドレイン電流検出部20によって検出されたドレイン電流Id
1を読み取り、Vth=Vth
0+β(Id−Id
o)の特性式にVth=Vth
1、及び、Id=Id
1をそれぞれ代入して、ドレイン電流特性(具体的にはドレイン電流係数β)を算出する(
図9参照。)。算出されたドレイン電流係数βは記憶部30に記憶される。
【0054】
制御モードにおいては、閾値電圧算出部40は、ドレイン電流特性測定モードで算出されたドレイン電流係数β、動作時にドレイン電流検出部20で検出されたスイッチング素子200を流れるドレイン電流Id、記憶部30に記憶されている初期閾値電圧Vth
0及び初期ドレイン電流Id
0に基づいて閾値電圧Vthを算出し、ゲート電圧制御部10は、当該閾値電圧Vthに基づいてゲート電圧を制御する。
【0055】
このように、実施形態3に係るスイッチング素子制御回路は、ドレイン電流特性算出部をさらに備える点で実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102の場合とは異なるが、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102の場合と同様に、閾値電圧算出部40は、ドレイン電流検出部20によって検出されたドレイン電流を含む情報に基づいてスイッチング素子200の動作時の閾値電圧Vthを算出し、ゲート電圧制御部10は、スイッチング素子200をオン状態とするときに、閾値電圧算出部40によって算出された動作時の閾値電圧Vthに基づいてゲート電圧を制御するため、動作時に比較的大きな電流をスイッチング素子200に流して動作時の閾値電圧Vthが初期閾値電圧Vth
0から変動する場合でも(
図4参照。)、動作時の閾値電圧をわずかに超える電圧をゲート電極に印加することができる(
図3参照。)。従って、ターンオン期間及びターンオフ期間を短くすることができ、その結果、スイッチング損失を小さくすることができる。
【0056】
また、実施形態3に係るスイッチング素子制御回路によれば、ドレイン電流特性算出部70を備えるため、異なるドレイン電流で測定された閾値電圧(複数の点で測定した閾値電圧)に基づいてドレイン電流特性を算出することができる。従って、スイッチング素子制御回路に実際に接続されたスイッチング素子のドレイン電流特性が、製造バラツキによって設計上のドレイン電流特性から変動した場合であっても、スイッチング素子における閾値電圧のドレイン電流特性(ドレイン電流係数)をより正確に算出することができる。従って、実際の閾値電圧をわずかに超えるゲート電圧をゲート電極に印加することができる。
【0057】
なお、実施形態3に係るスイッチング素子制御回路は、ドレイン電流特性算出部をさらに備える点以外の点においては実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102と同様の構成を有するため、実施形態2に係るスイッチング素子制御回路102が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0058】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0059】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0060】
(2)上記実施形態3においては、スイッチング素子制御回路を、初期閾値電圧測定モードと、ドレイン電流特性測定モードと、制御モードとを実施するスイッチング素子制御回路としたが、本発明はこれに限定されるものではない。スイッチング素子制御回路を、例えば、ドレイン電流特性測定モード及び制御モードのみを実施するスイッチング素子制御回路としてもよい。このとき、初期閾値電圧及び初期ドレイン電流はあらかじめ記憶部に記憶されている。
【0061】
(3)上記実施形態2及び3においては、初期閾値電圧測定モードにおいて、実施形態3においては、ドレイン電流特性測定モードにおいて、ゲート電圧制御部10は、ゲート電圧が時間経過に伴って階段状に高くなるようにゲート電圧を制御したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、初期閾値電圧測定モード及びドレイン電流特性測定モードにおいて、ゲート電圧制御部10は、ゲート電圧が時間経過に伴って振幅の大きなパルスとなるパルス状の電圧になるようにゲート電圧を制御してもよい(
図10参照。)。
【0062】
(4)上記各実施形態においては、スイッチング素子における閾値電圧のドレイン電流特性に関する情報は、Vth=Vth
0+β(Id−Id
o)の関係を満たす特性式であるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スイッチング素子における閾値電圧のドレイン電流特性に関する情報を、より実際のグラフに近い(多次元の)特性式としてもよいし(
図4の実線参照。)、ドレイン電流と当該ドレイン電流に対応する閾値電圧とが組となったデータを含むこととしてもよい(
図11参照。)。この場合、ドレイン電流を検出したときに当該ドレイン電流に対応する閾値電圧を動作時の閾値電圧とする。
【0063】
(5)上記各実施形態においては、記憶部30に1つの特性式を用意し、動作時の閾値電圧を算出したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、記憶部30に複数の特性式を用意しておき、ドレイン電流検出部20によってドレイン電流を検出することで特性式を特定し、動作時のドレイン電流を検出することにより特定された特性式を用いて閾値電圧を算出することとしてもよい。
【0064】
(6)上記各実施形態において、スイッチング素子制御回路が1つのスイッチング素子を制御したが、本発明はこれに限定されるものではない。スイッチング素子制御回路が複数のスイッチング素子を制御してもよい。
【0065】
(7)上記各実施形態において、スイッチング素子は、GaNを含む材料により形成されたものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。スイッチング素子は、SiCやGa
2O
3等のワイドギャップ半導体を含む材料や、シリコンを含む材料により形成されたものであってもよい。
【0066】
(8)上記実施形態においては、スイッチング素子として、MOSFETを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。スイッチング素子として、MOSFET以外のスイッチング素子(例えば、HEMT、IGBT等)を用いてもよい。
【0067】
(9)上記各実施形態において、スイッチング素子制御回路とスイッチング素子とが別々の半導体基体に形成されていてもよいし、スイッチング素子制御回路とスイッチング素子(例えば、GaNの横型構造の半導体素子)とが同一の半導体基体に形成されていてもよい。